JP2005263732A - アミンスチルベン誘導体、その製造方法、および電子写真感光体 - Google Patents
アミンスチルベン誘導体、その製造方法、および電子写真感光体 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】 アミンスチルベン誘導体、その製造方法、および、そのようなアミンスチルベン誘導体を含む電子写真感光体であって、下記一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を対象とする。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、置換または非置換の窒素原子を含む有機基であり、複数のR1〜R6は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12の置換または非置換のアリール基等であり、複数のAr1およびAr2は、それぞれ独立した炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基である。)
【選択図】 図1
Description
このような有機感光体材料のうち、所定の電荷移動度を有する電荷輸送剤として、下記一般式(47)で表されるトリフェニルアミン構造を有するスチルベン化合物およびそれを用いた電子写真感光体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
そこで、本発明者らは、アミンスチルベン誘導体において、分子内の所定位置に、置換または非置換の窒素原子を含む有機基を導入することにより、感度に優れるとともに、結着樹脂との相溶性についても優れているという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、優れた感度や結着樹脂との相溶性を有し、電子写真感光体等の正孔輸送剤として好適に用いることのできるアミンスチルベン誘導体、その製造方法、および、優れた感度や結着樹脂との相溶性を有する電子写真感光体を提供することにある。
第1の実施形態は、下記一般式(1)で表されることを特徴とするアミンスチルベン誘導体である。
第2の実施形態は、下記反応式(1)に示すように、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体とを、触媒の存在下に反応させて、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を得ることを特徴とするアミンスチルベン誘導体の製造方法である。
まず、反応式(1)を実施する上で、原材料となる一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体の合成方法を詳細に説明する。
すなわち、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体は、下記反応式(2)に示すように、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法とウィッチヒ(Wittig)法を用いて、第1工程〜第4工程を含んで合成することが好ましい。なお、反応式(2)中の複数のR1〜R6、Ar1およびAr2は、それぞれ既に説明した内容である。)
第1工程は、一般式(8)で表されるアニリン誘導体と、一般式(9)で表されるヨードジフェニルベンゼン誘導体とを反応させて、一般式(10)で表されるトリフェニルアミン誘導体を作成する工程である。
そして、第1工程において、一般式(8)で表されるアニリン誘導体と、式(9)で表されるヨードジフェニルベンゼン誘導体の反応割合を、モル比で2:1〜4:1の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるアニリン誘導体と、ヨードジフェニルベンゼン誘導体との反応割合が、2:1未満の値になると、目的物であるトリフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるアニリン誘導体と、ヨードジフェニルベンゼン誘導体との反応割合が、4:1を超えると、未反応のアニリン誘導体が多く残留するため、目的物であるトリフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
第2工程は、得られた一般式(10)で表されるトリフェニルアミン誘導体から、フィルスマイヤー法を用いて、一般式(11)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を作成する工程である。
そして、第2工程において、フィルスマイヤー試薬(Vilsmeier試薬)として、以下の化合物(i)および(ii)の組合せを使用することが好ましい。
(i)オキシ塩化リン、ホスゲン、塩化オキサリル、塩化チオニル、トリフェニルホスフィン−臭素、ヘキサクロロトリホスファザトリエン等のハロゲン化剤
(ii)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアニリド(MFA)、N−ホルミルモルホリン、N,N−ジイソプロピルホルムアミド、特に、本発明では、フィルスマイヤー試薬として、オキシ塩化リンと、溶媒としても使用できるDMFとの組み合わせが好適に用いられる。
さらに、フィルスマイヤー試薬の使用量に関して、一般式(10)で表されるトリフェニルアミン誘導体1モルに対して、1〜20モル量の範囲内の値とすることが好ましく、2〜10モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、フィルスマイヤー法における、一般式(10)で表されるトリフェニルアミン誘導体のホルミル化の反応条件に関して、通常130℃以下の温度で行い、反応時間を5〜120分間の範囲内の値とすることが好ましい。
第3工程は、ウィッチヒ法を用いて、得られた一般式(11)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、式(12)で表されるリンイリド誘導体とを反応させて、一般式(13)で表されるトリフェニルアミン誘導体を作成する工程である。
そして、一般式(11)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、式(12)で表されるリンイリド誘導体とを反応させるにあたり、一般式(11)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、式(12)で表されるリンイリド誘導体との添加割合を、モル比で1:2〜1:4の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、リンイリド誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、一般式(13)で表されるトリフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、リンイリド誘導体との添加割合が、1:4を超えると、未反応のスチリル誘導体が多く残留するため、一般式(13)で表されるトリフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
なお、ウィッチヒ法を用いるにあたり、触媒として、例えば、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウムや水素化カリウム等の金属水素化物、n−ブチルリチウム等の金属塩の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
第4工程は、得られた一般式(13)で表されるトリフェニルアミン誘導体から、第2のフィルスマイヤー法を用いて、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を作成する工程である。
すなわち、第2のフィルスマイヤー法を用いるにあたり、第1のフィルスマイヤー法と同様の条件を採用し、反応式(1)中の原材料となる一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を効率的に合成することができる。
(1) 反応温度と反応時間
また、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体との反応は、通常、室温〜100℃で行うことが好ましく、その反応時間を1〜12時間の範囲内の値とすることが好ましい。
一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体との反応に使用する好適な溶媒としては、当該反応に影響を及ぼさないものであれば良いが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
また、かかる反応に使用する触媒としては、例えば、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウムや水素化カリウム等の金属水素化物、あるいは塩化亜鉛等が好適なものとして挙げられる。
ここで、かかる触媒の添加量を、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体1モルに対して、2〜5モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる触媒の添加量が2モル未満の値となると、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体と、の間の反応性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる触媒の添加量が5モルを超えると、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体と、の間の反応を制御することが著しく困難になる場合があるためである。
一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体と、の間の反応を実施するにあたり、添加割合を、モル比で1:2〜1:5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、ヒドラジン誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、中間体が生成しやすくなり、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、ヒドラジン誘導体とが、適切に対応して反応することが困難になる場合があるためである。また、かかる添加割合が、1:5を超えると、未反応のホルミル化トリフェニルアミン誘導体が多く残留し、精製を困難にする場合があるためである。
したがって、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体と、の添加割合を、モル比で1:2.2〜1:4.5の範囲内の値とすることがより好ましい。
第3の実施形態は、導電性基体上に感光体層を設けた電子写真感光体であって、感光体層に、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
ここで、電子写真感光体には、主として単層型感光体と積層型感光体とがあるが、本発明のアミンスチルベン誘導体は、いずれのタイプにも適用可能である。
ただし、特に正負いずれの帯電型感光体に使用できること、構造が簡単であって、製造が容易であること、感光体層を形成する際の被膜欠陥を効果的に抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上させやすい等の理由から、単層型感光体に適用することが好ましい。
(1) 基本的構成
図1(a)に示すように、単層型感光体10は、導電性基体12上に単一の感光体層14を設けたものである。
この感光体層は、例えば、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体(正孔輸送剤)と、電荷発生剤と、結着樹脂と、さらに必要に応じて電子輸送剤を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単であって、生産性に優れているという特徴がある。
さらに、単層型感光体の感光体層に、電子輸送剤を含有させる場合には、電荷発生剤と正孔輸送剤との電子の授受が効率よく行われるようになり、感度等がより安定する傾向が見られる。
(2)−1 種類
本発明の電子写真感光体に使用される電荷発生剤としては、無金属フタロシアニン(τ型またはX型)、チタニルフタロシアニン(α型またはY型)、ヒドロキシガリウムフタロシアニン(V型)、およびクロロガリウムフタロシアニン(II型)からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
この理由は、電荷発生剤の種類を特定することにより、正孔輸送剤および電子輸送剤を併用した場合に、感度特性、電気特性および安定性等がより優れた電子写真感光体を提供することができるためである。
これらの電荷発生剤のうち、具体的に、下記式(14)〜(17)で表されるフタロシアニン系顔料(CGM−A〜CGM−D)を使用することがより好ましい。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を備えた静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置に使用する場合には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えばペリレン系顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
この理由は、かかる電荷発生剤(CGM−B)と分散補助剤(C.IPigmentOrange16)をあわせて用いることにより、塗工溶液中でのCGM−Bの分散性を向上させ、塗工溶液のポットライフを長くすることができるためである。
なお、式(18)で表される分散補助剤を使用する場合、その添加量を、全電荷発生剤100重量部に対して、30〜200重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる分散補助剤の添加量が30重量部未満の値になると、CGM−Bの塗工溶液中での分散性が不十分になり、感光体として適正な膜か製造されないためである。一方、かかる分散補助剤が200重量部を超えると、かかる電荷発生剤の量子収率を高める効果が不十分となり、電子写真感光体の感度特性、電気特性、および安定性等を向上させることができなくなるためである。
本発明の電子写真感光体においては、正孔輸送剤である本発明のアミンスチルベン誘導体とともに、従来公知の他の正孔輸送剤を感光体層に含有させることも好ましい。
このような正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化合物、例えば下記の一般式(19)〜(31)で表される正孔輸送剤(HTM−1〜HTM−13)があげられる。
(4)−1 種類
電子輸送剤の種類としては、キノン誘導体を含むことが好ましい。例えば、ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、アゾキノン誘導体等が挙げられる。
この理由は、電子輸送剤として、特定の化合物を使用することにより、電子受容性に優れており、また電荷発生剤との相溶性が優れていることから、感度特性や耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができるためである。
また、電子輸送剤の具体例として、下記式(33)〜(35)で表される化合物(ETM−A〜ETM−C)が挙げられる。
また、これらの電子輸送剤のうち、電界強度が5×105v/cmにおける電子移動度が1.0×10-8cm2/V/sec以上である化合物がより好ましい。
(2)−1 種類
電荷発生剤等を分散させるための結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールZ型、ビスフェノールZC型、ビスフェノールC型、ビスフェノールA型等のポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の一種単独または二種以上の組み合わせが使用可能である。
また、感光体層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光体層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用しても良い。
本発明の電子写真感光体が単層型の感光体である場合、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すれば良い。また、本発明の一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体(正孔輸送剤)は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部の割合で配合すれば良い。電子輸送剤を含有させる場合、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部とするのが適当である。
また、本発明の電子写真感光体が積層型の感光体である場合、電荷発生層を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使用することができるが、結着樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で配合するのが適当である。さらに、電荷発生層に正孔輸送剤を含有させる場合は、正孔輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部、好ましくは50〜200重量部とするのが適当である。
また、単層型感光体における感光体層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。そして、このような感光体層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
また、導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していれば良い。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。前記感光体層を塗布の方法により形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させれば良い。
また、単層型感光体10の構成に関して、図1(b)に示すように、導電性基体12と感光体層14との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層16が形成されていても良い。また、図1(c)に示すように、感光体層14の表面には、保護層18が形成されていても良い。
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光体層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用しても良い。
図2(a)に示すように、積層型感光体20は、導電性基体12上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層24を形成し、次いでこの電荷発生層24上に、一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体(正孔輸送剤)の少なくとも1種と、結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層22を形成することによって作製される。
また、上記構造とは逆に、図2(b)に示すように、導電性基体12上に電荷輸送層22を形成し、その上に電荷発生層24を形成しても良い。
ただし、電荷発生層24は、電荷輸送層22に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、図2(a)に示すように、電荷発生層24の上に電荷輸送層22を形成することがより好ましい。
なお、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、結着剤等については、単層型感光体と同様の内容とすることができる。
また、積層型感光体は、上記電荷発生層および電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。例えば、上記のように、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した場合において、電荷輸送層における電荷輸送剤として、本発明のアミンスチルベン誘導体のような正孔輸送剤を使用した場合には、感光体は負帯電型となる。この場合、電荷発生層には電子輸送剤を含有させても良い。
なお、積層型感光体における感光体層の厚さは、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
1.アミンスチルベン誘導体の合成
(1)第1工程
第1工程において、下記反応式(3)に沿って、式(36)で表されるアニリン誘導体と、一般式(37)で表されるヨードジフェニルベンゼン誘導体とを反応させて、式(38)で表されるトリフェニルアミン誘導体を合成した。
すなわち、容量1000mlの2つ口フラスコ内に、無水炭酸カリウム48.4g(0.35mol)、および粉末銅2.22g(0.035mol)を加え、2時間加熱して、均一になるまで攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、式(36)で表されるアニリン誘導体60g(0.35mol)と、式(37)で表されるジフェニルヨードベンゼン65.4g(0.16mol)と、o−ジクロロベンゼンを100ml添加した後、180℃に加熱し、12時間反応させた。その後、室温まで冷却した後、100mlのトルエンを添加し、ろ過処理をした。得られた残渣をトルエンで溶解し、活性白土を用いて乾燥させた。その後、得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/へキサン溶媒)を用いて精製し、式(38)で表されるトリフェニルアミン誘導体54gを得た(収率69%)。
第2工程において、下記反応式(4)に沿って、得られた式(38)で表されるトリフェニルアミン誘導体から、フィルスマイヤー法を用いて、式(39)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を合成した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(38)で表されるトリフェニルアミン誘導体45g(0.092mol)と、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlと、ジメチルホルムアミド100mlに溶解させたオキシ塩化リン酸35.3g(0.23mol)と、を収容し、70℃、30分間の条件で、攪拌しながら反応させた。反応後、反応液をイオン交換水400mlおよびトルエン200mlからなる混合物中に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体はイオン交換水にて撹拌洗浄した。その後、固体をトルエンに溶解させ、有機層をイオン交換水にて洗浄を行った。その後、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、乾燥および吸着処理を行った。その後、トルエンを減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、式(39)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体42gを得た(収率84%)。
第3工程において、式(40)で表されるリンイリド誘導体を別途合成した後、ウィッチヒ法を用いて、得られた式(39)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、式(40)で表されるリンイリド誘導体とを反応させて、一般式(41)で表されるトリフェニルアミン誘導体を合成した。
まず、下記反応式(5)に沿って、式(40)で表されるリンイリド誘導体の合成を実施した。すなわち、ジフェニルクロロメタン500g(2.47mol)と、亜リン酸トリエチル492g(3.00mol)とを添加した後、攪拌しながら160℃、3時間の条件で加熱した。その後、室温まで冷却した後、過剰な亜リン酸トリエチルを減圧留去し、式(40)で表されるリンイリド誘導体639gを得た(収率85%)。
まず、500mlの二口フラスコ内の温度を−20℃に保持した状態で、式(40)で表されるリンイリド誘導体を36.3g(0.12mol)を収容した。次いで、二口フラスコ内をアルゴン置換した後、乾燥済みのTHFを100mlと、触媒としてのn−BuLiのヘキサン溶液を75ml(0.12mol)とを添加した後、10分間の攪拌を実施した。次いで、式(39)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を25g(0.046mol)添加した後、−20℃、15分間の条件で、攪拌しながら反応させた。
その後、反応液をイオン交換水500mlに注ぎ、トルエンを用いて抽出した後、得られた有機層をイオン交換水を用いて5回洗浄した。さらに、有機層に無水硫酸ナトリウム、および活性白土を加え、乾燥および吸着処理をした後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム溶媒)にて精製し、式(41)で表されるトリフェニルアミン誘導体32gを得た(収率82.0%)。
次いで、下記反応式(7)に沿って、式(41)で表されるトリフェニルアミン誘導体から、フィルスマイヤー法を用いて、式(42)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を合成した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(41)で表されるトリフェニルアミン誘導体30g(0.35mol)と、ジメチルホルムアミド(DMF)100mlと、ジメチルホルムアミド100mlに溶解させたオキシ塩化リン酸16.3g(0.11mol)と、を収容し、85℃、30分間の条件で、攪拌しながら反応させた。反応後、反応液をイオン交換水400mlに滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体はイオン交換水にて撹拌洗浄した。その後、固体をトルエンに溶解させ、有機層をイオン交換水にて洗浄した。その後、得られた有機層に無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、乾燥および吸着処理を行った。その後、トルエンを減圧留去し、残渣を200mlのトルエンに溶解させ、メタノールより晶析させ、式(42)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体27gを得た(収率86%)。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(42)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体10g(0.011mol)と、トルエン50mlと、触媒としての塩化亜鉛4.5g(0.033mol)と、式(43)で表されるジフェニルヒドラジン4.9g(0.026mol)と、を収容し、室温、12時間の条件で、攪拌しながら反応させた。反応後、反応液をイオン交換水400mlおよびトルエン200mlからなる混合物中に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体はイオン交換水にて撹拌洗浄した。その後、固体をトルエンに溶解させ、有機層をイオン交換水にて洗浄した。その後、得られた有機層に無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、乾燥および吸着処理を行った。その後、トルエンを減圧留去し、残渣を200mlのトルエンに溶解させ、メタノールより晶析させ、黄色結晶の式(5)で表されるアミンスチルベン誘導体8.1gを得た(収率60%)。
得られたアミンスチルベン誘導体を正孔輸送剤として、単層型の電子写真感光体を作成して、初期感度、残留電位および半減露光量およびを測定した。すなわち、正孔輸送剤として、式(5)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A)を60重量部と、電荷発生剤として、式(14)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を5重量部と、結着樹脂として、式(44)で表される共重合ポリカーボネート樹脂(Resin−A)100重量部と、を溶媒としてのテトラヒドロフラン800重量部に対して添加した。次いで、ボ-ルミルを用いて50時間混合分散して、単層型感光体層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型の電子写真感光体を得た。
得られた電子写真感光体における帯電性および感度特性を測定した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、700Vになるように帯電させた状態で電位を測定し、初期帯電電位(Vo)とした。次いで、ハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:1.5μJ/cm2)を感光体表面に照射した。照射後、表面電位が1/2になるまでに要した時間を測定し、感度特性の指標としての半減露光量(E1/2)を測定した。さらに、照射開始から330msec経過した後の電位を測定し、残留電位(Vr)とした。
実施例2〜4においては、実施例1の塗布液中に、電子輸送剤として、式(33)〜(35)で表される電子輸送剤(ETM−A〜C)をそれぞれ20重量部添加したほかは、実施例1と同様に電子写真感光体を作成して、評価した。
実施例5〜8においては、実施例1〜4で使用した式(5)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A)の代わりに、式(6)で表される正孔輸送剤(HTM−B)を用いたほかは、実施例1〜4と同様に電子写真感光体を作成して、評価した。
実施例9〜12においては、実施例1〜4で使用した式(5)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A)の代わりに、式(7)で表される正孔輸送剤(HTM−C)を用いたほかは、実施例1〜4と同様に電子写真感光体を作成して、評価した。
比較例1〜4においては、実施例1〜4で使用した式(5)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A)の代わりに、下式(45)で表される正孔輸送剤(HTM−D)を用いたほかは、実施例1〜4と同様に電子写真感光体を作成して、評価した。
比較例5〜8においては、実施例1〜4で使用した式(5)で表されるアミンスチルベン誘導体(HTM−A)の代わりに、下式(46)で表される正孔輸送剤(HTM−E)を用いたほかは、実施例1〜4と同様に電子写真感光体を作成して、評価した。
したがって、本発明の電子写真感光体は、各種画像形成装置の高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
さらに、本発明のアミンスチルベン誘導体は、高い正孔輸送能を有することから、太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等での種々の分野での利用が可能である。
12:導電性基体
14:感光体層
16:バリア層
18:保護層
20:積層型感光体
22:電荷輸送層
24:電荷発生層
Claims (6)
- 下記一般式(1)で表されることを特徴とするアミンスチルベン誘導体。
(一般式(1)中、Aは、置換または非置換の窒素原子を含む有機基であり、複数のR1〜R6は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数7〜31の置換または非置換のアラルキル基、炭素数3〜10の置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアミノ基であり、複数のAr1およびAr2は、それぞれ独立した炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基である。) - 前記Aが、下記一般式(2)で表わされる置換または非置換のヒドラゾン基であることを特徴とする請求項1に記載のアミンスチルベン誘導体。
(一般式(2)中、XおよびYは、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数7〜31の置換または非置換のアラルキル基、炭素数3〜10の置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアミノ基であり、炭素数6〜30の置換または非置換の炭素環構造、あるいは炭素数6〜30の置換または非置換の複素環構造である。) - 前記R1〜R6が、それぞれ独立した水素原子または炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のアミンスチルベン誘導体。
- 反応式(1)に示されるアミンスチルベン誘導体の製造方法であって、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるヒドラジン誘導体とを、触媒の存在下に反応させて、一般式(1´)で表されるアミンスチルベン誘導体を得ることを特徴とするアミンスチルベン誘導体の製造方法。
(反応式(1)中、複数のR1〜R6は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数7〜31の置換または非置換のアラルキル基、炭素数3〜10の置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアミノ基であり、複数のXおよびYは、R1〜R6と同様の内容か、炭素数6〜30の置換または非置換の炭素環構造、あるいは炭素数6〜30の置換または非置換の複素環構造であり、複数のAr1およびAr2は、それぞれ独立した炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基である。) - 導電性基体上に感光体層を設けた電子写真感光体であって、前記感光体層が、下記一般式(1)で表されるアミンスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
(一般式(1)中、Aは、置換または非置換の窒素原子を含む有機基であり、複数のR1〜R6は、それぞれ独立した水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数6〜12の置換または非置換のアリール基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数7〜31の置換または非置換のアラルキル基、炭素数3〜10の置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアミノ基であり、複数のAr1およびAr2は、それぞれ独立した炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基である。) - 前記感光体層が、電荷発生剤および電子輸送剤をさらに含有した単層型であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
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