JP2005264107A - 印刷インキ用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 塩素含有化合物、及びトルエン等の芳香族溶剤を用いることなく、ポリオレフィン等の基材に対して優れた密着性を呈し、フィラー(顔料や染料等)分散性にも優れた印刷インキ用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)単位30〜99.9質量%と、官能基含有ビニル系単量体(b)単位70〜0.1質量%とを含むアクリル系共重合体(A)を含有することを特徴とする。官能基含有ビニル系単量体(b)としては、カルボキシル基含有ビニル系単量体及び/又は酸無水物基含有ビニル系単量体が好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリオレフィン基材の印刷に用いて好適な印刷インキ用樹脂組成物に関する。
ポリオレフィン基材は、一般の印刷インキ用樹脂組成物では密着性が不足し、印刷が困難な傾向にある。そのため、基材に対して表面処理やプライマー印刷等の前処理を実施し対応することが一般的である。
ポリオレフィン基材に対する密着性に優れ、前処理を要することなく印刷を実施できる印刷インキ用樹脂成分として、塩素化ポリオレフィンが知られている。しかしながら、該樹脂は塩素含有化合物であり、しかもトルエン等の芳香族溶剤以外の溶剤に対する溶解性が低く、芳香族溶剤を使用せざるを得ないため、環境面から好ましくない。
塩素を含まない印刷インキ用樹脂成分として、ポリオレフィンに(メタ)アクリレートや酸無水物をグラフト重合したアクリル/酸変性ポリオレフィンが提案されている(特許文献1等)。しかしながら、該樹脂はポリオレフィン基材に対する密着性に優れるものの、トルエン等の芳香族溶剤以外の溶剤に対する溶解性は低く、依然として環境面から好ましくない。
特開2002−173514号公報
本発明は、塩素含有化合物、及びトルエン等の芳香族溶剤を用いることなく、ポリオレフィン等の基材に対して優れた密着性を呈し、フィラー(顔料や染料等)分散性にも優れた印刷インキ用樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討し、以下の組成物を発明した。
本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)単位30〜99.9質量%と、官能基含有ビニル系単量体(b)単位70〜0.1質量%とを含むアクリル系共重合体(A)を含有することを特徴とする。官能基含有ビニル系単量体(b)としては、カルボキシル基含有ビニル系単量体及び/又は酸無水物基含有ビニル系単量体が好ましい。また、アクリル系共重合体(A)は、塩素非含有化合物であることが好ましい。
本発明によれば、塩素含有化合物、及びトルエン等の芳香族溶剤を用いることなく、ポリオレフィン等の基材に対して優れた密着性を呈し、フィラー(顔料や染料等)分散性にも優れた印刷インキ用樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、構成成分として、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)単位と、官能基含有ビニル系単量体(b)単位とを含むアクリル系共重合体(A)を含有してなる。
単量体(a)としては、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、及び/又はメタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルを用いる。
官能基含有ビニル系単量体(b)としては、官能基を有し、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)と共重合し得るものであれば特に制限なく使用できる。官能基としては特に限定されないが、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、リン酸基等が挙げられる。
水酸基含有ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
アミノ基含有ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−メチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
エポキシ基含有ビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
カルボキシル基又は酸無水物基含有ビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ブテン酸、ペンテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸等のα、β−不飽和ジカルボン酸、及び、マレイン酸無水物、フマル酸無水物、シトラコン酸無水物等のα、β−不飽和ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
リン酸基含有ビニル系単量体としては、モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、モノ(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルアシッドホスフェート、モノ(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレングリコールアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシオキシエチルブチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルメチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシポリオキシエチレングリコールブチルアシッドホスフェート、ビニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
官能基含有ビニル系単量体(b)は1種又は2種以上を用いることができる。例示した中でも、フィラー分散性に優れることから、カルボキシル基含有ビニル系単量体及び/又は酸無水物基含有ビニル系単量体が好ましく用いられる。
アクリル系共重合体(A)では、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)単位によってポリオレフィン等の基材への良好な密着性が発現し、官能基含有ビニル系単量体(b)単位によって良好なフィラー分散性が発現する。そして、これら単量体を所定比で併用することで、基材密着性とフィラー分散性のバランスが良好な印刷インキ用樹脂成分となる。
本発明では、アクリル系共重合体(A)中の(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)単位の含有量を30〜99.9質量%、官能基含有ビニル系単量体(b)単位の含有量を70〜0.1質量%とする。
単量体(a)単位の含有量が上記下限未満では、ポリオレフィン基材への密着性が不充分となる恐れがある。単量体(a)単位の含有量は、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。単量体(a)単位の含有量は、好ましくは99.5質量%以下、特に好ましくは99質量%以下である。
単量体(b)単位の含有量が上記下限未満では、フィラー分散性が不充分となる恐れがある。単量体(b)単位の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。単量体(b)単位の含有量は、好ましくは50質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
アクリル系共重合体(A)には、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)と官能基含有ビニル系単量体(b)の共重合性を向上させる等の目的で、必要に応じて単量体(a)及び(b)以外の他のビニル系単量体(c)単位を含ませることができる。
その他のビニル系単量体(c)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノルマルブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸tーブトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等のマレイミド類;カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン等のジエン類;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン等のモノもしくはポリアルキルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート類;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の不飽和有機シラン化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
環境面から、アクリル系共重合体(A)は、塩素非含有化合物であることが好ましい。すなわち、例示したように、単量体(b)単位、及び必要に応じて用いられる他のビニル系単量体(c)単位は塩素を含まないものであることが好ましい。
アクリル系共重合体(A)は、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体等のいかなる共重合構造を呈するものであっても良い。但し、得られる組成物の印刷性、膜強度及び形態保持性の観点から、その数平均分子量は5000〜500000、特に10000〜300000が好ましい。
アクリル系共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のラジカル重合、アニオン重合、グループトランスファー重合(GTP)、配位アニオン重合等の公知重合方法を採用できる。
重合温度は特に制限はないが、−100〜250℃、特に0〜200℃が好ましい。
重合に際しては、連鎖移動剤やラジカル重合開始剤を用いても良い。
連鎖移動剤としては特に制限はないが、水素や、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン等を、1種又は2種以上用いることができる。
ラジカル重合開始剤としては特に制限はないが、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等のアゾ化合物、好ましくはベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等を、1種又は2種以上用いることができる。
ラジカル重合開始剤の添加量は特に制限はないが、用いる単量体の合計100質量部に対して0.0001〜10質量部が好ましい。
本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、少なくともアクリル系共重合体(A)を含むものであるが、ポリオレフィン基材に対する密着性を損なわない範囲で、必要に応じて他の重合体(B)を併用することができる。
他の重合体(B)としては特に制限はないが、ポリスチレン等のポリ芳香族ビニル化合物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステル、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、繊維素樹脂等が挙げられる。これら重合体(B)は1種又は2種以上を用いることができる。
併用する重合体(B)としては、例示した中でも、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を有する重合体が好ましく用いられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、インキ層形成に必要な性能及び得られるインキ層の性能、例えば、フィラー分散性、印刷作業性、インキ層乾燥性、乾燥後インキ層の硬度・耐溶剤性・耐候性・耐水性等の向上に有効な成分である。特に、乾燥後インキ層の耐候性や硬度が優れることから、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル等、特にメタクリル酸メチルが好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
また、フィラー分散性等を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を有する重合体として、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル(a)の単独重合体を用いることもできる。(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル(a)は上記した如く、ポリオレフィン基材に対する密着性の向上に有効である。
本発明の印刷インキ用樹脂組成物には、その他、必要に応じて他の固形成分を配合することができる。その具体例としては、アルミペースト、マイカ等の光輝剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、耐放射線剤、熱安定剤等の各種安定剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤;無機充填剤、滑剤、可塑剤、有機過酸化物、中和剤;表面調整剤、架橋剤、硬化触媒、顔料沈降防止剤等の補助的添加剤等が挙げられる。
本発明の印刷インキ用樹脂組成物におけるアクリル系共重合体(A)の配合量は、所望とする性能によって適宜決定され特に限定されないが、基材やトップコートに対する密着性の観点から、全固形分(重合体(A)、さらに必要に応じて使用される重合体(B)及び他の固形成分の合計)中30〜100質量%が好ましい。
また、印刷インキ製造時の取り扱い性や印刷性の観点から、本発明の印刷インキ用樹脂組成物は溶液であることが好ましい。アクリル系共重合体(A)は、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤の他、各種溶剤に対して良好な溶解性を呈する。すなわち、本発明では環境への負荷の大きい芳香族溶剤を用いる必要がない。
アクリル系共重合体(A)及び必要に応じて使用される重合体(B)を良好に溶解し、他の固形成分を溶解又は分散する非芳香族溶剤としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;DBE(デュポン(株)製)等のエステル類;n−ブタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶剤;ミネラルターペン、アイソパーE(エクソン化学(株)製)等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。中でも、環境面から、エステル類やアルコール類が好ましく用いられる。
なお、芳香族溶剤を用いないことは環境面から好ましいが、必要に応じてこれを使用することも差し支えない。使用可能な芳香族溶剤としては、トルエン、キシレン、スワゾール#1000(丸善石油化学(株)製)、ソルベッツ#150(エクソン化学(株)製)、スーパーゾール1500(新日本石油化学(株)製)等が挙げられる。
溶液とした場合の樹脂濃度(アクリル系共重合体(A)及び必要に応じて使用される重合体(B)の合計濃度)は特に限定されないが、取り扱い性を考慮すると、10〜70質量%が好ましい。
なお、本発明の印刷インキ用樹脂組成物には溶剤を配合せず、固形成分のみにより構成し、使用前に上記溶剤と混合して印刷インキを調製することも差し支えない。
さらに、本発明の印刷インキ用樹脂組成物が、水酸基含有化合物を含む場合には、架橋剤としてメラミン樹脂やイソシアネート化合物を混合することで、耐溶剤性、耐水性、耐候性等のインキ層性能を一層向上することができる。
メラミン樹脂としては、n−ブチル化メラミン樹脂やメチル化メラミン樹脂等が挙げられる。
イソシアネート化合物としては、フリーのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物や、イソシアネート基がブロック化されたものが挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートやトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−(又は2,6−)ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ジ(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン等の環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;これら有機ジイソシアネート自体、又はこれら有機ジイソシアネートの過剰量と多価アルコールや水等との付加物、前記各有機ジイソシアネートの重合体、さらにはイソシアネート・ビューレット体等が挙げられる。
イソシアネート化合物は、印刷インキ用樹脂組成物中の水酸基含有化合物との当量比で、NCO/OH=0.1/1〜3/1の範囲で含まれることが好ましい。
本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、これをそのまま、あるいは他の成分と混合して、印刷インキとして使用される。使用に当たっては、例えば、乾燥後膜厚が0.1〜1000μmとなるように印刷を行うことが好ましい。
以上説明したように、本発明の印刷インキ用樹脂組成物では、印刷インキ用樹脂成分として、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)単位と、官能基含有ビニル系単量体(b)単位とを所定の組成比で含む特定のアクリル系共重合体(A)を用いる構成とした。この共重合体(A)は、塩素を含む単量体を用いることなく、各種基材に対して優れた密着性を呈し、しかもトルエン等の芳香族溶剤以外の各種溶剤に対して良好な溶解性を呈する。
すなわち、本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、塩素含有化合物、及びトルエン等の芳香族溶剤を用いることなく、各種基材に対する優れた密着性を実現したもので、環境面でも優れている。本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、各種基材に対する密着性が良好であるので、これを用いることで、表面処理やプライマー印刷等の前処理を必要とせず、ダイレクトに印刷を実施することができる。
ポリオレフィン基材は他の基材に比して、一般の印刷インキ用樹脂組成物では密着性が不足し、印刷が困難な傾向にあるが、本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、ポリオレフィン基材に対しても良好な密着性を呈する。したがって、本発明の樹脂組成物は特にポリオレフィン基材の印刷に用いて好適である。
ポリオレフィン基材としては、例えば、高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリスチレン等のポリオレフィン、あるいはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィンからなる包装フィルム、建装用フィルム、自動車部品用成形品、家電製品用成形品等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記例によって制限されるものではない。下記例中、「部」及び「%」は質量基準とする。
なお、アクリル系重合体の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)(Waters製、GPC150−C)にて、ポリメタクリル酸メチルを基準として測定した。
(合成例1)
1L冷却管付フラスコに、(a)成分としてアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル90部と、(b)成分としてアクリル酸4−ヒドロキシブチル10部と、トルエン100部とを仕込み、窒素バブリングにより雰囲気を窒素置換した。次いで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部を加えた後、内温が80℃になるまで昇温させ、同温度で5時間保持し重合を完結させた。得られた重合溶液にトルエン150部を添加して、重合体を完全に溶解させた後、メタノール3000部中に投じ、沈殿物をろ過して白色固体を得た。この白色固体をメタノールで洗浄した後、減圧乾燥して精製し、アクリル系共重合体(A−1)を得た。この重合体の数平均分子量は31000であった。
(合成例2)
(a)成分として、メタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルを用いた以外は、合成例1と同様にして、アクリル系共重合体(A−2)を得た。この重合体の数平均分子量は32000であった。
(合成例3)
(b)成分として、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いた以外は、合成例1と同様にして、アクリル系共重合体(A−3)を得た。この重合体の数平均分子量は30000であった。
(合成例4)
(b)成分として、アクリル酸4−ヒドロキシブチル9部、及びメタクリル酸1部を用いた以外は、合成例1と同様にして、アクリル系共重合体(A−4)を得た。この重合体の数平均分子量は32000であった。
(合成例5)
(b)成分として、アクリル酸4−ヒドロキシブチル8部、及びメタクリル酸1部を用い、さらに(c)成分としてスチレン1部を用いた以外は、合成例1と同様にして、アクリル系共重合体(A−5)を得た。この重合体の数平均分子量は35000であった。
(合成例6)
(b)成分として、アクリル酸4−ヒドロキシブチル9部、及びリン酸メタクリレート(共栄化学製、ライトエステルP2M)1部を用いた以外は、合成例1と同様にして、アクリル系共重合体(A−6)を得た。この重合体の数平均分子量は33000であった。
(合成例7)
(a)成分としてアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル100部を用い、(b)成分を用いなかった以外は、合成例1と同様にして、アクリル系重合体(B−1)を得た。この重合体の数平均分子量は31000であった。
(合成例8)
(b)成分を用いず、代わりに(c)成分としてメタクリル酸メチル10部を用いた以外は、合成例1と同様にして、アクリル系共重合体(B−2)を得た。この重合体の数平均分子量は29000であった。
(合成例9)
(a)成分としてアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル20部を用い、(b)成分に加えて(c)成分としてメタクリル酸メチル70部を用いた以外は、合成例1と同様にして、アクリル系共重合体(B−3)を得た。この重合体の数平均分子量は29000であった。
(実施例1〜15、比較例1〜3)
上記で得たアクリル系重合体に溶剤を加え、室温下、3時間攪拌混合して、印刷インキ用樹脂組成物を得た。用いたアクリル系重合体及び溶剤の種類、混合比(単位は「部」)を表1〜3に示す。なお、得られた印刷インキ用樹脂組成物の印刷インキとしての評価は、塗膜での評価で代用した。
(評価項目及び評価方法)
<溶剤溶解性>
各例において得られた印刷インキ用樹脂組成物を、酢酸エチルにて重合体濃度25%となるように希釈し、25℃環境下で30日間静置した。その後、重合体の溶解状態を目視観察し、下記基準にて評価した。
○:無色透明で、重合体の析出なし
×:白濁、もしくは重合体の析出あり
<基材密着性>
各例において得られた印刷インキ用樹脂組成物100部に、酸化チタン(石原産業(株)製、白色顔料、タイペークCR−95)1.5部と、ZrO粉砕用ボール(2mmφ)100部を加え、ボールミル型粉砕機((株)伊藤製作所、LP−4)を用い、150rpm、室温、処理時間1時間の条件にて混合した。ろ過によりZrO粉砕用ボールを分離除去した後、酢酸エチルにて重合体濃度25%となるように希釈し、酸化チタン分散溶液(P)を得た。この溶液(P)を、ポリプロピレン(PP)射出成形板(日本ポリケム(株)製、ノバテックPP・TX1810A、3mm厚平板)に対して乾燥後厚さ10μmとなるようにスピンコートし、室温にて15分、次いで80℃にて1時間乾燥し、塗膜を形成した。
得られた塗膜を碁盤目(1mm間隔、100マス)にカットし、JIS K 5400に基づいて、塗膜のセロハンテープ(登録商標)による剥離テストを行い、付着率(基材に残ったマスの数)から密着性を評価した。
<フィラー分散性>
上記で調製した酸化チタン分散溶液(P)を用い、ガラス板上へ乾燥後厚さ10μmとなるようにスピンコートし、80℃で1時間乾燥した。得られた塗膜の表面を目視観察し、酸化チタンの凝集状態から下記基準にてフィラー分散性を評価した。
◎:酸化チタンの凝集がなく、塗膜表面が極めて平滑
○:酸化チタンの凝集がなく、塗膜表面が平滑
×:酸化チタンの凝集物あり
<アクリル樹脂との相溶性>
各例において得られた印刷インキ用樹脂組成物を、酢酸エチルにて重合体濃度20%となるように希釈し、溶液(Q)を調製した。別途、メタクリル酸メチル(85%)/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(15%)ランダム共重合体(質量平均分子量50000)を、濃度20%となるように酢酸エチルに溶解した溶液(R)を調製した。溶液(Q)と溶液(R)とを室温下、3種の質量比(3/7、5/5、7/3)で混合した後、室温下24時間静置させた後の液相を目視観察し、アクリル樹脂との相溶性を下記基準にて評価した。
○:いずれの混合質量比においても均一混合・無色透明な状態が維持されていた。
×:少なくとも一つの混合質量比において、液相分離もしくは白濁が見られた。
(結果)
結果を表1〜3に合わせて示す。
表に示すように、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)単位30〜99.9質量%と、官能基含有ビニル系単量体(b)単位70〜0.1質量%とを含むアクリル系共重合体(A−1)〜(A−6)は、いずれも酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサン等の各種溶剤に対して良好な溶解性を呈し、溶液の保存安定性も良好であった。
これを印刷インキ用樹脂成分として用いた実施例1〜15はいずれも、ポリオレフィン基材に対して優れた密着性を呈する印刷インキ用樹脂組成物が得られた。また、得られた組成物はいずれもフィラー分散性、一般のアクリル樹脂との相溶性も良好であった。中でも、(b)成分としてカルボキシル基含有ビニル系単量体を含むアクリル系共重合体(A−3)又は(A−4)を50%含む樹脂組成物を調製した実施例3、4では、フィラー分散性の結果が特に良好であった。
対して、(b)成分を含まない比較用のアクリル系重合体(B−1)又は(B−2)を用いた比較例1、2では、得られた印刷インキ用樹脂組成物は、フィラー分散性及び一般のアクリル樹脂との相溶性が著しく不良であった。また、(a)成分と(b)成分を含むが、(a)成分の含有量が30質量%未満の比較用のアクリル系重合体(B−3)を用いた比較例3では、得られた印刷インキ用樹脂組成物は、ポリオレフィン基材に対する密着性が著しく不良であった。
Figure 2005264107
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本発明の印刷インキ用樹脂組成物は、各種ポリオレフィン基材(包装フィルム、建装用フィルム、自動車部品用成形品、家電製品用成形品等)への印刷に好ましく用いられる。

Claims (3)

  1. (メタ)アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単量体(a)単位30〜99.9質量%と、官能基含有ビニル系単量体(b)単位70〜0.1質量%とを含むアクリル系共重合体(A)を含有する印刷インキ用樹脂組成物。
  2. 官能基含有ビニル系単量体(b)が、カルボキシル基含有ビニル系単量体及び/又は酸無水物基含有ビニル系単量体である請求項1に記載の印刷インキ用樹脂組成物。
  3. アクリル系共重合体(A)が、塩素非含有化合物である請求項1又は2に記載の印刷インキ用樹脂組成物。
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