JP2005247857A - 汎用性および高効率機能を備えた鋳型分子およびこれを利用する無細胞タンパク質合成手段 - Google Patents

汎用性および高効率機能を備えた鋳型分子およびこれを利用する無細胞タンパク質合成手段 Download PDF

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Abstract

【課題】mRNA合成用の汎用性のあるプラスミドの構築と、mRNAの合成及び精製手段を提供する。
【解決手段】タンパク質翻訳鋳型分子であるmRNAの5'末端に特定配列を有する配列、3'末端に少なくとも非翻訳配列を有する配列構造を導入することにより、翻訳効率の高いmRNAを構築し、本mRNAを転写せしめるための鋳型DNAを含む汎用性のあるプラスミドを構築し、高い翻訳鋳型活性を有する本mRNAの合成方法、精製方法、およびこれらを用いた実用的な無細胞タンパク質合成手段として連続式RNA合成手段とコムギ胚芽抽出物を利用した連続式無細胞タンパク質合成手段を組み合わせた転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成を構築し、また無細胞タンパク質合成手段を利用した複数のタンパク質を共発現せしめる方法。
【選択図】図9

Description

本発明は、細胞や組織から調製した抽出液を用いる無細胞タンパク質合成系を実用技術に発展させることを目的とした、効率の高い汎用性のある翻訳鋳型分子の設計、RNA合成用の汎用性のあるプラスミドの構築、RNAの合成手段、RNAの無細胞タンパク質合成系への供給手段、およびこれらの技術を組合せた転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段の提供に関する。
医薬品の開発や農業での品種改良などの分野では、多くのタンパク質の生体内での機能を明らかにすることが重要な課題である。特にゲノム計画の完了を間近に控え、解明すべき課題が遺伝子構造解析から遺伝子機能解析へと急速に展開してきている。遺伝子機能解析の一つの方法として、遺伝子がコードしているタンパク質を作製し、該タンパク質の機能を解析する方法がある。
細胞のタンパク質合成は、DNAに保存された遺伝情報が先ず翻訳鋳型分子であるmRNAに転写され、リボソームなどの一群の因子からなる翻訳装置によって、このmRNAの塩基配列に記載された情報に従ってアミノ酸が結合され、遺伝情報の翻訳産物としてのタンパク質が合成される過程からなる。
遺伝子がコードしているタンパク質を得るために、細胞内で効率良く進行するタンパク質合成反応を生体外で行わせる方法として、例えば細胞内に備わるタンパク質翻訳装置であるリボソームなどを生物体から抽出し、この抽出液に翻訳鋳型、基質となるアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、およびその他の有効因子を加えて試験管内でタンパク質を合成する無細胞タンパク質合成法の研究が盛んに行われている(特開平6−98790号公報、特開平6−225783号公報、特開平7−194号公報、特開平9−291号公報、特開平7−147992号公報)。この無細胞タンパク質合成のための反応系、すなわち無細胞タンパク質合成系に用いるタンパク質合成用の、細胞または生体組織の抽出液の調製には、大腸菌、コムギ胚芽、家兎網状赤血球などが用いられてきた。
無細胞タンパク質合成系は、ペプチド合成速度と翻訳反応の正確性においては生細胞に匹敵する性能を保持することから、複雑な化学反応工程や煩雑な細胞培養工程を必要としないため、その実用的なシステムの開発がなされてきた。しかしながら、一般的に生物体の細胞から抽出した細胞抽出液のタンパク質合成能はきわめて不安定であることから、タンパク質合成効率が低く、さらに保存による細胞抽出液の品質低下も著しかったため、無細胞タンパク質合成系で得られる合成産物量は放射性同位体標識などによって検出できる程度の低いレベルでしかなく、実用的なタンパク質の生産手段としては利用できなかった。
本発明者らは先に、従来の無細胞タンパク質合成系の欠点を解決する方法、すなわち、無細胞タンパク質合成用細胞抽出物製剤および無細胞タンパク質合成手段(PCT/JP99/04088)を提供した。
しかし、さらにタンパク質合成を効率良く行うためには、上記発明に加えて、翻訳鋳型であるmRNAの翻訳効率を上げることが重要である。従来の高翻訳効率を有するmRNAの合成には、7mGpppGなどのCAP構造と呼ばれる特殊な構造体をその5'末端に結合させることが必要であった。しかし、このCAP分子はそれ自体がタンパク質合成開始反応の強力な阻害活性をもつことから、mRNA合成後には残余分子をmRNA画分から完全に除去することが必須であった。また、5'末端にCAP構造を有するmRNA量を高濃度にするとタンパク質合成反応が阻害されるために、その濃度を低く抑えねばならず、タンパク質合成の効率も低かった。さらに、CAP分子は高価でもあることから、無細胞タンパク質合成手段の実用化には、これらが解決しなければならない問題点として残されていた。
また、in vitro RNA合成は、一般的に、基質となる4種類のリボヌクレオシド−5'−3リン酸、RNAポリメラーゼ、スペルミジン、マグネシウムイオンや適当な緩衝液の存在下に試験管などの閉じた反応系(閉鎖系)で行う。さらに、mRNAなどのRNAの単離および精製には、合成反応液をフェノール処理によって脱タンパク質した後にエタノール沈殿やゲルろ過カラムを用いて、残余リボヌクレオシドや合成反応の副生成物であるピロリン酸(さらに強力な翻訳阻害作用を持つCAP分子)などをRNA画分から排除する必要があった。当然ながらこれらの合成および精製過程はRNA分解酵素非存在下で行われなければならず、この過程は充分な操作経験を必要とし、しかも煩雑であった。また、従来法の閉鎖系におけるRNA合成反応は、合成反応の進行に伴って、基質濃度が低下し、同時に副生成物であるピロリン酸が蓄積することによって、RNA合成反応は比較的すみやかに化学平衡に至り停止することから、RNAの合成収量は原理的に低かった。このような合成方法では、例えば、反応は約2時間程度で停止し、得られるRNA量は反応容量1ml当り約300μg程度であり、非効率的であった。
一方、タンパク質合成の効率化を図るため、転写によるmRNA合成と翻訳によるタンパク質合成とを共役させ、同一の系で同時に転写と翻訳とを行わせる転写・翻訳共役無細胞タンパク質合成系が、原核生物である大腸菌の細胞抽出液(S−30)を用いた無細胞タンパク質合成系で初めて報告され(Zubay,G.,(1973)Ann.Rev.Genet.,7,267−287)、その後、真核生物の細胞抽出液を用いる無細胞タンパク質合成系においても報告され(Roberts,B.et al.,(1975)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,72,1922−1926、Pelham,H.R.B.et al.,(1978)Eur.J.Biochem.,82,199−209、米国特許第5665563号、同第5492817号、同第5324637号)、商品化もなされている。しかし、転写反応および翻訳反応における、至適イオン濃度や、RNA合成の基質であるリボヌクレオシド−5'−3リン酸、特に翻訳のエネルギーとなるアデノシン−5'−3リン酸(ATP)とグアノシン−5'−3リン酸(GTP)の至適濃度が大きく異なることから、従来の転写・翻訳共役系におけるタンパク質合成効率はきわめて低かった。さらに、このような真核生物の細胞を用いる系では、CAP分子それ自体が強力な翻訳阻害作用を持つため、5'末端にCAP構造を有するmRNAの合成と共役する高効率な翻訳系を構築することは原理的に不可能であった。
また、タンパク質は細胞内において単独で機能しているわけではなく、多種多様なタンパク質、核酸、低分子種、および/または細胞膜成分との相互作用により機能を発揮する。この相互作用を明らかにすることも医薬品開発などの分野では重要な課題である。遺伝子、または遺伝子群の機能を調べる方法としては、培養細胞および生物個体の遺伝子破壊法や、two−hybrid法(Field,S.,(1993)METHODS:A Companion to Meth.Enzymol.,5,116−124)が知られている。しかしながら、培養細胞および生物個体の遺伝子破壊法は、細胞や個体の生育を観察することにより細胞内で起きている反応を間接的に調べることしかできないという限界をもつ。また、two−hybrid法は複数のタンパク質を同時に共発現でき、タンパク質間相互作用を解析する上で利用されているが、これも探索的実験手段であって、操作が煩雑で時間がかかる上に、得られる結果はこれもまた間接的なものであった。他方、従来の生細胞を用いる遺伝子工学的手法では2種類程度のタンパク質を共発現させることは可能であるが、多数のタンパク質を効率よく共発現させる技術は開発されていない。
本発明が解決しようとする課題は、高効率で且つ汎用性のある翻訳鋳型分子mRNAの設計であり、これを簡便に調製せしめるmRNA合成用の汎用性のあるプラスミドの構築と、mRNAの合成および精製手段を提供することである。
また、本発明の別の課題の一つは、無細胞タンパク質合成系へのmRNAの効率的供給手段を提供することである。
本発明の別の課題は、上記の要素技術を総合した転写・翻訳非共役連続式高効率無細胞タンパク質合成手段の提供に関するものである。
また、本発明の別の課題は、無細胞タンパク質合成系において複数のタンパク質を共発現させる方法を提供することである。
本発明者らは、汎用性がある高効率の実用的無細胞タンパク質合成手段を開発すべく検討を行った結果、その手段の一つとして、タンパク質翻訳鋳型分子であるmRNAの5'末端にタバコモザイクウイルス(TMV)のΩ配列を有する塩基配列、アルファルファウイルス(AMV)のリーダー配列を有する塩基配列、またはこれらから改変して得た3種類の短い塩基配列(配列表の配列番号1、配列番号2、および配列番号3)、さらに3'末端に少なくとも非翻訳配列を有する配列構造を導入することにより、翻訳効率の高いmRNAを構築し、該構築したmRNAの転写用鋳型DNAを含む汎用プラスミドを構築し、高翻訳鋳型活性を有する該構築したmRNAの合成方法、精製方法、およびこれらを用いた実用的な無細胞タンパク質合成手段としてmRNA合成とコムギ胚芽抽出物を利用した連続式無細胞タンパク質合成との転写・翻訳非共役連続式システムを提供することにより、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
「1. 無細胞タンパク質合成手段に用いうる翻訳鋳型分子の改変手段であって、該翻訳鋳型分子の5'末端の構造に、以下から選ばれる少なくとも1つの塩基配列、
1)アルファルファモザイクウイルス(AMV)リーダー配列を有する塩基配列、
2)タバコモザイクウイルス(TMV)のΩ配列を有する塩基配列、
3)アルファルファモザイクウイルス(AMV)リーダー配列と70%以上の相同性を有し、且つCAP構造が存在するmRNAの翻訳開始活性に比して約70%以上の翻訳開始活性を有するmRNAを与えうる塩基配列、
4)タバコモザイクウイルス(TMV)のΩ配列と70%以上の相同性を有し、且つCAP構造が存在するmRNAの翻訳開始活性に比して約70%以上の翻訳開始活性を有するmRNAを与えうる塩基配列、
5)配列表の配列番号1または配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列、
6)配列表の配列番号1〜3に記載の塩基配列から選ばれる配列と70%以上の相同性を有し、且つCAP構造が存在するmRNAの翻訳開始活性に比して約70%以上の翻訳開始活性を有するmRNAを与えうる塩基配列、
を導入し、さらに3'末端の構造に、少なくとも非翻訳配列を導入することを含む、翻訳鋳型分子の改変手段。
2. 5'末端に既知の翻訳開始活性を有する塩基配列を導入することを組合せてなる前記1の翻訳鋳型分子の改変手段。
3. (1)プロモーター機能を担持した塩基配列と、(2)その下流にあたる領域に少なくともアルファルファモザイクウイルス(AMV)リーダー配列、タバコモザイクウイルス(TMV)のΩ配列、アルファルファモザイクウイルス(AMV)リーダー配列もしくはタバコモザイクウイルス(TMV)のΩ配列と70%以上の相同性を有し且つCAP構造が存在するmRNAの翻訳開始活性に比して約70%以上の翻訳開始活性を有するmRNAを与えうる塩基配列、配列表の配列番号1もしくは配列番号2もしくは配列番号3に記載の塩基配列、または、配列表の配列番号1もしくは配列番号2もしくは配列番号3に記載の塩基配列と70%以上の相同性を有し且つCAP構造が存在するmRNAの翻訳開始活性に比して約70%以上の翻訳開始活性を有するmRNAを与えうる塩基配列、の転写鋳型となる塩基配列と、(3)その下流にあたる領域に複数の制限酵素切断部位と、(4)ORF(Open Reading Frame)の終止コドンの下流にあたる領域に少なくとも3'末端非翻訳配列と、が配置された無細胞タンパク質合成手段に用いる翻訳鋳型分子の製造に利用するプラスミド。
4. プラスミド本体の大きさが3Kb以上である、前記3のプラスミド。
5. プラスミドが環状型である、前記3または4のプラスミド。
6. 前記5のプラスミドであって、プロモーター機能を担持した塩基配列の上流に、転写ターミネーター機能を担持した塩基配列が配置されたプラスミド。
7. プラスミドが直鎖型である、前記3または4のプラスミド。
8. 前記1または2の改変手段を利用したRNAの合成方法。
9. 前記8のRNAの合成方法であって、RNAを合成するための反応系において、該RNAの合成に必要な物質を連続的に供給すること、および/または該RNAの合成を阻害する物質と反応の副生成物とを連続的に除去すること、を特徴とするRNAの合成方法。
10. 前記3から7のいずれか1のプラスミドを用いる、無細胞タンパク質合成手段に使用するRNAの合成方法。
11. 前記10のRNAの合成方法であって、RNAを合成するための反応系において、該RNAの合成に必要な物質を連続的に供給すること、および/または該RNAの合成を阻害する物質を連続的に除去すること、を特徴とするRNAの合成方法。
12. 前記8から11のいずれか1のRNAの合成方法により得られたmRNAを利用した無細胞タンパク質合成手段。
13. 前記3から7のいずれか1のプラスミドを利用した無細胞タンパク質合成手段。
14. 前記12または13の無細胞タンパク質合成手段がコムギ胚芽抽出物を用いて行う無細胞タンパク質合成手段であり、該コムギ胚芽抽出物が胚乳成分の夾雑が実質的に排除されているものである無細胞タンパク質合成手段。
15. 前記12または13の無細胞タンパク質合成手段であって、mRNAの合成(転写)とタンパク質合成(翻訳)とが共役せず連続して1つの系で行われることを特徴とする転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
16. 前記5または6のプラスミドを利用する無細胞タンパク質合成手段であって、mRNAの合成(転写)を分子篩担体を担持した反応槽で行い、該合成されたmRNAを分子篩可能な担体によって精製および捕集し、透析条件下で、このmRNAのタンパク質合成反応をおこすために、mRNAを含む反応槽の反応液温度をタンパク質合成に適当な温度に変化させることを含む、同じ反応槽中でタンパク質合成(翻訳)を行うことが可能な転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
17. 前記5または6のプラスミドを利用する無細胞タンパク質合成手段であって、透析手段を担持した反応槽を用いて、透析膜内でmRNAの合成(転写)を行った後、反応液温度をタンパク質合成(翻訳)に適当な温度に変化させ、透析膜内の溶液組成がタンパク質合成用溶液組成に透析により変換されることにより、同じ反応槽中でmRNA合成(転写)とタンパク質合成(翻訳)とを行うことが可能な転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
18. 以下の工程、
(a)mRNAを、分子篩可能な担体を担持した反応槽において合成し、
(b)該合成されたmRNAを分子篩可能な担体によって精製の後に捕集し、
(c)タンパク質合成を、該合成され捕集されたmRNAを含む反応槽において透析条件下で行うこと、
を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
19. 以下の工程、
(1)透析膜内に転写反応液と翻訳反応液の混液を加えた、透析膜を担持した反応槽を用い、
(2)透析外液にタンパク質合成反応用溶液を満たし、mRNAを透析膜内で製造し、
(3)ついで、反応液温度をタンパク質合成反応(翻訳反応)に適当な温度に変化させ、
(4)透析条件下でタンパク質合成を行うこと、
を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
20. 前記15から19のいずれか1の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段において、少なくともタンパク質合成反応の翻訳鋳型となるmRNA、エネルギー再生系酵素、基質、エネルギー源から選ばれた要素について、追加、保存、交換、および排出から選択される処置を導入する転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
21. mRNAの合成を行う反応槽の反応液が接する面の少なくとも透析手段または分子篩手段に関与する面にタンパク質コーティングを施すことを特徴とする無細胞タンパク質合成手段。
22. 分子篩手段または分子篩可能な担体として、合成されたmRNAと基質や副生成物などの低分子物質との分離が可能な孔径のフィルターを使用して行う前記16、18、20、および21のいずれか1の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
23. 前記15から22のいずれか1の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段において使用される無細胞タンパク質合成系が、コムギ胚芽抽出物を利用する系であり、該コムギ胚芽抽出物が胚乳成分の夾雑が実質的に排除されているものである転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
24. 無細胞タンパク質合成手段において翻訳鋳型であるmRNAを2種以上使用し、各mRNAを無細胞タンパク質合成反応液中で個別に予備保温(プレインキュベーション)後に混合して無細胞タンパク質合成を行うことを特徴とする、無細胞タンパク質合成手段を用いた複数タンパク質の共発現方法。
25. 前記24の複数タンパク質の共発現方法において、使用するmRNAが前記8から11のいずれか1のRNA合成方法によって合成したmRNAである複数タンパク質の共発現方法。
26. 前記24または25の複数タンパク質の共発現方法において、無細胞タンパク質合成手段がコムギ胚芽抽出物を用いて行う無細胞タンパク質合成手段であり、該コムギ胚芽抽出物が胚乳成分の夾雑が実質的に排除されているものである複数タンパク質の共発現方法。
27. 白色を呈する小傷部分をもつ胚芽および茶や黒などの色をもつ胚芽を除去した、黄色の胚芽のみからなる無細胞タンパク質合成用コムギ胚芽原料。
28. 前記27のコムギ胚芽原料から製造される小麦胚芽抽出物。
29. 前記14の無細胞タンパク質合成手段において胚乳成分の夾雑が実質的に排除されているコムギ胚芽抽出物が前記28の小麦胚芽抽出物である無細胞タンパク質合成手段。
30. 前記23の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段において胚乳成分の夾雑が実質的に排除されているコムギ胚芽抽出物が前記28の小麦胚芽抽出物である転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
31. 前記26の複数タンパク質の共発現方法において、胚乳成分の夾雑が実質的に排除されているコムギ胚芽抽出物が前記28の小麦胚芽抽出物である複数タンパク質の共発現方法。
32. 小麦胚芽抽出物を利用する無細胞タンパク質合成系において、無細胞タンパク質合成反応を小麦胚芽抽出物を含む反応溶液を撹拌することなく静置条件下で行うことを特徴とする無細胞タンパク質合成手段。
33. 前記14または29の無細胞タンパク質合成手段であって、無細胞タンパク質合成反応を小麦胚芽抽出物を含む反応溶液を撹拌することなく静置条件下で行うことを特徴とする無細胞タンパク質合成手段。
34. 前記23または30の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段であって、無細胞タンパク質合成反応を小麦胚芽抽出物を含む反応溶液を撹拌することなく静置条件下で行うことを特徴とする転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段。
35. 前記26または31の複数タンパク質の共発現方法であって、無細胞タンパク質合成反応を小麦胚芽抽出物を含む反応溶液を撹拌することなく静置条件下で行うことを特徴とする複数タンパク質の共発現方法。
36. 前記12から14、29および33の無細胞タンパク質合成手段、前記15から23、30および34の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段、前記24から26、31および35の複数タンパク質の共発現方法から選ばれるいずれか1を利用することを特徴とする遺伝子多型と遺伝子機能の関係を検定する方法。
37. 前記12から14、29および33の無細胞タンパク質合成手段、前記15から23、30および34の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段、前記24から26、31および35の複数タンパク質の共発現方法から選ばれるいずれか1を利用することを特徴とする遺伝子機能のスクリーニング方法。
38. 前記14、29および33の無細胞タンパク質合成手段、前記23、30および34の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段、前記26、31および35の複数タンパク質の共発現方から選ばれるいずれか1を用いるタンパク質の合成方法であって、小麦胚芽抽出物を利用することを特徴とする哺乳動物由来遺伝子からタンパク質を合成する方法。」
又は、
「1)
以下の工程、
(a)mRNAを、分子篩可能な担体を担持した反応槽において合成し、
(b)該合成されたmRNAを分子篩可能な担体によって精製の後に捕集し、
(c)タンパク質合成を、該合成され捕集されたmRNAを含む反応槽において透析条件下で行うこと、
を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法。
2)
以下の工程、
(a)mRNAを、分子篩可能な担体を担持した反応槽において合成し、
(b)該合成されたmRNAを分子篩可能な担体によって精製の後に捕集し、
(c)mRNAを含む反応槽の反応液温度をタンパク質合成に適当な温度に変化させ、
(d)タンパク質合成を、該合成され捕集されたmRNAを含む反応槽において透析条件下で行うこと、
を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法。
3)
以下の工程、
(1)透析膜を担持した反応槽を用い、mRNAを透析膜内で合成し、
(2)反応液温度をタンパク質合成反応(翻訳反応)に適当な温度に変化させ、
(3)透析膜内の溶液組成がタンパク質合成用溶液組成に透析により変換されることにより、透析条件下でタンパク質合成を行うこと、
を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法。
4)
以下の工程、
(1)透析膜内に転写反応液と翻訳反応液の混液を加えた、透析膜を担持した反応槽を用い、透析外液にタンパク質合成反応用溶液を満たし、mRNAを透析膜内で合成し、
(2)反応液温度をタンパク質合成反応(翻訳反応)に適当な温度に変化させ、
(3)透析膜内の溶液組成がタンパク質合成用溶液組成に透析により変換されることにより、透析条件下でタンパク質合成を行うこと、
を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法。
5)
前記1)―4)項のいずれか1項に記載の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法を利用することを特徴とする遺伝子多型と遺伝子機能の関係を検定する方法。
6)
前記1)―4)項のいずれか1項に記載の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法を利用することを特徴とする遺伝子機能のスクリーニング方法。」
である。
本発明者らは、無細胞タンパク質合成系が不安定となる原因を特定し、これらの知見をもとに安定な且つ合成効率の優れた細胞または組織抽出物の調製および高効率無細胞タンパク質合成手段を開発している(PCT/JP99/04088)。以下、手段とは目的達成のために使用される方法および/または媒体を意味する。
実用的な無細胞タンパク質合成手段を完成させるために、本発明ではさらに次の技術を確立した。すなわち、どのようなmRNA種に対してもその翻訳効率を著しく促進するmRNAの5'末端および3'末端の非翻訳配列の開発、該非翻訳配列を組み込んだ高翻訳効率を有するmRNAを合成するための汎用性のあるプラスミド(以下、高効率翻訳カセットプラスミドと呼ぶこともある)の構築、該カセットプラスミドを鋳型とするmRNAの簡便な大量合成および精製技術の開発、限外ろ過膜を利用する連続式RNA合成と透析膜を用いた連続式無細胞タンパク質合成を一体化した転写・翻訳非共役連続式タンパク質合成とを行うための簡便なシステムの開発、さらに、目的のタンパク質遺伝子を組み込んだ高効率翻訳カセットプラスミドを制限酵素で切断することなく環状型プラスミドのまま無細胞タンパク質合成系に添加することによって、安定で且つ翻訳鋳型活性の高いmRNAを効率良く連続合成し、同一反応容器内で転写とは非共役的に連続式無細胞タンパク質合成を可能とする方法、無細胞タンパク質合成手段を用いた複数タンパク質の共発現方法などを確立した。
以下、本発明において、無細胞タンパク質合成手段に用いる細胞抽出物は、コムギ胚芽、大腸菌、家兎網状赤血球などに由来するものが使用できるが、好ましくはコムギ胚芽抽出物であり、より好ましくは、胚乳成分の夾雑が実質的に排除されているコムギ胚芽抽出物を用いる。該コムギ胚芽抽出物は、その原料として、後述する実施例1に示した方法で得ることのできる、白色を呈する小傷部分をもつ胚芽および茶や黒などの色をもつ胚芽〔図1(A)〕を除去した、黄色の胚芽〔図1(B)〕のみからなるコムギ胚芽を原料として調製したものが特に好ましい。
また、本発明において、コムギ胚芽抽出物を使用して無細胞タンパク質合成手段を行う場合、タンパク質合成反応は反応液を撹拌することのない静置条件下で行うことが好ましい。
(高翻訳効率を有するmRNAの5'末端および3'末端構造の構築)
5'末端構造:
本発明の高効率のタンパク質翻訳鋳型分子の構築は、生細胞を用いたタンパク質発現系の検討から得られていた5'末端非翻訳配列に関する知見をもとに、アルファルファモザイクウイルス(AMV)リーダー配列、またはタバコモザイクウイルス(TMV)RNAの5'末端非翻訳配列に存在するオメガ(Omega;Ω)配列、およびこれらを改変して得た配列表の配列番号1または配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列を(配列表フリーテキスト)5'末端非翻訳領域(5'Untranslated Region;5'UTR)として用い、無細胞タンパク質合成系に用いるタンパク質翻訳鋳型分子(mRNA)の塩基配列において、目的のmRNAの5'末端に導入することにより行われる。AMVリーダー配列およびTMVΩ配列は後述する表1に、これらを改変した3つの塩基配列(配列表の配列番号1〜3)は表2に示す。
導入する塩基配列は、アルファルファモザイクウイルス(AMV)リーダー配列、タバコモザイクウイルス(TMV)RNAの5'末端非翻訳配列に存在するオメガ(Omega;Ω)配列、配列表の配列番号1もしくは配列番号2もしくは配列番号3に記載の塩基配列、またはこれらの配列と70%以上の相同性を有し、かつCAP構造の存在するmRNAの翻訳開始活性に比して約70%以上の翻訳開始活性を有するmRNAを与えうる塩基配列であればよい。
該塩基配列は、単独もしくは複数で、さらに翻訳開始に関与する塩基配列や構造、例えば公知のCAP構造などを、組み合わせて導入することが可能である。
3'末端構造:
真核生物RNAの3'末端には、数十から200個余りのポリアデニル酸構造〔ポリ(A)〕が存在し、翻訳開始活性の促進とRNAの安定化に関与していることが知られている。発明者らは、RNAの鋳型DNAの3'末端に50〜150個の、好ましくは100個のポリアデニル酸構造を付加してmRNAを合成し、この分子が高鋳型活性を有することを確認した。
次にこれらの結果を踏まえて、さらなるmRNAの安定化方法を探るため、翻訳終止コドンの下流に長い非翻訳RNA鎖を導入したところ、mRNAの安定性が極めて上昇することを見出した。この長鎖非翻訳RNAの導入方法として、プラスミドを転写反応に先だって制限酵素で切断して直鎖型にすることなしに、環状型のまま鋳型として転写反応に用いた。この場合、用いたプラスミドには特別な転写終結部位を挿入していないので、転写産物であるmRNAは種々の分子サイズのmRNAとして合成される。
なお、長鎖非翻訳RNAである3'末端非翻訳配列は約300塩基以上好ましくは約500塩基以上であればよく、その塩基配列は特別のものである必要はない。好ましくは約500〜約1500塩基前後であり、最も好ましくは約700塩基前後である。
本発明では一例として、プラスミドにクローン化した大腸菌のジヒドロ葉酸還元酵素(dihydrofolate reductase;dhfr)遺伝子(Baranov,V.I.et al.,(1989)Gene,84,463−466)を利用して、遺伝子工学的に遺伝子の5'末端および/または3'末端にウイルスRNA由来の非翻訳配列を導入する方法を採用した。すなわち、その一つとして、その5'末端に、AMV mRNAの5'末端非翻訳配列であるAMVリーダー配列やTMV mRNAの5'末端非翻訳配列のΩ構造や配列表の配列番号1または配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列を複数個直列に組合せて導入したり、3'末端に長い非翻訳配列(UTR)および/または100個のポリアデニル酸構造を導入することによって、CAP構造の存在を必要としない高い翻訳開始活性を有するmRNAの新規な構造を構築した。これらの配列並びに構造は、それぞれ単独でmRNAに導入しても、該mRNAの翻訳活性を増強するが、高い翻訳活性を有するmRNAの構造は、実施例1の表1に示すように環状型プラスミドを転写鋳型として合成したAMV−Ω−タンパク質翻訳塩基配列−3'末端非翻訳配列−ポリ(A)−プラスミド由来3'末端非翻訳配列構造、またはAMV−Ωの代わりに配列表の配列番号1もしくは配列番号2もしくは配列番号3に記載の塩基配列を同様に導入し構築した場合である(表2および表3)。
以上、mRNAに新規な5'末端および3'末端構造を結合させることによって、高鋳型活性を有するmRNAを設計し合成することに成功し、これがコムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成系において、高い翻訳効率を示すことを実証した。上記本発明の翻訳鋳型分子の改変手段は、高鋳型活性を有するRNAの合成、および無細胞タンパク質合成手段に利用することができる。
(高翻訳効率mRNA合成用の汎用プラスミドの構築)
上記の知見は、モデルとしてdhfr遺伝子を用いた実験結果から得られたものであるが、種々のmRNA合成に一般的に利用できるように、複数のクローニング部位を挿入した汎用性の高いin vitro RNA合成用の新規プラスミドを構築した。むろん、該プラスミドにORFとして組み込むmRNA転写用鋳型DNAには、GST(glutathione−S−transferase)などのタグをコードするDNAを結合しておいてもよい。タグは自体公知のものを使用できるが、ヒスチジンタグ(His−tag)、FLAG、Xpress、ヘマグルチニンエピトープ(HA)、Mycエピトープ、T7エピトープ、HSVエピトープ、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(TRX)、βガラクトシダーゼ(βgal、LacZ)などの市販されているものを、目的に応じて使用すればよい。該プラスミドは、あらかじめ制限酵素で直鎖型に切断したものはもちろん、切断しないで環状型のままで転写反応の鋳型とすることによって、mRNAの3'末端側に長い非翻訳RNA鎖を導入したmRNAの合成が可能となる。この転写産物(mRNA)がコムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成系において、安定で高い翻訳鋳型機能を有することも確認された。
本発明の汎用性のあるプラスミドは、(1)プロモーター機能を担持した塩基配列と、(2)その下流にあたる領域に少なくともアルファルファモザイクウイルス(AMV)リーダー配列、タバコモザイクウイルス(TMV)RNAの5'末端非翻訳配列に存在するオメガ(Omega;Ω)配列、配列表の配列番号1もしくは配列番号2もしくは配列番号3に記載の塩基配列、またはこれらの配列と70%以上の相同性を有し、且つCAP構造が存在するmRNAの翻訳開始活性に比して約70%以上の翻訳開始活性を有するmRNAを与えうる塩基配列、の転写鋳型となる塩基配列と、(3)その下流にあたる領域に複数の制限酵素切断部位と、(4)ORFの終止コドンの下流にあたる領域に少なくとも3'末端非翻訳配列と、が配置された無細胞タンパク質合成系の鋳型として利用するプラスミドである。本発明のプラスミドを環状型のままで用いる場合、上述したように、該プラスミドには特別な転写終結部位を挿入していないので、転写産物であるmRNAは種々の分子サイズのmRNAとして合成される。転写終結部位を規定するターミネーター機能を担持する配列を、プロモーター領域の上流に配置し、転写産物の分子サイズを一定にすることもできる。
ここで利用するプラスミドは、コムギ胚芽、大腸菌、家兎網状赤血球などの細胞抽出物を用いる無細胞タンパク質合成系に利用する、mRNAの鋳型となりうるものであれば特に限定されない。但し、プラスミド本体の大きさは、3Kb以上であることが望ましい。プロモーターも、該無細胞タンパク質合成系において、mRNAの合成のために機能発揮できるものであれば特に限定されないが、例えば、SP6プロモーター、T7プロモーターが例示される。複数の制限酵素切断部位は、この部位を利用して所望の遺伝子をmRNA合成の鋳型としてプラスミドに挿入するための手段である。
かくして得られた本発明のプラスミドは、RNAの合成、および無細胞タンパク質合成手段などに使用することができる。
(mRNAの簡便な大量合成および精製技術の確立)
発明者らは、従来のRNA合成方法の問題点を解決する以下の連続式RNA合成の新技術を発明した。すなわち、反応槽として限外ろ過フィルターを装着したスピンカラムを用意し、同容器内に鋳型DNA、4種類の基質リボヌクレオシド−5'−3リン酸、さらに必要に応じてCAP分子、RNAポリメラーゼ、スペルミジン、マグネシウムイオンおよび適当な緩衝液などからなる転写反応液を満たす。別に調製した、上記の転写反応液から鋳型DNAとRNAポリメラーゼを除いた溶液を透析外液として、RNAの透析式連続合成を行う。このRNA合成法では、限外ろ過フィルターを介して、基質の連続供給と副生成物として生ずるピロリン酸などを連続的に反応系から排除することとが可能であり、反応は長時間にわたり化学平衡に到達しないため、RNA合成は12時間以上にわたって持続し、従来の5倍以上のRNAが得られる。
限外ろ過フィルターの分子量カットサイズは合成されたRNAと基質や副生成物などの低分子物質との分離が可能な孔径であれば特に限定されないが、カット分子量が5,000〜100,000のフィルターが好ましい。それらフィルターの孔径は、10〜50オングストロームである。
本発明のRNA合成方法には、上記本発明の翻訳鋳型分子の改変手段を利用することができるし、また上記本発明のプラスミドを用いることができる。
また本発明では、mRNAの合成を行う反応槽の反応液が接する面の少なくとも透析手段または分子篩手段に関与する面、例えば透析膜または限外ろ過フィルターなどにタンパク質コーティングを施すことの優位性を、無細胞タンパク質合成手段におけるmRNAの合成方法において初めて見出した。すなわち、タンパク質を用いたコーティング処理により、mRNA転写効率を上昇させることができ、またmRNAの分解を防止できる。コーティングに用いるタンパク質は、アルブミンが例示されるが必ずしもこれに限定されない。また、コーティングに用いるタンパク質は、透析手段または分子篩手段に関与する面に格別に固定しておく必要はなく、タンパク質含有溶液で数回洗浄することでも効果が得られるが、これに限定されるものではない。タンパク質含有溶液で数回洗浄する方法が、簡便であり好ましい。タンパク質含有溶液の濃度は、格別限定されないが、溶解飽和濃度であれば十分であり、それ以下でもよい。
さらに、本発明のRNA合成法が従来法に比べて優れている点は、合成したRNAの精製が簡便なことである。すなわち、本方法では、RNA合成後に反応容器をそのまま低速遠心することによって、低分子物質は限外ろ過フィルター細孔から排除され、RNA分子は容器内の限外ろ過フィルター上に補集される。水など適当な溶液の添加とこれに続く遠心を数回繰り返すことによって、極めて純度の高いRNAを、フェノール処理などの操作を行うことなく容易に単離し回収することができる。
以上のように、本発明の鋳型分子の改変手段、または本発明のプラスミドを利用し、本発明の連続式RNA合成法を使用することにより、従来に比べて効率的にRNAを製造することができる。また、本方法は、mRNAの合成、およびそれ以外のRNAの合成に一般的に利用できる。
本発明のRNAの合成方法により得られたmRNAは、無細胞タンパク質合成手段に利用できる。
(無細胞タンパク質合成手段)
本発明は、上記本発明の翻訳鋳型分子の改変方法を利用する、または、上記本発明のプラスミドを利用する無細胞タンパク質合成手段をも含むものである。本発明の無細胞タンパク質合成手段は、本発明の高い翻訳効率を有するmRNAまたは本発明のプラスミドを用いるので、従来法より高いタンパク質合成効率を示す。また、本発明の無細胞タンパク質合成手段は、後述する本発明の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段に利用することができる。
(連続式RNA合成と連続式無細胞タンパク質合成の一体化システム)
さらに、無細胞タンパク質合成手段において、高い合成効率を確保し且つ操作を簡便にするために、無細胞タンパク質合成反応を行う場合に、目的のタンパク質遺伝子を含むプラスミドを反応系に添加することによって充分量のタンパク質の合成を可能とする、mRNA合成とタンパク質合成とを一体化した以下の2つの実用的なシステムを構築した。この2つの本システムはいずれも、まずmRNA合成を行いその後引き続いてタンパク質の合成を同一の反応容器内でおこなう連続式システムであり、転写・翻訳非共役システムである。このシステムは、全自動無細胞タンパク質合成装置の開発にとっても有用なものである。
(透析膜を利用するシステム)
本発明の、透析膜を利用した連続式RNA合成と連続式無細胞タンパク質合成とを一体化した転写・翻訳非共役連続式無細胞合成手段の模式図を図7(B)に示した。
まず、上記した翻訳活性の高い、5'末端および3'末端非翻訳配列を含むmRNA合成用プラスミドに目的の遺伝子を組み込み、これを環状型のままで、転写反応液に添加し、摂氏23〜37度、好ましくは摂氏30度で、5分程度、好ましくは10分間の予備反応を行う。この予備反応段階は所望により省略することも可能であるが、この予備反応段階で鋳型DNAのプロモーター領域にRNAポリメラーゼが結合し、転写開始反応が効率的に進行するため、次の保温段階におけるmRNA合成量が上昇することによって、翻訳反応段階におけるタンパク質の合成量が増加するので好適には行った方がよい。次に、この転写反応液と翻訳反応液を混合する。この混液を透析膜チューブに移した後、これをあらかじめ準備しておいたタンパク質合成用透析外液を満たした容器に浸す。反応を摂氏30度で約3時間静置条件下で行うことによって、まず主にmRNAが合成される。
次の段階として、反応温度を摂氏23度に低下させ、透析下で反応を静置条件下で持続させる。この過程で、透析膜内の低分子、特にmRNA合成の至適濃度に合わせて高濃度に設定しておいたATP、GTPやマグネシウムイオンの濃度が透析の進行とともに低下し、タンパク質合成用溶液からなる透析外液濃度に近づき、やがて透析膜内はタンパク質合成用溶液組成に変換される。
これに伴ってタンパク質合成反応が促進され、その反応速度が最大となり、主としてタンパク質が合成される。この無細胞タンパク質合成反応は60時間以上にわたって持続し、dhfr合成の場合では、反応容量1ml当り4mg程度のタンパク質を得ることができる。
透析膜を利用するシステムには、環状型、直鎖型のいずれのプラスミドも用いることができる。しかし、合成収量とコストを考慮して、環状型プラスミドを用いることが好ましい。またCAP存在下、非存在下のいずれの条件下でも、本システムは実施可能であるが、mRNA合成に使用するCAP自身がタンパク質合成に必要な因子に強く結合してこれを阻害しタンパク質合成の効率が低くなるため、CAP非存在下で行うことが望ましい。
(限外ろ過膜を利用するシステム)
本発明の、限外ろ過膜を利用した連続式RNA合成と連続式無細胞タンパク質合成とを一体化した転写・翻訳非共役連続式無細胞合成手段の模式図を図7の(A)図に示した。
上記の翻訳活性の高い5'末端および3'末端非翻訳配列を含むプラスミドを鋳型として、mRNAを、限外ろ過膜を備えたスピンカラムを用いた透析法で合成する。この場合、RNA合成の鋳型となるプラスミドは環状型のままで用いるのが好ましい。摂氏30〜37度で保温し必要なRNA合成量に応じて反応時間を決定するが、通常の場合はおおよそ3〜5時間でよい。また、ここで用いる限外ろ過膜を備えたスピンカラムは、上記、本発明のRNAの合成方法において用いたものと同様である。
反応後は、反応容器であるスピンカラムを遠心し洗浄することによって、純化されたmRNAをフィルター上に補集する。次に、コムギ胚芽抽出物などの細胞抽出液を含む無細胞タンパク質合成用溶液を同スピンカラムに添加し、翻訳反応用透析外液を満たした容器に浸し摂氏23度で無細胞タンパク質合成反応を開始し、細胞抽出液としてコムギ胚芽抽出物を用いた場合は静置条件下で反応させる。
本方法により得られるタンパク質合成収率は、透析チューブを用いる上記の方法による収量とほぼ同程度である。また、スピンカラムのフィルター上のmRNAをフィルターのまま、上記透析膜を利用するシステムにおいて透析チューブに投入することによってもタンパク質合成が可能である。さらに本手段を用いることにより、CAP構造を有するmRNAについても全く同様にその合成および精製に続いて効率的な翻訳反応を行うことができる。
限外ろ過膜を利用するシステムには、環状型、直鎖型のいずれのプラスミドも用いることができ、またCAP存在下、非存在下のいずれの条件下でも、本システムは実施可能である。5'末端にCAP構造を有するmRNAを用いる方がタンパク質合成収量は高いが、直鎖型プラスミドから合成した5'末端にCAP構造を有するmRNAと環状型プラスミドからCAP非存在下に合成したmRNAとの両者の合成収量に大きな差はなく、コストを考慮して、CAP非存在下に環状型プラスミドを用いることが好ましい。
上記2つの本システムでは、少なくともタンパク質合成反応の翻訳鋳型となるmRNA、エネルギー再生系酵素、基質、エネルギー源から選ばれた1種または2種以上の要素について、反応開始後、要時または継続的に、追加して添加する手段を導入してもよい。これらは、極少量を継続的に添加してもよいし、一定時間ごとに添加してもよい。また、本システムでは、上記の無細胞タンパク質合成反応に必要な物質を、該合成反応の効率を維持するために、該合成反応の開始後、反応途中で交換する処置を導入してもよい。例えば、無細胞タンパク質合成用溶液からなる透析外液の所望の量を、継続的または断続的に交換する手段を導入できる。さらに、本システムは、上記の無細胞タンパク質合成反応に必要な物質を追加添加または交換するために、これらを保存しておく手段を備えていてもよい。さらにまた、本発明は、無細胞タンパク質合成反応の副生成物を、該合成反応から除くための排出手段を備えていてもよい。これらの追加、保存、交換、および/または排出のための手段は1種または2種以上を選択し、組み合わせて導入することが可能である。
また、上記本システムにおいて、合成を行う反応槽の反応液が接する面の少なくとも透析手段または分子篩手段に関与する面、例えば透析膜または限外ろ過膜にタンパク質コーティングを予め施せば、タンパク質合成の効率がさらに向上する。すなわち、タンパク質を用いたコーティング処理により、mRNA転写の効率およびそれに続いて起こるタンパク質翻訳の効率を上昇させることができる。コーティングに用いるタンパク質は、アルブミンが例示されるが必ずしもこれに限定されない。また、コーティングに用いるタンパク質は、透析手段または分子篩手段に関与する面に格別に固定しておく必要はなく、タンパク質含有溶液で数回洗浄することでも効果が得られ簡便であり好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、透析膜をアルブミンでコーティングする場合、内液として水とアルブミンの混合溶液を用い、外液として水を使用して数時間透析を行えばよい。むろん、内液と外液の組成が逆であってもよい。タンパク質含有溶液の濃度は、格別限定されないが、溶解飽和濃度であれば十分であり、それ以下でもよい。
(無細胞タンパク質合成系を利用した複数タンパク質の共発現方法)
本発明はさらに、無細胞タンパク質合成系を利用した、複数タンパク質の共発現方法を提供する。本発明の複数タンパク質の共発現方法は、まず、目的とする複数のタンパク質のmRNAを、それぞれ個別に無細胞タンパク質合成用反応液中で予備保温(プレインキュベーション)し、その後これらを混合して、さらに無細胞タンパク質合成を行うことを特徴とする。ここで、用いるmRNAは上記本発明のRNA合成方法により合成したmRNAでありうる。予備保温(プレインキュベーション)の時間は、5分〜12時間が適当であり、好ましくは30分〜3時間、特に好ましくは、3時間である。予備保温(プレインキュベーション)が5分より短いと複数タンパク質の共発現が見られず、13時間以上であると生産物の部分的な不溶化が起こるので好ましくない。また予備保温(プレインキュベーション)後の無細胞タンパク質合成は、従来の無細胞タンパク質合成法で行えばよいが、好ましくは上記本発明の無細胞タンパク質合成手段、または転写・翻訳非共役無細胞タンパク質合成手段により行う。無細胞タンパク質合成に用いる細胞抽出物は大腸菌、家兎網状赤血球やコムギ胚芽に由来するものが使用できるが、好ましくはコムギ胚芽抽出物を使用する。小麦胚芽抽出物を用いた場合は、静置条件下で撹拌することなく反応させることが好ましい。実施例では5種類のタンパク質のmRNAを用いて共発現を行い、いずれのタンパク質も同時に効率よく合成できることを確認した。
本発明の複数タンパク質の共発現方法は、翻訳と共役した複数タンパク質の高次構造体形成機構(コフォールディング)の解析、タンパク質因子複合体の構造と機能との関係を解析するための試料の調製、遺伝子変異と病因との関係を解明するための試料の調製、医薬品としての標的タンパク質の同定、および医薬品デザインのための試料調製などに使用することができ有用である。
上記の本発明の無細胞タンパク質合成手段、転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段、複数タンパク質の共発現手段を用いることにより、従来の大腸菌や昆虫細胞などを用いたタンパク質発現方法では得ることが困難であった、生体特に哺乳動物由来で機能を保持したタンパク質の合成を、簡便且つ効率的に行うことができる。
また、ここに記載した原理を組合せることによって、プラスミドにクローン化した多種類の目的遺伝子からそれらの翻訳産物であるタンパク質を一度に且つ効率良く調製できるシステムである全自動無細胞タンパク質合成装置を構築することができる。
さらに、本発明の手段を用いることにより、多種のタンパク質試料の合成などが効率よく簡便に行うことができるようになるため、遺伝子機能の同定すなわち翻訳産物の機能や構造の解析、遺伝子多型と遺伝子機能の関係の解析、遺伝子機能のスクリーニング方法の構築、検査薬や治療薬剤の標的タンパク質のスクリーニングと同定、標的タンパク質を用いた薬剤の分子設計と有効性の検討など行うことができるようになる。
以下、本発明をコムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成系におけるdhfrタンパク質の合成を例に挙げて説明するが、下記の実施例は本発明についての具体例を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
(高翻訳効率を有するmRNAの5'末端および3'末端構造の構築、および該末端構造を含むプラスミドの構築)
大腸菌由来のdhfr遺伝子(Endo,Y.et al.,(1992)J.Biotech.,25,221−230)を、SP6プロモーター領域につないだプラスミドpPSP65に常法を用いてクローン化し、mRNAの5'末端および3'末端非翻訳配列コード部位を改変した種々のプラスミドを構築した(表1および表3)。表1左列上段の「−dhfr−3'UTR」はその転写産物を示し、左側の「−」はdhfr遺伝子由来の5'UTR(36塩基)を、右側の「−3'UTR」は539塩基からなる3'UTRを示す。これらを環状型プラスミドDNAのまま、あるいは制限酵素Hind IIIによって切断し開環して得た直鎖型プラスミドDNAを鋳型として種々の非翻訳配列を有するそれぞれのmRNAを合成した後に、それぞれの翻訳鋳型活性を測定し、その結果を表1に示した。表3には、配列表の配列番号1、配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列(表2の配列−1、配列−2または配列−3に相当する)をΩ配列の代わりに5'−UTRに導入したDNAを鋳型にして、mRNAを合成した後に、それぞれの翻訳鋳型活性を測定し、その結果を示した。
mRNAの、in vitro転写は常法(Gurevich,V.V.,(1996)Methods in Enzymology,275,383−397)により行った。
この転写反応の条件は、次のとおりである;すなわち、反応溶液{80mM Hepes−KOH、pH7.6、16mM 酢酸マグネシウム、2mM スペルミジン、10mM ジチオスレイトール(DTT)、2.5mMの各ヌクレオシド−5'−3リン酸〔NTP;ATP、GTP、ウリジン−5'−3リン酸(UTP)、シチジン−5'−3リン酸(CTP)〕、リボヌクレアーゼ阻害剤(1,000units/ml)、プラスミドDNA(50μg/ml)、SP6 RNAポリメラーゼ(3,000units/ml)、なお、5'末端にCAP構造を有するRNAを合成する場合は、この溶液に5mMの7mGpppGを追加した}を摂氏37度で2時間保温することによって、mRNAを合成し、フェノール抽出、エタノール沈殿を行った後に、必要に応じて、鋳型DNAをDNA分解酵素処理によって消化した。エタノール沈殿物を10mM Hepes−KOH、pH7.6に溶解した後、本画分に残存する4種のNTP、7mGpppG、DNAの分解産物やイオンをゲルろ過カラムにより除去した。mRNAは、紫外部吸収法(45μg/1OD unit)によって定量した。
これら合成されたRNAの翻訳鋳型活性をバッチ式のコムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成系を用いて調べた。この場合、コムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成は既報告(Endo,Y.et al.,(1992)J.Biotech.,25,221−230)、(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,(2000),97,559〜564)およびPCT/JP99/04088に記載の方法に準じて行った。但し、コムギ胚芽の選別は、これに記載されたシクロヘキサンや四塩化炭素を用いる浮選法ではなく、肉眼もしくは顕鏡下に優良胚芽を色によって選別する方法でおこなった。図1に、選別基準とするコムギ胚芽の状態を図示した。図1(B)に示すような黄色の胚芽を原則として採取し、図1(A)に示すような白色を呈する小傷部分をもつ胚芽、および茶、黒などの色をもつ胚芽を廃棄した。この方法でも、十分に翻訳活性の高いコムギ胚芽抽出物を調製することが可能であり、かつシクロヘキサンや四塩化炭素のような有害な有機溶剤を使用する必要がない。
詳しくは、無細胞タンパク質合成系に使用したコムギ胚芽を、Johnstonらの方法(Johnston,F.B.et al.(1957)Nature,179,160−161)を改良した方法で得た。まず、北海道産のチホクコムギ種子(未消毒)を1分間に100gの割合でミル(Fritsch社製Rotor Speed Mill pulverisette 14型)に添加し、回転数8,000rpmで種子を温和に破砕した。これを再度6,000rpmで破砕し、篩で粗胚芽画分(メッシュサイズ0.71mm〜1.00mm)を得た後、胚芽画分に混在する種皮などの不純物をポリエチレン板などの静電気帯電体を用いて吸着除去した。
さらに胚芽粒子を篩と静電気帯電体を用いて、小粒(0.71mm〜0.85mm)、中粒(0.85mm〜1mm)、軽粒(0.85mm〜1mmで且つ軽量)の3画分に分別し、最後に肉眼による分別を行い、黄色の胚芽を採取した。小粒画分が最も高いタンパク質合成活性を示した。軽粒は、種子破砕時に胚芽に生じた小傷胚芽が浮選操作中に破壊が進行したものであると推察される。次に、この試料からコムギ胚乳成分を除去するため、ガーゼにコムギ胚芽を入れ、冷却しながら冷蒸留水(DDW)で洗浄し、非イオン性界面活性剤であるNP−40の0.5%溶液に懸濁し、超音波洗浄器を用いて、洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄を繰り返した。蒸留水の存在下に再度1回の超音波洗浄後、吸引ろ過によってコムギ胚芽を収集し、それを冷蒸留水(DDW)で何度も洗浄し、コムギ胚芽を純化した。かくして純化されたコムギ胚芽は、実質的にコムギ胚芽に夾雑する内因性のタンパク質合成阻害因子、トリチン、チオニン、リボヌクレアーゼなどが除去され、胚乳成分の夾雑が無いものであった。
コムギ胚芽からの抽出物の調製は常法(Erickson,A.H.et al.(1996)Methods in Enzymol.,96,38−50)に準じた。以下の操作は摂氏4度で行う。液体窒素で凍結した純化コムギ胚芽を乳鉢中で粉砕し、得た粉体1g当たり、1mlのPattersonらの方法を一部改変した抽出溶液(80mM HEPES−KOH,pH7.8、200mM 酢酸カリウム、2mM 酢酸マグネシウム、4mM 塩化カルシウム、8mM ジチオスレイトール、各0.6mM L型アミノ酸20種類、各1μMのタンパク質分解酵素阻害剤であるFUT、E−64、PMSFを含む)を加えて、泡が発生しないように注意しながら攪拌した。30,000g、15分間の遠心によって得られる上清を胚芽抽出物として回収し、あらかじめ溶液(40mM HEPES−KOH,pH7.8、100mM 酢酸カリウム、5mM 酢酸マグネシウム、4mM ジチオスレイトール)で平衡化しておいたセファデックスG−25カラム(Coarse)でゲルろ過を行った。試料の濃度を、170〜250A260nm(A260/A280=1.5)に調整した。
dhfrタンパク質合成反応条件は以下のとおりである;反応溶液は、容量の24%の小麦胚芽抽出液(濃度は、200A260nm units/ml)、1,000units/ml リボヌクレアーゼ阻害剤(RNAsin)、30mM Hepes−KOH、pH7.6、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウム、2.85mM ジチオスレイトール、0.5mg/ml クレアチンキナーゼ、1.2mM ATP、0.25mM GTP、16mM クレアチンリン酸、0.380mM スペルミジン、20種類のL型アミノ酸(各0.3mM)、0.05% NP−40の他、2μCi(ml反応容量当たり)の[U−14C]ロイシン(166mCi/mmol)と、0.2μMのmRNAを含む。反応は摂氏26度で静置反応条件下で行い、タンパク質合成活性を、5'末端にCAP構造(7mGpppG)を導入したdhfr mRNA(直鎖型プラスミドから転写した塩基数1167、表1中に*で示した)を鋳型とした場合のdhfrタンパク質に取り込まれた[U−14C]ロイシンの放射活性(2821dpm/5μl)を100%としてそれに対する割合(%)で表示した。
表1に示した実験結果から明らかなように、5'末端非翻訳配列としては、アルファルファモザイクウイルスmRNA(AMV−mRNA)の5'末端リーダー構造(AMV leader配列)とタバコモザイクウイルスmRNA(TMV−mRNA)の5'末端Ω配列とを直列に結合したAMV−Ω配列が最も高い翻訳鋳型活性を示した。しかし、5'末端にΩ−AMV配列を有するmRNAにおいても、有意に高い翻訳鋳型活性が保持されている。一方、いずれのmRNAも5'末端にCAPを結合させたものは、ほぼ同一の活性を保持していることがわかる。
また、表3には、配列表の配列番号1、配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列で示される3種類の5'−UTRの構造を持つdhfr mRNAのバッチ反応系における翻訳鋳型活性を示したが、いずれもΩ配列を持つものに比べて遜色のない翻訳鋳型活性を保持していた。
3'末端非翻訳配列の末端ポリアデニル酸付加は翻訳鋳型活性の増強に対して効果的であるが、付加する鎖長については、60、80、100個間で差は認められなかった。さらにここで最も注目すべき結果は、このポリアデニル酸の下流に本プラスミドにコードされる塩基配列から転写されるRNA鎖を結合したmRNA(環状型プラスミドを鋳型として転写したmRNA)が極めて安定で高い翻訳活性を保持していることが見出されたことである。本発明の改変手段により作成されたmRNA(CAPなし)の翻訳効率は、5'末端にCAP構造を有するmRNAの翻訳効率に匹敵する。
以上、翻訳鋳型活性の高いmRNAを得るためには、5'末端非翻訳配列にAMVリーダー配列、TMV Ω配列、配列表の配列番号1、配列番号2および配列番号3に記載の塩基配列などを1つまたは2つ以上組み合わせて直列に結合し、加えて、3'末端にはポリアデニル酸を含む、長鎖RNAを結合させることが有効であることが明らかとなった。これらの成果を踏まえて、汎用性の高い高効率翻訳鋳型機能を備えた無細胞タンパク質合成用鋳型分子合成専用プラスミド、pEU1(図2)を作製した。
pEU1は、プラスミドpPSP65を基にして、SP6プロモーターまたはT7プロモーターなどのRNAポリメラーゼの結合する塩基配列を挿入し、その下流にmRNAの翻訳開始反応に重要な機能を持つAMV−Ω配列の転写鋳型となる塩基配列と、さらに、この下流に目的遺伝子を導入するための複数の制限酵素部位と、ポリ(A)コ−ド配列を含む3'末端非翻訳配列とを挿入したプラスミドである。さらに、AMV−Ω配列の代わりに、配列表の配列番号1、配列番号2または配列番号3に記載の塩基配列の転写鋳型となる塩基配列を挿入したプラスミドを作製した。
また、本発明の直鎖型プラスミドとは、本プラスミドのポリ(A)配列下流に導入した制限酵素部位(Hind III部位)をHind IIIで切断したものである(図2)。なお、以下の実施例に用いたmRNAの3'末端ポリアデニル酸の残基数は100個(ポリ(A)100)であり、直鎖型プラスミドを鋳型として転写したmRNA長は1.3K塩基長(1,280塩基)である。また、翻訳効率の高い環状型プラスミドを鋳型として転写したmRNAは、鎖長が2.7K、7.4K、および10.4K塩基長の分子の混合物であった〔図3(B)〕。CAP構造を有するAMV−Ω−mRNAにおいても、長鎖RNAを3'末端に結合させたmRNAの翻訳鋳型活性が高くなることから(表1)、この長鎖RNAが、mRNAの安定化に関わっていることを示している。
(長鎖3'末端非翻訳配列の導入によるmRNAの安定化手段)
表1に示したように、mRNAの3'末端非翻訳配列の下流に長鎖RNAを導入することによって、mRNAの鋳型活性が数倍に高まる。この原因を探るため、コムギ胚芽抽出物を使用した無細胞タンパク質合成系に[32P]標識したmRNAを添加し、その放射活性を指標として翻訳反応中におけるmRNAの安定性を調べた。詳しくは、5'末端にAMV−Ω配列をもつmRNAの3'末端非翻訳配列の下流に、塩基長の異なる長鎖RNAを結合させたmRNAを設計して合成し、これら鋳型分子のコムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成反応における安定性を調べた。転写鋳型としては、Hind IIIで切断した直鎖型プラスミドまたは未処理の環状型プラスミドを用い、[α−32P]UTP存在下に、実施例1と同様の方法でそれぞれCAP構造有り、無しのmRNAの合成および精製を行った。この標識mRNA(0.2μM)を用い、無細胞タンパク質合成反応を実施例1に記載した方法で行った。mRNAの安定性は反応0、15、30、60、120分後にRNAをフェノール法で抽出、エタノール沈殿による精製後、1%アガロースを用いたゲル電気泳動でRNAを分離し、BAS2000(フジフィルムKK)を用いてオートラジオグラフィーを行った。mRNAの分子サイズマーカーは、プロモーター領域にSP6またはT7プロモーター配列を導入したプラスミドを構築し、各々をHind IIIで切断して得た直鎖型プラスミドを転写鋳型として合成したCAP構造を有するmRNAと同一ゲルで泳動した。
図3に示した実験結果から、3'末端非翻訳配列に導入した長鎖RNAがmRNA分子の無細胞タンパク質合成系における安定化に直接的に関わっていることが明らかになった。図3から明らかなように、5'末端にCAP構造を導入したmRNAは、直鎖型〔図3(A)〕または環状型プラスミド〔図3(B)〕から転写したmRNA種とも、比較的その安定性が高いが、5'末端にCAP構造を持たないmRNA〔図3(A)、右側の5'AMV−Ω、1.3K塩基長〕は極めて不安定で、タンパク質合成反応1時間以降ではほとんど分解されている。しかし、環状プラスミドから転写したCAP構造を持たないmRNA分子種のうち、2.7K、7.4K、および10.4K塩記長のmRNA〔図3(B)、右側の5'AMV−Ω〕は明らかに1.3K塩基長のmRNAよりも安定性が高く、7.4K、および10.4K塩基長の分子の安定性はCAP構造を有するmRNAの安定性に匹敵する。すなわち、mRNAの3'末端非翻訳配列の下流に長鎖RNAを導入するという本発明の原理の一つが、mRNAの安定化に起因するmRNAの鋳型活性の上昇に寄与することが証明された。
さらに、この5'AMV−Ω−dhfr−長鎖3'末端非翻訳配列構造をもつmRNAの翻訳効率の高い原因は、翻訳反応中において、CAP構造を有するmRNAがその分解によって翻訳開始反応を強く阻害するCAPを含む分解産物を生ずるのに対して、本発明のmRNAでは翻訳を阻害する分解産物を生じないことに起因する。mRNAの3'末端に結合させたRNAの非翻訳配列は、特に選択した塩基配列ではないことから、mRNAの翻訳効率化効果は、その塩基配列自体ではなく、3'末端に結合させたRNAの長い鎖長が効果を示すことが判明した。この高鋳型活性を持つmRNAの設計原理は、他のmRNA種の鋳型活性を効率化するためにも応用できる。図3(B)の分子量マーカーとして示した図(左端の図)からわかるように、このプラスミドは、T7プロモーターとT7ポリメラーゼを用いても、SP6系のプロモーターとポリメラーゼを用いても同様にmRNA合成が可能である。図2に無細胞タンパク質合成のための高翻訳鋳型活性を有するmRNA転写用プラスミドの構造を示したが、このプラスミドに目的遺伝子を任意の制限酵素部位に導入し、大腸菌菌体内などでプラスミドを増幅させた後、菌体から調製したプラスミドを鋳型として、制限酵素によるDNA切断操作無しに簡便に、高翻訳鋳型活性を有するmRNAを調製することができる。
(mRNAの簡便な大量合成および精製技術の開発)
反応容器は、容器底部が透析フィルターからなるミクロスピンカラム(アミコン社製YM−10)を利用し、転写鋳型として、5'末端にAMV−Ω配列、3'末端に大腸菌dhfr遺伝子由来の3'UTRとポリ(A)100とを付加したdhfr mRNA合成用プラスミドを制限酵素で切断した直鎖型DNAを用いた。RNA合成反応溶液の組成および反応温度は、実施例1と同一である。
200μlの反応溶液を水で洗浄した反応容器に移し、従来どおりのバッチ式で反応させ〔図4(A)〕、または同容器の反応溶液をDNAとRNAポリメラーゼを含まない2mlの転写溶液に対して透析しながら、反応させ〔図4(B)〕、あるいは同様な透析式反応を、水洗後にあらかじめ10mg/mlの牛血清アルブミンでコーティング処理した反応容器を用いて行った〔図4(C)〕。
図4の下図に示すように、従来のバッチ式反応〔図4(A)〕では、反応は2時間でほぼ停止し、反応容量1ml当り0.23mgのmRNAが合成された。この収率は、反応容器として通常の試験管を用いた場合と同じであった。一方、透析法では、合成反応が長時間にわたって持続し、8時間後には反応容量1ml当り0.8mgにまでその収量が上昇した。しかし、電気泳動図(図4の上図)からわかるように、時間の経過とともにmRNAの分解が生ずることがわかる〔図4(B)〕。一方、牛血清アルブミンでコーティング処理したYM−10を用いて透析転写を行うと、反応は少なくとも16時間にわたって進行し、1.8mgのmRNAを合成することができた。このタンパク質コーティング法は、転写効率の上昇とmRNA分解の防止に有効である〔図4(C)〕。
合成されたmRNAの精製は従来のフェノールによる脱タンパク質と、エチルアルコールなどによるmRNAの水層からの沈殿法によっても可能であるが、以下の方法で簡便にこれを行うことができる。
すなわち、反応終了後にこの反応容器(ミクロスピンカラム)のまま遠心することによって、溶液中のヌクレオシド3リン酸やCAPなどの基質や、副生成物のピロリン酸、イオン、緩衝液などの低分子はフィルター孔を通して除去され、合成されたmRNAなどの高分子はフィルター上に留まる。容器に水を加え、この操作を数回繰り返すことによって、合成されたmRNAはフィルター上に捕集され、この合成されたmRNA画分からピロリン酸などの低分子のタンパク質合成阻害物質を除くことが可能となる。
下記のように、mRNAが捕集されたフィルターを、フィルターのまま無細胞タンパク質合成系に添加することによって、タンパク質合成を行うことも可能であるが、フィルターからmRNAを水溶液として回収して用いてもよい。本方法は、CAP構造を有するmRNA合成にも同様に利用できる。
(環状型プラスミドを鋳型とする翻訳鋳型活性の高いmRNA合成法)
実施例1で示した、5'末端非翻訳配列としてAMVとΩ配列の組み合わせ構造を直列に結合し、加えて、3'末端に非翻訳配列とポリアデニル酸とを結合させたdhfr mRNAの高翻訳効率をさらに確認するため、実施例3で述べた透析によるRNA合成方法で、5'末端にAMV−Ω配列と3'末端にポリ(A)100とを付加したdhfr mRNA合成用の環状型プラスミド、または、直鎖型プラスミドを用いてmRNAを合成した。さらに5'−CAP−dhfr−3'末端にポリ(A)100を付加したmRNAをも同様に透析法で合成した。遠心法で精製後、適当容量の水を添加し、mRNAをフィルターから水溶液として回収した。
これらのmRNAの翻訳鋳型活性を、バッチ式のコムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成系(鋳型プラスミドからmRNAを転写合成し、精製した後に、反応液に翻訳鋳型として添加して反応させる)(Endo,Y.et al.,(1992)J.Biotech.,25,221−230)、(Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000),97,559〜564)を用いて実施例1および3と同様の方法で調べた(図5)。縦軸は直線的にタンパク質合成反応が進行する開始後3時間までに合成されたタンパク質に取り込まれた放射活性(dpm/5μl)を、横軸は反応溶液中のmRNA濃度を示す。その結果、0.6μMのmRNA濃度において3'末端に長鎖のRNAを結合した環状型プラスミドから転写したmRNA〔図3(B)に示した鎖長が、2.7K、7.4K、および10.4K塩基長のmRNAの混合物〕、の方(★−★)が直鎖型プラスミドのそれ(☆−☆)よりも2倍程度の高い鋳型活性を保持していることが判明した。この時の翻訳活性は、最大活性を示すCAP構造を有するmRNA(●−●)の87%であった。すなわち、5'末端非翻訳配列にAMVとΩ配列の組み合わせ構造を直列に結合し、加えて、3'末端にはポリアデニル酸を含む長鎖RNAを結合させたmRNAは、高い翻訳鋳型活性を示した。また、このようなmRNAは環状型プラスミドを転写鋳型とし、透析による合成および精製法によって簡便に調製できることが証明できた。
さらに、図5から明らかなように、CAP構造を有するmRNAは0.5μMの至適濃度を過ぎると急激なタンパク質合成の阻害を起こすが、環状型プラスミドを鋳型として合成したCAP構造を持たないmRNAでは1.8μMに至っても強い阻害作用は示さない。これらのことから、CAP構造を有するmRNAに見られるこの翻訳阻害現象は、CAP分子を含むmRNAの分解産物がタンパク質合成開始反応因子に競合的に結合することによる拮抗阻害剤効果に起因するものと理解できる。すなわち、3'末端に長鎖のRNAを結合した環状型プラスミドから転写したCAP構造を持たない5'AMV−Ω mRNAにおいては、この拮抗阻害がないので、無細胞タンパク質合成系における至適鋳型濃度の範囲がはるかに広く、タンパク質合成反応の条件設定が簡便である。すなわち、ここに示したmRNAは、翻訳開始活性の高い5'末端非翻訳配列と、安定性に関与する3'末端の長鎖構造を併せ持つことによって、翻訳鋳型としての高い効率を保持するに至ったと考えられた。さらに、この環状型プラスミドを鋳型とする転写方法では、制限酵素切断を行わないので、目的とする遺伝子の翻訳塩基配列(ORF)内の、制限酵素認識塩基配列の存在に無関係となり、どのようなmRNA種をも翻訳効率の高い完全長の分子として合成することができる。
(環状型プラスミドから転写した5'末端にAMV−Ω配列と3'末端にポリ(A)100とを付加したdhfr mRNAを用いた連続式無細胞タンパク質合成)
次に、この連続転写で合成したmRNAの連続式無細胞タンパク質合成系における性能について調べた。実施例3に記載の透析法で直鎖型と環状型プラスミドとを鋳型としてmRNAを合成した、5'AMV−Ω構造を持つmRNA分子種を用いて、透析膜を用いた連続式無細胞タンパク質合成を行い、SDS−ゲル電気泳動によってタンパク質を分離後、クマシーブルー染色をおこなった。各mRNAは反応開始時にのみ添加した。その濃度は各2μMである。その結果を図6に示した。図6(A)および図6(B)はそれぞれ、環状型プラスミドおよび直鎖型プラスミドを鋳型として合成したmRNAを翻訳鋳型として用いた結果である。ゲル上の矢印は翻訳産物であるdhfrタンパク質を、星印は反応溶液中のクレアチンキナーゼをそれぞれ示している。
図6から明らかなように、環状型プラスミドから転写したmRNAを用いた無細胞タンパク質合成系では翻訳反応が40時間以上にわたって持続する〔図6(A)〕が、直鎖型プラスミドから合成したmRNAでは反応開始10時間後には停止することが翻訳産物であるdhfrタンパク質の染色強度からわかる〔図6(B)〕。合成されたdhfrタンパク質量を、未反応無細胞タンパク質合成液に既知の量のdhfrタンパク質を添加して同様にSDS−PAGEで分析した染色バンドの強度を標準とし、デンシトメーターによって定量した結果、環状型プラスミドを用いて合成したmRNAが、5'末端にCAP構造を有するAMV−Ω−dhfr−3'末端ポリ(A)100付加dhfr mRNAを鋳型とした場合とほぼ同等の高い収率を示すことがわかった。一方、直鎖型プラスミドから転写したmRNAの翻訳鋳型活性は、環状型の効率の半分以下であった。すなわち、環状型プラスミドから転写した5'末端にAMV−Ω配列と3'末端にポリ(A)100とを付加した長鎖のdhfr mRNA(環状型プラスミドを鋳型として合成)は、連続式無細胞タンパク質合成系においても安定で高い鋳型活性を保持しており、その有効性が確認できた。
この環状型プラスミドから転写したmRNAの方が直鎖型プラスミドから合成したmRNAよりも翻訳鋳型としての効率が優れているという事実は、単にこのことに留まるだけでなく、別のより大きな有用性を示したことになる。すなわち、従来のように直鎖型プラスミドを転写鋳型とする場合は、転写反応に先だって挿入遺伝子の3'下流の制限酵素部位でプラスミドを切断するが、この場合、目的とする遺伝子の翻訳塩基配列(ORF)内にこの制限酵素認識構造が存在しないことを確認する必要があり、これが存在する場合には、3'下流にそれとは別の制限酵素部位を持つプラスミドを構築する必要がある。
しかし、たとえ6塩基認識の制限酵素を用いるにしても、4096塩基長に1回の頻度で制限酵素部位と同一の塩基配列が出現する計算となるため、直鎖型プラスミドは多種類の転写用遺伝子のクローン化には利用できない。たとえば、ヒトの約10万種類の遺伝子には、それら遺伝子の平均ヌクレオチド数を1200個と仮定すると、およそ2万〜3万ヶ所の制限酵素部位と同一の塩基配列がORF内に存在する計算となるため、現在知られている制限酵素の性質からいって、mRNAの転写用の直鎖型プラスミドを構築することは原理的に不可能である。
ここに示した環状型プラスミドでは、たとえば、これまでに示した新規無細胞タンパク質合成用のプラスミド(mRNAの5'末端にAMV−Ω配列と3'末端にポリ(A)100との付加を可能としたカセットプラスミド)にクローン化しさえすれば転写反応に先立って制限酵素によるプラスミドを切断する必要がないので、1種類のカセットプラスミドですべての目的遺伝子からのmRNAの転写が可能となる。すなわち、それら遺伝子のコードするタンパク質を無細胞タンパク質合成系で合成することが可能となる。
(フィルターに補集したmRNAをそのまま利用する連続式無細胞タンパク質合成法)
実施例3で説明したmRNAの簡便な大量合成および精製法でmRNAを合成し、フェノール抽出処理を行うことなく、反応容器を遠心することによりフィルターに補集した精製mRNAをフィルターのままスピンカラムから取りだし、このフィルターをタンパク質合成反応液を満たした透析膜内に投入し、連続式無細胞タンパク質合成を行った。mRNAを補集したフィルターは反応開始時にのみ添加した。そのフィルター上のmRNA量と反応容量から計算したmRNAの濃度は約2μMである。
図6(C)に示すように、環状型プラスミドから転写した、5'末端にAMV−Ω配列と3'末端にポリ(A)100とを付加したdhfr mRNAを補集したフィルターを添加した連続式無細胞タンパク質合成系が長時間にわたって安定したタンパク質合成能を発揮し、最も高い翻訳鋳型活性を保持していることが判明した。さらに、mRNAをフィルターに補集した状態で長期間にわたって保存できることも確認できた。
(連続式RNA合成と連続式無細胞タンパク質合成の一体化システム−透析膜を利用する転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法−)
5'末端に配列表の配列番号1に記載の塩基配列と3'末端にポリ(A)100とを付加した長鎖dhfr mRNA合成用の環状型プラスミドを転写反応液(実施例1を参照)に添加し摂氏30℃5分の予備保温を行う。この目的は、以降のRNAポリメラーゼによる転写反応の効率化にある。この予備保温の後に転写反応液とタンパク質合成液(実施例1を参照)を混合し、これを、透析膜内に移す。本例では、転写反応溶液容量:翻訳反応溶液容量=2:1で混合したので、マグネシウムイオンや4種のリボヌクレオシド−5'−3リン酸の反応開始時における濃度はそれぞれ、UTPは11.7mM、CTPは1.67mM、ATPは2.07mM、GTPは1.76mMなどである。透析外液には連続式無細胞タンパク質合成反応用溶液(実施例1および11を参照)(Endo,Y.et al.,(2000)Proc. Natl. Acad. Sci. USA,97,559〜564)(PCT/JP99/04088)を用いて、摂氏30度で2時間の保温によってmRNAの大量合成の後、反応系の温度を摂氏23度に低下させ、図7(B)にしめすように透析膜連続方式タンパク質合成を行った。分析は、実施例5と同様にSDS−ゲル電気泳動法でおこなった。図中、矢印は翻訳産物であるdhfrタンパク質を、星印は反応溶液中のクレアチンキナーゼをそれぞれ示している。
本反応条件では、反応溶液組成が転写反応に適した組成である反応初期にはmRNA合成が進行し、透析膜を介した透析の進行とともに透析膜内の溶液組成が翻訳反応組成に換わることに伴って、タンパク質合成反応が開始され進行する。図8(A)にその結果を示したが、1mlの反応液容量当たり、4mgのdhfrタンパク質を静置反応条件下で合成することができた。なお、このタンパク質合成方法が成立するのは、用いるコムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成溶液が極めて安定であるからである。本原理および手段は、既に発明され市販もされている転写・翻訳反応共役系(米国特許第5665563号、同第 5492817号、同第 5324637号)とは原理を異にするものである。図8(A)から明らかなように、本システムが長時間にわたって安定したタンパク質合成能を発揮することから、本システムが簡便で効率的なタンパク質合成手段であることがわかる。本手段は、原理および操作が簡単なことから、多種遺伝子からのタンパク質の自動合成を可能とする全自動無細胞タンパク質合成装置の構築に応用できる。
(連続式RNA合成と連続式無細胞タンパク質合成の一体化システム−フィルターに補集した精製mRNAを鋳型とする転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法−)
実施例3に記載した方法でmRNAを合成し、フェノール抽出処理を行うことなく、遠心によってmRNAを精製し、mRNAをフィルターに捕集した状態のスピンカラムに無細胞タンパク質合成溶液を添加し、〔Endo,Y.et al.,(1992)J.Biotech.,25,221−230〕、〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000),97,559〜564〕、PCT/JP99/04088、ならびに実施例1および11の方法に準じて連続式無細胞タンパク質合成を行った〔図7(A)〕。分析は、実施例5と同様にSDS−ゲル電気泳動法でおこなった。図中、矢印は翻訳産物であるdhfrタンパク質を、星印は反応溶液中のクレアチンキナーゼをそれぞれ示している。
図8(B)に示したように、環状型プラスミドから転写した5'末端に配列表の配列番号2に記載の塩基配列と3'末端にポリ(A)100とを付加した長鎖dhfr mRNA(環状型プラスミドを鋳型として合成したmRNA)を捕集したフィルターカラムを用いた連続式無細胞タンパク質合成系が長時間にわたって安定したタンパク質合成能を発揮し、高い翻訳鋳型活性を保持していることが判明した。本方法によるdhfrの合成収量は、1mlの反応液容量当たり3mgであった。この方法は、転写・翻訳が共役していない連続式無細胞タンパク質合成法であり、5'末端にCAP構造を有するmRNAを鋳型とするタンパク質合成にも同様に応用できる。さらに、フィルター付きカラムを多数集積したマルチ型スピンカラムを準備することによって、多種類の遺伝子からのタンパク質合成が一度に可能となり、原理および操作が簡単なことから、自動送液および遠心装置を組み込んだ全自動無細胞タンパク質合成装置の構築が可能である。
(オステオポンチンの生産)
オステオポンチン(OPN)とGSTとの融合タンパク質(GST−OPN)を調製するために、実施例1および2に順じて、図9(A)と図9(B)に示すプラスミドを設計した。GSTは、GST−OPN合成後にグルタチオンカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーで容易にこれを精製するために、OPNに融合させた。オステオポンチンは、骨のマトリックスに含まれる接着タンパク質の一種で、分泌性リン酸タンパク1と呼ばれ、分子量は約6万9000であり、ラットのcDNAが1985年にクローン化されている。能勢眞人(愛媛大学医学部)らは、この物質をコードする遺伝子座が糸球体腎炎の候補遺伝子であることを見出している。OPNの遺伝子多型(ポリモルフィズム:polymorphism)(Mol.Immunol.(1995)32,447−448)と糸球体腎炎の発症との関連を探るために、膠原病モデルマウスであり糸球体腎炎を発症するMRL/lprマウス(Fasの欠損変異遺伝子lprを有する)由来のOPN遺伝子と正常対照であるC3H/lprマウス由来のOPN遺伝子とを、各マウスの脾細胞よりcDNAライブラリーを作成して、常法により実施例2に順じて、図9(A)および(B)に示すpEU−GST−C3HとpEU−GST−MRLを設計し構築した。いずれも、SP6ポリメラーゼ用の転写プロモーター(Pro)、5'UTRとしてAMV−Ω配列の転写鋳型となる塩基配列、ORFとしてGST−OPN、および3'末端にポリA(100)コード配列を有する構造である。図中PreScissionTMとはファルマシア製のプロテアーゼ切断部位である。成熟型のC3H型OPN(OPN/C3H)の分子量は、31,118ダルトン、成熟型のMRL型OPN(OPN/MRL)は、30,987ダルトンである。デザインされた融合タンパク質の分子量は、前者が57,746ダルトン(GST−OPN/C3H)、後者が57,553ダルトン(GST−OPN/MRL)である。
(バッチ式無細胞タンパク合成系によるGST−OPNの合成)
上記構築した環状プラスミドを鋳型にしてmRNAを転写合成し、該mRNAを精製してこれを翻訳鋳型とし、実施例3に順じてバッチ式で、実施例1に順じたコムギ胚芽抽出液を用い、GSTとの融合型OPNの合成を静置条件下でおこなった。該mRNAは、タンパク質合成用反応液25μlあたり4μg添加した。図10は実施例1と同様にタンパク質合成量をトリクロル酢酸分画への放射活性の取込み量として表したものであり、縦軸は反応液5μl当たりの取込み量をdpm値で示している。MRL/lpr由来、C3H/lpr由来の両融合タンパク質とも、2時間までほぼ直線的に合成される。なお、dhfrは、反応系が正常に機能していることを確認する対照実験である。
(合成融合OPNのオートラジオグラフィー)
図11は、上記で2時間目までに合成された融合タンパク質の分子量の確認をおこなったもので、得られたタンパク質が設計したタンパク質であることが確認された。GST−OPN/C3Hの移動度がGST−OPN/MRLに比べて大きいのは、両者のアミノ酸配列の違い(多型)に起因するSDS存在下における立体構造の違いを反映する。
(OPN/C3HとOPN/MRLの調製)
図12は、mRNAからの転写とタンパク質の翻訳合成を連続的に行う透析法(実施例3を参照)による大量合成の結果をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で調べた結果である。クマシーブリリアントブルー(CBB)の染色パターンから、GST−OPN/C3H(レーンT)とGST−OPN/MRL(レーンT)の合成を確認でき、前者は1ml反応容量当たり1.2mg、後者は同1.4mgであった。ファルマシア製のキットを用いて各OPNを精製し、融合タンパク質(各レーンE)、および、OPN/C3HとOPN/MRL(各レーンD)が、設計どおりの分子量を示すことが分析結果から確認できた。図には示していないが、精製用のタグとしてGSTではなくヒスチジンオリゴマー(HIS−tag)を用いて融合タンパク質として合成したHIS−OPN/C3HおよびHIS−OPN/MRLを、ニッケルをリガンドとするニッケルアフィニティークロマトグラフィーで純度高く精製することもできた。
(合成OPNを用いたバイオアッセイ)
脾細胞を8週齢のMRL/+マウスおよびC3H/+マウスより採取し、RPMI1640培地に浮遊させた。ここに、上記合成した各OPNを10ng/mlとなるように加え、24時間または48時間短期培養した。培養後の細胞よりmRNAを抽出し、IgG3、IL−2、IL−10それぞれに特異的なプライマーを用いてRT−PCRを行い、その発現を定量的に解析した。その結果、MRL型合成OPN(OPN/MRL)は、脾細胞にIgG2a、IgG3の産生を誘導し、その効果はC3H型OPN(OPN/C3H)に比べて高かった。このことは、OPN構造遺伝子の多型による構造タンパクおよびその機能の差異が、抗体産生の亢進を介してMRL/lprマウスにおける糸球体腎炎発症に関与している可能性を示唆した。また、本発明の無細胞タンパク質合成系により、生体内で機能しうる、機能を保持したタンパク質を哺乳動物由来の遺伝子から合成できることが確認された。これにより、コムギ胚芽を利用した無細胞タンパク質合成システムは、遺伝子多型と疾患の関係を遺伝子−タンパク質発現のレベルで検定する手段として使用できることを見出した。
(複数タンパク質の共発現)
コムギ胚芽を利用した無細胞タンパク質合成システムを利用して、多数の翻訳鋳型の共存下に、対応する多種タンパク質を同時に合成した。共発現を行ったタンパク質は、dihydrofolate reductase(dhfr、18kDa)、glutathione−S−transferase(GST、28kDa)、green fluorescent protein(GFP、27kDa)、GST−osteopontin融合タンパク質(G−OPN、67kDa)、Luciferase(LUC、61kDa)の5種類である。
まず、実施例2に準じて、SP6プロモーター、5'UTRとしてAMV−Ω配列の転写鋳型となる塩基配列、各タンパク質をコードするORF、3'UTRとしてポリ(A)100コード配列を含む、各タンパク質のmRNA合成用のプラスミドをそれぞれ構築した。このプラスミドを用いて転写合成し精製した各mRNAを、コムギ胚芽抽出物を利用した透析式無細胞タンパク質合成システム(実施例11を参照)に、別々に1種類づつ添加した後、120時間のタンパク質合成反応を静置条件下で行い、それら単独の合成結果を図13(A)に示した。結果は、SDS―PAGEで分離したタンパク質のCBBによる染色結果で表している。図13(A)に示すように、各タンパク質は、単独で合成すると、高効率で合成された。しかし、5種類のmRNAを同時に添加して同一のコムギ胚芽抽出物を利用した透析式無細胞タンパク質合成システムで合成すると、微量のGFPが合成されるのみであり、他のタンパク質の合成はなされなかった〔図13(A)のレーンMIX〕。この原因として、翻訳開始効率には、5'−および3'−UTR構造のみでなく、アミノ酸配列をコードするORFの塩基配列および塩基数が影響を及ぼすものと考えた。そこで、5種類のmRNAを別々のタンパク質翻訳反応チューブに添加し、まずそれらを3時間予備保温(プレインキュベーション)することによって、個々のmRNAを個別的に効率的に翻訳開始せしめ、その後にこれらを混合し、透析反応を同様に行った。図13(B)に示したように、この方法では、5種類のタンパク質とも効率よく合成できることが明らかとなった。G−OPNについては67kDaの分子量を示すものの、SDS−ポリアクリルアミドゲル上では移動度が低く、コムギ胚芽の内因性タンパク質のバンドと分離されていない。
(コムギ胚芽抽出物を利用した透析法による連続式無細胞タンパク質合成)
コムギ胚芽抽出物を利用した連続式無細胞タンパク質合成の方法は既報(Endo,Y.et al.(1992)J.Biotech.,25,221−230)に準じておこない、精製コムギ胚芽の反応溶液をディスポダイアライザー(Spectra/PorCE ,MWCO:25k,volume:0.5ml)に入れ、反応液の10倍容量の透析外液(20mM HEPES−KOH,pH7.6、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウム、4mM ジチオスレイトール、1.2mM ATP、0.25mM GTP、16mM クレアチンリン酸、0.38mM スペルミジン、L型アミノ酸20種類(各0.3mM)、0.005%NaN、0.05%NP−40、E−64、PMSF各1mM)に対しての透析系で、反応は摂氏20度で静置条件下で行った。この方法で、分子量5,000〜130,000の種々のタンパク質を効率良く合成することができ、合成効率は反応容量1ml当たり0.3〜1.8mgであった。また、合成反応を100〜140rpmのスタラーによる撹拌条件下でおこなったところ、タンパク合成効率が静置条件下で行った場合と比較して低かった。図14(A)および図14(B)に、合成タンパク質として、GFPを合成した場合の電気泳動図を示す。図14(A)は無撹拌静置条件下であり、図14(B)は120rpmでスタラ−により撹拌した場合である。矢印で示した電気泳動図のバンドの濃淡によって示されるGFP合成量の差異によって明白なように、撹拌条件下では、48時間反応を継続しても合成量の増加はおこらなかった。かくして、小麦胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成系では、反応は静置条件下で行うことが必須であることが証明された。
本発明は、効率的な無細胞タンパク質合成用翻訳鋳型mRNAの5'末端および3'末端非翻訳配列の構築、mRNA転写用の汎用性のあるプラスミドの構築、高い翻訳鋳型活性を有するmRNAの合成方法、精製方法、および、これらを用いた実用的な無細胞タンパク質合成への応用例として連続式mRNA合成とコムギ胚芽抽出物を利用した連続式無細胞タンパク質合成との転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成手段、ならびに無細胞タンパク質合成手段を利用した複数タンパク質の共発現方法を開示した。本発明は、安価で容易且つ効率的なRNA合成を達成し、ひいては安価で容易且つ効率的な無細胞タンパク質合成手段の提供を達成した。本発明によれば、従来の大腸菌や昆虫細胞などを用いたタンパク質発現方法では得ることが困難であった、生体における機能を保持したタンパク質の合成を、簡便、且つ効率的に行うことができる。従って、本発明は、遺伝子機能の同定すなわち翻訳産物の機能や構造の解析、遺伝子多型と遺伝子機能の関係の解析、遺伝子機能のスクリーニング方法の構築、検査薬や治療薬剤の標的タンパク質のスクリーニングと同定、標的タンパク質を用いた薬剤の分子設計と有効性の検討などに利用することができ、医薬分野において寄与の高い極めて有用なものである。
無細胞タンパク質合成用細胞抽出物の調製に用いるコムギ胚芽を選別するための色と形状による選別基準を説明する図である。図1において、図(A)は除去すべき白色を呈する小傷部分をもつ胚芽および茶や黒などの色をもつ胚芽を示し、図(B)は黄色の胚芽のみからなる無細胞タンパク質合成用コムギ胚芽原料を示す。 汎用性および高効率翻訳鋳型機能を備えた無細胞タンパク質合成用鋳型分子合成プラスミド(pEU1)の模式図である。 5'末端にAMV−Ω配列をもつmRNAに、3'末端非翻訳配列を結合させたmRNAを設計して合成し、これら鋳型分子のコムギ胚芽抽出物を利用した無細胞タンパク質合成反応における安定性を説明する図である。図3(A)および(B)はそれぞれ、直鎖型プラスミド、環状型プラスミドを用いて合成したmRNAの安定性を示す。 転写反応の合成効率を、従来のバッチ反応法(試験管内反応法)と透析膜を利用した新規連続反応法とで比較した結果を説明する図である。上図は反応経過に伴う転写産物をアガロースゲル電気泳動で分離後、臭化エチジウム染色したものである。下図は合成されたmRNA量を精製後の吸光度A260nm値と、ゲル上のmRNAの蛍光強度と鋳型DNAの蛍光強度を内部標準とした蛍光強度比から求め、その経時変化を示した図である。また図中、(A)は試験管内反応法を、(B)は血清アルブミンコーティングを施さない透析膜を、また(C)は血清アルブミンでコーティングした透析膜を用いた結果を示す。 透析法で合成した各種mRNAの鋳型活性をバッチ式コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で比較した図である。図中、★−★は環状型プラスミド(制限酵素未切断)から合成した5'末端にAMV−Ω配列、および3'末端に大腸菌dhfr遺伝子由来の3'UTRとポリ(A)100とを付加したdhfr mRNA、☆−☆は直鎖型プラスミド(制限酵素切断)から合成した同mRNA、また●−●は、直鎖型プラスミドを鋳型に合成した5'末端にCAP構造を有するmRNAを示す。縦軸はタンパク質に取り込まれた放射活性(dpm/5μl)を、横軸は反応溶液中のmRNAの濃度を示す。 直鎖型と環状型プラスミドとを鋳型として合成した、5'AMV−Ω構造を持つmRNA分子種を用いて、透析膜を用いた連続式無細胞タンパク質合成を行った結果を示す図である。図6(A)および(B)は、それぞれ環状型プラスミド、直鎖型プラスミドを鋳型として合成したmRNAを翻訳鋳型として用いた場合のタンパク質合成の結果を示す。図6(C)は環状型プラスミドを鋳型としてmRNAをミクロスピンカラム中で合成した後、同反応容器を利用して遠心精製し、ミクロスピンカラムからこのmRNAを補集したフィルターを取りだして、このフィルターをタンパク質合成反応液を満たした透析膜内に添加した場合のタンパク質合成の結果を示す。図中、矢印は翻訳産物であるdhfrタンパク質を、星印は反応溶液中のクレアチンキナーゼをそれぞれ示している。 連続式mRNA合成と連続式無細胞タンパク質合成の転写・翻訳非共役連続式一体化システムを説明する図である。図7(A)および(B)はそれぞれ、フィルターに補集した精製mRNAを鋳型とする無細胞タンパク質合成方法と、透析膜を利用する転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法を説明する。 連続式RNA合成と連続式無細胞タンパク質合成の転写・翻訳非共役連続式一体化システムによるタンパク質合成の結果を説明する図である。図8(A)は透析膜を利用する転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法を用いた結果を、図8(B)はフィルターに補集した精製mRNAを鋳型とする方法を用いた結果を示す。図中、矢印は翻訳産物であるdhfrを、星印は反応溶液中のクレアチンキナーゼをそれぞれ示している。 GSTとの融合型オステオポンチンの無細胞タンパク質合成用プラスミドの構造を示す模式図である。図9(A)はGSTと融合させたC3Hマウス由来のオステオポンチンをコードするORFを含むプラスミドであるpEU−GST−C3Hを、図9(B)はGSTと融合させたMRLマウス由来のオステオポンチンをコードするORFを含むプラスミドであるpEU−GST−MRLを示す。 コムギ胚芽抽出物を使ったバッチ式無細胞タンパク質合成による、融合型オステオポンチンの合成結果を示す図である。 合成された融合型オステオポンチンの分子量を確認したオートラジオグラムの図である。図中、Mは分子量マーカーである。 コムギ胚芽抽出物を使った透析法での連続無細胞タンパク質合成により得られた融合型オステオポンチンをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動後にクマシーブルー染色によって確認した図である。図中、Mは分子量マーカーである。レーンTは合成された融合タンパク質(GST−OPN)を含む総タンパク質の分離染色パターン、レーンEは該合成された融合タンパク質を精製したもの、レーンDは成熟型OPNタンパク質である。 無細胞タンパク質合成により、5種類のタンパク質を共発現させた結果を示す図である。図13(A)は各タンパク質を別々に合成した結果と、各タンパク質のmRNAを混合して無細胞タンパク質合成した結果を示している。図中、dhfrはジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase)、GSTはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(glutathione−S−transferase)、GFPはグリーン蛍光タンパク質(green fluorescent protein)、G−OPNはGST−オステオポンチン(GST−osteopontin)融合タンパク質、LUCはルシフェラーゼ(Luciferase)を表す。また、−mRNAはmRNAを使用せずに無細胞タンパク質合成反応を行った結果である。MIXは従来通りの方法であって、各mRNAを混合して無細胞タンパク質合成を行った結果である。星印は、合成された各タンパク質を示している。図13(B)は上記5種類のmRNAを個別にインキュベーション後に混合して無細胞タンパク質合成を行った結果を示す。Mは分子量マーカーである。 無撹拌静置条件下で行った無細胞タンパク質合成反応〔図14(A)〕が、撹拌しながら行ったもの〔図14(B)〕より合成効率が良いことを示した図である。図中、矢印は合成されたGFPを示す。

Claims (6)

  1. 以下の工程、
    (a)mRNAを、分子篩可能な担体を担持した反応槽において合成し、
    (b)該合成されたmRNAを分子篩可能な担体によって精製の後に捕集し、
    (c)タンパク質合成を、該合成され捕集されたmRNAを含む反応槽において透析条件下で行うこと、
    を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法。
  2. 以下の工程、
    (a)mRNAを、分子篩可能な担体を担持した反応槽において合成し、
    (b)該合成されたmRNAを分子篩可能な担体によって精製の後に捕集し、
    (c)mRNAを含む反応槽の反応液温度をタンパク質合成に適当な温度に変化させ、
    (d)タンパク質合成を、該合成され捕集されたmRNAを含む反応槽において透析条件下で行うこと、
    を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法。
  3. 以下の工程、
    (1)透析膜を担持した反応槽を用い、mRNAを透析膜内で合成し、
    (2)反応液温度をタンパク質合成反応(翻訳反応)に適当な温度に変化させ、
    (3)透析膜内の溶液組成がタンパク質合成用溶液組成に透析により変換されることにより、透析条件下でタンパク質合成を行うこと、
    を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法。
  4. 以下の工程、
    (1)透析膜内に転写反応液と翻訳反応液の混液を加えた、透析膜を担持した反応槽を用い、透析外液にタンパク質合成反応用溶液を満たし、mRNAを透析膜内で合成し、
    (2)反応液温度をタンパク質合成反応(翻訳反応)に適当な温度に変化させ、
    (3)透析膜内の溶液組成がタンパク質合成用溶液組成に透析により変換されることにより、透析条件下でタンパク質合成を行うこと、
    を備える転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法。
  5. 請求の範囲第1―4項のいずれか1項に記載の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法を利用することを特徴とする遺伝子多型と遺伝子機能の関係を検定する方法。
  6. 請求の範囲第1―4項のいずれか1項に記載の転写・翻訳非共役連続式無細胞タンパク質合成方法を利用することを特徴とする遺伝子機能のスクリーニング方法。
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