JP4303650B2 - スチルベン誘導体、その製造方法、および電子写真感光体 - Google Patents

スチルベン誘導体、その製造方法、および電子写真感光体 Download PDF

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本発明は、分子内に嵩高い置換基を有するとともに、所定感度を有するスチルベン誘導体、その製造方法、およびスチルベン誘導体を含有した電子写真感光体に関する。
従来、画像形成装置等の電子写真感光体として、電荷輸送剤、電荷発生剤、および結着樹脂(バインダー樹脂)等の有機感光体材料からなる有機感光体が使用されている。かかる有機感光体は、従来の無機感光体に比べて、製造が容易であるとともに、感光体材料の選択肢が多様であることから、構造設計の自由度が高いという利点がある。
このような有機感光体材料のうち、高い電荷移動度を有する電荷輸送剤として、下記一般式(38)で表されるスチルベン誘導体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
(一般式(38)中、Ar1はメチレン基または置換されても良い炭素数6〜20のアリーレン基、Ar2は、置換されても良い炭素数6〜20のアリーレン基、R8は5員環の複素環基、置換されても良い低級アルキル基、アラルキル基、または炭素数6〜14のアリーレン基、R9およびR10は、水素原子、低級アルキル基、または置換されても良い炭素数6〜20のアリール基である。)
また、高い電荷移動度を有する電荷輸送剤として、下記一般式(39)で表されるスチルベン誘導体が知られている(例えば、特許文献2参照)。
(一般式(39)中、Ar3はメチレン基または炭素数6〜20のアリーレン基、Ar4は炭素数6〜20のアリーレン基を表し、これらは置換基を有していても良い。R12、R13はそれぞれ置換基として電子吸引性基であるハロゲン原子を有する炭素数6〜14のアリール基又はアラルキル基を表す。R11は低級アルキル基、5員環もしくは6員環を形成する複素環基、アラルキル基または炭素数6〜14のアリール基を表し、これらは置換基を有していても良い。)
特開平8−283708号(特許請求の範囲) 特開2000−159733号(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1および2に記載されたスチルベン誘導体は、結着樹脂との相溶性が乏しく、感光層中に均一に分散されにくいため、使用中に、電荷移動が生じにくくなるという問題が見られた。すなわち、開示されたスチルベン誘導体は、高い電荷移動度を有するにもかかわらず、電荷輸送剤として感光体に使用した場合、その特性が十分に発揮されないという問題が見られた。
そこで、本発明者らは、スチルベン誘導体において、分子末端のフェニルアミノ基における所定のフェニル構造に所定の嵩高い置換基を有することにより、結着樹脂との相溶性が優れており、電荷移動度が大きく、かつ電荷発生剤からの電荷の注入性に優れているという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の目的は、電子写真感光体等の電荷輸送剤として好適に用いることができる感度特性および耐久性に優れたスチルベン誘導体、その製造方法、および、そのようなスチルベン誘導体を有する電子写真感光体を提供することにある。
本発明によれば、下記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が提供され、上述した問題点を解決することができる。

(一般式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
一般式(1)で表されるスチルベン誘導体は、分子内に所定の嵩高い置換基を有しており、結着樹脂との相溶性が高く、かつ電荷移動度が大きいという特徴がある。
すなわち、分子内に所定の位置に所定の嵩高い置換基を有することにより、立体障害を生じるため、結着樹脂との相溶性が優れるとともに、電荷発生剤からの電荷の注入効率が優れる。
したがって、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、所定感度を有するとともに、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
より具体的には、このような所定の置換基を有することにより、これら置換基の回転の自由度が高いため、結着との相溶性が優れ、樹脂中へ均一に分散される。また、フェノキシ基およびナフトキシ基における酸素原子が、それぞれ電子供与体として働くため、電気特性が向上する。
すなわち、このような所定の置換基を有するスチルベン誘導体であれば、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた耐久性および感度特性を有した電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
また、本発明のスチルベン誘導体を構成するにあたり、一般式(1)中のAがフェニレン基であることにより、分子内共役が広がり、電荷移動度を高めることができる。
すなわち、このような構造を有するスチルベン誘導体を、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた感度特性を有した電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
また、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体の具体化した化合物として、下記一般式(3)で表されるスチルベン誘導体が提供される。
(一般式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。以下、一般式(9)〜(15)中のR7も一般式(3)中のR7の内容と同様であるため、その説明を省略する。)
すなわち、一般式(3)で表されるスチルベン誘導体は、分子内に嵩高い基を有しており、結着樹脂との相溶性が高く、かつ電荷移動度が大きいという特徴がある。したがって、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、所定感度を有するとともに、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、さらに高い収率で生産することができる。
なお、一般式(3)中のR7が、フェノキシ基、ナフトキシ基のような嵩高い置換基を有することにより、結着樹脂との相溶性にさらに優れており、電荷移動度が大きく、かつ電荷発生剤からの電荷の注入性に優れているスチルベン誘導体を提供することができる。
すなわち、このような所定の置換基を有するスチルベン誘導体であれば、電子写真感光体における電荷輸送剤(正孔輸送剤)として使用することにより、優れた感度特性を有した電子写真感光体を提供することができる。また、このような構造であれば、比較的導入が容易であるため、所定のスチルベン誘導体を、比較的高い収率で生産することができる。
また、本発明の別の態様は、下記反応式(1)で表されるスチルベン誘導体の製造方法であって、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体とを、触媒の存在下に反応させて、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を得ることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法である。
(反応式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
このように実施することにより、結着樹脂との相溶性に優れており、電荷移動度が大きく、かつ電荷発生剤からの電荷の注入性に優れているスチルベン誘導体を高い収率で得ることができる。
また、本発明のスチルベン誘導体の製造方法を実施するにあたり、下記反応式(2)で示されるように、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体として、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、一般式(7)で表されるアセトアルデヒド誘導体と、を反応させて、一般式(8)で表されるエナミン誘導体を得た後、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して得られたホルミル化ジフェニルアミン誘導体を使用することが好ましい。
(反応式(2)中、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
このように実施することにより、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体を効率よく製造することができるため、最終の目的物である所定のスチルベン誘導体を高い収率で得ることができる。
また、本発明のさらに別の態様は、反応式(1)で表されるスチルベン誘導体の製造方法の実施態様のひとつであり、下記反応式(3)で表されるスチルベン誘導体の製造方法である。すなわち、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体とを、触媒の存在下に反応させて、一般式(3)で表されるスチルベン誘導体を得ることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法である。
(反応式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。)
このように実施することにより、結着樹脂との相溶性にさらに優れており、電荷移動度が大きく、かつ電荷発生剤からの電荷の注入性に優れているスチルベン誘導体を高い収率で得ることができる。
なお、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体として、下記一般式(11)で表される保護基を有するアミン化合物と、ヨードベンゼンと、を反応させて、下記一般式(12)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物を得た後、保護基をはずし、ジフェニルアセトアルデヒドと反応させ、次いで、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して得られたホルミル化ジフェニルアミン誘導体を使用することが好ましい。
(一般式(11)中のR7は、一般式(3)中のR7の内容と同様である。)
(一般式(12)中のR7は、一般式(3)中のR7の内容と同様である。)
このように実施することにより、一般式(11)で表されるアニリン誘導体のアミノ基の水素原子と、一つのヨードベンゼン誘導体との間で反応がおきるため、特定のアセチル化ジフェニルアミン誘導体を効率よく製造することができる。
なお、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体として、一般式(12)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物を還元して、下記一般式(13)で表されるジフェニルアミン化合物を得た後、ジフェニルアセトアルデヒドを反応させて得られる下記一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体を、フィルスマイヤー法によりホルミル化して得られたホルミル化ジフェニルアミン誘導体を使用することが好ましい。
(一般式(13)中のR7は、一般式(3)中のR7の内容と同様である。)
(一般式(14)中のR7は、一般式(3)中のR7の内容と同様である。)
このように実施することにより、一般式(13)で表されるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとを、反応させることにより、一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体を効率よく製造することができる。また、一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体をフィルスマイヤー法によりホルミル化することにより、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体を効率よく製造することができる。
したがって、このように特定ホルミル化ジフェニルアミン誘導体を効率よく合成することにより、最終の目的物である一般式(3)で表されるスチルベン誘導体を効率よく製造することができる。
なお、さらに一般式(11)で表される保護基を有するアミン化合物として、下記一般式(15)で表されるアニリン化合物に、無水酢酸により保護基を導入してなるアミン化合物を使用することが好ましい。
このように実施することにより、所定の保護基を有するアミン化合物を効率よく合成することができるためである。
(一般式(15)中のR7は、一般式(3)中のR7の内容と同様である。)
また、本発明のさらに別の態様は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、感光層が、上述した一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
このように構成することにより、高い電荷移動度を有し、残留電位が低い一方、所定感度を有する電子写真感光体を得ることができる。
(一般式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
また、本発明のさらに別の態様は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、感光層が、上述した一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が一般式(3)で表されるスチルベン誘導体であることを特徴とする電子写真感光体である。
このように構成することにより、さらに高い電荷移動度を有し、残留電位が低い一方、所定感度を有する電子写真感光体を得ることができる。
(一般式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。)
また、本発明の電子写真感光体を構成するにあたり、感光層が、電荷発生剤および電子輸送剤をさらに含有した単層型であることが好ましい。
このように構成することにより、構成や製造が容易であるにもかかわらず、所定感度を有する単層型の電子写真感光体を得ることができる。
以下、本発明のスチルベン誘導体、その製造方法、および、電子写真感光体に関する実施の形態を、適宜図面を参照しながら、具体的に説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、下記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体である。
(一般式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
また、一般式(1)中のAが、下記式(2)で表される2価の有機基であることが好ましい。
この理由は、このような特定構造の芳香族環を含む二価の有機基であることより、結着樹脂との相溶性に優れており、さらには電荷発生剤から電荷輸送剤への注入効率が高いためである。したがって、優れた耐久性や感度特性を得ることができる。
また、本発明のスチルベン誘導体を構成するにあたり、一般式(1)中のR1、R2およびR3のうち少なくともひとつが、所定のフェノキシ基、所定のナフトキシ基であることを特徴とする
この理由は、このような所定の置換基を有することにより、立体障害により正孔輸送剤の平面性が低下し、結着樹脂との相溶性がさらに優れ、感光層中で均一に分散されるため、結晶化をより効果的に防ぐことができ、感度特性に優れるという効果を提供することができるためである。
また、本発明のスチルベン誘導体を構成するにあたり、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が、下記一般式(3)で表されるスチルベン誘導体であることが好ましい。
(一般式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。
ここで、一般式(1)および(3)で表されるスチルベン誘導体の一例として、下記式(16)〜(18)で表されるスチルベン誘導体が挙げられる。また、一般式(16)で表されるスチルベン誘導体の赤外分光(IR)チャートを図1に、プロトン−NMRチャート(全体図および拡大図)を図2および図3に、それぞれ示す。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した一般式(1)で表されるスチルベン誘導体の製造方法であって、下記反応式(1)で示すように、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体を、触媒の存在下に反応させることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法である。
(反応式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
1.ホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成
まず、反応式(1)を実施するうえで、原料となる一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成方法について詳しく説明する。
(1)反応式
一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体は、下記反応式(2)に示すように、フィルスマイヤー法を含んだ第1工程および第2工程で合成することが好ましい。なお、反応式(2)中のR1〜R6およびa〜cは既に説明した内容である。
(2)第1工程
まず、一般式(8)で表されるジフェニルアミン誘導体を合成する。すなわち、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、一般式(7)で表されるジフェニルアセトアルデヒドとを、触媒としてトルエンスルホン酸等の存在化に反応させるものである。
ここで、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、一般式(7)で表されるジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合を、モル比で1:1〜1:3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合が、1:1未満の値になると、一般式(8)で表されるジフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合が、1:3を超えると、未反応のジフェニルアセトアルデヒドが多く残留するため、一般式(8)で表されるジフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、式(7)で表されるジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合を、モル比で1:1.2〜1:2の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、式(7)で表されるジフェニルアセトアルデヒドとを反応させるにあたり、反応温度を、通常50〜120℃の範囲内の値とするとともに、反応温度を1〜30時間の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
なお、この反応で使用する触媒としては、例えば、トルエンスルホン酸、塩化亜鉛、硫酸等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
(3)第2工程
次いで、一般式(8)で表されるジリフェニルアミン誘導体を、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体を得る。
フィルスマイヤー法に使用するフィルスマイヤー試薬(Vilsmeier試薬)としては、以下の化合物(i)および(ii)の組合せであることが好ましい。
(i)オキシ塩化リン、ホスゲン、塩化オキサリル、塩化チオニル、トリフェニルホスフィン−臭素、ヘキサクロロトリホスファザトリエン等のハロゲン化剤
(ii)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアニリド(MFA)、N−ホルミルモルホリン、N,N−ジイソプロピルホルムアミド
特に、本発明では、フィルスマイヤー試薬として、オキシ塩化リンと、溶媒としても使用できるDMFとの組み合わせが好適に用いられる。
さらに、触媒量の塩化亜鉛等を添加することにより、フィルスマイヤー法を促進させることができる。
また、フィルスマイヤー試薬の調製において、化合物(i)と(ii)との使用割合は、通常モル比で、1:1〜1:20の範囲内の値とすることが好ましく、1:1〜1:5の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、フィルスマイヤー試薬の使用量に関して、一般式(8)で表されるジフェニルアミン誘導体1モルに対して、1〜5倍モル量の範囲内の値とすることが好ましく、1〜3倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
さらに、フィルスマイヤー法における、トリフェニルアミン誘導体のホルミル化の反応条件に関して、通常130℃以下の温度で行い、反応時間を0.5〜5時間の範囲内の値とすることが好ましい。
2.ジフェニルアミン誘導体の合成
次いで、反応式(2)を実施するうえで、原料となる一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体の合成方法について詳しく説明する。
(1)反応式
一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体は、下記反応式(4)に示すように合成することができる。
一般式(19)で表されるアセチル化アニリン誘導体を原料として、ヨードベンゼンと反応させて、一般式(21)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体を得る。その後、一般式(21)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体を脱アセチル化反応させて、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体を合成することがこのましい。
なお、反応式(4)中のR1〜R4、およびaは、反応式(1)中のR1〜R4、およびaの内容と同様である。
まず、一般式(19)で表されるアセチル化アニリン誘導体を原料として、それに一般式(20)で表されるヨードベンゼン誘導体とを反応させて、一般式(21)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体を合成する。
ここで、一般式(21)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体を合成するにあたり、一般式(19)で表されるアセチル化アニリン誘導体と、一般式(20)で表されるヨードベンゼン誘導体との添加割合を、モル比で1:1〜1:3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるアセチル化アニリン誘導体と、ヨードベンゼン誘導体との添加割合が、1:1未満の値になると、目的物であるジフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるアセチル化アニリン誘導体と、ヨードベンゼン誘導体との添加割合が、1:3を超えると、未反応のヨードベンゼン誘導体が多く残留するため、目的物であるジフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
また、一般式(19)で表されるアセチル化アニリン誘導体と、一般式(20)で表されるヨードベンゼン誘導体とを反応させるにあたり、反応温度を、通常160〜220℃の範囲内の値とするとともに、反応温度を1〜30時間の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
ついで、一般式(21)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体を還元させて、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体を合成する。
また、還元反応に使用される試薬としては、t-BuOK、1−BuOK等の一種または2種以上の組み合わせが上げられる。
また、還元反応に使用される試薬の使用量に関して、一般式(21)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体1モルに対して、1〜5倍モル量の範囲内の値とすることが好ましく、1〜3倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
さらに、還元反応における、アセチル化ジフェニルアミン誘導体の反応条件に関して、通常150℃以下の温度で行い、反応時間を5〜120分間の範囲内の値とすることが好ましい。
また、一般式(19)で表されるアセチル化アニリン誘導体として、下記一般式(22)で表されるアニリン化合物に、無水酢酸により保護基を導入してなるアミン化合物を使用することが好ましい。
なお、下記一般式(22)中のR1〜R3は、一般式(1)中のR1〜R3と同様の内容である。
この理由は、アミン化合物における保護基以外の窒素原子に結合した水素を置換して、選択的に所望のフェニル基を導入することができるためである。
3.ジリン酸エステル誘導体
ついで、反応式(1)を実施するうえで、原料となる一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体の合成方法について詳しく説明する。
一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体は、下記反応式(5)に示すように、合成することができる。
(反応式(5)中のAは、フェニレン基であり、Xはハロゲン原子、例えば塩素原子、臭素原子である。)
かかるジリン酸エステル誘導体の合成反応を実施するにあたり、一般式(23)で表されるハロゲン化メチル誘導体に対して、亜リン酸トリエチルを無溶媒または適当な溶媒中に添加して、反応させることが好ましい。この理由は、このように反応させることにより、反応式(1)に使用する一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体を高い収率で得ることができるためである。
ここで、合成反応を生じさせるに際して、ハロゲン化メチル誘導体1モルに対して、亜リン酸トリエチルの使用割合を、少なくとも2モルとすることが好ましく、2〜10モルの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、かかる反応温度を、通常80〜150℃の範囲内の値とし、反応時間を2〜10時間の範囲内の値とすることが好ましい。
また、ジリン酸エステル誘導体を合成する際に用いる溶媒としては、かかる反応に影響を及ぼさないものであれば良いが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド等が、好適例として挙げられる。
また、ジリン酸エステル誘導体を合成する際に、所定量の第三級アミンを添加することも好ましい。この理由は、第三級アミンによって、反応系からハロゲン化アルキルが除去されるため、ジリン酸エステル誘導体の合成反応を促進できるためである。好適な第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
4.反応条件
次いで、反応式(1)を実施する際の反応条件について詳細に説明する。
すなわち、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体は、上述した反応式(1)に従って、後述する反応条件に基づいて合成することができる。
(1) 反応温度と反応時間
一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応は、通常−10〜30℃で行うことが好ましく、その反応時間を1〜12時間の範囲内の値とすることが好ましい。
(2) 溶媒
一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応に使用する好適な溶媒としては、当該反応に影響を及ぼさないものであればよいが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
(3) 触媒
また、かかる反応に使用する触媒としては、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウムや水素化カリウム等の金属水素化物、あるいは、n−ブチルリチウム等の金属塩が好適なものとして挙げられる。
ここで、かかる触媒の添加量を、ホルミル化トリフェニルアミン誘導体1モルに対して、1.0〜1.5モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる触媒の添加量が1.0モル未満の値となると、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる触媒の添加量が1.5モルを超えると、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応を制御することが著しく困難になる場合があるためである。
(4) 添加割合
一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、の間の反応を実施するにあたり、添加割合を、モル比で1:2〜1:3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、ジリン酸エステル誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が生成量が低下する場合があるためである。また、かかる添加割合が、1:3を超えると、未反応のホルミル化ジフェニルアミン誘導体が精製を困難にする場合があるためである。
したがって、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体との添加割合を、モル比で1:2.1〜1:2.5の範囲内の値とすることがより好ましい。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、第1の実施形態で説明した一般式(3)で表されるスチルベン誘導体の製造方法であって、下記反応式(3)に示すように、下記一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体を、触媒の存在下に反応させることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法である。
なお、反応式(3)で示されるスチルベン誘導体の製造方法は、第2の実施形態で説明した、反応式(1)で示されるスチルベン誘導体の製造方法の実施態様の一つである。(反応式(3)、一般式(3)、および一般式(9)中のR7は、既に上述した内容である。)
1.ホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成
まず、反応式(3)を実施するうえで、原料となる一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成方法について詳しく説明する。
(1)反応式
一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体は、下記反応式(6)に示すように、下記一般式(11)で表される保護基を有するアミン化合物と、ヨードベンゼンと、を反応させて、下記一般式(12)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物を得た後、保護基をはずし、次いで、ジフェニルアセトアルデヒドと反応させ、その後、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体が得られることを示している。
なお、反応式(6)、一般式(11)および一般式(12)中のR7は、既に上述した内容である。

また、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体として、一般式(12)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物を還元して、下記一般式(13)で表されるジフェニルアミン化合物を得た後、ジフェニルアセトアルデヒドを反応させて得られる下記一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体を、フィルスマイヤー法によりホルミル化して得られたホルミル化ジフェニルアミン誘導体を使用することが好ましい。この理由は、フィルスマイヤー法を用いることにより、比較的簡易な製造装置を用いて、高い収率で目的物が得られるためである。
なお、一般式(13)および一般式(14)中のR7は、既に上述した内容である。
また、一般式(11)で表される保護基を有するアミン化合物として、下記一般式(15)で表されるアニリン化合物に、無水酢酸により保護基を導入してなるアミン化合物を使用することが好ましい。
この理由は、アミン化合物における保護基以外の窒素原子に結合した水素を置換して、選択的に所望のフェニル基を導入することができるためである。
ここで、一般式(11)で表される保護基を有するアミン化合物(アニリン誘導体)と、ヨードベンゼンとの添加割合を、モル比で1:1〜1:3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるアミン化合物と、ヨードベンゼンとの添加割合が、1:1未満の値になると、目的物であるジフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるアミン化合物と、ヨードベンゼンとの添加割合が、1:3を超えると、未反応のヨードベンゼンが多く残留するため、目的物であるジフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
したがって、アニリン誘導体と、ヨードベンゼンの添加割合を、モル比で1:1.8〜1:2.2の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、一般式(11)で表される保護基を有するアミン化合物と、ヨードベンゼンとを反応させるにあたり、反応温度を、通常160〜220℃の範囲内の値とするとともに、反応温度を1〜30時間の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
また、一般式(12)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体を還元させて、一般式(13)で表されるジフェニルアミン誘導体を合成する。
還元反応に使用される試薬としては、第2の実施形態の還元反応で用いたものと同様のものを使用する。
また、還元反応に使用される試薬の使用量に関して、一般式(12)で表されるアセチル化ジフェニルアミン誘導体1モルに対して、1〜5倍モル量の範囲内の値とすることが好ましく、1〜3倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
さらに、還元反応における、アセチル化ジフェニルアミン誘導体の反応条件に関して、通常150℃以下の温度で行い、反応時間を5〜120分間の範囲内の値とすることが好ましい。
また、一般式(13)で表されるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドと、触媒としてトルエンスルホン酸等の存在化等の存在化に反応させて、一般式(14)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体を合成する。
ここで、一般式(13)で表されるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合を、モル比で1:1〜1:3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合が、1:1未満の値になると、一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。一方、かかるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合が、1:3を超えると、未反応のジフェニルアセトアルデヒドが多く残留するため、一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体の精製が困難になる場合があるためである。
したがって、一般式(13)で表されるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとの添加割合を、モル比で1:1.2〜1:2の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、一般式(13)で表されるジフェニルアミン誘導体と、ジフェニルアセトアルデヒドとを反応させるにあたり、反応温度を、通常50〜120℃の範囲内の値とするとともに、反応温度を1〜30時間の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような反応条件であれば、比較的簡易な製造設備を用いて、所望の反応を効率的に実施できるためである。
なお、この反応で使用する触媒としては、例えば、トルエンスルホン酸、塩化亜鉛、硫酸等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、一般式(14)で表されるジフェニルアミン誘導体をフィルスマイヤー法を用いて、ホルミル化して一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体を合成する。
フィルスマイヤー法に使用するフィルスマイヤー試薬(Vilsmeier試薬)としては、第2の実施形態で用いたフィルスマイヤー法と同様のものを使用する。
さらに、フィルスマイヤー試薬の使用量に関して、一般式(14)で表されるジフェニルアミン化合物1モルに対して、0.9〜2倍モル量の範囲内の値とすることが好ましく、1〜1.1倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、フィルスマイヤー法における、ジフェニルアミン誘導体のホルミル化の反応条件に関して、通常130℃以下の温度で行い、反応時間を0.5〜5時間の範囲内の値とすることが好ましい。
2.ジリン酸エステル誘導体
式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体は、下記反応式(7)に示すように、合成することができる。
かかるジリン酸エステル誘導体の合成反応を実施するにあたり、例えば、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンに対して、亜リン酸トリエチルを無溶媒または適当な溶媒中に添加して、反応させることが好ましい。この理由は、このように反応させることにより、反応式(3)の出発原料であるジリン酸エステル誘導体(10)を高い収率で得ることができるためである。
ここで、合成反応を生じさせるに際して、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン1モルに対して、亜リン酸トリエチルの使用割合を、少なくとも3倍モル当量とすることが好ましく、3〜3.6倍モル量の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、かかる反応温度を、通常80〜150℃の範囲内の値とし、反応時間を1〜10時間の範囲内の値とすることが好ましい。
また、ジリン酸エステル誘導体を作成する際に用いる溶媒としては、かかる反応に影響を及ぼさないものであれば良いが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド等が、好適例として挙げられる。
また、ジリン酸エステル誘導体を作成する際に、所定量の第三級アミンを添加することも好ましい。この理由は、第三級アミンによって、反応系からハロゲン化アルキルが除去されるため、ジリン酸エステル誘導体の合成反応を促進できるためである。好適な第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
3.反応条件
(1) 溶媒
一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応に使用する好適な溶媒としては、当該反応に影響を及ぼさないものであればよいが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
(2) 触媒
また、かかる反応に使用する触媒としては、ナトリウムメトキシドやナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウムや水素化カリウム等の金属水素化物が好適なものとして挙げられる。
ここで、かかる触媒の添加量を、ホルミル化ジフェニルアミン誘導体1モルに対して、1.1〜1.2モルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる触媒の添加量が1.1モル未満の値となると、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる触媒の添加量が1.2モルを超えると、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体と、の間の反応を制御することが著しく困難になる場合があるためである。
(3) 添加割合
式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、の間の反応を実施するにあたり、添加割合を、モル比で1:2〜1:2.5の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、ジリン酸エステル誘導体との添加割合が、1:2未満の値になると、一般式(3)で表されるスチルベン誘導体の生成量が低下する場合があるためである。また、かかる添加割合が、1:2.5を超えると、未反応のホルミル化ジフェニルアミン誘導体が精製を困難にする場合があるためである。
したがって、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体と、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体との添加割合を、モル比で1:2〜1:2.2の範囲内の値とすることがより好ましい。
(4) 反応条件
また、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体との反応は、通常−10〜25℃で行うことが好ましく、その反応時間を3〜12時間の範囲内の値とすることが好ましい。
[第4の実施形態]
第4の実施形態は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、感光層に、一般式(1)あるいは(3)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
なお、電子感光体には、単層型と積層型とがあるが、本発明のスチルベン誘導体は、いずれにも適用可能である。
ただし、特に正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の被膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の観点から、単層型に適用することが好ましい。
1.単層型感光体
(1) 基本的構成
単層型感光体は、導電性基体上に単一の感光層を設けたものである。この感光層は、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)、電荷発生剤、結着樹脂、さらに必要に応じて電子輸送剤を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成される。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単で生産性に優れている。
また、得られた単層型電子写真感光体は、残留電位が低下しているとともに、所定感度を有している。また、本発明の単層型電子写真感光体の感光層に、さらに電子輸送剤を含有させる場合には、電荷発生剤と正孔輸送剤との電子の授受が効率よく行われるようになり、感度等がより安定する傾向にある。
(2) 電荷発生剤
本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えば、無金属フタロシアニン、オキソチタニルフタロシアニン、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、無金属フタロシアニンやオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、ペリレン顔料やビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
(3) 正孔輸送剤
本発明の電子写真感光体においては、正孔輸送剤である本発明のスチルベン誘導体とともに、従来公知の他の正孔輸送剤を感光層に含有させることも好ましい。
このような正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化合物、例えば下記の一般式(HT−1)〜(HT−13)で表される化合物等があげられる。
(式中、Rh1、Rh2、Rh3、Rh4、Rh5およびRh6は独立しており、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。aおよびbは同一または異なって0〜4の整数を示し、c、d、eおよびfは同一または異なって0〜5の整数を示す。但し、a、b、c、d、eまたはfが2以上のとき、各Rh1、Rh2、Rh3、Rh4、Rh5およびRh6は異なっていてもよい。)
(式中、Rh7、Rh8、Rh9、Rh10 およびRh11 は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。g、h、iおよびjは同一または異なって0〜5の整数を示し、kは0〜4の整数を示す。但し、g、h、i、jまたはkが2以上のとき、各Rh7、Rh8、Rh9、Rh10 およびRh11 は異なっていてもよい。)
(式中、Rh12 、Rh13 、Rh14 およびRh15 は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。Rh16 はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。m、n、oおよびpは同一または異なって、0〜5の整数を示す。qは0〜6の整数を示す。但し、m、n、o、pまたはqが2以上のとき、各Rh12 、Rh13 、Rh14 、Rh15 およびRh16 は異なっていてもよい。)
(式中、Rh17 、Rh18 、Rh19 およびRh20 は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。r、s、tおよびuは同一または異なって、0〜5の整数を示す。但し、r、s、tまたはuが2以上のとき、各Rh17 、Rh18 、Rh19 およびRh20 は異なっていてもよい。)
(式中、Rh21 およびRh22 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。Rh23 、Rh24 、Rh25 およびRh26 は同一または異なって、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
(式中、Rh27 、Rh28 およびRh29 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
(式中、Rh30 、Rh31 、Rh32 およびRh33 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
(式中、Rh34 、Rh35 、Rh36 、Rh37 およびRh38 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
(式中、Rh39 は水素原子またはアルキル基を示し、Rh40 、Rh41 およびRh42 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
(式中、Rh43 、Rh44 およびRh45 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
(式中、Rh46 およびRh47 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアルコキシ基を示す。Rh48 およびRh49 は同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。)
(式中、Rh50 、Rh51 、Rh52 、Rh53 、Rh54 およびRh55 は同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。αは1〜10の整数を示し、v、w、x、y、zおよびβは同一または異なって0〜2の整数を示す。但し、v、w、x、y、zまたはβが2のとき、各Rh50 、Rh51 、Rh52 、Rh53 、Rh54 およびRh55 は異なっていてもよい。)
(式中、Rh56 、Rh57 、Rh58 およびRh59 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示し、Φは次式:
また、本発明においては、上記例示の正孔輸送剤(HT−1)〜(HT−13)とともに、またはこれに代えて、従来公知の正孔輸送物質、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等の1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。
(4) 電子輸送剤
本発明に用いられる電子輸送剤としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、例えば下記の一般式(ET−1〜ET−17)で表される化合物等があげられる。
(式中、Re1、Re2、Re3、Re4およびRe5は同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいフェノキシ基またはハロゲン原子を示す。)
(式中、Re6はアルキル基、Re7は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を示す。γは0〜5の整数を示す。但し、γが2以上のとき、各Re7は互いに異なっていてもよい。)
(式中、Re8およびRe9は同一または異なって、アルキル基を示す。δは1〜4の整数を示し、εは0〜4の整数を示す。但し、δおよびεが2以上のとき、各Re8およびRe9は異なっていてもよい。)
(式中、Re10 はアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を示す。ζは0〜4、ηは0〜5の整数を示す。但し、ηが2以上のとき、各Re10 は異なっていてもよい。)
(式中、Re11 はアルキル基を示し、σは1〜4の整数を示す。但し、σが2以上のとき、各Re11 は異なっていてもよい。)
(式中、Re12 およびRe13 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキルオキシカルボニル基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基またはシアノ基を示す。Xは酸素原子、=N−CN基または=C(CN)2 基を示す。)
(式中、Re14 は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基または置換基を有してもよいフェニル基を示し、Re15 はハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルコキシカルボニル基、N−アルキルカルバモイル基、シアノ基またはニトロ基を示す。λは0〜3の整数を示す。但し、λが2以上のとき、各Re15 は互いに異なっていてもよい。)
(式中、θは1〜2の整数を示す。)
(式中、Re16 およびRe17 は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基を示す。νおよびξは0〜3の整数を示す。但し、νまたはξが2以上のとき、各Re16およびRe17 は互いに異なっていてもよい。)
(式中、Re18 およびRe19 は同一または異なって、フェニル基、縮合多環式基または複素環式基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
(式中、Re20 はアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキル基またはフェニル基を示し、πは1〜2の整数を示す。但し、πが2のとき、各Re20 は互いに異なっていてもよい。)
(式中、Re21 は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアラルキル基を示す。)
(式中、Re22 はハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルコキシカルボニル基、N−アルキルカルバモイル基、シアノ基またはニトロ基を示す。μは0〜3の整数を示す。但し、μが2以上のとき、各Re22 は互いに異なっていてもよい。)
(式中、Re23 は置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、Re24 は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または基:−O−Re24を示す。上記基中のRe24は、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。)
(式中、Re25 、Re26 、Re27 、Re28 、Re29 、Re30 およびRe31 は同一または異なってアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を示す。χおよびφは同一または異なって0〜4の整数を示す。)
(式中、Re32 およびRe33 は同一または異なってアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を示す。τおよびψは同一または異なって0〜4の整数を示す。)
(式中、Re34 、Re35 、Re36 およびRe37 は同一または異なって水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基またはアミノ基を示す。但し、Re34 、Re35 、Re36 およびRe37 のうち少なくとも2つは、水素原子でない同一の基である。)
また、本発明においては、上記例示のほかに従来公知の電子輸送物質、すなわち例えばベンゾキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等の1種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。
(5) 結着樹脂
各成分を分散させるための結着樹脂は、従来より感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
特に、ポリカーボネート樹脂は、透明性や耐熱性に優れているばかりか、機械的特性や正孔輸送剤との相溶性にも優れていることから好ましい結着樹脂である。
(6) 添加剤
また、感光層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
(7) 配合割合および厚さ
本発明の電子写真感光体が単層型の感光体である場合、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。本発明のスチルベン誘導体(1)(正孔輸送剤)は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤を含有させる場合、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部とするのが適当である。
また、本発明の電子写真感光体が積層型の感光体である場合、電荷発生層を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使用することができるが、結着樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で配合するのが適当である。電荷発生層に正孔輸送剤を含有させる場合は、正孔輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部、好ましくは50〜200重量部とするのが適当である。
電荷輸送層を構成する正孔輸送剤と、結着樹脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲および結晶化しない範囲で種々の割合で使用することができるが、光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂100重量部に対して、本発明のスチルベン誘導体(1)(正孔輸送剤)を10〜500重量部、好ましくは25〜200樹脂の割合で配合するのが適当である。電荷輸送層に電子輸送剤を含有させる場合は、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部とするのが適当である。
(8) 構造
また、単層型感光体における感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
そして、このような感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。前記感光層を塗布の方法により形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
また、単層型感光体の構成に関して、導電性基体と感光層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。また、感光体の表面には、保護層が形成されていてもよい。
(9) 製造方法
分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
2.積層型感光体
積層型感光体は、まず導電性基体上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、次いでこの電荷発生層上に、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)の少なくとも1種と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することによって作製される。
また、上記とは逆に、導電性基体上に電荷輸送層を形成し、その上に電荷発生層を形成してもよい。但し、電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
なお、電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、結着剤等については、単層型感光体と同様の内容とすることができる。
また、積層型感光体は、上記電荷発生層および電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。例えば、上記のように、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した場合において、電荷輸送層における電荷輸送剤として、本発明のスチルベン誘導体のような正孔輸送剤を使用した場合には、感光体は負帯電型となる。この場合、電荷発生層には電子輸送剤を含有させてもよい。
そして、本発明の積層型電子写真感光体は、感光体の残留電位が低下するとともに、所定感度を有しているという特徴がある。
なお、積層型感光体における感光層の厚さは、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
[実施例1]
(1)スチルベン誘導体の合成
(1)−1 ジリン酸エステル誘導体の合成
式(3)で表されるジリン酸エステル誘導体の合成を、上述の反応式(7)に沿って合成した。すなわち、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼンに対して、亜リン酸トリエチルを、3.6倍モル量加え、8時間還流した。その後、溶媒を留去し、ヘキサンを用いて再結晶させ、ジリン酸エステル誘導体を得た(収率95%)。
(1)−2 保護基を有するジフェニルアミン化合物の合成
下記式(26)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物の合成を、下記の反応式(8)に沿って実施した。
すなわち、容量500mlのフラスコ内に、下記式(24)で表される4−アミノジフェニルエーテル化合物25.0g(0.13mol)と、無水酢酸150mlとを収容し、それぞれを攪拌下、濃硫酸0.5gを滴下し、さらに1.5時間反応させることにより、下記式(25)で表される保護基を有するフェニルアミン化合物を得た。
次いで、容量500mlの二口フラスコ内に、無水炭酸カリウム21.9g(0.158mol)および粉末銅0.026g(0.0264mol)を加え、温度200℃、2時間の条件で加熱して、均一になるまで十分に攪拌した。
次いで、室温まで冷却した後、式(25)で表される保護基を有するフェニルアミン化合物30g(0.132mol)と、ヨードベンゼン67.3g(0.33mol)とを添加した後、220℃に再加熱し、2.5時間反応させた。その後、室温まで冷却した後、100mlのトルエンを添加し、ろ過処理を実施した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)を用いて精製し、式(26)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物を得た(収率81.8%)。
(1)−3 保護基の脱離
次いで、下記式(27)で表されるジフェニルアミン化合物を、下記の反応式(9)に沿って保護基を脱離して、製造した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、式(26)で表される保護基を有するジフェニルアミン化合物32.7g(0.108mol)と、t−BuOK14.5g(0.13mol)と、1−BuOH150gと、を収容し、それをオイル浴内に浸漬して140℃に加熱し、2時間還流させることにより、保護基の脱離を実施した。次いで、室温まで冷却した後、100mlの水を添加し、ろ過処理を実施した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)を用いて精製し、式(27)で表されるジフェニルアミン化合物を得た(収率81.8%)。
(1)−4 ホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成
次いで、式(29)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体の合成を、下記の反応式(10)に沿って実施した。
すなわち、300mlのフラスコ内に、式(27)で表されるジフェニルアミン化合物20g(0.077mol)と、ジフェニルアセトアルデヒド15.1g(0.077mol)と、トルエン150mlと、p−トルエンスルフォン酸モノハイドレート3.0g(0.015mol)と、を収容し、それをオイル浴内に浸漬して130℃に加熱し、2時間還流させることにより、ホルミル化を実施した。その後、ろ過処理を実施し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)を用いて精製し、下記式(28)で表されるジフェニルアミン誘導体を得た(収率83.5%)。
次いで、500mlのフラスコ内に、式(28)で表されるジフェニルアミン化合物27g(0.061mol)と、ジメチルホルムアミド(DMF)200mlと、オキシ塩化リン酸14g(0.092mol)と、を収容し、95℃、1時間の条件で反応させた。反応後、イオン交換水600ミリリットルを添加し、ろ過処理を実施して、残渣を取り出した。得られた残渣をトルエンに溶解させ、有機層として抽出した。次いで、有機層を水洗し、乾燥させて溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム溶媒)で精製して、式(29)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体11.4gを得た。(収率40%)
(1)−5 スチルベン誘導体の合成
次いで、式(16)で表されるスチルベン誘導体の合成を、下記の反応式(11)に沿って実施した。
すなわち、500mlのフラスコ内に、(1)−1で得られた式(10)で表されるジリン酸エステル3.7g(9.78mmol)と、THF50mlと、28%NaOMe4.86g(0.025mol)/THF20mlと、を収容した後、均一になるまで約20分攪拌した。次いで、この容器内に、上述した(1)−2〜4で得られた式(29)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体10g(0.021mol)をTHF50mlに溶解させた後、ロート滴下し、室温で約12時間反応させた。次いで、約2%の希塩酸水溶液400mlと混合し、析出した結晶をろ過して水洗した。得られた結晶をさらに乾燥した後、シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン)で精製して、式(16)で表されるスチルベン誘導体10.6gを得た(収率68.2%)。
得られたスチルベン誘導体の赤外吸収スペクトルを図1に示し、プロトン−NMRチャート(全体図および部分拡大図を)をそれぞれ図2および図3に示す。さらに、得られたスチルベン誘導体の融点を、微量融点測定装置(YANAKO社製)を用いて測定したところ、135〜137℃であることを確認した。
(2)評価
(2)−1 初期表面電位、半減露光量および残留電位の測定
得られたスチルベン誘導体を正孔輸送剤として、単層型の電子写真感光体を作成して、初期表面電位、半減露光量および残留電位を測定した。すなわち、正孔輸送剤として、得られたスチルベン誘導体を100重量部と、電荷発生剤として、下記式(30)で表されるX型無金属フタロシアニン(CGM−A)を5重量部と、結着樹脂として、ポリカーボネート樹脂100重量部と、を溶媒としてのテトラヒドロフラン800重量部に対して添加した。次いで、ボールミルを用いて50時間混合分散して、単層型感光層用の塗布液を作成した。得られた塗布液を、導電性基材(アルミニウム素管)上に、ディップコート法にて塗布し、100℃、30分間の条件で熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を得た。
次いで、得られた電子写真感光体における初期帯電電位(V)、半減露光量(E1/2)および残留電位(V)を測定した。すなわち、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、表面電位が710Vになるように帯電させて電位を測定し、初期帯電電位(V)とした。また、半減露光量(E1/2)については、帯電後、ハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光強度:1.5μJ/cm2)を露光して、表面電位が1/2になるまでに要した時間を測定した。さらに、残留電位については、露光開始から330msec経過した時点での表面電位を測定し、それを残留電位(V)とした。
それぞれ得られた結果を、表1に示す。結果から明らかなように、得られた電子写真感光体は、残留電位の値が低く、半減露光量も0.9秒以内であって、所定感度を有することを確認した。なお、表1中、電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニンをCGM−Aと表記する(以下、同様である。)。
[実施例2]
実施例2においては、実施例1の塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(31)で表されるキノン誘導体(ET−A)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
なお、表1中、式(31)で表されるキノン誘導体をET−Aと表記する。
[実施例3]
実施例3においては、実施例1における塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(32)で表される別のキノン誘導体(ET−B)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。なお、表1中、式(32)で表されるキノン誘導体をET−Bと表記する。
[実施例4]
実施例4においては、実施例1における塗布液中に、電子輸送材料として、下記式(33)で表される別のキノン誘導体(ET−C)をさらに30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
なお、表1中、式(33)で表されるキノン誘導体をET−Cと表記する。
[実施例5〜7]
実施例5〜7においては、実施例2〜4における塗布液中に、正孔輸送剤として、式(16)で表されるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、式(17)で表されるスチルベン誘導体(HT−B)を用いたほかは、実施例2〜4と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
[実施例8〜10]
実施例8〜10においては、実施例2〜4における塗布液中に、正孔輸送剤として、式(16)で表されるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、式(18)で表されるスチルベン誘導体(HT−C)を用いたほかは、実施例2〜4と同様に単層型感光体を作成して、評価した。
[比較例1]
比較例1においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、下記式(34)で表されるスチルベン誘導体(HT−D)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
なお、表1中、式(34)で表されるスチルベン誘導体をHT−Dと表記する。
[比較例2]
比較例2においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、下記式(35)で表されるスチルベン誘導体(HT−E)を用いたほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成した。
ただし、単層型感光層の全体が結晶化してしまい、その後の評価を中止した。
[比較例3]
比較例3においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(34)で表されるスチルベン誘導体(HT−D)を用いるとともに、電子輸送材料として、式(31)で表されるキノン誘導体(ET−A)を30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
[比較例4]
比較例4においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(34)で表されるスチルベン誘導体(HT−D)を用いるとともに、電子輸送材料として、式(32)で表されるキノン誘導体(ET−B)を30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
[比較例5]
比較例5においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(34)で表されるスチルベン誘導体(HT−D)を用いるとともに、電子輸送材料として、式(33)で表されるキノン誘導体(ET−C)を30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
[比較例6]
比較例6においては、実施例1におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送材料として、式(35)で表されるスチルベン誘導体(HT−E)を用いるとともに、電子輸送材料として、式(31)で表されるキノン誘導体(ET−A)を30重量部添加したほかは、実施例1と同様に単層型感光層を作成した。
ただし、単層型感光層の全体が結晶化してしまい、その後の評価を中止した。
[比較例7〜9]
比較例7〜9においては、実施例2〜4におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送剤として、下記式(36)で表されるスチルベン誘導体(HT−F)を用いたほかは、実施例2〜4と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
[比較例10〜12]
比較例10〜12においては、実施例2〜4におけるスチルベン誘導体(HT−A)のかわりに、正孔輸送剤として、下記式(37)で表されるスチルベン誘導体(HT−G)を用いたほかは、実施例2〜4と同様に単層型感光層を作成して、評価した。
以上詳述したように、本発明のスチルベン誘導体は、分子内に嵩高い基を有していることから、結着樹脂との相溶性が高く、かつ高い電荷輸送能(正孔輸送能)を有している。すなわち、一般式(1)または(3)で表されるスチルベン誘導体は、高い正孔輸送能を有することから、電子写真感光体における正孔輸送剤として好適に使用されるほか、太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等の種々の分野での利用が可能である。
また、本発明のスチルベン誘導体の製造方法によれば、結着樹脂への相溶性、かつ高い電荷輸送剤能を有している一般式(1)または(3)で表されるスチルベン誘導体を高い収率で得ることができる。
さらに、本発明の電子写真感光体は、一般式(1)または(3)で表されるスチルベン誘導体を正孔輸送剤として用いることから、所定の感度特性や耐久性を有している。したがって、本発明の電子写真感光体は、複写機やプリンタ等の各種画像形成装置の高速化、高性能化等に寄与することが期待される。
一般式(16)で表されるスチルベン誘導体の赤外分光(IR)チャートを説明するために供する図である。 一般式(16)で表されるプロトンーNMRチャートを説明するために供する図である。 一般式(16)で表されるプロトンーNMRチャートを拡大して説明するために供する図である。

Claims (8)

  1. 一般式(1)で表されるスチルベン誘導体。

    (一般式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
  2. 前記一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が、下記一般式(3)で表されるスチルベン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載のスチルベン誘導体。

    (一般式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。)
  3. 反応式(1)に示されるスチルベン誘導体の製造方法であって、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(5)で表されるジリン酸エステル誘導体とを、触媒の存在下に反応させて、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を得ることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法。

    (反応式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
  4. 反応式(2)に示されるように、一般式(4)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体として、一般式(6)で表されるジフェニルアミン誘導体と、一般式(7)で表されるアセトアルデヒド誘導体とを反応させて、一般式(8)で表されるエナミン誘導体を得た後、フィルスマイヤー(Vilsmeier)法によりホルミル化して得られたホルミル化ジフェニルアミン誘導体を使用することを特徴とする請求項3に記載のスチルベン誘導体の製造方法。

    (反応式(2)中、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
  5. 反応式(3)に示されるスチルベン誘導体の製造方法であって、一般式(9)で表されるホルミル化ジフェニルアミン誘導体と、一般式(10)で表されるジリン酸エステル誘導体とを、触媒の存在下に反応させて、一般式(3)で表されるスチルベン誘導体を得ることを特徴とするスチルベン誘導体の製造方法。

    (反応式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。)
  6. 導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、前記感光層が、一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。

    (一般式(1)中、Aは、フェニレン基であり、複数のR1、R2およびR3のうち少なくとも1つは炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基であり、フェノキシ基あるいはナフトキシ基以外のものは水素原子であり、複数のR4〜R6は、それぞれ独立しており、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の置換または非置換のアルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜20の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6〜30の置換または非置換のアリール基、炭素数7〜20の置換または非置換のアラルキル基、置換または非置換のアミノ基、あるいは、複数のR4〜R5のうちいずれか二つは、それぞれが結合または縮合して形成した炭素環構造であり、繰り返し数a〜cはそれぞれ0〜4の整数である。)
  7. 前記電子写真感光体で用いられた一般式(1)で表されるスチルベン誘導体が、下記一般式(3)で表されるスチルベン誘導体であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。

    (一般式(3)中、R7は、独立した炭素数6〜15の置換または非置換のフェノキシ基、あるいは炭素数10〜20の置換または非置換のナフトキシ基である。)
  8. 前記感光層が、電荷発生剤および電子輸送剤をさらに含有した単層型であることを特徴とする請求項6または7に記載の電子写真感光体。
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