JP5010269B2 - タンパク質合成・回収一体型無細胞タンパク質合成方法 - Google Patents
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Description
ポストゲノム計画の中心課題の一つは、多種多様なタンパク質因子の複合体の構造と機能の関係を解析することである。ここから得られる成果は、構造生物学や生化学を含む基礎生物学などの研究、医学分野における遺伝子翻訳産物と病因との関係解明、そして医薬の開発における広い分野において極めて重要な知見を提供するものと期待されている。
タンパク質合成反応を生体外で行う方法として、細胞抽出液に翻訳鋳型、基質となるアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、及びその他の有効因子を加えて試験管内でタンパク質を合成する、いわゆる無細胞タンパク質合成法等の研究が盛んに行われてきている(特許文献1〜5)。
この無細胞タンパク質合成系に用いるタンパク質合成用の細胞抽出液または生体組織抽出液は、大腸菌、コムギ胚芽、または家兎網状赤血球等を原料として調製される。無細胞タンパク質合成系は、"ペプチド合成速度"と"翻訳反応の正確性"の2点において、生細胞に匹敵する性能を保持している。そして、この系は複雑な化学反応工程や煩雑な細胞培養工程を必要としない。この利点を有するため、この系はその実用的なシステムの開発がなされてきた。しかしながら、一般的に、生物体の細胞から抽出した細胞抽出液は、そのタンパク質合成能が極めて不安定なためにタンパク質合成効率が低かった。さらに、保存中の細胞抽出液の品質低下も著しかった。そのため、無細胞タンパク質合成系によって得られる合成物の量は、放射性同位体標識等によって検出可能な程度の少量であった。その結果、この系は実用的なタンパク質の生産手段としては利用できなかった。
(1)無細胞タンパク質合成用細胞抽出物製剤および無細胞タンパク質合成方法(特許文献6)、(2)汎用性および高効率機能を備えた鋳型分子並びにこれを利用する無細胞タンパク質合成方法(特許文献7)、(3)拡散連続バッチ法(重層法と呼ぶことがある)(特許文献8)、(4)繰り返しバッチ法を発明している(特許文献9)。
これらの問題を解決するために、タンパク質合成過程中に合成したタンパク質を回収する合成方法が開示されている(特許文献10、11)。しかし、合成したタンパク質の回収方法は、合成したタンパク質を含む合成反応液ごと回収するものである。すなわち、合成系の合成反応液の減少によりタンパク質合成量の低下の問題があった。
さらに、タンパク質合成反応継続時間が長くなるにつれてタンパク質合成効率が減少するという問題があった。
Spirin,A.,et al.,(1993)Methods in Enzymology,217,123−142
以上の検討により、以下の2つのメインのタンパク質合成・回収一体型無細胞タンパク質合成方法を構築した。
(1)合成したタンパク質が捕捉された担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を無細胞タンパク質合成系から回収し、該合成したタンパク質を該担体から分離する。その後、好適には、合成したタンパク質が捕捉された担体が回収された後の無細胞タンパク質合成反応液を無細胞タンパク質合成系にもどし、複数回タンパク質合成を行う(以後、A方法と称する場合あり)。
(2)合成したタンパク質が捕捉された担体のみを無細胞タンパク質合成反応液から回収し、該担体が回収された後の無細胞タンパク質合成反応液で複数回タンパク質合成を行う(以後、B方法と称する場合あり)。
その結果、合成したタンパク質の構造変化を避けることができ、かつ合成したタンパク質の膜への付着や膜の目詰りを解消でき、さらにタンパク質を大量合成できる無細胞タンパク質合成方法を構築し、本発明を完成した。
「1.無細胞タンパク質合成方法において、次の工程を含むタンパク質合成・回収一体型無細胞タンパク質合成方法:
1)無細胞タンパク質合成液を用いてタンパク質合成反応を行う工程、
2)合成されるタンパク質と特異的に結合できる担体を無細胞タンパク質合成反応液に添加し、合成反応により生成したタンパク質を該担体で捕捉する工程、
3)2)の工程の後、該担体を無細胞タンパク質合成系から回収する工程。
2.上記1)のタンパク質合成反応を複数回行うことを特徴とする前項1の方法。
3.上記3)の回収において、合成したタンパク質を無細胞タンパク質合成中、複数回の無細胞タンパク質合成反応毎の合間、又は無細胞タンパク合成反応終了後に回収することを特徴とする前項1又は2の方法。
4.上記3)の回収において、合成したタンパク質を回収するために、合成したタンパク質が捕捉された担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を無細胞タンパク質合成系から回収することを特徴とする、前項1〜3のいずれか1の方法。
5.上記3)の回収において、合成したタンパク質を回収するために、担体のみを無細胞タンパク質合成系から回収することを特徴とする前項1〜3のいずれか1の方法。
6.合成したタンパク質が捕捉された担体が回収された後の無細胞タンパク質合成反応液を、無細胞タンパク質合成系にもどすことを特徴とする前項4の方法。
7.無細胞タンパク質合成による副産物を無細胞タンパク質合成系外に除去する方法を含む前項1〜6のいずれか1の方法。
8.複数回のタンパク質合成反応のために、基質、エネルギー源及び/又は翻訳鋳型の無細胞タンパク質合成系内への補充が行われる前項1〜7の何れか一に記載の方法。
9.合成したタンパク質と特異的に結合できる担体が、以下のいずれか1から選ばれる前項1〜8の何れか一に記載の方法。
1)合成したタンパク質を特異的に結合できる物質を固定したビーズ
2)合成したタンパク質を特異的に結合できる物質を固定した磁気ビーズ
3)合成したタンパク質を特異的に結合できるイオン交換樹脂
4)合成したタンパク質を特異的に結合できるアフィニティー樹脂
10.無細胞タンパク質合成液が、以下から選ばれる細胞抽出物由来である前項1〜9の何れか一に記載の方法。
1)大腸菌、2)植物種子、3)ウサギ網状赤血球、4)昆虫細胞、5)哺乳動物細胞
11.前項1〜10いずれか1の無細胞タンパク質の合成方法に用いる試薬の少なくとも1を含む合成キット。」
1)無細胞タンパク質合成液を用いてタンパク質合成反応を行う工程、
2)合成されるタンパク質と特異的に結合できる担体を無細胞タンパク質合成反応液に添加し、合成反応により生成したタンパク質を該担体で捕捉する工程、
3)2)の工程の後、該担体を無細胞タンパク質合成系から回収する工程。
つまり本発明は、合成反応工程中において、合成したタンパク質を担体で捕捉することによって、合成したタンパク質が変性することを防ぎ、合わせて合成したタンパク質の膜への付着や膜の目詰りを解消できることを大きな特徴とする合成法である。
なお、合成したタンパク質が捕捉された担体の回収時期は、合成反応工程中である。本発明の合成反応工程中とは、通常の1回の無細胞タンパク合成工程中(合成開始前も含む)だけではなく、無細胞タンパク質合成反応が停止した後に次の合成を再開される間、さらに2回目以降の合成工程中若しくは後並びに複数回の無細胞タンパク質合成反応毎の合間も含まれる。また、複数回とは、「2回以上」であることを意味する。
さらに、本発明の無細胞タンパク質合成方法は、従来既知の無細胞タンパク質合成方法であるバッチ法、透析法、重層法、繰り返しバッチ法、繰り返し供給バッチ法、繰り返し重層法でも適用可能である。
A方法の概要は以下の通りである。
無細胞タンパク質合成法を行うことが可能な無細胞タンパク質合成系(反応槽)でバッチ法、透析法、重層法、繰り返しバッチ法、繰り返し供給バッチ法、繰り返し重層法でタンパク質合成を行う。そして、合成工程中に、合成したタンパク質が捕捉された担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を無細胞タンパク質合成系から回収する。続いて、合成したタンパク質が捕捉された担体から合成したタンパク質を分離する。なお、合成したタンパク質の分離方法は、合成したタンパク質の特性により異なるが、通常の緩衝液(例えば、高塩濃度条件)を用いる自体公知の方法で分離する。
そして、好適には、合成したタンパク質が捕捉された担体が回収された後の無細胞タンパク質合成反応液を無細胞タンパク質合成系にもどす。
ここで、無細胞タンパク質合成反応液とは、無細胞タンパク質合成液を用いてタンパク質合成反応により得られる反応液を意味する。さらに、好ましくは、タンパク質合成反応効率向上のために、反応液の濃度調整をして、基質、エネルギー源及び/又は翻訳鋳型の無細胞タンパク質合成系内への補充が行われる。
上記タンパク質合成方法では、加えて濃縮処理により副産物を無細胞タンパク質合成系外に除去する方法を含むことができる。
そして、この希釈及び濃縮処理は、不連続に繰り返しおこなうことで、大量のタンパク質の合成を可能とする。
本発明のA方法では、上記のいずれかの工程中に、合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を無細胞タンパク質合成反応液に添加することにより、合成したタンパク質を担体に捕捉させる工程を導入し、さらに、該担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を回収する工程を導入する。続いて、好適には、合成したタンパク質が捕捉された担体が回収された後の無細胞タンパク質合成反応液を反応相にもどす。好ましくは、担体は濃縮処理後の無細胞タンパク質合成反応系から回収する。
そして、この希釈及び濃縮処理は、不連続に繰り返しおこなうことで、大量のタンパク質の合成を可能とする。
本発明のA方法では、上記のいずれかの工程中に、合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を無細胞タンパク質合成反応液に添加することにより、合成したタンパク質を担体に捕捉させる工程を導入し、さらに、該担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を回収する工程を導入する。続いて、好適には、合成したタンパク質が捕捉された担体が回収された後の無細胞タンパク質合成反応液を反応相にもどす。好ましくは、担体は濃縮処理後の無細胞タンパク質合成反応系から回収する。
この重層処理で、mRNAを原料とする合成に必要とされる基質、エネルギー源、イオン類、緩衝液などの成分が補充され、タンパク質合成が再活性化される。
そして、この混合、濃縮、重層処理は、不連続に繰り返し行うことで、大量のタンパク質を合成可能とする。
本発明のA方法では、上記のいずれかの工程中に、合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を無細胞タンパク質合成反応液に添加することにより、合成したタンパク質を担体に捕捉させる工程を導入し、さらに、該担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を回収する工程を導入する。続いて、好適には、合成したタンパク質が捕捉された担体が回収された後の無細胞タンパク質合成反応液を反応相にもどす。好ましくは、担体は濃縮処理後の無細胞タンパク質合成反応系から回収する。
ビバフローシステムに使用する限外ろ過膜の分画分子量は、担体が通過不能であれば良く、分画分子量が5000〜100000MWCOのものを用いることができるが、好ましくは 5000〜10000MWCOが用いられる。または、膜の穴径としては5nm〜200nmのものを用いることができる。
無細胞タンパク質合成を行うことが可能な反応容器である無細胞タンパク質合成系1(1)、合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を回収するために無細胞タンパク質合成系外部に連結している流路2(2)、無細胞タンパク質合成反応液を送液するための送液ポンプ3(3)、流路2の末端に連結しており取り外し可能な担体回収容器4(4)、合成したタンパク質が捕捉された担体が回収された後の無細胞タンパク質合成反応液を無細胞タンパク質合成系にもどすための流路5(5)、無細胞タンパク質合成反応液の流れを止めるための弁6(6)が少なくとも有する(図1参照)。
自体公知の無細胞タンパク質合成を無細胞タンパク質合成系1で行う。合成工程前又は合成工程中に、合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を無細胞タンパク質合成系1(1)に添加する。無細胞タンパク質合成反応液をよく攪拌して、合成したタンパク質を該担体に結合させる。次に、反応系内の合成したタンパク質が捕捉された担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を流路2を通じて回収する。続いて、流路2を通じて回収された"合成したタンパク質が捕捉された担体を含む無細胞タンパク質合成反応液"は、担体回収容器4に通される。これにより、合成したタンパク質が捕捉された担体は、担体回収容器内の膜等により担体回収容器内に回収されるが、無細胞タンパク質合成反応液は膜等を通過して、流路5を通して無細胞タンパク質合成系1にもどされる。
次に、各流路の弁6を閉めた後、流路2、流路5と連結している担体回収容器4を、流路から離す。自体公知の溶出液を担体回収容器4に流すことで、合成したタンパク質を溶出(分離)する。そして、担体回収容器4を洗浄液で数回洗浄した後に、流路2、流路5と連結させる。続いて、上記工程を複数回繰り返す。なお、担体回収容器4を離した状態であっても、弁6が閉めてある限り、タンパク質合成を行うことができる。当然に、流路2と流路5の役割をお互いに変えることができる。
本発明では、好適には、合成したタンパク質が捕捉された担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の担体回収容器の通過速度を考慮して、無細胞タンパク質合成反応液の送液速度を設定・制御可能な装置を設置することもできる。
また、実験者が、ピペッター等を用いて無細胞タンパク質合成反応液を合成したタンパク質が捕捉された担体を含む無細胞タンパク質合成系から回収する場合には、スピンカラムに合成したタンパク質が捕捉された担体を含む無細胞タンパク質合成反応液を添加し、遠心分離後に、上澄液(合成したタンパク質が捕捉された担体を含んでいない)である無細胞タンパク質合成反応液を無細胞タンパク質合成系にもどすこともできる。しかしながら、合成したタンパク質を回収することができる方法であれば、特に限定されない。
なお、合成したタンパク質を適当なタグ・マーカーで修飾しておけば、(例えば、ストレプトアビジン、ヒスチジンタグ、GST、マルトース結合タンパク質等)、この修飾物質と特異的に結合しうる物質(例えば、ビオチン、2価金属イオン、グルタチオン、マルトース等)を使って合成したタンパク質を担体に捕捉させることが可能である。
他の合成タンパク質と担体の例は、以下の通りである。
カルモデュリン結合ペプチド融合タンパク質−カルモデュリン結合担体、セルロース結合ドメイン融合タンパク質−セルロース結合担体、キチン結合ドメイン融合タンパク質−キチン結合担体、マルトース結合タンパク質融合タンパク質−アミロース又は架橋したアミロースを結合した担体、FLAGタグ融合タンパク質−FLAGタグに対する抗体を結合した担体なども用いることができる。また、プロティンA融合タンパク質、プロティンG融合タンパク質をタグとして、これに特異的に結合する免疫グロブリンFcフラグメントを結合した担体を用いることもできる。
また、担体の性質は、特に限定されず、合成したタンパク質に負の影響を与えない各種のビーズ、好適にはアガロースビーズ、磁気ビーズ、磁気アガロースビーズが使用できる。
なお、本発明の無細胞タンパク質合成方法で使用できる担体としての市販品のビーズは以下の通りである。なお、当然に本発明の無細胞タンパク質合成方法で使用可能な担体は限定されない。
H1786 HIS-SelectR HC Nickel Magnetic Beads (Sigma社製)
G1919 Glutathione High Capacity Magnetic Agarose Beads(Sigma社製)
His MagTM Agarose Beads(MERCK社製)
GST MagTM Agarose Beads (MERCK社製)
TALONTM Magnetic Beads(Clontech社製)
MagneHisTM Ni-Particles (Promega 社製)
MagneGSTTM Particles (Promega 社製)
Promega Streptavidin MagneSphereR Paramagnetic Particles(Promega社製)
また、無細胞タンパク質合成系からの担体の回収方法の一例としては、担体の中に磁石を導入した磁気ビーズを利用すれば、無細胞タンパク質合成系内部での回収だけでなく、無細胞タンパク質合成系外部から磁石の力で担体を無細胞タンパク質合成系外に取り出すことができる。そして、回収した担体を、合成したタンパク質を溶出するための溶液に浸けて、該担体からタンパク質を分離させる。
さらに、合成したタンパク質を結合する部位と他の物質に結合する部位の両方を供えた担体を利用すれば、担体にタンパク質を結合させた後で他の物質を固着させたカラム等を使って担体を回収することができる。
また、上記のように実験者による磁石操作を行わずとも、以下の無細胞タンパク質合成方法を用いることにより容易に担体を回収することができる。
従来公知のバッチ法、透析法、重層法、繰り返しバッチ法、繰り返し供給バッチ法及び繰り返し重層法でタンパク質合成を行う。そして、合成開始前又は合成工程中に、合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を無細胞タンパク質合成反応液に添加する。そして、該担体を回収した後、合成したタンパク質が捕捉された担体が回収された無細胞タンパク質合成反応液で複数回のタンパク質合成を行う。好ましくは、タンパク質合成反応効率向上のために、基質、エネルギー源及び/又は翻訳鋳型の無細胞タンパク質合成系内への補充が行われる。
上記タンパク質合成方法では、加えて副産物を無細胞タンパク質合成系外に除去する方法を含むことができる。
第1反応槽8(8)、第2反応槽9(9)、第1反応槽と第2反応槽を連結するための流路10(10)、無細胞タンパク質合成反応液を送るための送液ポンプ11(11)、第1反応槽と第2反応槽間の無細胞タンパク質合成反応液の流れを止めるための弁12(12)、流路10の両端に担体を通過不可能とする膜13(13)を少なくとも有する。好適には、流路10には、無細胞タンパク質合成反応液を回収するための排出口14(14)を有する(図2参照)。
まず、第1反応槽(第2反応槽を最初に選択することもできる)で無細胞タンパク質合成を行う。合成工程前又は合成工程中に、合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を第1反応槽(第2反応槽)に添加する。無細胞タンパク質合成反応液をよく攪拌して、合成したタンパク質を該担体に結合させる。その後、弁12を開放して、無細胞タンパク質合成反応液を第2反応槽(第1反応槽)に送る。ここで、膜13の存在により、該担体は第2反応槽(第1反応槽)に移ることはできない。次に、合成したタンパク質が捕捉された担体を空の第1反応槽(第2反応槽)から回収し、一方、送られてきた無細胞タンパク質合成反応液を用いて第2反応槽(第1反応槽)でタンパク質合成を行う。そして、上記工程を繰り返すことにより、第1反応槽、第2反応槽で、交互に複数回タンパク質合成を行う。
さらに、無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を排出口14から回収することもできる。
本発明の好ましいタンパク質合成・回収一体型無細胞タンパク質合成方法では、限外濃縮器としてザルトリウス社製のビバフローシステムを用いる。限外濃縮器としてビバフローシステムを利用すること及び合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を無細胞タンパク質合成反応液に添加することで、合成したタンパク質は膜への付着や膜の目詰りがほとんどなく、高効率で合成したタンパク質を無細胞タンパク質合成系から回収することができる。
以下、図3を用いて本発明のビバフローシステムを用いたタンパク質合成・回収一体型無細胞タンパク質合成方法を説明する。
反応槽15(15)内において、合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を、合成するタンパク質mRNAを含む無細胞タンパク質合成液に添加し、無細胞タンパク質合成反応を行う。
さらに、無細胞タンパク質合成工程中に、反応槽15内の無細胞タンパク質合成液を、流路16(16)、流路17(17)、流路18(18)、ビバフロー19(19)、流路20(20)を通して、ポンプ21(21)で引き、約1/2量の無細胞タンパク質合成液とする(濃縮操作)。なお、ビバフロー19で濃縮された後の溶液は、溶液回収装置22(22)に貯められる。次に、供給液23(23)を、流路24(24)、流路17、流路18、ビバフロー19、流路25(25)を通して、ポンプ21により反応槽15内に供給して、約元量の無細胞タンパク質合成液とする(希釈操作)。さらに、希釈操作工程と濃縮操作工程を複数回繰り返す。なお、希釈操作工程と濃縮操作工程は、どちらの工程を先にしても良い。
また、供給液23を無細胞タンパク質合成反応液に供給する場合には、ビバフロー19を介することが好ましい。しかしながら、供給液23は、流路24、流路16を通して、反応槽15内に供給しても良い。なお、このような供給液の流れは、送液切替バブル26(26)により切り替えることができる。
さらに、合成したタンパク質を捕捉した担体を反応槽15から回収する。また、担体回収装置4を各流路(流路20を除く)、ビバフロー19、ポンプ21、送液切替バブル26に設置することによっても合成したタンパク質を捕捉した担体を回収することができる。
以上により、特に不溶化するタンパク質に用いるのに好適である。
本明細書において「転写鋳型」とは、インビトロ転写反応の鋳型分子として使用し得るDNAをいい、適当なプロモーター配列の下流に目的タンパク質をコードする塩基配列を少なくとも有する。適当なプロモーター配列とは、転写反応において使用されるRNAポリメラーゼが認識し得るプロモーター配列をいい、例えば、SP6プロモーター、T7プロモーター等が挙げられる。目的タンパク質をコードするDNAはいかなるものであってもよい。
転写鋳型は、プロモーター配列と目的タンパク質をコードする塩基配列との間に翻訳効率を制御する活性を有する塩基配列を有することが好ましく、例えば、タバコモザイクウイルス由来のΩ配列などのRNAウイルス由来の5'非翻訳領域、及び/又はコザック配列等を用いることができる。さらに、転写鋳型は、目的タンパク質をコードする塩基配列の下流に転写ターミネーション領域等を含む3'非翻訳領域を含むことが好ましい。3'非翻訳領域としては、終止コドンより下流の約1.0〜約3.0キロベース程度が好ましく用いられる。これらの3'非翻訳領域は必ずしも目的タンパク質をコードする遺伝子本来のそれである必要はない。
本発明の方法の好ましい実施態様の一つとして、目的タンパク質をコードする転写鋳型をPCR法によって増幅・合成したDNA鋳型を精製することなくそのまま転写鋳型とすることである。
尚、非特異的増幅により生じる短鎖DNA(結果として目的産物の収量低下及び低分子翻訳産物ノイズを生じる)の生成を防ぐために、国際公開第WO02/18586号に記載のプロモーター分断型プライマーを用いることもできる。
上記のようにして得られる転写鋳型DNAはクロロホルム抽出やアルコール沈殿により精製した後に転写反応に供してもよいが、本発明のタンパク質合成方法では、PCR反応後の合成液をそのまま転写鋳型溶液として使用することが可能である。転写鋳型の作製において、鋳型DNAをプラスミドに導入しないので、一旦プラスミドを大量調製して、これを制限酵素処理して転写鋳型を得る方法と比較して、工程を格段に省略でき、少ない工程数で短時間での転写鋳型の大量合成が可能となる。すなわち、目的タンパク質をコードするDNAを組み込んだプラスミドを調製する工程を必要としないので、プラスミド精製のための超遠心に要する時間を短縮することができる。また、プラスミドから転写鋳型を切り出すための制限酵素処理、及び制限酵素等を除去するためのフェノール処理、クロロホルム処理、転写鋳型の精製のためのアルコール沈殿、転写鋳型であるDNAの沈殿を溶解する工程を省略することができるので、フェノール/クロロホルムの残存による転写反応の阻害や、多工程の精製操作による転写鋳型のロスがない。また、反応に要するステップ数を少なくすることができるので使用するチップ数なども少なくて済むというさらなる利点を有する。
転写鋳型を、転写鋳型中のプロモーターに適合するRNAポリメラーゼやRNA合成用の基質(4種類のリボヌクレオシド三リン酸)等の転写反応に必要な成分を含む溶液(転写反応溶液ともいう)と混合し、これを約20〜約60℃、好ましくは約30〜約42℃で、約30分〜約16時間、より好ましくは約2〜5時間インキュベートして転写反応をおこなう。
また、好ましい実施態様の一つとして、自体公知の方法を用いて調製された目的タンパク質をコードする転写鋳型DNA又は(1)に記載のPCR法によって増幅・合成したDNA鋳型を精製することなくそのまま転写鋳型として調製された目的タンパク質をコードする転写鋳型DNAから、インビトロ転写反応により翻訳鋳型であるmRNAを生成させるものである。転写反応は、反応系(例えば、96穴タイタープレートなどの市販の容器)に提供された転写鋳型を含む溶液(未精製mRNAを含む転写溶液)、好ましくはPCR反応液と、転写鋳型中のプロモーターに適合するRNAポリメラーゼ(例えば、SP6 RNAポリメラーゼなど)やRNA合成用の基質(4種類のリボヌクレオシド3リン酸)等の転写反応に必要な成分を含む溶液(「転写反応用溶液」ともいう)とを混合した後、約20℃〜約60℃、好ましくは約30℃〜約42℃で約30分間〜約16時間、好ましくは約2時間〜約5時間該混合液をインキュベートすることにより行われる。
なお、本発明の実施例で使用した翻訳鋳型となるmRNAは、GFP遺伝子DNA(Chiu, W. –L.,et al., Curr. Biol. 6, 325-330 (1996))が挿入されたpEU-GFPベクター(Sawasaki, T. et al.,PNAS, 99 (23), 14652-7(2002))を基に、Ω配列部分をWO03/056009号公報に記載の配列番号136の塩基配列に置き換えた環状プラスミドDNAを鋳型として、SP6 RNApolymerase(Promega社製)を用いて転写を行った。
市販のタンパク質合成用細胞抽出液としては、大腸菌由来では、E.coli S30 extract system(Promega社製)やRTS 500 Rapid Translation System(Roche社製)に添付のもの等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来ではRabbit Reticulocyte Lysate Sytem(Promega社製)に添付のもの等、昆虫細胞由来では、TransdirectTM insect cell(株式会社 島津製作所)等、更にコムギ胚芽由来ではPROTEIOSTM(TOYOBO社製)に添付のもの等が挙げられる。このうち、植物種子の胚芽抽出液の系を用いることが好ましく、植物種子としては、コムギ、オオムギ、イネ、コーン等のイネ科の植物、及びホウレンソウ等の種子が好ましく、特にコムギ種子胚芽抽出液を用いたものが好適である。さらに胚芽の胚乳成分および低分子のタンパク質合成阻害剤物質が実質的に除去されたコムギ種子胚芽抽出液抽出液がより好適である。これらは従来のコムギ種子胚芽抽出液と比較して、抽出液中のタンパク質合成阻害に関与する成分及び物質が低減されているからである。
種子の粉砕は、通常公知の粉砕装置を用いて行うことができるが、被粉砕物に対して衝撃力を加えるタイプの粉砕装置、例えばピンミル、ハンマーミルを用いることが好ましい。粉砕の程度は、使用する種子胚芽の大きさに応じて適宜選択すればよいが、例えばコムギの場合は、通常、最大長さ4mm以下、好ましくは最大長さ2mm以下の大きさに粉砕する。また、粉砕は乾式で行うのが好ましい。
次いで、得られた種子粉砕物から、通常公知の分級装置、例えば、篩を用いて粗胚芽画分を取得する。例えば、コムギの場合、通常、メッシュサイズ0.5mm〜2.0mm、好ましくは0.7mm〜1.4mmの粗胚芽画分を取得する。さらに、必要に応じて、得られた粗胚芽画分に含まれる種皮、胚乳、ゴミ等を風力、静電気力を利用して除去してもよい。
また、胚芽と種皮、胚乳の比重の違いを利用する方法、例えば重液選別により、粗胚芽画分を得ることもできる。より多くの胚芽を含有する粗胚芽画分を得るために、上記の方法を複数組み合わせてもよい。さらに、得られた粗胚芽画分から、例えば目視や色彩選別機等を用いて胚芽を選別する。
必要量の抽出溶媒を胚芽に加え、抽出溶媒の存在下に胚芽を細分化する。抽出溶媒の量は、洗浄前の胚芽1gに対して、通常0.1ミリリットル以上、好ましくは0.5ミリリットル以上、より好ましくは1ミリリットル以上である。抽出溶媒量の上限は特に限定されないが、通常、洗浄前の胚芽1gに対して、10ミリリットル以下、好ましくは5ミリリットル以下である。また、細分化しようとする胚芽は従来のように凍結させたものを用いてもよいが、凍結させていないものを用いるのがより好ましい。
細分化する際に用いることのできる装置や方法は、上記条件を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、ワーリングブレンダーのような高速回転する刃状物を有する装置を用いることが好ましい。刃状物の回転数は、通常1000rpm以上、好ましくは5000rpm以上であり、また、通常30000rpm以下、好ましくは25000rpm以下である。刃状物の回転時間は、通常5秒以上、好ましくは10秒以上である。回転時間の上限は特に限定されないが、通常10分以下、好ましくは5分以下である。細分化する際の温度は、好ましくは10℃以下で操作が可能な範囲内、特に好ましくは4℃程度が適当である。
このような衝撃または切断による胚芽の細分化では、胚芽の細胞核や細胞壁は全て破壊されず、少なくともその一部は破壊されることなく残る。即ち、胚芽の細胞核等の細胞小器官、細胞膜や細胞壁が必要以上に破壊されることがないため、それらに含まれるDNAや脂質等の不純物の混入が少なく、細胞質に局在するタンパク質合成に必要なRNAやリボソーム等を高純度で効率的に胚芽から抽出することができる。
このような衝撃または切断による細分化においては、細分化した後に抽出溶媒を添加することもできるが、抽出溶媒の存在下に行うことがより好ましい。
このような方法によれば、従来の胚芽を粉砕する工程と、粉砕された胚芽に抽出溶媒を加えて胚芽抽出液を得る工程とを同時に一つの工程として行うことができるため効率的にコムギ胚芽抽出液を得ることができる。上記の方法を、以下「ブレンダー法」と称することがある。
コムギ胚芽抽出液は、ゲルろ過等によりさらに精製することができる。ゲルろ過は、例えば予め適当な溶液で平衡化しておいたゲルろ過装置を用いて行うことができる。ゲルろ過溶液中の各成分の組成・濃度はそれ自体既知であり、無細胞タンパク合成用の細胞胚芽抽出液の製造に用いられるもの(例えば、HEPES−KOH、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、ジチオスレイトールまたはL型アミノ酸を含む溶媒)を採用すればよい。
このようにして得られた胚芽細胞抽出物は、RNase活性及びホスファターゼ活性が極めて低減されたものである。
上記のようにして得られる転写溶液を直接添加したタンパク質合成用細胞抽出液に、基質となるアミノ酸、エネルギー源、各種イオン、緩衝液、ATP再生系、核酸分解酵素阻害剤、tRNA、還元剤、ポリエチレングリコール、3',5'−cAMP、葉酸塩、抗菌剤等の、翻訳反応に必要もしくは好適な成分を含有する溶液(「翻訳反応用溶液」ともいう)を添加して、翻訳反応に適した温度で適当な時間インキュベートすることにより翻訳反応を行うことができる。基質となるアミノ酸は、通常、タンパク質を構成する20種類の天然アミノ酸であるが、目的に応じてそのアナログや異性体を用いることもできる。また、エネルギー源としては、ATP及び/又はGTPが挙げられる。各種イオンとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩、グルタミン酸塩等が挙げられる。緩衝液としては、Hepes−KOH、Tris−酢酸等が用いられる。またATP再生系としては、ホスホエノールピルベートとピルビン酸キナーゼの組み合わせ、またはクレアチンリン酸(クレアチンホスフェート)とクレアチンキナーゼの組み合わせ等が挙げられる。核酸分解酵素阻害剤としては、リボヌクレアーゼインヒビターや、ヌクレアーゼインヒビター等が挙げられる。このうち、リボヌクレアーゼインヒビターの具体例としては、ヒト胎盤由来のRNase inhibitor(TOYOBO社製等)等が用いられる。tRNAは、Moniter, R., et al., Biochim. Biophys. Acta., 43, 1 (1960)等に記載の方法により取得することができ、あるいは市販のものを用いることもできる。還元剤としては、ジチオスレイトール等が挙げられる。抗菌剤としては、アジ化ナトリウム、アンピシリン等が挙げられる。これらの添加量は、無細胞タンパク質合成において通常使用され得る範囲で適宜選択することができる。
加えて、本発明の範囲は、上記方法において、無細胞タンパク質合成方法として使うコムギ胚芽抽出物の用途も含まれる。
まず、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成反応においての翻訳鋳型となるmRNAの合成を行うために、発明者である遠藤が構築した汎用性のあるプラスミドpEU1(WO01/27260号公報)を利用した。目的のタンパク質をコードする遺伝子としてはN端にGSTタグ塩基配列を持つオワンクラゲのグリーン蛍光タンパク質(GST-GFP)遺伝子(gfp遺伝子)を用い、上記プラスミドに常法に従って挿入した。
得られたプラスミドをHindIIIで切断して直鎖型とし、これを転写鋳型として常法によりmRNAを合成した。合成したmRNAは、5′末端にCAPをもたず、非翻訳配列として5′末端にAMV−Ω配列を、3′末端にプラスミド由来の500塩基を有している。なお、AMV−Ω配列とは、アルファルファモザイクウイルスmRNA(AMV−mRNA)の5′末端リーダー構造とタバコモザイクウイルスmRNA(TMV−mRNA)の5′末端Ω配列とを直列に結合した塩基配列をいう(WO01/27260号公報)。
次に、コムギ胚芽抽出物を全容量の48%容(濃度は、200A260nm units/ml)含む、次のような終濃度の組成〔1,000units/ml リボヌクレアーゼ阻害剤(RNAsin)(TAKARA社製)、30mM HEPES−KOH(pH7.6)、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウム、2.85mM ジチオスレイトール、0.5mg/ml クレアチンキナーゼ、1.2mM アデノシン三リン酸(ATP)、0.25mM グアノシン三リン酸(GTP)、16mM クレアチンリン酸、0.380mM スペルミジン、20種類のL型アミノ酸(各0.3mM)、0.05% NP−40、600μg/ml mRNA〕からなる無細胞タンパク質合成液を調製した。
この無細胞タンパク質合成液を、口径7mm、5mm、および3mmの反応容器(それぞれ、マイクロタイタープレート、1.5mL容量の試験管、および0.2mL容量の試験管)に加え、その上に5倍容量の供給溶液〔30mM HEPES−KOH(pH7.6)、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウム、2.85mM ジチオスレイトール、1.2mM ATP、0.25mM GTP、16mM クレアチンリン酸、0.380mM スペルミジンおよび20種類のL型アミノ酸(0.3mM)〕を添加し、静置条件下26℃で反応させた。
上記合成反応の停止した無細胞タンパク質合成反応液に、あらかじめ基質やエネルギー源、例えばアミノ酸、ATP、GTP、タンパク質合成反応に必要なその他のイオン類や緩衝液を含む供給溶液で平衡化しておいたグルタチオン磁気ビーズを加え静かに攪拌した。次いで、無細胞タンパク質合成反応液を同様の処理を施したセファデックスG−25カラムを用いてゲルろ過した後、さらに26℃でタンパク質合成を行った。
上記合成反応を8回繰り返した後に、磁気ビーズを磁石の磁力を利用して無細胞タンパク質合成反応液から回収した。回収された磁気ビーズを洗浄液(30mM HEPES−KOH(pH7.6)、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウムからなる)で3回洗浄した後、溶出液を用いて溶出した。この溶出液を、SDS-PAGEにて分析して、GST-GFPタンパク質の存在を確認した。
GSTタグの代わりに、Hisタグを用いて、実施例1の方法と同様にHis-GFPタンパク質を合成した。
実施例1の方法と同様に無細胞タンパク質合成を行った。次に、あらかじめ基質やエネルギー源、例えばアミノ酸、ATP、GTP、タンパク質合成反応に必要なその他のイオン類や緩衝液を含む供給溶液で平衡化しておいたNi-キレート磁気ビーズを加え静かに攪拌した。次いで、無細胞タンパク質合成反応液を同様の処理を施したセファデックスG−25カラムを用いてゲルろ過した後、さらに26℃でタンパク質合成を行った。
上記合成反応を8回繰り返した後に、磁気ビーズを磁石の磁力を利用して無細胞タンパク質合成反応液から回収した。回収された磁気ビーズを洗浄液(30mM HEPES−KOH(pH7.6)、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウムからなる)で3回洗浄した後、溶出液を用いて溶出した。この溶出液を、SDS-PAGEにて分析して、His-GFPタンパク質の存在を確認した。
実施例1の方法と同様にGST-GFPタンパク質mRNA及び無細胞タンパク質合成液を調製した。
200μlのMagne GSTTM Particles、5.5mlの供給液〔30mM HEPES−KOH(pH7.6)、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウム、2.85mM ジチオスレイトール、1.2mM ATP、0.25mM GTP、16mM クレアチンリン酸、0.380mM スペルミジンおよび20種類のL型アミノ酸(0.3mM)〕を、250μlのGST-GFPタンパク質mRNAを含む無細胞タンパク質合成液0.5mlに添加した。その後、20℃で無細胞タンパク質合成を行った。無細胞タンパク質合成工程中の1時間毎に、反応槽中の無細胞タンパク質合成液を、ビバフロー50(分画分子量:10000MWCO)を通して、ポンプで引き、約1/2量の無細胞タンパク質合成液とした。次に、供給液を、ビバフロー50を通して、反応槽中の無細胞タンパク質合成液に添加し、約元量の無細胞タンパク質合成液とした。
上記合成反応を8回繰り返した後に、磁気ビーズを磁石の磁力を利用して無細胞タンパク質合成反応液から回収した。回収された磁気ビーズを洗浄液(30mM HEPES−KOH(pH7.6)、95mM 酢酸カリウム、2.65mM 酢酸マグネシウムからなる)で3回洗浄した後、溶出液を用いて溶出した。この溶出液を、SDS-PAGEにて分析して、GST-GFPタンパク質の存在を確認した。なお、合成したタンパク質量は、バンド染色強度から、最初の無細胞タンパク質合成液1ml当たり1.2mgとなった。
以上により、合成したタンパク質は膜への付着や膜の目詰りがほとんどなく、高効率で無細胞タンパク質合成系から回収することができる。
2:流路2
3:送液ポンプ3
4:担体回収容器4
5:流路5
6:弁6
8:第1反応槽8
9:第2反応槽9
10:流路10
11:送液ポンプ11
12:弁12
13:膜13
14:排出口14
15:反応槽15
16:流路16
17:流路17
18:流路18
19:ビバフロー19
20:流路20
21:送液ポンプ21
22:溶液回収装置22
23:供給液23
24:流路24
25:流路25
26:送液切替バブル26
Claims (8)
- 無細胞タンパク質合成方法において、次の工程を含むタンパク質合成・回収一体型無細胞タンパク質合成方法:
1)無細胞タンパク質合成液を用いて無細胞タンパク質合成系でタンパク質合成反応を行う工程、
2)合成反応により合成したタンパク質を合成したタンパク質と特異的に結合できる担体で捕捉する工程、
3)合成したタンパク質を捕捉した担体を含む無細胞タンパク質合成反応液の一部又は全部を該無細胞タンパク質合成系から分取する工程、
4)該合成したタンパク質を捕捉した担体と該無細胞タンパク質合成反応液を分離する工程、
5)合成したタンパク質を捕捉した担体が分離された後の無細胞タンパク質合成反応液を、再利用するために、該無細胞タンパク質合成系にもどす工程。 - 上記1)〜5)の工程を複数回行うことを特徴とする請求項1の方法。
- 上記4)の工程において、前記担体に捕捉されたタンパク質を、無細胞タンパク質合成中、複数回の無細胞タンパク質合成反応毎の合間、又は無細胞タンパク合成反応終了後に該担体より回収することを特徴とする請求項1又は2の方法。
- 前記合成したタンパク質と特異的に結合できる担体を、無細胞タンパク質合成前、無細胞タンパク質合成中、又は無細胞タンパク質合成後に、前記無細胞タンパク質合成系に添加することを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の方法。
- 無細胞タンパク質合成による副産物を無細胞タンパク質合成系外に除去することを含む請求項1〜4の何れか一に記載の方法。
- 複数回のタンパク質合成反応のために、基質、エネルギー源及び/又は翻訳鋳型の無細胞タンパク質合成系内への補充が行われる請求項1〜5の何れか一に記載の方法。
- 合成したタンパク質と特異的に結合できる担体が、以下のいずれか1から選ばれる請求項1〜6の何れか一に記載の方法;
1)合成したタンパク質を特異的に結合できる物質を固定したビーズ、
2)合成したタンパク質を特異的に結合できる物質を固定した磁気ビーズ、
3)合成したタンパク質を特異的に結合できるイオン交換樹脂、
4)合成したタンパク質を特異的に結合できるアフィニティー樹脂。 - 無細胞タンパク質合成液が、以下から選ばれる細胞抽出物由来である請求項1〜7の何
れか一に記載の方法;
1)大腸菌、
2)植物種子、
3)ウサギ網状赤血球、
4)昆虫細胞、
5)哺乳動物細胞。
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