JP2005281440A - ガラス繊維強化樹脂線状物及びその製造方法 - Google Patents

ガラス繊維強化樹脂線状物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラス繊維強化樹脂線状物の曲げ性能、柔軟性の向上。
【解決手段】破断のびが5%以上のガラス繊維と、マトリックス樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂線状物及びその製造方法。前記マトリックス樹脂は、25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させたものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス繊維強化樹脂線状物に関し、特に、光ファイバーケーブル等の抗張力体、即ち、テンションメンバーとして用いられるガラス繊維強化樹脂線状物に関する。
光ファイバーケーブルは、複数の光ファイバーを集合化させたケーブルであり、日本ではオフィス、マンション等に急速に普及してきている。光ファイバーケーブルには、光ファイバーが規定以上に伸びるのを防止するため、テンションメンバーが用いられている。光ファイバーケーブルは、例えば、特許文献1〜6に記載されている。
そして、このテンションメンバーとしては、特許文献6に記載されているようにアラミド繊維強化樹脂や、特許文献7に記載されているように、ガラス繊維強化樹脂が用いられている。
特開2003−15000号公報 特開2000−241681号公報 特開2003−107307号公報 特開平11−23925号公報 実用新案登録第2503790号公報 特開2000−199840号公報 特開平10−10382号公報
近年、光ファイバーケーブルは軽量化、コンパクト化が進み、光ファイバー自体の許容伸びも非常に小さいものが開発され光ファイバーケーブルの曲げ性能(以下、柔軟性と称する)が飛躍的に向上している。それに伴いテンションメンバー自体の柔軟性もより高いものが求められている。
しかし、アラミド繊維強化樹脂のテンションメンバーは、ガラス繊維強化樹脂のテンションメンバーに比較して、最小曲げ直径(円弧状に曲げたときテンションメンバーが破壊する限界の直径)が大きいという欠点や、テンションメンバーをボビンに巻き付けた後、使用のため巻ほぐした状態で、ボビンの巻径に対応した湾曲状を呈し、いわゆる巻癖が大きいという欠点がある。なお、特許文献6では、マトリックス樹脂として、過酸化物系触媒を含むビニルエステル樹脂が用いられている。
一方、ガラス繊維強化樹脂のテンションメンバーの場合でも、その最小曲げ直径Dが、該線状物の直径dの20倍未満であるような、高い柔軟性は持たなかった。特許文献7では、比較例として外形dが0.252mmのテンションメンバーが記載されているが、その最小曲げ直径Dは6〜7mmであり、D/dは20以上である。なお、特許文献7の実施例では、メタクリル酸エステル系単量体含有ノボラック型ビニルエステル樹脂がマトリックス樹脂として用いられている。
通常、0.6mm以下の直径の極細テンションメンバーの製造速度は1m/分以上の速度であるが、型や製造設備の大きさから硬化時間を10分以上にすることはできない。このため、マトリックス樹脂の硬化反応も、通常は200℃以下の雰囲気温度にて10分以内で行われ、好ましくは5分間以内、更に好ましくは3分間以内で行われる。
一方、未硬化の樹脂組成物の粘度は小さいことが望まれる。樹脂組成物の粘度が高い場合には、ガラスファイバーの隙間に樹脂組成物が浸入し難いからである。また、ガラスファイバーが細くなればなるほど、複数のガラスファイバーからなるヤーンの内部に樹脂組成物が浸入し難くなる。
これらのことから、速い硬化時間で、且つ、高強度・高弾性な機械的特性を有し、低粘度持性をもつ、熱硬化性樹脂は発見されていなかった。
また、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂を用いたテンションメンバーの場合には、光ファイバーケーブルとして後加工する際に問題が生じる場合があった。即ち、光ファイバーケーブルを製造する際には熱可塑性樹脂を被覆する工程があるが、この加熱処理時にテンションメンバーからスチレンガス等が発生し、光ファイバーケーブルが膨れる場合があった。
そこで、ガラス繊維強化樹脂のテンションメンバーにおける、曲げ性能・柔軟性の向上を目的として鋭意研究し本発明を完成した。
本発明の第1の側面では、破断のびが5%以上のガラス繊維と、マトリックス樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂線状物であって、前記マトリックス樹脂は、25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させたものであることを特徴とするガラス繊維強化樹脂線状物が提供される。
本発明において、ガラス繊維強化樹脂線状物の最小曲げ直径Dとガラス繊維強化樹脂線状物の直径dの比であるD/dが20以下であり、かつ、dが0.6mm以下であることが好ましい。
また、前記マトリックス樹脂は、前記液状エポキシ樹脂を平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂と共に硬化させたものであることが好ましい。
更に、前記マトリックス樹脂は、前記液状エポキシ樹脂を可撓性付与剤と共に硬化させたものであることが好ましい。
また、前記マトリックス樹脂は、25℃にて粘度が3500mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を前記熱カチオン重合触媒により硬化させたものであることが好ましい。
更に、前記酸無水物が、25℃にて液体であることが好ましい。
更にまた、前記液状エポキシ樹脂が、エポキシシクロヘキサン環又は2,3−エポキシプロピロキシ基を含むことが好ましい。
前記ガラス繊維が、55〜79.9重量%のSiO2、12.6〜32重量%のAl23、4〜20重量%のMgOを含むことが好ましい。
本発明の第2の側面では、破断のびが5%以上のガラス繊維と、マトリックス樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法であって、25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させる工程を含むことを特徴とするガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法が提供される。
本発明において、80〜200℃の雰囲気温度にて10分以内で硬化させることが好ましい。
また、前記液状エポキシ樹脂と、熱カチオン重合触媒又は酸無水物とを含む未硬化の樹脂組成物の粘度が、25℃にて10000mPa・s以下であることが好ましい。
本発明の第3の側面では、光ファイバーと、テンションメンバーとを含む光ファイバーケーブル用に、上記の何れかに記載のガラス繊維強化樹脂線状物であるテンションメンバーが提供される。
本発明のガラス繊維強化樹脂線状物は、破断のびが5%以上のガラス繊維と、マトリックス樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂線状物であって、前記マトリックス樹脂は、25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させたものであるため、本発明のガラス繊維強化樹脂線状物は高い柔軟性を有し、最小曲げ直径を減少させることができる。具体的には、ガラス繊維強化樹脂線状物の最小曲げ直径Dとガラス繊維強化樹脂線状物の直径dの比であるD/dが20以下となる。この場合であっても、直径dを0.6mm以下、好ましくは0.55mm以下に保持することができる。
また、本発明のガラス繊維強化樹脂線状物は、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であるため、光ファイバーケーブルとして、後加工する際の熱可塑性樹脂の被覆工程における加熱処理時に悪影響を及ぼすスチレンガス等が発生せず、非常に良好な光ファイバーケーブルの加工が可能である。
本発明のガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法は、破断のびが5%以上のガラス繊維と、マトリックス樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法であって、25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させる工程を含むので、高い柔軟性を有し、かつ、最小曲げ直径が減少したガラス繊維強化樹脂線状物を得ることができる。
80〜200℃の雰囲気温度にて10分以内で硬化させる場合には、ガラス繊維強化樹脂線状物を1m/分以上の製造速度で連続的に操業することができる。
本発明のテンションメンバーを用いた光ファイバーケーブルは、テンションメンバーが上記に記載のガラス繊維強化樹脂線状物であるので、高い柔軟性を有する。
図1に示すように、本発明のガラス繊維強化樹脂線状物1は、ガラス繊維2と、マトリックス樹脂4とを含む。25〜800本のガラス繊維2のモノフィラメントがヤーン3を形成してもよく、100〜200本のガラス繊維2のモノフィラメントがヤーン3を形成することが好ましい。ヤーン3の横断面は、実質的に円形であることが好ましい。ヤーン3とヤーン3とは互いに接触していてもよいし、接触していなくてもよい。ガラス繊維強化樹脂線状物1は、2〜15本のヤーンを含むことが好ましく、4〜10本のヤーンを含むことが更に好ましい。ガラス繊維強化樹脂線状物1の直径は、1.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以下であることが更に好ましい。本発明では、このように細いガラス繊維強化樹脂線状物であっても十分な引張り強度を保持することができる。また、ガラス繊維強化樹脂線状物1の直径は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることが更に好ましい。
マトリックス樹脂4の外周は、熱可塑性樹脂6で被覆されている場合がある。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が用いられ、ポリエチレンのようなポリオレフィンが好ましい。なお、熱可塑性樹脂6は必須の構成ではない。
本発明では、ガラス繊維の破断伸びが5.0%以上である。これにより、ガラス繊維樹脂線状物は、高い柔軟性を有し、最小曲げ直径を減少させることができる。ガラス繊維の破断伸びは、JIS R 3420 に規定する「ガラス繊維一般試験方法(4)引張り強さ」に従って測定する。文献によっては、破断伸びを最大伸び率ということもある。
ガラス繊維の弾性率が70GPa以上であることが好ましく、80GPa以上であることが更に好ましい。ガラス繊維樹脂線状物に高い柔軟性を付与し、最小曲げ直径を減少させるためである。
上記のような物性を示すガラス繊維としては、例えば、55〜79.9重量%のSiO2、12.6〜32重量%のAl23、4〜20重量%のMgOを含むガラス組成物が挙げられる。このガラス組成物は、また、1重量%未満のZrO2を含んでいてもよい。例えば、米国特許第3,402,055に記載されているガラス繊維を用いることができる。ガラス繊維としては、日東紡績(株)から販売されている高強度ガラス繊維(商品名「Tガラス」)が、好適に使用できる。
ガラス繊維の表面がエポキシシラン処理されていることが好ましい。ガラス繊維とマトリックス樹脂との界面における濡れ性が向上するからである。
本発明のガラス繊維強化樹脂線状物に含まれるマトリックス樹脂は、25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させたものである。このマトリックス樹脂は、ガラス繊維で強化されていない場合であっても、その破断伸び及び弾性率が向上する。また、液状エポキシ樹脂は、25℃にて粘度が15000mPa・s以下なので、未硬化の樹脂組成物の段階にて、ガラス繊維との濡れ性が良く、硬化後にガラス繊維と良好な接着性を有する。
また、マトリックス樹脂の破断伸びλが5.0%以上であり、かつ、マトリックス樹脂の弾性率が2GPa以上であることが好ましい。この条件を満たした場合には、ガラス繊維強化樹脂線状物が破断しない限界の曲げの直径Dとガラス繊維樹脂線状物の直径dの比であるD/dが安定的に20以下になるからである。一方、D/dが10以上であることが好ましく、12以上であることが更に好ましい。なお、マトリックス樹脂の物性については、ガラス繊維が含まれていない状態で、樹脂組成物を硬化させて、マトリックス樹脂を形成し、その破断伸び及び弾性率を測定する。
本発明のガラス繊維強化樹脂線状物は、ガラス繊維の含有率が60重量%以上であり、マトリックス樹脂の含有率が40重量%以下であることが好ましく、ガラス繊維の含有率が65重量%以上であり、マトリックス樹脂の含有率が35重量%以下であることが更に好ましい。ガラス繊維強化樹脂線状物の剛性を向上するためである。
本発明のガラス繊維強化樹脂線状物は、ガラス繊維の含有率が80重量%以下であり、マトリックス樹脂の含有率が20重量%以上であることが好ましく、ガラス繊維の含有率が75重量%以下であり、マトリックス樹脂の含有率が25重量%以上であることが更に好ましい。ガラス繊維の含有率が75重量%より大きい場合には、ガラス繊維と未硬化の樹脂組成物との濡れ性が悪くなるからである。
液状エポキシ樹脂は1種を用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。2種以上の混合物の場合には、少なくとも一つの液状エポキシ樹脂の粘度が、25℃にて15000mPa・s以下であればよく、2種以上の混合物の全体として、25℃にて15000mPa・s以下であることが好ましい。
もっとも、未硬化の樹脂組成物には、液状エポキシ樹脂の他に、硬化剤(熱カチオン重合触媒又は酸無水物)及び所望により他の成分が含まれている。そして、未硬化の樹脂組成物の粘度は、25℃にて10000Pa・s以下であることが好ましい。未硬化の樹脂組成物の粘度が低い方が、未硬化の樹脂組成物がガラス繊維の間に浸入し易くなるからである。
本明細書では、「未硬化の樹脂組成物」とは、熱による硬化をする前の樹脂組成物をいい、典型的には、80〜200℃の雰囲気温度にて硬化をする前の樹脂組成物をいう。「未硬化の樹脂組成物」であっても、室温にて、わずかに硬化が進行している場合がある。
(1)液状エポキシ樹脂
液状エポキシ樹脂は、エポキシシクロヘキサン環又は2,3−エポキシプロピロキシ基(2,3−epoxypropyloxy)を含むことが好ましい。熱カチオン重合触媒を用いる場合には、エポキシシクロヘキサン環を含む液状エポキシ樹脂が特に好ましい。液状エポキシ樹脂が低粘度であるのにもかかわらず、カチオン重合性が高く、硬化後物性が優れているからである。なお、2,3−エポキシプロピロキシ基を含むということは、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂ということである。
エポキシシクロヘキサン環を含む液状エポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキサン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(1)(ダイセル化学、セロキサイド2021P、25℃での粘度:350mPa・s)、1−(1,2−エポキシ−2−プロパニル)−3−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサン(2)(ダイセル化学、セロキサイド3000、25℃での粘度が3500mPa・s以下)、3,4−エポキシシクロヘキサン酸エステル(3)、(ダイセル化学、セロキサイド2081、25℃での粘度:350mPa・s)が挙げられる。これらの化学式を下記に示す。

2,3−エポキシプロピロキシ基を含む液状エポキシ樹脂の場合には、2,3−エポキシプロピロキシ基が、6員炭素環に結合していることが好ましい。この6員炭素環としては、ベンゼン環、シクロヘキサン環などが挙げられる。この6員炭素環は5員炭素環、6員炭素環などと縮合していてもよい。
2,3−エポキシプロピロキシ基を含む液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビス(4−(2,3−エポキシプロピロキシ)フェニル)メタン(4)(旭電化工業、EP−4901、粘度:3500mPa・s)、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロピロキシ)シクロヘキシル)プロパン(5)(大日本インキ化学工業、エピクロン830)、水素添加ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビス(4−(2,3−エポキシプロピロキシ)シクロヘキシル)メタン(6)(旭電化工業、EP−4080E、粘度:2000mPa・s;ジャパンエポキシレジン、YX8000、粘度:1800mPa・s)が挙げられる。
2,3−エポキシプロピロキシ基を含む液状エポキシ樹脂としては、更に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、2,2−ビス[4−(2−(2,3−エポキシプロピロキシ)プロピル)フェニル]プロパン(7)(旭電化工業、EP−4000S、粘度:1800mPa・s)が挙げられる。
一般に反応性希釈剤として分類されている低粘度エポキシ樹脂も、本発明の液状エポキシ樹脂として用いることができる。このような反応性希釈剤は、液状エポキシ樹脂の全体を100重量%とした場合に、30重量%以下で用いることが好ましい。30重量%より多い場合には、硬化後の樹脂マトリックス強度が低下するときがあるからである。
反応性希釈剤としては、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピロキシメチル)シクロヘキサン(8)(旭電化工業、EP−4085、粘度:45mPa・s)、ジシクロペンタジエンジメタノールのジグリシジルエーテル(9)(旭電化工業、EP−4088、粘度:335mPa・s)、パラ−t−ブチルフェニル=グリシジル=エーテル(10)(ナガセケムテックス、デナコールEX146、粘度:20mPa・s)、イソプロピルフェニル=グリシジル=エーテル(11)(大日本インキ化学工業、エピクロン520、粘度:15mPa・s)が挙げられる。

また、単独で粘度が3500mPa・s以上であるエポキシ樹脂も低粘度エポキシ樹脂や反応性希釈剤と混合することにより、必要に応じて3500mPa・s以下にして用いることができる。単独で粘度が3500mPa・s以上であるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(12)(旭化成、AER260、粘度:14000mPa・s)、長鎖水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂(13)(ジャパンエポキシレジン、YL6834(粘度:80000mPa・s)が挙げられる。


硬化剤が熱カチオン重合触媒である場合には、マトリックス樹脂は、25℃にて粘度が3500mPa・s以下の液状エポキシ樹脂をにより硬化させたものであることが好ましい。上述の液状エポキシ樹脂については、硬化剤が熱カチオン重合触媒である場合にも酸無水物である場合にも好適に用いられる。
次に、硬化剤が酸無水物である場合に主に用いられる液状エポキシ樹脂について述べる。
液状エポキシ樹脂としては、ジアルキルシクロヘキセン誘導体のジグリシジルエステル(14)(ジャパンエポキシレジン、エピコート871、粘度:650mPa・s)を用いることができる。
また、単独で粘度が15000mPa・s以上であるエポキシ樹脂、及び、単独で固体のエポキシ樹脂も低粘度エポキシ樹脂や反応性希釈剤と混合することにより15000mPa・s以下にして用いることができる。単独で粘度が15000mPa・s以上であるエポキシ樹脂としては、例えば、ジアルキルシクロヘキセン誘導体のジグリシジルエステル(15)(ジャパンエポキシレジン、エピコート872)が挙げられる。
単独で固体のエポキシ樹脂としては、例えば、3,5,3’,5’−テトラメチルー4,4’−ビス(2,3−エポキシプロピロキシ)ビフェニル(16)、(ジャパンエポキシレジン、YX4000)、1,4−ジ−t−ブチル−2,5−ジ(2,3−エポキシプロピロキシ)ベンゼン(17)(東都化成工業、YDC−1312)、ノボラック型エポキシ樹脂(18)(日本化薬工業、RE−306)、ノボラック型エポキシ樹脂(19)(日本化薬工業、EOCN−4500)、ノボラック型エポキシ樹脂(20)(日本化薬工業、EPPN−501H)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(21)(大日本インキ化学工業、HP−7200)が挙げられる。

(2)熱カチオン重合触媒
熱カチオン重合触媒としては、加熱により活性化されエポキシ基の開環を誘発する触媒が用いられ、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩等の各種オニウム塩、並びに、有機金属錯体類などが例示される。
スルホニウム塩としては、例えば、式(22)及び(23)で示されるヘテロ環誘導体が挙げられる(旭電化工業、アデカオプトンCP−66およびアデカオプトンCP−77)。
また、式(24)で示されるスルホニウム塩も用いることができる(式中、Rは、ベンゼン環の置換基を示す。R’及びR’’は、同一又は異なって、置換していてもよい炭化水素基である。三新化学工業(株)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L)。スルホニウム塩としては、例えば、トリスアリールスルホニウムアンチモンヘキサフルオライドが用いられる。更に、オニウム塩としては、日本曹達(株)、CIシリーズ(製)の化合物も用いることができる。また、有機金属錯体類としては、例えば、アルコキシシラン−アルミニウム錯体などが挙げられる。
また、カチオン重合開始剤の配合割合は、未硬化の樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲とするのが好ましく、更に好ましくは0.3〜3重量部である。
(3)酸無水物
酸無水物は、水素添加されていてもよい無水フタル酸骨格を有することが好ましい。酸無水物としては、例えば、無水メチルテトラヒドロフタル酸(Me−THPA)(Quinhard200(日本ゼオン)、HN−2200(日立化成工業)、リカシッドMT−500(新日本理化))、無水メチルヘキサヒドロフタル酸(Me−HHPA)(Quinhard500(日本ゼオン)、HN−5500(日立化成工業)、リカシッドMH−700(新日本理化)),無水メチルナジック酸(25)(MHAC−P(日立化成工業))、無水メチルナジック酸の水素添加物(26)(HNA(新日本理化)),アルキル変性酸無水物(27)(エピキュアYH−306、エピキュアYH−307(ジャパンエポキシレジン))などが挙げられる。

エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し、酸無水物基が0.5〜2モル、好ましくは0.7〜1.3モルとなるように配合する。低粘度且つ速硬化性に優れているという観点から、MH−700が好ましい。また、周囲の湿気の影響を受けにくい、高温にて短時間で硬化させるという条件でも酸無水物の揮発が少ないとの観点からはYH−306が好ましい。
(3)平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂
本発明では、マトリックス樹脂は、前記液状エポキシ樹脂を平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂と共に硬化させたものであることが好ましい。平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、一般的には、25℃にて固体である。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(28)の一般式は、下記の通りである。
(式中、nは1以上の整数である。)
例えば、ジャパンエポキシレジンのエピコート1001(平均分子量:900)、エピコート1002(平均分子量:1200)、エピコート1003(平均分子量:1300)、エピコート1055(平均分子量:1600)を用いることができる。未硬化の樹脂組成物の粘度上昇が比較的低く抑えられ、硬化後に充分な靭性を付与しやすいという観点からエピコート1002が望ましい。
なお、本発明では、平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂(28)の代わりに、繰り返し単位がビスフェノールAの水素添加物であるエポキシ樹脂を用いてもよい。
(4)可撓性付与剤
可撓性付与剤としては、例えば、カルボン酸末端脂肪族ポリエステルのエポキシ樹脂アダクト物(29)、例えば、SD551(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)を用いることができる。
式中、n、m、lは、同一又は異なって、1以上、10000以下の整数である。R1は、炭素数2〜16の直鎖又は分枝状のアルキレン基、R2は、炭素数2〜16の直鎖若しくは分枝状のアルキレン基、式−(CH2−CH(CH3)−O)i−CH2−CH(CH3)−で示される基、又は、式−(CH2−CH2−CH2−CH2−O)−CH2−CH2−CH2−CH2−で示される基である。
また、SD665(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)を用いることができる。これは、SD551(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)の末端のエポキシ部分が、下記式(30)に置換されている。

また、水酸基末端ポリブタジエン(31)、例えばPBR−15HT,PBR−45HT(出光石油化学)、又は、水酸基末端ポリブタジエンの酸無水物アダクト物(32)を用いることができる。
式中、n、m、及びlは、同一又は異なって、1以上の整数である。
更に、カルボン酸末端アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(33)(CTBN)、例えばHYCAR CTBN1300×13、HYCAR CTBN1300×8、HYCAR CTBN1300×9等(宇部興産)、又は、それらのエポキシ樹脂アダクト物(34)を用いることができる。
これらの中で反応性が良好で硬化後架橋構造中に組み込まれ、硬化物に靭性を付与する効果が高いという観点からSD551、CTBNエポキシアダクトが好ましい。
平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂及び可撓性付与剤の配合量の合計は、液状エポキシ樹脂と、平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、可撓性付与剤との配合量との合計の5〜50重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることが更に好ましい。なお、マトリックス樹脂には、平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂、可撓性付与剤の双方が含まれていても良いし、何れかが含まれていてもよいし、双方が含まれていなくてもよい。
(5)硬化促進剤
硬化剤として酸無水物を用いた場合には、硬化促進剤を用いることが好ましい。硬化促進剤としては、イミダゾール誘導体を用いることができる。例えば、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキルイミダゾール;1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のジアルキルイミダゾール;2−フェニルイミダゾール等のアリールイミダゾール;2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール等を用いることができる。
また、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン7(DBU)及びその塩類も用いることができる。例えば1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン7、(例えば、FCキュアα−1、四国化成工業)、DBU・2エチルヘキサン酸塩(例えば、FCキュアα−2、四国化成工業)、DBU・オクチル酸塩(例えば、U−CAT SA102、サン・アプロ)、DBU・フタル酸塩(例えば、U−CAT SA810、サン・アプロ)、DBUのテトラフェニルボレート(例えば、U−CAT 5002、サン・アプロ)等が用いられる。
また、ホスフィン、ホスホニウム塩も用いることができる。ホスフィンには、モノホスフィンとジホスフィンが含まれる。モノホスフィンとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(パラクロロフェニル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン;ジシクロヘキシルフェニルホスフィン等のジシクロアルキルアリールホスフィン;ジフェニルシクロヘキシルホスフィン等のジアリールジシクロアルキルホスフィンが用いられる。ジホスフィンとしては、例えば、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン等のα,ω−ビスジアリールアルカンが好ましく用いられる。ホスホニウム塩としては、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等のテトラアルキルホスホニウムハロゲン化物;テトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラアリールホスホニウムハロゲン化物、アルキルトリアリールホスホニウムハロゲン化物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のテトラアリールホスホニウムテトラアリールボレートが挙げられる。
3級アミン類も用いることができる。例えば、1,3,5−トリスジメチルアミノメチルフェノール(例えば、アデカハードナーEHC−30、旭電化工業)を用いることができる。3級アミンの三塩化ホウ素錯体(DY9577、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)を用いることもできる。
これらの硬化促進剤はそれ自体液状かあるいはエポキシ樹脂に可溶の固体であり、未硬化の樹脂組成物に溶解させて使用する。硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.8〜20重量部添加するのが好ましく、更には1〜8重量部添加するのが好ましい。
また、一液型酸無水物硬化系エポキシ樹脂組成物のシェルフライフを延長する目的で通常使用されているマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤、例えばノバキュアHX−3088、HX−3741、HX−3921(旭化成工業)も、速硬化性を有しつつポットライフを延長させることを目的として使用することができる。直径5μm程度の微粒子状であるこれらの促進剤は、細い隙間には浸透することができないため、先述の樹脂溶解型促進剤と併用することにより、マイクロカプセル型促進剤の粒子径以下の隙間に浸透した樹脂組成物も効率よく硬化させることができる。
また、未硬化の樹脂組成物は、微量の消泡剤を含有することが好ましい。消泡剤としては、シリコーンを用いることができる。
本発明の第2の側面では、破断のびが5%以上のガラス繊維と、マトリックス樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法であって、25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させる工程を含むことを特徴とするガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法が提供される。
この液状エポキシ樹脂と、熱カチオン重合触媒又は酸無水物とを少なくとも含む未硬化の樹脂組成物を80〜200℃の雰囲気温度にて10分以内で硬化させることが好ましく、90〜180℃の雰囲気温度にて5分以内で硬化させることが更に好ましく、90℃〜160℃の雰囲気温度にて3分以内で硬化させることが更になお好ましい。硬化時間が短い方が、ガラス繊維を引張る速度を早くすることができるので、硬化用金型の長さを短くすることができ、また、製造時間を短縮することができるからである。
未硬化の樹脂組成物の粘度が、25℃にて10000mPa・s以下であることが好ましく、25℃にて9000mPa・s以下であることが更に好ましい。未硬化の樹脂組成物がガラス繊維の間に入り込み易くなり、濡れ性が向上するからである。
本発明の第3の側面では、光ファイバーと、テンションメンバーとを含む光ファイバーケーブルであって、前記テンションメンバーが上記のガラス繊維強化樹脂線状物である光ファイバーケーブルが提供される。光ファイバーケーブルの構造は、例えば、上記特許文献1〜6に例示されている。
以下、本発明について、好適な実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されるものでない。
実施例1〜3
日東紡績(株)から販売されている高強度ガラス繊維(商品名「Tガラス」、破断伸びが5.5%,弾性率が84.3GPa)を用いた。Tガラスは、65重量%のSiO2、23重量%のAl23、11重量%のMgO、1重量%未満のZrO2を含む。この高強度ガラス繊維の詳細な仕様を表1に示す。
マトリックス樹脂として、熱カチオン重合触媒によるエポキシ樹脂を用いた。実施例1〜3の配合成分を表2に示す。
セロキサイド2021P及びセロキサイド2081は液状エポキシ樹脂であり、ダイセル化学から入手した。エピコート1002は、平均分子量1200のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、ジャパンエポキシレジンから入手した。SD551は、可撓性付与剤として作用するカルボン酸末端脂肪族ポリエステルのエポキシ樹脂アダクト物であり、チバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手した。SI−100Lは、熱カチオン重合触媒であり、サンエイドSI−100Lを意味し、三新化学工業(株)から入手した。ST86PAは、ジメチルポリシロキサンであり、東レ・ダウコーニング・シリコーンから入手した。
まず、成分(1)、(2)、(3)及び(6)を表2に記載の配合比で混合し、ケトルにて100℃、減圧下で1時間攪拌し、均一に溶解させた。その後、成分(4)を表2に記載の量仕込んで減圧攪拌し、均一に溶解させた。そして、室温まで冷却し、所定量の成分(5)を仕込み、30分減圧攪拌した。110メッシュでろ過し、遮光容器に排出し、未硬化の樹脂組成物を得た。
この未硬化の樹脂組成物を予め30℃に温度制御された含浸槽に充填し、30℃に維持した。このとき、含浸槽内の樹脂の粘度は実施例1、2及び3で、それぞれ、3000mPa・s、5000mPa・s、及び6000mPa・sであった。
図2で、複数のクリール10からヤーンを引出した。ヤーンをガイド11a及びガイド11bを通して収束させ、次いで、含浸槽12に浸漬して未硬化の樹脂組成物を含浸させた。次に、絞りノズル13により、線状物を所定形状に絞り成形し、過剰な未硬化の樹脂組成物を除去した。そして、150〜160℃に加熱されている約3mの長さの加熱金型14に導き、樹脂組成物を硬化させた。ヤーンの引張り速度は、約1.5m/分なので、約2分で樹脂組成物を硬化させたことになる。硬化後のガラス繊維強化樹脂線状物は、一対のキャタピラ15の間を通過させ、巻き取り装置16に巻き取った。その結果、ガラス繊維の含有率が約70重量%の外径0.3mmのガラス繊維強化樹脂組成物を得た。なお、このガラス繊維強化樹脂線状物には、熱可塑性樹脂が被覆されていない。また、キャタピラ15は、牽引力を付与するためであるので、適宜、省略することができる。
また、上記の未硬化の樹脂組成物のみを150〜160℃にて硬化させ、得られた樹脂の弾性率と破断伸びを測定した。この結果を表3に示す。
得られたガラス繊維強化樹脂線状物の柔軟性(最小曲げ直径)は、次の方法で測定した。このガラス繊維強化樹脂組成物をおよそ100mmの長さに切断し、サンプルの両端を手で握持し、サンプルの中央部をさまざまな直径を有する美麗な鋼製の円柱に巻きつけ、サンプルの外周又は内周側から破断が始まった時の鋼製の円柱直径を測定した。サンプル数nを10としその平均値を用いた。この結果を表4に示す。

表4から明らかなように、マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂の破断伸びが高ければ、高いほどより柔軟なガラス繊維強化樹脂組成物が得られるわけではない。ガラス繊維強化樹脂組成物の断面形状の精度にも依存するが、弾性率が低いと、ガラス繊維強化樹脂組成物本来の破断をする以前に、断面形状がぐずれて扁平座屈が発生し、見かけ上の最小曲げ直径Dは大きくなる。したがって、マトリックス樹脂の破断伸びは高いほうが良いが、何%が最適かはマトリックス樹脂の弾性率や繊維との界面での接着性を十分に考慮して決定すべきである。その際、本発明から明らかなように、最小曲げ直径Dと該線状物の直径dの比であるD/dが20以下であり、なお且つd≦0.6mmであるガラス繊維強化樹脂組成物を得るためには、ガラス繊維とエポキシ樹脂それぞれの破断のびが5%以上で、且つエポキシ樹脂の弾性率が2GPa以上であることが好ましい。
実施例4及び5
次に、実施例3のマトリックス樹脂とガラス繊維の組み合わせで金型の寸法を変化させ、外径0.42mm(実施例4)と0.51mm(実施例5)のガラス繊維強化樹脂組成物を成形した。実施例1〜3と同様に最小曲げ直径を測定し、最小曲げ直径は、それぞれ7.0mmと9.0mmであり、線状物の直径のそれぞれ16.7倍と17.6倍であった。
実施例6及び7
実施例1〜5と同様に、日東紡績(株)から販売されている高強度ガラス繊維(商品名「Tガラス」、破断伸びが5.5%,弾性率が84.3GPa)を用いた。マトリックス樹脂として、酸無水物によるエポキシ樹脂を用いた。実施例6及び7の配合成分を表5に示す。
エピコート871は、ジアルキルシクロヘキセン誘導体のジグリシジルエステル(14)であり、ジャパンエポキシレジンから入手した。AER260は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(12)であり、旭化成から入手した。セロキサイド2021Pは液状エポキシ樹脂であり、ダイセル化学から入手した。エピコート1002は、平均分子量1200のビスフェノールA型エポキシ樹脂であり、ジャパンエポキシレジンから入手した。SD551は、可撓性付与剤として作用するカルボン酸末端脂肪族ポリエステルのエポキシ樹脂アダクト物であり、チバ・スペシャルティ・ケミカルズから入手した。ST86PAは、ジメチルポリシロキサンであり、東レ・ダウコーニング・シリコーンから入手した。MHAC−Pは、酸無水物である無水メチルナジック酸であり、日立化成工業から入手した。MH−700は、無水メチルヘキサヒドロフタル酸であり、リカシッドMH−700として新日本理化から入手した。EHC30は、硬化促進剤として作用する1,3,5−トリスジメチルアミノメチルフェノールであり、アデカハードナーEHC−30として、旭電化工業から入手した。U−CAT SA102は、硬化促進剤として作用する1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン7オクチル酸塩であり、サン・アプロから入手した。
成分(1)、(2)、(3)、(4)及び(7)を所定の配合比で混合し、縦型ミキサーにて100℃、減圧下で1時間攪拌し、完全に均一に溶解した。その後、室温まで冷却し、成分(5)及び(6)を所定量添加し、減圧攪拌し、均一に溶解した。それを60メッシュでろ過し、配合物Rとした。それとは別に、成分(8)、(9)、(10)及び(11)を所定の配合比でケトルに仕込み、減圧下で1時間攪拌し、均一に溶解した。その後、110メッシュでろ過し、配合物Hとした。その後、配合物Rと配合物Hが所定の配合になるように混合し、未硬化の樹脂組成物を得た。
未硬化の樹脂組成物を予め20℃に温度制御された含浸槽に充填し、20℃一定にコントロールした。このとき、含浸槽内の未硬化の樹脂組成物の粘度は、実施例6及び7でそれぞれ、2000mPa・s及び6500mPa・sであった。
そして、実施例1〜3と同様に、図2に示す装置で、ガラス繊維の含有率が約70重量%のガラス繊維強化樹脂線状物を得た。次いで、実施例1〜3と同様に、得られたガラス繊維強化樹脂線状物の柔軟性(最小曲げ直径)を測定した。その結果を表6に示す。
また、上記の未硬化の樹脂組成物のみを120〜130℃にて硬化させ、得られた樹脂の弾性率と破断伸びを測定した。この結果を表7に示す。
実施例6では、表7に示すように、マトリックス樹脂の弾性率が低い。そして、表6に示すように、得られたガラス繊維樹脂組成物は、破断をする前に、断面形状が崩れて扁平座屈が発生し、最小曲げ直径Dが大きくなる。
比較例
比較例として、破断のびが5%以下のガラス繊維とマトリックス樹脂に熱硬化性ビニルエステル樹脂とを使用し、同様な条件でガラス繊維強化樹脂線状物を成形した。
ガラス繊維には、日東紡績(株)から販売されているEガラス(破断伸びが4.8%,弾性率が72.5GPa)を用いた。Eガラスは、52〜56重量%のSiO2、12〜16重量%のAl23、15〜25重量%のCaO、0〜6重量%のMgO、8〜13重量%のB23、並びに、0〜1重量%のNa2O及びK2Oを含む。
ビニルエステル樹脂には、ノボラック系ビニルエステル樹脂(ポリホープH8100,ジャパンコンポジット(株))を用い、硬化促進剤として6%ナフテン酸コバルトを0.5Phr、硬化剤として55%MEKPOを1.0Phr混合した。この配合で硬化したビニルエステル樹脂の物性は、引張強度が65MPa,曲げ弾性率が3.8GPa,破断伸びが2.5%である。これらの樹脂を満たした含浸槽に案内板とガイドをとおして、ガラス繊維を導いて樹脂を含浸させた後、ダイスを通して余分な樹脂を絞り、約3mの加熱成形型内に導き、硬化させた後、巻き取り装置で巻き取った。
ノボラック系ビニルエステル樹脂を予め25℃に温度制御された含浸槽に充填した。25℃にコントロールしたときの含浸槽内の樹脂粘度は300mPa・sであった。加熱成形型の内径寸法を0.3mm(比較例1),0.4mm(比較例2),0.5mm(比較例3)の3種類で成形した結果、ガラス繊維の含有率が約70重量%のガラス繊維強化樹脂組成物を得た。
このガラス繊維強化樹脂組成物をおよそ100mmの長さに切断し、サンプルの両端を手で握持し、サンプルの中央部をさまざまな直径を有する美麗な鋼製の円柱に巻きつけ、サンプルの外周もしくは内周側から破断が始まった時の鋼製の円柱直径を測定した。その結果を表8に示す。
本発明のガラス繊維強化樹脂線状物の一実施形態の断面図である。 本発明のガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法の一実施形態の説明図である。
符号の説明
1 ガラス繊維強化樹脂線状物
2 ガラス繊維
3 ヤーン
4 マトリックス樹脂
6 熱可塑性樹脂
10 クリール
11a、11b ガイド
12 含浸槽
13 絞りノズル
14 金型
15 キャタピラ
16 巻き取り装置

Claims (11)

  1. 破断のびが5%以上のガラス繊維と、マトリックス樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂線状物であって、
    前記マトリックス樹脂は、25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させたものであることを特徴とするガラス繊維強化樹脂線状物。
  2. ガラス繊維強化樹脂線状物の最小曲げ直径Dとガラス繊維強化樹脂線状物の直径dの比であるD/dが20以下であり、かつ、dが0.6mm以下である請求項1に記載のガラス繊維強化樹脂線状物。
  3. 前記マトリックス樹脂は、前記液状エポキシ樹脂を平均分子量900以上のビスフェノールA型エポキシ樹脂と共に硬化させたものである請求項1又は2に記載のガラス繊維強化樹脂線状物。
  4. 前記マトリックス樹脂は、前記液状エポキシ樹脂を可撓性付与剤と共に硬化させたものである請求項1、2又は3に記載のガラス繊維強化樹脂線状物。
  5. 前記マトリックス樹脂は、25℃にて粘度が3500mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を前記熱カチオン重合触媒により硬化させたものである請求項1〜4の何れかに記載のガラス繊維強化樹脂線状物。
  6. 前記酸無水物が、25℃にて液体である請求項1〜5の何れかに記載のガラス繊維強化樹脂線状物。
  7. 前記液状エポキシ樹脂が、エポキシシクロヘキサン環又は2,3−エポキシプロピロキシ基を含む請求項1〜6の何れかに記載のガラス繊維強化樹脂線状物。
  8. 前記ガラス繊維が、55〜79.9重量%のSiO2、12.6〜32重量%のAl23、4〜20重量%のMgOを含む請求項1〜7の何れかに記載のガラス繊維強化樹脂線状物。
  9. 破断のびが5%以上のガラス繊維と、マトリックス樹脂とを含むガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法であって、
    25℃にて粘度が15000mPa・s以下の液状エポキシ樹脂を、熱カチオン重合触媒又は酸無水物により硬化させる工程
    を含むことを特徴とするガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法。
  10. 80〜200℃の雰囲気温度にて10分以内で硬化させる請求項9に記載のガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法。
  11. 前記液状エポキシ樹脂と、熱カチオン重合触媒又は酸無水物とを含む未硬化の樹脂組成物の粘度が、25℃にて10000mPa・s以下である請求項9又は10に記載のガラス繊維強化樹脂線状物の製造方法。
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