JP2005288511A - 減圧鋳型造型の注湯方法及び鋳物 - Google Patents
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Abstract
Vプロセス鋳型を用いて薄肉鋳物の鋳造する減圧造型の注湯方法とその方法により鋳造した鋳物を提供する。
【解決手段】
原形模型板の表面に遮蔽部材を密着する遮蔽部材密着工程と、密着した遮蔽部材上に造型枠体を載置すると共に造型枠体内に粘結剤を含まない充填材を充填する工程と、充填材の上面を密閉して造型枠体内を負圧にし、もって遮蔽部材を充填材側に吸着して遮蔽部材を成形する工程と、ついで原形模型板を遮蔽部材から離型して造型面を有する半割鋳型を造型する工程と、半割鋳型と同様にして造型したもう一つの半割鋳型と型合せして鋳造キャビティを画成すると共に完成鋳型を形成する工程と、鋳造キャビティ内に溶融金属を注入する工程と、しかる後造型枠体内の負圧状態を解除して鋳物を取り出す工程と、を有する減圧鋳型造型の注湯方法において、完成鋳型に注湯を開始する前に造型枠体を通じて鋳造キャビティ内を減圧する工程を有する。
【選択図】
図1
Description
また、前記造型枠体を通じて前記鋳造キャビティ内を減圧する工程が、前記遮蔽部材密着工程の後に、前記原形模型板の製品部にベントプラグを配した後、前記密着した遮蔽部材及びベントプラグの上に造型枠体を載置して該造型枠体内に充填材を充填する工程により設けられたベントプラグを通じてなされることを特徴とする。
さらに、前記造型枠体を通じて前記鋳造キャビティ内を減圧する工程が、前記半割鋳型を造型した後、遮蔽部材に多数個の孔を貫通させた通気孔によりなされることを特徴とする。
さらに、前記半割鋳型には開放揚がりを設けないことを特徴とする。開放揚がりは鋳造キャビティ内の空気や溶湯のカスなどを吐き出す作用により、型くずれせず安定して鋳造するために通常用いられていた。しかし、本発明においてはこの開放揚がりを設けずに鋳造キャビティを適度に減圧すると溶湯の流れが良くなり、型くずれが起きる前に鋳造キャビティ内に溶湯を効率的に充たすことができることを発見したのである。
なお、本発明において開放揚がりを設けないことにより、押湯、捨て湯部は必要最小限とすることができる。これにより、製品歩留まりが向上するという利点がある。
さらに、本発明は、通常のVプロセス鋳型の特徴は保持しているため、解枠性に優れ、薄肉鋳物の取り出しが簡単になるという利点がある。
即ち、原形模型板の表面に遮蔽部材を密着する遮蔽部材密着工程と、該密着した遮蔽部材上に造型枠体を載置すると共に該造型枠体内に粘結剤を含まない充填材を充填する工程と、該充填材の上面を密閉して造型枠体内を負圧にし、もって前記遮蔽部材を充填材側に吸着して遮蔽部材を成形する工程と、ついで前記原形模型板を遮蔽部材から離型して造型面を有する半割鋳型を造型する工程と、該半割鋳型と同様にして造型したもう一つの半割鋳型と型合せして鋳造キャビティを画成すると共に完成鋳型を形成する工程と、該鋳造キャビティ内に溶融金属を注入する工程と、しかる後前記造型枠体内の負圧状態を解除して鋳物を取り出す工程と、を有する減圧鋳型造型の注湯方法であって、前記完成鋳型に注湯する前に前記造型枠体を通じて前記鋳造キャビティ内を減圧する工程を有し、前記鋳造キャビティに注湯する際、鋳型内部圧力をPm、前記鋳造キャビティ内圧力をPcとしたとき、Pm=1〜75kPa、Pc=1〜95kPaでかつ、Pc−Pm=3〜94kPaとなることを特徴とする。
ここで、鋳型内部圧力Pmを1〜75kPaとしたのは、1kPaより低くすると真空ポンプが大掛りなものになり、75kPaより高くすると注湯時に発生するガスを吸引することができないためである。また、鋳造キャビティ内圧力Pcを1〜95kPaとしたのは、95kPaより高くすると大気圧(101.3kPa)との圧力差が十分でなくなるため、溶湯のスムースな流入を確保することができず、1kPaより低くすると鋳型が鋳造キャビティに向かい崩壊する恐れがあるためである。さらに、Pc>Pmになるようにする必要がある。なぜなら、鋳型内部圧力Pmを鋳造キャビティ内圧力Pcよりも低い減圧度にすることで、溶湯の鋳型への差込みを防止するためである。また、Pc−Pmは、Pc及びPmの値により決まってくるが、3〜94kPa必要である。
ここで、造型枠体とはVプロセスにおいて使用される吸引パイプが具備された鋳枠をいう。
また、本発明において、通気孔はフィルム成形後に製品部にベントプラグを配して造型し、抜型後に鋳造キャビティ側からベントプラグのスリットに沿って、フィルムを切欠くことで設けることができる。さらに、前記通気孔は鋳造キャビティ側から針等で鋳型内部へ貫通する孔を開けることにより確保しても良い。
さらに、本発明において、前記のように鋳造キャビティを適度に減圧することにより開放揚がりは不要とすることができる。なお、開放揚がりとは、上鋳型を突き抜け、鋳造キャビティと大気とを結ぶ管状の空隙である。従って、開放揚がりを設けないと、上半割鋳型の上部には鋳造キャビティと大気を結ぶ連通孔がないことになる。
図1は、実施例に用いた減圧鋳型造型装置の概略断面図である。上下の半割鋳型1a,1bは、Vプロセスの造型工程を用いて造型され、半割鋳型1a,1bを型合わせして、鋳造キャビティ2を画成した。
ここで、前記半割鋳型1a,1bの造型方法を図2に基づき詳しく説明する。図2において、原形模型板12の表面に遮蔽部材であるフィルム13を原形模型板12に負圧により密着させ、フィルム13上に前記造型枠体である鋳枠3を載置した後、フィルム13の上半割鋳型1a側に通気孔であるベントプラグ6を模型形状に合わせて複数個配置した。その後、鋳枠内に砂を充填し、上半割鋳型1aの造型を行った。次に、上半割鋳型1aを前記原形模型板12より離型し、上半割鋳型1aの鋳造キャビティ面側からベントプラグ6のスリットに沿ってフィルム13を切り欠いた。このようにしてベントプラグ6を通気孔として確保して上半割鋳型1aを造型した。
次に、この上半割鋳型1aと同様にして造型したもう一つの下半割鋳型1bとを型合せして鋳造キャビティを画成するとともに完成鋳型を形成した(図1)。この時、造型枠体である鋳枠3内に通じている鋳造キャビティ2は湯道及び湯口を介して大気と連通している。なお、本実施例においては、下半割鋳型1bには通気孔であるベントプラグ6が設けられていないが、場合により設けることもできる。以上のようにして、図1の状態の減圧鋳型造型装置を完成した。
また、鋳造キャビティ2を通気孔であるベントプラグ6を通して、半割鋳型1a,1bと同時に減圧した。半割鋳型1a,1b内部の圧力は、圧力センサー7により検出され、その検出圧力は制御装置8に送られる。この制御装置8からは検出圧力に応じた制御信号が送られて、比例制御弁9を必要に応じた開度に調整し、半割鋳型1a,1b及び鋳造キャビティ2の吸引圧力を変化させ、この間に、鋳造キャビティ2内に溶融金属としてアルミニウム合金を注入した。しかる後、造型枠体内の負圧状態を解除して鋳物を取り出した。この鋳物は3mm以下の薄肉で欠陥が無かった。
図3は針で上半割鋳型の内部に貫通する通気孔を開けた場合を示す。上下の半割鋳型21a,21bは、Vプロセスにより造型した。次に、上半割鋳型21aの鋳造キャビティ22側より針で上半割鋳型21a側にフィルムを貫通し、鋳型内に到達する複数個の通気孔23を開けた。その孔明けの方法は、図4に示すように、複数本の針24を備えた治具を駆動装置25にて駆動し、一度に通気孔23を開けた。針24の位置はコンピュータ制御により鋳物の形状において湯廻りが悪いと考えられる場所や湯口から遠い鋳物形状部に合わせて予め設定されるようになっている。また、装置の簡素化や、通気孔23の数が少ない場合は手作業により孔明けを行っても良い。なお、本実施例においては、下半割鋳型21bには通気孔23が開けられていないが、場合により開けることができる。その後、半割鋳型21a,21bを型合わせし、鋳造キャビティ22を構成した(図3)。次に、半割鋳型21a,21bの内部圧力PmをPm=1〜75kPa、鋳造キャビティ22の内圧力PcをPc=1〜95kPaとなるように圧力条件を調整しながら、注湯を行った。
注湯時の半割鋳型1a,1bの内部圧力をPm、鋳造キャビティ2の内圧力をPc及び半割鋳型1a,1bの内部圧力Pmと鋳造キャビティ2の内圧力Pcの圧力差をPc−Pmとしたときに、鋳造キャビティ2の内圧力Pcは溶湯のスムースな流入を確保するためには大気圧(101.3kPa)との圧力差が必要である。また、Pc−Pmが小さいと型くずれを生じ、Pc−Pmが大きいとPmが小さくなるため真空設備が大きくなり、設備コストが大きくなる。
上記の理由及び実験結果から、Pm=1〜75kPa、Pc=1〜95kPaでかつ、Pc−Pm=3〜94kPaの場合に効果があることがわかった。
さらに詳しく圧力の変化を説明する。注湯開始から注湯完了にかけては、鋳造キャビティ2の減圧による湯廻り性の向上、成形フィルム焼失に伴う発生ガスの吸引のために、半割鋳型1a,1bの内部圧力Pmは高減圧度を保つ。
前記鋳造キャビティ2が溶湯で満たされる注湯完了以降は、前記半割鋳型1a,1bの内部圧力Pmを、前記圧力センサー7が検知して前記制御装置8に送信する。制御装置8は、前記比例制御弁9の開度を調整して、半割鋳型1a,1bの内部圧力Pmの調整を行い、半割鋳型1a,1bの内部圧力Pmを低減圧度にし、溶湯の鋳型への差込みを防止する。
また、上半割鋳型31aには鋳造キャビティと連結し、押湯と兼用でこの上半割鋳型31aの上面に向けて開口した開放揚がりRを設けた。さらに、下半割鋳型31bには、鋳造キャビティ32と開放揚がりRを連結する図示していない板ぜきを設けた。
鋳造キャビティ32内部は開放揚がりRの上半割鋳型31a上面にある開口に接続された接続治具38、鋳造キャビティ減圧用リザーバタンク39、圧力調整弁40及びリザーバタンク36を介して、減圧ポンプ37により減圧した。
次に、半割鋳型31a,31bの内部圧力PmをPm=1〜75kPa、鋳造キャビティ32の内圧力PcをPc=1〜95kPaとなるように圧力条件を調整しながら、注湯を行った。
また、上半割鋳型31aには鋳造キャビティと連結し、押湯と兼用でこの上半割鋳型31aの上面に向けて開口した開放揚がりRを設けた。さらに、下半割鋳型31bには、鋳造キャビティ32と開放揚がりRを連結する図示していない板ぜきを設けた。このような鋳型に対し、鋳造キャビティを減圧せずに注湯を行った。
図8は、実施例2の方法で注湯した結果を示す。図9は、実施例3の方法で注湯した結果を示す。図10は比較例の方法で注湯した結果を示す。
図10に示すように、前記比較例である鋳造キャビティ内を減圧しない場合には、せきに近い鋳造キャビティの一部にのみ溶湯が充填されていることがわかる。次に、図9に示す実施例3の本発明を用いた方法によるものは、開放揚がりRのある部分には溶湯が到達しており、比較例と比べて鋳造キャビティ内を減圧する効果が現れている。しかし、開放揚がりRのない部分については溶湯が充填されていないことがわかり、鋳物としては不十分なものである。それに引き替え、図8に示すように、実施例2に示す本発明を用いた別の方法の場合は、鋳造キャビティ全体に溶湯が充満し、実施例3の結果よりさらに鋳造キャビティ内を減圧する効果が現れていることがわかる。
以上の結果から見ても、本発明を用いることの有用性を確認することができる。
その結果、針により通気孔を設ける方法が、充てん性、造型コスト、造型の作業性とも他の2方法と比較して良好な結果を示した。
2 鋳造キャビティ
3,3 鋳枠
6 ベントプラグ
12 原形模型板
13 フィルム
21a,21b 半割鋳型
22 鋳造キャビティ
23 通気孔
R 開放揚がり
31a,31b 半割鋳型
32 鋳造キャビティ
33,33 鋳枠
38 接続治具
Claims (8)
- 原形模型板の表面に遮蔽部材を密着する遮蔽部材密着工程と、
該密着した遮蔽部材上に造型枠体を載置すると共に該造型枠体内に粘結剤を含まない充填材を充填する工程と、
該充填材の上面を密閉して造型枠体内を負圧にし、もって前記遮蔽部材を充填材側に吸着して遮蔽部材を成形する工程と、
ついで前記原形模型板を遮蔽部材から離型して造型面を有する半割鋳型を造型する工程と、
該半割鋳型と同様にして造型したもう一つの半割鋳型と型合せして鋳造キャビティを画成すると共に完成鋳型を形成する工程と、
該鋳造キャビティ内に溶融金属を注入する工程と、
しかる後前記造型枠体内の負圧状態を解除して鋳物を取り出す工程と、を有する減圧鋳型造型の注湯方法において、
前記完成鋳型に注湯を開始する前に前記造型枠体及び開放揚がりの少なくとも一方を通じて前記鋳造キャビティ内を減圧する工程を有することを特徴とする減圧鋳型造型の注湯方法。 - 前記造型枠体を通じて前記鋳造キャビティ内を減圧する工程が、前記遮蔽部材密着工程の後に、前記原形模型板の製品部にベントプラグを配した後、前記密着した遮蔽部材及びベントプラグの上に造型枠体を載置して該造型枠体内に充填材を充填する工程により設けられたベントプラグを通じてなされることを特徴とする請求項1に記載の減圧鋳型造型の注湯方法。
- 前記造型枠体を通じて前記鋳造キャビティ内を減圧する工程が、前記半割鋳型を造型した後、遮蔽部材に多数個の孔を貫通させた通気孔によりなされることを特徴とする請求項1に記載の減圧鋳型造型の注湯方法。
- 前記完成鋳型の少なくとも一方の半割鋳型の減圧度を注湯前から注湯終了時まで測定する工程と、測定した減圧度を制御装置に伝達し、該半割鋳型の鋳型内部及び前記鋳造キャビティの減圧度を調整する工程とを、さらに有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の減圧鋳型造型の注湯方法。
- 前記鋳造キャビティに注湯する際、鋳型内部圧力をPm、前記鋳造キャビティ内圧力をPcとしたとき、
Pm=1〜75kPa、Pc=1〜95kPaでかつ、
Pc−Pm=3〜94kPaとなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の減圧鋳型造型の注湯方法。 - 前記半割鋳型に開放揚がりを設けないことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の減圧鋳型造型の注湯方法。
- 請求項1から請求項6のいずれかに記載の減圧鋳型造型の注湯方法により鋳造した鋳物。
- 原形模型板の表面に遮蔽部材を密着する遮蔽部材密着工程と、
該密着した遮蔽部材上に造型枠体を載置すると共に該造型枠体内に粘結剤を含まない充填材を充填する工程と、
該充填材の上面を密閉して造型枠体内を負圧にし、もって前記遮蔽部材を充填材側に吸着して遮蔽部材を成形する工程と、
ついで前記原形模型板を遮蔽部材から離型して造型面を有する半割鋳型を造型する工程と、
該半割鋳型と同様にして造型したもう一つの半割鋳型と型合せして鋳造キャビティを画成すると共に完成鋳型を形成する工程と、
該鋳造キャビティ内に溶融金属を注入する工程と、
しかる後前記造型枠体内の負圧状態を解除して鋳物を取り出す工程と、を有する減圧鋳型造型の注湯方法であって、
前記鋳造キャビティに注湯する際、鋳型内部圧力をPm、前記鋳造キャビティ内圧力をPcとしたとき、
Pm=1〜75kPa、Pc=1〜95kPaでかつ、
Pc−Pm=3〜94kPaとなることを特徴とする減圧鋳型造型の注湯方法。
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