JP2005275198A - 光走査装置およびそれを備えた画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光を反射する反射面を有する振動体の少なくとも一部を振動させることにより、反射面に入射した光の反射方向を変化させて光を走査する技術において、その振動体の形状の適正化によってその振動体の共振周波数特性を適正化する。
【解決手段】振動体は、(a)反射面を有する反射ミラー部と、(b)その反射ミラー部から延び、少なくともねじり振動が発生させられる全体ばね部とを含んでいる。その振動体は、全体ばね部の長さ方向における形状を定義するパラメータである長さ比率の値次第で、正規の振動であるねじり振動の共振周波数と外乱振動である横振動の共振周波数とが互いに一致する振動特性を有している。その長さ比率は、ねじり振動の共振周波数と横振動の周波数とが互いに一致しない領域(例えば、状態Aを示す領域)内に設定される。
【選択図】図8

Description

本発明は、光を反射する反射面を有する振動体の少なくとも一部を振動させることにより、反射面に入射した光の反射方向を変化させて光を走査する技術に関するものであり、特に、その振動体の形状の適正化によってその振動体の共振周波数特性を適正化する技術に関するものである。
光を反射する反射面を有する振動体の少なくとも一部を振動させることにより、反射面に入射した光の反射方向を変化させて光を走査する光走査装置が既に存在する。そのような光走査装置の一例として、反射面を備えた反射ミラー部と、その反射ミラー部から延びて少なくともねじり振動させられるばね部とを有する振動体を用い、その振動体の少なくとも一部を振動させることにより、光を走査する光走査装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この種の光走査装置を使用する分野として、走査周波数の増加が重要な課題の一つである分野が存在する。例えば、そのような光走査装置を用いて画像を形成する分野においては、走査周波数が高いほど画像の1フレーム当たりの走査線数が増加する。したがって、この分野においては、表示画像の解像度および精細度が走査周波数に依存し、具体的には、走査周波数が高いほど表示画像の解像度および精細度が向上する。よって、この分野においては、できる限り高い走査周波数が達成されるように光走査装置が設計される。
特開2003−84226号公報
本発明者らは、上述の光走査装置の走査周波数と振動体の共振周波数特性とその振動体の形状との関係について研究を行い、その結果、次のような知見を得た。
上述の光走査装置においては、それの振動体のねじり振動が利用されて光走査が行われるが、その振動体には、ねじり振動のみでなく、それ以外の振動である外乱振動も発生し得る。そのような外乱振動の一例は、その振動体のうちの反射ミラー部がそれの反射面に平行な方向に振動する現象すなわち横振動である。
そのため、振動体にねじり振動のみが発生している状態において、その振動体の振動を利用して光走査を行うことが、光走査を安定化させるために重要である。よって、この種の光走査装置においては、通常、ねじり振動の共振周波数と等しい周波数で振動体が振動させられる。
しかしながら、ねじり振動の共振周波数と外乱振動の共振周波数とが互いに一致するかまたは互いに接近している場合には、ねじり振動の共振周波数と等しい周波数で振動体を振動させても、その振動体においてねじり振動に外乱振動が重畳してしまう。外乱振動がねじり振動に対して重畳的に発生すると、振動体の振動に伴って反射ミラー部の反射面の振動状態が目標振動状態から外れてしまい、光走査の特性も目標特性から外れてしまう。
これに対し、本発明者らは、そのような振動体の共振周波数特性すなわち異種振動間における共振周波数の大小関係と振動体の形状との関係について研究を行った。その結果、本発明者らは、次のような事実に気が付いた。
本発明者らが用いた振動体については、ねじり振動の共振周波数が高くなるように振動体の形状を設計すると、外乱振動の共振周波数がねじり振動の共振周波数に接近する傾向が強く、場合によっては互いに一致してしまう。
しかしながら、ねじり振動の共振周波数が高くなるように振動体の形状を設計した場合であっても、振動体の形状を適正化すれば、外乱振動の共振周波数がねじり振動の共振周波数から外れる傾向が現れる。
以上説明した知見に基づき、本発明は、光を反射する反射面を有する振動体の少なくとも一部を振動させることにより、反射面に入射した光の反射方向を変化させて光を走査する技術において、その振動体の形状の適正化によってその振動体の共振周波数特性を適正化することを課題としてなされたものである。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
(1) 光を反射する反射面を有する振動体の少なくとも一部を振動させることにより、前記反射面に入射した光の反射方向を変化させて光を走査する光走査装置であって、
前記振動体は、
(a)前記反射面を有する反射ミラー部と、
(b)その反射ミラー部から延び、少なくともねじり振動が発生させられる全体ばね部と
を含み、
その振動体は、前記全体ばね部の長さ方向における形状を定義する形状定義パラメータ次第で、前記ねじり振動の共振周波数とそのねじり振動以外の振動である外乱振動の共振周波数とが互いに一致する振動特性を有しており、
前記形状定義パラメータは、前記ねじり振動の共振周波数と前記外乱振動の周波数とが互いに一致しない領域内に設定されている光走査装置。
本発明者らは、光を反射する反射面を有する振動体の少なくとも一部を振動させることにより、反射面に入射した光の反射方向を変化させて光を走査する光走査装置について研究を行った。その際、本発明者らは、全体ばね部の長さ方向における形状を定義する形状定義パラメータに着目した。
その結果、本発明者らは、ねじり振動の共振周波数とそのねじり振動以外の振動である外乱振動の共振周波数との関係、すなわち、それらねじり振動と外乱振動との間において共振周波数が互いに一致するかまたは互いに異なるかという、共振周波数の高さに関する相対関係が、上述の形状定義パラメータに応じて変化することに気が付いた。さらに、本発明者らは、その形状定義パラメータの値の設定次第で、ねじり振動の共振周波数と外乱振動の共振周波数とが互いに一致する振動特性を振動体が有する場合があることにも気が付いた。
さらに、本発明者らは、その形状定義パラメータの変化につれてねじり振動の共振周波数と外乱振動の共振周波数との間における大小関係が変化する傾向(例えば、それら共振周波数間の差が、一定に保たれるのではく、減少し、その結果、それら共振周波数が互いに接近したり一致する傾向や、それら共振周波数間の差が増加し、その結果、それら共振周波数が互いに離間する傾向)は、ねじり振動の共振周波数すなわち当該光走査装置の走査周波数が高い場合に低い場合より顕著である場合があることにも気が付いた。
以上説明したいくつかの知見に基づき、本項に係る光走査装置においては、形状定義パラメータ次第でねじり振動の共振周波数と外乱振動の共振周波数とが互いに一致する振動特性を振動体が有する場合に、その形状定義パラメータが、ねじり振動の共振周波数と外乱振動の周波数とが互いに一致しない領域内に設定されている。
したがって、この光走査装置によれば、形状定義パラメータを適正化することにより、外乱振動の共振周波数がねじり振動の共振周波数に接近することなく、走査周波数を増加させることが容易となる。
その結果、この光走査装置によれば、全体ばね部の長さ方向形状を、振動体が高周波数で安定的に振動するのに適するように設計することが容易となる。
(2) 前記振動体は、前記反射ミラー部と共同して前記全体ばね部を両持ち状に連結する固定部を含み、
前記全体ばね部は、
一端部において前記反射ミラー部に連結され、ねじり振動が発生させられる第1の部分ばね部と、
その第1の部分ばね部の他端部から分岐して延びて前記固定部に連結され、曲げ振動とねじり振動とが発生させられる複数の第2の部分ばね部と
を含む(1)項に記載の光走査装置。
この光走査装置によれば、光走査の高速化に適した全体ばね部の一具体例として、反射ミラー部から延び出た後に分岐して固定部に至る形状を有する全体ばね部が提供される。
(3) 前記各第2の部分ばね部を、前記固定部に近い第1部分と、前記第1の部分ばね部に近い第2部分とに分けた場合に、各第2の部分ばね部は、前記第1部分において前記第2部分より薄板化されている(2)項に記載の光走査装置。
この種の光走査装置においては、振動体を振動させる振動源がその振動体に設置される場合がある。この場合には、その振動源の設置によってそれら振動源と振動体との組合体が大型化する傾向がある。
これに対し、本項に係る光走査装置においては、全体ばね部がそれの長さ方向において局部的に薄板化されており、その薄板化された部分に振動源を設置することが可能である。このようにして振動源を全体ばね部に設置した場合には、それら振動源と全体ばね部との組合体が、その全体ばね部を局部的に薄板化することなくそれに振動源を設置した場合ほどには大型化せずに済む。
(4) 前記形状定義パラメータは、前記第1の部分ばね部と前記複数の第2の部分ばね部との連結位置が前記全体ばね部の長さ方向中心から外れるように設定されている(2)または(3)項に記載の光走査装置。
この光走査装置によれば、ねじり振動の共振周波数と外乱振動の周波数とが互いに一致しない振動体の一具体例として、第1の部分ばね部と複数の第2の部分ばね部との連結位置が全体ばね部の長さ方向中心から外れるように設定された振動体が提供される。
(5) 前記形状定義パラメータは、前記複数の第2の部分ばね部の長さ寸法が前記第1の部分ばね部の長さ寸法より長くなるように設定されている(2)ないし(4)項のいずれかに記載の光走査装置。
この光走査装置によれば、ねじり振動の共振周波数と外乱振動の周波数とが互いに一致しない振動体の一具体例として、複数の第2の部分ばね部の長さ寸法が第1の部分ばね部の長さ寸法より長くなるように設定された振動体が提供される。
(6) 前記外乱振動は、前記反射ミラー部が前記反射面に平行な方向に振動する横振動である(2)ないし(5)項のいずれかに記載の光走査装置。
この光走査装置によれば、ねじり振動の共振周波数と横振動の周波数とが互いに一致しない振動体が提供される。
(7) 前記形状定義パラメータは、前記ねじり振動の共振周波数が前記横振動の共振周波数より高い領域内に設定されている(6)項に記載の光走査装置。
ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との少なくとも一方が形状定義パラメータの変化につれて変化し、かつ、その形状定義パラメータのある値においてねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数とが互いに一致する場合には、その形状定義パラメータは、ねじり振動の共振周波数が横振動の共振周波数より高い領域と低い領域とを含むこととなる。
この場合において、本項に係る光走査装置においては、形状定義パラメータが、ねじり振動の共振周波数が横振動の共振周波数より高い領域内に設定される。この設定は、例えば、振動体の製作し易さを向上させたり、振動体に加振源としての駆動源を容易に設置するために振動体の形状を適正化するために、有利である可能性がある。
(8) 前記形状定義パラメータは、前記ねじり振動の共振周波数が前記横振動の共振周波数に対して約1kHz以上異なる領域内に設定されている(6)または(7)項に記載の光走査装置。
この光走査装置によれば、ねじり振動の共振周波数が横振動の共振周波数に対して十分に離れているため、ねじり振動の共振周波数において振動体に発生する振動が横振動の影響を強く受けずに済む。
(9) 前記ねじり振動の共振周波数は、約12kHzないし約40kHzの範囲内に設定されている(2)ないし(8)項のいずれかに記載の光走査装置。
この光走査装置によれば、ねじり振動の共振周波数と外乱振動の周波数とが互いに一致しない振動体の一具体例として、ねじり振動の共振周波数が約12kHzないし約40kHzの範囲内にある振動体が提供される。
(10) 前記形状定義パラメータは、前記全体ばね部の長さ寸法に対する前記複数の第2の部分ばね部の長さ寸法の百分率として定義されており、
その形状定義パラメータは、約65パーセントないし約85パーセントの範囲内に設定されている(9)項に記載の光走査装置。
この光走査装置によれば、ねじり振動の共振周波数と外乱振動の周波数とが互いに一致しない振動体の一具体例として、全体ばね部の長さ寸法に対する複数の第2の部分ばね部の長さ寸法の百分率として定義された形状定義パラメータが約65パーセントないし約85パーセントの範囲内に設定された振動体が提供される。
(11) 前記反射ミラー部と前記全体ばね部とは、共に板状を成して、同一平面上に配置されている(1)ないし(10)項のいずれかに記載の光走査装置。
(12) 前記反射ミラー部は、円板状を成し、それの両面の少なくとも一方が前記反射面である(1)ないし(11)項のいずれかに記載の光走査装置。
反射ミラー部は、円板状を成し、それの両面の少なくとも一方が反射面である場合には、その反射ミラー部と同じ横寸法を有して矩形状を成す場合と比較し、反射ミラー部の慣性モーメントを減少させることが容易となり、共振周波数を上昇させることも容易となる。
したがって、本項に係る光走査装置によれば、反射ミラー部の適正化によっても共振周波数の増加が容易となる。
(13) 前記反射ミラー部は、前記ねじり振動により、揺動軸線まわりに揺動させられ、
前記全体ばね部は、前記振動体に、前記反射ミラー部を隔てて前記揺動軸線の方向において互いに対向する2個の対向位置にそれぞれ配置される(1)ないし(12)項のいずれかに記載の光走査装置。
(14) 前記2個の対向位置にそれぞれ配置された2個の全体ばね部は、前記反射ミラー部の位置に関して互いに対称的に配置される(13)項に記載の光走査装置。
(15) 光束の走査によって画像を形成する画像形成装置であって、
前記光束を出射する光源と、
(1)ないし(14)項のいずれかに記載の光走査装置を有し、その光走査装置を使用することにより、前記光源から出射した光束を走査する走査部と
を含む画像形成装置。
この画像形成装置によれば、前記(1)ないし(14)項のいずれかに係る光走査装置を利用することにより、走査周波数を増加させて画像の解像度を向上させることが容易となる。
(16) 前記走査部は、前記光束を観察者の網膜上において2次元的に走査することにより、画像を網膜上に投影するものである(15)項に記載の画像形成装置。
この画像形成装置によれば、いわゆる網膜走査型ディスプレイにおいて、前記(1)ないし(14)項のいずれかに係る光走査装置を利用することにより、走査周波数を増加させて画像の解像度を向上させることが容易となる。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に従う光走査装置を備えた網膜走査型ディスプレイ装置が系統的に表されている。この網膜走査型ディスプレイ装置(以下、「RSD」と略称する。)は、光としてのレーザビームを、それの波面および強度を適宜変調しつつ、観察者の眼10の瞳孔12を経て網膜14の結像面上に入射させ、その結像面上においてレーザビームを2次元的に走査することにより、その網膜14上に画像を直接に投影する装置である。
このRSDは、光源ユニット20を備え、その光源ユニット20と観察者の眼10との間において走査装置24を備えている。
光源ユニット20は、3原色(RGB)を有する3つのレーザビームを1つのレーザビームに結合して任意色のレーザビームを生成するために、赤色のレーザビームを発するRレーザ30と、緑色のレーザビームを発するGレーザ32と、青色のレーザビームを発するBレーザ34とを備えている。各レーザ30,32,34は、例えば、半導体レーザとして構成することが可能である。
各レーザ30,32,34から出射したレーザビームは、それらを結合するために、各コリメート光学系40,42,44によって平行光化された後に、波長依存性を有する各ダイクロイックミラー50,52,54に入射させられ、それにより、各レーザビームが波長に関して選択的に反射・透過させられる。
具体的には、Rレーザ30から出射した赤色レーザビームは、コリメート光学系40によって平行光化された後に、ダイクロイックミラー50に入射させられる。Gレーザ32から出射した緑色レーザビームは、コリメート光学系42を経てダイクロイックミラー52に入射させられる。Bレーザ34から出射した青色レーザビームは、コリメート光学系44を経てダイクロイックミラー54に入射させられる。
それら3つのダイクロイックミラー50,52,54にそれぞれ入射した3原色のレーザビームは、それら3つのダイクロイックミラー50,52,54を代表する1つのダイクロイックミラー54に最終的に入射して結合され、その後、結合光学系56によって集光される。
以上、光源ユニット20のうち光学的な部分を説明したが、以下、電気的な部分を説明する。
光源ユニット20は、コンピュータを主体とする信号処理回路60を備えている。信号処理回路60は、外部から供給された映像信号に基づき、各レーザ30,32,34を駆動するための信号処理と、レーザビームの走査を行うための信号処理とを行うように設計されている。
各レーザ30,32,34を駆動するため、信号処理回路60は、外部から供給された映像信号に基づき、網膜14上に投影すべき画像上の各画素ごとに、レーザビームにとって必要な色と強度とを実現するために必要な駆動信号を、各レーザドライバ70,72,74を介して各レーザ30,32,34に供給する。レーザビームの走査を行うための信号処理については後述する。
以上説明した光源ユニット20は、結合光学系56においてレーザビームを集光し、光ファイバ82に入射させる。光ファイバ82に入射したレーザビームは、光伝送媒体としての光ファイバ82中を伝送され、その光ファイバ82の後端から放射させられるレーザビームを平行光化するコリメート光学系84を経て波面変調光学系22に入射する。
この波面変調光学系22は、光源ユニット20から出射したレーザビームの波面(波面曲率)を変調する光学系である。この波面変調光学系22は、波面曲率の変調を、網膜14上に投影すべき画像の各画素ごとに行う形式とすることが可能であるが、これは本発明を実施するために不可欠なことではなく、画像の1フレームごとに行う形式とすることが可能である。波面曲率を変調することは、表示画像の遠近感を変化させることや、表示画像のピント位置を変化させることを意味する。
いずれにしても、この波面変調光学系22においては、信号処理回路60から入力された奥行き信号に基づき、波面変調光学系22に入射するレーザビームの波面を変調する。この波面変調光学系22においては、コリメート光学系84から平行光として入射するレーザビームが収束レンズ90によって収束光に変換され、その変換された収束光が可動ミラー92によって反射されて拡散光に変換される。その変換された拡散光は、収束レンズ90を通過し、目標の波面曲率を有するレーザビームとしてこの波面変調光学系22から出射する。
図1に示すように、この波面変調光学系22は、外部から入射したレーザビームを反射または透過させるビームスプリッタ94と、そのビームスプリッタ94を経て入射したレーザビームを収束する収束レンズ90と、その収束レンズ90により収束されたレーザビームを反射する可動ミラー92とを備えている。
この波面変調光学系22は、さらに、可動ミラー92を、収束レンズ90に接近するかまたは収束レンズ90から離れる向きに変位させるアクチュエータ96を備えている。このアクチュエータ96の一例は、圧電素子である。アクチュエータ96は、信号処理回路60から入力された奥行き信号に応じて可動ミラー92の位置を移動させることにより、波面変調光学系22から出射するレーザビームの波面曲率を変調する。
以上のように構成された波面変調光学系22においては、コリメート光学系84から入射したレーザビームがビームスプリッタ94で反射して収束レンズ90を通過した後、可動ミラー92で反射する。そして、再度、収束レンズ90を通過し、その後、ビームスプリッタ94を透過して走査装置24へ向かう。
走査装置24は、水平走査系100と垂直走査系102とを備えている。
水平走査系100は、表示すべき画像の1フレームごとに、レーザビームを水平な複数の走査線に沿って水平にラスタ走査する水平走査を行う光学系である。これに対し、垂直走査系102は、表示すべき画像の1フレームごとに、レーザビームを最初の走査線から最後の走査線に向かって垂直に走査する垂直走査を行う光学系である。水平走査系100は、垂直走査系102より高速にすなわち高周波数でレーザビームを走査するように設計されている。
具体的に説明するに、水平走査系100は、本実施形態においては、機械的偏向を行うミラーを備えた弾性体の振動によってそのミラーを揺動させる光走査装置104を備えている。光走査装置104は、信号処理回路60から供給される水平同期信号に基づいて制御される。
図2には、光走査装置104が分解斜視図で示されている。図2に示すように、光走査装置104は、本体部110がベース112に装着されて構成されている。
本体部110は、シリコン等、弾性を有する材料を用いて形成されている。本体部110は、図2の上部に示すように、概略的には、光が通過し得る貫通穴114を有して薄板長方形状を成している。本体部110は、外側には固定枠116を備え、一方、内側には、反射面120が形成された反射ミラー部122を有する振動体124を備えている。
このような本体部110の構成に対応して、ベース112は、図2の下部に示すように、本体部110との装着状態において固定枠116が装着されるべき支持部130と、振動体124と対向する凹部132とを有するように構成されている。凹部132は、本体部110をベース112に装着した状態において、振動体124が振動によって変位してもベース112と干渉しない形状を有するために形成されている。
図2に示すように、反射ミラー部122の反射面120は、それの対称中心線でもある揺動軸線134を中心として揺動される。振動体124は、さらに、その反射ミラー部122からそれと同一面上に延びて、その反射ミラー部122を固定枠116に接合する全体ばね部140を備えている。本実施形態においては、反射ミラー部122の両側から一対の全体ばね部140,140がそれぞれ互いに逆向きに延び出している。それら反射ミラー部122と一対の全体ばね部140,140とは、いずれも、板状を成して、同一平面上に配置されている。
各全体ばね部140は、1個のミラー側板ばね部142と、一対の枠側板ばね部144と、それらミラー側板ばね部142と一対の枠側板ばね部144とを互いに接続する接続部146とを含むように構成されている。ミラー側板ばね部142は、反射ミラー部122のうち、揺動軸線134の方向において互いに対向する一対の縁のそれぞれから、対応する接続部146まで、揺動軸線134上において、揺動軸線134に沿って延びている。一対の枠側板ばね部144,144は、対応する接続部146から、揺動軸線134に対して互いに逆向きにオフセットする姿勢で、揺動軸線134に沿って延びている。
各全体ばね部140においては、図2および図3に示すように、駆動源150,152,154,156が一対の枠側板ばね部144,144のそれぞれに、固定枠116に及ぶ姿勢で取り付けられている。
図3に示すように、各枠側板ばね部144が、固定枠116に近い側において局部的に薄板化され、それにより、凹部158が形成されている。この凹部158に連続する凹部159が固定枠116に形成されている。それら凹部158および159を利用することにより、各駆動源150,152,154,156が、各枠側板ばね部144と固定枠116とにそれらを跨ぐ姿勢で設置されている。
各駆動源150,152,154,156は、図3に駆動源154が代表的に示されるように、圧電体160(「圧電振動子」または「圧電素子」ともいう。)を主体として構成されている。圧電体160は、薄板状を成して振動体124の片面に貼り付けられており、その貼付け面と直角な方向において上部電極162と下部電極164とによって挟まれている。図3に示すように、上部電極162と下部電極164とはそれぞれ、図示しない各リード線により、固定枠116に設置された一対の入力端子168に接続されている。これに対し、上部電極162と下部電極164とがそれぞれ、図示しない各リード線により、同じく図示しない外部端子に接続される態様で本発明を実施することが可能である。
それら上部電極162と下部電極164とに電圧が印加されれば、その印加方向と直交する向きの変位が圧電体160に発生する。この変位により、図4に示すように、全体ばね部140に屈曲すなわち反りが発生する。この屈曲は、全体ばね部140のうち固定枠116との接続部を固定端とする一方、反射ミラー部122との接続部を自由端として行われる。その結果、その屈曲の向きが上向きであるか下向きであるかにより、自由端が上向きまたは下向きに変位する。
図4から明らかなように、4個の枠側板ばね144にそれぞれ貼り付けられた4個の駆動源150,152,154,156のうち、揺動軸線134に関して一側に位置して反射ミラー部122を挟む一対の駆動源150および152と、他側に位置して反射ミラー部122を挟む一対の駆動源154および156とはそれぞれ、各対に属する2個の圧電体160の自由端が互いに同じ向きに変位するように屈曲させられる。
それに対し、反射ミラー部122に関して一側に位置して揺動軸線134を挟む一対の駆動源150および154と、他側に位置して揺動軸線134を挟む一対の駆動源152および156とはそれぞれ、各対に属する2個の圧電体160の自由端が互いに逆向きに変位するように屈曲させられる。
その結果、反射ミラー部122には、図4に示すように、その反射ミラー部122を同じ向きに回転させる変位が、揺動軸線134に関して一側に位置する一対の駆動源150および152の一方向の変位と、反対側に位置する一対の駆動源154および156の逆方向の変位との双方によって発生させられる。
以上要するに、各枠側板ばね部144は、それに貼り付けられた圧電体160の直線変位(横変位)を屈曲運動(縦変位)に変換する機能を有し、接続部146は、各枠側板ばね部144の屈曲運動をミラー側板ばね部142の回転運動に変換する機能を有しているのである。そのミラー側板ばね部142の回転運動によって反射ミラー部122が回転させられる。
したがって、本実施形態においては、4個の駆動源150,152,154,156を制御するために、揺動軸線134に関して一側に位置する2個の駆動源150,152、すなわち、図2において右上の駆動源150と左上の駆動源152とが第1対を成し、反対側に位置する2個の駆動源154,156、すなわち、同図において右下の駆動源154と左下の駆動源156とが第2対を成している。
本実施形態においては、第1対を成す2個の駆動源150,152と、第2対を成す2個の駆動源154,156とを互いに逆向きに変位させて、反射ミラー部122にそれの揺動軸線134まわりの往復回転運動すなわち揺動運動を発生させるために、第1対を成す2個の駆動源150,152に交番電圧が互いに同位相で印加されるのに対し、それとは逆位相の交番電圧が、第2対を成す2個の駆動源154,156に互いに同位相で印加される。その結果、第1対を成す2個の駆動源150,152がいずれも、図2において下向きに撓んだ場合には、第2対を成す2個の駆動源154,156はいずれも、同図において上向きに撓むこととなる。
上述の制御を実現するために、水平走査系100は、図1に示す水平走査駆動回路180を備えている。この水平走査駆動回路180においては、図5に示すように、発振器182が、信号処理回路60から入力された水平同期信号に基づき、交番電圧信号を生成する。発振器182は、位相シフタ184およびアンプ186を経た第1経路を経て、第1対を成す2個の駆動源150,152に接続される一方、位相反転回路188、位相シフタ190およびアンプ192を経た第2経路を経て、第2対を成す2個の駆動源154,156に接続されている。
位相反転回路188は、発振器182から入力された交番電圧信号を、それの位相を反転させて位相シフタ190に供給する。この位相反転回路188は、第2経路のみに設けられるため、第1対を成す2個の駆動源150,152と、第2対を成す2個の駆動源154,156とでは、対応するアンプ186,192から供給される交番電圧信号の位相が互いに逆となる。
いずれの経路においても、位相シフタ184,190は、前記映像信号と反射ミラー部122の振動とが互いに同期するように、駆動源150,152,154,156に供給されるべき交番電圧信号の位相を変化させるために設けられている。
以上説明した光走査装置104によって水平走査されたレーザビームは、図1に示すように、リレー光学系194によって垂直走査系102に伝送される。
このRSDは、ビームディテクタ200を定位置に備えている。ビームディテクタ200は、光走査装置104によって偏向されたレーザビームを検出することにより、そのレーザビームの水平走査方向における位置を検出するために設けられている。ビームディテクタ200の一例は、ホトダイオードである。
ビームディテクタ200は、レーザビームが所定の位置に到達したことを示す信号をBD信号として出力し、その出力されたBD信号は信号処理回路60に供給される。このビームディテクタ200から出力されたBD信号に応答し、信号処理回路60は、ビームディテクタ200がレーザビームを検出した時期から設定時間が経過するのを待って、必要な駆動信号を各レーザドライバ70,72,74に供給する。これにより、各走査線ごとに、画像表示開始タイミングが決定され、その決定された画像表示開始タイミングで画像表示が開始される。
以上、水平走査系100を説明したが、垂直走査系102は、図1に示すように、機械的偏向を行う揺動ミラーとしてのガルバノミラー210を備えている。ガルバノミラー210には、水平走査系100から出射したレーザビームがリレー光学系194によって集光されて入射するようになっている。このガルバノミラー210は、それに入射したレーザビームの光軸と交差する回転軸線まわりに揺動させられる。このガルバノミラー210の起動タイミングおよび回転速度は、信号処理回路60から供給される垂直同期信号に基づいて制御される。
以上説明した水平走査系100と垂直走査系102との共同により、レーザビームが2次元的に走査され、その走査されたレーザビームによって表現される画像が、リレー光学系214を経て観察者の眼10に照射される。
図6には、振動体124の形状の詳細が斜視図で示されている。振動体124は、一対の全体ばね部140,140を反射ミラー部122を挟む姿勢で備えているが、以下、それら一対の全体ばね部140,140の形状を、図6において右側に位置する全体ばね部140のみについて代表的に説明する。
全体ばね部140の長さ寸法と凹部158の長さ寸法とは、固定枠116の長さ寸法との関係と駆動源150,152,154,156の長さ寸法との関係とにおいてそれぞれ決まる長さ寸法であるため、固定値とされている。具体的には、全体ばね部140の長さ寸法は2mm、凹部158の長さ寸法は1mmにそれぞれ設定されている。
これに対し、ミラー側板ばね部142の長さ寸法と枠側板ばね部144の長さ寸法とは、それらの合計が2mmであることを条件に、いずれも可変値とされている。以下、それらミラー側板ばね部142の長さ寸法と枠側板ばね部144の長さ寸法とをそれぞれ、長さ寸法aと長さ寸法bとで表記する。さらに、全体ばね部140の長さ寸法に対する枠側板ばね部144の長さ寸法の百分率を長さ比率γで表記する。したがって、長さ比率γは、長さ寸法a,bの単位をμmとすれば、
γ=(b/(a+b))*100=(b/2000))*100
なる式で定義される。
図7には、全体ばね部140の各部位の断面形状が示されている。全体ばね部140の基本断面形状は、対辺同士が平行である六角形である。図7(a)は、図6におけるAA線における断面図であり、ミラー側板ばね部142の断面形状を示している。図7(b)は、図6におけるBB線における断面図であり、枠側板ばね部142のうち凹部158が形成されていない部分の断面形状を示している。図7(c)は、図6におけるCC線における断面図であり、枠側板ばね部142のうち凹部158が形成されている部分の断面形状を示している。
さらに、本実施形態においては、反射ミラー部122の直径が1mmに設定され、厚さが100μmに設定されている。
本発明者らは、以上説明した寸法および形状を有する振動体124の振動をコンピュータを用いたシミュレーションによって解析した。その解析は、長さ比率γの値を変えて繰返し行った。その結果、図8にグラフで表すように、振動体124の振動モードが複数発生し、それら振動のうち光走査装置104による光走査に必要なねじり振動の共振周波数が約30kHzであることが判明した。
振動体124に発生する振動のうちねじり振動以外の振動は外乱振動であり、その外乱振動のうち、ねじり振動の共振周波数に接近している共振周波数を有するものは、図8に示すように、縦振動(次数が1)と、横振動(次数が1)と、2倍の縦振動(次数が2)とである。
縦振動は、図9に示すように、反射ミラー部122が反射面120の法線方向に直線往復運動する現象である。この縦振動は、腹が1個、節が2個存在する一次振動である。横振動は、図10に示すように、反射ミラー部122が反射面120の接線方向に直線往復運動する現象である。ねじり振動は、図11に示すように、反射ミラー部122が揺動軸線134まわりに揺動する現象である。2倍の縦振動は、図12に示すように、腹が2個、節が3個存在する二次振動である。
図8に示すように、ねじり振動の共振周波数は、長さ比率γの変化にかかわらず、略一定に維持された。これに対し、横振動の共振周波数は、長さ比率γの減少につれて増加し、長さ比率γが約70%である場合に、ねじり振動の共振周波数と一致した。すなわち、本実施形態においては、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数とが互いに一致するときにおける長さ比率γが約70%なのである。
図8には、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数とが互いに十分に離れている状態が状態A、互いに一致している状態が状態Bとして示されている。
図13には、状態Aにおける振動体124の振動が斜視図とグラフとで示されている。この状態Aにおいては、グラフで示すように、振動体124をねじり振動の共振周波数と等しい周波数で振動させると、その振動周波数においては、振動体124にねじり振動が最大強度で発生し、横振動は全く発生しないかまたは発生するにしても僅かしか発生しない。
したがって、この状態Aにおいては、斜視図で示すように、振動体124をねじり振動の共振周波数と等しい周波数で振動させると、振動体124は、単純に、揺動軸線134まわりに揺動させられる。よって、この状態Aにおいては、光走査に必要なねじり振動のみが振動体124に誘起されることになる。
本実施形態においては、振動体124をねじり振動の共振周波数と等しい周波数で振動させると、振動体124にねじり振動のみ発生し、横振動は発生しないように、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が設定される。その差は、約1kHz以上であることが望ましい。
図8に示すように、本実施形態においては、長さ比率γが約70%から増加するにつれて、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が増加し、また、長さ比率γが約70%から減少するにつれて、同様に、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が増加する。
そして、本実施形態においては、振動体124をねじり振動の共振周波数と等しい周波数で振動させると、振動体124にねじり振動のみ発生し、横振動は発生しないようにするために、長さ比率γが、例えば、約75%以上の値または約65%以下の値に、望ましくは、約80%以上の値または約60%以下の値に、さらに望ましくは、約85%以上の値に、さらに望ましくは、約90%以上の値に設定される。
本実施形態においては、長さ比率γが50%とは異なる値に設定されれば、ミラー側板ばね部142と枠側板ばね部144との連結位置(すなわち、接続部146の位置)が全体ばね部140の長さ方向中心から外れるように位置させられることになる。
さらに、本実施形態においては、長さ比率γが50%より高い値に設定されれば、枠側板ばね部144の長さ寸法がミラー側板ばね部142の長さ寸法より長くなるように設定されることになる。
さらに、本実施形態においては、長さ比率γが約70%より高い値に設定されれば、ねじり振動の共振周波数が横振動の共振周波数より高い値に設定されることになる。
これに対し、図14には、図8の状態Bにおける振動体124の振動が斜視図とグラフとで示されている。この状態Bにおいては、グラフで示すように、振動体124をねじり振動の共振周波数と等しい周波数で振動させると、その振動周波数においては、振動体124にねじり振動が最大強度で発生し、同時に、横振動もやや強く発生してしまう。
そのため、この状態Bにおいては、斜視図で示すように、振動体124をねじり振動の共振周波数と等しい周波数で振動させると、振動体124は、揺動軸線134まわりの揺動と横運動とが複合されたぶらんこ運動を行わせられる。よって、この状態Bにおいては、光走査に必要なねじり振動に加え、光走査に不要な横振動も誘起されている。
本実施形態においては、長さ比率γが適正化されることによって全体ばね部140の長さ方向形状が適正化されており、それにより、振動体124にねじり振動のみが誘起され、光走査のための振動体124の振動が目標通りに行われる。
本実施形態においては、反射ミラー部122が円形薄板状を成している。これに対し、図15には、反射ミラー部が矩形薄板状を成す比較例の共振周波数特性がグラフで表されている。この比較例においては、反射ミラー部の最大横寸法が本実施形態における反射ミラー部122の最大横寸法と等しく設定されている。
図15のグラフから明らかなように、ねじり振動の共振周波数は、長さ比率γの如何を問わず、ほぼ約22.5kHzに維持されている。この値は、本実施形態におけるねじり振動の共振周波数である約30kHzより低い。この理由の一つは、比較例における反射ミラー部の慣性モーメントの方が、本実施形態における反射ミラー部122の慣性モーメントより大きく、そのため、比較例の方が本実施形態より共振周波数が低下したという理由である。
したがって、本実施形態によれば、反射ミラー部122が円形薄板状を成していることにより、光走査装置104の走査周波数の増加ひいては表示画像の解像度の増加が、反射ミラー部が矩形薄板状を成す場合より容易となる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、光走査装置104による光走査を、比較的高い周波数で、かつ、ねじり振動以外の振動の影響を受けることを抑制しつつ、行うことが容易となる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、長さ比率γが前記(1)項における「形状定義パラメータ」の一例を構成し、横振動が同項における「外乱振動」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、ミラー側板ばね142が前記(2)項における「第1の部分ばね部」の一例を構成し、2本の枠側板ばね部144が同項における「複数の第2の部分ばね部」の一例を構成し、固定枠116が同項における「固定部」の一例を構成しているのである。
さらに、本実施形態においては、各枠側板ばね部144を、固定枠116に近い第1部分と、ミラー側板ばね部142に近い第2部分とに分けた場合に、各枠側板ばね部144のうちの第1部分に凹部158が形成されることにより、第1部分において第2部分より薄板化されている。すなわち、本実施形態においては、凹部158の形成が前記(3)項における「薄板化」の一例を構成しているのである。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、全体ばね部140の各部位の幅寸法が異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第1実施形態においては、図7に示すように、ミラー側板ばね部142の有効幅寸法は75μm、枠側板ばね部144の有効幅寸法は55μmであるのに対し、本実施形態においては、ミラー側板ばね部142の有効幅寸法も枠側板ばね部144の有効幅寸法も、第1実施形態より長く設定されている。具体的には、ミラー側板ばね部142の有効幅寸法は100μm、枠側板ばね部144の有効幅寸法は80μmにそれぞれ設定されている。すなわち、ミラー側板ばね部142の幅も枠側板ばね部144の幅も第1実施形態より広くされ、それにより、ミラー側板ばね部142のねじり剛性および枠側板ばね部144の曲げ剛性が第1実施形態より増加させられているのである。
図16には、本実施形態における振動体124の共振周波数特性がグラフで表されている。本実施形態においては、ねじり振動の共振周波数が約40kHzであり、第1実施形態より高い。横振動の共振周波数は、長さ比率γの減少について上昇し、長さ比率γが約82%である場合にねじり振動の共振周波数と一致する。すなわち、本実施形態においては、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数とが互いに一致するときにおける長さ比率γが約82%なのである。
さらに、図16に示すように、本実施形態においては、長さ比率γが約82%から増加するにつれて、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が増加し、また、長さ比率γが約82%から減少するにつれて、同様に、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が増加する。
したがって、本実施形態においては、長さ比率γが、例えば、約80%以下の値または約85%以上の値に、望ましくは、約75%以下の値または約90%以上の値に、より望ましくは、約70%以下の値または約95%以上の値に設定される。
以上の説明から明らかなように、本実施形態によれば、光走査装置104による光走査を、比較的高い周波数で、かつ、ねじり振動以外の振動の影響を受けることを抑制しつつ、行うことが容易となる。
次に、本発明の第3実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態に対し、全体ばね部140の各部位の幅寸法が異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第1実施形態においては、図7に示すように、ミラー側板ばね部142の有効幅寸法は75μm、枠側板ばね部144の有効幅寸法は55μmであるのに対し、本実施形態においては、ミラー側板ばね部142の有効幅寸法も枠側板ばね部144の有効幅寸法も、第1実施形態より短く設定されている。具体的には、ミラー側板ばね部142の有効幅寸法は10μm、枠側板ばね部144の有効幅寸法は1μmにそれぞれ設定されている。すなわち、ミラー側板ばね部142の幅も枠側板ばね部144の幅も第1実施形態より狭くされ、それにより、ミラー側板ばね部142のねじり剛性および枠側板ばね部144の曲げ剛性が第1実施形態より減少させられているのである。
図17には、本実施形態における振動体124の共振周波数特性がグラフで表されている。本実施形態においては、ねじり振動の共振周波数が約20kHzであり、第1実施形態より低い。横振動の共振周波数は、長さ比率γの減少について上昇し、長さ比率γが約65%である場合にねじり振動の共振周波数と一致する。すなわち、本実施形態においては、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数とが互いに一致するときにおける長さ比率γが約65%なのである。
さらに、図17に示すように、本実施形態においては、長さ比率γが約65%から増加するにつれて、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が増加し、また、長さ比率γが約65%から減少するにつれて、同様に、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が増加する。
したがって、本実施形態においては、長さ比率γが、例えば、約60%以下の値または約70%以上の値に、望ましくは、約75%以上の値に、より望ましくは、約80%以上の値に設定される。
次に、本発明の第4実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、第3実施形態に対し、全体ばね部140の厚さ寸法が異なるのみで、他の要素については共通するため、異なる要素についてのみ詳細に説明し、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、詳細な説明を省略する。
第3実施形態においては、図7に示すように、全体ばね部140(凹部158を除く。)の厚さ寸法が100μmであるのに対し、本実施形態においては、第3実施形態より短く設定されている。具体的には、全体ばね部140の厚さ寸法は40μmに設定されている。すなわち、全体ばね部140の厚さが第3実施形態より薄くされ、それにより、ミラー側板ばね部142のねじり剛性および枠側板ばね部144の曲げ剛性が第3実施形態より減少させられているのである。
図18には、本実施形態における振動体124の共振周波数特性がグラフで表されている。本実施形態においては、ねじり振動の共振周波数が約12kHzであり、第3実施形態より低い。横振動の共振周波数は、長さ比率γの減少について上昇し、長さ比率γが約85%である場合にねじり振動の共振周波数と一致する。すなわち、本実施形態においては、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数とが互いに一致するときにおける長さ比率γが約85%なのである。
さらに、図18に示すように、本実施形態においては、長さ比率γが約85%から増加するにつれて、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が増加し、また、長さ比率γが約85%から減少するにつれて、同様に、ねじり振動の共振周波数と横振動の共振周波数との差が増加する。
したがって、本実施形態においては、長さ比率γが、例えば、約80%以下の値または約90%以上の値に、望ましくは、約75%以下の値または約95%以上の値に、より望ましくは、約70%以下の値に設定される。
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
本発明の第1実施形態に従う光走査装置を備えた網膜走査型ディスプレイを示す系統図である。 図1における光走査装置104を示す分解斜視図である。 図2における駆動源154をその周辺部と共に示す断面図および斜視図である。 図2における振動体124を示す斜視図である。 図1における水平走査駆動回路180の内部構成と外部要素との接続とを示すブロック図である 図2における振動体124を示す斜視図である。 図6に示す振動体124の各部位を示す断面図である。 図6に示す振動体124の共振周波数と長さ比率との関係を示すグラフである。 図8における縦振動を説明するための斜視図である。 図8における横振動を説明するための斜視図である。 図8におけるねじり振動を説明するための斜視図である。 図8における縦振動2倍を説明するための斜視図である。 図8における状態Aにおける振動体124の振動を説明するための斜視図およびグラフである。 図8における状態Bにおける振動体124の振動を説明するための斜視図およびグラフである。 反射ミラー部が矩形薄板状を成す振動体である比較例の共振周波数と長さ比率との関係を示すグラフである。 本発明の第2実施形態に従う光走査装置104における振動体124の共振周波数と長さ比率との関係を示すグラフである。 本発明の第3実施形態に従う光走査装置104における振動体124の共振周波数と長さ比率との関係を示すグラフである。 本発明の第4実施形態に従う光走査装置104における振動体124の共振周波数と長さ比率との関係を示すグラフである。
符号の説明
20 光源ユニット
24 走査装置
104 光走査装置
116 固定枠
120 反射面
122 反射ミラー部
124 振動体
140 全体ばね部
142 ミラー側板ばね部
144 枠側板ばね部

Claims (16)

  1. 光を反射する反射面を有する振動体の少なくとも一部を振動させることにより、前記反射面に入射した光の反射方向を変化させて光を走査する光走査装置であって、
    前記振動体は、
    (a)前記反射面を有する反射ミラー部と、
    (b)その反射ミラー部から延び、少なくともねじり振動が発生させられる全体ばね部と
    を含み、
    その振動体は、前記全体ばね部の長さ方向における形状を定義する形状定義パラメータ次第で、前記ねじり振動の共振周波数とそのねじり振動以外の振動である外乱振動の共振周波数とが互いに一致する振動特性を有しており、
    前記形状定義パラメータは、前記ねじり振動の共振周波数と前記外乱振動の周波数とが互いに一致しない領域内に設定されている光走査装置。
  2. 前記振動体は、前記反射ミラー部と共同して前記全体ばね部を両持ち状に連結する固定部を含み、
    前記全体ばね部は、
    一端部において前記反射ミラー部に連結され、ねじり振動が発生させられる第1の部分ばね部と、
    その第1の部分ばね部の他端部から分岐して延びて前記固定部に連結され、曲げ振動とねじり振動とが発生させられる複数の第2の部分ばね部と
    を含む請求項1に記載の光走査装置。
  3. 前記各第2の部分ばね部を、前記固定部に近い第1部分と、前記第1の部分ばね部に近い第2部分とに分けた場合に、各第2の部分ばね部は、前記第1部分において前記第2部分より薄板化されている請求項2に記載の光走査装置。
  4. 前記形状定義パラメータは、前記第1の部分ばね部と前記複数の第2の部分ばね部との連結位置が前記全体ばね部の長さ方向中心から外れるように設定されている請求項2または3に記載の光走査装置。
  5. 前記形状定義パラメータは、前記複数の第2の部分ばね部の長さ寸法が前記第1の部分ばね部の長さ寸法より長くなるように設定されている請求項2ないし4のいずれかに記載の光走査装置。
  6. 前記外乱振動は、前記反射ミラー部が前記反射面に平行な方向に振動する横振動である請求項2ないし5のいずれかに記載の光走査装置。
  7. 前記形状定義パラメータは、前記ねじり振動の共振周波数が前記横振動の共振周波数より高い領域内に設定されている請求項6に記載の光走査装置。
  8. 前記形状定義パラメータは、前記ねじり振動の共振周波数が前記横振動の共振周波数に対して約1kHz以上異なる領域内に設定されている請求項6または7に記載の光走査装置。
  9. 前記ねじり振動の共振周波数は、約12kHzないし約40kHzの範囲内に設定されている請求項2ないし8のいずれかに記載の光走査装置。
  10. 前記形状定義パラメータは、前記全体ばね部の長さ寸法に対する前記複数の第2の部分ばね部の長さ寸法の百分率として定義されており、
    その形状定義パラメータは、約65パーセントないし約85パーセントの範囲内に設定されている請求項9に記載の光走査装置。
  11. 前記反射ミラー部と前記全体ばね部とは、共に板状を成して、同一平面上に配置されている請求項1ないし10のいずれかに記載の光走査装置。
  12. 前記反射ミラー部は、円板状を成し、それの両面の少なくとも一方が前記反射面である請求項1ないし11のいずれかに記載の光走査装置。
  13. 前記反射ミラー部は、前記ねじり振動により、揺動軸線まわりに揺動させられ、
    前記全体ばね部は、前記振動体に、前記反射ミラー部を隔てて前記揺動軸線の方向において互いに対向する2個の対向位置にそれぞれ配置される請求項1ないし12のいずれかに記載の光走査装置。
  14. 前記2個の対向位置にそれぞれ配置された2個の全体ばね部は、前記反射ミラー部の位置に関して互いに対称的に配置される請求項13に記載の光走査装置。
  15. 光束の走査によって画像を形成する画像形成装置であって、
    前記光束を出射する光源と、
    請求項1ないし14のいずれかに記載の光走査装置を有し、その光走査装置を使用することにより、前記光源から出射した光束を走査する走査部と
    を含む画像形成装置。
  16. 前記走査部は、前記光束を観察者の網膜上において2次元的に走査することにより、画像を網膜上に投影するものである請求項15に記載の画像形成装置。
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