JP2004296136A - 積層薄膜el素子およびその製造方法並びにelパネル - Google Patents

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Abstract

【課題】積層薄膜蛍光体による高輝度、高色純度の白色光および、高輝度高色純度の白色光を使用した、カラーELパネルを提供する。
【解決手段】第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層とを有する積層薄膜EL素子であって、前記第一の薄膜蛍光体層は、次の組成式で表される薄膜蛍光体層を有し、
Zn1−xMgS:Mn (0.01≦x≦0.8, 0.1≦y≦1 ここでyは全体の元素量に占めるyの元素比を示す。)
前記第二の薄膜蛍光体層は、次の組成式で表されるバリウムチオアルミネートを主成分とする薄膜蛍光層であることを特徴とする積層薄膜EL素子。
BaAlS:Eu (0.05≦a≦0.625, 0.25≦b≦0.63 0.2≦c≦1.2 ここでcは全体の元素量に示すcの元素比を示す。)
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、白色発光を示す積層化された蛍光体層を有する素子と、これを用いたELパネルおよびEL素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
EL素子は、電界の印加によって蛍光体が発光する現象、すなわちエレクトロルミネッセンス(ElectroLuminescence;以下「EL」と表記する。)現象を利用した素子であり、例えば液晶ディスプレイや時計のバックライトなどとして実用化されている。
【0003】
このEL素子の中でも薄膜EL素子は、近年フラットパネルディスプレイへの応用が期待され、盛んに研究されている。
薄膜EL素子は、マンガンを添加した硫化亜鉛層からなる蛍光体薄膜を2つの絶縁体層で挟み込んだ構造を用いたものが、黄橙色発光モノクロ薄膜ELディスプレイとして、すでに実用化されている。
【0004】
現在カラーELパネルの構造として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光色を呈するEL素子を順次積層または並置した構造(以下、「パターン化発光層構造」と表記する。)、もしくは白色発光EL素子とカラーフィルターを組み合わせた構造のもの等が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
パターン化発光層構造のディスプレイにおいては、色純度の高い赤色、緑色、青色の単色発光素子が必要とされ、各色すべてにおいて盛んな材料開発が行われているが、実用化には至っていない。
【0006】
白色発光EL素子とカラーフィルターを組み合わせた構造も、カラーELディスプレイの応用範囲を拡大させるための検討がなされた。その白色発光EL素子としては、SrS:Ce,Euベースの蛍光体材料を用いた単一構造や、SrS:CeとCaS:Eu、またZnS:MnとSrS:Ceを順次積層して用いる多層構造が提案され、研究されてきた。
【0007】
単一構造のものは1つの層で広い発光波長領域のスペクトルにより白色を呈するのに対し、多層構造のものは複数層中のそれぞれの層の発光の合成により白色の発光を放射する。
【0008】
具体的には、単一構造の中でも従来Prを発光中心として添加したZnS:Pr薄膜が知られている。このZnS:Pr薄膜は、発光スペクトルが輝線で構成されているため、薄膜干渉効果が現れて視野角依存性が低く、また輝度も低い。またSrS:Ceの青緑色をベースにEu、Mnなどの赤色成分となる元素を付加する方法で、様々な白色蛍光体も実現されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
このような中でもSrS:Ceベースの白色蛍光体薄膜は、発光スペクトルが、赤色、緑色、青色の波長をバランス良く発光し、白色発光としては理想的な材料といえるが、輝度が低いという問題がある。また、得られる白色も黄色に近い、いわゆるegg−shell ホワイトであり、人間工学的立場からは、ペーパーホワイトすなわちCIE色度座標でx=0.3、y=0.3に近いものはほとんど存在しなかった。
【0010】
一方、多層構造の白色発光素子は、発光の合成により白色発光とするものであるから、色純度の良い白色光を得るには、光の三原色をバランス良く抽出可能な発光素子が望まれる。赤色、緑色、青色の光の波長が広範囲でかつ輝度の高いものが理想とされる。
【0011】
例えば、▲1▼SrS:CeとCaS:Eu、▲2▼ZnS:MnとSrS:Ceを積層して用いるものがある(例えば、非特許文献1および特許文献1参照)。
しかし、▲1▼の構造体では、Paper−Whiteで色純度は良いものの、輝度が小さく、▲2▼の構造体では、輝度はあるものの色純度が悪くYellowish−whiteとなってしまう。また、白色発光素子としては、輝度と色純度のバランスが悪く、カラーフィルターを用い分光して赤色、緑色、青色の3原色光を取り出すディスプレイとして、充分な輝度、色度の白色発光EL素子が得られなかった。
【0012】
【非特許文献1】
ディスプレイ アンド イメージング 1994,vol.3「カラーディスプレイの最近の進歩」小野義正pp.159〜171
【特許文献1】
特開平8−273833号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、積層薄膜蛍光体による色純度の高い、高輝度白色発光素子および、その製造方法、またそれを使用したカラーELディスプレイを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、青色発光材料を主成分とする第二の薄膜蛍光体層にMgを含んだ第一の発光層を被着させることにより、第二の薄膜発光層からの青色発光スペクトルを低波長側にシフトさせることを見出し、本発明の白色発光EL素子を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明の積層薄膜EL素子は、第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層とを有する積層薄膜EL素子であって、前記第一の薄膜蛍光体層は、次の組成式で表される蛍光体を有し、
Zn1−xMgS:Mn (0.01≦x≦0.8, 0.1≦y≦1 ここでyは全体の元素量に占めるyの元素比を示す。)
前記第二の薄膜蛍光体層は、青色発光材料を主成分とする薄膜蛍光体層であることを特徴とする積層薄膜で構成される。このような構成を取ることにより高輝度、高色純度の白色発光EL素子を提供することができる。
【0016】
前記青色発光材料は、公知の青色蛍光発光材料を用いることが可能であり、バリウムアルミネート、バリウムチオアルミネートのようなII族−III族−硫化物を主成分とした材料が特に好ましい。
より好適な態様として、第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層とを有する積層薄膜EL素子であって、第一の薄膜蛍光体層は、下記組成式で表される蛍光体を有し、
Zn1−xMgS:Mn (0.01≦x≦0.8, 0.1≦y≦1 、ここでyは全体の元素量に占めるyの元素比を示す。)
かつ第二の薄膜蛍光体層は、バリウムチオアルミネートを主成分とした下記組成式で表される薄膜蛍光体層を有する積層薄膜EL素子が挙げられる。
BaAlS:Eu (0.05≦a≦0.625, 0.25≦b≦0.63, 0.2≦c≦1.2 ここでcは全体の元素量に示すcの元素比を示す。)
【0017】
この積層薄膜EL素子は、基板上に前記第一の薄膜蛍光体層と前記第二の薄膜蛍光体層とを順次積層することが好ましい。 また、前記第二の薄膜蛍光体層の上部および下部に、または上部のみに、または下部のみに、ZnSを主成分とした層を形成する積層薄膜EL素子としてもよい。特に前記第一の薄膜蛍光体層と前記第二の薄膜蛍光体層とを被着させる積層薄膜EL素子とすることが好ましく、更に、前記第二の薄膜蛍光体層の上部にZnSを主成分とした層を有する積層薄膜EL素子とすることがより好ましい。
【0018】
更にまた、基板上に第一の電極層、厚膜誘電体層、前記第一及び第二の薄膜蛍光体層をこの順に備えることで、より高輝度、高色純度の白色発光が得られると共に、色むらのない高品質のEL素子を提供できる。
【0019】
より好適な態様として、第一および第二の電極が、それぞれ互いに交差する方向に延在し、かつそれぞれストライプ状に設けられており、その電極間の少なくとも一部に第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層とを備えることを特徴とする積層薄膜ELパネルとすることが望ましい。
【0020】
このようにストライプ状の第一及び第二の電極が交差するように構成されると、先に述べたように交差部位の蛍光体層が画素を構成し、各画素が駆動する。このとき、発光は実質的にその交差部位で生じる。
この第一および第二の電極層をストライプ状に形成し構成したものをELディスプレイパネル、もしくはELパネルという。またその最小単位をEL素子という。
【0021】
また、本発明のEL素子を有効に得るためには、基板上に第一の電極層を形成する第一の工程と、前記第一の電極層上に厚膜誘電体層を形成する第二の工程と、前記厚膜誘電体層上にMgを含有する第一の薄膜蛍光体層を形成する第三の工程と、前記第一の薄膜蛍光体層上に青色発光材料を主成分とする前記第二の薄膜蛍光体層を形成する第四の工程と、前記第二の薄膜蛍光体層を熱処理する第五の工程と、前記第二の薄膜蛍光体層上に第二の電極層を形成する第六の工程とを備えることを特徴とするEL素子の製造方法を用いるとよい。
【0022】
また、前記第三の工程には、下記組成式で表される前記第一の薄膜蛍光体層を用い、
Zn1−xMgS:Mn (0.01≦x≦0.8, 0.1≦y≦1 ここでyは全体の元素量に占めるyの元素比を示す。)
前記第四の工程には、バリウムチオアルミネートを主成分とする第二の薄膜蛍光体層を用いることがより好ましい。
【0023】
前記第一および第二の薄膜蛍光体層を形成する第三および第四の工程は、この順に行うことが、好適であるが、第四の工程を先に行ってもよい。
【0024】
前記第五の工程においては、550〜750℃の熱処理を施す事が望ましく、熱処理時間は、10〜180秒施すことが更に好ましい。
【0025】
更に、第三の工程と、第四の工程との間に熱処理工程を追加し製造することも好適である。その追加する熱処理工程の条件は、450〜650℃の条件を満たす熱処理であることが好ましい。この場合、熱処理時間は、1〜30分が好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
本実施形態は、第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層を積層することによりなされる積層薄膜蛍光体であり、得られる積層薄膜蛍光体はそれぞれの層の発光が合成され、白色の発光を放射するようになる。
【0028】
第一の薄膜蛍光体層は、Mgを含むZnS:Mnを主とした薄膜蛍光体層を用いている。このようにすることにより、特に第二の薄膜蛍光体層が、478nm以下の青色発光材料であった場合、その合成された光は、高輝度の白色発光を放射するようになる。
【0029】
第一の薄膜蛍光体層に用いる材料は、ZnS:Mnの発光色が黄橙色であり、赤色光成分に対して緑色光成分が少ないため、青色発光体を組み合わせるとカラーバランスが悪くなる傾向がある。
【0030】
ZnS:MnにMgを加えることで、ZnS:Mn発光スペクトルのピーク波長が585nm付近より短波長側にシフトし、発光スペクトルのピーク波長が、570nm付近の黄緑色光が得られる。その結果、緑色光成分が増えカラーバランスがよくなる。特にMgを含むZnS:Mnの組成、Zn1−xMgS:Mnの、Mg組成比xは、0.01〜0.8であり、好ましくは0.01〜0.5、特に好ましくは0.1〜0.3である。xが0.01未満であると短波長へのシフトが小さくMgを加えた効果が十分得られない。また、xが0.8を越える場合には、短波長へのシフトが大き過ぎ、第二の薄膜蛍光体層を積層しても、もはや白色発光を得られない。
【0031】
発光中心であるMnの添加量としては、全体の元素比で、特に0.1〜1、より好ましくは0.2〜0.7、更に好ましくは0.3〜0.5添加したものである。
【0032】
膜厚としては、第二の薄膜蛍光体層との色バランスにもより、特に制限されるものではないが、厚すぎるとEL駆動電圧が上昇し、薄すぎると発光効率が低下する。具体的には、100〜400nm、特に、200〜300nmが好ましい。
【0033】
また、第一の薄膜蛍光体層には、上記条件内で、結晶性を良くする為の手法として上部および下部に、または上部、下部どちらか一方に、ZnS及びZnS:Mnを積層することも効果的である。
【0034】
ここで、上部、下部とは、基板に対する位置関係を示し、上部とは基板を底辺と考え、積層する方向を上部とする。したがって、蛍光体薄膜層の上部とは基板とは逆側を示し、下部とは基板側を意味する。
【0035】
本実施形態の第二の薄膜蛍光体層は、バリウムチオアルミネート:Euを主とした薄膜蛍光体層である。
バリウムチオアルミネートには、BaAl、BaAl、BaAl、BaAl、BaAl、BaAl1425、BaAl13、BaAl1219などがあり、 母体材料としては、これらの単体または2種以上を混合してもよいし、明確な結晶構造を有しない非晶質状態となっても良い。また、硫黄(S)の一部元素比で0.05%程度まで酸素(O)に置換されていても良い。
【0036】
本実施形態では特に、BaAl母体材料を用い、発光中心としてEuを用いたBaAlS:Eu薄膜蛍光体層とすることが好ましい。
Baの組成比aは、0.05〜0.625
Alの組成比bは、0.025〜0.63
が好適である。
【0037】
発光中心であるEuの添加量としては、cが、(ここでcは、全体の元素量に占めるcの元素比を示す。)特に0.2〜1.2、より好ましくは0.4〜1、更に好ましくは0.6〜0.8がよい。
【0038】
膜厚としては、第一の薄膜蛍光体層との色バランスにもよるが、厚すぎるとEL駆動電圧が上昇し、薄すぎると発光効率が低下する。具体的には、100〜400nm、特に、150〜300nm程度が好ましい。
【0039】
また、第二の薄膜蛍光体に用いる材料は、吸湿性が高く、酸化劣化されやすいため、上部、下部にまたは、上部、下部どちらかに、劣化防止層としてZnS等を積層してもよい。しかしながら、EL駆動電圧が上昇するため、膜厚はできるだけ小さい方が好ましい。
【0040】
第一の薄膜蛍光体層合計膜厚T1と第二の薄膜蛍光体層合計膜厚T2の比T2/T1を調整することにより、白色(色度)を調整することができる。T2/T1の値が大きすぎると青白い白色となり、小さすぎると黄色に近い白色となる。
【0041】
以上述べたような本実施形態の積層薄膜蛍光体層によれば、赤色、緑色、青色の光の波長を広範囲で得られる。また、第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層の積層形成した薄膜蛍光体層の発光合成色が、CIE色度座標でx=0.31〜0.39、y=0.30〜0.40の純度の高い白色となる。
【0042】
第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層の積層順序及び積層回数は特に制限されるものではない。
第二の薄膜蛍光体層を形成した後の熱処理工程では、第一の薄膜蛍光体層が上部、下部に、または上部、下部どちらかに積層されていることが望ましく、特に下部側が好ましい。
【0043】
上記条件で第二の薄膜蛍光体層を、Mgを含む第一の薄膜蛍光体層の上に形成し、熱処理し結晶化させる事により、短波長側の青色ピーク波長TがT<478nmとなり、従来のBaAl:Euの青色ピーク波長である478nm程度を、より短波長側に変化させること(ブルーシフト)ができる。
【0044】
特に、少なくとも前記Zn1−xMgS:Mnの蛍光体層と、前記BaAlS:Euの蛍光体層とを順次積層し、かつ、熱処理する事で、短波長側の青色ピーク波長をブルーシフトさせ、444nm付近にすることができる。
【0045】
このような第一の薄膜発光層の形成方法は、気相堆積法を用いることが可能である。気相堆積法としては、スパッタリング法やエレクトロンビーム蒸着法等の物理的気相堆積法やCVD法化学的気相堆積法を好ましく用いることができる。蒸着中の基板温度は、100〜600℃、好ましくは、150〜300℃とすればよい。基板温度が高すぎると、母体材料の薄膜表面の凹凸が激しくなり、薄膜中にピンホールが発生し、EL素子に電流リークの問題が発生する。このため、上述の温度範囲が好ましい。
【0046】
更に第一の薄膜発光層の形成後、好ましくは加熱処理を施すことが好ましい。このアニール処理は、発光層が露出している状態で行ってもよいし、キャップアニールとして発光層上に上部薄膜誘電体層を形成した後、あるいは更に上部電極層を形成した後に行ってもよい。最適加熱温度は、特に450〜650℃、より好ましくは500〜600℃で、処理時間は1〜30分であることが好ましい。加熱処理時の雰囲気としては、例えば真空中、大気中、O 中、 N 中、Ar中、S蒸気中、HS中等から選択すればよい。
【0047】
第一の薄膜発光層上への第二の薄膜発光層の形成方法、形成条件は、上述の第一の薄膜発光層と同様、気相堆積法を用いることが可能である。気相堆積法としての具体例も第一の薄膜発光層と同様である。
【0048】
第二の薄膜発光層の形成後、好ましくは更なる加熱処理を行う。好ましくは550〜750℃、より好ましくは650〜750℃以上であり、処理時間は10〜180秒であることが好ましい。加熱処理時の雰囲気としては、例えば真空中、大気中、O 中、N 中、Ar中、S蒸気中、HS中等から選択すればよい。
【0049】
以上述べたような積層薄膜蛍光体層の製造方法によると、高輝度に白色で発光する積層構造の蛍光体薄膜が容易に形成可能となる。
【0050】
図1は、本実施形態の積層蛍光体を用いた無機ELパネルの構造例である。
本実施形態の積層型発光層を用いて無機ELディスプレイパネルを得るには、例えば、図1に示すような素子構造とすればよい。
【0051】
基板1の一方の面上に所定のパターンからなる第一の電極層2を設け、更に第一の電極層2の少なくとも一部を被覆するように厚膜誘電体層3を設ける。
ここで厚膜誘電体層3には第一の誘電体層31と第二の誘電体層32からなるように、形成しても良いし、それらを組み合わせ多層にしてもよい。
【0052】
第一の誘電体層は、粉末状の絶縁体材料を焼成して層を形成し、第二の誘電体層32は溶液塗布焼成法により設ける。ここで、溶液塗布焼成法とは、ゾルゲル法やMOD(Metallo−Organic−Decomposition)法等により誘電体材料の前駆体溶液を基体に塗布し、焼成によって誘電体層を形成する方法である。
【0053】
そして、厚膜誘電体層3の第二の誘電体層側に薄膜誘電体層4を設ける。
次に、本実施形態の第一の薄膜発光層5と第二の薄膜発光層6を設け、更に上部薄膜誘電体層7を設けて、第二の電極層8を設ける。
【0054】
第二の電極層8は、EL素子の上面から見たときに、第一の電極層に対して直交する方向にストライプ状に形成する。そして、第一の電極層2の任意のストライプ電極と第二の電極層8の任意のストライプ電極とをそれぞれ選択し、発光層中の両電極が交差した発光層中の一部に交流電源から選択的に電圧を印加することにより特定画素の発光を得ることができる。
【0055】
基板として用いる材料は、化学的安定性を有し、適当な耐熱衝撃性を有していれば特に限定されるものではない。
【0056】
化学的安定性とは、近接する層を汚染しないものをいい、近接する層と反応、もしくは熱処理によるガスの発生等により近接する層に影響を及ぼし、結果として特性を悪化させるものではないことをいう。
【0057】
具体的な材料としては、例えばアルミナ(Al)、石英ガラス(SiO)、マグネシア(MgO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ベリリア(BeO)、ジルコニア(ZrO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、チタニア(TiO)、チタン酸バリウム等のセラミックス基板や、結晶化ガラス、高耐熱ガラス等を用いてもよく、またシリコンウエハー等の半導体、チタン、ステンレス、インコネル、鉄を成分とした金属基板などを用いることもできる。このような導電性を有する基板を用いる場合には、基板上にホウロウ処理を行うのが好ましい。
【0058】
また基板は、準備として平坦化のための処理を施してもよい。
【0059】
平坦化には、機械的研磨による方法や、基板表面に平坦化のためのセラミックス層を形成する方法が挙げられる。
【0060】
機械的研磨による方法は、特に限定されるものではないが、一般的なセラミックスの研磨方法を用いればよい。
【0061】
セラミックス層を形成する場合には、例えば粉末セラミックス材料を用いた厚膜グリーンを基板上に形成した後、その厚膜グリーンを焼成して得られる絶縁性セラミックス厚膜層が挙げられる。
【0062】
その使用する材料としては、基板と同じ成分である必要はなく、特に限定されるものではないが、具体的にアルミナ(Al)、石英ガラス(SiO)、マグネシア(MgO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、ステアタイト(MgO・SiO)、ムライト(3Al・2SiO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)、等の粉末材料に低融点ガラス等の適当な焼結助剤を混合した組成物が好ましい。またその他のセラミックス材料としては、チタン酸バリウム等のペロブスカイト型セラミックスも挙げられる。
【0063】
第一の電極層は、表示装置を単純マトリクスタイプとする場合、複数の帯状電極がストライプ状に一定方向に延在するようにパターンを成して形成される。また、その線幅が1画素の幅となり、ライン間のスペースは非発光領域となるため、極力ライン間のスペースを小さくすることが好ましい。具体的には、目的とするディスプレイパネルの解像度にもよるが、例えば線幅200〜500μm、スペース20〜50μm程度が必要である。
【0064】
また、第一の電極層の厚みは、0.1〜3μm程度が好ましく、0.5〜1μm程度が特に好ましい。厚すぎるとその電極間の段差により、その上に形成する厚膜誘電体層に凹凸が生じて平坦な発光層を形成できなくなる。また薄すぎると電極抵抗が上昇し発光層にかかる電圧値が低下し輝度が落ちる不具合が起こる。
【0065】
第一の電極層の材料としては、高い導電性が得られ、誘電体層や発光層と反応性が低く、材料電極層を被覆する誘電体層の形成時にダメージを受けない。即ち、誘電体層焼成時の酸化雰囲気に対して酸化しにくいものが好ましい。
【0066】
具体的には、Au、Pt、Pd、Ir、Ag等の貴金属、Au−Pd、Au−Pt、Ag−Pd、Ag−Pt等の貴金属合金、Ag−Pd−Cu等の貴金属を主成分とし非金属元素を添加した電極材料が好ましい。これらの金属を用いると、特に高酸化性雰囲気に対する耐性が十分に高まる。あるいは、Ni、Cu等の卑金属を用いることもでき、この場合には、後述する厚膜誘電体層を焼成する際の酸素分圧をこれらの卑金属が不都合な程度に酸化されない範囲に設定することが望ましい。
【0067】
また、In、ITO、SnO(ネサ膜)、ZnO−Al等の酸化物導電性材料を用いることも可能である。
【0068】
第一の電極層の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、めっき法等の公知の技術を用いることができる。
【0069】
また、金液(liquid gold、gold resinate、bright gold)と称する材料により形成されたものを用いてもよい。この金液と称する材料は、テルペン系の溶剤に金を有機金属化合物の形で、通常4〜25%程度含有させたもので、褐色で粘性のある液体である。この金液を用いることにより、50〜500nmと極めて薄く緻密な金膜が得られる。
【0070】
この金液は、テルペンに可溶で粘度を自由に調製できることから、例えばスプレー法、スクリーン印刷等、種々の塗布、印刷法などにより電極パターンを形成することができる。
【0071】
塗布された金液は、乾燥した後450〜850℃の加熱処理により、金の配線パターンに形成される。
【0072】
厚膜誘電体層は、高輝度かつ低電圧駆動が可能なEL素子を実現させるため、高誘電率、高耐電圧であることが望ましい。好ましくは比誘電率が100〜10000程度、抵抗率10Ω・cm以上、特に1010〜1018Ω・cm程度が望ましい。比誘電率は低すぎると、発光層に印加される実効電圧が降下し、発光における輝度が低下する。したがって、発光層にかかる電圧を効率的に供給するには、誘電率はより高い方が好ましい。
【0073】
更に基板の耐熱性を配慮して、低温焼成可能な材料であることも要求される。
【0074】
本実施形態に係る厚膜誘電体層は、第一の誘電体層と第二の誘電体層からなることが好ましい。
【0075】
第一の誘電体層は、いわゆる厚膜法により粉末状の絶縁体材料を焼成して形成されるセラミックス層である。
【0076】
この厚膜誘電体層の構成材料は特に限定されないが、例えばBaTiO、(BaCa1−x)TiO、(BaSr1−x)TiO、PbTiO、Pb(ZrTi1−x)O(以下、PZT)等のペロブスカイト構造を有する誘電体、強誘電体材料、Pb(Mg1/3Nb2/3)O(以下、PMN)等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料、BiTi12、SrBiTaに代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNb等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料等を用いることができる。
【0077】
これらの中で特により高い誘電率を達成でき、かつより低い焼成温度で熱処理可能であるとの観点から、BaTiO、PZT、PMN等のペロブスカイト型誘電体がより好ましく、それらのなかでも化学組成中に鉛元素を含む誘電体材料がより好ましい。
【0078】
このような鉛を含む誘電体材料としては、例えばPZTやPLZT(Laを添加したPbZrO−PbTiO固溶体)等のペロブスカイト構造誘電体材料、PMNに代表されるリラクサー型強誘電体材料、PbNb等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料を好ましく用いることができる。これらは、800℃前後の焼成温度で比誘電率1000以上の誘電体層を簡易に形成することができる。特にPMN等の複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料を用いると、比誘電率が10000を越える高誘電率を示す誘電体を示す誘電体を得ることも可能である。
【0079】
組成に鉛を含んだ誘電体材料は、酸化鉛の融点が886℃と低く、酸化鉛と他の酸化物系材料、例えばSiO、CuO、Bi、Fe等との間で700℃から800℃程度の低温で液相が形成されるため低温で焼成が容易であり、かつ高誘電率を得やすいため好ましい。
【0080】
また、第一の誘電体層の膜厚は、電極の段差や製造工程のゴミ等によって形成されるピンホールを排除することができる程度の厚さがあれば特に限定するものではないが、10〜100μm程度が好ましく、20〜40μm程度が好ましい。100μmより厚いと緻密化が困難となり、また10μmより薄いと電極間の段差の影響を排除することができなくなる。
【0081】
第一の誘電体層は、いわゆる厚膜形成法により形成され、例えば第一の電極層が形成された基板上に、粉末状の絶縁体材料とバインダーと溶媒とを混合して作製した絶縁体ペーストを印刷して焼成して形成することができる。また、絶縁体ペーストをキャスティング成膜することによりグリーンシートを形成し、積層して形成してもよい。
【0082】
その後、脱バインダ処理、焼成を行うことにより第一の誘電体層が形成される。脱バインダ処理の条件は、バインダ、溶剤等の種類等に応じ適宜選択すればよい。
【0083】
また、焼成時の雰囲気は、電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定すればよいが、酸化性雰囲気中で焼成を行う場合、通常の大気中焼成を行えばよい。焼成温度は、絶縁体層の種類に応じて適宜決定すればよいが、通常、700〜1200℃程度、好ましくは1000℃以下である。また、焼成時の温度保持時間は、0.05〜5時間、特に0.1〜3時間が好ましい。また、必要に応じてアニール処理を施してもよい。
【0084】
更に第一の誘電体層上には、溶液塗布焼成法により第二の誘電体層を形成することが好適である。第二の誘電体層は第一の誘電体層上もしくはその内部もしくは最下部に形成してもよい。
【0085】
溶液塗布焼成法とは、ゾルゲル法やMOD(metallo−Organic−Deposition)法等により誘電体材料の前駆体溶液を基板に塗布し、焼成することによって誘電体層を形成する方法である。
【0086】
溶液塗布焼成法を用いることにより、特に第一の誘電体層上部に形成した場合には、第一の誘電体層表面の凹凸に対して、凹部には厚く、凸部には薄く、層が形成されるため、誘電体層表面の段差が平坦化し、この上に形成される薄膜発光層の均一性を大幅に改善することができる。
【0087】
ゾルゲル法とは、一般には溶媒に溶かした金属アルコキシドに所定量の水を加え、加水分解、重縮合反応させて、M−O−M結合を持つゾルを形成する。
そのゾルの前駆体溶液を基板に塗布し、焼成することで膜形成をする方法である。
【0088】
また、MOD法とは、M−O結合を持つカルボン酸の金属塩などを有機溶媒に溶かして前駆体溶液を形成し、基板に塗布し焼成することによって膜形成をする方法である。ここで前駆体溶液とはゾルゲル法、MOD法などの膜形成法において原料化合物が溶媒に溶解されて生成する中間化合物を含む溶液である。
【0089】
ゾルゲル法とMOD法は、完全に別個の方法ではなく、相互に組み合わせて用いることが可能である。例えばPZTの膜を形成する際、Pb源として酢酸鉛を用い、Ti、Zr源としてアルコキシドを用いて溶液を調整することができる。
【0090】
また、ゾルゲル法とMOD法の二つの方法を総称してゾルゲル法と呼ぶ場合もあるが、いずれの場合も前駆体溶液を基板に塗布し、焼成することによって膜を形成することから本実施形態では溶液塗布焼成法とする。また、サブミクロンサイズの誘電体粒子と誘電体の前駆体溶液とを混合した溶液であっても本発明の誘電体の前駆体溶液に含まれ、その溶液を基板に塗布焼成する場合であっても本実施形態の溶液塗布焼成法に含まれる。
【0091】
溶液塗布焼成法は、ゾルゲル法、MOD法いずれの場合も、誘電体を構成する元素がサブミクロン以下のオーダーで均一に混合されるため、厚膜法による誘電体形成のようなセラミックス粉体を焼結をする手法と比較して、極めて低温で緻密な誘電体を形成することが可能である点が特徴である。
【0092】
溶液塗布焼成法によって形成する誘電体層の膜厚は厚膜表面の凹凸を十分に平坦化するためには、0.5〜3μmが好ましく、1〜2μmが特に好ましい。
【0093】
この層の比誘電率は第1の誘電体層と同様に、発光層の実効電圧を確保する上で少しでも高い方が望ましく、少なくとも250以上、好ましくは500以上である。
【0094】
このような高誘電率材料としては、例えばBaTiO、(BaCa1−x)TiO、(BaSr1−x)TiO、PbTiO、PZT等のペロブスカイト構造を有する誘電体、強誘電体材料や、Pb(Mg1/3Nb2/3)O等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料や、BiTi12、SrBiTaに代表されるビスマス層状化合物、(SrBa1−x)Nb、PbNbO等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料等が挙げられる。これらのなかでも、BaTiOやPZT等のペロブスカイト構造を有する強誘電体材料が、比誘電率が高く比較的低温での焼成が容易であるため好ましい。
【0095】
上部および下部薄膜誘電体層は、省略することもできるが、発光層の少なくとも一方の面に形成することが好ましい。
【0096】
この薄膜誘電体層は、発光層と誘電体層との間の界面の電子状態を調節し発光層への電子注入を安定化、効率化することができ、また、発光層の両面に形成すれば、この電子状態が発光層の両面で対称的に構成することにより交流駆動時の発光特性の正負対称性を改善することができる。
【0097】
また、第一の電極上に形成する厚膜誘電体層のように絶縁耐圧を保持する機能を考慮する必要はないため膜厚は小さくてよい。具体的には10〜1000nmが好ましく、20〜200nmが特に好ましい。
【0098】
この薄膜誘電体層は、抵抗率として10Ω・cm以上が好ましく、1010〜1018Ω・cmが特に好ましい。また、比較的高い比誘電率を有する物質であることが好ましく、その比誘電率は好ましくは3以上である。
【0099】
この薄膜誘電体層の材料としては、例えば酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化タンタル(Ta)、酸化イットリウム(Y)、ジルコニア(ZrO)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al)、BaTa、SrTiO3、チタン酸バリウム(BaTiO )等を用いることができる。また、薄膜誘電体層の形成方法としては、例えばスパッタ法、蒸着法、CVD法などを用いることができる。
【0100】
第二の電極層は第一の電極層と同様に表示装置を単純マトリクスタイプとする場合、第1の電極層の電極パターンに対して直交するように、複数のストライプ状のパターンを有するように形成される。また、その線幅が1画素の幅となり、ライン間のスペースは非発光領域となるため、極力ライン間のスペースを小さくしておくことが好ましい。したがって、目的とするディスプレイパネルの解像度にもよるが、例えば線幅200〜500μm、スペース20〜50μmが適当である。
【0101】
具体的には、1画素を360×360μmとした場合、1画素中に赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の発光色を呈する発光素子を1対1対1で並置させるためには、線幅100μmの発光素子を20μmの間隔で形成すればよい。
【0102】
また、第2の電極層は、発光層からの発光を透過させる必要があるために、透明電極であることが好ましい。具体的には、ITOやSnO(ネサ膜)、ZnO−Al等の酸化物導電性材料等が用いることができる。膜厚は0.2〜1μmが好ましい。
【0103】
電極層の好ましい抵抗率としては、発光層に効率よく電界を付与するため、1Ω・cm以下、特に0.003〜0.1Ω・cmである。
【0104】
これらの材料で電極層を形成する方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法、など既存の方法を用いればよい。
【0105】
【実施例】
以下に本発明の実施例を具体的に示し、更に本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
96%純度のアルミナ基板上に、ヘラウスRP2003/237−22%レジネート金ペーストを用いて焼成後の膜厚が0.6μmとなるようにスクリーン印刷、乾燥を繰り返した。その後、十分な空気を供給した雰囲気で850℃、20分の焼成を行った。得られた電極層をフォトエッチングの手法により、幅340μm、スペース20μmの多数のストライプ状パターンにパターニングした。
【0106】
次にスクリーン印刷法により、誘電体層として誘電体セラミックス厚膜を形成した。厚膜ペーストとしては、ESL社製4210C厚膜誘電体ペーストを用い、焼成後の膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷、乾燥を繰り返した。
【0107】
印刷乾燥後、厚膜はベルト炉を用い、十分な空気を供給した雰囲気で850℃、20分の焼成を行った。
【0108】
この基板上に、平坦化層として、溶液塗布焼成法を用いてPZTの誘電体層を形成した。具体的には、以下に示す方法で作成したPZTのゾルゲル液を前駆体溶液として用い、この前駆体溶液を上記誘電体層にスピンコーティング法にて塗布し、700℃で15分間焼成する作業を所定回繰り返した。
【0109】
PZT前駆体溶液の作製方法は、8.49gの酢酸鉛三水和物と、4.17gの1,3−プロパンジオールとを約2時間加熱撹拌して透明な溶液を得た。これとは別に、3.70gのジルコニウム・ノルマルプロポキシド70質量%と、1−プロパノール溶液と、1.58gのアセチルアセトンとを乾燥窒素雰囲気中で30分間加熱撹拌し、これに3.14gのチタニウム・ジイソプロポキシド・ビスアセチルアセトネート75質量%と、2−プロパノール溶液と、2.32gの1,3−プロパンジオールとを加え、更に2時間加熱撹拌した。これら2つの溶液を80℃で混合し、乾燥窒素雰囲気中で2時間加熱撹拌し、褐色透明な溶液を作製した。この溶液を130℃で数分間保持することにより副生成物を取り除き、更に3時間加熱撹拌することによりPZT前駆体溶液を作製した。
【0110】
PZT前駆体溶液の粘度調製は、n−プロパノールを用いて希釈することにより行った。単層当たりの誘電体層の膜厚は、スピンコーティング条件及びPZT前駆体溶液の粘度を調製することにより約0.5μmとした。上記PZT前駆体溶液をスピンコーティングによる塗布と焼成を3回繰り返して、膜厚が約1.5μm厚のPZT誘電体層を形成した。
【0111】
次に、薄膜誘電体層としてチタン酸バリウム層をスパッタ法により200nm形成した。このときの成膜条件は、以下のようにした。
ターゲット:BaTiO
スパッタガス:Ar 60SCCM
成膜時の圧力:0.5Pa
成膜後、熱処理炉にて酸素雰囲気中で700℃−10分間の熱処理を行った。
【0112】
次に薄膜蛍光体層を気相蒸着法により堆積させた。
第一の薄膜蛍光体層であるZn1−xMgS:Mnは、基板を200℃に加熱した状態で、Mnを0.5mol%添加したZnSペレットを用い、Eガン(電子銃)により蒸発させると同時に、抵抗加熱にてMgペレットを蒸発させた。設定膜厚を180nmとし成膜した。
【0113】
成膜時のSiモニターにて蛍光X線分析法による組成分析の結果、原子比でZn:Mg:S:Mn=14.02:33.57:51.96:0.45であった。更に熱処理炉にて酸素雰囲気中で550℃−20分間の熱処理を行った。
【0114】
第二の薄膜蛍光体層であるBaAlS:Euは、基板を400℃に加熱した状態で、Euを5mol%添加したBaS粉を用い、Eガン(電子銃)により蒸発させると同時に抵抗加熱にてAl粉を蒸発させた。設定膜厚は、200nmとし成膜した。
【0115】
更に連続で、劣化防止層として、ZnSをEガン(電子銃)にて設定膜厚を15nmとし成膜した。この時の基板温度は、200℃とした。
【0116】
次にランプアニーラ(光照射アニール処理装置)にてN雰囲気中で675℃、1分間の熱処理を行った。
【0117】
成膜時のSiモニターにて蛍光X線分析により組成分析した結果、原子比でBa:Al:S:Eu:Zn=11.36:31.54:50.74:0.65:5.71であった。
【0118】
次に上部薄膜誘電体層としてアルミナをEガン(電子銃)にて50nm成膜した。この時の基板温度は150℃である。
【0119】
次に第2の電極層としてITO薄膜をスパッタリング法により順次形成することによりELパネルを作製した。その際、ITO薄膜はホトエッチングの手法により幅100μm、スペース20μmのストライプ状に第1の電極層と直交するようにパターニングした。
【0120】
上記EL素子の第一および第二の電極間に120Hz、パルス幅100μs、190Vの電圧を印加することにより、516cd/mの高輝度白色光が得られた。
【0121】
白色光はCIE色度座標でX=0.36、Y=0.36と色純度の良い白色光であった。
【0122】
更にガラス上に形成されたストライプ状カラーフィルター、ライン幅100μm、スペース20μm(BM)、R:G:B=1:1:1をEL素子上に載せ、同条件にて輝度測定を行ったところ、97cd/mの白色光が得られた。
【0123】
更に白色光はCIE色度座標でX=0.32、Y=0.34と純度の良い白色光であった。
【0124】
印可電圧190V時における発光スペクトルを図2に示す。その結果、長波長側の黄緑色ピーク波長が572nm、短波長側の青色ピーク波長444nmであった。
【0125】
BaAlS:Eu薄膜蛍光体層を蒸着法によりZnS層で挟み込む工程を加え、熱処理工程は、実施例1と同様の処理を行い青色EL素子を作製した。
【0126】
その結果、発光スペクトルの短波長側の青色ピーク波長は478nmとなり、実施例1に示した短波長側の青色ピーク波長444nmと比べ34nm長波長側であることがわかった。
【0127】
また輝度は、190V電圧印加により100cd/mであった。
この結果により、第二の薄膜蛍光体層である、BaAlS:Euを主とした薄膜蛍光体層の熱処理を第一の薄膜蛍光体層である、Zn1−xMgS:Mnを主とした薄膜蛍光体層が積層された状態で行う事により、短波長側の青色ピーク波長Tが、T<478nmと成り、特に、444nm付近にすることができた。
(実施例2)
第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層の積層順を変え、実施例1とほぼ同様の方法でEL素子を作製した。
【0128】
つまり、薄膜誘電体層であるチタン酸バリウム層をスパッタ法で形成した後、実施例1と同様の製膜条件で、第二の薄膜蛍光体層である、BaAlS:Euを製膜し、熱処理炉にてN雰囲気中で700℃−20分間の熱処理を行った。
【0129】
更に連続して第一の薄膜蛍光体層であるZn1−xMgS:Mnを積層した後、熱処理炉にて酸素雰囲気中で550℃−20分間熱処理を行った。その結果、短波長側の青色ピーク波長は478nmとなり、実施例1に示した短波長側の青色ピーク波長444nmと比べ34nm長波長側である事がわかった。
【0130】
また輝度は、190V電圧印加により500cd/m程度の実施例と同レベルの高輝度白色光が得られた。
(実施例3)
実施例1とほぼ同様の方法、同様の積層順でEL素子を作製し、第一の薄膜蛍光体層形成後の熱処理炉による酸素雰囲気中、550℃−20分間の熱処理を省略し、第二の薄膜蛍光体層をランプアニーラーにてN雰囲気中で675℃−1分間の熱処理を行い、ELパネルを作製した。その結果、青色ピーク波長は、実施例1と同様低波長側へシフトし、また同程度の輝度の白色発光が得られた。
【0131】
このようにZnS薄膜層の形成、薄膜発光層の形成順、薄膜発光層の膜厚等の制御により、発光ピーク波長の位置を変化させ、高色純度で高輝度の白色発光薄膜EL素子を得ることができた。
【0132】
以上、添付図面を参照しながら本発明の高色純度で高輝度の白色発光薄膜EL素子の好適な実施形態について説明したが、本発明はこの例に限定されない。いわゆる当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0133】
【発明の効果】
以上のように本発明の積層薄膜蛍光体によれば、色純度の良好な白色光が得られ、また、カラーフィルターを使用したELディスプレイでも充分な輝度が得られる積層薄膜EL素子が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態による積層薄膜EL素子の内部構造を示す断面図である。
【図2】本実施形態による積層薄膜EL素子の発光スペクトルである。
【符号の説明】
1 基板
2 第一の電極層
3 厚膜誘電体層
31 第一の誘電体層
32 第二の誘電体層
4 下部薄膜誘電体層
5 第一の薄膜蛍光体層
6 第二の薄膜蛍光体層
7 上部薄膜誘電体層
8 第二の電極層

Claims (6)

  1. 第一の薄膜蛍光体層と第二の薄膜蛍光体層とを有する積層薄膜EL素子であって、
    前記第一の薄膜蛍光体層は、次の組成式で表される蛍光体を有し、
    Zn1−xMgS:Mn (0.01≦x≦0.8, 0.1≦y≦1 ここでyは全体の元素量に占めるyの元素比を示す。)
    前記第二の薄膜蛍光体層は、青色発光材料を主成分とする薄膜蛍光体層であることを特徴とする積層薄膜EL素子。
  2. 基板上に前記第一の薄膜蛍光体層と前記第二の薄膜蛍光体層とが順次積層されたことを特徴とする請求項1に記載の積層薄膜EL素子。
  3. 前記第二の薄膜蛍光体層の上部および/または下部にZnSを主成分とした層を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の積層薄膜EL素子。
  4. 前記基板上に第一の電極層、厚膜誘電体層、第二の電極層をこの順に備え、前記厚膜誘電体層と前記第二の電極層との間に前記第一及び第二の薄膜蛍光体層を備えることを特徴とする請求項1、2、または3のうちのいずれか1項に記載の積層薄膜EL素子。
  5. 前記第一および第二の電極は、それぞれ互いに交差する方向に延在するように、かつそれぞれストライプ状に形成され、
    前記第一および第二の電極間の少なくとも一部に前記第一の薄膜蛍光体層と前記第二の薄膜蛍光体層とを備えることを特徴とする請求項1、2、3、または4のうちのいずれか1項に記載のEL素子を有する積層薄膜ELパネル。
  6. 基板上に第一の電極層を形成する第一の工程と、
    前記第一の電極層上に厚膜誘電体層を形成する第二の工程と、
    前記厚膜誘電体層上にMgを含有する第一の薄膜蛍光体層を形成する第三の工程と、
    前記第一の薄膜蛍光体層上に青色発光材料を主成分とする前記第二の薄膜蛍光体層を形成する第四の工程と、
    前記第二の薄膜蛍光体層を熱処理する第五の工程と、
    前記第二の薄膜蛍光体層上に第二の電極層を形成する第六の工程と、
    を含む積層薄膜EL素子の製造方法。
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