JP3694605B2 - スチルベン誘導体、その製造方法およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた電荷輸送能を有するスチルベン誘導体、その製造方法および前記スチルベン誘導体を含有した、静電式複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ等の画像形成装置に用いられる電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記画像形成装置においては、当該装置に用いられる光源の波長領域に感度を有する種々の有機感光体が使用されている。この有機感光体は、従来の無機感光体に比べて製造が容易であり、電荷輸送剤、電荷発生剤、結着樹脂等の感光体材料の選択肢が多様で、機能設計の自由度が高いという利点を有することから、近年、広く用いられている。
【0003】
有機感光体には、電荷輸送剤を電荷発生剤とともに同一の感光層中に分散させた単層型感光体と、電荷発生剤を含有する電荷発生層と電荷輸送剤を含有する電荷輸送層とを積層した積層型感光体とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記有機感光体に使用される電荷輸送剤として、特開平3−73957号公報には、一般式(6) :
【0005】
【化6】
【0006】
(式中、RA およびRB は水素原子、アルキル基等を示す。但し、RA およびRB は同時に水素原子ではないものとする。)
で表されるスチルベン誘導体が開示されている。
しかし、上記一般式(6) で表されるスチルベン誘導体のうち、上記公報に具体的に開示されている化合物はバインダー樹脂との相溶性が乏しく、感光層中に均一に分散されにくいため、電荷移動が生じにくくなるという問題がある。
【0007】
従って、上記スチルベン誘導体(6) 自体は高い電荷移動度を有するにもかかわらず、これを電荷輸送剤として感光体に使用したときにはその特性が十分に発揮できず、残留電位が高く、光感度が不十分な感光体しか得られない。
そこで本発明の目的は、上記の技術的な問題を解決し、電子写真感光体の電荷輸送剤として好適に用いることのできる新規なスチルベン誘導体と、その製造方法とを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、従来に比べて感度が向上した電子写真感光体を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、上記一般式(6) で表されるスチルベン誘導体の分子構造について検討を重ねた結果、分子末端のジフェニルアミノ基における一方のフェニル基が2位(オルト位)と他の置換位置との2ヶ所にアルキル基等の置換基を有しており、かつ他方のフェニル基が置換基を有しないときは、従来のスチルベン誘導体(6) に比べてバインダー樹脂との相溶性が優れており、電荷移動度が大きく、かつ電荷発生剤からの電荷の注入性に優れているという全く新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のスチルベン誘導体は、一般式(1) :
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR6は同一または異なって、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基もしくはアルカノイルオキシ基を有していてもよいアルキル基;ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基を有していてもよいアリール基;ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基を有していてもよいアラルキル基、または、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基もしくはアルカノイルオキシ基を有していてもよいアルコキシ基を示す。前記アリール基または前記アラルキル基に置換するカルボキシル基は、エステル化されていてもよい。また、前記アリール基または前記アラルキル基に置換する炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基は、さらに、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基またはアルカノイルオキシ基を有していてもよい。)
で表されることを特徴とする。
上記一般式(1)で表される本発明のスチルベン誘導体は、特開平3−73957号公報に具体的に開示されていない化合物であるとともに、前記公報に具体的に開示された化合物に比べてバインダー樹脂との相溶性が高く、かつ電荷移動度が大きい。従って、かかる本発明のスチルベン誘導体(1)を電子写真感光体における電荷(正孔)輸送剤として使用することにより、従来のものより高感度の電子写真感光体を提供することができる。
【0013】
また、本発明者らは、前記スチルベン誘導体(1) の出発原料である下記トリフェニルアミンのホルミル体(2) についての製造方法を検討した。その結果、フェニル基の2位(オルト位)に置換基を有するトリフェニルアミン誘導体(5) をフィルスマイヤー(Vilsmeier) 法によってホルミル化すれば、3つのフェニル基のうち置換基を有するフェニル基はホルミル化されずに無置換のフェニル基がホルミル化されて、前記ホルミル体(2) を効率よく製造することができ、ひいてはスチルベン誘導体(1) の生産性の向上につながるという新たな事実を見出した。
【0014】
すなわち、本発明のスチルベン誘導体(1) の製造方法は、一般式(2) :
【0015】
【化8】
【0016】
(式中、R1およびR2は、前記と同じである。)
で表されるホルミル化トリフェニルアミン誘導体に、一般式(3):
【0017】
【化9】
【0018】
で表されるトリスリン酸エステル誘導体を反応させることを特徴とする。
かかる本発明の製造方法に使用するホルミル化トリフェニルアミン誘導体(2) は、一般式(4) :
【0019】
【化10】
【0020】
(式中、R1およびR2は、前記と同じである。)
で表されるアニリン誘導体にヨードベンゼンを反応させて、一般式(5):
【0021】
【化11】
【0022】
(式中、R1 およびR2 は前記と同じである。)
で表されるトリフェニルアミン誘導体を得、次いでこの化合物(5) をフィルスマイヤー(Vilsmeier) 法によりホルミル化することによって得られる。
前記トリフェニルアミン誘導体(5) をフィルスマイヤー(Vilsmeier) 法によりホルミル化させると、スチルベン誘導体(1) の原料であるトリフェニルアミンのホルミル体(2) のみが高収率で製造される。その理由は明らかではないが、前記化合物(5) の3つのフェニル基のうちオルト位に置換基R1 を有するフェニル基は、他のフェニル基に比べて窒素原子とフェニル基との結合軸が置換基R1 の影響によってねじれ、窒素原子からの電子供与が乏しくなって当該フェニル基の求核性が低下してしまうため、置換基R1 を有するフェニル基のパラ位はホルミル化されず、その結果、他のフェニル基のパラ位のみがホルミル化されるものと推測される。
【0023】
また、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、前記感光層が、上記一般式(1) で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする。
本発明の電子写真感光体は、上記一般式(1) で表されるスチルベン誘導体を感光層中に含有することから、電荷発生剤で発生した電荷(正孔)を輸送する速度が速く(すなわち電荷移動度が大きく)、帯電および露光時の光感度が優れている。従って、本発明の電子写真感光体によれば、従来のスチルベン誘導体を正孔輸送剤として使用した電子写真感光体よりも高い感度が得られる。
【0024】
前記感光層は、上記一般式(1) で表されるスチルベン誘導体とともに、電荷発生剤と電子輸送剤とを含有する単層型の感光層であるのが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
《スチルベン誘導体》
前記一般式(1) で表されるスチルベン誘導体において、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 に相当するアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の基が挙げられる。中でも、炭素数が1〜4の基であるのが好ましい。
【0026】
また、前記アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基を有するアルキル基としては、例えばヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アミノアルキル基、モノアルキルアミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル基等が挙げられる。
【0027】
とりわけ、本発明のスチルベン誘導体(1) においては、電荷移動度を高めるという観点から、前記アルキル基がアルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等の電子供与性基を有するのが好ましい。
上記ヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル、1−ヒドロキシペンチル、6−ヒドロキシへキシル等の、アルキル部分の炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0028】
上記アルコキシアルキル基としては、例えばメトキシメチル、メトキシエチル、メトキシブチル、エトキシメチル、エトキシへキシル、ブトキシエチル、t−ブトキシへキシル、ヘキシルオキシメチル等の、アルキル部分およびアルコキシ部分の炭素数がいずれも1〜6であるアルコキシアルキル基が挙げられる。
上記アミノアルキル基としては、例えばアミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、アミノヘキシル等の、アルキル部分の炭素数が1〜6であるアミノアルキル基が挙げられる。
【0029】
上記モノアルキルアミノアルキル基としては、例えばメチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ヘキシルアミノメチル、エチルアミノエチル、ヘキシルアミノエチル、メチルアミノプロピル、ブチルアミノプロピル、メチルアミノブチル、エチルアミノブチル、ヘキシルアミノブチル、メチルアミノヘキシル、エチルアミノヘキシル、ブチルアミノヘキシル、ヘキシルアミノヘキシル等の、アルキル部分の炭素数が1〜6であるアルキルアミノアルキル基が挙げられる。
【0030】
上記ジアルキルアミノアルキル基としては、例えばジメチルアミノメチル、ジエチルアミノエチル、ジヘキシルアミノメチル、ジエチルアミノエチル、ジヘキシルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジブチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチル、ジエチルアミノブチル、ジヘキシルアミノブチル、ジメチルアミノヘキシル、ジエチルアミノヘキシル、ジブチルアミノヘキシル、ジヘキシルアミノへキシル等の、アルキル部分の炭素数が1〜6であるジアルキルアミノアルキル基が挙げられる。
【0031】
上記ハロゲン置換アルキル基としては、例えばモノクロロメチル、モノブロモメチル、モノヨードメチル、モノフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、ジヨードメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、トリヨードメチル、トリフルオロメチル、モノクロロエチル、モノブロモエチル、モノヨードエチル、モノフルオロエチル、ジブロモブチル、ジヨードブチル、ジフルオロブチル、クロロへキシル、ブロモへキシル、ヨードへキシル、フルオロへキシル等の、1〜3個のハロゲン原子が置換した炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0032】
上記アルコキシカルボニルアルキル基としては、例えばメトキシカルボニルメチル、メトキシカルボニルエチル、メトキシカルボニルへキシル、エトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルエチル、プロポキシカルボニルメチル、イソプロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、ペンチルオキシカルボニルメチル、ヘキシルカルボニルメチル、ヘキシルカルボニルブチル、ヘキシルカルボニルへキシル等の、アルキル部分およびアルコキシ部分のいずれも炭素数が1〜6であるアルコキシカルボニルアルキル基が挙げられる。
【0033】
上記カルボキシアルキル基としては、例えばカルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシブチル、カルボキシへキシル、1−メチル−2−カルボキシエチル等の、アルキル部分の炭素数が1〜6であるカルボキシアルキル基が挙げられる。
上記アルカノイルオキシアルキル基としては、例えばアセトキシメチル、2−アセトキシエチル、プロピオニルオキシメチル、1−ヘキサノイルオキシ−2−メチルペンチル等の、炭素数2〜6のアルカノイル部分と、炭素数1〜6のアルキル部分とを有するアルカノイルオキシ基が挙げられる。
【0034】
R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 に相当するアリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等の基が挙げられる。
R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 に相当するアラルキル基としては、例えばベンジル、1−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル等の基が挙げられる。中でも、アルキル部分の炭素数が1〜6の基であるのが好ましい。
【0035】
上記アリール基およびアラルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基等のほか、前述と同様の置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。なお、これらの置換基の置換位置については特に限定されない。
【0036】
R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 に相当するアルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシなどの基が挙げられる。中でも、アルキル部分の炭素数が1〜6の基であるのが好ましい。
また、上記アルコキシ基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルカノイルオキシ基等の、前述のアルキル基と同様の置換基が挙げられる。
【0037】
本発明のスチルベン誘導体は、上記一般式(1) で表される化合物の中でもとりわけ、一般式(1'):
【0038】
【化12】
【0039】
(式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 は前記と同じである。)
で表されるように、基R1 〜R6 がいずれもオルト位に置換しているのが、合成の容易さ、あるいはバインダー樹脂との相溶性等の観点から好ましい。
本発明のスチルベン誘導体(1) の具体例(1-1) 〜(1-12)におけるR1 、R2 、R3 、R4 、R5 およびR6 に相当する置換基を下記の表1に示す。表1中、Meはメチル基、Etはエチル基、i−Prはイソプロピル基、s−Buはsec−ブチル基、t−Buはtert−ブチル基、Phはフェニル基、Bzlはベンジル基、MeOはメトキシ基をそれぞれ示す。また、基R2 、R4 およびR6 の欄に示した数字は、当該基の置換位置を示す。従って、例えば「6−Me」はトリフェニルアミン部分におけるフェニル基の6位(オルト位)にメチル基が置換していることを示し、「4−Et」はフェニル基の4位(パラ位)にエチル基が置換していることを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
また、本発明のスチルベン誘導体(1) には、ビニレン基(−CH=CH−)の両側にある中心のベンゼン環とトリフェニルアミン部分との配置の違いによって、いわゆるシス(cis)体と、トランス(trans)体との2種の異性体が存在する。本発明において、スチルベン誘導体(1) のシス体、トランス体については特に限定されないが、通常トランス異性体を使用するのが好ましい。
【0042】
《スチルベン誘導体の製造方法》
本発明のスチルベン誘導体(1) の合成方法を、R1 、R3 およびR5 が同一の基で、かつR2 、R4 およびR6 が同一の基である場合(一般式(1'') で表す)を例にとって説明する。
反応式(I) :
【0043】
【化13】
【0044】
(式中、R1 およびR2 は前記と同じである。)
一般式(1'') で表される本発明のスチルベン誘導体は、上記反応式(I) に示すように、一般式(2) で表されるトリフェニルアミンのホルミル体と一般式(3) で表されるトリスリン酸エステル誘導体とを適当な無水溶媒中、塩基の存在下で反応させることによって合成される。
【0045】
上記合成反応に使用する溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであればよく、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
塩基としては、ナトリウムメトキシド等のナトリウムアルコキシド、水素化ナトリウム等の金属水素化物が挙げられる。
【0046】
トリフェニルアミンのホルミル体(2) の使用量は、トリスリン酸エステル誘導体(3) に対して2.7〜3.75倍モル量、好ましくは2.93〜3.08倍モル量である。反応は、通常−10〜25℃で行われ、3〜12時間程度で終了する。
なお、R1 、R3 およびR5 、あるいはR2 、R4 およびR6 が異なる基である場合には、トリスリン酸エステル誘導体(3) のリン酸エステル部分に適宜保護基をつけて反応を行えばよい。
【0047】
トリフェニルアミンのホルミル体(2) は、下記反応式(II)に示すようにして合成される。
反応式(II):
【0048】
【化14】
【0049】
(式中、R1 およびR2 は前記と同じである。)
この反応は、アニリン誘導体(4) とヨードベンゼン(90)とをニトロベンゼン中に加え、無水炭酸カリウム、銅等の触媒とともに反応させることによってトリフェニルアミン誘導体(5) を得、次いでこのトリフェニルアミン誘導体(5) をフィルスマイヤー法によりホルミル化することにより、上記反応式(I) の出発原料であるトリフェニルアミンのホルミル体(2) を得るものである。
【0050】
前記アニリン誘導体(4) とヨードベンゼン(90)ととの使用割合は、モル比で1:1〜1:3、好ましくは1:1.8〜1:2.2である。反応は、通常160〜220℃で行われ、4〜30時間程度で終了する。
前記フィルスマイヤー法に使用する試薬(Vilsmeier 試薬)は、(i) オキシ塩化リン、ホスゲン、塩化オキサリル、塩化チオニル、トリフェニルホスフィン−臭素、ヘキサクロロトリホスファザトリエン等のハロゲン化剤と、(ii)N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアニリド(MFA)、N−ホルミルモルホリン、N,N−ジイソプロピルホルムアミド等との組合せにより調製される。特に本発明では、オキシ塩化リンと、溶媒としても使用できるDMFとの組み合わせが好適に用いられる。
【0051】
前記Vilsmeier 試薬の調製において、前記(i) と(ii)との使用割合は、通常モル比で1:1〜1:2、好ましくは1:1〜1:1.2である。
上記 Vilsmeier試薬の使用量は、トリフェニルアミン誘導体(5) に対して0.9〜2倍モル量、好ましくは1〜1.1倍モル量である。前記化合物(5) のホルミル化は、通常40〜80℃で行われ、2〜5時間程度で終了する。
【0052】
トリスリン酸エステル誘導体(3) は、下記反応式(III) に示すようにして合成される。
反応式(III) :
【0053】
【化15】
【0054】
この反応は、1,3,5−トリス(クロロメチル)−ベンゼン(91)に亜リン酸トリエステルを無溶媒または適当な溶媒中にて反応させることにより、上記反応式(I) の出発原料であるトリスリン酸エステル誘導体(3) を得るものである。その際、第三級アミンを添加すると、反応系からハロゲン化アルキルが除去され、反応が促進する。
【0055】
上記反応に使用する溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであればよく、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
上記第三級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等が挙げられる。
【0056】
1,3,5−トリス(クロロメチル)−ベンゼン(91)に対する亜リン酸トリエステルの使用量は、少なくとも3倍モル量、好ましくは3〜3.6倍モル量である。反応は、通常80〜150℃で行われ、1〜4時間程度で終了する。
上記一般式(1) で表されるスチルベン誘導体は、前述のように電荷移動度が大きく、すなわち高い正孔輸送能を有することから、電子写真感光体における正孔輸送剤として好適に使用されるほか、太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等での種々の分野での利用が可能である。
【0057】
《電子写真感光体》
本発明の電子写真感光体は、前記一般式(1) で表されるスチルベン誘導体を含有した感光層を、導電性基体上に設けたものである。感光体には、前述のように単層型と積層型とがあるが、本発明はこのいずれにも適用可能である。
単層型感光体は、導電性基体上に単一の感光層を設けたものである。この感光層は、一般式(1) で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)、電荷発生剤、結着樹脂、さらに必要に応じて電子輸送剤を適当な溶媒に溶解または分散させ、得られた塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥させることで形成される。かかる単層型感光体は、単独の構成で正負いずれの帯電型にも適用可能であるとともに、層構成が簡単で生産性に優れている。
【0058】
本発明の単層型電子写真感光体は、前述の特開平3−73957号公報において具体的に開示されているスチルベン誘導体を正孔輸送剤として使用して得られる単層型電子写真感光体に比べて、感光体の残留電位が大きく低下しており、感度が向上している。また、本発明の単層型電子写真感光体の感光層に、さらに電子輸送剤を含有させたときは、電荷発生剤と正孔輸送剤との電子の授受が効率よく行われるようになり、感光体の感度がより一層向上する。
【0059】
一方、積層型感光体は、まず導電性基体上に、蒸着または塗布等の手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、次いでこの電荷発生層上に、一般式(1) で表されるスチルベン誘導体(正孔輸送剤)の少なくとも1種と結着樹脂とを含む塗布液を塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することによって作製される。また、上記とは逆に、導電性基体上に電荷輸送層を形成し、その上に電荷発生層を形成してもよい。但し、電荷発生層は電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成するのが好ましい。
【0060】
積層型感光体は、上記電荷発生層および電荷輸送層の形成順序と、電荷輸送層に使用する電荷輸送剤の種類によって、正負いずれの帯電型となるかが選択される。例えば、上記のように、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した場合において、電荷輸送層における電荷輸送剤として、本発明のスチルベン誘導体(1) のような正孔輸送剤を使用した場合には、感光体は負帯電型となる。この場合、電荷発生層には電子輸送剤を含有させてもよい。
【0061】
本発明の積層型電子写真感光体は、前述の特開平3−73957号公報において具体的に開示されているスチルベン誘導体を正孔輸送剤として使用して得られる積層型電子写真感光体に比べて、感光体の残留電位が大きく低下しており、感度が向上している。
前述のように、本発明の電子写真感光体は、単層型および積層型のいずれにも適用できるが、特に正負いずれの帯電型にも使用できること、構造が簡単で製造が容易であること、層を形成する際の被膜欠陥を抑制できること、層間の界面が少なく、光学的特性を向上できること等の観点から、単層型が好ましい。
【0062】
次に、本発明の電子写真感光体に用いられる種々の材料について説明する。
《電荷発生剤》
本発明に用いられる電荷発生剤としては、例えば下記の一般式(CG1) 〜(CG12)で表される化合物があげられる。
(CG1) 無金属フタロシアニン
【0063】
【化16】
【0064】
(CG2) オキソチタニルフタロシアニン
【0065】
【化17】
【0066】
(CG3) ペリレン顔料
【0067】
【化18】
【0068】
(式中、Rg1およびRg2は同一または異なって、炭素数が18以下の置換または未置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカノイル基またはアラルキル基を示す。)
(CG4) ビスアゾ顔料
【0069】
【化19】
【0070】
〔式中、Cp1 およびCp2 は同一または異なってカップラー残基を示し、Qは次式:
【0071】
【化20】
【0072】
(式中、Rg3は水素原子、アルキル基、アリール基または複素環式基を示し、アルキル基、アリール基または複素環式基は置換基を有していてもよい。ωは0または1を示す。)
【0073】
【化21】
【0074】
(式中、Rg4およびRg5は同一または異なって、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基を示す。)
【0075】
【化22】
【0076】
(式中、Rg6は水素原子、エチル基、クロロエチル基またはヒドロキシエチル基を示す。)
【0077】
【化23】
【0078】
または
【0079】
【化24】
【0080】
(式中、Rg7、Rg8およびRg9は同一または異なって、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基を示す。)
で表される基を示す。〕
(CG5) ジチオケトピロロピロール顔料
【0081】
【化25】
【0082】
(式中、Rg10 およびRg11 は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を示し、Rg12 およびRg13 は同一または異なって、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
(CG6) 無金属ナフタロシアニン顔料
【0083】
【化26】
【0084】
(式中、Rg14 、Rg15 、Rg16 およびRg17 は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。)
(CG7) 金属ナフタロシアニン顔料
【0085】
【化27】
【0086】
(式中、Rg18 、Rg19 、Rg20 およびRg21 は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を示し、MはTiまたはVを示す。)
(CG8) スクアライン顔料
【0087】
【化28】
【0088】
(式中、Rg22 およびRg23 は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。)
(CG9) トリスアゾ顔料
【0089】
【化29】
【0090】
(式中、Cp3 、Cp4 およびCp5 は同一または異なって、カップラー残基を示す。)
(CG10)インジゴ顔料
【0091】
【化30】
【0092】
(式中、Rg24 およびRg25 は同一または異なって、水素原子、アルキル基またはアリール基を示し、Zは酸素原子または硫黄原子を示す。)
(CG11)アズレニウム顔料
【0093】
【化31】
【0094】
(式中、Rg26 およびRg27 は同一または異なって、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
(CG12)シアニン顔料
【0095】
【化32】
【0096】
(式中、Rg28 およびRg29 は同一または異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を示し、Rg30 およびRg31 は同一または異なって、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
上記例示の電荷発生剤において、アルキル基としては、前述と同様な基のほか、n−ペンチル、n−ヘキシル等の炭素数5〜6の基が含まれる。炭素数18以下の置換または未置換のアルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基に加えて、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、ペンタデシル、オクタデシル等を含む基である。
【0097】
シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3〜8の基があげられる。
アルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ等の炭素数が1〜6の基があげられる。
【0098】
アリール基としては、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等の基があげられる。アルカノイル基としては、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル等があげられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられる。
複素環式基としては、例えばチエニル、フリル、ピロリル、ピロリジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、2H−イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラニル、ピリジル、ピペリジル、ピペリジノ、3−モルホリニル、モルホリノ、チアゾリル等があげられる。また、芳香族環と縮合した複素環式基であってもよい。
【0099】
上記基に置換してもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、アミノ基、水酸基、エステル化されてもよいカルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アリール基を有することのある炭素数2〜6のアルケニル基等があげられる。
Cp1 、Cp2 、Cp3 、Cp4 およびCp5 で表されるカップラー残基としては、例えば下記一般式(Cp-1)〜(Cp-11) に示す基があげられる。
【0100】
【化33】
【0101】
【化34】
【0102】
各式中、Rg32 は、カルバモイル基、スルファモイル基、アロファノイル基、オキサモイル基、アントラニロイル基、カルバゾイル基、グリシル基、ヒダントイル基、フタルアモイル基またはスクシンアモイル基を示す。これらの基は、ハロゲン原子、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、カルボニル基、カルボキシル基等の置換基を有していてもよい。
【0103】
Rg33 は、ベンゼン環と縮合して芳香族環、多環式炭化水素または複素環を形成するのに必要な原子団を示し、これらの環は前記と同様な置換基を有してもよい。
Rg34 は、酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を示す。
Rg35 は、2価の鎖式炭化水素基または芳香族炭化水素基を示し、これらの基は前記と同様な置換基を有してもよい。
【0104】
Rg36 は、アルキル基、アラルキル基、アリール基または複素環式基を表し、これらの基は前記と同様な置換基を有してもよい。
Rg37 は、2価の鎖式炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基とともに、または上記基(Cp-1)〜(Cp-11) 中の2つの窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な原子団を表し、これらの環は前記と同様な置換基を有してもよい。
【0105】
Rg38 は、水素原子、アルキル基、アミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アロファノイル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリール基またはシアノ基を示し、水素原子以外の基は前記と同様な置換基を有していてもよい。
Rg39 は、アルキル基またはアリール基を示し、これらの基は前記と同様な置換基を有してもよい。
【0106】
アルケニル基としては、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチルアリル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル等の炭素数が2〜6のアルケニル基があげられる。
前記Rg33 において、ベンゼン環と縮合して芳香族環を形成するのに必要な原子団としては、例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等の炭素数1〜4のアルキレン基があげられる。
【0107】
上記Rg33 とベンゼン環との縮合により形成される芳香族環としては、例えばナフタリン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環等があげられる。
またRg33 において、ベンゼン環と縮合して多環式炭化水素を形成するのに必要な原子団としては、例えば上記炭素数1〜4のアルキレン基や、あるいはカルバゾール環、ベンゾカルバゾール環、ジベンゾフラン環等があげられる。
【0108】
またRg33 において、ベンゼン環と縮合して複素環を形成するのに必要な原子団としては、例えばベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、1H−インドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−インダドリル、ベンゾイミダゾリル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾニリル、キノキサリニル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、キサンテニル、アクリジニル、フェナントリジニル、フェナジニル、フェノキサジニル、チアントレニル等があげられる。
【0109】
上記Rg33 とベンゼン環との縮合により形成される芳香族性複素環式基としては、例えばチエニル、フリル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、チアゾリルがあげられる。また、さらに他の芳香族環と縮合した複素環式基(例えばベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリル等)であってもよい。
【0110】
前記Rg35 、Rg37 において、2価の鎖式炭化水素基としては、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等があげられ、2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン、ナフチレン、フェナントリレン等があげられる。
前記Rg36 において、複素環式基としては、ピリジル、ピラジル、チエニル、ピラニル、インドリル等があげられる。
【0111】
前記Rg37 において、2つの窒素原子とともに複素環を形成するのに必要な原子団としては、例えばフェニレン、ナフチレン、フェナントリレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等があげられる。
上記Rg37 と、2つの窒素原子とにより形成される芳香族性複素環式基としては、例えばベンゾイミダゾール、ベンゾ[f]ベンゾイミダゾール、ジベンゾ[e,g]ベンゾイミダゾール、ベンゾピリミジン等があげられる。これらの基は前記と同様な置換基を有してもよい。
【0112】
前記Rg38 において、アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の基があげられる。
本発明においては、上記例示の電荷発生剤のほかに、例えばセレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末や、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等の従来公知の電荷発生剤を用いることができる。
【0113】
また、上記例示の電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
上記例示の電荷発生剤のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば前記一般式(CG1) で表される無金属フタロシアニンや一般式(CG2) で表されるオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものを使用できる。
【0114】
一方、ハロゲンランプ等の白色の光源を使用した静電式複写機等のアナログ光学系の画像形成装置には、可視領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば前記一般式(CG3) で表されるペリレン顔料や一般式(CG4) で表されるビスアゾ顔料等が好適に用いられる。
《正孔輸送剤》
本発明の電子写真感光体においては、正孔輸送剤である本発明のスチルベン誘導体(1) とともに、従来公知の他の正孔輸送剤を感光層に含有させてもよい。
【0115】
かかる正孔輸送剤としては、高い正孔輸送能を有する種々の化合物、例えば下記の一般式(HT1) 〜(HT13)で表される化合物等があげられる。
【0116】
【化35】
【0117】
(式中、Rh1、Rh2、Rh3、Rh4、Rh5およびRh6は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。aおよびbは同一または異なって0〜4の整数を示し、c、d、eおよびfは同一または異なって0〜5の整数を示す。但し、a、b、c、d、eまたはfが2以上のとき、各Rh1、Rh2、Rh3、Rh4、Rh5およびRh6は異なっていてもよい。)
【0118】
【化36】
【0119】
(式中、Rh7、Rh8、Rh9、Rh10 およびRh11 は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。g、h、iおよびjは同一または異なって0〜5の整数を示し、kは0〜4の整数を示す。但し、g、h、i、jまたはkが2以上のとき、各Rh7、Rh8、Rh9、Rh10 およびRh11 は異なっていてもよい。)
【0120】
【化37】
【0121】
(式中、Rh12 、Rh13 、Rh14 およびRh15 は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。Rh16 はハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。m、n、oおよびpは同一または異なって、0〜5の整数を示す。qは0〜6の整数を示す。但し、m、n、o、pまたはqが2以上のとき、各Rh12 、Rh13 、Rh14 、Rh15 およびRh16 は異なっていてもよい。)
【0122】
【化38】
【0123】
(式中、Rh17 、Rh18 、Rh19 およびRh20 は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。r、s、tおよびuは同一または異なって、0〜5の整数を示す。但し、r、s、tまたはuが2以上のとき、各Rh17 、Rh18 、Rh19 およびRh20 は異なっていてもよい。)
【0124】
【化39】
【0125】
(式中、Rh21 およびRh22 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。Rh23 、Rh24 、Rh25 およびRh26 は同一または異なって、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。)
【0126】
【化40】
【0127】
(式中、Rh27 、Rh28 およびRh29 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
【0128】
【化41】
【0129】
(式中、Rh30 、Rh31 、Rh32 およびRh33 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
【0130】
【化42】
【0131】
(式中、Rh34 、Rh35 、Rh36 、Rh37 およびRh38 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
【0132】
【化43】
【0133】
(式中、Rh39 は水素原子またはアルキル基を示し、Rh40 、Rh41 およびRh42 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
【0134】
【化44】
【0135】
(式中、Rh43 、Rh44 およびRh45 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
【0136】
【化45】
【0137】
(式中、Rh46 およびRh47 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアルコキシ基を示す。Rh48 およびRh49 は同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。)
【0138】
【化46】
【0139】
(式中、Rh50 、Rh51 、Rh52 、Rh53 、Rh54 およびRh55 は同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基または置換基を有してもよいアリール基を示す。αは1〜10の整数を示し、v、w、x、y、zおよびβは同一または異なって0〜2の整数を示す。但し、v、w、x、y、zまたはβが2のとき、各Rh50 、Rh51 、Rh52 、Rh53 、Rh54 およびRh55 は異なっていてもよい。)
【0140】
【化47】
【0141】
(式中、Rh56 、Rh57 、Rh58 およびRh59 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を示し、Φは次式:
【0142】
【化48】
【0143】
で表される基(Φ−1)、(Φ−2)または(Φ−3)を示す。)
上記例示の正孔輸送剤において、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基およびハロゲン原子としては、前述と同様な基があげられる。
上記基に置換してもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、アミノ基、水酸基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アリール基を有することのある炭素数2〜6のアルケニル基等があげられる。置換基の置換位置については特に限定されない。
【0144】
また本発明においては、上記例示の正孔輸送剤(HT1) 〜(HT13)とともに、またはこれに代えて、従来公知の正孔輸送物質、すなわち2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等を用いることもできる。
【0145】
本発明において、正孔輸送剤は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリビニルカルバゾール等の成膜性を有する正孔輸送剤を用いる場合には、結着樹脂は必ずしも必要でない。
《電子輸送剤》
本発明に用いられる電子輸送剤としては、高い電子輸送能を有する種々の化合物、例えば下記の一般式(ET1) 〜(ET17)で表される化合物等があげられる。
【0146】
【化49】
【0147】
(式中、Re1、Re2、Re3、Re4およびRe5は同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいフェノキシ基またはハロゲン原子を示す。)
【0148】
【化50】
【0149】
(式中、Re6はアルキル基、Re7は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を示す。γは0〜5の整数を示す。但し、γが2以上のとき、各Re7は互いに異なっていてもよい。)
【0150】
【化51】
【0151】
(式中、Re8およびRe9は同一または異なって、アルキル基を示す。δは1〜4の整数を示し、εは0〜4の整数を示す。但し、δおよびεが2以上のとき、各Re8およびRe9は異なっていてもよい。)
【0152】
【化52】
【0153】
(式中、Re10 はアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン原子を示す。ζは0〜4、ηは0〜5の整数を示す。但し、ηが2以上のとき、各Re10 は異なっていてもよい。)
【0154】
【化53】
【0155】
(式中、Re11 はアルキル基を示し、σは1〜4の整数を示す。但し、σが2以上のとき、各Re11 は異なっていてもよい。)
【0156】
【化54】
【0157】
(式中、Re12 およびRe13 は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキルオキシカルボニル基、アルコキシ基、水酸基、ニトロ基またはシアノ基を示す。Xは酸素原子、=N−CN基または=C(CN)2 基を示す。)
【0158】
【化55】
【0159】
(式中、Re14 は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基または置換基を有してもよいフェニル基を示し、Re15 はハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルコキシカルボニル基、N−アルキルカルバモイル基、シアノ基またはニトロ基を示す。λは0〜3の整数を示す。但し、λが2以上のとき、各Re15 は互いに異なっていてもよい。)
【0160】
【化56】
【0161】
(式中、θは1〜2の整数を示す。)
【0162】
【化57】
【0163】
(式中、Re16 およびRe17 は同一または異なって、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基を示す。νおよびξは0〜3の整数を示す。但し、νまたはξが2以上のとき、各Re16 およびRe17 は互いに異なっていてもよい。)
【0164】
【化58】
【0165】
(式中、Re18 およびRe19 は同一または異なって、フェニル基、縮合多環式基または複素環式基を示し、これらの基は置換基を有していてもよい。)
【0166】
【化59】
【0167】
(式中、Re20 はアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アルキル基またはフェニル基を示し、πは1〜2の整数を示す。但し、πが2のとき、各Re20 は互いに異なっていてもよい。)
【0168】
【化60】
【0169】
(式中、Re21 は水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアラルキル基を示す。)
【0170】
【化61】
【0171】
(式中、Re22 はハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、アルコキシカルボニル基、N−アルキルカルバモイル基、シアノ基またはニトロ基を示す。μは0〜3の整数を示す。但し、μが2以上のとき、各Re22 は互いに異なっていてもよい。)
【0172】
【化62】
【0173】
(式中、Re23 は置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示し、Re24 は置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または基:
−O−Re24a
を示す。上記基中のRe24aは、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアリール基を示す。)
【0174】
【化63】
【0175】
(式中、Re25 、Re26 、Re27 、Re28 、Re29 、Re30 およびRe31 は同一または異なってアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を示す。χおよびφは同一または異なって0〜4の整数を示す。)
【0176】
【化64】
【0177】
(式中、Re32 およびRe33 は同一または異なってアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基を示す。τおよびψは同一または異なって0〜4の整数を示す。)
【0178】
【化65】
【0179】
(式中、Re34 、Re35 、Re36 およびRe37 は同一または異なって水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基またはアミノ基を示す。但し、Re34 、Re35 、Re36 およびRe37 のうち少なくとも2つは、水素原子でない同一の基である。)
上記例示の電子輸送剤において、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、複素環式基およびハロゲン原子としては、前述と同様な基があげられる。
【0180】
ハロゲン化アルキル基におけるアルキル基およびハロゲン原子としては、前述と同様な基があげられる。
縮合多環式基としては、例えばナフチル、フェナントリル、アントリル等があげられる。アラルキルオキシカルボニル基としては、アラルキル部分が前述した各種のアラルキル基であるものがあげられる。N−アルキルカルバモイル基としては、アルキル部分が前述した各種のアルキル基であるものがあげられる。
【0181】
ジアルキルアミノ基としては、アルキル部分が前述した各種のアルキル基であるものがあげられる。なおアミノに置換する2つのアルキルは同一でも、互いに異なっていてもよい。
上記各基に置換してもよい置換基としては、例えばハロゲン原子、アミノ基、水酸基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アリール基を有することのある炭素数2〜6のアルケニル基等があげられる。置換基の置換位置については特に限定されない。
【0182】
また本発明においては、上記例示のほかに従来公知の電子輸送物質、すなわち例えばベンゾキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等を用いることができる。
【0183】
本発明において、電子輸送剤は1種のみを用いるほか、2種以上を混合して用いてもよい。
《結着樹脂》
上記各成分を分散させるための結着樹脂は、従来より感光層に使用されている種々の樹脂を使用することができる。例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂;エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化型樹脂等の樹脂が使用可能である。
【0184】
感光層には、上記各成分のほかに、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、従来公知の種々の添加剤、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー等を配合することができる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0185】
次に、本発明の電子写真感光体における各種材料の配合割合等について説明する。
本発明の電子写真感光体が単層型の感光体である場合、電荷発生剤は、結着樹脂100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で配合すればよい。本発明のスチルベン誘導体(1) (正孔輸送剤)は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、好ましくは30〜200重量部の割合で配合すればよい。電子輸送剤を含有させる場合、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部とするのが適当である。また、単層型感光体における感光層の厚さは5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
【0186】
本発明の電子写真感光体が積層型の感光体である場合、電荷発生層を構成する電荷発生剤と結着樹脂とは、種々の割合で使用することができるが、結着樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で配合するのが適当である。電荷発生層に正孔輸送剤を含有させる場合は、正孔輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して10〜500重量部、好ましくは50〜200重量部とするのが適当である。
【0187】
電荷輸送層を構成する正孔輸送剤と結着樹脂とは、電荷の輸送を阻害しない範囲および結晶化しない範囲で種々の割合で使用することができるが、光照射により電荷発生層で生じた電荷が容易に輸送できるように、結着樹脂100重量部に対して、本発明のスチルベン誘導体(1) (正孔輸送剤)を10〜500重量部、好ましくは25〜200樹脂の割合で配合するのが適当である。電荷輸送層に電子輸送剤を含有させる場合は、電子輸送剤の割合を結着樹脂100重量部に対して5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部とするのが適当である。
【0188】
積層型感光体における感光層の厚さは、電荷発生層が0.01〜5μm程度、好ましくは0.1〜3μm程度であり、電荷輸送層が2〜100μm、好ましくは5〜50μm程度である。
単層型感光体においては、導電性基体と感光層との間に、また積層型感光体においては、導電性基体と電荷発生層との間、導電性基体と電荷輸送層との間または電荷発生層と電荷輸送層との間に、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。また、感光体の表面には、保護層が形成されていてもよい。
【0189】
上記感光層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができ、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等の金属単体や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料、ヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で被覆されたガラス等があげられる。
【0190】
導電性基体の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状等のいずれであってもよく、基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して十分な機械的強度を有するものが好ましい。前記感光層を塗布の方法により形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂等を適当な溶剤とともに、公知の方法、例えばロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いて分散混合して分散液を調整し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
【0191】
上記分散液を作るための溶剤としては、種々の有機溶剤が使用可能であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられる。これらの溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0192】
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性を良くするために界面活性剤、レベリング剤等を使用してもよい。
【0193】
【実施例】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明を説明する。
《スチルベン誘導体の合成》
参考例1(1,3,5−トリス(クロロメチル)−ベンゼンの合成)
標記化合物の合成を下記の反応式に沿って合成した。
【0194】
【化66】
【0195】
すなわち、まず1,3,5−ベンゼントリカルボン酸(92)と、当該化合物(92)に対して4.5倍モル量のn−ブタノールとをトルエン(溶媒)に加え、8時間還流した後、メタノールで再結晶を行って、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ブチルエステル(93)を得た(収率83%)。
次いで、還流管を備えたフラスコの内部をアルゴン雰囲気とし、水素化アルミニウムリチウム(還元剤、LAH)のテトラヒドロフラン(THF)溶液を入れ、さらにこの溶液を緩やかに還流させつつ、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ブチルエステル(93)のTHF溶液を滴下した。室温で6時間撹拌した後、生成物を氷浴に入れて酢酸エチルで抽出し、水洗および酢酸エチルの留去を行うことにより、1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)−ベンゼン(94)を得た(収率92%)。
【0196】
還流管を備えたフラスコに、1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)−ベンゼン(94)、塩化チオニルおよびピリジンを加え、8時間還流した後、溶媒を留去し、メタノールから再結晶して、1,3,5−トリス(クロロメチル)−ベンゼン(91)を得た(収率82%)。
参考例2(トリスリン酸エステル誘導体(3) の合成)
上記参考例1で得られた1,3,5−トリス(クロロメチル)−ベンゼン(91)に対して亜リン酸トリエステル3.6倍モル量を加え、8時間還流した後、溶媒を留去し、ヘキサンから再結晶して、前記式(3) で表されるトリリン酸エステル誘導体を得た(収率95%)。
【0197】
参考例3(2,6−ジメチルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリン15g(124mmol)、ヨードベンゼン50g(245mmol)、無水炭酸カリウム17g(123mmol)および粉末銅1g(16mmol)をニトロベンゼン150ミリリットル中に加え、還流下、約24時間反応させた。反応後、無機塩を除去し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)で精製して、標記化合物28.8gを得た(収率85%)。
【0198】
参考例4(2−エチル−6−メチルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリンに代えて6−エチル−o−トルイジン(2−エチル−6−メチルアニリン)を同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物28.1gを得た(収率79%)。
参考例5(2,6−ジエチルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリンに代えて2,6−ジエチルアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物31.0gを得た(収率83%)。
【0199】
参考例6(2−イソプロピル−6−メチルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリンに代えて2−イソプロピル−6−メチルアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
参考例7(2−エチル−6−イソプロピルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリンに代えて2−エチル−6−イソプロピルアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0200】
参考例8〔2−(tert−ブチル)−6−メチルトリフェニルアミンの合成〕
2,6−ジメチルアニリンに代えて2−(tert−ブチル)−6−メチルアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0201】
参考例9〔2−(sec−ブチル)−6−エチルトリフェニルアミンの合成〕2,6−ジメチルアニリンに代えて2−(sec−ブチル)−6−エチルアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
参考例10(2−メチル−4−フェニルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリンに代えて2−メチル−4−フェニルアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0202】
参考例11(2−メチル−4−ベンジルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリンに代えて2−メチル−4−ベンジルアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
参考例12(2−メチル−5−メトキシトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリンに代えて2−メチル−5−メトキシアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0203】
参考例13(2,4−ジメチルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルアニリンに代えて2,4−ジメチルアニリンを同モル量用いた以外は参考例1と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
参考例14(2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)2,6−ジメチルトリフェニルアミン28g(102mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)300ミリリットルに溶解し、オキシ塩化リン酸16g(104mmol)を加えて40℃で1時間反応させた。反応後、水300ミリリットル中に加え、酢酸エチルで抽出した。次いで、有機層を水洗し、乾燥して溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン混合溶媒)で精製して、標記化合物26.8gを得た。(収率87%)
参考例15(2−エチル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2−エチル−6−メチルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物28.2gを得た(収率87%)。
【0204】
参考例16(2,6−ジエチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2,6−ジエチルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物27.1gを得た(収率80%)。
参考例17(2−イソプロピル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2−イソプロピル−6−メチルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0205】
参考例18(2−エチル−6−イソプロピル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2−エチル−6−イソプロピルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0206】
参考例19〔2−(tert−ブチル)−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成〕
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2−(tert−ブチル)−6−メチルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0207】
参考例20〔2−(sec−ブチル)−6−エチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成〕
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2−(sec−ブチル)−6−エチルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0208】
参考例21(2−メチル−4−フェニル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2−メチル−4−フェニルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0209】
参考例22(2−メチル−4−ベンジル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2−メチル−4−ベンジルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0210】
参考例23(2−メチル−5−メトキシ−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2−メチル−5−メトキシトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
【0211】
参考例24(2,4−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンの合成)
2,6−ジメチルトリフェニルアミンに代えて2,4−ジメチルトリフェニルアミンを同モル量用いた以外は参考例14と同様に反応を行い、標記化合物を得た。
合成例1(スチルベン誘導体(1-1) の合成)
参考例2で得られたトリスリン酸エステル(3) 8.2g(15.6mmol)と、脱気乾燥した水素化ナトリウム1.1g(46.8mmol)とをTHF200ml中に加え、氷冷した。これに、THF50mlに溶解させた2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミン95g(31.5mmol)を滴下し、室温で約3時間反応させた。反応後、約2%の希塩酸水溶液400mlに加え、析出した結晶をろ過して水洗した。結晶を乾燥後、シリカゲルクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム/ヘキサン)で精製して、前記表1において化合物番号1−1で示したスチルベン誘導体10.6gを得た(収率70%)。
【0212】
合成例2(スチルベン誘導体(1-2) の合成)
2,6−ジメチル4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2−エチル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−2で示したスチルベン誘導体11.8gを得た(収率75%)。
【0213】
融点:135〜137℃
上記スチルベン誘導体(1-2) の赤外吸収スペクトルを図1に示す。
合成例3(スチルベン誘導体(1-3) の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2,6−ジエチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−3で示したスチルベン誘導体11.4gを得た(収率69%)。
【0214】
合成例4(スチルベン誘導体(1-4) の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2−イソプロピル−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−4で示したスチルベン誘導体を得た。
【0215】
合成例5(スチルベン誘導体(1-5) の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2−エチル−6−イソプロピル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−5で示したスチルベン誘導体を得た。
【0216】
合成例6(スチルベン誘導体(1-6) の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2−(tert−ブチル)−6−メチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−6で示したスチルベン誘導体を得た。
【0217】
合成例7(スチルベン誘導体(1-7) の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2−(sec−ブチル)−6−エチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−7で示したスチルベン誘導体を得た。
【0218】
合成例8(スチルベン誘導体(1-8) の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2−メチル−4−フェニル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−8で示したスチルベン誘導体を得た。
【0219】
合成例9(スチルベン誘導体(1-9) の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2−メチル−4−ベンジル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−9で示したスチルベン誘導体を得た。
【0220】
合成例10(スチルベン誘導体(1-10)の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2−メチル−5−メトキシ−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−10で示したスチルベン誘導体を得た。
【0221】
合成例11(スチルベン誘導体(1-11)の合成)
2,6−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンに代えて、2,4−ジメチル−4’−ホルミルトリフェニルアミンを同モル量用いたほかは、合成例1と同様にして反応を行い、前記表1において化合物番号1−11で示したスチルベン誘導体を得た。
【0222】
《結着樹脂との相溶性についての評価》
合成例1〜3で得られたスチルベン誘導体について、結着樹脂との相溶性を下記の方法にて評価した。
(試料の調製)
結着樹脂(ポリカーボネート)100重量部と溶媒(テトラヒドロフラン)600重量部との混合液に、合成例1〜3で得られたスチルベン誘導体をそれぞれ1〜100重量部配合し、均一な塗布液が得られるスチルベン誘導体の最大添加量(重量部)を求めた。なお、塗布液の調製は、上記成分をロールミルにて50時間混合分散させることによって行った。
【0223】
次に、上記各スチルベン誘導体の最大添加量(重量部)を下記式に代入し、結着樹脂に対するスチルベン誘導体の配合率(重量%)を求め、結着樹脂への溶解性を評価した。なお、この配合率が高いほど、結着樹脂への溶解性に優れていることを示す。
【0224】
【数1】
【0225】
対照化合物として、下記式(6-1) 〜(6-6) で表されるスチルベン誘導体を用い、上記と同様にして結着樹脂への溶解性を評価した。
【0226】
【化67】
【0227】
【化68】
【0228】
【化69】
【0229】
なお、上記式(6-1) 〜(6-6) で表されるスチルベン誘導体はいずれも特開平3−73957号公報に開示の化合物に対応するものである。式(6-1) 〜(6-6) に対応する前記公報での化合物番号は、順に、No.4、No.2、No.3、No.19、No.22、No.29である。
これらの結果を表2に示す。
【0230】
【表2】
【0231】
表2より明らかなように、合成例1〜3で得られたスチルベン誘導体(1-1) 〜(1-3) は、従来のスチルベン誘導体(6-1) 〜(6-6) に比べて、結着樹脂に対する溶解性が優れている。
《電子写真感光体の製造》
(デジタル光源用単層型感光体)
実施例1
電荷発生剤にはX型無金属フタロシアニン(CG1-1) を用いた。正孔輸送剤には、合成例1で得られたスチルベン誘導体(1-1) を用いた。
【0232】
上記電荷発生剤5重量部、正孔輸送剤100重量部および結着樹脂(ポリカーボネート)100重量部を溶媒(テトラヒドロフラン)800重量部とともにボールミルにて50時間混合分散させて、単層型感光層用の塗布液を作成した。次いで、この塗布液を導電性基材(アルミニウム素管)上にディップコート法にて塗布し、100℃で30分間熱風乾燥して、膜厚25μmの単層型感光層を有するデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
【0233】
実施例2
正孔輸送剤として、合成例2で得られたスチルベン誘導体(1-2) を用いたほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
実施例3
正孔輸送剤として、合成例3で得られたスチルベン誘導体(1-3) を用いたほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
【0234】
実施例4
単層型感光層用の塗布液中に、さらに電子輸送剤として、式(ET17-1):
【0235】
【化70】
【0236】
で表されるジフェノキノン誘導体を30重量部配合したほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
実施例5
正孔輸送剤として、合成例2で得られたスチルベン誘導体(1-2) を用いたほかは、実施例4と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
【0237】
実施例6
正孔輸送剤として、合成例3で得られたスチルベン誘導体(1-3) を用いたほかは、実施例4と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
実施例7〜9
電子輸送剤として、ジフェノキノン誘導体(ET17-1)に代えて、式(ET14-1):
【0238】
【化71】
【0239】
で表されるナフトキノン誘導体を用いたほかは、実施例4〜6と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
実施例10〜12
電子輸送剤として、ジフェノキノン誘導体(ET17-1)に代えて、式(ET14-2):
【0240】
【化72】
【0241】
で表されるナフトキノン誘導体を用いたほかは、実施例4〜6と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
比較例1
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、前記式(6-1) で表されるスチルベン誘導体を用いたほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
【0242】
比較例2
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、前記式(6-2) で表されるスチルベン誘導体を用いたほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
比較例3
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、前記式(6-3) で表されるスチルベン誘導体を用いたほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
【0243】
比較例4
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、前記式(6-4) で表されるスチルベン誘導体を用いたほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
比較例5
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、前記式(6-5) で表されるスチルベン誘導体を用いたほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
【0244】
比較例6
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、前記式(6-6) で表されるスチルベン誘導体を用いたほかは、実施例1と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
上記実施例1〜12および比較例1〜6で得られた感光体について下記の電気特性試験(I) を行い、各感光体の電気特性を評価した。
【0245】
電気特性試験(I)
ジェンテック(GENTEC)社製のドラム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加え、その表面を+700±20Vに帯電させた後、表面電位VO (V)を測定した。次いで、露光光源であるハロゲンランプの白色光からバンドパスフィルタを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅20nm、光強度8μJ/cm2 )を感光体の表面に照射(照射時間1.5秒)して、上記表面電位VO が1/2になるのに要した時間を測定し、半減露光量E1/2 (μJ/cm2 )を算出した。また、露光開始から0.5秒経過した時点での表面電位を残留電位Vr (V)として測定した。
【0246】
上記各実施例および比較例で使用した電荷発生剤、正孔輸送剤および電子輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表3に示す。なお、以下の表において、電荷発生剤、正孔輸送剤および電子輸送剤の種類はそれぞれの式番号または化合物に付した番号で示した。
【0247】
【表3】
【0248】
実施例13〜24および比較例7〜12
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えてα型オキソチタニルフタロシアニン(CG2-1) を用いたほかは、実施例1〜12、比較例1〜6と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
上記実施例13〜24および比較例7〜12で得られた感光体について前記電気特性試験(I) を行い、各感光体の電気特性を評価した。各実施例および比較例で使用した電荷発生剤、正孔輸送剤および電子輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表4に示す。
【0249】
【表4】
【0250】
実施例25〜36および比較例13〜18
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えてY型オキソチタニルフタロシアニン(CG2-2) を用いたほかは、実施例1〜12、比較例1〜6と同様にしてデジタル光源用の単層型感光体を製造した。
上記実施例25〜36および比較例13〜18で得られた感光体について前記電気特性試験(I) を行い、各感光体の電気特性を評価した。各実施例および比較例で使用した電荷発生剤、正孔輸送剤および電子輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表5に示す。
【0251】
【表5】
【0252】
(デジタル光源用積層型感光体)
実施例37
電荷発生剤であるX型無金属フタロシアニン(CG1-1) 2.5重量部および結着樹脂(ポリビニルブチラール)1重量部を溶媒(テトラヒドロフラン)15重量部とともにボールミルにて混合分散させて、電荷発生層用の塗布液を作製した。次いでこの塗布液を導電性基材(アルミニウム素管)上にディップコート法にて塗布し、110℃で30分間熱風乾燥して、膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0253】
次に、正孔輸送剤であるスチルベン誘導体(1-1) 1重量部および結着樹脂(ポリカーボネート)1重量部を溶媒(テトラヒドロフラン)10重量部とともにボールミルにて混合分散させて、電荷輸送層用の塗布液を作製した。次いでこの塗布液を上記電荷発生層上にディップコート法にて塗布し、110℃で30分間熱風乾燥して、膜厚20μmの電荷発生層を形成し、デジタル光源用の積層型感光体を製造した。
【0254】
実施例38
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えてスチルベン誘導体(1-2) を用いたほかは、実施例37と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
実施例39
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えてスチルベン誘導体(1-3) を用いたほかは、実施例37と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
【0255】
実施例40〜42
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えてα型オキソチタニルフタロシアニン(CG2-1) を用いたほかは、実施例37〜39と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
実施例43〜45
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えてY型オキソチタニルフタロシアニン(CG2-2) を用いたほかは、実施例37〜39と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
【0256】
比較例19〜21
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えてスチルベン誘導体(6-1) を用いたほかは、実施例37、40および43と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
比較例22〜24
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えてスチルベン誘導体(6-2) を用いたほかは、実施例37、40および43と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
【0257】
比較例25〜27
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えてスチルベン誘導体(6-3) を用いたほかは、実施例37、40および43と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
比較例28〜30
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えてスチルベン誘導体(6-4) を用いたほかは、実施例37、40および43と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
【0258】
比較例31〜33
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えてスチルベン誘導体(6-5) を用いたほかは、実施例37、40および43と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
比較例34〜36
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えてスチルベン誘導体(6-6) を用いたほかは、実施例37、40および43と同様にしてデジタル光源用の積層型感光体を製造した。
【0259】
上記実施例37〜45および比較例19〜36で得られた感光体について下記の電気特性試験(II)を行い、各感光体の電気特性を評価した。
電気特性試験(II)
感光体の表面を−700±20Vに帯電させたほかは、前記電気特性試験(I) と同様にして表面電位VO (V)、残留電位Vr (V)および半減露光量E1/2 (μJ/cm2 )を求めた。
【0260】
上記各実施例および比較例で使用した電荷発生剤および正孔輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表6および7に示す。
【0261】
【表6】
【0262】
【表7】
【0263】
(アナログ光源用単層型感光体)
実施例46〜57および比較例37〜42
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えて、式(CG3-1) :
【0264】
【化73】
【0265】
で表されるペリレン顔料を用いたほかは、実施例1〜12、比較例1〜6と同様にしてアナログ光源用の単層型感光体を製造した。
上記実施例46〜57および比較例37〜42で得られた感光体について下記の電気特性試験(III) を行い、各感光体の電気特性を評価した。
電気特性試験(III)
露光光源としてハロゲンランプの白色光(光強度8ルックス)を用いたほかは、前記電気特性試験(I) と同様にして表面電位VO (V)、残留電位Vr (V)および半減露光量E1/2 (μJ/cm2 )を求めた。
【0266】
上記各実施例および比較例で使用した電荷発生剤および正孔輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表8に示す。
【0267】
【表8】
【0268】
実施例58〜69および比較例43〜48
電荷発生剤として、ペリレン顔料(CG3-1) に代えて、式(CG4-1) :
【0269】
【化74】
【0270】
で表されるビスアゾ顔料を用いたほかは、実施例46〜57、比較例37〜42と同様にしてアナログ光源用の単層型感光体を製造した。
上記実施例58〜69および比較例43〜48で得られた感光体について前記電気特性試験(III) を行い、各感光体の電気特性を評価した。各実施例および比較例で使用した電荷発生剤、正孔輸送剤および電子輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表9に示す。
【0271】
【表9】
【0272】
実施例70〜81および比較例49〜54
電荷発生剤として、ペリレン顔料(CG3-1) に代えて、式(CG4-2) :
【0273】
【化75】
【0274】
で表されるビスアゾ顔料を用いたほかは、実施例46〜57、比較例37〜42と同様にしてアナログ光源用の単層型感光体を製造した。
上記実施例70〜81および比較例49〜54で得られた感光体について前記電気特性試験(III) を行い、各感光体の電気特性を評価した。各実施例および比較例で使用した電荷発生剤、正孔輸送剤および電子輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表10に示す。
【0275】
【表10】
【0276】
実施例82〜93および比較例55〜60
電荷発生剤として、ペリレン顔料(CG3-1) に代えて、式(CG4-3) :
【0277】
【化76】
【0278】
で表されるビスアゾ顔料を用いたほかは、実施例46〜57、比較例37〜42と同様にしてアナログ光源用の単層型感光体を製造した。
上記実施例82〜93および比較例55〜60で得られた感光体について前記電気特性試験(III) を行い、各感光体の電気特性を評価した。各実施例および比較例で使用した電荷発生剤、正孔輸送剤および電子輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表11に示す。
【0279】
【表11】
【0280】
(アナログ光源用積層型感光体)
実施例94〜96
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えて、ペリレン顔料(CG3-1) を用いたほかは、実施例37〜39と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
【0281】
実施例97〜99
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えて、ビスアゾ顔料(CG4-1) を用いたほかは、実施例37〜39と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
実施例100〜102
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えて、ビスアゾ顔料(CG4-2) を用いたほかは、実施例37〜39と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
【0282】
実施例103〜105
電荷発生剤として、X型無金属フタロシアニン(CG1-1) に代えて、ビスアゾ顔料(CG4-3) を用いたほかは、実施例37〜39と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
比較例61〜64
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、スチルベン誘導体(6-1) を用いたほかは、実施例94、97、100および103と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
【0283】
比較例65〜68
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、スチルベン誘導体(6-2) を用いたほかは、実施例94、97、100および103と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
比較例69〜72
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、スチルベン誘導体(6-3) を用いたほかは、実施例94、97、100および103と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
【0284】
比較例73〜76
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、スチルベン誘導体(6-4) を用いたほかは、実施例94、97、100および103と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
比較例77〜80
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、スチルベン誘導体(6-5) を用いたほかは、実施例94、97、100および103と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
【0285】
比較例81〜84
正孔輸送剤として、スチルベン誘導体(1-1) に代えて、スチルベン誘導体(6-6) を用いたほかは、実施例94、97、100および103と同様にしてアナログ光源用の積層型感光体を製造した。
上記実施例94〜105および比較例61〜84で得られた感光体について下記の電気特性試験(IV)を行い、各感光体の電気特性を評価した。
【0286】
電気特性試験(IV)
感光体の表面を−700±20Vに帯電させたほかは、前記電気特性試験(III) と同様にして表面電位VO (V)、残留電位Vr (V)および半減露光量E1/2 (lux・秒)を求めた。
上記各実施例および比較例で使用した電荷発生剤および正孔輸送剤の種類と、電気特性の試験結果とを表12および13に示す。
【0287】
【表12】
【0288】
【表13】
【0289】
表3〜13から明らかなように、実施例1〜105の電子写真感光体は、各実施例に対応する比較例に比べて残留電位Vr の絶対値が小さい。また、半減露光量E1/2 についても、対応する比較例での値と同等またはその値を下回っている。このことから、実施例1〜105の電子写真感光体は、優れた感度を有することがわかる。
【0290】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のスチルベン誘導体(1) は、バインダー樹脂との相溶性が高く、かつ高い電荷輸送能(正孔輸送能)を有する。
また、本発明の電子写真感光体は、上記スチルベン誘導体(1) を正孔輸送剤として用いることから、高感度である。従って、本発明の電子写真感光体は、静電式複写機やレーザービームプリンタ等の各種画像形成装置の高速化、高性能化等に寄与するという特有の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例で得られたスチルベン誘導体(1-2) のIRスペクトルを示すグラフである。
Claims (6)
- 一般式(1):
ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基もしくはアルカノイルオキシ基を有していてもよいアルキル基;
ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基を有していてもよいアリール基;
ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基もしくは炭素数1〜6のアルコキシ基を有していてもよいアラルキル基;
または、
ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基もしくはアルカノイルオキシ基を有していてもよいアルコキシ基を示す。
前記アリール基または前記アラルキル基に置換するカルボキシル基は、エステル化されていてもよい。また、前記アリール基または前記アラルキル基に置換する炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基は、さらに、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基またはアルカノイルオキシ基を有していてもよい。)
で表されることを特徴とするスチルベン誘導体。 - 前記一般式(1)中のR1とR3とR5が同一の基で、かつR2とR4とR6がベンゼン環上の同じ置換位置に置換した同一の基である請求項1記載のスチルベン誘導体。
- 導電性基体上に感光層を設けた電子写真感光体であって、前記感光層が、請求項1または2記載の一般式(1)で表されるスチルベン誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記感光層が、請求項1または2記載の一般式(1)で表されるスチルベン誘導体とともに、電荷発生剤と電子輸送剤とを含有した単層型の感光層である請求項5記載の電子写真感光体。
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