JP2005281806A - 靭性に優れた低降伏点鋼材とその製造方法 - Google Patents

靭性に優れた低降伏点鋼材とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 制振ダンパー等の制震デバイス用として好適な、靭性に優れた低降伏点鋼材とその製造方法を提供する。
【解決手段】 C:0.05%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.0%以下、Al:0.005〜0.05%、Zr:0.005〜0.10%、Ni:0.0070%以下、{N−Zr/6.52}≦0.0025(N、Zr:各元素の含有量(mass%))を満足するように含み、残部Feおよび不可避不純物からなる組成を有し、ミクロ組織に占めるフェライト相の体積分率が95%以上である組織を有する低降伏点鋼材とする。この鋼材は、熱間圧延後、900〜1100℃の温度に加熱後、空冷あるいは焼入れする熱処理、あるいは650〜870℃に加熱する粗粒化熱処理を施すことにより得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、地震等による振動のエネルギーを吸収して鋼構造物の耐震性を向上するための制震ダンパー等の制震デバイス等に用いて好適な、低降伏点鋼材に係り、とくに降伏点が100〜270MPaの靭性に優れた低降伏点鋼材およびその製造方法に関する。なお、ここでいう「鋼材」には、厚鋼板、形鋼、棒鋼、鋼管、薄板等を含むものとする。
建築構造物の耐震性を向上する方法として、変形能力に優れた低降伏点鋼材をエネルギー吸収用デバイス(制震デバイスともいう)として鋼構造物の一部に配し、大地震等の振動エネルギーを塑性変形によって吸収する方法が用いられている。このような制震デバイスに使用される鋼材は、地震の際には鋼構造物の他の部位、例えば通常の柱や梁などの構造材よりも早期に塑性変形を開始する必要がある。このため、極めて低い降伏点をもつことが要求される。
このような鋼材の製造方法として、例えば、特許文献1には、純鉄に近い成分の素材を用い、熱間加工とその後の冷却を調整、あるいは熱処理を施すことにより、低い降伏応力、引張強さ、高い伸びを有する鋼材を得る、振動エネルギー吸収部材鋼材の製造方法が提案されている。
また、特許文献2には、純鉄に近い成分に、Nb、Vのいずれかを含む素材を用い、熱間圧延条件を調整して熱間圧延し、その後910〜960℃で焼準することにより、降伏強さが低く、伸びの高い構造用鋼板とする、構造用鋼板の製造方法が提案されている。また、特許文献3には、純鉄に近い成分の素材を用い、熱間圧延条件を調整して熱間圧延し、その後910〜960℃で焼準することにより、その後910〜960℃で焼準することにより、降伏強さが低い構造用鋼板とする、構造用鋼板の製造方法が提案されている。しかしながら、特許文献1〜特許文献3に記載された技術で製造された鋼材は、いずれも、フェライト粒を粗粒にすることにより降伏点を低下させるものであり、靭性に劣るという欠点があった。また、いずれもCを0.01%未満まで低減する必要があり、製鋼工程のコストが増大することや、C含有量を極めて低減することにより粒界強度が低下し、粒界破壊が起きる場合があるなどの問題があった。
大地震の際には、衝撃的な変形荷重が付加されるため、制震デバイスに用いる低降伏点鋼材が十分な靭性を有していないと、塑性変形によってエネルギーを吸収することなく破壊してしまい、制震デバイスの機能を果たすことができないという問題があり、靭性に優れた低降伏点鋼材が要望されている。
このような要望に対し、例えば、特許文献4には、C:0.10%以下、Ti:0.40%以下含み、かつC、Ti、N量間の関係を限定し、実効的なCを低減した鋼片を熱間圧延後900〜960℃の温度で焼準し、組織をフェライト単相とする、靭性の優れた低降伏点鋼の製造方法が提案されている。
また、特許文献5には、C:0.1%以下、Ti:0.005〜0.4%含み、C、Ti、N量間の関係を限定し、実効的なCを低減し、あるいはさらにNb、V、あるいはBを含む組成と、95%以上のフェライト相を含み、円相当直径で20μm以上の結晶粒径を有する組織とを有し、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度が0℃以下である靭性の優れた低降伏点鋼が提案されている。
また、特許文献6には、C:0.005〜0.06%、Ti:0.005〜0.05%含み、さらに、Nb、V、Taの1種以上を含み、Ti当量と、C、N量間の関係を限定し、実効的なC、Nを低減した組成と、フェライト単相で15〜60μmの粒径を有する組織とを有する制震デバイス用低降伏点鋼が提案されている。
特許文献4〜特許文献6に記載された技術では、C、Ti、N量間の関係を適切に制御することにより、Cを極端に低減することなく実効的なCを低減するとともに、靭性を劣化させる固溶Nを低減することにより、低降伏点化と同時に粗粒フェライト粒でありながら優れた低温靭性を達成できるとしている。そして、Nb、V、Ta等の元素もC、Nを炭窒化物として固定し、C固定元素として実効的なC量を低減する効果を有するとしている。
特許第2783365号公報 特許第3011536号公報 特許第3011537号公報 特開平10−183293号公報 特開平11−229076号公報 特開2000−109953号公報
しかしながら、上記した特許文献4〜特許文献6に記載された技術では、C、Ti、N、あるいはその他のC、Nを固定する元素といった、複数の元素の含有量を同時に制御する必要があり、製鋼工程において煩雑な作業を必要とするうえ、また、C、Nを十分に低減できない場合には、Ti含有量を増加せざるを得ず、材料コストが増大するという問題があった。また、上記した特許文献4〜特許文献6に記載された技術によっても、フェライト粒径が著しく粗大な場合や、靭性を劣化させるパーライトなどの第二相が増加した場合には、必ずしも十分な低温靭性が得られないという問題があった。
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、製鋼工程やそれ以後の製造工程での大きな負荷やコスト増大を招かずに製造できる、制震ダンパー等の制震デバイス用として好適な、靭性に優れた低降伏点鋼材およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明で対象とする制震ダンパー等の制震デバイス用鋼材としては、要求強度として、降伏強さで165MPa級、235MPa級など、数種類の水準があるが、本発明では、要求強度に応じて鋼材の成分を変更することなく、同一成分で、広い範囲の降伏強さを有する鋼材を作り分けることができる製造方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、まず、低降伏点鋼材の靭性向上におよぼす各種合金元素の影響について鋭意検討した。その結果、Zrを微量添加することにより、フェライトの靭性が向上し、フェライト/セメンタイト界面を起点とする破壊が抑制され、さらにフェライト粒界強度も増加し、低降伏点鋼材の靭性が顕著に改善されることを見出した。Zrを微量添加することにより、必ずしも鋼中のCを極端に低減する必要はなくなり、また、降伏強さ低減のためにフェライト粒を粗大化させた場合でも、優れた靭性を維持することが可能となるという知見を得た。
本発明者らの検討によれば、従来では、Cの含有によりパーライトなどの靭性を劣化させる第二相が生じるため、低降伏点鋼材の靭性向上のために、C量を低減すること、あるいはTi等のCを固定して実効的なC量を低減することが必要であった。
パーライトはセメンタイト(Fe3C)とフェライト(α-Fe)の層状組織であり、衝撃的に荷重が負荷されるとフェライト/セメンタイト界面が剥離して破壊の起点となりやすく、鋼の靭性を低下させる。また、より微細なセメンタイトとラス状のフェライトからなるベイナイト組織の場合も、フェライト/セメンタイト界面が破壊の起点となりやすい。Ti等の炭化物形成元素を添加してCを固定して、実効的なC量を低減することにより、パーライト等の第二相の生成を抑制することはできるが、炭化物析出による析出硬化によって靭性が低下したり降伏点が上昇してしまう場合があった。そのため、析出量と析出形態の精細な制御なしでは、必ずしも靭性の優れた低降伏点鋼を得ることができない。また、C、N等の侵入型元素が固溶状態で存在する場合には、フェライト(α-Fe)の靭性が著しく劣化し、一方、Ti添加等により炭窒化物として完全に固定された場合には、フェライト粒界強度が減少して粒界破壊が起きやすくなる。本発明者らは、これらの低降伏点鋼材の問題を同時に解消できる方策が、Zrの微量添加であることを見出した。
本発明は、上記した知見に立脚して、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)mass%で、C:0.05%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.0%以下、Al:0.005〜0.05%、Zr:0.005〜0.10%、N:0.0070%以下を含有し、かつN、Zrを次(1)式
{N−Zr/6.52}≦0.0025 ・・・(1)
(ここで、N、Zr:各元素の含有量(mass%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる組成と、体積率で95%以上のフェライト相を含む組織を有することを特徴とする靭性に優れた低降伏点鋼材。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Cr:0.05〜0.30%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする低降伏点鋼材。
(3)mass%で、C:0.05%以下、Si:0.4%以下、Mn:1.0%以下、Al:0.005〜0.05%、 Zr:0.005〜0.10%、N:0.0070%以下を含有し、かつN、Zrを次(1)式
{N−Zr/6.52}≦0.0025 ・・・(1)
(ここで、N、Zr:各元素の含有量(mass%))
を満足するように、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延鋼材とした後、該熱延鋼材に900〜1100℃の温度で焼準する熱処理を施すことを特徴とする靭性に優れた低降伏点鋼材の製造方法。
(4)(3)において、前記熱間圧延の圧延終了温度が900℃〜650℃の範囲であることを特徴とする低降伏点鋼材の製造方法。
(5)(4)において、前記熱間圧延の圧延終了後に、5℃/s以上の平均冷却速度で550℃未満の温度まで冷却することを特徴とする低降伏点鋼材の製造方法。
(6)(3)ないし(5)のいずれかにおいて、前記熱処理に代えて、900〜1100℃の温度から焼入れする熱処理とすることを特徴とする低降伏点鋼材の製造方法。
(7)(3)ないし(6)のいずれかにおいて、前記熱処理に代えて、650℃〜870℃の温度に再加熱し粗粒化する熱処理を施すことを特徴とする低降伏点鋼材の製造方法。
(8)(3)ないし(6)のいずれかにおいて、前記熱処理を施したのち、さらに、650℃〜870℃の温度に再加熱する粗粒化熱処理を施すことを特徴とする低降伏点鋼材の製造方法。
本発明によれば、靭性に優れた低降伏点鋼材が、製鋼工程やそれ以後の製造工程での大きな負荷やコスト増大を招くことなく、安価にしかも容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、同一成分の鋼素材から、広い範囲の降伏強さを有する低降伏点鋼材を作り別けることができ、制震デバイス作製において経済的利点が大きいという効果もある。
まず、本発明鋼材の組成限定理由について説明する。なお、以下組成に関するmass%は単に%と記す。
C:0.05%以下
Cは、鋼中に固溶して強度を増加させるとともに、パーライト等の第二相の形成を促進し、低降伏点鋼材の靭性を劣化させる。このため、本発明ではCはできるだけ低減することが好ましく、Cは0.05%以下に限定した。なお、固溶Cを極端に少なくすると、フェライト粒界強度が低下して粒界破壊が起きやすくなり、靭性向上の観点からは特に極端に低減する必要はない。とくに、第二相の分率と分布を制御することによって、強度レベルを変化させることができたり、また加工硬化を促進して延性を向上させることができる場合もあるので、強度・延性の制御のために0.005%以上とすることが望ましい。
Si:0.4%以下
Siは、固溶強化により鋼材強度を上昇させる元素であり、所望の強度を確保したい場合には、0.05%以上含有することが好ましいが、0.4%を超える含有は靭性を著しく劣化させる。このため、本発明ではSiは0.4%以下に限定した。なお、靭性を重視する場合には、0.1%以下の不可避的不純物レベルとすることが好ましい。
Mn:1.0%以下
Mnは、固溶強化とフェライト粒微細化によって鋼の強度を上昇させる元素であり、所望の強度を確保する観点からは、0.10%以上含有することが好ましい。一方、1.0%を超える含有は、靭性低下が著しくなるとともに、低降伏点化も難しくなる。このため、Mnは1.0%以下に限定した。なお、好ましくは、強度・靭性バランスの観点から0.10〜0.80%である。
Al:0.005〜0.05%
Alは、溶鋼の脱酸剤として作用する元素であり、十分な脱酸効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。また、Alは、鋼中の固溶Nと結びついて窒化物を形成し、靭性を改善する効果も有する。一方、0.05%を超える含有は、清浄度が低下し、靭性が低下する。このようなことから、Alは0.005〜0.05%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.010〜0.04%である。
Zr:0.005〜0.10%
Zrは、本発明において必須の元素であり、セメンタイト/フェライト界面やフェライト粒界など、低降伏点鋼の破壊の起点になるウィークポイントを補強して靭性を向上させる作用を有する。こうした作用を発揮するには、少なくとも0.005%の含有を必要とする。一方、0.10%を超える含有は鋼材強度が上昇し、低降伏点化が困難になるとともに、靭性が劣化する。このため、Zrは0.005〜0.10%の範囲に限定した。なお、好ましくは靭性の観点から0.010〜0.030%である。
N:0.0070%以下
Nは、鋼中に固溶して、鋼材強度を増加させるが、0.0070%を超える含有は伸び、靭性を顕著に低下させ、窒化物形成元素を添加して固溶Nを固定した場合にも、析出物の量が非常に多くなるため、靭性の改善は限られてしまう。このため、本発明では、Nは0.0070%以下に限定した。なお、好ましくは0.0050%以下である。
{N−Zr/6.52}≦0.0025 ・・・(1)
(1)式は、靭性向上のために、固溶N量を限定する条件である。鋼中の固溶Nは、靭性を著しく劣化させる。このため、本発明ではZrを固溶Nと結合させ、固溶N量を靭性に悪影響を及ぼさない程度の0.0025%以下に調整する。Zrと結合して固定されるN量は、原子量比からおおむねZr/6.52である。本発明者らの研究から、低降伏点鋼材において、良好な靭性を得るためには、鋼中の固溶N量を0.0025%以下とする必要があることが見出されている。(1)式を満足するようにN量に応じてZr含有量を調整することが好ましい。
上記した基本成分に加えて、さらに必要に応じて、Ti、Nb、V、B、Crのうちから選ばれた1種又は2種以上を含有できる。
Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Cr:0.05〜0.30%のうちから選ばれた1種または2種以上
Ti、Nb、V、B、Crはいずれも、Nと結合して窒化物を形成する元素であり、必要に応じ選択して1種以上含有できる。固溶Nを固定することにより靭性が向上する。本発明では、Zr含有によって靭性が向上するため、必ずしもこれらの元素を含有する必要はないが、強度・靭性の調整のために必要に応じて含有することが好ましい。
次に、本発明鋼材の好ましい製造条件について説明する。
上記した組成の溶鋼を、転炉等の通常の溶製方法を用いて、溶製し、連続鋳造法等の公知の鋳造法によりスラブ等の鋼素材とする。
ついで、これら鋼素材を、好ましくは1050〜1200℃の温度に加熱し、熱間圧延を施して厚鋼板等の熱延鋼材とする。熱間圧延は、所望の寸法形状の鋼材が製造できればよく、その条件はとくに限定されないが、靭性向上の観点から、熱間圧延の圧延終了温度を、900℃〜650℃の範囲の温度とすることが好ましい。
本発明が対象とする低降伏点鋼材において、900〜650℃の温度域は、フェライトとオーステナイトからなる二相域、あるいはフェライト単相域である。この温度域で熱間圧延を終了する圧延とすることにより、フェライト粒内に適量の圧延歪を導入することができる。この時導入した圧延歪は、その後の熱処理の際にフェライト粒を成長および粗大化させる駆動力となる。このため、圧延歪を制御すること、すなわち圧延終了温度を制御することによって、フェライト粒径を制御することができ、目標の降伏点に調整することが容易となる。
この熱間圧延終了温度を調整する方法は、特に、焼準、焼入れなどの熱処理で得られる組織よりもフェライトを粗粒化して降伏点を低下させる必要がある場合に有効である。
圧延終了温度が650℃未満では、導入される歪が大きすぎて、その後の熱処理の際に微細な再結晶フェライト粒が生成し、粗粒化の目的を達成できない。また、熱処理による歪の除去が不十分な場合、最終的に得られる製品の靭性が低下する。
一方、圧延終了温度が900℃を超えると、ほぼオーステナイト単相となってフェライトがほとんど存在しなくなり、フェライト粒内に圧延歪を導入することができない。このため、熱間圧延の圧延終了温度を900〜650℃の範囲に限定することが好ましい。
熱間圧延された熱間圧延鋼材は、圧延終了後、5℃/s以上の平均冷却速度で550℃未満の温度まで冷却することが好ましい。
熱間圧延によって導入された歪は、高温に長時間保持あるいは滞留する場合、回復や、再結晶によって減少する。導入された歪をより有効に利用するために、圧延終了後に回復、再結晶の生じない550℃未満の低温域まで5℃/s以上の冷却速度で速やかに冷却することが望ましい。冷却速度が5℃/s未満では、冷却中に回復・再結晶が進むため、導入された歪が消失する。
好ましくは、上記した条件の熱間圧延を施された、熱延鋼材には、ついでつぎのような熱処理を施される。熱処理は、焼準、焼入れ、または粗粒化熱処理、あるいは焼準または焼入れ後、粗粒化熱処理とする。
焼準の加熱温度:900〜1100℃
焼準の加熱温度は900〜1100℃とする。熱延鋼材を900〜1100℃のオーステナイト温度域に再加熱して空冷する焼準(焼きならし)を行うことによって、熱間圧延時に導入された歪を完全に除去し、フェライト粒組織を整粒化することができる。それにより、強度・靭性のばらつきを低減し、鋼の特性を安定化することができる。また、焼準の加熱温度によって得られるフェライト結晶粒径を制御できる。目的の強度レベルに応じて、焼準の加熱温度を変化させることによって、同一成分で異なる強度の低降伏点鋼材を製造することが可能となる。
焼準の加熱温度が900℃未満では、フェライト組織の整粒化を図ることができない。一方、加熱温度が1100℃を超えるとオーステナイトが粗大化し、焼準後のフェライト粒も粗大化して靭性が劣化する。このため、焼準の加熱温度は900〜1100℃の範囲に限定した。
焼入れの加熱温度:900〜1100℃
焼入れは、熱延鋼材を900〜1100℃の温度範囲に加熱したのち、水等の冷剤を用いて冷却する。上記した組成の鋼材は、焼入性が非常に低いため、例えば水冷を施した場合でも等軸状のフェライト粒あるいは不定形の擬ポリゴナルフェライトからなるフェライト主体の組織が得られるため、焼準と同様に、フェライト粒組織を整粒化できる。焼準と比較して、より細粒のフェライト組織が得られるため、低温靭性の向上、降伏点の増加などが必要な場合の手段として用いることができる。加熱温度が900℃未満では、フェライト組織の整粒化を図ることができない。一方、加熱温度が1100℃を超えるとオーステナイトが粗大化し、焼入れ後の組織が粗大化して靭性が劣化する。このため、焼入れの加熱温度は900〜1100℃の範囲に限定することが好ましい。
粗粒化熱処理の加熱温度:650℃〜870℃
粗粒化熱処理は、熱間圧延後の熱処理として、あるいは焼準または焼入れ後の熱処理として施すことが好ましい。
目標強度と化学組成によっては、フェライト粒を意図的に粗大化して低降伏点化することが必要になる場合がある。オーステナイト相を生じないAc変態点以下の温度域に再加熱することによって、粗粒化を達成することができる。粗粒化熱処理の加熱温度が650℃未満では、フェライト粒はほとんど粗大化しない。一方、加熱温度が870℃を超えると、オーステナイトが生じ、その後の冷却中の相変態によりかえって組織が微細化する場合がある。このため、粗粒化熱処理の加熱温度を650〜870℃の範囲に限定することが好ましい。なお、粗粒化熱処理の加熱温度からの冷却は、水冷などの強制冷却、あるいは空冷、炉冷のいずれでもよい。
表1に示す組成の鋼素材(300mm厚:スラブ)を、1150℃に加熱した後、表2に示す製造条件の熱間圧延を施し、熱間圧延鋼材(25mm厚鋼板)とした。得られた熱間圧延鋼材に表2に示す熱処理を施した。熱処理後、各熱間圧延鋼材の、組織、引張特性、靭性を調査した。
各熱間圧延鋼材の1/2t位置について、光学顕微鏡により、組織を同定し、画像解析装置を用いて組織分率を求めた。また、フェライト粒径は、光学顕微鏡で組織を撮像し、画像解析装置で円相当直径を求めた。
引張特性は、各熱間圧延鋼材の1/2t位置から、引張方向を圧延方向となるように、JIS 4号試験片を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施し、降伏点YS、引張強さTSを求めた。
靭性は、各熱間圧延鋼材の板厚1/2tからVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、0℃における吸収エネルギーvE(J)、および破面遷移温度vTrsを求め、評価した。
得られた結果を表3に示す。
Figure 2005281806
Figure 2005281806
Figure 2005281806
本発明例はいずれも、降伏点は270MPa以下であり、0℃未満のvTrsを有し、低降伏点でかつ低温靭性に優れた鋼材となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、降伏点が高いか、靭性が劣化している。

Claims (7)

  1. mass%で、
    C:0.05%以下、 Si:0.4%以下、
    Mn:1.0%以下、 Al:0.005〜0.05%、
    Zr:0.005〜0.10%、 N:0.0070%以下
    を含有し、かつN、Zrを下記(1)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる組成と体積率で95%以上のフェライト相を含む組織を有することを特徴とする靭性に優れた低降伏点鋼材。

    {N−Zr/6.52}≦0.0025 ・・・(1)
    ここで、N、Zr:各元素の含有量(mass%)
  2. 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Cr:0.05〜0.30%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載された低降伏点鋼材。
  3. mass%で、
    C:0.05%以下、 Si:0.4%以下、
    Mn:1.0%以下、 Al:0.005〜0.05%、
    Zr:0.005〜0.10%、 N:0.0070%以下
    を含有し、かつN、Zrを下記(1)式を満足するように、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼素材を熱間圧延して熱延鋼材とした後、該熱延鋼材に900〜1100℃の温度で焼準する熱処理を施すことを特徴とする靭性に優れた低降伏点鋼材の製造方法。

    {N−Zr/6.52}≦0.0025 ・・・(1)
    ここで、N、Zr:各元素の含有量(mass%)
  4. 前記熱間圧延の圧延終了温度が900℃〜650℃の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の低降伏点鋼材の製造方法。
  5. 前記熱間圧延の圧延終了後に、5℃/s以上の平均冷却速度で550℃未満の温度まで冷却することを特徴とする請求項4に記載の低降伏点鋼材の製造方法。
  6. 前記熱処理に代えて、900〜1100℃の温度から焼入れする熱処理とすることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の低降伏点鋼材の製造方法。
  7. 前記熱処理を施したのち、さらに、650℃〜870℃の温度に再加熱する粗粒化熱処理を施すことを特徴とする請求項3ないし6のいずれかに記載の低降伏点鋼材の製造方法。
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