JP2005293948A - 発光体薄膜及び発光素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来に比して、更に発光輝度を向上させることができる発光体薄膜を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決する発光体薄膜は、アルカリ土類金属元素、13族金属元素、希土類元素及び硫黄を含有し、上記アルカリ土類金属元素と上記希土類元素との総量に対する上記希土類元素の含有割合が、10原子%以上である。希土類元素を従来では考え難かったレベルまで添加することにより、従来ではなし得なかったレベルの発光輝度を得ることができるようになった。
【選択図】 なし

Description

本発明は、発光体薄膜及び発光素子に関するものである。
電界発光(Electroluminescence;EL)現象を利用した無機物質を構成材料とする発光体層を備えた薄膜EL素子(以下、「無機EL素子」という。)は、素子寿命が長く且つ耐久性に優れるといった良好な特性を有している。そのため、近年、小型又は大型軽量のフラットディスプレイ用発光素子として、無機EL素子が盛んに研究されている。
図5は、従来の無機EL素子の代表的な構成の要部を示す斜視図である。EL素子20は、二重絶縁型薄膜EL素子であり、電気絶縁性を有する透明基板21上に、ストライプ状に設けられた下部電極層22、下部絶縁体層24、発光体層26、上部絶縁体層28、及びストライプ状に設けられた上部電極層30がこの順に積層されたものである。
透明基板21としては、一般にLCDやPDP(プラズマディスプレイパネル)等に用いられている青板ガラス等の透明基板が採用されている。また、下部電極層22は、通常、膜厚0.1〜1μm程度のITOから構成される。一方、上部電極層30は、Al等の金属から構成される。下部絶縁体層24及び上部絶縁体層28は、スパッタリングや蒸着等により形成された厚さ0.1〜1μm程度の薄膜であり、通常、Y、Ta、AlN、BaTiO等からなる。発光体層26は、一般に、発光中心となるドーパントを含む発光体からなり、その膜厚は通常0.05〜1μm程度である。
かかる構成の従来の無機EL素子では、下部電極層22及び上部電極層30の一方が行電極、他方が列電極とされ、両者の延在方向が互い直交するように配置されている。すなわち、両電極層22、30によりマトリックス電極が構成され、行電極と列電極との交差部における発光体層26が画素となる。このマトリックス電極によって構成される各画素に交流電源32から交流電圧又はパルス電圧が選択的に印加されることにより、発光体層26が電界発光し、その出射光が透明基板21側から取り出される。
このような構成を有する無機EL素子のうち、黄桃色発光のモノクロ薄膜ディスプレイは既に実用化されている。かかるディスプレイに採用された発光体層は、例えば、非特許文献1、2に記載されているような、母体材料がZnS、発光中心がMnである蛍光体(以下、「ZnS:Mn」のように表記する。)を含有したものである。
一方、無機EL素子をパソコン、テレビ等のディスプレイ用途に用いるためにはカラー化が必然的に要求される。そのためには、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色に対応して発光する蛍光体が必要となる。各色の発光が可能な蛍光体としては、青色発光蛍光体として、SrS:Ce、SrGa:CeやZnS:Tm、赤色発光蛍光体として、ZnS:SmやCaS:Eu、緑色発光蛍光体としてZnS:Tb、CaS:Ce等が知られている。しかし、これらの蛍光体には発光輝度及び色純度の両特性を同時に満足するものがなく、RGBそれぞれの純色の発光を得るためには、カラーフィルターを介在させて、特定波長の発光のみを選択的に取り出す必要があった。よって、かかる従来の無機EL素子を、例えばディスプレイ用途に用いるには、発光の強度(輝度)が不十分であった。
このような不都合を解消するために、例えば特許文献1には、薄膜エレクトロルミネッセンス(TFEL)素子の発光層に、MがBa,CaおよびSrからなる群から選択されたアルカリ土類元素またはZnであるとし、かつREが希土類元素であるとしたとき、MAl4−x:REの組成式によって表されるものであって、その組成式中のxが0.5≦x≦3.5の範囲の実数であり、yが1.5≦y≦2.5の範囲の実数であるアルミネート青色発光蛍光体材料が開示されている。この蛍光体材料は、高輝度でかつ色純度の優れた青色発光エレクトロルミネッセンス材料の提供を意図して提案されたものである。
特開2001−262140号公報 V. Marrello、Aare Onton、「Dependence of Electroluminescence Efficiency and Memory Effect on Mn Concentration in ZnS:Mn ACTEL Devices」、IEEE Transactions on Electron Devices、The IEEE Electron Devices Society、1980年9月、Vol. ED-27、No. 9、p. 1767-1770 W Tang、D.C. Cameron、「Electroluminescent zinc sulphide devices produced by sol-gel processing」、Thin Solid Films、Elsevier Sciences S.A.、1996年、Vol. 280、p. 221-226
しかしながら、ディスプレイに対して、近時、更なる高輝度化が切望されており、上記特許文献1に記載のものを始めとする従来の無機EL素子であっても、その要求を十分に満足するものではない。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、従来に比して、更に発光輝度を向上させることができる発光体薄膜及び発光素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねる過程において、特定の材料を組み合わせて用いた蛍光体中のそれらの材料の含有割合を、従来の蛍光体では輝度が低下するような数値範囲に調整した。その結果、それらの材料の含有割合に対する輝度の傾向が、従来の蛍光体で認められるものとは異なっていることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の発光体薄膜は、アルカリ土類金属元素、13族金属元素、希土類元素及び硫黄を含有し、前記アルカリ土類金属元素と前記希土類元素との総量に対する前記希土類元素の含有割合が、10原子%以上であることを特徴とする。
従来、発光体薄膜中の発光中心材料の含有割合(濃度)と輝度との相関性(以下、「濃度−輝度相関性」という。)について様々な研究がなされている。それらの研究の結果によると、発光体薄膜中の発光中心材料の濃度を単に増加させても、輝度が向上せず、むしろ低下する傾向にある。しかも、輝度が極大値を示す発光中心材料の濃度が、高くても数原子%程度であるとされている。
例えば非特許文献1では、ZnS:Mnで構成される発光体薄膜について濃度−輝度相関性を調べている。その結果、Mn濃度が0.1〜0.3質量%のところで発光効率が極大値となり、Mn濃度がそれより低く又は高くなるにつれて、発光効率が低下する傾向にあることを見出している(例えば、非特許文献1のFig.1参照。)。また、非特許文献2では、ZnS:Mn又はZnS:Tbで構成される発光体層を備えるEL素子について濃度−輝度相関性を検討している。その結果、Mn濃度(Mn/Zn)、Tb濃度(Tb/Zn)が、1原子%付近のところで輝度が極大値となり、これらの濃度が1原子%付近より低く又は高くなるにつれて、輝度が低下する傾向にあることを見出している(例えば、非特許文献2のFig.7、Fig.14参照。)。
従来の研究において、発光体薄膜の輝度が、発光中心材料の濃度の数原子%のところで極大値を示す要因として、発光中心材料の濃度消光が挙げられている。発光中心材料の濃度が高くなると、励起された発光中心材料の分子と未励起の発光中心材料の分子とが隣接する傾向にある。そのため、隣接する励起分子及び未励起分子間でエネルギーの授受が行われ、励起分子が発光することなく基底状態に戻ると考えられている。
このような濃度消光の現象については、従来様々な分野で報告されており、発光体薄膜や無機EL素子などの発光素子の分野においても、通常の技術常識として認識されているものである。したがって、従来、発光中心材料の濃度を比較的高めに設定した発光体薄膜等についての報告はなされていなかった。さらには、発光中心材料の濃度を比較的高めに設定すると、数原子%付近の濃度で発光中心材料を含有させた発光体薄膜等よりも高い輝度を示す、という報告もなされていなかった。
しかしながら、本発明者らは、発光体薄膜の構成材料として、アルカリ土類金属元素、13族金属元素、希土類元素及び硫黄を用いると、主な発光中心材料である希土類元素の含有割合を従来よりも高くしても、輝度の低下が認められないことを見出した。それどころか、むしろ輝度が急激に向上し、従来に比して、格段に高いレベルの発光輝度を達成可能であることを見出した。その要因はまだ十分に解明されていないものの、本発明者らは要因の一つとして以下のように推察している。ただし、要因はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る発光体薄膜を構成する母体材料は、例えばアルカリ土類金属元素としてBa、13属金属元素としてAl、希土類元素としてEuを用いると、本来的にはBaAlの結晶構造を形成していると考えられる。そして、Euは、この結晶構造中のBaサイトの一部と置換するようにして、固定された状態で配置されていると推測される。このようにEuを結晶構造中に組み入れると、Eu濃度が比較的低い場合は、Euが隣り合うBaサイトの両方に置換して配置される確率は低い。したがって、発光中心であるEuの濃度消光は生じ難いと考えられる。しかしながら、Eu濃度が増加するにしたがい、隣り合うBaサイトの両方にEuが置換して配置される確率が高くなる。これにより、Euの濃度消光の発生頻度が高くなり、発光体薄膜の発光輝度が減少することとなると推定される。
しかしながら、さらに、Eu濃度を増加させると、発光体薄膜中の各元素の構造的バランス(イオン半径など)や電気的バランス(電気的中性を維持するなど)に起因して、BaAlとは異なり、最初からEuが安定に配位された新たな結晶相が形成されると考えられる。そして、この新たな結晶相において、例えばEuが離れた位置に配位された状態が安定である等に起因して、Euの濃度消光が発生し難くなり、発光輝度が上昇すると考えられる。
本発明の発光体薄膜は、含まれる材料を上述のような構成とすることにより、その発光寿命が従来よりも向上する。これは、上述の新たな結晶相が形成され、その結晶相が従来のものよりも機械的・化学的安定性に優れているためと考えられるが、要因はこれに限定されない。
本発明の発光体薄膜は、アルカリ土類金属元素がBaであり、13族金属元素がAlであり、希土類元素がEuであると好ましい。このような元素を併せて発光体薄膜の構成材料に用いることにより、発光輝度及び発光寿命が更に向上する傾向にある。
本発明の発光素子は、互いに対向する電極間に1層以上の無機機能層を備えており、該無機機能層のうち1層以上が、アルカリ土類金属元素、13族金属元素、希土類元素及び硫黄を含有する発光体層であり、アルカリ土類金属元素及び希土類元素の総量に対する希土類元素の含有割合が、10原子%以上であることを特徴とする。かかる発光素子が上記課題を解決する要因は、本発明の発光体薄膜と同様のものであると、本発明者らは考えているが、要因はそれに限定されない。
また、本発明の発光素子は、発光体層に含まれる材料を上述のような構成とすることにより、その発光寿命が従来よりも向上する。これは、希土類元素を従来よりも多く含有することにより形成される新たな結晶相が、従来の結晶相よりも機械的・化学的安定性に優れているためと考えられるが、要因はこれに限定されない。
本発明の発光素子において、発光体層に含有されるアルカリ土類金属元素がBaであり、13族金属元素がAlであり、希土類元素がEuであると好ましい。このような元素を同時に発光体層の構成材料に用いることにより、本発明の発光素子は、発光輝度及び発光寿命が更に向上する傾向にある。
本発明によれば、従来に比して、更に発光輝度を向上させることができる発光体薄膜及び発光素子を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本実施形態の発光素子は図1に示す無機EL素子100である。図1に示す無機EL素子100は、トップ・エミッションタイプの二重絶縁型の無機EL素子であり、基板2上に、下部電極層3、下部絶縁体層4、発光体層5、上部絶縁体層6及び上部電極層7がこの順に積層されている。下部絶縁体層4、発光体層5及び上部絶縁体層6は、本発明にかかる無機機能層の具体例である。下部絶縁体層4は、さらに、基板側から厚膜絶縁体層(第1絶縁体層)42、第2絶縁体層44及び薄膜絶縁体層(第3絶縁体層)46が、この順で積層されてなるものである。また、下部電極層3及び上部電極層7は、一方が行電極、他方が列電極とされて、両者の延在方向が互いに直交するように配置されている。
このような構成を有する無機EL素子100においては、下部電極層3及び上部電極層7によりマトリックス電極が構成され、行電極と列電極との交差部における発光体層5が画素となる。このマトリックス電極によって構成される各画素に交流電源9から交流電圧又はパルス電圧が選択的に印加されることにより、発光体層5が電界発光し、その出射光が上部絶縁体層6及び上部電極層7を透過して外部に出射される。以下、無機EL素子100の各部材を構成する材料について説明する。
(基板)
基板2は、上部に無機EL素子100における各層を形成可能であり、また上方に形成された各層を汚染するおそれがないものであれば特に限定されず、無機EL素子100の形成の際に行われるアニール処理におけるアニール温度に耐え得る耐熱性を有していることが好ましい。
具体的には、耐熱温度又は融点が、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上、更に好ましくは800℃以上とされる。このような特性を有する基板用の材料としては、アルミナ(Al)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)チッ化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)等を主成分とするセラミックス基板やこれらセラミックス材料粉末をフィラーとしてガラス粉末を混合焼結させたガラスセラミックス基板、アルカリ土類結晶化成分を含む結晶化ガラス基板等が挙げられる。
(下部電極層)
下部電極層3は、複数の帯状電極が一定間隔でストライプ状に一定方向に延在するように、基板2上に配設されてなっている。この下部電極層3は、所定の高導電性を発現するものであり、アニール処理の際の高温や酸化性雰囲気によって損傷を受け難いものであると好ましく、更に上方に形成される各層との反応性が極力低いものであるとより好ましい。
具体的には、下部電極層3を構成する材料としては、金属材料が好ましく、例えば、Au、Pt、Pd、Ir、Ag等の貴金属、Au−Pd、Au−Pt、Ag−Pd、Ag−Pt等の貴金属合金、Ag−Pd−Cu等の貴金属を主成分とし卑金属元素が添加された合金が好ましい例として挙げられる。これらの金属材料を用いることにより、高温又は酸化性雰囲気に対する耐性が充分に高められる。
(下部絶縁体層)
下部絶縁体層4は、高輝度かつ低電圧駆動が可能な無機EL素子を実現するため、高誘電率でしかも高耐圧であると好ましい。本実施形態における下部絶縁体層4は、上述したように、下部電極層3上に形成された厚膜絶縁体層42、第2絶縁体層44、及び薄膜絶縁体層46が順に積層されてなる積層体である。この下部絶縁体層4の大部分を、厚膜絶縁体層42で形成することにより、下部絶縁体層として薄膜絶縁体層のみを用いた場合に比して100倍以上の高誘電率が達成される。
厚膜絶縁体層42は、いわゆる厚膜法により形成される絶縁体層、すなわち、粉末状の絶縁体材料を焼成して形成されるセラミック層である。この厚膜絶縁体層42の構成材料は特に限定されないが、例えば、BaTiO、(BaCa1−x)TiO、(BaSr1−x)TiO、PbTiO、PZT、PLZT等のペロブスカイト構造を持った(強)誘電体材料や、PMN(Pb(Mg1/3Nb2/3)O)等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料、BiTi12、SrBiTa等に代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNb等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料が好ましく用いられる。
これらのなかでは、より高い誘電率を達成でき、かつ焼成処理が比較的容易な観点から、BaTiOやPZT、PMN等のペロブスカイト構造の強誘電体材料がより好ましく、さらにそれらのなかでも化学組成中に鉛原子を含む誘電体材料が特に好ましい。このような鉛を含む誘電体材料は、酸化鉛の融点が888℃と低く、しかも酸化鉛と他の酸化物系材料(例えばSiOやCuO、Bi、Fe等)との間で600〜800℃程度の低温で液相が形成されるため、適切な焼結助剤を用いることにより低温での焼成が簡便となり、また、極めて高い誘電率が発現される。
このような鉛を含む誘電体材料としては、例えばPZTやPLZT(Laを添加したPbZrO−PbTiO固溶体)等のペロブスカイト構造誘電体材料、PMN(Pb(Mg1/3Nb2/3)O)等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料、PbNb等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料を好ましく用いることができる。これらは、800℃前後の焼成温度で比誘電率1000以上の誘電体層を簡易に形成することができ、特にPMN等の複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料を用いると、比誘電率が10000を超える高誘電率を示す誘電体を得ることも可能である。
上述の厚膜絶縁体層42上に形成された第2絶縁体層44は、厚膜絶縁体層42の表面を被覆するための層である。その誘電率は極力高い方が望ましく、好ましくは比誘電率が100以上、より好ましくは500以上とされる。このような高誘電率が発現される誘電体材料としては、上述した厚膜絶縁体層42に好適に用いられる材料と同種の材料が挙げられる。また、第2絶縁体層44の膜厚は、厚膜絶縁体層42表面に存在する微小な凹凸が十分に埋め込まれる程度の厚さであればよい。
第2絶縁体層44上に形成された薄膜絶縁体層46、及び後述する発光体層5上に形成された上部絶縁体層6は、発光体層5の両側界面における電子状態の制御を容易にし、発光体層5への電子注入を安定化させると共にその効率を高めるためのものである。これらの薄膜絶縁体層46及び上部絶縁体層6が発光体層5を中心にして対称的に配置されることにより、発光体層5の両界面の電子状態が対称的となるので、交流駆動時の発光特性の正負対称性が改善される。これらの薄膜絶縁体層46及び上部絶縁体層6は、絶縁耐圧を担保する機能を有する必要はなく、膜厚は比較的薄くてもよく、好ましくは10〜1000nm、より好ましくは20〜200nm程度とされる。
また、薄膜絶縁体層46及び上部絶縁体層6の比抵抗は、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは1010〜1018Ω・cmオーダーとされる。さらに、これらの層の構成材料は特に制限されないが、具体的には、比誘電率が3以上の物質から構成されると好適である。このような構成材料としては、例えば酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸化タンタル(Ta)、酸化イットリウム(Y)、ジルコニア(ZrO)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al)等が挙げられる。
(発光体層)
発光体層5は、本発明の発光体薄膜の一例であり、アルカリ土類金属元素、13族金属元素、希土類元素及び硫黄を含有するものである。
発光体層5に用いられるアルカリ土類金属元素としては特に限定されないが、より高いEL特性(輝度、発光寿命、駆動電圧、色純度など)をバランスよく得る観点から、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる1種以上の元素であると好ましく、Baであると更に好ましい。
発光体層5に用いられる13属金属元素としては特に限定されないが、上述と同様の観点から、Al、B、Ga及びInからなる群より選ばれる1種以上の元素であると好ましく、Al又はGaであると更に好ましく、Alであると特に好ましい。
上述の元素及び硫黄(S)は、主に発光体層5の母体材料を構成するものである。これらの元素の組合せは、特に限定されないが、輝度を一層向上させる観点から、Ba、Al及びSを組み合わせたバリウムチオアルミネート、Sr、Ga及びSを組み合わせたストロンチウムチオガレート、Ca、Ga及びSを組み合わせたカルシウムチオガレート又はSr、In及びSを組み合わせたストロンチウムチオインデートが好ましく、バリウムチオアルミネートであると更に好ましい。
これらの元素の組成比(含有割合)は、安定な結晶構造をとるための化学量論比であってもよいが、特に限定されない。よって、例えば母体材料としてバリウムチオアルミネートを用いる場合、各元素の組成比が、化学量論比であるBa:Al:S=1:2:4(原子比。以下同様。)、2:2:5又は1:4:7であってもよく、このような原子比から多少偏倚したものであってもよい。
発光体層5に用いられる希土類元素は主に発光中心として機能するものである。このような希土類元素としては、上述と同様の観点から、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Lu、Sm、Eu、Dy及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素であると好ましい。
例えば、バリウムチオアルミネート母体材料と組み合わせる希土類元素は、青色蛍光体とするためにはEu、緑色蛍光体とするためにはCe、Tb、Ho、赤色蛍光体とするためにはSm、Yb、Ndが好ましく、これらのうち、Euを用いて青色蛍光体とすることが最も好ましい。また、ストロンチウムチオガレート母体材料とEuとを組み合わせれば緑色蛍光体となり、ストロンチウムチオインデート母体材料又はバリウムチオインデート母体材料とEuとを組み合わせれば赤色蛍光体となる。
希土類元素の発光体層5中の含有割合は、アルカリ土類金属元素及び希土類元素の総量に対して、10原子%以上である。希土類元素の含有割合をこのような範囲とすることにより、本実施形態の無機EL素子100は、発光輝度を向上させることができる。同様の観点から、希土類元素の上記含有割合が、10〜90原子%であると好ましく、12〜75原子%であるとより好ましく、14〜50原子%であると更に好ましい。
また、発光体層5中に多少の酸素(O)が含有されていると好ましい。これにより、発光寿命(駆動寿命)の経時的な低下を更に防止することができる。これは、発光体層5中において、耐酸化性に優れる酸化物成分の存在により、硫化物成分と空気中の酸素との接触が十分に防止されるためと考えられるが、要因はこれに限定されない。発光体層5における酸素の含有割合は、硫黄成分(S)に対して5〜30原子%程度であると、一層発光寿命の経時的な低下を抑制できるので好ましい。
上述した各元素は、発光体層5中でイオンの状態で存在しててもよく、原子の状態で存在しててもよい。さらに、発光体層5は、上述した材料単独の又は2種類以上が混合した結晶層であってもよく、非晶質層であってもよく、それらが混在した状態であってもよい。
発光体層5の膜厚は、良好な発光特性を得ることができれば特に制限されるものではない。しかしながら、その膜厚が厚すぎると駆動電圧が上昇し、薄すぎると発光効率が低下する傾向にある。したがって、この膜厚は、好ましくは100〜2000nm、より好ましくは150〜1000nm程度である。
(上部電極層)
上部電極層7は、複数の帯状電極が一定間隔でストライプ状に下部電極層3の延在方向と直交する平面方向に延在するように、上部絶縁体層6上に配設されてなっている。この上部電極層7は、無機EL素子100がトップ・エミッションタイプであるため、透明導電性材料から構成される。かかる透明導電性材料としては、In、SnO、ITO、又はZnO−Alといった酸化物導電性材料等を用いることができる。上部電極層7の膜厚は、比抵抗を十分に低減する観点より、0.2〜1μmとすると好ましい。
上述した各層を構成する材料組成は、蛍光X線分析(XRF)、X線光電子分析(XPS)、TEM−EDS(Transmission Electronmicroscopy - Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)等により確認することができる。
以上説明した本実施形態の無機EL素子100は、従来に比して、更に発光輝度を向上させることができる。その要因としては、例えば以下のようなことが考えられる。
すなわち、本実施形態に係る無機EL素子の発光体層において、Eu濃度を従来よりも増加させると、発光体薄膜中の各元素の構造的バランス(イオン半径など)や電気的バランス(電気的中性を維持するなど)に起因して、BaAlなどとは異なる、最初からEuが安定に配位された新たな結晶相が形成されると考えられる。そして、この新たな結晶相において、例えばEuが離れた位置に配位された状態が安定である等に起因して、Euの濃度消光が発生し難くなり、発光輝度が上昇すると考えられる。
また、本実施形態の無機EL素子100は、発光寿命が従来よりも向上する。これは、希土類元素を従来よりも多く含有することにより形成される上述のような新たな結晶相が、従来の発光体層中の結晶相よりも機械的・化学的安定性に優れているためと推察されるが、要因はこれに限定されない。
このように構成された無機EL素子100を製造する方法の一例について以下に説明する。まず、表面研磨が施されたセラミックス基板、ガラスセラミックス基板、及び結晶化ガラス基板等から成る基板2を準備する。
次に、基板2上に、ストライプ状の下部電極層3を形成する。その方法は、特に制限されず、例えば、粉末金属ペースト、有機金属ペースト(レジネート金属ペースト)を用いた印刷法、あるいは一般に用いられるエッチプロセス等を用いて形成できる。
次いで、下部電極層3が形成された基板上に、下部絶縁体層4を形成する。この工程では、まず、厚膜絶縁体層42を形成した後、その上に溶液塗布焼成法により第2絶縁体層44を形成する。それから、その上に、薄膜絶縁体層46を気相堆積法によって形成する。気相堆積法としては、スパッタリング法や蒸着法等といったPVD法(物理的気相堆積法)やCVD法(化学的気相堆積法)を好ましく用いることができる。
厚膜絶縁体層42の形成方法として、具体的には以下の方法が挙げられる。まず、あらかじめセラミック材料粉末にバインダーや分散剤、溶剤等を混合した厚膜ペーストを、基板2上に塗布し、乾燥させて厚膜グリーンとする。次いで、この厚膜グリーンを所定の温度で焼成して絶縁体層を形成する。あるいは、ゾルゲル法、MOD(Metallo-Organic Decomposition)法等の溶液塗布焼成法等を用いてもよい。
第2絶縁体層44を形成する際に用いられる溶液塗布焼成法とは、第2絶縁体層44を形成するための絶縁体材料の前駆体溶液を厚膜絶縁体層231上に塗布し、その塗膜を焼成して第2絶縁体層44を得る方法である。かかる溶液塗布焼成法としては、ゾルゲル法やMOD(Metallo-Organic Decomposition)法を例示できる。
ゾルゲル法とは、一般には溶媒に溶解させた金属アルコキシドに所定量の水を加え、加水分解、重縮合反応させて得られる分子中にM−O−M結合を有するゾルの前駆体溶液を厚膜絶縁体層42上に塗布し、その塗膜を焼成することによって第2絶縁体層44を形成する方法である。また、MOD法とは、M−O結合を持つカルボン酸の金属塩等を有機溶媒に溶解させて調製した前駆体溶液を厚膜絶縁体層42上に塗布し、その塗膜を焼成することによって第2絶縁体層44を形成する方法である。なお、前駆体溶液とは、ゾルゲル法、MOD法等の膜形成法において原料化合物が溶媒に溶解して生成される中間化合物を含む溶液をいう。
これらのゾルゲル法とMOD法とは完全に別個に用いられる方法ではなく、相互に組み合わせて使用することが一般的である。例えば、PZTからなる薄膜を形成する際、Pb源(ソース)として酢酸鉛を用い、Ti、Zr源としてその金属アルコキシドを用いて溶液を調製することができる。
あるいは、ゾルゲル法とMOD法の二つの方法を総称してゾルゲル法と呼ぶ場合もあり、いずれの場合も前駆体溶液を厚膜絶縁体層42上に塗布し、焼成することによって第2絶縁体層44を形成することから、本発明においては、両方法を総称して「溶液塗布焼成法」という。また、本発明においては、サブミクロンサイズの絶縁体粒子と絶縁体の前駆体溶液とを混合した溶液も「前駆体溶液」に含まれるものとし、その溶液を厚膜絶縁体層42上に塗布して焼成する方法も溶液塗布焼成法に含まれるものとする。
このような溶液塗布焼成法を用いると、ゾルゲル法及びMOD法のいずれの場合も、第2絶縁体層44を構成する絶縁体化合物がサブミクロン以下のオーダーで均一に混合されるため、極めて低温の処理で緻密な絶縁体を合成することが可能となる。また、溶液塗布焼成法を用いると、前駆体溶液を塗布し焼成する工程を経るので、厚膜絶縁体層42上にたとえ微小な凹凸があったとしても、凹部上に形成される第2絶縁体層44は比較的厚くなり、逆に凹部以外の部分(凸部)に形成される第2絶縁体層44は比較的薄くされる。
また、溶液塗布焼成法によって、第2絶縁体層44を一回の塗布及び焼成で得るために、前駆体溶液に多価アルコールや分子中に極性基を有する高分子有機物からなる成膜助剤を加えてもよい。こうすれば、一回の塗布焼成で厚さ0.5〜1μmの第2絶縁体層44を形成しやすくできる。このような成膜助剤としては、例えば、1,3−プロパンジオールやネオペンチルグリコール等のアルカンジオール類、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のグリコール類、又は、ポリビニルピロリドンやポリビニルアセトアミド、ヒドロキシプロピルセルロース等の有極性高分子類等が挙げられる。
次に、発光体層5を構成する材料をペレット状に加工したものをターゲットとして用い、EB蒸着又はスパッタリングにより下部絶縁体層4上に発光体層5を形成する。具体的には、例えば、EB蒸着によりBaAl:Euからなる発光体層5を形成させる場合には、Al硫化物、及びEuを添加したBa硫化物の各ペレットを作製し、HSガスを導入したチャンバ内でこの2つのペレットをターゲットとして用い、下部絶縁体層4上にEB蒸着する。添加するEuは、金属、酸化物、フッ化物及び硫化物の形態のいずれであってもよい。
また、このように発光体層5を形成した後、アニール処理を施すことが好ましい。アニール処理は、発光体層5の形成直後、つまり発光体層5が露出した状態で行ってもよく、上部絶縁体層6又は上部電極層7を形成した後に実施してもよい。アニール処理は、大気中、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、硫黄蒸気雰囲気下、硫化水素雰囲気下又は酸素雰囲気下で実施することができ、酸化性雰囲気中で実施することが好ましい。この際の周囲圧力は、高真空〜大気圧で適宜選択される。
ここで、酸化性雰囲気とは、空気と同等又はそれより高い酸素濃度である状態をいう。酸化性雰囲気中でアニールを実施することにより、発光体層5の結晶化が促進され、発光輝度を更に向上させることができる。また、アニール温度は、通常500〜1000℃の範囲とされ、600〜800℃の範囲とすることが好ましい。さらに、アニール時間は通常1〜60分程度であり、5〜30分とすることが好ましい。アニール温度が500℃より低いか又はアニール時間が1分未満である場合には、発光輝度を充分に向上させ難い傾向にあり、アニール温度が1000℃より高いか又はアニール時間が60分を超える場合には、無機EL素子100における発光体層5以外の構成部材が損傷してしまうおそれがある。
次いで、発光体層5上に薄膜絶縁体層46の形成と同様にして上部絶縁体層6を形成させた後、その上にストライプ状の上部電極層7を蒸着法、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法、印刷焼成法等の公知の方法により形成して無機EL素子100を得る。
以上、本発明にかかる好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の無機EL素子の別の実施形態において、無機機能層として、発光体層5の片側又は両側にZnSを構成材料とするバリア層を設けてもよい。上述した発光体層5の構成材料は、比較的酸素が取り込まれやすい発光材料である。そこで、かかるバリア層を設けることにより、アニール時に絶縁体層及び/又は雰囲気中の酸素(O)が発光材料に混入することを防止することができる。これにより、BaAlなどの発光材料へのOの混入を十分に抑制することができるので、より所望の色の発光を呈する無機EL素子を得ることができる。
かかるバリア層はキャリア注入層としての役割も果たしている。これにより、発光体層への電子注入が増強され、その結果、無機EL素子の発光輝度及び発光効率が向上される。また、電子注入が容易になることから、有効な発光を生じるための電圧(輝度−電圧特性を示す曲線(L−Vカーブ)における発光しきい電圧)が低下し、且つ、その特性曲線の急峻性が高められるので、駆動回路素子の負荷が低減されると共に電力消費が低減され得る。
また、無機EL素子の上述の各層の間に、バリア層以外の別の層を更に配置させてもよい。別の層としては、上述の隣り合う層同士の密着性を増大させるための構成を有する層、又は、駆動時に隣り合う層の間に発生する応力を緩和するための構成を有す層等が挙げられる。
本発明の無機EL素子は、下部絶縁体層が、上述のような3層構造になっていなくてもよく、いずれか1層又は2層のみで構成されていてもよく、4層以上の絶縁体層で構成されていてもよい。
さらに、本発明の別の実施形態の無機EL素子において、発光体層が複数層形成されてもよい。その場合、複数の発光体層は互いに重なるようにして積層されてもよく、間に電極層を挟んで積層されてもよい。あるいは、膜厚方向の交差方向に並ぶようにして発光体層が形成されてもよい。これらの場合、複数の発光体層のうち一層が、上述したものと同様の発光体層であればよい。したがって、例えば、本発明の無機EL素子をRGBカラーディスプレイに用いる場合には、青色発光体層として上述した発光体層と同様のもの、赤色発光体層としてZnS:Mn、CaS:Euなどの公知の赤色発光材料を用いたもの、緑色発光体層としてZnS:Tb、CaS:Ceなどの公知の緑色発光材料を用いたもの、を備えることができる。こうすることにより、従来、他の発光色の発光体層と比較して輝度が低かった青色発光体層が本発明にかかるものとなるので、青色発光体層の輝度も十分に向上し、RGBバランスに優れたカラーディスプレイを得ることができる。
また、本発明の発光体薄膜は、無機EL素子の発光体層としてのみでなく、PDPやFEDなどの、その他の発光素子を用いたディスプレイに設けられる蛍光体層に用いることができる。これにより、青色の発色性に優れたディスプレイを形成することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図2の概略斜視図に示すような構造を有する発光素子である無機EL素子50を、以下の手順により作製した。まず、99.6%純度のアルミナ基板52上に、粉末金属ペースト状にしたAuをスクリーン印刷し、大気雰囲気、850℃で20分間焼成して、膜厚1μmの下部電極層53を形成した。
次いで、厚膜絶縁体層の材料としてPMN−PTを用い、これを粉末状にした後、焼結助剤としてPbO−CuOを添加したもの、バインダーとしてエチルセルロース、溶媒としてα−ターピネオール、さらに不飽和脂肪酸系分散剤、フタル酸エステル系可塑剤を混合して厚膜ペーストとし、下部電極層53を形成させた基板52上に塗布し塗膜を形成した。続いて、その塗膜を150℃で10分乾燥し、更に大気雰囲気、850℃で20分間焼成を行い、膜厚20μmの厚膜絶縁体層542を形成した。次に、Alペレットを蒸着源として用いた蒸着法により、厚膜絶縁体層542上にAlを構成材料とする膜厚20nmの薄膜絶縁体層546を形成し、下部絶縁体層54を得た。更にその上に、ZnSペレットを蒸着源として用いた蒸着法により、ZnSを構成材料とするバリア層581を形成し、積層体を得た。
次いで、Euを所定濃度添加したBaSペレットのEB源と、Al粉末のEB源とを有する真空槽内に、上述のバリア層581が形成された後の積層体を配置した。次に、真空槽内にHSガスを2sccmの流量で導入し、各EB源から原料となる反応ガスを同時に蒸発させ、425℃に加熱した上記積層体を回転させながら、下部バリア層581上にBaAl:Euを構成材料とする発光体層55を成膜させた。なお、この発光体層55の成膜速度は、0.5nm/秒になるようにEB蒸着条件を調節した。得られた発光体層55の膜厚は250nmであった。また、発光体層55にはBa、Al、S及びEuに加えて、槽内の酸素ガスに由来する酸素(O)も含まれていた。発光体層55中の各元素の組成及びBaとEuとの総量に対するEuの含有割合(Eu/(Ba+Eu))は、原子比でBa:Al:S:O:Eu=11.9:29.7:51.7:4.7:2.0、Eu/(Ba+Eu)=14原子%であった。
次いで、下部バリア層581と同様にして発光体層55上に膜厚100nmの上部バリア層582を形成し、薄膜絶縁体層546と同様にして上部バリア層582上に上部絶縁体層56を形成した。更に、上部絶縁体層56を形成して得られた積層体に対して、大気雰囲気中、700℃で10分間アニール処理を施した。そして、アニール処理後の上部絶縁体層56上に、ITOターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタリング法により、ITOを構成材料とする上部電極層57を形成し、下部電極層53及び上部電極層57をリード線で接続して実施例1の無機EL素子を得た。
(実施例2)
BaSペレット中のEu濃度を変化させた以外は実施例1と同様にして、実施例2の無機EL素子を得た。得られた素子の発光体層における各元素の組成及びEu/(Ba+Eu)は、原子比でBa:Al:S:O:Eu=10.6:30.6:51.4:5.0:2.4、Eu/(Ba+Eu)=19原子%であった。
(比較例1)
BaSペレット中のEu濃度を変化させた以外は実施例1と同様にして、比較例1の無機EL素子を得た。得られた素子の発光体層における各元素の組成及びEu/(Ba+Eu)は、原子比でBa:Al:S:O:Eu=12.5:29.5:52.5:4.3:1.3、Eu/(Ba+Eu)=9.4原子%であった。
(比較例2〜5)
BaSペレット中のEu濃度を変化させた以外は実施例1と同様にして、比較例2〜5の無機EL素子を得た。得られた素子の発光体層における各元素の組成及びEu/(Ba+Eu)は、表1に示すとおりであった。
Figure 2005293948
<発光輝度評価>
実施例1、2及び比較例1〜5の無機EL素子の両電極間に、変調電圧:100−250Vp、駆動周波数:120Hz、印加電圧波形:パルス(パルス幅:50μsec)、測定環境温度:23℃の条件で交流電圧を印加し、各電圧における発光輝度を測定した。比較する発光輝度は、各EL素子において1cd/mの発光が得られる電圧を発光しきい電圧として、その発光しきい電圧から更に60V印加した電圧(かかる場合の電圧を以下、「L60」と表記する。)における発光輝度を採用した。また輝度の数値は、比較例2のEL素子についてL60の輝度を1として、相対強度として表した。結果を表1に示し、Eu/(Ba+Eu)に対する輝度の相関性を図3に示す。図3において、菱形プロット201、202、203、204、205、206、207は、それぞれ、実施例1、2、比較例1、2、3、4、5の結果を示すものである。
<発光寿命評価>
実施例1及び比較例1、2の無機EL素子について、駆動電圧:180Vp、駆動周波数:1kHz、印加電圧波形:パルス(パルス幅:50μsec)、測定環境温度:23℃の条件で交流電圧を印可し、発光輝度の経時変化を測定した。輝度の数値は、電圧印加当初(0時間)の輝度を1として相対的に表した。結果を図4に示す。図4において、実線301、二点鎖線302、点線303は、それぞれ実施例、比較例1、2の結果を示すものである。
本発明の実施形態に係る発光素子の要部を示す概略斜視図である。 実施例に係る無機EL素子の要部を示す概略斜視図である。 実施例に係る無機EL素子における発光体層中のEu/(Ba+Eu)に対する輝度の相関性を示すグラフである。 実施例に係る無機EL素子の発光寿命を表すグラフである。 従来の無機EL素子の代表的な構成の要部を示す概略斜視図である。
符号の説明
2…基板、3…下部電極、4…下部絶縁体層、5…発光体層、6…上部絶縁体層、7…上部電極、100…無機EL素子。

Claims (4)

  1. アルカリ土類金属元素、13族金属元素、希土類元素及び硫黄を含有し、前記アルカリ土類金属元素と前記希土類元素との総量に対する前記希土類元素の含有割合が、10原子%以上であることを特徴とする発光体薄膜。
  2. 前記アルカリ土類金属元素がBaであり、前記13族金属元素がAlであり、前記希土類元素がEuであることを特徴とする請求項1記載の発光体薄膜。
  3. 互いに対向する電極間に1層以上の無機機能層を備えており、
    前記無機機能層のうち1層以上が、アルカリ土類金属元素、13族金属元素、希土類元素及び硫黄を含有する発光体層であり、
    前記アルカリ土類金属元素及び前記希土類元素の総量に対する前記希土類元素の含有割合が、10原子%以上であることを特徴とする発光素子。
  4. 前記アルカリ土類金属元素がBaであり、前記13族金属元素がAlであり、前記希土類元素がEuであることを特徴とする請求項3記載の発光素子。
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