JP3255784B2 - 蛋白質の合成方法 - Google Patents

蛋白質の合成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、核酸(DNAあるいは
RNA)を鋳型とする、遺伝子情報から細胞を含まない
蛋白質合成系で蛋白質を合成する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】ニレンバーグ(Nirenberg)ら
によって開発された、大腸菌抽出液を利用する無細胞蛋
白質合成系(Nirenberg,M.W.,et a
l.(1961)Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA,47,1588−1602)は、蛋白質合
成機構の解明に大きな役割を果たした。その後、翻訳効
率の高い無細胞蛋白質合成系が、大腸菌の他にも、コム
ギ胚芽やウサギ網状赤血球等からも調製され、現在では
遺伝子翻訳産物の同定などに、広く利用されるようにな
った(Wu,R.et al.(1983)(ed)M
ethods in Enzymology,101,
p598,p616,p629,p635,p644,
p650,p674,p690,Academic P
ress,New York)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の無細胞
蛋白質合成系における蛋白質合成量は、生細胞に比べる
と百分の一から一万分の一と極端に低いことから、蛋白
質の実用的な調製法としては利用できないという欠点が
ある。
【0004】最近、スピリン(Spirin)らは、無
細胞蛋白質合成系の効率化を目指して、連続式無細胞蛋
白質合成システム(Continuous Flow
Cell−Free Translation Sys
tem)を開発した(Spirin,A.S.,et
al.(1988)Science,242,1162
−1164)。このシステムが従来の無細胞蛋白質合成
系と異なる点は、合成反応で消費されるアミノ酸やエネ
ルギー源などの基質を反応槽へ連続的に供給する一方、
翻訳産物は系から取り出すことである。しかし彼らのシ
ステムも、蛋白質合成反応系としては、コムギ胚芽、ウ
サギ網状赤血球、あるいは大腸菌等から従来通りの方法
で調製した翻訳活性の低い細胞抽出液を利用するもので
あることから、大幅な蛋白質合成効率の改良は望めな
い。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来の技術
では注目されておらず不可避であった細胞破壊に伴って
活性化される、核酸合成および/または蛋白質合成の活
性阻害因子の活性化を実質的に抑制することにより、従
来より効率の良い無細胞蛋白質合成系を調製することが
できることを見い出した。本発明はこの知見に基づく下
記の発明であり、またその蛋白質合成系(蛋白質合成用
組成物)の発明である。
【0006】細胞破壊に伴って誘発される、核酸合成お
よび/または蛋白質合成の活性阻害因子の活性化を抑制
した細胞を含まない蛋白質合成系で遺伝子情報より蛋白
質を合成することを特徴とする、蛋白質の合成方法。
【0007】本発明における核酸合成および/または蛋
白質合成の活性阻害因子とは、細胞破壊に伴って誘発さ
れる因子であり、その因子は通常ポリペプチドないし蛋
白質からなる酵素であり、また核酸の場合もある。この
活性阻害因子は細胞破壊に伴うプログラム細胞死機構の
作動によって誘発されるものであり、元々生物が個体あ
るいは集団の生存を可能にするために個々の細胞が持っ
ている因子であると考えられる。この因子が活性化され
ると、例えば転写活性や翻訳活性などが阻害されること
により核酸合成および/または蛋白質合成の活性化が阻
害されると考えられる。
【0008】この活性阻害因子は、通常種々のポリペプ
チドないし蛋白質からなる酵素であり、具体的な例とし
ては、リボソーム活性を阻害するリボソーム不活性化蛋
白質、リボヌクレアーゼ、リボヌクレオチドホスホリラ
ーゼなどが挙げられる。上記活性阻害因子の活性化を抑
制する手段としては、それを蛋白質合成系から除去する
ことは勿論、蛋白質合成系内でその活性化を阻害する手
段を採用することができる。特に、蛋白質合成系からこ
の活性阻害因子を選択的に除去することが困難な場合が
少なくないことから、その活性化を阻害する手段、特に
特異的阻害剤を使用する手段、を採用することが好まし
い。
【0009】上記活性阻害因子の特異的阻害剤として
は、この活性阻害因子に特異的に結合してその活性を抑
制する抗体が好ましい。この中和抗体は活性阻害因子の
酵素活性を中和することにより、活性阻害因子の活性化
を阻害すると考えられる。抗体としては、ポリクローナ
ル抗体は勿論、モノクローナル抗体であってもよい。上
記活性阻害因子の特異的阻害剤としてはこれら抗体に限
られず、抗生物質などの種々の薬剤(蛋白質阻害剤、核
酸系阻害剤など)であってもよい。これら阻害剤は抗体
を含め2種以上併用することができる。
【0010】抗体などの上記活性阻害因子に特異的に結
合し得る物質はまた蛋白質合成系からこの活性阻害因子
を選択的に除去する方法に使用することもできる。例え
ば、特異的に結合し得る物質を適当な高分子物質に固定
化し、この固定化担体共存下に蛋白質合成系を接触させ
て活性阻害因子を蛋白質合成系から除去することができ
る。
【0011】本発明における蛋白質合成系は実質的に生
きた細胞を含まないいわゆる無細胞蛋白質合成系であ
る。この蛋白質合成系は細胞破壊によって得られ、破壊
された細胞が有していた蛋白質合成能を利用するもので
ある。蛋白質合成系は細胞破壊液そのものであってもよ
いが、粗大固形分を除くなどの調製を行ったものが好ま
しい。通常は不要成分を除いた細胞抽出液に必要により
成分を追加して調製される。
【0012】無細胞蛋白質合成系を調製するための起源
の細胞(破壊する細胞)は特に限定されず、真核生物、
原核生物のいずれの細胞も使用できる。すなわち、動物
細胞、植物細胞、真菌細胞、細菌細胞などが使用でき
る。具体的には、例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、高
等植物細胞、酵母細胞、放線菌細胞、大腸菌細胞などが
挙げられる。
【0013】本発明の無細胞蛋白質合成系による蛋白質
の合成は、前記活性阻害因子を不活性化および/または
除去した無細胞蛋白質合成系である点を除き、従来と同
様の方法で行うことができる。この方法は周知あるいは
公知のバッチ法であってもよく、前記したスピリンらの
連続式無細胞蛋白質合成システムなどの連続法であって
もよい。
【0014】本発明について、コムギ胚芽の系を用いて
行った実験により、具体例をもってさらに説明する。
【0015】発明者らは先に、ヒマ種子に存在する細胞
毒素蛋白質であるライシン(ricin)の毒性機構を
分子レベルで解明した(Endo,Y.,et al.
(1987)J.Biol.Chem.,262,59
08−5912、Endo,Y.,et al.(19
87),262,8128−8130)。すなわち、ラ
イシンA鎖は、リボソーム大亜粒子を構成する大RNA
分子(高等生物では26−28S rRNA、大腸菌で
は23S rRNAにあたる)の、進化的にその構造が
保存された特定部位のN−グリコシド結合(ネズミ肝臓
の28S rRNAでは5’末端から4324番目)
の、加水分解を触媒する特異な酵素で、RNA N−グ
リコシダーゼ(RNA N−glycosidase)
と命名した。リボソームは、この酵素活性によってアデ
ニン1分子を遊離し、その翻訳機能を完全に消失する。
【0016】その後、ライシンA鎖と同一な活性を持っ
たリボソーム不活性化蛋白質(Ribosome−In
activating−Protein、以下RIPと
略す)が多数の植物から単離された(Soria,M.
R.,et al.(1992)in Genetic
ally Engineered Toxins(e
d.by Frankel,A.E.),pp192−
212,MarcelDekker,Inc.)。ま
た、これらRIPの多くは、抗ウイルス作用を有するこ
とから、植物の自己防御機構に関与しているものと考え
られているが、その実体に関しては不明の点が多い。
【0017】約30年前にニレンバーグらが大腸菌から
無細胞蛋白質合成系を開発して以来、種々の生物から無
細胞蛋白質合成系が調製されている(Miller,
J.S.,et al.(1983)in Metho
ds in Enzymology,Part C,1
01,pp650−674,Academic Pre
ss)。なかでも、コムギ胚芽、ウサギ網状赤血球、ま
たは大腸菌などから調製された無細胞蛋白質合成系は比
較的蛋白質合成活性が高く、現在ではそれらのキットも
市販されている。しかしいずれの系においても、翻訳反
応は1〜2時間で停止し翻訳効率が極めて低いことか
ら、蛋白質の実用的な調製手段としては利用できないと
いう欠点を有する。
【0018】一般的に無細胞蛋白質合成系における蛋白
質の合成量は生細胞のそれに比べて百分の一から一万分
の一と見積もられているが(Mancheter,K.
L.(1970)in Mammalian Prot
ein Metabolism,ed.by Munr
o,H.N.,et al.,IV,pp229−29
8,Academic Press)その原因について
は不明であった。発明者はまず、コムギ胚芽無細胞系に
おける蛋白質合成活性低下の機作について調べることか
ら無細胞蛋白質合成系の高効率化の方策を検討した。
【0019】コムギ胚芽にはトリチン(tritin)
と呼ばれるRIPが存在し、そのRNA N−グリコシ
ダーゼ活性は、植物細胞リボソームをライシンA鎖と同
一の機構でこれを不活性化することが知られている(R
oberts,W.K.(1979)Biochemi
stry,18,2615−2621)。発明者らはこ
れまでの研究結果から、コムギ胚芽無細胞系における低
い翻訳活性は、この内因性トリチンによる自己リボソー
ムの不活性化に起因するのではないかと考えた。そこ
で、コムギ胚芽の無細胞蛋白質を調製し、細胞破壊に伴
うトリチンの活性化、コムギ胚芽リボソームの不活性化
を調べたところ、コムギ胚芽リボソーム28S rRN
AのN−グリコシダーゼ特異的作用部位の脱アデニン化
が観察され、さらにそのN−グリコシダーゼがトリチン
であることを抗体を用いて同定した。
【0020】次に、上記の条件で抗トリチン抗体を共存
させてコムギ胚芽無細胞蛋白質合成系の蛋白質合成効率
を調べた。mRNAとしてジヒドロ葉酸還元酵素(DH
FR)を用い、14C−ロイシンの取り込みを測定した
ところ、抗体添加系では無添加系に比べ反応時間が少な
くとも1.5倍以上も延び、取り込み量も2.5倍以上
であった。
【0021】以上のことをまとめると、(1)コムギ胚
芽に内存するプログラム細胞死機構に関わるトリチン
が、コムギ胚芽の破砕に伴って不可避的に細胞抽出液に
混入し、自己のリボソームを不活性化すること、(2)
無細胞系における蛋白質合成の低下はこのことに起因す
ること、(3)抗トリチン抗体を用いるなど、トリチン
活性を除去・中和することによって長時間にわたって蛋
白質合成反応が持続するようになるので蛋白質合成活性
の効率化ができることなどが示された。
【0022】以上説明した実験について、以下実施例と
して具体的に説明する。しかし、本発明はこの実施例の
みに限定されるものではない。
【0023】
【実施例】[実施例1] コムギ胚芽の破砕によって誘発されるトリチンの活性化
および、コムギ胚芽リボソームの不活性化
【0024】市販のコムギ胚芽をエリクソン(Eric
kson)の方法で破砕し、細胞抽出液を得た後、無細
胞蛋白質合成液を調製した(Erickson,A.
H.,et al.(1983)in Methods
in Enzymology,96,38−50)。
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードするmRN
Aを鋳型として用い、上記エリクソンらの方法に従って
26℃で蛋白質合成反応を行った。コムギ胚芽リボソー
ムの内因性RNA N−グリコシダーゼによる脱アデニ
ン化反応は発明者らの方法によって調べた(Endo,
Y.,et al.(1987)J.Biol.Che
m.,262,5908−1912)。
【0025】反応2、4、6時間後の反応液からそれぞ
れRNAを抽出し、酸性下アニリン処理を行った後、ゲ
ル電気泳動で、28S rRNAを分離すると、図1の
矢印部に新たなRNA断片が生じていることが認められ
た(それぞれレーン3、4、5の矢印部)。RNA断片
の生成は、保温開始前には見られない(レーン1)。こ
のRNA断片は、別に作成しておいたRNA断片マーカ
ー(レーン2)と同一の移動度を示すことから、コムギ
胚芽リボソームの28S rRNAの脱アデニン化部
は、進化的にその構造が保存されたRNA N−グリコ
シダーゼの特異的な作用部位(ネズミ肝28S rRN
Aの4324番目のアデニンに対応)であることが判明
した。
【0026】以上の結果は、コムギ胚芽の破砕に伴っ
て、内因性のRNA N−グリコシダーゼが何らかの機
作によって活性化したことを示している。さらに、この
結果は、コムギ胚芽無細胞系においては、蛋白質合成反
応中にこのRIPの作用によって、リボソームの不活性
化が生じることを示唆している。
【0027】次に、このRNA N−グリコシダーゼの
蛋白質としての実体がトリチンであるか否かを調べる目
的で、家兎にて作製した抗トリチン抗体を用いて、上記
RNA N−グリコシダーゼの中和実験を試みた。上記
と同様な蛋白質合成系に抗トリチン抗体を添加して6時
間反応を行い、同様にRNAをゲル電気泳動で分離し
た。
【0028】その結果、抗トリチン抗体の添加によっ
て、RNA断片の生成が著しく抑制されることが確認さ
れた(図1、レーン5とレーン6の矢印部のバンドの濃
さを比較するとレーン6が著しく薄くなった)。この事
実は、コムギ胚芽リボソームの修飾反応(脱アデニン
化)が、内因性のRIPであるトリチンによって触媒さ
れたことを示している。さらにこの結果は、生理機能が
不明であったコムギ胚芽トリチンが、傷ついた胚芽細胞
のリボソームを不活性化し、みずから自殺することによ
って、ウイルス感染などを防ぐ、いわゆるプログラム細
胞死機構の因子として働いていることを示している。
【0029】また本実験結果は、細胞破砕によって起因
されたトリチンの活性を、同蛋白質に対する抗体を用い
ることによって有効に中和することが可能なことも示し
ている。しかし、この翻訳反応系へ抗体を添加する方法
による中和は完全でないことが分かる(レーン6で若干
の特異バンドが生成することで分かる)。そこで、トリ
チン活性を除去することを目的に、コムギ胚芽抽出液の
調製は、以下の2方法を併用した。すなわち、(1)抽
出液は、抗トリチン抗体存在下に調製する、(2)抗ト
リチン抗体を固定化したカラムに抽出液を通し、内存性
トリチンを捕集除去することである。
【0030】このようにして得たコムギ胚芽抽出液を用
いて、上記と同様に蛋白質合成反応を行い、RNAを分
析した結果を図1のレーン7に示した。写真から分かる
ように、6時間の反応において、特異なRNA断片がほ
とんど生成しない(レーン7の矢印部分にはほとんど特
異バンドが見られない)。レーン6、7に対応する対照
実験として非免疫抗体を用いると(レーン8、9)、レ
ーン5で見られたと同様に、リボソームの顕著な脱アデ
ニン化反応が認められる。
【0031】[実施例2]抗トリチン抗体を利用したコ
ムギ胚芽無細胞蛋白質合成系の効率化
【0032】RNA N−グリコシダーゼの作用によっ
て脱アデニン化したリボソームは、mRNA上でフリー
ズし、ペプチド鎖伸長反応が停止することが知られてい
る。(Furutani,M.,et al.(199
2)Arch.Biochem.Biophys.,2
93,140−146)。そこで、上記実施例1で示し
た条件下で、DHFR合成を14C−ロイシンの蛋白質
への取り込みにより測定した。実験方法は、エリクソン
(Erickson)らの常法を用いた。その結果を図
2に示す。
【0033】図2に示したように、従来のコムギ胚芽無
細胞蛋白質合成系では、鋳型mRNAの添加に依存して
翻訳反応が進行するが、2時間後には、反応が完全に停
止する(●−●)。同様の反応液に抗トリチン抗体を添
加すると、翻訳反応が約3時間までほぼ直線的に進行
し、さらにその後も反応が持続することが分かる(□−
□)。さらに、内存性トリチンを除去し、反応時に抗ト
リチン抗体を添加した反応系では、翻訳反応が5時間以
上にわたって、ほぼ直線的に進行することが明らかにな
った(△−△)。これと同様な実験を非抗トリチン抗体
を用いて行っても、その効果は全く認めらない(■−
■)。なお、鋳型mRNAの添加を行わない場合は、蛋
白質合成は行われない(○−○)。
【0034】これらの結果は、抗トリチン抗体がコムギ
胚芽無細胞蛋白質合成系における蛋白質合成の効率を著
しく上昇させることを示している。図2の取り込まれた
14C−ロイシンの放射活性から、DHFRの反応系1
ml当たりの合成量を計算すると、従来の無細胞蛋白質
合成系では最大限で約40μgであるのに対し、抗トリ
チン抗体を利用して、内在性トリチンを除去・中和した
系では約105μgであった。この収量は、スピリンら
の開発した連続式無細胞蛋白質合成システムを利用する
蛋白質合成量[反応液1ml,反応時間20時間当たり
97μg](Endo,Y.,et al.(199
2)J.Biotech.,25,221−230)に
匹敵するものであった。
【0035】[実施例3]翻訳産物の同定
【0036】図2では、14C−ロイシンの蛋白質への
取り込みを測定したが、目的とする完成されたDHFR
が、実際に合成されていることを確認する目的で、6時
間の合成反応後、反応液の一部(2.5μl)を採り、
合成された蛋白質をSDS−ゲル電気泳動によって分離
し、該蛋白質のバンドをクマシーブリリアントブルーを
用いて染色した(図3)。
【0037】レーン1はDHFR mRNA非存在下、
レーン2はその存在下で蛋白質合成を行ったものであ
る。レーン3は抗トリチン抗体を合成反応系に添加した
もの、レーン4はトリチンを抗トリチン抗体を利用して
除去・中和した合成反応液を分析したものである。レー
ン4の矢印部にDHFRと同一の移動度を示す蛋白質バ
ンドが明確に認められる。また、対応するバンドがレー
ン1には確認できないことから、これがDHFR mR
NAの翻訳産物であると結論した。従来のコムギ胚芽無
細胞蛋白質合成系では、生成量が少ないことからDHF
Rは明瞭なバンドとしては観察されない。
【0038】さらにレーン4とレーン3のデンシトメー
ターを用いたDHFRバンドのスキャニングの結果か
ら、既に発明者らは、従来の無細胞系を用いてDHFR
合成を試み、この翻訳産物が酵素活性を保持しているこ
とを見い出している(Endo,Y.,et al.
(1992)J.Biotech.,25,221−2
30)ので、本実験で合成されたDHFRも酵素活性を
有する蛋白質としての構造を保持しているものと考えら
れる。
【0039】
【発明の効果】本発明は従来1〜2時間程度で反応の進
行が止まってしまった無細胞蛋白質合成系の寿命を3〜
5時間以上に延ばすばかりか、反応効率も上昇させると
いう優れた効果を有し、特に生成蛋白量が従来の系の
2.5倍以上にも達することにより、蛋白質製造コスト
の低減に大きく寄与する効果が認められる。またスピリ
ンらの開発した連続式蛋白合成系と組み合わせることに
より、さらなる効率化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コムギ胚芽の破砕により誘発されるトリチンに
よるコムギ胚芽リボソームの不活性化を説明する図であ
る。レーン1は反応開始前の陰性コントロール、レーン
2はRNA断片マーカー、レーン3は合成反応開始2時
間後、レーン4は4時間後、レーン5は6時間後、レー
ン6は合成反応系に抗トリチン抗体を添加したもの、レ
ーン7はトリチンを抗トリチン抗体により除去したも
の、レーン8は合成反応系に非免疫抗体を添加したも
の、レーン9はトリチン除去に非免疫抗体を使用したも
のである。
【図2】抗トリチン抗体を用いることにより、コムギ胚
芽細胞蛋白質合成系における蛋白質合成の効率が増加す
ることを示す図である。図中、●−●は従来のコムギ胚
芽無細胞蛋白質合成反応液、□−□は抗トリチン抗体を
添加したもの、△−△は内存性トリチンを除去し反応時
に抗トリチン抗体を添加したもの、■−■は抗トリチン
抗体の代わりに非抗トリチン抗体を用いたもの、○−○
は鋳型mRNA非存在反応液である。
【図3】コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系で合成され
た蛋白質(DHFR)をゲル電気泳動で確認した図であ
る。図中、レーン1はDHFR mRNA非存在下で、
レーン2はDHFR mRNA存在下で、レーン3はD
HFR mRNA存在下で抗トリチン抗体を合成反応系
に添加し、レーン4はトリチンを抗トリチン抗体を利用
して除去・中和した合成反応液を用いDHFR mRN
A存在下で、蛋白質合成を行ったものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−236986(JP,A) Biochem.Biophys.R es.Commun.(1983)Vol. 114,No.1,p.190−196 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 21/00 - 21/02 C12N 15/09 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蛋白質合成用組成物であるコムギ胚芽抽出
    物であって、小麦胚芽の破砕によって生じた、少なくと
    もトリチンの活性が抗トリチン抗体を使用して除去し
    た、又は該同等のトリチン除去レベルにある高等植物由
    来蛋白質合成用組成物。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の組成物を用いることを特
    徴とする無細胞タンパク質合成系によって遺伝子情報よ
    り蛋白質を合成する蛋白質の合成方法。
  3. 【請求項3】蛋白質合成用組成物であるコムギ胚芽抽出
    物の製造方法であって、少なくとも小麦胚芽の破砕によ
    って生じたトリチンの活性を除去する手段を含む高等植
    物由来蛋白質合成用組成物の製造方法。
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