JP2005216757A - 電界発光素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 蛍光体層の母体材料として2種以上の金属を含む硫化物を用いた場合に、環境安定性を改善し、高水準の発光特性を長期にわたって安定的に得ることが可能な電界発光素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 一対の電極層1、2間に2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する蛍光体層41を備える電界発光素子10において、蛍光体層41をその延在方向に沿って非連続的に形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】 一対の電極層1、2間に2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する蛍光体層41を備える電界発光素子10において、蛍光体層41をその延在方向に沿って非連続的に形成する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、電界発光(エレクトロルミネセンス、EL)素子及びその製造方法に関する。
電界発光素子(以下、場合によりEL素子という)は、電圧の印加により物質が発光する現象、すなわちEL現象を応用したデバイスとして知られており、液晶ディスプレイ(LCD)や時計のバックライト等の分野で実用化されている。
このようなEL素子としては、無機物質からなる蛍光体層を備える無機EL素子がある。無機EL素子の具体的構造としては、例えば、対向する一対の電極間に、無機化合物からなる母体材料中に希土類金属や遷移金属等が発光中心としてドープされた蛍光体層を設けたものが知られている。また、蛍光体層の母体材料としては、硫化亜鉛(ZnS)などの1種の金属元素を含む硫化物の他、2種以上の金属元素を含む硫化物が知られている。
特開2002−246182号公報
しかし、蛍光体層の母体材料として2種以上の金属元素を含む硫化物を用いると、1種の金属元素を用いる場合に比べて十分な素子特性が得られないことが多く、特に発光特性及び寿命の点で改善の余地がある。具体的には例えば、2種以上の金属元素を含む硫化物は環境安定性に劣り、特に水分等の影響を受けやすいため、当該硫化物が酸化物へと変質して蛍光体層の機能が損なわれることがある。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、蛍光体層の母体材料として2種以上の金属を含む硫化物を用いた場合に、環境安定性を改善し、高水準の発光特性を長期にわたって安定的に得ることが可能な電界発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の電界発光素子は、対向する一対の電極層と、一対の電極層間に形成された2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する第1の蛍光体層と、前記電極層の少なくとも一方と前記第1の蛍光体層との間に形成された絶縁体層と、を備え、第1の蛍光体層がその延在方向に沿って非連続的に形成されていることを特徴とする。
このように2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する第1の蛍光体層を、その延在方向に沿って非連続的に形成することで、水分等の影響による当該硫化物の変質が十分に抑制されるため、当該蛍光体層の環境安定性を改善することができる。従って本発明によれば、高水準の発光特性を長期にわたって安定的に得ることが可能な電界発光素子が実現される。
なお、本発明により上記の効果が得られる理由は必ずしも明確ではないが、本発明者は以下の通り推察する。すなわち、従来の電界発光素子において、2種以上の金属元素を含む硫化物の変質が実用上問題となるのは、雰囲気中の水分等の影響による初期的な酸化よりも、積層構造体内に取り込まれた水分又は酸素等の拡散により硫化物の逐次的な酸化であると考えられる。また、従来の電界発光素子は、酸化により蛍光体層に欠陥が生じた場合に、欠陥部のサイズよりもダークスポットの方が大きくなるという問題を有していた。これに対して本発明の電界発光素子の場合は、仮に第1の蛍光体層の一部で硫化物の初期的な酸化が起こったとしても、当該蛍光体層は非連続的に形成されているため、水分又は酸素等の拡散による硫化物の逐次的な酸化が十分に抑制されると共に、上述のダークスポットの問題も解消されるため、蛍光体層の機能が損なわれることなく高い信頼性を得ることができるものと考えられる。
なお、ここでいう「延在方向に沿って連続的に形成される第1の蛍光体層」は、例えばストライプ状に形成された電極層に対応して単にストライプ状に形成された蛍光体層とは区別されるものである。単にストライプ状に形成された蛍光体層の場合は、ストライプ状に形成された個々の蛍光体層(ライン)同士は離間して形成されたものであるが、ラインそれぞれは自身の延在方向に連続している。そのため、このような蛍光体層では、水分又は酸素等の拡散による硫化物の逐次的な酸化を十分に抑制することは困難である。
したがって、本発明の電界発光素子においては、1対の電極層がそれぞれの延在方向が互い直交するようにストライプ状に形成されている場合、第1の蛍光体層は電極層の延在方向の交差部に対応して非連続的に形成されていることが好ましい。
また、本発明の電界発光素子は、第1の蛍光体層の非連続領域に、第1の蛍光体層それぞれと隣接して形成された、1種の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する非発光層を更に備えることが好ましい。1種の金属元素を含む硫化物は2種以上の金属元素を含む硫化物よりも環境安定性に優れるため、第1の蛍光体層の非連続領域に面する部分を第2の蛍光体層で被覆することにより、当該部分における硫化物の酸化をより確実に抑制することができる。
また、本発明の電解発光素子は、電極層の少なくとも一方と第1の蛍光体層との間において、第1の蛍光体層に隣接して形成された、1種の金属元素を含む硫化物を含有する保護層を更に備えることが好ましい。かかる保護層を設けることにより、第1の蛍光体層の電極層側の面が保護層で被覆されるため、雰囲気中の水分又は酸素、更には絶縁体層から拡散する酸素等に起因する硫化物の酸化をより確実に抑制することができ、一層高い信頼性を達成することが可能となる。
本発明の電解発光素子は、第1の蛍光体層の延在方向に沿って第1の蛍光体層に隣接して形成された第2の蛍光体層を更に備えていてもよい。この場合、第2の蛍光体層は1種の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有することが好ましい。上述したように、1種の金属元素を含む硫化物は2種以上の金属元素を含む硫化物よりも環境安定性に優れるため、第2の蛍光体層に1種の金属元素を含む硫化物を含有せしめ、その第2の蛍光体層により第1の蛍光体層の隣接部分を被覆することで、当該部分における硫化物の酸化をより確実に抑制することができ、第1及び第2の蛍光体層それぞれから異なる発光色を得る際の発光効率及び色純度を向上させることができる。
また、本発明の電界発光素子の製造方法は、基板の一側に第1の電極層を形成する第1工程と、第1の電極層の基板と反対の側に絶縁体層を形成する第2工程と、絶縁体層の基板と反対の側に、2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する蛍光体層を、その延在方向に沿って非連続的となるように形成する第3工程と、蛍光体層の基板と反対の側に第2の電極層を形成する第4工程と、を備えることを特徴とする。
上記製造方法によれば、上述のように優れた素子特性を有する本発明の電界発光素子を容易に且つ確実に得ることができる。
また、本発明の電界発光素子の製造方法は、1種の金属元素を含む硫化物を含有する母体材料を用いて、第1の蛍光体層の非連続領域において第1の蛍光体層それぞれと隣接する非発光層と、第1の蛍光体層の延在方向に沿って第1の蛍光体層と隣接する第2の蛍光体層とを、同時に形成する工程を更に備えることが好ましい。かかる工程を設けることで、第1の蛍光体層における酸化抑制効果に寄与する非発光層及び第2の蛍光体層を効率よく形成することができ、電解発光素子の素子特性の向上と生産効率の向上とを高水準で両立することができる。
本発明によれば、蛍光体層の母体材料として2種以上の金属を含む硫化物を用いた場合に、環境安定性を改善し、高水準の発光特性を長期にわたって安定的に得ることが可能な電界発光素子及びその製造方法が提供される。
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り図面に示す位置関係に基づくものとする。また図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
図1は本発明の第1実施形態に係る無機EL素子の要部を示す上面図であり、図2は図1中のI−I線に沿う切断面を示す断面図である。図1及び図2に示すEL素子10は、トップ・エミッションタイプの二重絶縁型の無機EL素子であり、後述するように、下部絶縁体層としての厚膜誘電体層7を備えることから、厚膜誘電体EL(TDEL;thick film dielectric EL)素子と呼ばれる場合もある。
EL素子10は、電気的絶縁性を有する基板8、基板8上に形成された帯状の下部電極層2(第1の電極層)、下部電極層2上に形成された第1の絶縁体層(厚膜誘電体層)7、第1の絶縁体層7上に形成された第2の絶縁体層5、第2の絶縁体層5上に形成された第3の絶縁体層3、第3の絶縁体層3上に形成された発光層4、発光層4上に形成された第4の絶縁体層6、並びに第4の絶縁体層6上に形成された帯状の上部電極層1を有する。また、発光体層4は、2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する蛍光体層(第1の蛍光体層)41と、1種の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する蛍光体層(第2の蛍光体層)42とを有し、第1の蛍光体層41はその延在方向に非連続的に形成されている。さらに、第1の蛍光体層41と第3の絶縁体層の間、並びに第1の蛍光体層41と第4の絶縁体層との間には1種の金属元素を含む硫化物を含有する保護層9が設けられており、第1の蛍光体層41の両面は保護層9により被覆されている。
なお、本実施形態にかかる第2の蛍光体層42は、第1の蛍光体層41の非連続領域において第1の蛍光体層41それぞれと隣接する非発光層に相当する部分と、第1の蛍光体層の延在方向に沿って第1の蛍光体層と隣接する第2の蛍光体層に相当する部分との双方を含むものであり、後述するように、これらの部分は同一材料を用いて同時に形成された連続層である。したがって、以下の説明では、便宜上、非発光層に相当する部分を含めて「第2の蛍光体層42」ということとする。
基板8は、上方にEL素子10を構成する各層を形成可能であり、また上方に形成された各層を汚染するおそれがないものであれば特に制限されないが、電気的絶縁性を有し、アニール処理により溶解しない耐熱性を有するものが好ましく使用される。基板8の耐熱温度又は融点は、好ましくは600℃以上、より好ましくは700℃以上、更に好ましくは800℃以上、特に好ましくは1000℃以上である。具体的には、ガラス、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ベリリア(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC+BeO)等を主成分とするセラミック基板、結晶化ガラスなどの耐熱性ガラス基板が挙げられる。基板8に熱伝導性が要求される場合にはベリリア、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等の構成材料からなる基板が好ましい。特に、本実施形態のようにトップ・エミッションタイプのTDEL素子の場合には、耐熱性及び熱衝撃性の観点から、アルミナ基板、若しくはフォルステライト、ステアタイト等の等の構成材料からなる基板が、より好ましい。
下部電極層2及び上部電極層1には、それぞれリード線(図示せず)を介して交流電源(図示せず)が電気的に接続される。図1及び図2に示すEL素子10の場合、帯状の下部電極層2及び上部電極層1は、互いに交差する方向にそれぞれ延在し且つそれぞれ複数のストライプ状に設けられている。すなわち、下部電極層2及び上部電極層1の一方が行電極、他方が列電極とされ、両者の延在方向が互い直交するように配置されることによって、下部電極層2及び上部電極層1によりマトリクス電極が構成されている。このマトリクス電極によって構成される各画素に交流電源から交流電圧又はパルス電圧が選択的に印加されることにより、発光層4が電界発光する。
下部電極層2は、アニール処理後に所定の高導電性を有し、アニール工程時の損傷を受け難く、さらに、下部絶縁体層3、5、7及び発光層4の構成材料との反応性が極力低い材料で構成されることが好ましい。かかる材料としては、Au、Pt、Pd、Ir、Ag、Ru等の貴金属、Au−Pd、Au−Pt、Ag−Pd、Ag−Pt等の貴金属合金、Ag−Pd−Cu等の貴金属を主成分とし卑金属成分が添加された合金が挙げられる。また、Ni、Cu等の卑金属を用いこともできる。
下部電極層2の形成方法としては、例えば、粉末金属ペースト、有機金属ペースト(レジネート金属ペースト)を用いた印刷法、あるいは一般的なエッチングプロセス等が適用可能である。
下部電極層2の上方に形成される第1の絶縁体層7、第2の絶縁体層5及び第3の絶縁体層3は下部絶縁体層である。一方、発光層4上に形成される第4の絶縁体層6は上部絶縁体層である。
下部電極層2に隣接して設けられた第1の絶縁体層(厚膜絶縁体層)7は、いわゆる厚膜法により形成される絶縁体層であり、より具体的には、粉体を含有するペースト若しくは前駆体溶液をその下層上に印刷又は塗布した後、乾燥、焼成することにより形成される所定厚さと所定形状を有した層を意味する。第1の絶縁体層7を設けることで、下部電極層2の形状や製造工程におけるゴミ等に起因するピンホールの発生を抑制することができる。第1の絶縁体層7の膜厚は、下部電極層2の高さ、さらには第1の絶縁体層7の構成材料の比誘電率等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。
したがって、第1の絶縁体層7の形成工程においては、予めセラミック材料粉末にバインダー、分散剤若しくは溶剤等を混合した厚膜ペーストを、基板8及び下部電極層2上に塗布し、乾燥させて厚膜グリーンとした後、この厚膜グリーンを焼成する方法を採用することができる。上記塗布の方法としては、スクリーン印刷法、ダイコーター、キャストコーター、ロールコーターなどを用いた方法等の適宜の方法を用いることができる。また、厚膜グリーンの形成方法として、厚膜ペーストをキャスティング成膜したグリーンシートを形成し、これを基板8及び下部電極層2上に積層する方法を採用してもよい。
さらに、厚膜絶縁体層としての第1の絶縁体層7を形成する方法として、溶液塗布焼成法を用いることもできる。ここで、「溶液塗布焼成法」とは、その層を形成するための誘電体材料の前駆体溶液を、下層上に塗布し、その塗膜を焼成して、層を形成する方法である。かかる溶液塗布焼成法としては、ゾルゲル法やMOD(Metallo-Organic Decomposition)法を例示できる。
ゾルゲル法とは、一般には溶媒に溶解させた金属アルコキシドに所定量の水を加え、加水分解、重縮合反応させて得られる分子中にM−O−M結合を有するゾルの前駆体溶液を下層上に塗布し、その塗膜を焼成することによって層を形成する方法である。また、MOD法とは、M−O結合を持つカルボン酸の金属塩等を有機溶媒に溶解させて調製した前駆体溶液を下層上に塗布し、その塗膜を焼成することによって層を形成する方法である。なお、前駆体溶液とは、ゾルゲル法、MOD法等の膜形成法において原料化合物が溶媒に溶解して生成される中間化合物を含む溶液をいう。
これらのゾルゲル法とMOD法とは完全に別個に用いられる方法ではなく、相互に組み合わせて使用することが一般的である。例えば、PZTからなる薄膜を形成する際、Pb源(ソース)として酢酸鉛を用い、Ti、Zr源としてその金属アルコキシドを用いて溶液を調製することができる。
あるいは、ゾルゲル法とMOD法の二つの方法を総称してゾルゲル法と呼ぶ場合もあり、いずれの場合も前駆体溶液をその下層上に塗布し、焼成することによって層を形成することから、本発明においては、両方法を総称して「溶液塗布焼成法」という。また、本発明においては、サブミクロンサイズの誘電体粒子と誘電体の前駆体溶液とを混合した溶液も「前駆体溶液」に含まれるものとし、その溶液を下層上に塗布して焼成する方法も溶液塗布焼成法に含まれるものとする。
このような溶液塗布焼成法を用いると、ゾルゲル法及びMOD法のいずれの場合も、第1の絶縁体層7を構成する誘電体化合物がサブミクロン以下のオーダーで均一に混合されるため、極めて低温の処理で緻密な誘電体を合成することが可能となる。また、溶液塗布焼成法を用いると、前駆体溶液を塗布し焼成する工程を経るので、基板8及び/又は下部電極層2上にたとえ微小な凹凸があったとしても、凹部上に形成される第1の絶縁体層7は比較的厚くなり、逆に凹部以外の部分(凸部)に形成される第1の絶縁体層7は比較的薄くされる。
厚膜絶縁体層7は、高誘電率且つ高耐圧であること、さらに、基板の耐熱性を考慮して比較的低温で形成可能であることが好ましい。厚膜絶縁体層7の構成材料としては、BaTiO3、(BaxCa1−x)TiO3、(BaxSr1−x)TiO3、PbTiO3、PZT、PLZT等のペロブスカイト構造を持った(強)誘電体材料や、PMN(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料、Bi4Ti3O12、SrBi2Ta2O9等に代表されるビスマス層状化合物、(SrxBa1−x)Nb2O6、PbNb2O6等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料が好ましく用いられる。
これらのなかでは、より高い誘電率を達成でき且つ焼成処理が比較的容易な観点から、BaTiO3やPZT、PMN等のペロブスカイト構造の強誘電体材料がより好ましく、さらにそれらのなかでも化学組成中に鉛原子を含む誘電体材料が特に好ましい。かかる鉛を含む誘電体材料は、酸化鉛の融点が888℃と低く、且つ酸化鉛と他の酸化物系材料(例えばSiO2やCuO、Bi3O3、Fe2O3等)との間で600〜800℃程度の低温で液相が形成されるため、適切な焼結助剤を用いることにより低温での焼成が簡便となり、また、極めて高い誘電率が発現される。
このような鉛を含む誘電体材料としては、例えばPZTやPLZT(Laを添加したPbZrO3−PbTiO3固溶体)等のペロブスカイト構造誘電体材料、PMN(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)等に代表される複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料、PbNb2O6等に代表されるタングステンブロンズ型強誘電体材料を好ましく用いることができる。これらは、800℃前後の焼成温度で比誘電率1000以上の絶縁体層を簡易に形成することができ、特にPMN等の複合ペロブスカイトリラクサー型強誘電体材料を用いると、比誘電率が10000を超える高誘電率を示す誘電体を得ることも可能である。
第1の絶縁体層7上に隣接して設けられた第2の絶縁体層5は、第1の絶縁体層7の表面を被覆する層であり、平坦化層としての機能を有する。第1の絶縁体層7の説明において例示した誘電体材料と同種の材料を用いて形成することができる。第2の絶縁体層5の誘電率は極力高い方が望ましく、比誘電率が100以上であると更に好ましく、500以上であると一層好ましい。また、第1の絶縁体層7及び第2の絶縁体層5を構成する材料の組み合わせは特に制限されないが、第2の絶縁体層5の誘電率は第1の絶縁体層7の誘電率よりも高いことが好ましい。
第2の絶縁体層5を形成する際には、第1の絶縁体層7と同様の形成方法を採用することができる。第2の絶縁体層5の膜厚は、第1の絶縁体層7表面に生じ得る微小な窪みが十分に埋め込まれる程度の厚さとされ、具体的には、例えば、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上とされる。なお、かかる微細な窪みの埋め込みを主目的とする場合には、絶縁体層25の膜厚は10μmを超える必要はない。
第2の絶縁体層5上に形成される第3の絶縁体層3は、発光層4と下部絶縁体層(絶縁体層3、5、7)との界面における電子状態の制御を容易にし、発光層4への電子注入を安定化させると共にその効率を高めるためのものである。また、第3の絶縁体層よりも下層(基板8側の層)の構成材料に鉛などの蛍光体層に影響を及ぼす物質を含有するものを用いた場合には、絶縁体層3を設けることで、当該物質の発光層4への混入を抑制することができる。
第3の絶縁体層3は絶縁耐圧を担保する機能を有する必要はなく、膜厚は比較的薄くてよく、好ましくは10〜1000nm、より好ましくは20〜200nm程度とされる。
また、絶縁体層3の比抵抗は、好ましくは108Ω・cm以上、より好ましくは1010〜1018Ω・cmオーダーとされる。さらに、これらの構成材料は特に制限されないが、具体的には比誘電率が好ましくは3以上の物質から構成されると好適である。絶縁体層6の構成材料の具体例としては、酸化イットリウム(Y2O3)などの希土類酸化物、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化タンタル(Ta2O5)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、ジルコニア(ZrO2)、ハフニア(HfO2)、シリコンオキシナイトライド(SiON)、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)が挙げられる。
第3の絶縁体層3を形成する際には、スパッタリング法、蒸着法などのPVD法(物理的気相堆積法)や、CVD法(化学的気相堆積法)などの気相堆積法(ドライプロセス)を用いてもよい。
また、発光層4の形成後にアニール処理を行う場合には、ALD法(Atomic Layer Deposition 法)を用いることが好ましい。ここでいうALD法とは、誘電体化合物(好ましくはAl2O3又はAlN)からなる単分子層を一層ずつ積層して形成する方法であり、これにより、第3の絶縁体層3のバリア層としての機能をさらに高めることができる。より具体的には、絶縁体層5、7からの酸素や鉛、さらには基板8に含まれるNa、K、Li、Rbなどの成分が発光層4に混入する現象を十分に抑制することができる。
発光層4は第1の蛍光体層41及び第2の蛍光体層42を有する。蛍光体層41及び蛍光体層42はいずれも硫化物からなる母体材料に発光中心がドープされて構成されるが、母体材料である硫化物の種類が異なる。
すなわち、第1の蛍光体層41に含まれる硫化物は2種以上の金属元素を含むものであり、かかる硫化物としては、バリウムチオアルミネート、カルシウムチオガレード、ストロンチウムチオガレード、バリウムチオガレード及びストロンチウムカルシウムチオガレードが好ましく用いられる。これらの硫化物の組成は特に制限されない。例えば、バリウムチオアルミネートには、Ba5Al2S8、Ba4Al2S7、Ba2Al2S5、BaAl2S4、BaAl4S7、Ba4Al14S25、BaAl8S13、BaAl12S19などがあり、これらのいずれも使用可能である。また、上記硫化物は、1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、第2の蛍光体層42に含まれる硫化物は1種の金属元素を含むものであり、かかる硫化物としては、硫化亜鉛、硫化ストロンチウム及び硫化カルシウムが好ましく用いられる。これらの硫化物は1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、第1の蛍光体層41及び第2の蛍光体層42の発光中心としては遷移金属や希土類金属等が使用可能であり、具体的には、Au、Ag、Cu、Mg、Mn、Tb、Eu及びCeなどが挙げられる。
このような発光体層4を備える無機EL素子10においては、行電極と列電極との延在方向の交差部における発光層4が画素となる。すなわち、ストライプ状の下部電極層2及び上部電極層1の延在方向が交差するように構成されると、複数の交差部に対応する発光層4の部分が画素を構成し、各画素が駆動される。このとき、発光は実質的にその交差部で生じる。
ここで、第1の蛍光体層41は、上述の通り、その延在方向に沿って非連続的に形成されたものであり、その配置は下部電極層2及び上部電極層1の延在方向の交差部に対応している。つまり、第1の蛍光体層41は、その連続領域が電極層1、2の延在方向の交差部に位置し、非連続領域がいわゆるブラックマトリックスに相当する部分に位置するように、電極層1の延在方向に沿って島状に形成されたものである。このように、第1の蛍光体層41を非連続的に形成することで、水分等の影響による硫化物の変質が十分に抑制されるため、第1の蛍光体層41は高水準の環境安定性を具備する。
なお、図1には、第1の蛍光体層41の配置として、上部電極層1の形成領域の2つおきに選定された領域に対応させて、その延在方向に沿って非連続的に延在するようにし、さらにその上部電極層1及び下部電極層2の延在方向の交差部に位置するようにした例を示したが、第1の蛍光体層41の配置は、それぞれが上部電極層2及び下部電極層1の延在方向の交差部に位置していれば特に制限されず、例えば上部電極層1の形成領域の1つおきに選定された領域に対応させて、その延在方向に沿って非連続的に延在させてもよい。
一方、第2の蛍光体層42は、上述したように、第1の蛍光体層41の非連続領域と、第1の蛍光体層41の延在方向に沿った領域において、1種の金属元素を含む硫化物を母体材料として形成されている。第1の蛍光体層41の非連続領域に形成された部分は非発光部である。また、第1の蛍光体層41の延在方向に沿った領域に形成された部分にうち、下部電極層2及び上部電極層1の延在方向の交差部に対応する部分では発光が生じる。
すなわち、無機EL素子10においては、第1の蛍光体層41及び第2の蛍光体層42のそれぞれに由来する複数の発光色を得ることができる。また、第2の蛍光体層42は、第1の蛍光体層41に隣接して形成されており、これにより蛍光体層41、42それぞれから異なる発光色を得る際の発光効率及び色純度を向上させることができる。つまり、1種の金属元素を含む硫化物は2種以上の金属元素を含む硫化物よりも環境安定性に優れるため、第2の蛍光体層42が第1の蛍光体層41の隣接面を被覆することにより、その部分における第1の蛍光体層41中の硫化物の酸化をより確実に抑制することができる。
第1の蛍光体層41と第3の絶縁体層3との間、並びに第1の蛍光体層41と第4の絶縁体層6との間には、それぞれ1種の金属元素を含む硫化物を含有する保護層9が形成されている。かかる硫化物としては、第2の蛍光体層42の説明において例示された1種の金属元素を含む硫化物が好ましく使用される。このように、第1の蛍光体層41の両面を保護層9により被覆することで、雰囲気中の水分又は酸素、更には絶縁体層3、5、6、7からの酸素等の拡散に起因する硫化物の酸化をより確実に抑制することができるので、第1の蛍光体層41は一層高い環境安定性を具備するようになる。
第1の蛍光体層41、第2の蛍光体層42及び保護層9の形成には、蒸着法、スパッタリング法などのPVD法、CVD法等の公知の気相堆積法等を用いることができる。これらのうち、組成制御の容易性、操作性及び生産性の観点から、PVD法が好ましく、スパッタリング法が特に好ましい。なお、蛍光体層41、42の発光中心は、金属、フッ化物、酸化物又は硫化物の形で蒸発源に添加することができる。
ここで、第1の蛍光体層41、第2の蛍光体層42及び保護層9の形成方法の一例として、リフトオフ法による形成方法について説明する。図3、図4及び図5はそれぞれリフトオフ法による形成方法の一例を示す工程図である。先ず、上述した方法により、基板8上に第1の電極層2、第1の絶縁体層7、第2の絶縁体層5及び第3の絶縁体層3をこの順序で積層した積層構造体を準備する。この積層構造体の第3の絶縁体層3上の全面に、所定の蒸発源を用いたスパッタリング法により、保護層9、第1の蛍光体層41及び保護層9のそれぞれに対応する層19、141、19をこの順序で積層する(図3)。次に、層19、141、19の下部電極層2及び上部電極層1の延在方向の交差部に対応する部分以外の領域をエッチングにより除去し、保護層9、第1の蛍光体層41及び保護層9を非連続的に形成する(図4)。なお、この工程では、下部電極層2及び上部電極層1の延在方向の交差部に対応して第2の蛍光体層が形成される領域の部分も除去され、第1の蛍光体層41及びその上下の保護層9が形成された領域以外は第3の絶縁体層3が露出することになる。そして、露出した第3の絶縁体層3上に、所定の蒸発源を用いたスパッタリング法により、第2の蛍光体層42を形成する(図5)。
第1の蛍光体層41及び第2の蛍光体層42の膜厚は、特に制限されないが、過度に厚いと駆動電圧が顕著に増大してしまい、過度に薄いと発光効率が低下するので好ましくない。具体的には、蛍光体層41、42の構成材料の種類に依存するものの、それぞれ100〜2000nmの範囲内とすることが好ましい。なお、図2には、第1の蛍光体層41と2つの保護層9との合計の膜厚が第2の蛍光体層42の膜厚と等しい例を示したが、第1の蛍光体層41の外周面が第2の蛍光体層42及び保護層9により被覆されていれば両者は必ずしも等しくなくてもよい。しかしながら、積層構造体の膜ストレスの点からは、両者を等しく設定し、第3の絶縁体層3又は第4の絶縁体層6との界面の形状を実質的に平滑とすることが好ましい。
発光層4上に形成される第4の絶縁体層(上部絶縁体層)6は、無機EL素子10に高い電界を印可した際に、発光層4が絶縁破壊することを防止するために設けられるものである。これにより、発光層4が、それ自体有する絶縁耐力以上の高電界においても安定に動作することができる。また、発光層4と、この第4の絶縁体層6との間の界面準位に蓄積されるキャリアにより内部分極が発生し、実効電界強度を増加させるので、第4の絶縁体層6を設けていない無機EL素子と比較して、より高い発光効率が得られる。さらに、第4の絶縁体層6を設けることで、発光層4への不純物の混入を十分に抑制することができる。
第4の絶縁体層6の形成方法としては、例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着、スパッタリング蒸着、クラスタイオンビーム蒸着等の物理蒸着法、CVD等の化学蒸着法などの公知の薄膜製造技術により形成することができる。さらに、第4の絶縁体層6は、上述したALD法を用いて形成されてもよい。ALD法を用いて形成された第4の絶縁体層6は、非常に緻密な膜として成膜されるので、後述するアニール工程の際に、発光層4が周囲の雰囲気の影響を一層受け難くすることができる。
第4の絶縁体層6の構成材料としては、アニール処理の際の温度条件及び雰囲気の条件(雰囲気中のガス組成、圧力)において耐酸化性を有するものであることが好ましい。耐酸化性を有していない構成材料を上部絶縁体層の構成材料として用いると、アニール処理の際に、第4の絶縁体層6のバルク構造が変化してしまい、そのことに起因して蛍光体層への不純物の混入を防止することができなくなる。
そのような耐酸化性を有する材料としては、例えばAl2O3、AlN、BaTa2O6、SiON、Ta2O5、BaTiO3、SrTiO3、TiO2、Y2O3などを挙げることができ、これらのうち1種を単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。それらのなかで、発光層4との密着性を向上させる観点、及びアニール処理の際に雰囲気ガス中の酸素の蛍光体層への混入を一層抑制する観点から、Al2O3又はAlNを第4の絶縁体層4の構成材料として用いると好ましい。
第4の絶縁体層6の膜厚は、電界印加時に発光層4の絶縁破壊を防止でき、またアニール処理の際に雰囲気中の酸素の発光層4への混入を十分に抑制できる膜厚であれば特に制限されない。例えば、上述した酸素の混入を一層抑制する観点、並びに、より高輝度及びより高い駆動寿命(輝度寿命)等の発光特性を有する無機EL素子を得る観点から、好ましくは10〜1000nm、特に15〜500nm程度であるとよい。
第4の絶縁体層6の形成により得られる積層構造体には、アニール処理を施すことが好ましい。
アニール処理の温度は蛍光体により異なるが、通常400〜800℃である。雰囲気は400〜600℃であれば酸化性ガス又は非酸化性ガスでも良く、600℃以上の場合にはアニール時間にもよるが、その多層体を構成する絶縁体(誘電体)が還元されやすい為に酸化性ガスで行うのが望ましい。
アニール処理の処理時間は、特に限定されず、例えばそのアニール処理が高速熱アニール(RTA;Rapid Thermal Annealing)処理であれば、処理時間は、0.5〜10分であると好ましく、1〜5分であるとより好ましい。
アニール処理後の積層構造体の第4の絶縁体層6上には上部電極層1が形成される。上部電極層1は、複数の帯状電極が一定間隔でストライプ状に下部電極層2の延在方向と直交する平面方向に延在するように配置される。この上部電極層1は、EL素子10がトップ・エミッションタイプであるため、透明導電材料から構成される。かかる透明導電材料としては、In2O3、SnO2、ITO、又はZnO−Alといった酸化物導電性材料等を用いることができる。上部電極層1の膜厚は、比抵抗を十分に低減する観点より、0.2〜1μmとすればよい。上部電極層1の形成方法としては、PVD法等を用いることができる。
図6は本発明の第2実施形態にかかる全面発光型無機EL素子を示す上面図である。図6に示した無機EL素子60においては、下部電極層62及び上部電極層61がシート状に形成されており、この点で、下部電極層2及び上部電極層1がストライプ状に形成された無機EL素子10と相違する。また、無機EL素子60は、電極層61、62の間に非連続的に形成された2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する蛍光体層(発光層)64を備える点で無機EL素子10と共通するが、後者の非連続領域には1種の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する第2の蛍光体層が形成されるのに対し、後者の非連続領域は空隙であり、蛍光体層64はその形成領域が可及的最大となるように形成されている点で相違する。なお、上記の点以外の構成は両者で共通しており、また、各要素の構成材料等も同様である。
無機EL素子60においては、透明導電材料で構成される上部電極層61の全面から、蛍光体層64に由来する発光が取り出される。この場合も、蛍光体層64を非連続的に形成することで、水分等の影響による2種以上の金属元素を含む硫化物の変質が十分に抑制されるため、蛍光体層64は高水準の環境安定性を具備する。したがって、無機EL素子60は、高水準の発光特性を長期にわたって安定的に得ることが可能な全面発光型の無機EL素子として非常に有用である。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
以下の手順に従って、図1及び図2に示す構成を有する無機EL素子を作製した。
以下の手順に従って、図1及び図2に示す構成を有する無機EL素子を作製した。
先ず、96%純度のアルミナ基板上に、ヘラウスRP20003B(20%)レジネート金ペーストを用いて焼成後の膜厚が0.5μmとなるように、スクリーン印刷と乾燥とを繰り返した。その後、十分な空気を供給した雰囲気中で、800℃、20分の焼成を行った。得られた電極層をホトエッチングの手法により、幅340μm、スペース20μmの多数のストライプ状パターンにパターニングした。
次に、スクリーン印刷法により、第1の絶縁体層(厚膜絶縁体層)として誘電体セラミックス厚膜を形成した。厚膜ペーストとしては、ESL社製(商品名:4210C)厚膜誘電体ペーストを用い、焼成後の膜厚が15μmになるようにスクリーン印刷、乾燥を繰り返した。印刷乾燥後、厚膜はベルト炉を用い、十分な空気を供給した雰囲気で800℃、20分の焼成を行った。
この基板上に、第2の絶縁体層(平坦化層)として、溶液塗布焼成法を用いてPZTの誘電体層を形成した。具体的には、以下に示す方法で作成したPZTのゾルゲル液を前駆体溶液として用い、この前駆体溶液を上記誘電体層にスピンコーティング法にて塗布し、700℃で15分間焼成する作業を所定回繰り返した。
PZT前駆体溶液の作製方法は、8.49gの酢酸鉛三水和物と、4.17gの1,3−プロパンジオールとを約2時間加熱撹拌して透明な溶液を得た。これとは別に、3.70gのジルコニウム・ノルマルプロポキシド70質量%と、1−プロパノール溶液と、1.58gのアセチルアセトンとを乾燥窒素雰囲気中で30分間加熱撹拌し、これに3.14gのチタニウム・ジイソプロポキシド・ビスアセチルアセトネート75質量%と、2−プロパノール溶液と、2.32gの1,3−プロパンジオールとを加え、更に2時間加熱撹拌した。これら2つの溶液を80℃で混合し、乾燥窒素雰囲気中で2時間加熱撹拌し、褐色透明な溶液を作製した。この溶液を130℃で数分間保持することにより副生成物を取り除き、更に3時間加熱撹拌することによりPZT前駆体溶液を作製した。
PZT前駆体溶液の粘度調整は、n−プロパノールを用いて希釈することにより行った。単層当たりの誘電体層の膜厚は、スピンコーティング条件及びPZT前駆体溶液の粘度を調製することにより約0.5μmとした。上記PZT前駆体溶液をスピンコーティングによる塗布と焼成を繰り返すことで、膜厚が約1.0μm厚のPZT誘電体層を形成した。
次に、第3の絶縁体層(薄膜誘電体層)として、チタン酸バリウム層をスパッタ法により200nm形成した。このときの成膜条件は、以下のようにした。成膜後、熱処理炉にて酸素雰囲気中で700℃−10分間の熱処理を行った。
ターゲット:BaTiO3
スパッタガス:Ar 60SCCM
成膜時の圧力:0.5Pa。
スパッタガス:Ar 60SCCM
成膜時の圧力:0.5Pa。
次に、チタン酸バリウム層上の全面に、蒸着法により、保護層としてのZnS層、第1の蛍光体層としてのEuをドープしたバリウムチオアルミネート層(BaaAlbS:Eu層)、及び保護層としてのZnS層をこの順序で積層した。ZnS層の形成の際には、ZnSをEガン(電子銃)にて各層の設定膜厚を100nmとし成膜した。この時の基板温度は、150℃とした。また、BaaAlbS:Eu層の形成の際には、基板を400℃に加熱した状態で、Euを5mol%添加したBaS粉を用い、Eガン(電子銃)により蒸発させると同時に抵抗加熱にてAl2S3粉を蒸発させた。設定膜厚は、300nmとし成膜した。成膜時にSiモニターにて蛍光X線分析法による組成分析をしたところ、成膜時のSiモニターにて蛍光X線分析により組成分析した結果、原子比でBa:Al:S:Eu:Zn=8.09:17.25:54.00:0.39:20.26であった。更に、ランプアニーラ(光照射アニール処理装置)にて、N2雰囲気中、700℃で1分間熱処理を行った。
このようにして形成したバリウムチオアルミネート層及びその上下のZnS層について、上部電極層の形成予定領域のうち2つおきに選定された領域に対応させてピクセル単位でエッチングし、非連続的に延在するバリウムチオアルミネート層及び2つのZnS層を形成し、それ以外の領域においてチタン酸バリウム層を露出させた。形成された島状のバリウムチオアルミネート層及びZnS層の配置は、それぞれが上部電極層及び下部電極層の延在方向の交差部に位置するようにした。
さらに、上記工程においてチタン酸バリウム層が露出した領域に、第2の蛍光体層であるZnS:Mn層を形成した。ZnS:Mn層の形成の際には、基板を150℃に加熱した状態で、Mnを0.5mol%添加したZnSペレットを用い、Eガン(電子銃)により蒸発させた。設定膜厚を500nmとし成膜した。
次に第2の絶縁体層(上部絶縁体層)としてアルミナをEガン(電子銃)にて50nm成膜した。この時の基板温度は150℃である。更に熱処理炉にて酸素雰囲気中で550℃−10分間の熱処理を行った。
次に第2の電極層としてITO薄膜をスパッタリング法により順次形成することによりELパネルを作製した。その際、ITO薄膜はホトエッチングの手法により幅100μm、スペース20μmのストライプ状に第1の電極層と直交するようにパターニングし、目的の無機EL素子を得た。
成膜バッチを変えて(作製日を変えて)上記の操作をさらに2回行い、合計3個の無機EL素子を作製した。
[比較例1]
バリウムチオアルミネート層及びその上下のZnS層を形成する際に、上部電極層の形成予定領域のうち2つおきに選定された領域に対応させてライン状にパターニングし、その延在方向に沿って連続的となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、無機EL素子を作製した。成膜バッチを変えて(作製日を変えて)上記の操作をさらに2回行い、合計3個の無機EL素子を作製した。
バリウムチオアルミネート層及びその上下のZnS層を形成する際に、上部電極層の形成予定領域のうち2つおきに選定された領域に対応させてライン状にパターニングし、その延在方向に沿って連続的となるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、無機EL素子を作製した。成膜バッチを変えて(作製日を変えて)上記の操作をさらに2回行い、合計3個の無機EL素子を作製した。
(連続点灯試験)
実施例1及び比較例1の各無機EL素子を用いて連続点灯試験を行った。具体的には、用意した無機EL素子を表1に示す試験条件ごとに1個ずつ用い、各無機EL素子の上部電極層及び下部電極層の間に120Hz、パルス幅100μs、200Vの電圧を印加して連続点灯させ、バリウムチオアルミネート:ユーロピウム(青色)の発光輝度の劣化を比較した。評価は、各試験条件における比較例1の輝度保持率を100%とし、それに対する実施例1の輝度保持率を比較することにより行った。得られた結果を表1に示す。
実施例1及び比較例1の各無機EL素子を用いて連続点灯試験を行った。具体的には、用意した無機EL素子を表1に示す試験条件ごとに1個ずつ用い、各無機EL素子の上部電極層及び下部電極層の間に120Hz、パルス幅100μs、200Vの電圧を印加して連続点灯させ、バリウムチオアルミネート:ユーロピウム(青色)の発光輝度の劣化を比較した。評価は、各試験条件における比較例1の輝度保持率を100%とし、それに対する実施例1の輝度保持率を比較することにより行った。得られた結果を表1に示す。
表1に示した通り、実施例1の無機EL素子の場合は、いずれの条件においても輝度保持率が高く、輝度劣化が十分に抑制されている。
1…上部電極層(第2の電極層)、2…下部電極層(第1の電極層)、3…第3の絶縁体層、4…発光層、41…第1の蛍光体層、42…第2の蛍光体層、5…第2の絶縁体層、6…第4の絶縁体層、7…第1の絶縁体層、8…基板、9…保護層、10…無機EL素子、60…無機EL素子、61…上部電極層(第2の電極層)、62…下部電極層(第1の電極層)、64…蛍光体層。
Claims (8)
- 対向する一対の電極層と、
前記一対の電極層間に形成された2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する第1の蛍光体層と、
前記電極層の少なくとも一方と前記第1の蛍光体層との間に形成された絶縁体層と、
を備え、
前記第1の蛍光体層がその延在方向に沿って非連続的に形成されていることを特徴とする電界発光素子。 - 前記1対の電極層はそれぞれの延在方向が互い直交するようにストライプ状に形成されており、
前記第1の蛍光体層は前記電極層の延在方向の交差部に対応して非連続的に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電界発光素子。 - 前記第1の蛍光体層の非連続領域に、前記第1の蛍光体層それぞれと隣接して形成された、1種の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する非発光層を更に備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電界発光素子。
- 前記電極層の少なくとも一方と前記第1の蛍光体層との間において、前記第1の蛍光体層に隣接して形成された、1種の金属元素を含む硫化物を含有する保護層を更に備えることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の電界発光素子。
- 前記第1の蛍光体層の延在方向に沿って前記第1の蛍光体層に隣接して形成された第2の蛍光体層を更に備えることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の電界発光素子。
- 前記第2の蛍光体層が1種の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有することを特徴とする、請求項5に記載の電界発光素子。
- 基板の一側に第1の電極層を形成する第1工程と、
前記第1の電極層の前記基板と反対の側に絶縁体層を形成する第2工程と、
前記絶縁体層の前記基板と反対の側に、2種以上の金属元素を含む硫化物からなる母体材料を含有する第1の蛍光体層を、その延在方向に沿って非連続的となるように形成する第3工程と、
前記蛍光体層の前記基板と反対の側に第2の電極層を形成する第4工程と、
を備えることを特徴とする電界発光素子の製造方法。 - 1種の金属元素を含む硫化物を含有する母体材料を用いて、前記第1の蛍光体層の非連続領域において前記第1の蛍光体層それぞれと隣接する非発光層と、前記第1の蛍光体層の延在方向に沿って前記第1の蛍光体層と隣接する第2の蛍光体層とを、同時に形成する工程を更に備えることを特徴とする、請求項7に記載の電界発光素子の製造方法。
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WO2008105472A1 (ja) * | 2007-02-28 | 2008-09-04 | Idemitsu Kosan Co., Ltd. | 有機el材料含有溶液、有機el薄膜形成方法、有機el薄膜を含む有機el素子および有機elディスプレイパネル製造方法 |
-
2004
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US9290691B2 (en) | 2007-02-28 | 2016-03-22 | Idemitsu Kosan Co., Ltd. | Organic el material-containing solution, method for forming organic el thin film, organic el device comprising organic el thin film, and method for manufacturing organic el display panel |
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