JP2005290196A - 蛍光体材料、蛍光体薄膜及びその製造方法、発光素子、並びに、el素子 - Google Patents

蛍光体材料、蛍光体薄膜及びその製造方法、発光素子、並びに、el素子 Download PDF

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Abstract

【課題】 高温処理を行わなくても十分に高い発光輝度が得られる蛍光体材料、これを用いた蛍光体薄膜及びその製造方法、これを備える発光素子、並びに、EL素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 EL素子1は、基板2上に、下部電極3A、下部絶縁層4A、下部バッファ層6A、蛍光体層5(蛍光体薄膜)、上部バッファ層6B、上部絶縁層4B、及び上部電極3Bがこの順に積層されたものである。このEL素子1における蛍光体層5は、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに発光中心材料を含有する蛍光体材料からなる蛍光体薄膜により構成されている。また、この蛍光体薄膜においては、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00となっている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、蛍光体材料、これを用いた蛍光体薄膜及びその製造方法、これを備える発光素子及びEL(電界発光;Electro Luminescence)素子に関する。
EL素子は、蛍光体の構成材料の相違により無機EL素子と有機EL素子とに大別される。一般に、蛍光体に無機材料を用いる無機EL素子は、有機材料を用いる有機EL素子と比較して耐久性や発光寿命の点で優れた特性を有している。この無機EL素子としては、互いに対向する2つの電極の間に配置された一対の絶縁層間に蛍光体薄膜を備える、いわゆる2重絶縁型構造のEL素子が広く知られている。そして、時計やLCD(液晶ディスプレイ)等のバックライト、或いは車載モニタ等として用いられている。
このような無機EL素子は、上述したような優れた特性を有しているがゆえに、コンピュータやテレビ等のディスプレイ用途への適用が期待されている。無機EL素子をこれらのディスプレイ用途に用いるためにはカラー化が必須であることから、かかるカラー化を達成するために、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3原色に対応して発光する蛍光体の探求が盛んになされている。
例えば、青色蛍光体としては、母体材料がSrSであり、発光中心がCeであるもの(以下、「SrS:Ce」のように表記する。)や、ZnS:Tm等、赤色蛍光体としては、ZnS:SmやCaS:Eu等、緑色蛍光体としてはZnS:Tb、CaS:Ce等が知られている。
ところで、EL素子に用いられるこれらの蛍光体に必要とされる重要な特性の一つとして、発光の強度(輝度)がある。各蛍光体が高い発光輝度を有していると、これを用いたディスプレイは、その表示内容の視認性が良好となり、よって極めて実用性の高いものとなる。蛍光体の発光輝度は、通常、EL素子に印加する電圧を大きくすることで増大させることができるが、省電力化や素子の高寿命化等の観点からは、より低い電圧でより大きな発光輝度を達成できるものが望まれている。
このような高輝度発光が可能な蛍光体としては、例えば、特許文献1に記載されているような、蛍光体材料(例えばZnS:Mn)中に、ハロゲン化アルカリ(例えばKClやKBr)を更に添加したものが知られている。そして、当該文献においては、このようにハロゲン化アルカリを添加することで、蛍光体材料を単独で用いた場合よりも高い発光輝度を達成できることが示されている。
しかしながら、これまで、上述のような手段により高輝度発光が達成された素子としては、赤色及び緑色蛍光体を備えたものに限られていた。すなわち上記3原色に対応して発光する蛍光体のうち、青色蛍光体だけは、上述のものをはじめとする従来の手段によっても、十分に高い発光輝度を達成できるものが得られていなかった。このため、従来、上記3原色を高輝度で発光できる蛍光体をそろえることが困難であり、これらのEL素子を用いて作製したフルカラーディスプレイは実用に供し難いものであった。
そこで、近年では、上記SrS:Ceのように母体材料が2種の元素により表現される、いわゆる2元系の蛍光体に代わる青色蛍光体として、3種の元素により表現される母体材料を用いた3元系の蛍光体が提案されている。この3元系の青色蛍光体は、優れた輝度及び色純度を達成できる可能性があることから、無機EL素子を用いたフルカラーディスプレイへの適用が期待されるものである。
例えば、特許文献2には、MIIIII :RE(MIIは2族元素、MIIIは3族元素、XはSe又はS、REはCe又はEuの希土類付活剤)で表される3元系の蛍光体薄膜を作製する方法が開示されている。かかる方法においては、2族元素又は3族元素を化合物の状態で含む2種以上の蒸着源を用いて蒸着を行うことによって蛍光体薄膜を作製している。そして、このような方法によれば、化学量論組成からの組成比の偏倚が少ない青色蛍光体薄膜が得られることが示されている。
特開2000−104061号公報 米国特許5505986号明細書
しかしながら、上述した従来技術による蛍光体は、EL素子に適用する際に実用的な印加電圧の範囲で十分な輝度を得るために、いずれも高温で処理を行う必要があった。
例えば、上記特許文献1に記載の蛍光体は、添加したハロゲン化アルカリを蛍光体中で均一に拡散させるために、蛍光体材料からなる薄膜を形成した後、かかる薄膜を高温(例えば700〜1000℃)でアニールする必要があった。しかしながら、このような高温のアニール処理は、以下に示すような不都合を生じ易い傾向にあった。
すなわち、アニール処理は、通常、EL素子の構成を完成させてから全体を加熱することにより実施する場合が多い。しかし、上述したような高温条件では、EL素子に用いられる基板、電極等がダメージを受けるおそれがあるため、これらに用いる材料としては、そのような高温にも耐え得る高耐熱性の材料を採用しなければならなかった。その結果、製造可能なEL素子の種類が著しく制限されてしまっていた。
また、上記特許文献2に記載の蛍光体薄膜の製造方法においては、薄膜を形成させる被着体(基板、電極、絶縁層等)を高温に加熱しながら蛍光体材料の蒸着を行う必要があった。このように成膜時に被着体を高温に加熱すると、被着体を構成する各層間で物質の移動(マイグレーション)が生じやすくなり、これに起因して素子の特性が低下する場合があった。特に、電極や絶縁層の構成材料が成膜中の蛍光体薄膜に移動すると、EL素子の発光輝度、蛍光体寿命等の特性が顕著に低下してしまう傾向にあった。
加えて、上記特許文献2に記載の方法においては、2種以上の蒸着源を用いて良好な化学組成を有する薄膜を形成させるために、各蒸着源を厳密に温度制御する必要があった。このため、EL素子を製造するための操作、装置等が複雑となり、その製造工程が極めて煩雑なものになってしまっていた。
本発明はこのような事情にかんがみてなされたものであり、過度の高温処理を行わなくても十分に高い発光輝度が得られる蛍光体材料、これを用いた蛍光体薄膜及びその製造方法、これを備える発光素子、並びに、EL素子を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を行った結果、従来蛍光体材料として用いられる組成に、更に特定の金属及びハロゲンが添加された組成を有する蛍光体材料によって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の蛍光体材料は、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含み、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00であることを特徴とする。
上記構成を有する蛍光体材料は、従来の3元系の蛍光体材料の組成に加えて、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、並びにハロゲンを含有するものである。これらの金属元素及びハロゲンは、蛍光体材料において結晶粒の境界面に存在し、アニール時には、結晶の育成を促進するとともに、均一な結晶粒を形成するのに寄与しているものと考えられる。したがって、これらの元素が添加された上記蛍光体材料は、従来に比して低いアニール温度であっても大きく且つ均質な結晶を生じることができる。その結果、得られる蛍光体薄膜等は、低いアニール温度で処理された場合であっても、優れた発光輝度を発揮し得るものとなる。なお、作用は必ずしもこれらに限定されるものではない。
また、上述した添加元素による結晶の成長促進効果は、上記2族元素に対して原子比で0.05〜5.00、好ましくは0.10〜2.80となる量の上記金属元素が含有されている場合に極めて顕著である。すなわち、この原子比が0.05未満であるか又は5.00を超える場合は、かかる蛍光体材料からなる蛍光体薄膜の発光輝度が顕著に低下する。
より具体的には、上記金属元素として、アルカリ金属に属する金属元素が好ましい。アルカリ金属元素は、上述した金属元素のなかでも、結晶粒の形成を促進する効果に優れている。このため、アルカリ金属を含有する蛍光体材料は、より低いアニール温度でより高い発光輝度を達成し得るものとなる。
また、上記2族元素はBaであり、上記13族元素はAlであるとより好ましい。これらの元素を含む蛍光体材料は、BaAlで表される組成、又はこれに近い組成の母体材料を含有するものとなる。このような母体材料を有する蛍光体材料は、高輝度且つ色純度の高い青色発光を示すことが知られていることから、かかる構成を有する本発明の蛍光体材料も、これらの特性に優れる青色蛍光体となる。
本発明による蛍光体薄膜は、上記本発明の蛍光体材料から好適に構成されるものであって、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料からなり、且つ、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00ことを特徴とする。この原子比は、0.10〜2.80であると好ましい。
ここで、上述した発光中心材料とは、蛍光体中に存在している場合に、蛍光体に注入されたキャリア、又は、蛍光体に与えられた励起エネルギーとの相互作用によってエネルギーの高い状態に励起され、ここから低いエネルギー状態に戻る際に発光を生じ得る材料をいうものとする。
このような構成の蛍光体薄膜は、上記本発明の蛍光体材料からなるものであるため、従来よりも低い温度でアニールされたものであっても、十分に高い発光輝度が得られるという特性を有している。この蛍光体薄膜は、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料の原料組成物に対して、500℃以上700℃未満でアニール処理を行うことにより得られる蛍光体材料からなり、且つ、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00であるものであるとより好ましい。
また、本発明による発光素子は、上記本発明の蛍光体薄膜を備えて好適なものであり、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料からなり、且つ、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00である蛍光体薄膜を備えることを特徴とする。
この発光素子における蛍光体薄膜は、上記本発明の蛍光体材料からなるものであるため、蛍光体材料の原料組成物を比較的低温でアニールさせた場合であっても十分に高い輝度の発光が可能である。かかる構成を有する本発明の発光素子は、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料の原料組成物に対して、500℃以上700℃未満でアニール処理を行うことにより得られる蛍光体材料からなり、且つ、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00である蛍光体薄膜を備えるものであるとより好ましい。
さらに、本発明によるEL素子は、上記本発明の蛍光体薄膜を備える発光素子の一つであって、互いに対向する一対の電極と、この一対の電極間に配置されており、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料からなり、且つ、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00である蛍光体薄膜とを備えることを特徴とする。
上記EL素子においても、蛍光体薄膜は、低温でアニール処理を行うことにより形成された蛍光体材料からなるものであってもよい。すなわち、本発明のEL素子は、互いに対向する一対の電極と、この一対の電極間に配置されており、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料の原料組成物に対して、500℃以上700℃未満でアニール処理を行うことにより得られる蛍光体材料からなり、且つ、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00である蛍光体薄膜とを備えるものであるとより好ましい。このような構成を有するEL素子は、上記本発明の蛍光体薄膜を備えているため、実用的な印加電圧の範囲で十分な発光輝度を発揮し得るものとなる。
また、本発明の蛍光体薄膜の形成方法は、被着体の表面上に上記本発明の蛍光体薄膜を効率良く製造するための方法であって、2族元素、13族元素、硫黄及び発光中心材料を含む蛍光体材料の原料組成物と、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素のハロゲン化物とを、被着体の表面における同一領域上に堆積させて蛍光体材料層を形成する堆積工程と、蛍光体材料層に対してアニール処理を行うアニール工程とを含んでおり、堆積工程において、蛍光体材料の原料組成物及びハロゲン化物を、下記式(1);
Hal/Lu=0.005〜0.125…(1)
[式中、Halはハロゲン化物のモル数、Luは原料組成物のモル数をそれぞれ示す。]
で表される条件を満たすモル比で堆積させることを特徴とする。
上記方法においては、蛍光体材料の原料組成物とハロゲン化物とを被着体表面の同一領域に堆積させることによって蛍光体材料層を形成させた後、かかる層にアニール処理を施している。このときに形成される蛍光体薄膜は、本発明の蛍光体材料から構成されるものとなる。このため、上述の如く、従来に比して低い温度でアニールを行った場合であっても、得られる蛍光体薄膜は十分に高い輝度で発光可能なものとなる。
また、この製造方法においては、蛍光体材料層をアニールすることによって蛍光体薄膜を形成させている。このため、蛍光体材料層が、原料組成物及びハロゲン化物をある程度不均質に含有している場合であっても、このアニール処理によって蛍光体薄膜の組成を均質化することができる。よって、成膜時に基板をそれ程高温に加熱しなくてもよく、これにより成膜時における層間の物質移動を抑制できる。さらに、このようなアニール処理を行うことから、原料組成物及びハロゲン化物を堆積させる際の厳密な温度制御は必要なく、薄膜の製造操作をも簡略化することができる。
上記蛍光体薄膜の形成方法において、被着体上に蛍光体材料層を形成する方法としては、上記原料組成物と上記ハロゲン化物を共蒸着させる方法が好ましい。こうすることで、両者が被着体上に均一に堆積され、これによりさらに均質な組成を有する蛍光体薄膜が形成可能となる。
また、上記アニール処理は、500℃以上700℃未満で行うことが好ましい。上述の如く、蛍光体材料層は、上記本発明の蛍光体材料からなるものである。このため、このように従来に比して低い温度範囲でアニールを施した場合であっても、得られる蛍光体薄膜は、十分に高い輝度で発光可能なものとなる。
上述したEL素子は、以下に示す製造方法により好適に製造することができる。すなわち、第1の電極を含む被着体の表面上に、蛍光体薄膜を形成させる蛍光体薄膜形成工程と、第1の電極との間に蛍光体薄膜が位置するように第2の電極を形成する第2の電極形成工程とを少なくとも含んでおり、蛍光体薄膜形成工程は、上記被着体の上記表面における同じ領域上に、2族元素、13族元素、硫黄及び発光中心材料を含有する蛍光体材料の原料組成物と、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素のハロゲン化物とを堆積させて蛍光体材料層を形成する堆積工程、及び、この蛍光体材料層に対してアニール処理を行うアニール工程を有しており、且つ、堆積工程においては、蛍光体材料の原料組成物及びハロゲン化物を、下記式(2);
Hal/Lu=0.005〜0.125…(2)
[式中、Halはハロゲン化物のモル数、Luは原料組成物のモル数をそれぞれ示す。]
で表される条件を満たすモル比で堆積させる方法によって製造することができる。
このEL素子の製造方法においては、上述した蛍光体薄膜の製造方法と同様、上記堆積工程において、原料組成物及びハロゲン化物を共蒸着することにより堆積させることが好ましい。また、上記アニール工程において、500℃以上700℃未満でアニール処理を行うことが好ましい。
こうして得られたEL素子は、本発明の蛍光体薄膜を備えるものであるため、アニール温度が上述したような低い温度であるにもかかわらず、実用的な印加電圧の範囲で高い発光を示すものとなる。
本発明によれば、過度の高温処理を行わなくても十分に高い発光輝度が得られる蛍光体材料、これを用いた蛍光体薄膜及びその製造方法、これを備える発光素子、並びに、EL素子及びその製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、図面の位置関係に基づくものとする。
図1は、本実施形態のEL素子の要部を模式的に示す斜視図である。
EL素子1は、基板2上に、下部電極3A、下部絶縁層4A、下部バッファ層6A、蛍光体層5(蛍光体薄膜)、上部バッファ層6B、上部絶縁層4B、及び上部電極3Bがこの順に積層されたものである。また、下部電極3A及び上部電極3Bには、交流電源7が接続されている。以下、まず、このEL素子1を構成する各層について説明する。
(基板2)
基板2は、上部にEL素子1における各層を形成可能であり、また上方に形成された下部絶縁層4Aや下部バッファ層6Aを汚染するおそれがないものであれば特に限定されない。例えば、EL素子1の形成の際に行われるアニール処理におけるアニール温度に耐え得る耐熱性を有していることが好ましい。
具体的には、好ましくは500℃以上、より好ましくは700℃以上、更に好ましくは800℃以上の耐熱温度又は融点を有するものが挙げられる。このような特性を有する基板用の材料としては、ガラス基板やセラミックス基板、セラミックス材料粉末をフィラーとしてガラス粉末を混合焼結させたガラスセラミックス基板、アルカリ土類結晶化成分を含む結晶化ガラス基板等が挙げられる。
なかでも、安価で入手が容易であり、しかも可視領域の光の透過性が高いという特性を有するガラス基板が好ましい。通常、EL素子の製造には、例えば700℃を超えるような高温条件でアニール処理を行う必要があった。ところが、ガラス基板はこのような高温条件では耐久性に劣るため、従来、EL素子における基板としての適用は困難であった。これに対し、本発明のEL素子においては、後述するように、このような高温でのアニール処理が必要ないため、上記ガラス基板の適用が可能となる。このようなガラス基板としては、例えばプラズマディスプレイパネル(PDP)に好適に用いられるガラス基板(ガラス歪点:550〜600℃)が挙げられる。
(下部電極3A)
下部電極3Aは、複数の帯状電極が一定間隔でストライプ状に一定方向に延在するように、基板2上に配設された構造を有している。この下部電極3Aは、所定の高導電性を発現するものであり、アニール処理の際の高温や酸化性雰囲気によって損傷を受け難いものであると好ましい。さらに、上方に形成される絶縁層4Aやバッファ層6A、蛍光体層5等との反応性が極力低いものであるとより好ましい。
具体的には、下部電極3Aを構成する材料としては、金属材料が好ましく、例えば、Au、Pt、Pd、Ir、Ag等の貴金属、Au−Pd、Au−Pt、Ag−Pd、Ag−Pt等の貴金属合金、Ag−Pd−Cu等の貴金属を主成分とし卑金属元素が添加された合金が好ましい例として挙げられる。これらの金属材料を用いることにより、高温又は酸化性雰囲気に対する耐性が充分に高められる。
(絶縁層4)
絶縁層4(下部絶縁層4A及び上部絶縁層4B)は、下部電極3A及び上部電極3Bの間に配置されており、バッファ層6A,6Bに挟持された蛍光体層5を挟むように設けられている。これらの絶縁層4の厚さは、5〜150nmであると好ましく、10〜100nmであるとより好ましい。
このような絶縁層4としては2重絶縁型EL素子の絶縁層として用いられる絶縁材料から構成されるものであれば特に制限なく用いることができる。具体的には、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si)、酸化タンタル(Ta)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化イットリウム(Y)、ジルコニア(ZrO)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al)等が挙げられる。
(バッファ層6)
バッファ層6(下部バッファ層6A及び上部バッファ層6B)は、EL素子1において、下部電極3A及び下部電極3Bの間において一対の絶縁層4(下部絶縁層4A及び上部絶縁層4B)間に位置しており、蛍光体層5を挟むように配置されたものである。このバッファ層6は、キャリア注入層や拡散防止層として機能するものであり、例えば、蛍光体層5への電子注入を増強したり、また、EL素子の製造時にアニール処理を行う際に生じ易い、蛍光体層5への物質移動(マイグレーション)を抑制したりする効果を有している。
このようなバッファ層6としては、例えば、ZnSから構成されるものが、上記効果を良好に生じ得ることから好適である。また、これらのバッファ層6の厚さは、上記効果を有効に発揮する観点から、30〜300nmであると好ましく、50〜200nmであるとより好ましい。
(蛍光体層5)
蛍光体層5は、下部電極3Aと上部電極3Bとの間において下部絶縁層4A及び上部絶縁層4B間に位置しており、下部バッファ層6A及び上部バッファ層6Bに挟持された状態で配置されている。この蛍光体層5は、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに発光中心材料を含有する蛍光体材料からなり、金属元素/2族元素の原子比が0.05〜5.00、好ましくは0.10〜2.80である蛍光体薄膜により構成されたものである。
この蛍光体層5の厚さは、50〜700nmであると好ましく、100〜500nmであるとより好ましく、100〜300nmであるとさらに好ましく、250nm程度であると特に好ましい。この厚さが50nm未満であると、発光輝度が不都合なほどに低下してしまうおそれがある。一方、700nmを越えると、発光を生じるために必要な最小の印加電圧である発光しきい電圧が過度に上昇し、実用的な動作電圧範囲での発光が見られなくなる場合がある。
蛍光体層5を形成するための蛍光体材料に含まれる発光中心材料としては、通常、EL素子において発光中心元素として用いられる希土類元素又は遷移金属元素が適用できる。具体的には、希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Ho、Er、Tm、Lu、Sm、Eu、Dy、Yb等が挙げられる。また、遷移金属元素としては、Mn、Pb、Bi、Cr等が挙げられる。なかでも、後述する蛍光体薄膜の状態で電界発光させた場合に青色発光を示すEu、Ce、Cu等が好ましく、特に高輝度且つ色純度の高い青色発光が得られるEuが好ましい。なお、上述の如く、蛍光体材料中には、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素及び13族元素が含有されているが、発光中心材料として含有される金属元素は、これらに用いた金属元素とは異なる種類の元素であることが好ましい。
また、蛍光体材料が含有しているアルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素としては、アルカリ金属に属する金属元素が好ましく、特にLiが好ましい。さらに、2族元素としてはBaが好ましく、13族元素としてはAlが好ましい。さらにまた、蛍光体材料中のハロゲンとしては、Clが好ましい。
蛍光体層5を構成する蛍光体薄膜は、これらの元素を含有している蛍光体材料の原料組成物に対してアニール処理を行うことにより得られたものである。こうして形成された蛍光体薄膜においては、(金属元素/2族元素)の原子比が0.05〜5.00、好ましくは0.10〜2.80、より好ましくは0.20〜1.80、さらに好ましくは0.30〜1.40となっている。また、蛍光体薄膜が、このように蛍光体材料に対してアニール処理を行うことにより形成されたものである場合、そのアニール温度は、500℃以上700℃未満であると好ましく、500〜650℃であるとより好ましく、550〜600℃であると更に好ましい。
このようにして形成された蛍光体層5は、基本的には、MII XIII で表される母体材料及び発光中心材料を含む3元系の蛍光体となり、更に、この蛍光体中にアルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素及びハロゲン原子が添加された構成を有するものとなる。なお、上記組成式において、MIIは2族元素、MXIIIは13族元素を示し、l、m及びnは、上記組成式で表される化合物が化学的に安定に存在できる組成となる整数である。
この蛍光体層5は、上述した組成に加えて、当該薄膜中にM II XIII で表される化合物を更に含有するものであってもよい。なお、かかる組成式において、MII、MXIII、l、m及びnは上記と同義であり、Mはアルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素を示し、kは、上記組成式で表される化合物が化学的に安定に存在できる組成となる整数である。
このような構成を有する蛍光体層5(蛍光体薄膜)の好適な一例を以下に示す。例えば、蛍光体材料が、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素としてLi、2族元素としてBa、13族元素としてAl、発光中心材料としてEu、ハロゲン原子としてClを含むものである場合、この蛍光体材料に対してアニール処理を行うことにより得られた蛍光体層5は、BaAlで表される母体材料及び発光中心材料であるEuを基本的に含有している3元系の蛍光体に、Li及びClが更に添加された構成を有するものとなる。そして、これらの成分を含有している組成の好適な化学量論は、Li0.41Ba0.59Alとなる。
上述した構成の蛍光体層5は、BaAl:Euで表される蛍光体により基本的に構成されるものであることから、高輝度且つ色純度のよい青色発光が可能となる。また、蛍光体層5を形成するための蛍光体材料の原料組成物は、Li及びClを含有していることから、この原料組成物を比較的低い温度(例えば500℃以上700℃未満)でアニール処理して蛍光体層5を形成させた場合であっても、得られた蛍光体層5は、十分に優れた輝度及び色純度を達成し得るものとなる。
(上部電極3B)
上部電極3Bは、複数の帯状電極が一定間隔でストライプ状に下部電極3Aの延在方向と直交する平面方向に延在するように発光層5上に配設されてなっている。この上部電極3Bは、EL素子1の図示上方から発光を取り出すように透明導電材料から構成されている。すなわち、このような上部電極3Bを備えるEL素子1は、素子の上方から発光を生じるトップエミッション型の構成を有している。
このような上部電極3を形成するための透明導電材料としては、In、SnO、ITO又はZnO−Alといった酸化物導電性材料等を用いることができる。また、その厚さは、0.2μm〜1μmであると好ましい。
(EL素子1の製造方法)
次に、上述したEL素子1を製造する方法の実施形態について説明する。
まず、セラミックス基板、ガラスセラミックス基板又はガラス基板等から成る基板2を準備した後、この上にストライプ状に下部電極3Aを形成する。下部電極3Aの形成方法は特に制限されず、例えば、粉末金属ペースト、有機金属ペースト(レジネート金属ペースト)を用いた印刷法、或いは一般に用いられるエッチプロセス等を用いて形成できる。
次に、基板2上に、下部電極3Aを覆うように下部絶縁層4Aを形成する。下部絶縁層4Aの形成方法は特に限定されず、例えば、ゾルゲル法もしくは印刷焼成法などの公知の方法を挙げることができる。これらのなかで、印刷焼成法を用いる場合、下部電極3Aとなるペースト及び下部絶縁層4Aとなるペーストをそれぞれ印刷した後、これらを焼成することによって両層を形成させてもよい。さらに、このようにして下部絶縁層4Aを形成した後、蒸着法やスパッタリング法によって、例えばZnSからなる下部バッファ層6Aを形成させる。
続いて、下部バッファ層6Aが形成された積層体(被着体)における下部バッファ層6A上に、以下に示すようにして蛍光体層5を形成させる。以下、蛍光体層5の形成方法について詳細に説明する。
蛍光体層5は、上述した本発明の蛍光体材料からなる蛍光体薄膜により構成されるものであり、蛍光体材料を下部バッファ層6A上に堆積させて蛍光体材料層を形成した(堆積工程)後に、この蛍光体材料層に対してアニール処理を行う(アニール工程)方法により形成することができる。ここで、蛍光体材料層に対するアニール処理は、蛍光体材料層を下部バッファ層6A上に形成させた後すぐに行ってもよく、更に上方の層(例えば上部絶縁層4B等)を形成させた後に行ってもよい。
この方法において、堆積工程は、2族元素、13族元素、硫黄、及び発光中心材料を含む3元系の蛍光体を作製する際に通常用いられる蛍光体材料の原料組成物と、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素のハロゲン化物とを、下部バッファ層6Aにおける蛍光体層5を形成させるべき所定の同一領域上に堆積させるようにして実施する。
このとき、原料組成物及びハロゲン化物の堆積は、蒸着法により行うことが好ましい。前者の原料組成物の蒸着は、原料組成物に含まれる各成分を全て含有している単一の蒸発源を用いて行うこともできるが、上述の如く、この原料組成物は3元系の蛍光体用の原料であることから、2種以上の蒸発源を用いる多元蒸着法により行うことが好ましい。このような多元蒸着法によって、好適な化学組成を有する蛍光体薄膜を形成することが容易となる。蒸着の際における蒸発源の加熱方法は特に限定されないが、これらの蒸発量をより厳密に制御できることから、電子ビーム(EB)による加熱を行うことがより好ましい。
ここで、原料組成物及びハロゲン化物の堆積は、下部バッファ層6Aの所定の同一領域に同時に行うようにして行ってもよく、また、一方の材料を堆積させた後に、他方の材料をその上に堆積させるようにして行ってもよい。前者の場合、具体的には、両方の材料を共蒸着させることが好ましい。こうすることで、蒸着と同時に両者が均一に分布するようになり、好適な場合には、基板上で両材料の反応が生じ、これにより上述したM II XIII で表される組成を有する化合物が生成する。一方、後者の方法を適用する場合には、両材料を堆積した後に行う蛍光体層5のアニール処理によって両材料の拡散が生じ、これにより両者が均一に分布することとなる。
実施形態に係るEL素子1の製造方法(蛍光体薄膜の形成方法)においては、原料組成物及び添加材料の堆積は、原料組成物及びハロゲン化物を、下記式(1);
Hal/Lu=0.005〜0.125…(1)
で表される条件を満たすモル比で堆積させることが好ましい。なお、式中、Halはハロゲン化物のモル数、Luは原料組成物のモル数をそれぞれ示している。この、(Hal/Lu)のモル比は、0.01〜0.08とするとより好ましく、0.012〜0.062とするとより好ましい。このモル比がこれらの好適条件を満たすように原料組成物及びハロゲン化物を堆積させることによって、上述したような、蛍光体薄膜における(金属元素/2族元素)の原子比の好適な範囲(例えば、0.05〜5.00)を容易に達成できるようになる。
なお、原料組成物及びハロゲン化物の堆積量は、それぞれの蒸発源を加熱する程度を制御することにより調整することができる。例えばEBによる加熱を行う場合、それぞれの蒸発源に対するEBの照射時間を制御することによって両者の堆積量を適切に調節できる。
そして、蛍光体層5は、上述した堆積工程の後にアニール工程を行うことにより形成させる。この場合のアニール処理は、真空、NもしくはArなどの還元性雰囲気、空気等の酸化性雰囲気、S蒸気、HSなどの雰囲気下、500℃以上700℃未満の温度条件で行うことが好ましい。かかるアニール処理によって、蛍光体層5の結晶性が向上するとともに、層中の組成が好適に調整される。
ここで、上述したアニール温度(500℃以上700℃未満)は、従来3元系の蛍光体を作製するために必要とされるアニール温度に比して低い温度である。通常、このようなアニール温度で処理を行った3元系の蛍光体は、実用的な電圧範囲では殆ど発光が見られないものとなっていた。これに対して、EL素子1における蛍光体層5は、上記本発明の蛍光体材料(蛍光体薄膜)からなるものであるため、500℃以上700℃未満という低いアニール温度で処理された場合であっても、十分に高い発光輝度を発揮し得るものとなる。
なお、例えば、通常の印加電圧よりも低い電圧範囲で高い輝度を得たい場合など、所望とするEL素子の特性によっては、これよりも高い温度でアニール処理を行っても構わない。この場合、基板2、電極3、絶縁層4及びバッファ層6の各層には、そのような高温にも耐え得る特性を有している材料を選択して用いることが望ましい。
ここまで述べた蛍光体層5の形成方法の好適な一例を以下に示す。すなわち、まず、堆積工程において、蛍光体材料の原料組成物の蒸発源としてBaSにEuを添加したペレット、及び、粉状のAlを用い、添加材料の蒸発源としてLiClを用い、これらを電子ビームにより共蒸着させて、蛍光体材料層を形成する。次いで、アニール工程において、蛍光体材料層に対して500℃以上700℃未満でアニール処理を行う。このようにして、上述した好適例である、BaAl:Euからなる3元系の蛍光体に、Li及びClが更に添加された状態の蛍光体層5(蛍光体薄膜)が得られる。
本発明によるEL素子1の製造においては、このようにして蛍光体層5を形成させた後、その上に、上部バッファ層6B及び上部絶縁層4Bを、上述した下部バッファ層6A及び下部絶縁層4Aの形成方法とそれぞれ同様にして形成させる。そして、上部絶縁層4B上に、下部電極3Aのストライプ方向に対して直交する方向に、上部電極3Bをストライプ状に形成してEL素子1を完成させる。上部電極3Bの形成方法としては、従来公知の方法が適用でき、例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、ゾルゲル法もしくは印刷焼成法が挙げられる。
なお、EL素子は、必ずしも上述したような構成に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の形態を有していてもよい。
例えば、EL素子としての特性(輝度、色純度、素子寿命等)を向上させる観点から、EL素子は、上述した各層に加えて、他の層を更に備えるものであってもよい。具体的には、例えば、EL素子1における下部電極3Aと下部絶縁層4Aとの間に、厚膜絶縁体層が更に設けられていてもよい。こうすることで、蛍光体層5へのキャリア注入をさらに促進することや、蛍光体層5の平坦化を図ることができ、輝度等の特性がさらに向上する効果が得られる。このような厚膜絶縁体層は、セラミック材料を構成材料とするものであると好ましい。
セラミック材料としては、例えば、PbTiO、PZT、PLZT等のペロブスカイト構造を持った(強)誘電体材料や、PMN(Pb(Mg1/3Nb2/3)O)等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料、BiTi12、SrBiTa等に代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNb等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料等が挙げられる。なお、「PZT」とは、Pb(ZrTi1−x)Oを示す。
この厚膜絶縁体層は、例えば、予めセラミック材料の粉末にバインダー、溶剤等を混合した厚膜ペーストを基板2上に下部電極3Aを覆うように塗布した後、乾燥させて厚膜グリーンとし、その後、この厚膜グリーンを焼成する方法や、ゾルゲル法、MOD(Metallo−organic decomposition)法等により形成することができる。
さらに、本発明のEL素子は、電極、絶縁層、蛍光体層等の隣り合う各層の間に、密着性を上げるための層、応力を緩和するための層、反応を制御するための層など、各種中間層が設けられたものであってもよい。さらに、EL素子は、上述したトップエミッション型に限定されず、例えば、基板及び下部電極を透明材料から構成することによって、素子の下方から発光が見られるいわゆるボトムエミッション型のEL素子としてもよい。
さらにまた、上記構成を有するEL素子1は、必ずしもバッファ層6を備えるものでなくてもよい。上述したように、従来の3元系の蛍光体を備えるEL素子においては、成膜時又はアニール時に高温で処理を行うと、EL素子の各層間で物質の移動(特に、蛍光体層への物資移動)が生じることがあった。こうなると、EL素子の輝度や素子寿命等の特性が低下する傾向にある。このため、従来は、このような物質移動を抑制するために、蛍光体層の両側に拡散防止層を設けることが多かった。これに対して、本発明によるEL素子は、その製造に際して従来よりも低いアニール温度を採用可能であることから、上述したような層間の物質移動が生じ難い。このため、物質移動を抑制する目的で形成させるバッファ層は省略することもできる。
なお、本実施形態においては、本発明の蛍光体材料及び蛍光体薄膜を用いた発光素子の好適な例として上述したEL素子を説明したが、これらが適用される発光素子は必ずしもEL素子に限定されず、例えばプラズマディスプレイパネル(PDP)等の蛍光体として応用することもできる。この場合も、蛍光体層を形成する際のアニール温度を低下させることができ、素子の構成及び製造工程を簡略化できる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[蛍光体材料のPL測定]
まず、本発明の蛍光体材料により得られる発光の程度を評価するため、蛍光体材料のPL(フォトルミネセンス)強度を測定した。
<PL測定用試料の作製>
(実施例1)
Si基板上に、発光中心材料となるEuSを5.0mol%添加したBaS焼結体をEB電子銃で加熱して供給するとともに、AlとMnClを抵抗加熱して供給し、硫化水素をフローしながら3源の蒸発レートを制御することによって、蛍光体材料を堆積させて、BaAl:Euで表される蛍光体にMnClが添加された状態のPL測定用試料を形成した。得られたPL測定用試料に含まれるMn/Baの原子比をICP(高周波誘導結合プラズマ)及びXRF(蛍光X線)により測定したところ、0.40であった。
(実施例2〜4)
MnClに代えて、LiCl、LiF及びEuClを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてPL測定用試料を作製した。LiCl、LiF及びEuClを用いた場合が、それぞれ実施例2、3及び4に該当する。なお、実施例2〜4のPL測定用試料におけるLi/Ba又はEu/Baの原子比は、それぞれ0.7、0.6及び0.05であった。
(比較例1)
MnClを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてPL測定用試料を作製した。
<PL測定>
実施例1〜4及び比較例1で得られたPL測定用試料に、励起光として発振波長325nmのHe−Cdレーザーを照射することによりPL測定を行った。得られた結果をまとめて図2及び図3に示す。図2は、各PL測定用試料で得られた波長に対する発光強度(相対値)を示すグラフである。また、図3は、図2におけるL4及びL5を拡大して示すグラフである。図2及び図3中、L1は実施例1、L2は実施例2、L3は実施例3、L4は実施例4、L5は比較例1のPL測定用試料を用いて得られた結果をそれぞれ示している。
図2及び図3より、MnCl、LiCl、LiF及びMnClが添加された実施例1〜4の蛍光体材料は、これらの添加を行わなかった比較例1の蛍光体材料に比して大きなPL強度を示すことが確認された。これにより、これらの添加は、蛍光体材料の発光強度を高め得ることが判明した。
[Li化合物の添加による発光輝度の変化の測定]
<EL素子の作製>
(実施例5)
まず、基板2であるSiウェハ上に、Auを粉末金属ペースト状としたものをスクリーン印刷した後に焼成して下部電極3Aを形成した。次に、Alペレットを用いた蒸着法により、下部電極3A上にAlからなる厚さ20nmの下部絶縁層4Aを形成した後、その上にZnSペレットを用いた蒸着法によってZnSからなる厚さ100nmの下部バッファ層6Aを形成した。
次いで、Euを5.0モル%添加したBaS(BaS:Eu)からなるペレット、Alからなるペレット、及び、LiClからなるペレットを入れたチャンバ内に、下部バッファ層6Aが形成された後の積層体(被着体)を入れた。その後、チャンバ内にHSガスを導入しながら各ペレットに電子ビーム(EB)を照射してこれらを同時に蒸発させ、各ペレットの材料を下部バッファ層6A上に共蒸着(堆積)させ、蛍光体層5となるべき厚さ250nmの蛍光体材料層を形成した。
蛍光体材料層の形成後、その上にZnSペレットを用いた蒸着法によってZnSからなる厚さ100nmの上部バッファ層6Bを形成し、さらに、上部バッファ層6B上に、Alペレットを用いた蒸着法によりAlからなる厚さ30nmの上部絶縁層4Bを形成した。その後、この上部絶縁層4B形成後の積層体に対して600℃でアニール処理を行うことで、蛍光体材料層から蛍光体層5を形成させた。そして、上部絶縁層4B上に、ITOターゲットを用いたRFマグネトロンスパッタリング法により厚さ400nmのITO透明電極(上部電極3B)を形成して、図1に示す構造のEL素子を得た。
なお、実施例5においては、蛍光体材料層を形成させる際のLiClの蒸着量(堆積量)を、BaS:Eu及びAiの合計モル量に対して3.9mol%に設定した。そして、得られたEL素子における蛍光体層5中のLi及びBaの含有量を、ICP及びXRFにより測定したところ、Li/Baの原子比は0.69であった。
(実施例6)
LiClの蒸着量を11.7mol%としたこと以外は実施例5と同様にしてEL素子を製造した。得られたEL素子の蛍光体層5におけるLi/Baの原子比は2.13であった。
(実施例7)
LiClに代えてLiFを用いたこと以外は、実施例5と同様にしてEL素子を製造した。なお、実施例7においては、LiFの蒸着量を3.4mol%とした。また、得られたEL素子の蛍光体層5におけるLi/Baの原子比は、0.63であった。
(比較例2)
LiClからなるペレットを用いなかったこと以外は実施例5と同様にしてEL素子を製造した。
<発光輝度の測定>
実施例5〜7及び比較例2で得られたEL素子を用い、以下に示す方法で各素子の発光輝度を測定した。すなわち、各素子における下部電極3A及び上部電極3Bにそれぞれリード線を接続した。そして、このリード線を介して両電極に、変調電圧:L60、駆動周波数:120Hz、印加電圧波形:パルス(パルス幅:100μs)、測定環境温度:25℃の条件で交流電圧を印加して各素子に発光を生じさせて、各素子に生じた発光の輝度(cd/m)を測定した。得られた結果を図4にまとめて示した。
図4は、実施例5〜7及び比較例2の各EL素子を用いて得られた印加電圧に対する発光輝度の変化を示すグラフである。図4中、L11は実施例7、L12は実施例5、L13は実施例6、L14は比較例2のEL素子を用いて得られたグラフをそれぞれ示している。
図4より、蛍光体層5中にLiCl又はLiFを添加した実施例5〜7のEL素子によれば、これらを添加しなかった比較例2のEL素子と比較して、極めて高い発光輝度が得られることが確認された。
[蛍光体層中のLi/Ba比による発光輝度の変化の測定]
<EL素子の作製>
(実施例8)
下部バッファ層6A上に堆積させる、BaS:Eu及びAlの合計モル数に対するLiClのモル数の比(Hal/Lu)を、0.005〜0.125の間で変化させて、種々のLi/Baの原子比を有する蛍光体層5を形成したこと以外は、実施例5と同様にして各種のEL素子を作成した。
<発光輝度の測定>
得られた複数のEL素子のうち、Li/Baが原子比で、0.15、0.3、0.69、1.00、2.13、3.56であったものを選択し、これらのそれぞれに、変調電圧:L60、駆動周波数:120Hz、印加電圧波形:パルス(パルス幅:100μs)、測定環境温度:25℃の条件で交流電圧を印加して各素子に発光を生じさせて、各素子に生じた発光の輝度(cd/m)を測定した。得られた結果を図5に示す。
図5は、蛍光体層におけるLi/Baの原子比に対する発光輝度の値を示すグラフである。図5中、上述した各EL素子の結果は丸で示されている。なお、図5中には、参考として実施例7及び比較例2のEL素子を同様の条件で発光させた場合の値がそれぞれ白抜き四角及び黒塗り四角で表されている。
図5より、EL素子は、蛍光体層におけるLi/Baの比が0.15〜2.13である範囲で特に高い発光輝度を示すことが確認された。
本実施形態のEL素子の要部を模式的に示す斜視図である。 各PL測定用試料で得られた波長に対する発光強度を示すグラフである。 図2におけるL4及びL5を拡大して示すグラフである。 実施例5〜7及び比較例2の各EL素子を用いて得られた印加電圧に対する発光輝度の変化を示すグラフである。 蛍光体層におけるLi/Baの原子比に対する発光輝度の値を示すグラフである。
符号の説明
1…EL素子、2…基板、3A…下部電極、3B…上部電極、4A…下部絶縁層、4B…上部絶縁層、5…蛍光体層、6A…下部バッファ層、6B…上部バッファ層、7…交流電源。

Claims (9)

  1. アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含み、
    前記金属元素/前記2族元素の原子比が0.05〜5.00である、
    ことを特徴とする蛍光体材料。
  2. 前記金属元素は、アルカリ金属に属する金属元素であることを特徴とする請求項1記載の蛍光体材料。
  3. 前記2族元素はBaであり、前記13族元素はAlであることを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光体材料。
  4. アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料からなり、且つ、前記金属元素/前記2族元素の原子比が0.05〜5.00である、
    ことを特徴とする蛍光体薄膜。
  5. アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料からなり、且つ、前記金属元素/前記2族元素の原子比が0.05〜5.00である蛍光体薄膜を備える、ことを特徴とする発光素子。
  6. 互いに対向する一対の電極と、
    前記一対の電極間に配置されており、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素、2族元素、13族元素、硫黄、ハロゲン、並びに、発光中心材料を含む蛍光体材料からなり、且つ、
    前記金属元素/前記2族元素の原子比が0.05〜5.00である蛍光体薄膜と、
    を備えることを特徴とするEL素子。
  7. 被着体の表面上に蛍光体薄膜を形成する方法であって、
    2族元素、13族元素、硫黄及び発光中心材料を含む蛍光体材料の原料組成物と、アルカリ金属、希土類金属及び遷移金属のうちのいずれか一種に属する金属元素のハロゲン化物とを、前記被着体の前記表面における同一領域上に堆積させて蛍光体材料層を形成する堆積工程と、
    前記蛍光体材料層に対してアニール処理を行うアニール工程と、を有し、
    前記堆積工程において、前記原料組成物及び前記ハロゲン化物を、下記式(1);
    Hal/Lu=0.005〜0.125…(1)
    [式中、Halはハロゲン化物のモル数、Luは原料組成物のモル数をそれぞれ示す。]
    で表される条件を満たすモル比で堆積させる、
    ことを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
  8. 前記堆積工程において、前記原料組成物及び前記ハロゲン化物を共蒸着することにより堆積させることを特徴とする請求項7記載の蛍光体薄膜の形成方法。
  9. 前記アニール処理を、500℃以上700℃未満で行うことを特徴とする請求項7又は8記載の蛍光体薄膜の製造方法。
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