JP4303650B2 - スチルベン誘導体、その製造方法、および電子写真感光体 - Google Patents
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Description
このような有機感光体材料のうち、高い電荷移動度を有する電荷輸送剤として、下記一般式(38)で表されるスチルベン誘導体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、本発明の目的は、電子写真感光体等の電荷輸送剤として好適に用いることができる感度特性および耐久性に優れたスチルベン誘導体、その製造方法、および、そのようなスチルベン誘導体を有する電子写真感光体を提供することにある。
すなわち、分子内に所定の位置に所定の嵩高い置換基を有することにより、立体障害を生じるため、結着樹脂との相溶性が優れるとともに、電荷発生剤からの電荷の注入効率が優れる。
したがって、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、所定感度を有するとともに、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
より具体的には、このような所定の置換基を有することにより、これら置換基の回転の自由度が高いため、結着との相溶性が優れ、樹脂中へ均一に分散される。また、フェノキシ基およびナフトキシ基における酸素原子が、それぞれ電子供与体として働くため、電気特性が向上する。
すなわち、このような所定の置換基を有するスチルベン誘導体であれば、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた耐久性および感度特性を有した電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
また、本発明のスチルベン誘導体を構成するにあたり、一般式(1)中のAがフェニレン基であることにより、分子内共役が広がり、電荷移動度を高めることができる。
すなわち、このような構造を有するスチルベン誘導体を、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた感度特性を有した電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、さらに高い収率で生産することができる。
すなわち、このような所定の置換基を有するスチルベン誘導体であれば、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた感度特性を有した電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
したがって、このように特定ホルミル化ジフェニルアミン誘導体を効率よく合成することにより、最終の目的物である一般式(3)で表されるスチルベン誘導体を効率よく製造することができる。
このように実施することにより、所定の保護基を有するアミン化合物を効率よく合成することができるためである。
このように構成することにより、高い電荷移動度を有し、残留電位が低い一方、所定感度を有する電子写真感光体を得ることができる。
このように構成することにより、さらに高い電荷移動度を有し、残留電位が低い一方、所定感度を有する電子写真感光体を得ることができる。
このように構成することにより、構成や製造が容易であるにもかかわらず、所定感度を有する単層型の電子写真感光体を得ることができる。
第1の実施形態は、下記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体である。
この理由は、このような特定構造の芳香族環を含む二価の有機基であることより、結着樹脂との相溶性に優れており、さらには電荷発生剤から電荷輸送剤への注入効率が高いためである。したがって、優れた耐久性や感度特性を得ることができる。
この理由は、このような所定の置換基を有することにより、立体障害により正孔輸送剤の平面性が低下し、結着樹脂との相溶性がさらに優れ、感光層中で均一に分散されるため、結晶化をより効果的に防ぐことができ、感度特性に優れるという効果を提供することができるためである。
第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した一般式(1)で表されるスチルベン誘導体の製造方法であって、下記反応式(1)で示すように、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体を、触媒の存在下に反応させることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法である。
まず、反応式(1)を実施するうえで、原料となる一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成方法について詳しく説明する。
一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体は、下記反応式(2)に示すように、フィルスマイヤー法を含んだ第1工程および第2工程で合成することが好ましい。なお、反応式(2)中のR1〜R6およびa〜cは既に説明した内容である。
まず、一般式(8)で表されるジフェニルアミン誘導体を合成する。すなわち、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、一般式(7)で表されるジフェニルアセトアルデヒドとを、触媒としてトルエンスルホン酸等の存在化に反応させるものである。
この理由は、かかるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合が、1:1未満の値になると、一般式(8)で表されるジフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合が、1:3を超えると、未反応のジフェニルアセトアルデヒドが多く残留するため、一般式(8)で表されるジフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、式(7)で表されるジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合を、モル比で1:1.2〜1:2の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
なお、この反応で使用する触媒としては、例えば、トルエンスルホン酸、塩化亜鉛、硫酸等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
次いで、一般式(8)で表されるジリフェニルアミン誘導体を、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体を得る。
(i)オキシ塩化リン、ホスゲン、塩化オキサリル、塩化チオニル、トリフェニルホスフィン−臭素、ヘキサクロロトリホスファザトリエン等のハロゲン化剤
(ii)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアニリド(MFA)、N−ホルミルモルホリン、N,N−ジイソプロピルホルムアミド
特に、本発明では、フィルスマイヤー試薬として、オキシ塩化リンと、溶媒としても使用できるDMFとの組み合わせが好適に用いられる。
さらに、触媒量の塩化亜鉛等を添加することにより、フィルスマイヤー法を促進させることができる。
また、フィルスマイヤー試薬の使用量に関して、一般式(8)で表されるジフェニルアミン誘導体1モルに対して、1〜5倍モル量の範囲内の値とすることが好ましく、1〜3倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
次いで、反応式(2)を実施するうえで、原料となる一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体の合成方法について詳しく説明する。
一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体は、下記反応式(4)に示すように合成することができる。
一般式(19)で表されるアセチル化アニリン誘導体を原料として、ヨードベンゼンと反応させて、一般式(21)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体を得る。その後、一般式(21)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体を脱アセチル化反応させて、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体を合成することがこのましい。
なお、反応式(4)中のR1〜R4、およびaは、反応式(1)中のR1〜R4、およびaの内容と同様である。
この理由は、かかるアセチル化アニリン誘導体と、ヨードベンゼン誘導体との添加割合が、1:1未満の値になると、目的物であるジフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるアセチル化アニリン誘導体と、ヨードベンゼン誘導体との添加割合が、1:3を超えると、未反応のヨードベンゼン誘導体が多く残留するため、目的物であるジフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
なお、下記一般式(22)中のR1〜R3は、一般式(1)中のR1〜R3と同様の内容である。
この理由は、アミン化合物における保護基以外の窒素原子に結合した水素を置換して、選択的に所望のフェニル基を導入することができるためである。
ついで、反応式(1)を実施するうえで、原料となる一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体の合成方法について詳しく説明する。
一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体は、下記反応式(5)に示すように、合成することができる。
ここで、合成反応を生じさせるに際して、ハロゲン化メチル誘導体1モルに対して、亜リン酸トリエチルの使用割合を、少なくとも2モルとすることが好ましく、2〜10モルの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、かかる反応温度を、通常80〜150℃の範囲内の値とし、反応時間を2〜10時間の範囲内の値とすることが好ましい。
また、ジリン酸エステル誘導体を合成する際に、所定量の第三級アミンを添加することも好ましい。この理由は、第三級アミンによって、反応系からハロゲン化アルキルが除去されるため、ジリン酸エステル誘導体の合成反応を促進できるためである。好適な第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
次いで、反応式(1)を実施する際の反応条件について詳細に説明する。
すなわち、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体は、上述した反応式(1)に従って、後述する反応条件に基づいて合成することができる。
一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応は、通常−10〜30℃で行うことが好ましく、その反応時間を1〜12時間の範囲内の値とすることが好ましい。
一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応に使用する好適な溶媒としては、当該反応に影響を及ぼさないものであればよいが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
また、かかる反応に使用する触媒としては、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウムや水素化カリウム等の金属水素化物、あるいは、n−ブチルリチウム等の金属塩が好適なものとして挙げられる。
ここで、かかる触媒の添加量を、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体1モルに対して、1.0〜1.5モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる触媒の添加量が1.0モル未満の値となると、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる触媒の添加量が1.5モルを超えると、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応を制御することが著しく困難になる場合があるためである。
一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、の間の反応を実施するにあたり、添加割合を、モル比で1:2〜1:3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、ジリン酸エステル誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が生成量が低下する場合があるためである。また、かかる添加割合が、1:3を超えると、未反応のホルミル化ジフェニルアミン誘導体が精製を困難にする場合があるためである。
したがって、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体との添加割合を、モル比で1:2.1〜1:2.5の範囲内の値とすることがより好ましい。
第3の実施形態は、第1の実施形態で説明した一般式(3)で表されるスチルベン誘導体の製造方法であって、下記反応式(3)に示すように、下記一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体を、触媒の存在下に反応させることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法である。
なお、反応式(3)で示されるスチルベン誘導体の製造方法は、第2の実施形態で説明した、反応式(1)で示されるスチルベン誘導体の製造方法の実施態様の一つである。(反応式(3)、一般式(3)、および一般式(9)中のR7は、既に上述した内容である。)
まず、反応式(3)を実施するうえで、原料となる一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成方法について詳しく説明する。
一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体は、下記反応式(6)に示すように、下記一般式(11)で表される保護基を有するアミン化合物と、ヨードベンゼンと、を反応させて、下記一般式(12)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物を得た後、保護基をはずし、次いで、ジフェニルアセトアルデヒドと反応させ、その後、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体が得られることを示している。
なお、反応式(6)、一般式(11)および一般式(12)中のR7は、既に上述した内容である。
なお、一般式(13)および一般式(14)中のR7は、既に上述した内容である。
この理由は、アミン化合物における保護基以外の窒素原子に結合した水素を置換して、選択的に所望のフェニル基を導入することができるためである。
この理由は、かかるアミン化合物と、ヨードベンゼンとの添加割合が、1:1未満の値になると、目的物であるジフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるアミン化合物と、ヨードベンゼンとの添加割合が、1:3を超えると、未反応のヨードベンゼンが多く残留するため、目的物であるジフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
したがって、アニリン誘導体と、ヨードベンゼンの添加割合を、モル比で1:1.8〜1:2.2の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
還元反応に使用される試薬としては、第2の実施形態の還元反応で用いたものと同様のものを使用する。
また、還元反応に使用される試薬の使用量に関して、一般式(12)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体1モルに対して、1〜5倍モル量の範囲内の値とすることが好ましく、1〜3倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
さらに、還元反応における、アセチル化ジフェニルアミン誘導体の反応条件に関して、通常150℃以下の温度で行い、反応時間を5〜120分間の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合が、1:1未満の値になると、一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合が、1:3を超えると、未反応のジフェニルアセトアルデヒドが多く残留するため、一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(13)で表されるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合を、モル比で1:1.2〜1:2の範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
なお、この反応で使用する触媒としては、例えば、トルエンスルホン酸、塩化亜鉛、硫酸等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
フィルスマイヤー法に使用するフィルスマイヤー試薬(Vilsmeier試薬)としては、第2の実施形態で用いたフィルスマイヤー法と同様のものを使用する。
なお、フィルスマイヤー法における、ジフェニルアミン誘導体のホルミル化の反応条件に関して、通常130℃以下の温度で行い、反応時間を0.5〜5時間の範囲内の値とすることが好ましい。
式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体は、下記反応式(7)に示すように、合成することができる。
ここで、合成反応を生じさせるに際して、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン1モルに対して、亜リン酸トリエチルの使用割合を、少なくとも3倍モル当量とすることが好ましく、3〜3.6倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、かかる反応温度を、通常80〜150℃の範囲内の値とし、反応時間を1〜10時間の範囲内の値とすることが好ましい。
また、ジリン酸エステル誘導体を作成する際に、所定量の第三級アミンを添加することも好ましい。この理由は、第三級アミンによって、反応系からハロゲン化アルキルが除去されるため、ジリン酸エステル誘導体の合成反応を促進できるためである。好適な第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
(1) 溶媒
一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応に使用する好適な溶媒としては、当該反応に影響を及ぼさないものであればよいが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
また、かかる反応に使用する触媒としては、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウムや水素化カリウム等の金属水素化物が好適なものとして挙げられる。
ここで、かかる触媒の添加量を、ホルミル化ジフェニルアミン誘導体1モルに対して、1.1〜1.2モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる触媒の添加量が1.1モル未満の値となると、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる触媒の添加量が1.2モルを超えると、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応を制御することが著しく困難になる場合があるためである。
式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、の間の反応を実施するにあたり、添加割合を、モル比で1:2〜1:2.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、ジリン酸エステル誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、一般式(3)で表されるスチルベン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。また、かかる添加割合が、1:2.5を超えると、未反応のホルミル化ジフェニルアミン誘導体が精製を困難にする場合があるためである。
したがって、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体との添加割合を、モル比で1:2〜1:2.2の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応は、通常−10〜25℃で行うことが好ましく、その反応時間を3〜12時間の範囲内の値とすることが好ましい。
第4の実施形態は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、感光層に、一般式(1)あるいは(3)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
ただし、特に正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の被膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の観点から、単層型に適用することが好ましい。
(1) 基本的構成
単層型感光体は、導電性基体上に単一の感光層を設けたものである。この感光層は、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)、電荷発生剤、結着樹脂、さらに必要に応じて電子輸送剤を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成される。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単で生産性に優れている。
また、得られた単層型電子写真感光体は、残留電位が低下しているとともに、所定感度を有している。また、本発明の単層型電子写真感光体の感光層に、さらに電子輸送剤を含有させる場合には、電荷発生剤と正孔輸送剤との電子の授受が効率よく行われるようになり、感度等がより安定する傾向にある。
本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
本発明の電子写真感光体においては、正孔輸送剤である本発明のスチルベン誘導体とともに、従来公知の他の正孔輸送剤を感光層に含有させることも好ましい。
このような正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化合物、例えば下記の一般式(HT−1)〜(HT−13)で表される化合物等があげられる。
本発明に用いられる電子輸送剤としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、例えば下記の一般式(ET−1〜ET−17)で表される化合物等があげられる。
各成分を分散させるための結着樹脂は、従来より感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
特に、ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性に優れているばかりか、機械的特性や正孔輸送剤との相溶性にも優れていることから好ましい結着樹脂である。
また、感光層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
本発明の電子写真感光体が単層型の感光体である場合、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。本発明のスチルベン誘導体(1)(正孔輸送剤)は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤を含有させる場合、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部とするのが適当である。
また、単層型感光体における感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
そして、このような感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
積層型感光体は、まず導電性基体上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、次いでこの電荷発生層上に、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)の少なくとも1種と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することによって作製される。
また、上記とは逆に、導電性基体上に電荷輸送層を形成し、その上に電荷発生層を形成してもよい。但し、電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
なお、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、結着剤等については、単層型感光体と同様の内容とすることができる。
そして、本発明の積層型電子写真感光体は、感光体の残留電位が低下するとともに、所定感度を有しているという特徴がある。
なお、積層型感光体における感光層の厚さは、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
(1)スチルベン誘導体の合成
(1)−1 ジリン酸エステル誘導体の合成
式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体の合成を、上述の反応式(7)に沿って合成した。すなわち、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンに対して、亜リン酸トリエチルを、3.6倍モル量加え、8時間還流した。その後、溶媒を留去し、ヘキサンを用いて再結晶させ、ジリン酸エステル誘導体を得た(収率95%)。
下記式(26)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物の合成を、下記の反応式(8)に沿って実施した。
すなわち、容量500mlのフラスコ内に、下記式(24)で表される4−アミノジフェニルエーテル化合物25.0g(0.13mol)と、無水酢酸150mlとを収容し、それぞれを攪拌下、濃硫酸0.5gを滴下し、さらに1.5時間反応させることにより、下記式(25)で表される保護基を有するフェニルアミン化合物を得た。
次いで、容量500mlの二口フラスコ内に、無水炭酸カリウム21.9g(0.158mol)および粉末銅0.026g(0.0264mol)を加え、温度200℃、2時間の条件で加熱して、均一になるまで十分に攪拌した。
次いで、室温まで冷却した後、式(25)で表される保護基を有するフェニルアミン化合物30g(0.132mol)と、ヨードベンゼン67.3g(0.33mol)とを添加した後、220℃に再加熱し、2.5時間反応させた。その後、室温まで冷却した後、100mlのトルエンを添加し、ろ過処理を実施した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)を用いて精製し、式(26)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物を得た(収率81.8%)。
次いで、下記式(27)で表されるジフェニルアミン化合物を、下記の反応式(9)に沿って保護基を脱離して、製造した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(26)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物32.7g(0.108mol)と、t−BuOK14.5g(0.13mol)と、1−BuOH150gと、を収容し、それをオイル浴内に浸漬して140℃に加熱し、2時間還流させることにより、保護基の脱離を実施した。次いで、室温まで冷却した後、100mlの水を添加し、ろ過処理を実施した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)を用いて精製し、式(27)で表されるジフェニルアミン化合物を得た(収率81.8%)。
次いで、式(29)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成を、下記の反応式(10)に沿って実施した。
すなわち、300mlのフラスコ内に、式(27)で表されるジフェニルアミン化合物20g(0.077mol)と、ジフェニルアセトアルデヒド15.1g(0.077mol)と、トルエン150mlと、p−トルエンスルフォン酸モノハイドレート3.0g(0.015mol)と、を収容し、それをオイル浴内に浸漬して130℃に加熱し、2時間還流させることにより、ホルミル化を実施した。その後、ろ過処理を実施し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)を用いて精製し、下記式(28)で表されるジフェニルアミン誘導体を得た(収率83.5%)。
次いで、500mlのフラスコ内に、式(28)で表されるジフェニルアミン化合物27g(0.061mol)と、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlと、オキシ塩化リン酸14g(0.092mol)と、を収容し、95℃、1時間の条件で反応させた。反応後、イオン交換水600ミリリットルを添加し、ろ過処理を実施して、残渣を取り出した。得られた残渣をトルエンに溶解させ、有機層として抽出した。次いで、有機層を水洗し、乾燥させて溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム溶媒)で精製して、式(29)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体11.4gを得た。(収率40%)
次いで、式(16)で表されるスチルベン誘導体の合成を、下記の反応式(11)に沿って実施した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、(1)−1で得られた式(10)で表されるジリン酸エステル3.7g(9.78mmol)と、THF50mlと、28%NaOMe4.86g(0.025mol)/THF20mlと、を収容した後、均一になるまで約20分攪拌した。次いで、この容器内に、上述した(1)−2〜4で得られた式(29)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体10g(0.021mol)をTHF50mlに溶解させた後、ロート滴下し、室温で約12時間反応させた。次いで、約2%の希塩酸水溶液400mlと混合し、析出した結晶をろ過して水洗した。得られた結晶をさらに乾燥した後、シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン)で精製して、式(16)で表されるスチルベン誘導体10.6gを得た(収率68.2%)。
得られたスチルベン誘導体の赤外吸収スペクトルを図1に示し、プロトン−NMRチャート(全体図および部分拡大図を)をそれぞれ図2および図3に示す。さらに、得られたスチルベン誘導体の融点を、微量融点測定装置(YANAKO社製)を用いて測定したところ、135〜137℃であることを確認した。
(2)−1 初期表面電位、半減露光量および残留電位の測定
得られたスチルベン誘導体を正孔輸送剤として、単層型の電子写真感光体を作成して、初期表面電位、半減露光量および残留電位を測定した。すなわち、正孔輸送剤として、得られたスチルベン誘導体を100重量部と、電荷発生剤として、下記式(30)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を5重量部と、結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂100重量部と、を溶媒としてのテトラヒドロフラン800重量部に対して添加した。次いで、ボールミルを用いて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を得た。
次いで、得られた電子写真感光体における初期帯電電位(Vo)、半減露光量(E1/2)および残留電位(VR)を測定した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位が710Vになるように帯電させて電位を測定し、初期帯電電位(Vo)とした。また、半減露光量(E1/2)については、帯電後、ハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光強度:1.5μJ/cm2)を露光して、表面電位が1/2になるまでに要した時間を測定した。さらに、残留電位については、露光開始から330msec経過した時点での表面電位を測定し、それを残留電位(VR)とした。
それぞれ得られた結果を、表1に示す。結果から明らかなように、得られた電子写真感光体は、残留電位の値が低く、半減露光量も0.9秒以内であって、所定感度を有することを確認した。なお、表1中、電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニンをCGM−Aと表記する(以下、同様である。)。
実施例2においては、実施例1の塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(31)で表されるキノン誘導体(ET−A)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
なお、表1中、式(31)で表されるキノン誘導体をET−Aと表記する。
実施例3においては、実施例1における塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(32)で表される別のキノン誘導体(ET−B)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。なお、表1中、式(32)で表されるキノン誘導体をET−Bと表記する。
実施例4においては、実施例1における塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(33)で表される別のキノン誘導体(ET−C)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
なお、表1中、式(33)で表されるキノン誘導体をET−Cと表記する。
実施例5〜7においては、実施例2〜4における塗布液中に、正孔輸送剤として、式(16)で表されるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、式(17)で表されるスチルベン誘導体(HT−B)を用いたほかは、実施例2〜4と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
実施例8〜10においては、実施例2〜4における塗布液中に、正孔輸送剤として、式(16)で表されるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、式(18)で表されるスチルベン誘導体(HT−C)を用いたほかは、実施例2〜4と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
比較例1においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、下記式(34)で表されるスチルベン誘導体(HT−D)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
なお、表1中、式(34)で表されるスチルベン誘導体をHT−Dと表記する。
比較例2においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、下記式(35)で表されるスチルベン誘導体(HT−E)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成した。
ただし、単層型感光層の全体が結晶化してしまい、その後の評価を中止した。
比較例3においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(34)で表されるスチルベン誘導体(HT−D)を用いるとともに、電子輸送材料として、式(31)で表されるキノン誘導体(ET−A)を30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
比較例4においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(34)で表されるスチルベン誘導体(HT−D)を用いるとともに、電子輸送材料として、式(32)で表されるキノン誘導体(ET−B)を30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
比較例5においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(34)で表されるスチルベン誘導体(HT−D)を用いるとともに、電子輸送材料として、式(33)で表されるキノン誘導体(ET−C)を30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
比較例6においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(35)で表されるスチルベン誘導体(HT−E)を用いるとともに、電子輸送材料として、式(31)で表されるキノン誘導体(ET−A)を30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成した。
ただし、単層型感光層の全体が結晶化してしまい、その後の評価を中止した。
比較例7〜9においては、実施例2〜4におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送剤として、下記式(36)で表されるスチルベン誘導体(HT−F)を用いたほかは、実施例2〜4と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
比較例10〜12においては、実施例2〜4におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送剤として、下記式(37)で表されるスチルベン誘導体(HT−G)を用いたほかは、実施例2〜4と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
また、本発明のスチルベン誘導体の製造方法によれば、結着樹脂への相溶性、かつ高い電荷輸送剤能を有している一般式(1)または(3)で表されるスチルベン誘導体を高い収率で得ることができる。
さらに、本発明の電子写真感光体は、一般式(1)または(3)で表されるスチルベン誘導体を正孔輸送剤として用いることから、所定の感度特性や耐久性を有している。したがって、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置の高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
Claims (8)
- 一般式(1)で表されるスチルベン誘導体。
(一般式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。) - 前記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が、下記一般式(3)で表されるスチルベン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のスチルベン誘導体。
(一般式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。) - 反応式(1)に示されるスチルベン誘導体の製造方法であって、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体とを、触媒の存在下に反応させて、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を得ることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法。
(反応式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。) - 反応式(2)に示されるように、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体として、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、一般式(7)で表されるアセトアルデヒド誘導体とを反応させて、一般式(8)で表されるエナミン誘導体を得た後、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して得られたホルミル化ジフェニルアミン誘導体を使用することを特徴とする請求項3に記載のスチルベン誘導体の製造方法。
(反応式(2)中、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。) - 反応式(3)に示されるスチルベン誘導体の製造方法であって、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体とを、触媒の存在下に反応させて、一般式(3)で表されるスチルベン誘導体を得ることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法。
(反応式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。) - 導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、前記感光層が、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
(一般式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。) - 前記電子写真感光体で用いられた一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が、下記一般式(3)で表されるスチルベン誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。
(一般式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。) - 前記感光層が、電荷発生剤および電子輸送剤をさらに含有した単層型であることを特徴とする請求項6または7に記載の電子写真感光体。
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