JP2005307226A - Mo系ターゲット材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 異常放電の発生を抑制できる大型焼結品のMo合金ターゲット材を提供する。
【解決手段】 遷移金属元素を0.1〜50原子%含むMo合金の全長が1m以上の焼結ターゲット材であって、スパッタ面に引くことができる最長の線の全長として、該全長を50mm間隔で、アルキメデス法によって測定した相対密度が全域で98%以上となるMo系ターゲット材である。また、さらに、遷移金属元素を0.1〜50%原子含むMo合金の全長が1m以上の焼結ターゲット材であって、スパッタ面に引くことができる最長の線の全長として、該全長を50mm間隔で測定した遷移金属元素の含有量のバラツキが20%以下であるMo系ターゲット材である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、平面表示装置等の薄膜配線、薄膜電極等に用いられるMo合金薄膜の形成に使用されるMo系ターゲット材に関するものである。
現在、平面表示装置の一種である液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display、以下LCDという)の薄膜電極および薄膜配線等には、電気抵抗の小さいMo等の高融点金属膜が広く利用されている。そして、これら薄膜電極および薄膜配線等には、薄膜形成の製造工程中での耐熱性、耐食性の要求があるため、例えば、CrやWを添加したMo合金の適用が進んでいる。
上記のMo合金を配線として形成する方法としては、成分均質なターゲット材をスパッタリングによって形成する方法が一般的に有利とされている。そして、Mo合金のスパッタリングターゲット材に関しては、成分構成やターゲット材に含まれる不純物の低減等に関して様々な提案がなされている。
例えば、Crを1〜5wt%含有したMo−Cr合金スパッタリングターゲットが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、Wを20〜70原子%含有したMo−Wターゲットが開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、Nbおよび/またはVを2〜50原子%含有したMo合金が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平9−059768号公報 WO95−16797号公報 特開2002−327264号公報
上記の特許文献1乃至3にはMo合金ターゲット材に関して種々の製造方法が開示されているが、均質な大型の焼結ターゲット材を製造する方法に関しては何ら検討されていない。特に、全長が1m以上の長尺品の焼結ターゲット材おいては、それまでの小型のターゲット材に比べてスパッタした際に異常放電を原因とするスプラッシュが発生しやすいという問題があった。また、さらに全長が1m以上の長尺品のターゲット材においては、スパッタによって成膜された薄膜の成分が不均一になるという問題もある。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、異常放電の発生を抑制できる大型焼結品のMo合金ターゲット材を提供することである。
本発明者等は、上記課題の原因を種々検討した結果、スパッタ時の異常放電が発生しやすいのは、長尺焼結ターゲット材中の相対密度のバラツキに起因することを見出し、この相対密度のバラツキを抑制した新しいターゲット材の製造に成功した。
すなわち、本発明は、遷移金属元素を0.1〜50原子%含むMo合金の全長が1m以上の焼結ターゲット材であって、スパッタ面に引くことができる最長の直線を全長として、該全長を50mm間隔で、アルキメデス法によって測定した相対密度が全域で98%以上となるMo系ターゲット材である。
好ましくは、遷移金属元素を0.1〜50原子%含むMo合金の全長が1m以上の焼結ターゲット材であって、スパッタ面に引くことができる最長の直線を全長として、該全長を50mm間隔で測定した遷移金属元素の含有量比率のバラツキが20%以下であるMo系ターゲット材である。
また、好ましくは、スパッタ面の面積が1m以上であるMo系ターゲット材である。
本発明のMo系ターゲット材は、焼結ターゲット材の全長に亘って相対密度が98%以上と高い密度を実現できるため、スパッタ時の異常放電を抑制することが可能となる。
本発明の重要な特徴は、全長が1m以上の大型の焼結ターゲット材において、ターゲット材の全域において相対密度を98%以上に制御することに成功した点にある。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のMo系ターゲット材は、全長が1m以上の焼結ターゲット材であって、スパッタ面に引くことができる最長の直線を全長とし、該全長を50mm間隔で、アルキメデス法によって測定した相対密度が全域で98%以上となるように制御することが重要である。スパッタ面に引くことができる最長の直線を全長として、該全長を50mm間隔ごとで相対密度を確認することで、ターゲット材の全域おける相対密度をほぼ同定できるため、均一な相対密度の分布を有するMo系ターゲット材が得られたことになる。なお、相対密度を98%以上とするのは、98%を部分的にでも下回るとスパッタ時に異常放電が発生する可能性が高まるためである。
本発明において、スパッタ面に引くことができる最長の直線とは、図1に示すスパッタ面1が長方形形状のターゲット材であれば対角線2であり、図2に示すスパッタ面1が円形形状のターゲット材であれば直径相当の線3である。また、図3に示すスパッタ面1が楕円形形状のターゲット材であれば長径線4である。なお、図4に示す円筒形形状のターゲット材であれば、スパッタ面1に引くことができる最長の直線は線分Lである。
また、本発明のターゲット材が、遷移金属元素を0.1〜50原子%含むMo合金で全長1m以上の焼結ターゲット材としているのは、全長が1m以上の大型のMo合金ターゲット材を焼結によって作製する場合に、相対密度のバラツキを制御するのが困難なためである。
また、本発明のMo合金が遷移金属元素を含むものとしたのは、スパッタリングにより成膜された膜の特性として、純Moに対して耐食性を向上させるためである。遷移金属元素を0.1〜50原子%含むものと限定したのは、0.1原子%を下回る場合は純Moに対する耐食性の効果が十分に実現されないためであり、50原子%より高くなるとMo本来の性質を失うためである。なお、本発明における遷移金属元素としては、元素周期律表におけるIVa族、Va族およびVIa族の元素が、特にMoの耐食性を向上させる効果を有するため望ましい。
さらに、本発明においては、Mo系ターゲット材のスパッタ面に引くことができる最長の直線を全長として、該全長を50mm間隔で測定した遷移金属元素の含有量比率のバラツキが20%以下であることが望ましい。遷移金属元素の含有量比率のバラツキとは、本発明のMo系ターゲット材の所定組成に対して、遷移金属元素の最大の含有量比率と最少の含有量比率の差を示している。具体的には、50mm間隔で測定した所定領域における遷移金属元素の含有量比率の最大差を、設定組成の遷移金属元素の含有量比率で除した値で評価できる。また、前記の遷移金属元素の含有量比率のバラツキを20%以下に制御するのが望ましいとしたのは、前記の値が小さいほど遷移金属元素が均一に分散していることになり、ひいてはスパッタ時に均一な膜特性が期待できるからである。20%を超えると所定領域間の遷移金属元素の偏りが大きくなることから、スパッタにより成膜される膜内に局所的に濃度差として現れ、膜特性に差が生じるとともに膜のエッチング性に影響を及ぼすためである。
次に、本発明のMoターゲット材を作製するための好ましい方法を以下に説明する。
本発明のMo系ターゲット材の特徴は、前述の通り、焼結ターゲット材全域に亘って相対密度を98%以上として相対密度のバラツキを低減した点にある。本発明のターゲット材に含まれる遷移金属元素の原料粉末は、粒径、形状および比重といった粉末性状がMo原料粉末と異なるため、単純にMo原料粉末と遷移金属元素の原料粉末を混合しても均一な分散状態を得ることは困難である。
すなわち、Mo原料粉末は一般的に化学的な合成法により作製されるため粉末の粒度が細かく比表面積が小さいため流動性に乏しいという特徴を有しているが、一方、添加元素となる遷移金属元素の原料粉末は溶解、粉砕法により得られる場合が多く粉末の粒径が粗く流動性に富んでいるという特徴を有している。さらに、各遷移金属元素はMoとの間で比重も大きく異なるためMo原料粉末と混合する場合に部分的に偏りが生じるという欠点がある。このMo原料粉末と遷移金属元素の原料粉末の偏りは、上述した粉末性状の相違から焼結時の部分的な密度バラツキを発生させる可能性がある。
そこで、Mo原料粉末と遷移金属元素の原料粉末とを均一に分散させるため、原料粉末同士をV型混合機あるいはクロスロータリーミキサー等で混合後、圧縮成型処理により個々の原料粉末を相互異動しないように位置を固定した圧密体を作製し、再粉砕した造粒粉末を作製する。この造粒粉末の作製により、個々の造粒粉末自身で成分の均一分散が可能となる。よって、この造粒粉末を再度混合することにより、さらに原料粉末同士が均一に分散させることができる。
また、この造粒粉末の粒径の制御がその後の加圧焼結工程における焼結性の向上にとって重要である。一般に、微細な粉末同士で焼結する場合には、単位体積あたりの比表面積が大きくなるために焼結性に優れ相対密度を高めることができるものの、加圧容器への相対的な充填密度を高めることが困難である。一方、粗大な粉末では加圧容器への相対的な充填密度を高めることはできるが、焼結性が劣るために、最終的な焼結体の相対密度が向上しないという問題がある。そこで、極端に大きな造粒粉末が存在しないように制御する必要がある。造粒粉末の最大粒径は好ましくは5mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。
また、造粒粉末を加圧容器に充填する際、プレスによる加圧を実施しながら充填する方法、加圧容器に振動を付与しながら充填する方法、あるいはその両方を併用して充填する方法を採用すると、さらに高い充填密度を達成できるため、ターゲット材の全域に渡って相対密度のバラツキを低減し、98%以上を満たすのには、いずれかの充填方法を採用することが好ましい。
さらに、上述の造粒粉末を加圧容器に充填後脱気封止して加圧焼結法により焼結した焼結体を作製し機械加工するか、前記焼結体に熱間圧延等の塑性加工を施した後に所望の寸法のターゲット材を得る。造粒粉末を焼結することで、加圧焼結前の粉末自身で成分の均一な分散を実現でき、ターゲット材において、相対密度のバラツキを低減し、全域において98%以上の相対密度を達成することが可能となる。さらに、ターゲット材の全域に亘って成分組成のバラツキを抑制でき、遷移金属元素の含有量比率のバラツキを20%以下とすることが可能となる。
また、現在、LCDのパネルサイズの大型化に伴い、LCDの薄膜配線、薄膜電極に使用されるターゲット材も、スパッタ面の長さのみならず面積が1m以上となる大型品のターゲット材が必要とされてきているため、ターゲット材の全体に亘って相対密度98%以上に制御されたターゲット材は、スパッタ面の面積が1m以上の大型品のターゲット材であることがさらに好ましい。
本発明の実施例について以下に説明する。
平均粒径d50=6μmなるMo原料粉末、添加する遷移金属元素として平均粒径100μmのCr、Nbおよび平均粒径6.5μmのWの原料粉末を準備した。表1に示すMo合金を作製するため、Mo原料粉末と所定の遷移金属元素の原料粉末をV型混合機で10分間混合した。得られた混合粉末を冷間静水圧プレス(CIP)を用い265MPaで圧縮成形した圧粉体を作製した。この圧粉体をジョークラッシャーおよびディスクミルを使用して粉砕して造粒粉末を作製した。造粒粉末の粒径はディスクミルの歯間隔および分級機で制御し1mm以下とした。その造粒粉末を再度V型混合機で10分間混合した後、内径寸法で厚さ100mm×幅1250mm×高さ1450mmなる軟鋼製加圧容器に充填した。充填方法はこの加圧容器を厚さ100mm×幅1250mmが供給口になるよう振動装置上に設置し造粒粉末を直接充填した。充填密度はいずれも各Mo合金比重に対する相対密度で58〜59%であった。
造粒粉末を充填した加圧容器を450℃の温度下で真空脱気後封止して、熱間静水圧プレス(HIP)で加圧焼結した。HIPは1250℃、120MPaの条件下で5時間保持した。その後、得られた焼結体を切断および機械加工して、厚さ16mm×幅980mm×長さ1150mmのターゲット材を得た。さらに図5に示す通りターゲット材から約50mm間隔で15mm角の密度測定用テストピース30個を切り出し、水中置換法(アルキメデス法)により密度を測定し相対密度を評価した。その測定結果を表1に示す。
また、比較例として、上記で用いたMo原料粉末、Cr、NbおよびWの原料粉末を用いて、表1の試料No.4〜6に示す組成となるように秤量後、V型混合機で10分間混合し混合粉末を、そのまま内径寸法で厚さ100mm×幅1250mm×高さ1450mmなる軟鋼製加圧容器に充填して加圧焼結を行った。混合粉末の充填方法は、加圧容器を厚さ100mm×幅1250mmが供給口になるよう振動装置上に設置し混合原料を直接充填した。充填密度はいずれも各Mo合金比重に対する相対密度で42〜44%であった。次に、混合粉末を充填した加圧容器を、450℃の温度下で真空脱気後封止して、1250℃、120MPaの条件下で5時間保持して加圧焼結を行った。その後、得られた焼結体を切断および機械加工して、厚さ16mm×幅890mm×長さ980mmのターゲット材を得た。さらに、上記と同様にターゲット材から50mm間隔で15mm角密度測定用テストピースを26個切り出し、それぞれについて、水中置換法(アルキメデス法)により密度を測定し相対密度を評価した。測定結果を同様に表1に示す。
Figure 2005307226
表1に示したとおりMo合金の理論密度は各組成の組み合わせにより異なる。密度測定の結果、試料No.1〜3に示す本発明例ではいずれの部位においても相対密度98%以上を達成していることが分かる。一方、試料No.4〜6の比較例では全体としての相対密度は遜色ないものの局所的に98%を大きく下回る領域が存在することが分かる。
実施例1に記載のテストピースを用いて成分分析を行った。成分は高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma;ICP)により主要構成元素のみについて分析を行った。分析結果を表2に示す。
Figure 2005307226
表2から、本発明例では各テストピースのMoに添加した遷移金属元素の含有量比率の差が2.7原子%以内であり、遷移金属元素の含有量比率のバラツキが20%以内であるのに対して、比較例では遷移金属元素の含有比率の差が15原子%以上であり、遷移金属元素の含有比率のバラツキが40%を超えていることが分かる。
本発明のMoターゲット材の一例を示す模式図である。 本発明のMoターゲット材の一例を示す模式図である。 本発明のMoターゲット材の一例を示す模式図である。 本発明のMoターゲット材の一例を示す模式図である。 実施例1においてMoターゲット材から密度測定用テストピースを採取した位置を示す模式図である。
符号の説明
1.スパッタ面、2.対角線、3.直径相当の線、4.長径線、5.線分L、6.密度測定用テストピース採取位置

Claims (3)

  1. 遷移金属元素を0.1〜50原子%含むMo合金の全長が1m以上の焼結ターゲット材であって、スパッタ面に引くことができる最長の直線を全長として、該全長を50mm間隔で、アルキメデス法によって測定した相対密度が全域で98%以上となることを特徴とするMo系ターゲット材。
  2. 遷移金属元素を0.1〜50原子%含むMo合金の全長が1m以上の焼結ターゲット材であって、スパッタ面に引くことができる最長の直線を全長として、該全長を50mm間隔で測定した遷移金属元素の含有量比率のバラツキが20%以下であることを特徴とする請求項1に記載のMo系ターゲット材。
  3. スパッタ面の面積が1m以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMo系ターゲット材。
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