明細書
自動蛋白質合成方法及ぴそれを行うための装置 本出願は、 参照により ここに援用されるところの、 日本特許出願番号
5 2003-033009からの優先権を請求する。 技術分野
本発明は、 無細胞蛋白質合成を自動で行わせる方法、 及ぴそのための自動蛋白 質合成装置に関する。
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背景技術
ゲノミタスが急速に進展し、 種々の生物体のゲノムプロジヱクトが次々と完了 していく今日において、 研究課題の中心は遺伝子構造解析から遺伝子機能解析へ と大きく転換してきている。 ノックァゥトを含めたトランスジエニック技術は、5 既に機能が解明された遺伝子の導入 ·破壊により目的の機能が付加された変異体 の作製などにおいては多大な成果をもたらしてきたが、 未知の遺伝子機能解析に おいては、 細胞というブラックボックスを通して得られる表現型に基づくデータ 解釈にとどまつているのが現状である。 このことは、 これらの技術により機能の 同定できた遺伝子がごく少数であるという事実からも明らかであろう。 一方、 機 能が解明された遺伝子は、 必ずといってよいほど生化学的な裏付けを伴っている c 従って、 ゲノム情報から得られた未知遺伝子の機能解析には、 遺伝子産物の生化 学的な解析が必須であるといえる。
蛋白質の合成にはクローン化した遺伝子を生細胞で発現させる遺伝子工学的 手法が広く利用されているが、 この方法で入手可能な外来性蛋白質は、 宿主の生 命維持機構をくぐり抜けられる分子種に限られてしまう。 一方、 有機合成技術の 進展によってぺプチド自動合成機が普及し、 数十個のアミノ酸から成るぺプチド を合成することは日常的となっているが、 分子量のより大きな蛋白質を化学的に
合成することは収率や副反応等の限界から現在においてもきわめて困難である。 さらに欧米では、 従来型の生体をそのまま利用する蛋白質生産や新規分子探索方 法に対する倫理的な批判が強く、 国際的な規制がさらに厳しくなる懸念もある。 このような問題点を打破する新しい蛋白質合成法として、 生化学的手法を取り 入れ、 生物体の優れた特性を最大限に利用しょうとする、 無細胞蛋白質合成法を 挙げることができる。 この方法は、 生体の遺伝情報の転写系、 翻訳系を人工容器 内に取り揃え、 設計 ·合成した転写鎵型から、 非天然型をも含む望みのアミノ酸 を取り込むことのできる系を再構築するというものである。 このシステムでは、 生命体の制約を受けることがないので、 合成可能な蛋白質分子種を殆ど無限大に まで広げることが期待できる。 このような無細胞蛋白質合成法は、 すり潰した細 胞液に蛋白質合成能が残存することが 4 0年前に報告されて以来、 種々の方法が 開発され、 大腸菌、 コムギ胚芽、 ゥサギ網状赤血球由来の細胞抽出液は蛋白質合 成用として現在も広く利用されている。 中でも、 コムギ胚芽由来の細胞抽出液な ど、 真核生物由来の細胞抽出液は、 その蛋白質合成能の高さおょぴ蛋白質のフォ 一ルディングの正確さから、 注目を浴ぴている。
膨大なゲノム情報から得られた遺伝子の機能解析のためには、 短時間で簡便に 多検体の蛋白質を合成し得るハイスループットな合成システムの開発が望まれ る。 無細胞蛋白質合成法においては、 ①転写錶型から翻訳鍀型である ni R N Aを 得るための転写反応、 ② m R N Aを铸型として蛋白質を合成する翻訳反応の各ェ 程をそれぞれ自動で行うための装置はすでに開発されている。 また、 原核生物で ある大腸菌由来の細胞抽出液を用いた場合には、 1つの溶液中で転写反応、 翻訳 反応を行わしめることができるため、 転写反応、 翻訳反応を経て転写鎵型から蛋 白質を自動で合成するための装置はすでに開発されている。 し力 しながら、 優れ た蛋白質合成能を有する小麦胚芽など真核生物由来の細胞抽出液については、 上 記のように転写反応により得られた翻訳铸型を翻訳反応に供するまでの間にお いて不可避的に手動の操作を要するために、 転写铸型からそれにコードされる蛋 白質を生成させるまでの一連の操作を自動で行うことができなかった。
すなわち、 上記真核生物由来の細胞抽出液を用いた従来の無細胞蛋白質合成法 においては、 転写反応における未反応基質や副生物が後の翻訳反応を阻害するた め、 これらを除去することが必須であると考えられており、 アルコール沈殿ゃゲ ル濾過カラムによる除去操作が行われていた (例えば、 従来法の典型的プロトコ ルとして、 図 1の右カラム工程 b 1 2〜b 1 6を参照)。 この際、 ゲル濾過に使 用されるバッファーに含まれる塩が後の翻訳反応を阻害するために、 再度の沈殿 及び 又は洗浄操作を行わないと、 少なくとも一部の蛋白質については蛋白質が 全くまたはわずかしか得られない。 しかしながら、,.かかる再沈殿 ·洗净操作を行 うと、 反応容器の底面に表面張力で保持されていた翻訳铸型の沈殿が剥離してし まい、 自動合成装置の構成として用い得る通常の遠心分離機では、 再度遠心して も液中に浮遊した状態となり、 翻訳铸型をロスせずに上清を除去するためには、 実験者がピぺットなどを用いて手動で注意深く行わなければならなかつた。
また、 精製された翻訳鎳型は、 従来、 超純水や翻訳反応のための基質、 ェネル ギ一源等を含む溶液 (翻訳反応用溶液) に一旦溶解した後で、 リボソーム等の蛋 白質合成装置を含む細胞抽出液と混合して翻訳反応に供していたが (図 1の右力 ラム工程 b 1 8、 b 1 9 )、 翻訳錶型である mR N Aは水もしくは翻訳反応用溶 液に極めて溶けにくく、 実験者が検体ごとにピぺットの先などを用いて攪拌して 溶解させなければならなかった。 発明の開示
したがって、 本発明の目的は、 無細胞蛋白質合成の自動化における上記課題を 解決し、 以つて、 転写錶型から該錶型にコードされる蛋白質の生成までの一連の 工程、 好ましくは転写錶型の作製から蛋白質の生成までの工程を自動で行わせる 方法を提供することであり、 当該方法を実行し得る自動蛋白質合成装置、 特に同 時に多種類の蛋白質を合成し得る自動蛋白質合成装置を提供することである。 本発明者らは、 上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、 (1 ) 転写反 応後に得られた翻訳鐃型を沈殿させた後、 未反応基質を除去する工程及びそれに
付随するバッファー交換のための洗浄工程 ·沈殿工程を省略しても、 蛋白質の翻 訳効率に影響がないこと、 並びに (2 ) 翻訳錄型の沈殿を一旦水もしくは翻訳反 応用溶液に溶解させるのではなく、 蛋白質合成用細胞抽出液を直接添加すると、 意外にも極めて容易に沈殿が溶解することを見出した。 本発明者は、 これらの知 見に基づいて新規な無細胞蛋白質合成のプロトコルを開発し、 該プロトコノレを実 行し得る自動蛋白質合成装置を構築することに成功して、 本発明を完成するに至 つた。
即ち、 本発明は以下のとおりである。
1 . 無細胞蛋白質合成工程において、 転写鍚型から該鎵型にコードされる蛋白質 を生成するまでの反応工程において、 転写反応後の反応液中の翻訳鎵型を沈殿、 上清液の除去及ぴ該翻訳鎵型の乾燥工程の後に、 蛋白質合成用細胞抽出液を該沈 殿物に直接添加することにより該沈殿物を溶解する工程を含む無細胞蛋白質合 成方法。
2 . 目的蛋白質をコードする転写錶型を増幅させて調製する工程をさらに含む前 項 1に記載の無細胞蛋白質合成方法。
3 . 目的蛋白質をコードする遺伝子を含有する宿主細胞を、 直接ポリメラーゼチ ェィン反応に供し、 転写鎳型を増幅させて調製する工程を特徵とする前項 1また は 2に記載の無細胞蛋白質合成方法。
4 . 転写鎳型の作成から該転写铸型にコードされる蛋白質を生成するまでの反応 を自動で行うことを特徴とする前項 1〜3のいずれか 1に記載の無細胞蛋白質 合成方法。
5 . 翻訳反応用溶液を、 翻訳鎳型を含む蛋白質合成用細胞抽出液に重層して翻訳 反応を行わせることを特徴とする、 前項 1〜4のいずれか 1に記載の無細胞蛋白 質合成方法。
6 . 翻訳反応用溶液を、 翻訳鎳型を含む蛋白質合成用細胞抽出液に添加 '混合し て翻訳反応を行わせることを特徴とする、 前項 1〜4のいずれか 1に記載の無細 胞蛋白質合成方法。
7. 以下のいずれか 1の工程を含む前項 1〜 6のいずれか 1に記載の無細胞蛋白 質合成方法。
(1) 転写铸型を PCRで増幅させて調製する工程;
(2) 転写反応用溶液と転写鍀型を混合する工程;
(3) 転写反応用溶液と転写錶型との混合物を一定時間インキュベートするェ 程;
(4) 翻訳铸型を沈殿させる工程;
(5) 反応容器内の上清を除去する工程;
(6) 翻訳铸型の沈殿物を乾燥させる工程;及び
(7) 蛋白質合成用細胞抽出液を、 乾燥させた翻訳鏡型に加え、 該翻訳铸型を溶 解する工程。
8. 全反応工程を、 同一の反応容器内で行わせるものである、 前項 1〜 7のいず れか 1に記載の無細胞蛋白質合成方法。
9. 同時に複数種類の蛋白質を複数の反応容器內で反応合成することを特徴とす る前項 1〜8のいずれか 1に記載の無細胞蛋白質合成方法。
10. 前記蛋白質合成用細胞抽出液が植物種子胚芽抽出液である前項 1〜 9のい ずれか 1に記載の無細胞蛋白質合成方法。
1 1. 前記植物種子胚芽抽出液がコムギ種子胚芽抽出液である前項 10に記載の 無細胞蛋白質合成方法。
12. 前記コムギ種子胚芽抽出液が、 胚芽の胚乳成分および低分子の蛋白質合成 阻害剤物質が実質的に除去された抽出液である前項 1 1に記載の無細胞蛋白質 合成方法。
1 3. 前項 1〜1 2のいずれか 1に記載の無細胞蛋白質合成方法を実施するため の装置であって、 以下の制御手段の 1を少なくとも備える無細胞蛋白質合成装置。 (a) 反応容器内の温度を可変制御する手段;
(b) 反応容器にサンプルまたは試薬を分注する手段;
( c ) 沈殿手段;
( d ) 上清を除去する手段;
( e ) 乾燥手段;及び
( f ) 上記 (a ) 〜 (e ) の手段を前項 1 ~ 1 2のいずれかに 1に記載の工程に 沿って動作させるための制御手段
1 4 . 前記上清を除去する手段が、 反応容器を裏返す動作を行わせるための手段 である前項 1 3に記載の無細胞蛋白質合成装置。
1 5 . さらに、 反応容器の蓋の開閉を行う手段を含むことを特徴とする、 前項 1 3または 1 4に記載の無細胞蛋白質合成装置。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の方法の具体例と、 従来の方法とを比較した工程に要する時間 を示す図である。
図 2は、 実験例 2の実験結果を示すグラフである。
図 3は、 実験例 3の実験結果を示す SDS-PAGEの写真である。 発明を実施するための最良の形態
本発明は、 少なくとも反応系に提供された転写铸型から該錶型にコードされる 蛋白質を生成するまでの反応操作を自動で行わせる方法 (以下、 単に 「本発明の 方法」 という場合もある) を提供する。 ここで 「操作を自動で行わせる」 とは、 一連の工程中に、 実験者が反応系 (反応容器) に直接的に手動の操作を加えない ことを意味する。 従って、 各工程を実行させるに際し、 用いられる本発明の自動 蛋白質合成装置に設けられた所定の操作ボタンゃスィツチなどの操作を実験者 が手動で行うことは、 本発明における 「自動」 の要件を損なうものではない。 ま た、 用いる反応容器は各工程において異なるものであってもよいが、 本発明の方 法を実行させる装置の構造の単純化や試料 ·生成物のロスを防ぐ等の目的から、 一連の工程が同一反応容器内で実施されるように設計されることが好ましい。 本発明の方法は、 転写反応工程、 翻訳鎵型の精製工程および翻訳反応工程に分
けられる。 また、 好ましくは、 本発明の方法は、 転写铸型の作製から該鎳型にコ 一ドされる蛋白質の生成までの工程を自動で行わせることを特徴とする。 したが つて、 好ましい態様においては、 本発明の方法は、 転写反応工程に先立って転写 鎵型の作製工程をさらに含む。 以下、 各工程について具体的な実施態様を挙げて 詳述するが、 本発明の方法は、 翻訳鎳型の精製工程における上記 2つの特徴の少 なくとも 1つを有する限り、 それらに制限されるものではない。
( 1 ) 転写铸型の作製工程
本発明の方法において、 本工程は必ずしも自動で行う必要はなく、 手動により 得られた転写鎳型を以下の自動化工程に用いることもできるが、 本工程を含めて、 転写鎳型の作製から該錶型にコードされる蛋白質の生成までの一連の工程を自 動で行わせることがより好ましい。
本明細書において 「転写錶型」 とは、 インビトロ転写反応の鏡型分子として使 用し得る D N Aをいい、 適当なプロモーター配列の下流に目的蛋白質をコードす る塩基配列を少なくとも有する。 適当なプロモーター配列とは、 転写反応におい て使用される R NAポリメラーゼが認識し得るプロモーター配列をいい、 例えば、 SP6プロモーター、 T7プロモーター等が挙げられる。 目的蛋白質をコードする D N Aはいかなるものであってもよい。
転写铸型は、 プロモーター配列と目的蛋白質をコードする塩基配列との間に翻 訳効率を制御する活性を有する塩基配列を有することが好ましく、 例えば、 タバ コモザィクウィルス由来の Ω配列などの R N Aウィルス由来の 5, 非翻訳領域、 及び/又はコザック配列等を用いることができる。 さらに、 転写铸型は、 目的蛋白 質をコードする塩基配列の下流に転写ターミネーション領域等を含む 3 ' 非翻訳 領域を含むことが好ましい。 3 ' 非翻訳領域としては、 終止コドンより下流の約 1 . 0〜約 3 . 0キロベース程度が好ましく用いられる。 これらの 3 ' 非翻訳領 域は必ずしも目的蛋白質をコードする遺伝子本来のそれである必要はない。
転写铸型の作製は、 自体公知の手法により実施することができる。 例えば、 所
望の転写鎳型と同一の塩基配列を含む D N Aが揷入されたプラスミドを有する 大腸菌などの宿主細胞を培養し、 周知の精製方法を用いて該プラスミドを大量調 製した後、 適当な制限酵素を用いて該プラスミドから転写錶型 D N Aを切り出し、 フエノール処理及びクロ口ホルム処理により制限酵素を除去し、 さらにエタノー ルゃイソプロパノールによるアルコール沈殿 (必要に応じて、 適当量の酢酸アン モニゥム、 酢酸ナトリウム、 塩ィ匕ナトリウム等の塩を添加する) などにより転写 鎳型を精製する方法が挙げられる。 得られた D N Aの沈殿は、 超純水や後述の転 写反応用溶液に溶解して以下の転写反応に供することができる。
かかる一連の操作を自動もしくは半自動 (工程の一部に実験者が反応系に直接 的に手動の操作を加える態様をいうものとする) で実施するための装置は知られ ており、 これを本発明の自動蛋白質合成装置に組み込むことにより、 転写錶型の 作製から目的蛋白質の生成までを自動で行わせることが可能であるが、 ハイスル ープット解析のための自動無細胞蛋白質合成システムの提供という本発明の目 的と、 装置の単純化、 所要時間の短縮化等を考慮すれば、 以下のポリメラーゼ - チヱイン反応 (P C R ) 法により転写錶型を作製する方法を利用することがより 好ましい。
本発明の方法の好ましい実施態様においては、 目的蛋白質をコードする D N A がクローン化された宿主 (例えば、 該 D N Aを含むプラスミ ドを有する大腸菌な ど) を直接 P C Rにかけて転写錶型を増幅する方法が用いられる。 例えば、 適当 なプロモーター配列、 翻訳効率を制御する活性を有する 5 ' 非翻訳配列及ぴ目的 蛋白質をコードする D N Aの 5, 端領域の一部を含むオリゴヌクレオチドを、 D N A自動合成機を用いて公知の手法により合成し、 これをセンスプライマー、 ま た 3 ' 非翻訳配列の 3 ' 端領域の配列を有するオリゴヌクレオチドをアンチセン スプライマーとし、 鏡型として目的蛋白質をコードする D N Aおよびその下流に 該 3 ' 非翻訳配列を含むプラスミ ドを有する大腸菌などの宿主を直接 P C R反応 液に加えて、 通常の条件で増幅反応を行わせることにより所望の転写铸型を得る ことができる。 尚、 非特異的増幅により生じる短鎖 D NA (結果として目的産物
の収量低下及び低分子翻訳産物ノイズを生じる) の生成を防ぐために、 国際公開 第 0 2 / 1 8 5 8 6号パンフレツトに記載のプロモーター分断型プライマーを 用いることもできる。
増幅反応は、 市販の P C R用サーマルサイクラ一を用いて市販の P C R用 9 6 穴プレート中で行うこともできるし、 同様の温度可変制御装置を本発明の自動蛋 白質合成装置と連動させるか、 あるいは本発明の自動蛋白質合成装置の転写 ·翻 訳反応を行わせるための各手段をそのまま P C Rに適用させることもできる。 上記のようにして得られる転写铸型 D N Aはクロロホルム抽出やアルコール 沈殿により精製した後に転写反応に供してもよいが、 装置の単純化、 所要時間の 短縮化のためには P C R反応液をそのまま転写錶型溶液として使用することが 好ましい。 転写铸型の作製において、 上記した宿主からの直接 P C Rを用いるこ とにより、 一旦プラスミドを大量調製して、 これを制限酵素処理して転写鎵型を 得る方法と比較して、 工程を格段に省略でき、 少ない工程数で短時間での転写鎳 型の大量合成が可能となる (図 1を参照)。 すなわち、 目的遺伝子を組み込んだ プラスミドを有する大腸菌を培養してプラスミ ドを大量調製する工程 (図 1の右 カラム工程 b 1 ) を必要としないので、 培養やプラスミ ド精製のための超遠心に 要する時間を短縮することができる (例えば、 図 1に示す通り 7 2時間から 6時 間に大幅に短縮できる)。 また、 プラスミドから転写铸型を切り出すための制限 酵素処理 (工程 b 2 )、 及ぴ制限酵素等を除去するためのフエノール処理、 クロ 口ホルム処理(工程 b 3及ぴ b 4 )、転写鐃型の精製のためのアルコール沈殿(ェ 程 b 5 )、 転写錶型である D N Aの沈殿を溶解する工程 (工程 b 6 ) を省略する ことができるので、 フエノール/クロロホルムの残存による転写反応の阻害や、 多工程の精製操作による転写铸型のロスがない。 また、 反応に要するステップ数 を少なくすることができるので使用するチップ数なども少なくて済むというさ らなる利点を有する。
( 2 ) 転写反応工程
本発明の方法は、 自体公知の方法を用いて調製された目的蛋白質をコードする 転写鎳型 D N Aから、 インビトロ転写反応により翻訳錶型である mR NAを生成 させる工程を含む。 当該工程は、 反応系 (例えば、 9 6穴タイタープレートなど の市販の容器) に提供された転写铸型を含む溶液、 好ましくは上記 P C R反応液 と、 転写铸型中のプロモーターに適合する R N Aポリメラーゼ (例えば、 S P 6 R N Aポリメラーゼなど) や R N A合成用の基質 (4種類のリポヌクレオシド 3 リン酸) 等の転写反応に必要な成分を含む溶液 (「転写反応用溶液」 ともいう) とを混合した後、 約 2 0 °C〜約 6 0 °C、 好ましくは約 3 0 °C〜約 4 2 °Cで約 3 0 分間〜約 1 6時間、 好ましくは約 2時間〜約 5時間該混合液をィンキュベートす ることにより行われる。 転写鎳型溶液、 転写反応用溶液の反応容器への分注、 混 合等の操作は後述の自動蛋白質合成装置の分注手段 (例えば、 ピぺッター (反応 容器として市販の 9 6穴タイタープレートを用いる場合には、 ゥエル間隔に適合 した 8連もしくは 1 2連の分注チップを有するものが好ましく用いられる) な ど) を用いて行うことができる。 また転写反応のためのインキュベーションは、 後述の自動蛋白質合成装置の温度制御手段により一定温度に制御しながら行う ことができる。
( 3 ) 翻訳鎵型の精製工程
上記のようにして生成する転写産物 (すなわち 「翻訳铸型」) は、 所望により 転写錡型中に挿入された翻訳効率を制御する活性を有する 5 ' 非翻訳配列及び Z 又は 3 ' 非翻訳配列を含む、 目的蛋白質をコードする塩基配列を有する R N A分 子である。 転写反応後の反応液中には、 翻訳鏡型 R N Aの他に未反応のリボヌク レオシド 3リン酸ゃ反応副生物であるピロリン酸、 その他転写反応用溶液に含有 された塩などが混入しているが、 これらの物質は後の翻訳反応を阻害することが 知られているので、 翻訳錶型を選択的に沈殿させて未反応基質などを分離除去す る。 かかる沈殿手段としては、 例えば塩析などが挙げられ、 好ましくはアルコー ル沈殿法が例示されるが、 それらに限定されない。 アルコール沈殿法を用いる場
合、 使用するアルコールは R NAを選択的に沈殿させ得るものであれば特に制限 はないが、 例えばエタノール、 イソプロパノールなどが好ましく、 エタノールが より好ましい。 エタノールの場合、 転写反応液の約 2倍量〜約 3倍量、 イソプロ パノールの場合、 転写反応液の約 0 . 6倍量〜約 1倍量を使用することが好まし レ、。 また、 適当な塩を共存させることにより沈殿の収量を増大させることができ る。 このような塩としては、 酢酸アンモニゥム、 '酢酸ナトリウム、 塩ィ匕ナトリウ ム、 塩化リチウムなどが挙げられる。 例えば、 酢酸アンモニゥムを用いる場合、 終濃度が約 0 . 5 M〜約 3 Mとなるように添加することが望ましい。 また、 アル コール沈殿は室温で行えばょレ、。
アルコール及び塩溶液の添カ卩は、 後述の自動蛋白質合成装置の分注手段を用い て行うことができ、 また、 翻訳铸型 R N Aの析出は、 後述の自動蛋白質合成装置 の温度制御手段を用いて一定温度条件下で行うことができる。
尚、 転写反応液中には転写錶型 D N Aも存在するが、 転写鎵型は後の翻訳反応 を阻害することが報告されていたため、 従来は転写反応終了後に D N a s e処理 を行い、 さらにフエノーノレ処理、 クロロホノレム処理を行って D N a s eを変' I"生除 去する操作が行われていた (図 1の右カラム工程 b 9〜b 1 1を参照)。 本発明 者らは、 本発明の方法においては、 転写錶型が翻訳反応液中に共存していても翻 訳効率の低下を招かないことを見出し、 自動蛋白質合成装置の単純化、 所要時間 の短縮化、 並びにフヱノール/ク口口ホルムの残存による翻訳阻害及ぴ多工程の 精製操作による翻訳鎳型のロス防止のために D N a s e処理を省略した。 従って、 本発明の方法は、 転写反応後に転写鏢型の分解 ·除去工程を行わないことをさら なる特徴とする。
上記のようにして析出した翻訳錶型 R N Aは、 自体公知の任意の手段により反 応容器の底面に沈殿させることができる。 このような手段としては、 例えば、 遠 心分離、 濾過、 静置、 凍結乾燥等が挙げられるが、 好ましくは遠心分離である。 遠心分離を利用する場合、 例えば室温以下、 好ましくは約 2 5 °C以下、 より好ま しくは約 4 °C〜約 1 5 °Cで、 約 4 0 0 X g〜約 2 2 0 0 0 X gで行うことができ
る。 力かる遠心分離操作は、 公知の卓上遠心機などに使用される遠心分離手段を 後述の自動蛋白質合成装置に沈殿手段として組み込むことにより実施すること ができる。
最初の沈殿操作により反応容器の底面に沈殿した翻訳鍚型は、 表面張力により 該底面上に保持されるため、 該沈殿操作後の上清除去は実験者が手動で行う必要 はなく、 例えば、 自体公知の装置 (例: B i o R o b o t 8 0 0 0 (キアゲン社 製)) を用いても行うことができ、 あるいは単に反応容器を上下反転させること により行うこともできる。 装置の単純化、 所要時間の短縮化、 用いるチップ数の 削減などを考慮すれば、 後者の手法が自動化のためには有利である。
上清を除去した後、 翻訳鍚型 R N Aの沈殿を乾燥させる。 乾燥は、 残存する上 清中の、 翻訳反応を阻害する要因となり得る成分 (例、 アルコール) が除去され るに必要な時間以上であり、 且つ完全な乾燥による不溶化を引き起こして翻訳効 率を低下させない程度の時間内で行えば、 その方法および時間は特に制限されな いが、 例えば、 自然乾燥、 風乾、 減圧乾燥等の自体公知の方法により、 好ましく は約 1 0分間以下、 より好ましくは約 3分間〜約 8分間行うことができる。
乾燥させた翻訳铸型の沈殿は、 以下の翻訳反応工程に供するため、 蛋白質令成 用細胞抽出液により溶解させる。 ここで用いられる蛋白質合成用細胞抽出液とし ては、 翻訳铸型を翻訳して該鎳型にコードされる蛋白質を生成させ得るものであ れば如何なるものであってもよいが、 具体的には、 大腸菌、 植物種子の胚芽、 ゥ サギ網状赤血球等の細胞抽出液等が用いられる。 これらは市販のものを用いるこ ともできるし、それ自体既知の方法、具体的には、大腸菌抽出液の場合、 Pratt, J. M. et al" Transcription and Tranlation, Hames, 179-209, B. D. & Higgins, S. J., eds), IRL Press, Oxford (1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。 市販の蛋白質合成用細胞抽出液としては、 大腸菌由来では、 E.coli S30 extract system (Promega社製) や RTS 500 Rapid Tranlation System (Roche社製) に添付のもの等が挙げられ、 ゥサギ網状赤血球由来では Rabbit Reticulocyte Lysate Sytem (Promega社製) に添付のもの等、 更にコムギ胚芽由来では
PROTEIOSTM (TOYOBO社製) に添付のもの等が挙げられる。 このうち、 植物 種子の胚芽抽出液の系を用いることが好ましく、 植物種子としては、 コムギ、 ォ ォムギ、イネ、コーン等のイネ科の植物、及びホウレンソゥ等の種子が好ましく、 特にコムギ種子胚芽抽出液を用いたものが好適である。 さらに胚芽の胚乳成分お 5 よぴ低分子の蛋白質合成阻害剤物質が実質的に除去されたコムギ種子胚芽抽出 液抽出液がより好適である。 これらは従来のコムギ種子胚芽抽出液と比較して、 抽出液中の蛋白質合成阻害に関与する成分及ぴ物質が低減されているからであ る。
コムギ胚芽抽出液の作製法としては、 例えば Johnston, F. B. et al., Nature,
10 179, 160-161(1957)、 あるいは Erickson, A. H. et al" (1996) Meth. In Enzymol., 96, 38-50等に記載の方法を用いることができる。 更に、 該抽出液中に含まれる 翻訳阻害因子、 例えばトリチン、 チォニン、 核酸分解酵素等を含む胚乳を取り除 く等の処理 (特開 2 0 0 0— 2 3 6 8 9 6公報等) や、 翻訳阻害因子の活性化を 抑制する処理 (特開平 7— 2 0 3 9 8 4号公報) を行うことも好ましい。
15 コムギ胚芽などの植物種子胚芽の抽出液を用いる場合、 翻訳鎵型の沈殿に添カロ する前に該抽出液を、 例えば、 約 1 5 °C〜約 2 6 °Cで約 3分間以上プレインキュ ベーシヨンすることにより翻訳効率を向上させ得る場合がある。
蛋白質合成用細胞抽出液はそのまま翻訳铸型の沈殿に添加してもよいし、 ある いは翻訳反応に必要もしくは好適な他の成分、 即ち、 基質となるアミノ酸、 エネ 0 ルギ一源、 各種イオン、 緩衝液、 ATP再生系、 核酸分解酵素阻害剤、 tRNA、 還 元剤、 ポリエチレンダリコール、 3 ', 5 ' — cAMP、 葉酸塩、 抗菌剤等のうちの 1つ以上を予め細胞抽出液と混合した後で該沈殿に添加してもよレ、。
蛋白質合成用細胞抽出液を直接翻訳铸型の沈殿に添加することにより、 該沈殿 は極めて容易に溶解するので、 例えば、 後述の自動蛋白質合成装置の分注手段を 5 用いて細胞抽出液を翻訳鎵型の沈殿に添加した後静置するか、 あるいは分注手段 が液の混合手段 (例、 ピペッティング、 撹拌など) としても利用可能に設計され ている場合、 当該混合操作を実施することにより、 短時間で以下の翻訳反応工程
を開始することができる
( 4 ) 翻訳反応工程
上記のようにして得られる翻訳鎳型を含む蛋白質合成用細胞抽出液に、 基質と なるアミノ酸、 エネルギー源、 各種イオン、 緩衝液、 ΑΊΤ再生系、 核酸分解酵素 阻害剤、 tRNA、還元剤、 ポリエチレンダリコール、 3,, 5 ' -cAMP 葉酸塩、 抗菌剤等の、 翻訳反応に必要もしくは好適な成分を含有する溶液 (「翻訳反応用 溶液」 ともいう) を添加して、 翻訳反応に適した温度で適当な時間インキュベー トすることにより翻訳反応を行うことができる。 基質となるアミノ酸は、 通常、 蛋白質を構成する 2 0種類の天然アミノ酸であるが、 目的に応じてそのアナログ や異性体を用いることもできる。 また、 エネルギー源としては、 A T P及ぴノ又 は G T Pが挙げられる。各種イオンとしては、酢酸力リゥム、酢酸マグネシウム、 酢酸アンモニゥム等の酢酸塩、グルタミン酸塩等が挙げられる。緩衝液としては、 Hepes-KOH, Tris—酢酸等が用いられる。 また A T P再生系としては、 ホスホ ェノールピルペートとピルビン酸キナーゼの組み合わせ、 またはクレアチンリン 酸 (クレアチンホスフェート) とクレアチンキナーゼの組み合わせ等が挙げられ る。 核酸分解酵素阻害剤としては、 リポヌクレアーゼインヒビターや、 ヌクレア ーゼインヒビタ一等が挙げられる。 このうち、 Vボヌクレアーゼインヒビターの 具体例としては、 ヒト胎盤由来の RNase inhibitor (TOYOBO社製等) 等が用い られる。 t R N Aは、 Moniter, R., et al" Biochim. Biophys. Acta., 43, 1 (I960) 等に記載の方法により取得することができ、 あるいは市販のものを用いることも できる。還元剤としては、ジチオスレィトール等が挙げられる。抗菌剤としては、 アジ化ナトリウム、 アンピシリン等が挙げられる。 これらの添加量は、 無細胞蛋 白質合成において通常使用され得る範囲で適宜選択することができる。
翻訳反応用溶液の添加の態様は、 用いる翻訳反応系に応じて適宜選択すること ができる。 本発明の方法に用いられる翻訳反応系は、 本発明の自動蛋白質合成装 置に適用し得る自体公知のいずれの系であってもよく、例えば、バッチ法(Pratt,
J. M. et al., Transcription and. Tranlation, Hames, 179-209, B. D. & Higgins, S. J., eds) , IRL Press, Oxford(l984)) や、 アミノ酸、 エネルギー源等を連続的に 反応系に供給する連続式無細胞蛋白質合成法 (Spirin, A. S. et al., Science, 242, 1162-1164(1988))、 透析法 (木川等、 第 2 1回日本分子生物学会、 WID6)、 あ るいは重層法 (国際公開第 02ノ24939号パンフレット) 等が挙げられる。 更には、 合成反応系に鍚型の RNA、 アミノ酸、 エネルギー源等を必要時に供給 し、 合成物や分解物を必要時に排出する不連続ゲル濾過法 (特開 2000— 33 3673公報) や、 合成反応槽が分子篩可能な担体によって調製され、 上記の合 成材料等が該担体を移動相として展開され、 展開中に合成反応が実行され、 結果 として合成された蛋白質を回収し得る方法 (特開 2000— 3 1 6595公報) 等を用いることができる。 しかしながら、 自動蛋白質合成装置の構造の単純化、 省スペース、 低コス ト、 ハイスループット解析に適用可能な多検体同時合成シス テムの提供の点から、 パッチ法または重層法が好ましく、 比較的大量の蛋白質を 得ることができる点で重層法が特に好ましい。
パッチ法により翻訳反応を行う場合、 翻訳反応用溶液を翻訳鎳型を含む蛋白質 合成用細胞抽出液に添加して混合すればよい。 あるいは翻訳反応用溶液に含まれ る成分を予め蛋白質合成用細胞抽出液と混合した場合には、 翻訳反応用溶液の添 加を省略することもできる。 翻訳鐃型を含む蛋白質合成用細胞抽出液と翻訳反応 用溶液とを混合して得られる 「翻訳反応液」 としては、 例えば蛋白質合成用細胞 抽出液としてコムギ胚芽抽出液を用いた場合、 10〜5 OmM HEPE S— K OH (p H 7. 8)、 55〜: 1 2 OmM酢酸カリウム、 :!〜 5 mM酢酸マグネ シゥム、 0. 1〜0. 6mM スペルミジン、 各 0. 025〜lmM L_7 酸、 20〜70 μΜ、 好ましくは 30〜50 iMの DTT、 1〜1. 5 mM A TP、 0. 2〜0. 5mM GTP、 10〜 20 mM クレアチンリン酸、 0. 5 〜: 1. 1 リボヌクレアーゼインヒビター、 0. 0 1〜10 uM蛋白質 ジスルフイドイソメラーゼ、 及ぴ 24〜75% コムギ胚芽抽出液を含むもの等 が用いられる。 このような翻訳反応液を用いた場合、 プレインキュベーションは
約 1 0〜約 4 0 °Cで約 5〜約 1 0分間、 本反応 (翻訳反応) におけるィンキュベ ーシヨンは同じく約 1 0〜約 4 0 °C、 好ましくは約 1 8〜約 3 0 °C、 さらに好ま しくは約 2 0〜約 2 6 °Cで、 反応が停止するまで、 バッチ法では通常 1 0分〜 7 時間程度行う。
重層法により翻訳反応を行う場合、 翻訳鎳型を含む蛋白質合成用細胞抽出液上 に、 翻訳反応用溶液を界面を乱さないように重層することにより蛋白質合成を行 う。 具体的には、 例えば、 必要に応じて適当時間プレインキュペートした蛋白質 合成用細胞抽出液を翻訳铸型の沈殿に添カ卩してこれを溶解し、 反応相とする。 こ の反応相の上層に翻訳反応用溶液 (供給相) を、 界面を乱さないように重層して 反応を行う。 両相の界面は必ずしも重層によって水平面状に形成させる必要はな く、 両相を含む混合液を遠心分離することによって、 水平面を形成することも可 能である。 両相の円形界面の直径が 7 mmの場合、 反応相と供給相の容量比は 1 : 4〜1 : 8が適当であるが、 1 : 5が好適である。 両相からなる界面面積は 大きいほど拡散による物質交換率が高く、 蛋白質合成効率が上昇する。 従って、 両相の容量比は、 両相の界面面積によって変化する。 翻訳反応は、 例えばコムギ 胚芽抽出液を用いた系においては、 静置条件下、 約 1 0〜約 4 0 °C、 好ましくは 約 1 8〜約 3 0 °C、 さらに好ましくは約 2 0〜約 2 6 °Cで、 通常約 1 0〜約 2 0 時間行うことができる。 また、 大腸菌抽出液を用いる場合、 反応温度は約 3 0 °C 〜約 3 7 °Cが適当である。
本発明の無細胞蛋白質合成法は、 翻訳鎳型の精製工程において、 (1 ) 転写反 応後の反応液中の翻訳鐃型を沈殿させる工程の後に、 未反応基質を除去する工程 及びそれに付随する 1もしくは複数回の洗浄工程、 沈殿工程を省略して、 翻訳反 応に供すること、 及び (2 ) 得られる翻訳鎵型の沈殿に蛋白質合成用細胞抽出液 を直接添加することにより該沈殿を溶解することにより、 転写铸型から該铸型に コードされる蛋白質の生成までの一連の操作を自動で行わせることを初めて実 現したものである。 しかしながら、 上記 (1 ) 及ぴ (2 ) の特徴は、 それぞれ独 立して新規であり、 且つ有利な効果を奏するものである。 従って、 これらの一方
の特徴を有する限り、 他方の特徴を有しない無細胞蛋白質合成法 (即ち、 当該他 方の特徴部分が解決した課題のみを他の手段により解決した自動無細胞蛋白質 合成法、 あるいは当該他方の特徴部分が解決した課題については従来通り実験者 が手動で行う 「半自動」 の無細胞蛋白質合成法) もまた本発明に包含される。 上述の通り、 本発明の方法は、 上記 (1 ) 及び/又は (2 ) の特徴を有する限 り、 その他の工程については、 自動化のために適用し得る従来公知の任意の手順 や条件等に従って行えばよく、 特に制限されるものではないが、 上記 (1 ) 及び /又は (2 ) の特徴に加えて、 下記の少なくとも 1つの工程を有するものである ことが好ましい。
·転写鎳型を P C Rで増幅させて調製する工程
-転写反応用溶液と転写錶型を混合する工程
•転写反応用溶液と転写鎳型との混合物を一定時間ィンキュペートする工程 •転写産物 (即ち、 翻訳鎳型) を沈殿させる工程
•反応容器内の上清を除去する工程
.翻訳鎵型の沈殿物を乾燥させる工程
-蛋白質合成用細胞抽出液を、 乾燥させた翻訳铸型に加え、 該翻訳铸型を溶解 する工程
•翻訳鐃型を含む蛋白質合成用細胞抽出液に翻訳反応用溶液を重層する工程 •翻訳铸型を含む蛋白質合成用細胞抽出液に翻訳反応用溶液を重層し、 これを —定時間インキュベートする工程
めるレ、 ίま、
•転写铸型を P C Rで増幅させて調製する工程 . •転写反応用溶液と転写铸型を混合する工程
•転写反応用溶液と転写錶型との混合物を一定時間ィンキュペートする工程 · 転写産物 (即ち、 翻訳铸型) を沈殿させる工程
•反応容器内の上清を除去する工程
•翻訳鎳型の沈殿物を乾燥させる工程
•蛋白質合成用細胞抽出液を、 乾燥させた翻訳铸型に加え、 該翻訳铸型を溶解 する工程
•蛋白質合成反応をバッチ法で行わしめる工程
本発明の無細胞蛋白質合成方法によれば、 実験者が途中で手動の操作を行うこ となく、 無細胞蛋白質合成反応を自動で行うことが可能となる。 また、 本発明の 方法によれば、 蛋白質合成効率については従来と変わることなく、 反応全体に要 する工程を少なくすることができ (自動化の観点からは、 工程数を少なくするこ とは、 ミスを起こりにくくする意味でも重要である)、 蛋白質合成までに要する 時間を大幅に短縮することができるとともに、 分解などにより翻訳铸型等をロス することも少なくできる。 また、 転写反応系を小さくすることができ、 使用する D N A量を減らすことができる等のさらなる利点がある。
また、 本発明によれば、 無細胞蛋白質合成の反応全体を同一の反応容器内で行 うことも可能となり、 後述するように本発明の方法を行う装置の設計においても 複雑な構造でなく、 しかも省スペースが図れるというような利点もある。 さらに 本発明の方法によれば、,転写反応や翻訳反応を行わせるための反応容器として、 例えば 9 6穴プレートなどを使用することによって、同時に複数種(特に多数種) の蛋白質を簡便に合成することが可能となり、 後述するような蛋白質のハイスル ープットな機能解析等の用途に好適に供することができる。
本発明においては、 上記方法を行うための装置 (即ち、 自動蛋白質合成装置) をも提供する。 本発明の装置は、 以下の (a ) 〜 (f ) の手段を少なくとも有す ることをその特徴とするものである。
( a ) 反応容器内の温度を可変制御する手段;
( b ) 反応容器にサンプルまたは試薬を分注する手段;
( c ) 沈殿手段;
( d ) 上清を除去する手段;
( e ) 乾燥手段;及び
( f ) 上記 (a ) 〜 (e ) の手段を上述してきた本発明の方法に沿って動作させ
るように制御する制御手段。
かかる (a ) 〜 (f ) の構成を少なくとも有する装置を用いることで、 上述し てきた本発明の無細胞蛋白質合成反応を、 自動で行うことを可能とできる。以下、 各構成について具体的に詳述する。
( a ) 反応容器内の温度を可変制御する手段
反応容器内の温度を可変制御する手段とは、 転写反応、 翻訳反応のインキュべ ーシヨン、 翻訳錶型の沈殿、 または本発明の自動蛋白質合成装置を用いて P C R 法による転写鎵型の作製工程を自動で実施する場合には該 P C R法の増幅反応 などにおいて、 反応容器内の液温を適当な温度条件に調整するための手段である。 可変制御する温度範囲は、 特に制限はないが、 転写鎳型の作製を含む無細胞蛋白 質合成の一連の反応操作において通常必要とされる温度範囲 (例えば、 約 4 °C〜 約 1 0 0 °C、 好ましくは約 2 6 °C〜約 9 9 °C) 内で反応容器内の液温を可変制御 し得る手段であれば、 これを実現し得る手段としては特に制限されるものではな レ、。 たとえば、 従来公知のタカラ P C Rサーマルサイクラ一 M P (タカラバイオ 株式会社製)、 Gene Amp PCR System 9700 (Applied Biosystems Inc.,製) など が挙げられる。 具体的には、 ピペッティングなどを行う場所であって反応容器を 載置するための作業ステージとは別に、 装置内に反応容器を載置するステージを 複数設け、 ステージ上の空間全体の温度を可変制御し、 結果的に反応容器内の温 度を可変制御するように実現される。
( b ) 反応容器にサンプルまたは試薬を分注する手段
反応容器にサンプルまたは試薬を分注する手段とは、 反応容器内で転写反応、 翻訳反応、 P C Rなどの一連の無細胞蛋白質合成反応を行わしめるために、 反応 容器にサンプルまたは試薬を分注する手段である。 ここで 「サンプル」 は転写錶 型、 翻訳鎵型、 P C R用铸型プラスミ ド (又は該プラスミ ドを有する宿主 (例、 大腸菌)) 等を指し、 「試薬」 は、 転写反応用溶液、 蛋白質合成用細胞抽出液、 翻 訳反応用溶液、 アルコール、 塩溶液、 P C R反応用溶液などを指す。 かかる分注 手段としては、 工程に応じてサンプル、 試薬の分量を調整して分注し得るもので
あれば、 従来公知の適宜の自動で分注し得るピぺットアームなどを特に制限なく 使用して実現することができる。 また、 当該分注手段は、 上記機能に加えて 2種 以上の溶液の均一化や沈殿溶解のための混合機能 (例、 ピペッティング、 撹拌な ど) を備えていることがより好ましい。
( c ) 沈殿手段
沈殿手段とは、反応容器内の適宜の対象(例えば、転写反応後の翻訳铸型など) を沈殿させる手段である。 かかる沈殿手段は、 反応容器内の上記対象を沈殿させ 得、 固液分離可能とするものであれば、 特に制限されることなく従来公知の適宜 の手段にて実現することができる。 たとえば、 エタノール沈殿等に使用されてい る従来公知の遠心分離機、 その他、 濾過や凍結乾燥に従来より使用されている適 宜の装置を用いて、 沈殿手段を実現できる。
( d ) 上清を除去する手段
上清を除去する手段とは、 上記沈殿手段によって、 反応容器内の適宜の対象を 沈殿させた後に、 該沈殿と上清とを分離すべく上清を除去する手段である。 本発 明の装置において、 該上清を除去する手段は、 たとえば、 反応容器を裏返す動作 を行わせるための手段、 反応容器内の上清のみを吸引する手段などによって実現 することができる。 すなわち、 上述のように本発明の無細胞蛋白質合成方法によ れば、 転写反応後の反応液中の翻訳鑤型を沈殿させる工程の後に、 未反応基質を 除去する工程及ぴそれに付随する 1もしくは複数回の洗浄工程、 沈殿工程を省略 して、 翻訳反応に供するため、 翻訳鎵型 (m R N A) が反応容器の底に付着した 状態で乾燥の工程に供することができる。 したがって、 上記のような上清を除去 する手段にて翻訳铸型の沈殿をロスすることなく自動で沈殿から上清を分離す ることが可能となる。 かかる上清を除去する手段は、 具体的には、 反応容器を裏 返す動作を行わせるための手段の場合には、 たとえば、 モータなどの回転動力を 利用して反応容器をその上に固定したまま裏返し得るプレート等を用いた機構 や、 反応容器を把持して反転し得るロボットアームを用いた機構などにて実現す ることができる。 また、 反応容器内の上清のみを吸引する手段の場合には、 たと
えば B i oRo b o t 8000 (キアゲン社製) など、 従来公知の適宜のものを 用いて実現することができる。
(e) 乾燥手段
乾燥手段とは、 自然乾燥以外の方法で乾燥させる場合には、 例として遠心乾燥 機、 エバポレーターなどで実現することができる。 但し、 本発明に係る自動蛋白 質合成方法装置においては、 内部に組み込んだ又は外部に接続できる従来公知の 乾燥装置を用いることも可能である。
(f ) 制御手段
制御手段には、 上記 (a) 〜 (e) の手段が動作するために各手段に用いられ る駆動源 (モータ、 空圧 ·油圧機器、 その他の動作制御可能なァクチユエータな ど) の動作の入切、 動作の程度及び状態などを制御する制御装置が含まれる。 そ の制御の構成は、 本発明の方法 (たとえば、 図 1に示したような手順による無細 胞蛋白質合成反応) に沿って、 該方法の工程を行わせ、 該方法の目的が達成され るように、 上記 (a) 〜 (e) の手段の動作を制御し得る構成である。
前記制御装置は、 例えば、 制御プログラムを有するコンピュータを含んだ制御 回路、 シーケンス制御回路など、 上記各手段の動作の制御に必要な制御機器を組 合わせて構成してもよく、 本発明の方法に沿った順番で上記各手段が動作するよ う、 各手段に対して信号や必要に応じて電力、 空圧、 油圧等を供給し得る制御構 成とする。 また、 上記各手段の駆動源に直接駆動信号を送るために必要なドライ バー、 上記各手段の駆動源の動作状態を検出するために必要な各種センサー、 ス ィツチなどは適宜加えてよい。
なお本発明の装置に適用できる反応容器に特に制限はなく、 無細胞蛋白質合成 反応に使用されてきた従来公知の種々の反応容器を使用することが可能であり、 例えば 96穴 P CR用プレート、 96穴タイタープレート、 8連チューブゃチュ ーブ (1. 5mL、 1 5mL、 50mLなど) 等が挙げられるが、 例えば翻訳反 応系としてバッチ法や重層法を用いる場合、 96穴プレートなどの小さな反応系 で翻訳反応を行うことができ、 また、 本発明の方法によれば転写反応も小さな反
応系で行うことができるので、 転写反応 ·翻訳錶型の精製、 翻訳反応、 所望によ りさらに転写反応に供する転写铸型作製のための P C Rを含む一連の無細胞蛋 白質合成法の反応操作を、 複数の反応系で複数種の蛋白質について同時に行うこ とができ、 短時間に多数の蛋白質を合成することができる。
また、 転写反応、 翻訳反応を行わしめる際には、 反応容器を密閉した中で行う ことが好ましく、 かかる観点からは蓋付きの反応容器を用い、 さらに装置がこの 反応容器の蓋の開閉を行う手段を有することが好ましい。 上記蓋は、 反応容器と してたとえば 9 6穴プレートを用いる場合には、 1個 1個の穴をそれぞれ密封で きるようなゴム製の蓋が例示される。 閉じた状態で蓋を反応容器に密着させ得る ことが好ましいことから、 ある程度の重量 (たとえば、 5 0 0 g程度) を有する 蓋を用いるか、 あるいは、 クリップのようなもので蓋と反応容器とを挟んで蓋を 閉じることが考えられる。 また、 反応容器の蓋の開閉を行う手段は、 たとえば、 従来公知のチヤッキング機構 ·吸引機構と、 ロボットアームとを組み合わせた機 構などを用いて実現することができる。
本発明の自動蛋白質合成装置は、 上述した各手段以外に、 反応試薬をス トック する手段などを、 必要に応じて有していてもよい。
上述のように、 本発明の方法及び装置は、 同時に複数種の蛋白質を簡便に自動 で合成することが可能である。 たとえば、 種々の変異体の蛋白質をコードする転 写鏡型、翻訳鎳型を複数取り揃え、複数の変異体の蛋白質を同時に複数合成して、 変異体の詳細な設計を要することなく解析等に供することができ、 有用である。 また本発明の方法及び装置は、 様々な蛋白質のハイスループットな機能解析の 用途に好適に供することができる。 例えば、 ホモロジ一検索の結果、 保存された 共通のドメイン (例えば、 キナーゼドメインなど) を含む蛋白質をコードする遺 伝子群を鍀型とし、 本発明の装置を用いて本発明の方法により該蛋白質を同時に 合成し、 一方でリン酸化の標的となり得る蛋白質群 (例えば、 転写因子など) を 同様に合成し、 両者を種々の組み合わせで混合し、 例えば、 32 P標識した A T P の取り込みを指標として、 どの蛋白質キナーゼがどの蛋白質をリン酸ィ匕するかを
同定することができる。
あるいは、 転写因子に特有のモチーフ (例えば Z nフィンガー、 ロイシンジッ パー等) を含む蛋白質をコードする遺伝子群を铸型とし、 本発明の装置を用いて 本発明の方法により該蛋白質を同時に合成し、 既知のシスエレメント配列との結 合、 他の転写制御因子とのヘテロダイマー形成能、 さらに特定遺伝子プロモータ 一の転写制御領域との結合能等を調べることにより、 転写因子の織りなすクロス トークの解明のための情報を得ることができる。 実験例
以下に実験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、 本発明は下記の実施例に 制限されるものではない。 実験例 1, :エタノール沈殿により生じる mRNA沈殿における 70%アルコール による洗浄処理の翻訳効率に対する効果検討
(1) 翻訳錶型 mRNAの調製
クラゲの GF P遺伝子および大腸菌の DHFR遺伝子について、 それぞれ小麦 胚芽無細胞系専用プラスミドベクター p EUに挿入したものを転写铸型として、 S P 6 RN Aポリメラーゼ (Promega社製) を含有する転写反応用溶液 ( 80 mM Hepes-KOH, 1 6 mM 酢酸マグネシウム、 2 mM スペルミジン、 1 0m M DTT、 3mM NTP、 1 U/μ 1 S P 6 RNAポリメラーゼ、 ΐ υΖμ 1 Rnasin) を用いて転写反応を行った。 得られた mRNAを酢酸アンモニゥム を用いたエタノール沈殿の後、 7 0%アルコールを用いて沈殿 mRNAを洗浄す るものと、 洗浄しないものとに分け、 それぞれを翻訳铸型として用いた。
(2) コムギ胚芽無細胞蛋白質合成系 (重層法) による蛋白質合成
コムギ胚芽抽出液 5. 8 を含む翻訳反応用溶液 (それぞれ最終濃度で、 2 9mM Hepes-KOH (pH7. 8)、 9 5 mM酢酸カリ ゥム、 2. 7 mM酢酸マ グネシゥム、 0. 4mM スペルミジン (ナカライ 'テクトニクス社製)、 各 0.
23mM L型アミノ酸 20種類、 2. 9 mM ジチオスレォトール、 1. 2 mM ATP (和光純薬社製)、 0. 25mM GTP (和光純薬社製)、 1 5 mM クレ ァチンリン酸 (和光純薬社製)、 0.
RN a s e i nh i b i t o r (TAKARA社製)、 50 η
§/μ1 t RNA (Moniter, R., et al., Biochim. Biophys. Acta., 43, 1-(1960))、 0. 46 μ g/1 クレアチンキナーゼ (Roche社 製)、
(モラベック社製)) 25
μ1を調製した。 上記沈殿を洗 浄した! nRNA、 沈殿を洗浄しなかった mRN Aそれぞれについて、 別個に重層 法で蛋白質合成反応を行った。 上記翻訳反応用溶液に翻訳铸型を 8 μ
1添 加して下相とし、 上相 (それぞれ最終濃度で、 29 mM Hepes— KOH (pH7. 8)、 95mM酢酸カリウム、 2. 7mM酢酸マグネシウム、 0. 4mM スぺ ルミジン (ナカライ ·テクトニクス社製)、 各 0. 23mM L型アミノ酸 20種 類、 2. 9mM ジチォスレオトール、 1. 2mM ATP (和光純薬社製)、 0. 25mM GTP (和光純薬社製)、 2η0ί/μ 1 "C'leu (モラベック社製)) 1 2 5 μΐを重層して、 それぞれ 26°Cで 16時間インキュベートした。
反応開始後、 16時間後の翻訳反応用溶液をそれぞれ 5 μ 1濾紙にスポットし、 固体支持法により、 液体シンチレーシヨンカウンター (LS6000IC:ベックマン コールター社製) を用いて、 we— leuの取り込みを測定した。 DHFR、 GFP 両遺伝子において、 エタノール沈殿により生ずる mRNA沈殿に対して、 70% アルコールによる洗浄処理をしたものと処理をしないものについて、 目的蛋白質 の合成量に差は見られなかった。 このことは蛋白質合成系 (重層法) において、 エタノール沈殿により生じる mRNA沈殿における 70%アルコールによる洗 浄処理は翻訳効率に対する効果がないことを示す。 上記の結果は、 重層法にとど まらず、 小麦胚芽無細胞蛋白質における他の全ての合成法に利用できる。
このように、 従来行われてきた mRN A沈殿の Ί 0%アルコールによる洗浄処 理という工程を除いても、 翻訳効率にはなんら影響を及ばさないことが判明した。 翻訳铸型 mRN Aの消失や減少の恐れがある本工程を除くことにより、 目的蛋白 質の合成量の再現性が高くなるだけでなく、 作業時間を減らすことが出来る。 こ
れらのことは、 大量にサンプル処理を行ぅ全自動蛋白質合成機には特に有効であ る。 実験例 2 : mRNAペレッ トの Milli Q水と蛋白質合成用細胞抽出液での可溶化 率
p EU— DHFRをセンスプライマーとアンチプライマーを用いて P CRを 行い、 それを鎳型に転写し得られた mRNAを用いた。 転写は、 8 OmM Hepes-KOH:、 1 6 mM酢酸マグネシウム、 2 mM スペルミジン、 1 OmM D TT、 3 mM ΝΤ Ρ、 1 Ό/μ 1 S P 6 RNAポリメラーゼ、 1 U/μ 1 Rnasin、 1 0 % P C R産物となるように反応系 4 0 0 1を調製し、 3 7°C、 3時間保温した。 mRNAをラジオアイソトープ32 Pで標識する際には、 UTP の濃度を 1. 2mMにし [ひ一asp] UT P 8 1を加え反応系を 4 0 0 1に した。 32pで標識した mRNAに 7. 5M酢酸アンモニゥム 5 3 ^ 1、 ェタノ ール l mlを加えよく撹拌し、 2 0, O O O X g、 1 5分間遠心を行った。 ペレ ットを 1 0 0 1 の Milli Q水に溶かし、 予め、 1 0 O mM塩化ナトリウム、 1 0 mM Tris-HCKpH 7.6)、 0. 5 mM EDTA 3 m 1で平衡化した NICK Column (アマシャムバイオサイエンス)にかけ、 4 0 0 ^ 1 の 1 0 OmM塩化ナ トリウム、 1 0 mM Tris-HCKpH 7.6)、 0. 5 mM EDTAで洗い、 4 0 0 μ 1 の 1 0 0 mM塩化ナトリウム、 1 0 mM Tris-HCl(pH 7.6)、 0.5 mM EDTAで 溶出し精製を行った。
32Pで標識していない mRNA 2 3 μ 1 と 32ρで標識した mRNA 2 ^ 1に Milli Q水 2 5 μ 1、 7. 5 mM酢酸アンモニゥム 7. 7 μ 1、 エタノール 1 44 μ 1を加えよく撹拌し、 2 0, O O O X g、 1 5分間遠心を行った。 上清を 取り除きペレッ トを風乾したものに、 Milli Q水 6. 2 5 μ 1、 或いは、 3 0m M Hepes-KOH (pH 7.8), 1. 2 mM AT P, 0. 2 5mM GT P、 1 6 mM ホスホクレアチン、 2mM ジチオスレイ ト一 Λ\ 0. 3mM スぺ ミジン、 0. 3mM 2 0種 アミノ酸、 2. 7 mM酢酸マグネシウム、 1 0 0 mM酢酸カリ
ゥム、 0. 005 % アジ化ナトリゥム、 400 n 1 クレアチンキナーゼ、
260 nmにおける光学密度 (O.D.) (A260) が 60の小麦胚芽抽出液となるよう に調製した翻訳反応液 25 μ 1を加えた。 5分後の溶液 5 μ 1をチェレンコフ 法で測定した。
上記実験結果を図 2に示す。 エタノール沈殿前の値は、 抽出液に使用したもの が 66143、 Milli Q水に使用したものが 66741であった。 溶解後の cpm値は、 抽 出液に使用したものが 22,285、 Milli Q水に使用したものが 13,828であった。 こ のことから、 抽出液の方が Milli Q水より溶けやすいことが分かる。 実験例 3 : 自動蛋白質合成装置による蛋白質合成方法
本発明の方法を実施するための自動蛋白質合成装置を用いて、 それぞれ以下の ものをセッ トし、 無細胞蛋白質合成を行った。
•転写鏡型
DHFRと GFPが組み込まれた p EUプラスミ ドベクターをセンスプライ マーとアンチセンスプライマーを用い、 30 μ L系で P CRを行って得られた D ΝΑ (96ゥヱル P CRプレート内に収容)
•転写反応用溶液
終濃度 8 OmM Hepes-KOH, 16 mM酢酸マグネシウム、 2 mM スペルミ ジン、 10mM DTT、 3mM NTP、 1 U/m 1 S P 6 RNAポリメラー ゼ、 1 U/m 1 Rnasinを含有する溶液
•エタノール沈殿用混合液
MilliQ水 3. 54ml、 7. 5 M酢酸アンモニゥム 1. 32 m l、 ェタノ ール 24. 66mlの混合液
•翻訳反応用溶液
それぞれ終濃度として 30 mM Hepes-KOH (pH 7.8)、 1. 2 mM A T P、 0. 25mM GTP、 16 mM ホスホクレアチン、 2mM ジチオスレイト一 ル、 0. 3 mM スペルミジン、 0. 3mM 20種 アミノ酸、 2. 7 mM酢酸
マグネシウム、 l O OmM酢酸カリウム、 0. 005% アジ化ナトリウム、 4 00 n g/μ 1 クレアチンキナーゼ、 260 nmにおける光学密度 (O.D.)(A260) が 60ュニッ トの小麦胚芽抽出液を含有する溶液
.重層液
それぞれ終濃度として 30 mM Hepes-KOH (pH 7.8)、 1. 2 mM AT P、 0. 25mM GTP、 16 mM ホスホクレアチン、 2mM ジチオスレイ ト一 ル、 0.3mM スペルミジン、 0.3mM 20種 アミノ酸、 2.7 mM酢酸マグ ネシゥム、 1 OmM酢酸力リゥム、 0.005% アジ化ナトリゥムとなるように 調製した重層液
·反応容器
遠心に耐えられるもので、 丸底 96ゥヱルマイクロプレートを 2枚
•分注用チップ
200 μ 1チップ 96本 5箱 (転写反応用溶液用、 翻訳反応用溶液用 1箱、 エタノール沈殿用 1箱 χ2 マイクロプレート、 重層用 1箱 χ2 マイクロプレー ト)、 20 μ 1チップ 96本 2箱(PCR産物用 1箱 χ2 マイクロプレート) •エタノール沈殿上清回収用マイクロプレート
無細胞蛋白質合成は、 以下の手順で行った。
(1) PC Rプレートをクーリングステージから作業ステージに移す。
(2) マイクロプレートをクーリングステージから作業ステージに移す。
(3) P CRプレートの蓋を外す。
(4) マイクロプレートの蓋を外す。
(5) マイクロプレートに転写反応用溶液を 22. 5 μ1分注する。
(6) P CRプレートの P CR産物 2. 5 μ 1をマイクロプレートにトランスフ ァ一し 10回ピペッティングする。
(7) P CRプレートに蓋をする。
(8) マイクロプレートに蓋をする。
(9) PCRプレートを元にもどす。
( 1 0) マイクロプレートを 3 7 °Cで 3時間保温する。
(1 1 ) マイクロプレートの蓋を外して保持しておく。
( 1 2) マイクロプレートにエタノール沈殿用混合液 1 4 7. 6 μ 1分注する。 1 0回ピペッティング。
( 1 3) マイクロプレートに蓋をせずそのまま、 1, 0 0 0 X g、 3 0分間遠心 にかける。
( 1 4) マイクロプレートに脱脂綿付きプレートを重ねて裏返しにして、 上清を 除く。
(1 5) 5分間自然乾燥させる。
( 1 6) マイクロプレートに翻訳反応液 2 5 ^ 1分注する。
( 1 7) マイクロプレートに翻訳反応液 2 5 μ 1 の上層に重層液 1 2 5 1をゆ つくりと重層する。
( 1 8) マイクロプレートに蓋をする。
( 1 9) マイクロプレートを 2 6 °C 2 0時間保温する。
以上の操作で蛋白質合成を行った。 比較として、 手動により蛋白質合成を行つ た。
図 3は、 上記実験結果を示す SDS-PAGEの写真である。 SDS-PAGEにより蛋 白質合成量を確認した。 合成した DHF Rと GF Pをよくピペッティングしたも の 1 0 μ 1、 3 X SD S s a m l e b u f f e r [1 5 0 mM ris'HCl H 6.8、 6 % S D S、 0. 2 % (W/W) ブロモフエノールブルー、 3 0 % (V/ V) グリセロール、 3 % (V/V) ]3-メルカプトエタノール] 2 0 1、 Milli Q水 1 5 1を混合し、 9 8 °Cで 5分間ボイルしたもの 9 μ 1を 1 2. 5 %の ポリアタリルァミ ドゲルで電気泳動を行つた。
上記実験の結果、 自動蛋白質合成装置及び手動による蛋白質合成量は同程度で あった。
産業上の利用可能性
以上の説明で明らかなように、 本発明によれば、 無細胞蛋白質合成反応を自動
で行い得る方法、 ならびにその方法に使用し得る蛋白質合成装置を提供すること ができる。