JP4601349B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
このような有機感光体材料のうち、高い電荷移動度を有する電荷輸送剤として、下記一般式(76)で表されるスチルベン誘導体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、特開文献2に開示されたスチルベン誘導体は、分子末端にあるトリフェニルアミン構造のベンゼン環に一つも置換基を有していないため、結着樹脂との相溶性が乏しいという問題が見られた。したがって、感光層中に均一に分散されにくいばかりか、長期間使用した場合に、結晶化しやすいという問題が見られた。
すなわち、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体は、中心構造に特定の芳香族環構造およびオレフィン基を有し、分子末端のフェニルアミノ基にオレフィン基を介した所定のアリール基、および所定の置換基を有することにより、立体障害を生じるため結着樹脂との相溶性に優れており、長時間にわたって、電荷移動度が大きいとともに、結晶化を効果的に防ぐことができる。
したがって、このようなスチルベン誘導体を、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた感度特性および耐久性を長時間にわたって有する単層型の電子写真感光体を提供することができる。
また感光層が、電荷発生剤および電子輸送剤を含有した単層型であることにより、構成や製造が容易であるにもかかわらず、所定感度を有する単層型の電子写真感光体を得ることができる。
したがって、このようなスチルベン誘導体を、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた感度特性を有した単層型の電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
したがって、このようなスチルベン誘導体を、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、長時間にわたってより優れた感度特性および耐久性を有する単層型の電子写真感光体を提供することができる。また、このような置換基であれば、比較的導入が容易であって所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
すなわち、このようなスチルベン誘導体を、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた感度特性を有した単層型の電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
すなわち、このようなスチルベン誘導体を、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、感光層中に均一に分散されるため、優れた感度特性および耐久性を有する単層型の電子写真感光体を提供することができる。また、このような置換基であれば、比較的導入が容易であって所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
第1の実施形態は、本発明の単層型電子写真感光体における正孔輸送剤である下記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体である。
この理由は、一般式(1)中のR1〜R7のうち少なくともひとつが、所定のアルキル基であることにより、立体障害により正孔輸送剤の平面性が低下し、より効果的に結晶化を防ぐためである。また、結着樹脂との相溶性がさらに優れ、感光層中で均一に分散されるため、長時間にわたって感度特性に優れるという効果を提供することができるためである。
第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した一般式(1)で表されるスチルベン誘導体の製造方法であって、下記反応式(1)に示すように、下記一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体を、触媒の存在下に反応させることを特徴とする本発明の単層型電子写真感光体における正孔輸送剤であるスチルベン誘導体の製造方法である。
なお、反応式(1)中のA、R1〜R7、Ar1、Ar2、a、bおよびcは、特に断りがない限り、既に説明した内容である。
まず、反応式(1)を実施するうえで、原料となる一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体の合成方法について詳しく説明する。
一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体は、下記反応式(2)に示すように、第1工程および第3工程としての二段階のフィルスマイヤー(Vilsmeier)法と、第2工程としてのウィッティヒ(Wittig)反応とを用いて、合成することが好ましい。
なお、反応式(2)中のA、R1〜R7、Ar1、Ar2、aおよびbは、特に断りがない限り、反応式(1)中のA、R1〜R7、Ar1、Ar2、aおよびbの内容と同様である。
まず、一般式(5)で表されるアニリン誘導体を原料として、それに一般式(22)および(23)で表される2種類のヨードベンゼン誘導体と、を反応させて、一般式(24)で表されるトリフェニルアミン誘導体を得た後、第一段階のフィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して、一般式(25)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を合成する。
なお、一般式(24)で表されるトリフェニルアミン誘導体の合成する際、一般式(5)で表されるアニリン誘導体を構成するアミノ基の一つの水素を予めアセチル基で置換することが好ましい。すなわち、アセチル基でアニリン誘導体の一部を保護した後、一種類のヨードベンゼン誘導体と反応させる。次いで、得られたアセチル化ジフェニールアミン誘導体のアセチル基をはずすと同時に水素を付与し、さらに、もう一種類のヨードベンゼン誘導体と反応させることが好ましい。
この理由は、かかるアニリン誘導体と、2種類のヨードベンゼン誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、目的物であるトリフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるアニリン誘導体と、2種類のヨードベンゼン誘導体との添加割合が、1:20を超えると、未反応のヨードベンゼン誘導体が多く残留するため、目的物であるトリフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
なお、一般式(22)および(23)で表されるヨードベンゼン誘導体の添加割合をモル比で約1:1の値にすることが好ましい。
また、一般式(5)で表されるアニリン誘導体と、一般式(22)および(23)で表される2種類のヨードベンゼンとを反応させるにあたり、反応温度を、通常160〜260℃の範囲内の値とするとともに、反応時間を2〜30時間の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
(i)オキシ塩化リン、ホスゲン、塩化オキサリル、塩化チオニル、トリフェニルホスフィン−臭素、ヘキサクロロトリホスファザトリエン等のハロゲン化剤
(ii)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアニリド(MFA)、N−ホルミルモルホリン、N,N−ジイソプロピルホルムアミド
特に、本発明では、フィルスマイヤー試薬として、オキシ塩化リンと、溶媒としても使用できるDMFとの組み合わせが好適に用いられる。
さらに、触媒量の塩化亜鉛等を添加することにより、フィルスマイヤー法を促進させることができる。
また、フィルスマイヤー試薬の使用量に関して、一般式(24)で表されるトリフェニルアミン誘導体1モルに対して、1〜5倍モル量の範囲内の値とすることが好ましく、1〜3倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
さらに、フィルスマイヤー法における、トリフェニルアミン誘導体のホルミル化の反応条件に関して、通常130℃以下の温度で行い、反応時間を5〜240分間の範囲内の値とすることが好ましい。
なお、第二段階のフィルスマイヤー法の実施にあたっても、第一段階のフィルスマイヤー法の条件に準じて実施することができる。
次いで、ウィッティヒ(Wittig)反応により、一般式(27)で表されるトリフェニルアミン誘導体を合成する。すなわち、一般式(25)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、式(26)で表されるリンイリド誘導体と、触媒としてのn−ブチルリチウム等の存在化に反応させるものである。
この理由は、かかるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、リンイリド誘導体との添加割合が、1:1未満の値になると、一般式(27)で表されるトリフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、リンイリド誘導体との添加割合が、1:3を超えると、未反応のリンイリド誘導体が多く残留するため、一般式(27)で表されるトリフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(25)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、式(26)で表されるリンイリド誘導体との添加割合を、モル比で1:1.2〜1:2の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
なお、ウィッティヒ法で使用する試薬としては、例えば、n−ブチルリチウム、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド;水素化ナトリウムや水素化カリウム、ナトリウ5水素化カリウム等の金属水素化物等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
次いで、一般式(27)で表されるトリフェニルアミン誘導体を、第二段階のフィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を得る。
なお、第3工程における第二段階のフィルスマイヤー法の反応条件等については、第1工程における第一段階のフィルスマイヤー法に準じて行うことが好ましい。
次いで、反応式(1)を実施するうえで、原料となる一般式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体の合成方法について詳しく説明する。
一般式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体は、下記反応式(3)に示すように、合成することができる。なお、反応式(3)中のAは、一般式(1)中のAと同様の内容であり、Xはハロゲン原子であり、例えば、塩素原子、臭素原子である。
ここで、合成反応を生じさせるに際して、ハロゲン化メチル誘導体1モルに対して、亜リン酸トリエチルの使用割合を、少なくとも2モルとすることが好ましく、2〜10モルの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、かかる反応温度を、通常80〜150℃の範囲内の値とし、反応時間を2〜10時間の範囲内の値とすることが好ましい。
また、ジリン酸エステル誘導体を合成する際に、所定量の第三級アミンを添加することも好ましい。この理由は、第三級アミンによって、反応系からハロゲン化アルキルが除去されるため、ジリン酸エステル誘導体の合成反応を促進できるためである。好適な第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
次いで、反応式(1)を実施する際の反応条件について詳細に説明する。
すなわち、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体は、上述した反応式(1)に従って、後述する反応条件に基づいて合成することができる。
一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応は、通常−10〜30℃で行うことが好ましく、その反応時間を1〜12時間の範囲内の値とすることが好ましい。
一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応に使用する好適な溶媒としては、当該反応に影響を及ぼさないものであればよいが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
また、かかる反応に使用する触媒としては、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウムや水素化カリウム等の金属水素化物、あるいは、n−ブチルリチウム等の金属塩が好適なものとして挙げられる。
ここで、かかる触媒の添加量を、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体1モルに対して、1.0〜1.5モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる触媒の添加量が1.0モル未満の値となると、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる触媒の添加量が1.5モルを超えると、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、一般式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応を制御することが著しく困難になる場合があるためである。
一般式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、の間の反応を実施するにあたり、添加割合を、モル比で1:2〜1:3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、ジリン酸エステル誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体と、ジリン酸エステル誘導体とが1:1で対応して反応しやすくなるためである。また、かかる添加割合が、1:3を超えると、未反応のホルミル化トリフェニルアミン誘導体が精製を困難にする場合があるためである。
したがって、一般式(4)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(3)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体との添加割合を、モル比で1:2.2〜1:2.5の範囲内の値とすることがより好ましい。
第3の実施形態は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、感光体層(表面層が電荷注入層である場合を除く)が、結着樹脂、電荷発生剤および電子輸送剤を含有した単層型であるとともに、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
本発明の電子写真感光体は、特に正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の被膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の観点から、単層型に適用することを特徴とする。
(1) 基本的構成
図6(a)に示すように、単層型感光体10は、導電性基体12上に単一の感光層14を設けたものである。
この感光層は、例えば、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)と、電荷発生剤と、結着樹脂と、さらに必要に応じて電子輸送剤を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成することができる。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単であって、生産性に優れているという特徴がある。
また、得られた単層型感光体は、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含んでいることから、残留電位が低下しており、所定感度を有しているという特徴がある。
さらに、単層型感光体の感光層に、電子輸送剤を含有させる場合には、電荷発生剤と正孔輸送剤との電子の授受が効率よく行われるようになり、感度等がより安定する傾向が見られる。
本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
本発明の電子写真感光体においては、正孔輸送剤である本発明のスチルベン誘導体とともに、従来公知の他の正孔輸送剤を感光層に含有させることも好ましい。
このような正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化合物、例えば下記式(29)〜(41)で表される化合物 (HTM−1〜HTM−13)があげられる。
本発明に用いられる電子輸送剤としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、例えば下記一般式(43)〜(59)で表される化合物 (ETM−1〜ETM−17)等があげられる。
各成分を分散させるための結着樹脂は、従来より感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
特に、ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性に優れているばかりか、機械的特性や正孔輸送剤との相溶性にも優れていることから好ましい結着樹脂である。
また、感光層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
本発明の電子写真感光体が単層型の感光体である場合、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。本発明のスチルベン誘導体(正孔輸送剤)は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤を含有させる場合、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部とするのが適当である。
また、単層型感光体における感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
そして、このような感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
本発明の電子写真感光体の製造方法は特に制限されるものではないが、まず、塗布液を作成することが好ましい。そして、得られた塗布液を、公知の製造方法に準じて、例えば、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、所定膜厚の感光層を有する電子写真感光体を得ることができる。
なお、かかる塗布液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
(1)スチルベン誘導体の合成
(1)−1 トリフェニルアミン誘導体の合成
下記式(61)で表されるトリフェニルアミン誘導体の合成を、下記の反応式(4)に沿って実施した。
すなわち、容量500mlの2つ口フラスコ内に、無水炭酸カリウム152.0g(1.10mol)、および粉末銅9.5g(0.15mol)を加え、2時間加熱して、均一になるまで攪拌した。次いで、室温まで冷却した後、下記式(60)で表されるアニリン化合物67.6g(0.5mol)と、ヨードベンゼン305.9g(1.5mol)とを添加した後、220℃に再加熱し、2.5時間反応させた。その後、室温まで冷却した後、100mlのトルエンを添加し、ろ過処理をした。得られた残渣をトルエンで溶解し、活性白土を用いて乾燥させた。その後、残渣をトルエンで溶解し、さらにメタノールを添加して晶析させた。その後、得られた結晶をろ別して、乾燥した。その後、得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/へキサン溶媒)を用いて精製し、式(61)で表されるトリフェニルアミン誘導体84.1gを得た(収率58.5%)。
次いで、式(62)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体の合成を、下記の反応式(5)に沿って実施した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(61)で表されるトリフェニルアミン誘導体60g(0.21mol)と、ジメチルホルムアミド(DMF)450mlと、オキシ塩化リン酸41.8g(0.27mol)と、を収容し、85℃以上で、3時間撹拌した。反応後、反応液をイオン交換水600ml中に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体はイオン交換水にて撹拌洗浄した。その後、固体をトルエンに溶解させ、有機層をイオン交換水にて5回洗浄を行った。その後、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムおよび活性白土を加え、乾燥および吸着処理を行った。その後、トルエンを減圧留去し、残渣を200mlのトルエンに溶解させ、メタノールより晶析させ、式(62)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体50.2gを得た(収率75.8%)。
次いで、式(63)で表されるリンイリドの合成を、下記の反応式(6)に沿って実施した。
すなわち、α−ブロモジフェニルメタン150g(0.61mol)と、トリエタノールリン酸121g(0.72mol)とを添加して、210℃で加熱し、1時間撹拌した。 その後、室温まで冷却した後、真空蒸留にて精製を実施した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル溶媒)を用いて精製し、式(63)で表されるリンイリド168.4gを得た(収率90.7%)。
次いで、下記式(64)で表されるトリフェニルアミン誘導体の合成を、下記の反応式(7)に沿って実施した。
すなわち、1000mlの四つ口フラスコ内に、式(63)で表されるリンイリド25g(0.082mol)を加えた後、アルゴンガス置換をおこない、さらにTHF100mlを収容して、5℃以下で反応させた。その後、n−BuLi(ヘキサン溶液中で1.6M)51.2mlを滴下して、7℃以下で30分間撹拌した。さらに、式(62)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体18g(0.057mol)をTHF45mlに溶解したものを滴下し、6℃以下で30分間撹拌した。この反応液をイオン交換水500mlに加え、トルエン抽出を行った。さらにその有機層をイオン交換水を用いて、5回洗浄をしたあと、有機層を無水硫酸マグネシウムおよび活性白土を用いて、乾燥および吸着処理をおこなった。その後、有機溶媒を留去して、常温で2日間放置し、析出した固体を石油エーテルを用いてろ別し、得たれた固体を減圧乾燥した。得られた固体は、カラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/へキサン溶媒)にて精製をして、式(64)で表されるトリフェニルアミン誘導体22.9gを得た(収率86.3%)。
次いで、下記式(65)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体を、下記の反応式(8)に沿って実施した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(64)で表されるトリフェニルアミン誘導体20g(0.043mol)と、ジメチルホルムアミド(DMF)300mlと、オキシ塩化リン酸8.6g(0.06mol)と、を収容して、95℃で、3時間攪拌させた。その後、反応液をイオン交換水500mlに注ぎ、析出した結晶をろ別した。得られた固体をイオン交換水にて2回撹拌洗浄した。さらに、得られた結晶をトルエンに溶解させて、有機層をイオン交換水を用いて5回洗浄した。さらに、有機層を無水硫酸マグネシウム、および活性白土を加え、乾燥および吸着処理をした後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム溶媒)にて精製し、式(65)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体16.6gを得た(収率78.2%)。
式(66)で表されるジリン酸エステル誘導体の合成を、下記の反応式(9)に沿って合成した。すなわち、500mlのフラスコ内に、1,3−ビス(クロロメチル)ベンゼン80g(0.457mol)と、亜リン酸トリエチル228g(1.37mol)と、を収容して、8時間以上還流した。その後、冷却して、析出結晶をろ別した。さらに、結晶をn−へキサンを用いて洗浄をおこない、式(66)で表されるジリン酸エステル誘導体(146)gを得た(収率84.7%)。
次いで、式(7)で表されるスチルベン誘導体の合成を、下記の反応式(10)に沿って実施した。
すなわち、500mlの2つ口フラスコ内に、(1)−6で得られた式(66)で表されるジリン酸エステル4.47g(0.0118mol)を添加し、アルゴン置換した後、THF50mlと、NaOMe5.48g(0.0284mol)/THF30mlと、を収容し、30分攪拌した。次いで、この容器内に、上述した式(65)で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体14g(0.0284mol)を溶解させた後、室温で約12時間撹拌した。次いで、反応液をイオン交換水500mlに注ぎ、希塩酸を用いて、水層を中性から弱酸性にした。さらに、トルエン抽出をおこなって、有機層をイオン交換水にて5回洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥して、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン)で精製して、式(6)で表されるスチルベン誘導体7.81gを得た(収率62.6 %)。
(2)−1 初期表面電位、半減露光量および残留電位の測定
得られたスチルベン誘導体を正孔輸送剤として、単層型の電子写真感光体を作成して、初期表面電位、半減露光量および残留電位を測定した。すなわち、正孔輸送剤として、得られたスチルベン誘導体(HTM−A)を60重量部と、電荷発生剤として、下記式(67)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を5重量部と、結着樹脂として、下記式(68)で表されるポリカーボネート樹脂(Resin−A)を100重量部と、を溶媒としてのテトラヒドロフラン800重量部に対して添加した。次いで、ボールミルを用いて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を得た。
次いで、得られた電子写真感光体における初期電気特性、すなわち、初期帯電電位(V0)半減露光量(E1/2)および残留電位(VR)を測定した。まず、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位が710Vになるように帯電させた。なお、半減露光量(E1/2)については、ハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光強度:1.5μJ/cm2)を露光して、表面電位が1/2になるまでに要した時間を測定した。さらに、残留電位(VR)については、露光開始から330msec経過した時点での表面電位を測定し、それを残留電位とした。
それぞれ得られた結果を、表1に示す。
また、感光層を塗布後、熱風乾燥前に1時間自然乾燥した電子写真感光体の外観を目視にて観察し、下記基準に準じて結晶性評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
◎:結晶化が全く見られない。
○:結晶化はほとんど見られない。
△:わずかな結晶化が見られる。
×:顕著な結晶化が見られる。
また、(2)−1で作成した電子写真感光体を静電式プリンタ〔京セラ(株)製FS-1000+改造機〕に搭載して、表面電位を約450Vに設定した。その後、5000枚の連続印刷を行った後、表面電位を再度測定し、印刷後表面電位とした。得られた印刷後表面電位と、初期測定値450Vとの差を帯電変化量とした。得られた結果を表1に示す。
参考例1の塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(69)で表されるキノン誘導体(ETM−A)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
参考例1における塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(70)で表される別のキノン誘導体(ETM−B)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
参考例1における塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(71)で表される別のキノン誘導体(ETM−C)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
参考例1、実施例2〜4におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(8)で表されるスチルベン誘導体(HTM−B)を用いたほかは、参考例1、実施例2〜4と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
参考例1、実施例2〜4におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(9)で表されるスチルベン誘導体(HTM−C)を用いたほかは、参考例1、実施例2〜4と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(10)で表されるスチルベン誘導体(HTM−D)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(11)で表されるスチルベン誘導体(HTM−E)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(12)で表されるスチルベン誘導体(HTM−F)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(13)で表されるスチルベン誘導体(HTM−G)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(14)で表されるスチルベン誘導体(HTM−H)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(15)表されるスチルベン誘導体(HTM−I)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(17)で表されるスチルベン誘導体(HTM−K)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(18)表されるスチルベン誘導体(HTM−L)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、下記式(72)表されるスチルベン誘導体(HTM−P)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
その結果、実施例2と同様に結着樹脂との相溶性に優れており、残留電子が低く、長時間に使用時においても帯電変化量か少ないことが確認された。
実施例1〜4におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送材料として、下記式(73)で表されるスチルベン誘導体(HTM−Q)を用いたほかは、参考例1、実施例2〜4と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
実施例1〜4におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送材料として、下記式(74)で表されるスチルベン誘導体(HTM−R)を用いたほかは、参考例1、実施例2〜4と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(75)で表されるスチルベン誘導体(HTM−S)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例2におけるスチルベン誘導体(HTM−A)のかわりに、正孔輸送剤として、式(76)で表されるスチルベン誘導体(HTM−T)を用いたほかは、参考例1と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
また、本発明におけるスチルベン誘導体の製造方法は、所定のホルミル化トリフェニルアミン誘導体と所定のジリン酸エステル誘導体とを、反応させることにより、結着樹脂との相溶性に優れ、かつ高い電荷輸送剤能を有している一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を高い収率で得ることができる。
さらに、本発明の単層型の電子写真感光体は、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を正孔輸送剤として用いることから、所定の感度特性や耐久性を有している。したがって、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置の高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
10´:単層型感光体
10´´:単層型感光体
12:導電性基体
14:感光層
16:バリア層
18:保護層
Claims (5)
- 導電性基体上に単層型である感光層(表面層が電荷注入層である場合を除く)を設けた電子写真感光体であって、
前記感光層が、結着樹脂と、電荷発生剤と、電子輸送剤と、下記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体と、を含有することを特徴とする電子写真感光体。
(一般式(1)中の、Aは、下記式(2)で表される有機基であり、複数のR1〜R7は、それぞれ独立した置換基であり、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリール基、アミノ基、あるいは、複数のR1〜R7のうち隣接するいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して炭素環構造を形成しており、複数のAr1およびAr2は、それぞれ独立しており、炭素数6〜30のアリール基であり、繰り返し数aおよびbはそれぞれ0〜4の整数であり、cは1〜3の整数である。ただし、R1〜R7のうち少なくとも一つは水素原子以外の前記置換基である。)
- 前記一般式(1)中の複数のAr1およびAr2が、炭素数6〜14のアリール基であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記一般式(1)中の複数のR1〜R7のうち少なくとも一つが、炭素数1〜10のアルキル基であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体。
- 前記一般式(1)中の複数のR1〜R5のうち隣接するいずれか二つが、それぞれ結合して炭素数3〜6の炭素環構造を形成することを特徴とする請求項1〜3に記載の電子写真感光体。
- 前記一般式(1)中の複数の繰り返し数cが、それぞれ1であることを特徴とする請求項1〜4に記載の電子写真感光体。
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