JP2006288320A - 無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物の製造方法 - Google Patents

無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 合成効率の高い無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物を工業的に効率よく製造するための方法を提供する。
【解決手段】
(i)圧潰された胚芽と水性媒体とを混和する工程、(ii)混和物からタンパク質合成能を有する画分を採取する工程により、無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物を調製する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、無細胞タンパク質合成用の胚芽抽出物の製造方法に関し、更に詳しくは、合成効率の高い無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物を工業的に効率よく製造するための方法、無細胞翻訳系でタンパク質を合成する方法、タンパク質合成用溶液および無細胞タンパク質合成用キットに関する。
無細胞タンパク質合成系は1960年代初頭にタンパク質の翻訳のメカニズムを解明する目的で開発され、報告されてきた。その報告以来、翻訳メカニズムの研究と同時にタンパク質を合成する手段として大腸菌などの細菌(非特許文献1参照)、小麦胚芽などの植物細胞、ウサギ網状赤血球(非特許文献2参照)などの動物細胞などのさまざまな種の細胞において、無細胞タンパク質合成系の開発が行われてきた。
現在、植物細胞においては、小麦胚芽を使用した無細胞タンパク質合成系が主に研究されており、それに用いる基本的な細胞抽出液調製方法は1970年代に確立された(非特許文献3参照)。
小麦胚芽から抽出液を調製する方法としては、通常、最初に小麦の種子を粉砕し、胚芽部位より種皮、胚乳等の抽出液作成に不要な部分を取り除いた後、その胚芽部位を粉砕、抽出、精製、濃縮する方法が行われている(非特許文献3参照、特許文献1参照)。
無細胞タンパク質合成系に用いる細胞抽出液の調製に使用する胚芽部位を取得する方法としては、胚芽の形状を保ったまま、即ち無傷の胚芽を単離・取得できる方法が行われている(特許文献2、3、4、5参照)。また、従来法による胚芽の単離では、タンパク質合成の阻害物質であるトリチンを含む胚乳の混入が不可避であり、このため水溶液中で超音波処理等して、胚乳を予め除去することが必要であるとされていた(特許文献参照6)。
タンパク質の合成能を有する画分の抽出方法としては、取得した胚芽を予め液体窒素等で凍結した後、乳鉢、ボールミル等で摩砕又は圧砕することにより微粉砕する方法が広く用いられており、このように微粉砕された胚芽に抽出溶媒を加えて攪拌した後、遠心分離等によりタンパク質合成能を有する胚芽抽出物含有液を回収していた。
しかし、現状の製造方法では、操作が煩雑であって工業的な製造方法としては、必ずしも満足できるものでは無く短時間に大量の抽出液を得ることが困難であった。特に問題になっている工程は、胚芽部位の取得工程及び抽出の工程であった。
特開平6−225783号公報 特開2003−315328号公報 特開2003−339394号公報 特開2004−000188号公報 特開2004−159588号公報 特開2000−236896号公報 Methods in Enzymol. 1983; 101: 674-90. Prokaryotic coupled transcription-translation. Chen HZ, Zubay G. Pratt, J.M. Eur J Biochem. 1976 AUG 1;67(1):247-56. An efficient mRNA-dependent translation system from reticulocyte lysates. Proc. Natl. Acad. sci. U. S. A. 1973; 70; 2330-2334. Efficient translation of tobacco mosaic virus RNA and rabbit globin 9S RNA in a cell-free system from commercial wheat germ.
無細胞タンパク質合成系は、ペプチド合成反応速度と翻訳反応の正確性において生細胞に匹敵する性能を保持し、かつ目的とするタンパク質を複雑な精製工程を実施することなく得ることができる有用な方法である。そのため、該合成系をより有用に産業利用するために、上記の通り製造方法の改良や合成効率の向上に関するいくつかの発明が開示されてきた。しかし、産業上の有用性向上のためには、合成効率のみならず、タンパク質合成系に使用する各種の物質を安定に高品質を保持して大量に供給することが必要である。
本発明者らは、上記課題を解決するために、無細胞タンパク質合成系に使用する胚芽抽出物を工業的に効率よく製造する方法について検討した。その結果、圧潰された(圧力により平面的に潰された)胚芽を、洗浄等により胚乳を除去することなく水性媒体と混和してタンパク質合成能を有する画分を抽出・採取するのみで、十分な活性を有する無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明によれば、(1)(i)圧潰された胚芽と水性媒体(抽出溶媒)とを混和する工程、(ii)混和物からタンパク質合成能を有する画分を採取する工程を含むことを特徴とする無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物の製造方法が提供される。
この発明の好ましい態様により、(2)胚芽が冷凍保存されたものである上記(1)に記載の方法;(3)抽出が濾過又は遠心分離により行われる上記(1)又は(2)に記載の方法;(4)胚芽が未洗浄である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法が提供される。
本発明の別の態様により、(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法で製造された胚芽抽出物を、翻訳鋳型に接触させることを特徴とする無細胞タンパク質合成方法が提供される。
また、本発明の別の態様により、(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法で製造された胚芽抽出物、ATP、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、L型アミノ酸、カリウムイオン及びマグネシウムイオンを含有することを特徴とする無細胞タンパク質合成用溶液が提供される。
さらに、本発明の別の態様により、(7)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法で製造された胚芽抽出物、上記(6)に記載のタンパク質合成用溶液又は圧潰された胚芽を含むことを特徴とする無細胞タンパク質合成用キットが提供される。
本発明によれば、タンパク質合成に必要な因子を圧潰胚芽から効率的に抽出することができ、安定で活性の高い無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物を工業的に大量に製造することができる。また、本発明の方法で得られる胚芽抽出物は、タンパク質合成活性が優れるため、無細胞系でのタンパク質の大量調製、進化分子工学の分野等での新しい酵素や抗体等の大量調製に極めて有用である。
従来、圧潰胚芽は、補助食品として用いられていたが、この圧潰胚芽から高性能な無細胞タンパク質合成用抽出液が調製可能なことは全く予想できず、圧潰胚芽から高性能な抽出液を作製するための明確な基準(胚芽種、純度、保存状態等)及び調製法等は知られていなかった。本発明により、圧潰胚芽から無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物を工業的に大量に製造する方法が初めて提供可能となった。
以下、本発明の実施態様の代表例を示し、本発明を更に詳細に説明する。
1.胚芽抽出物の製造方法
1)圧潰胚芽およびその調製
本発明で原料として用いられる胚芽は、コムギ、オオムギ、イネ、コーン等のイネ科植物のものが好ましく、中でもコムギ胚芽が最も好ましい。用いるコムギの品種は特に限定されないが、圧潰胚芽が効率的に得られる中力麦種や強力麦種が好ましい。具体的には、例えばオーストラリア産プライム・ハード(PH)、オーストラリア産スタンダード・ホワイト(ASW)、カナダ産ウエスタン・レッド・スプリング(1CW)、アメリカ産(ダーク)ノーザン・スプリング(DNS)、アメリカ産ハード・レッド・ウインター、カナダ産(ハード)アンバー・デュラム等が挙げられる。
特に好ましい品種としては、例えば、強力麦種としてカナダ産ウエスタン・レッド・スプリングとアメリカ産(ダーク)ノーザン・スプリング、オーストラリア産プライム・ハード等が挙げられ、中力麦種としてオーストラリア産スタンダード・ホワイト等が挙げられる。
上記植物種子を、粉砕装置で粉砕し、胚芽、胚乳破砕物、種皮破砕物を含む種子粉砕物を得て、粉砕物から胚芽の選別を行う。
例えば、小麦の圧潰胚芽を取得する場合、通常、先ずセパレーターで小麦種子から粗い異物(ごみ)を除去し、さらに空気流を利用して異物(ごみ)を除去する工程を繰り返し、小麦種子を精選する(精選工程)。次に、精選された小麦種子に水を吹きかけ外皮を強くして、皮が剥がれ易くする(調質工程)。小麦種子に水を吹きかけることにより、胚芽は柔らかくなり、圧力により扁平に圧潰されやすくなると考えられる。
調質済の小麦種子は粉砕装置で砕かれ、胚芽(圧潰胚芽)、胚乳破砕物、種皮破砕物(フスマ)等を含む混合物が調製される(粉砕工程)。ここで、粉砕装置としては、胚芽の圧潰が可能な装置であれば特に限定されないが、植物種子の粉砕に通常用いられるロール型の粉砕装置を用いるのが好ましい。この粉砕装置としては、例えば
ビューラー株式会社製のローラーミル等を挙げることができる。粉砕装置のローラーの回転数や圧力は、胚芽がフレーク状にならず、扁平に圧潰できる範囲であれば特に限定されない。植物種子によりこれら条件は異なり、胚乳からの胚芽の分離状態、即ちフレーク状にならずに扁平な圧潰胚芽が得られるか否かを観察しながら、条件を適宜調節すれば良い。具体的には、コムギ胚芽の場合、ローラーの回転数は、通常400rpm程度であり、この回転条件でローラーの圧力を圧潰胚芽が得られる条件に調節すれば良い。
圧潰の程度は、胚芽がフレーク状にならずに扁平の形状を保持したままで分離ができ、次の選別工程に付してもその形状が保持され、かつ水性媒体と混和したときに融解する程度であれば良い。なお、本明細書において「圧潰」とは、「圧力により平面的に潰すこと」を意味し、「圧潰胚芽」とは「圧力をかけて平面的に潰されている胚芽」を意味する。圧潰により胚芽が油を吸い込んで体積が増えると考えられ、それにより、その後のふるい工程で小麦粉(胚乳破砕物)やフスマとうまく選別できることがこの工程のポイントである。
目が粗いローラーミルで圧潰された胚芽はシフター(ふるい機)と呼ばれる装置で選別され、引き続きピュリファイアー(純化機)と呼ばれる装置でセモリナと呼ばれる胚乳破砕物(小麦粉)をより分け、純度の高い圧潰胚芽を得ることができる。純度の低い圧潰胚芽を含む画分については初めのローラーより目が細かいローラーミルで再度圧潰した後、シフター、ピュリファイアーに通して純度の高い圧潰胚芽を得ることができる。圧潰胚芽の収率を良くするためには、目の粗さが異なるローラーミルに何度もかけた後、シフター、ピュリファイアーを通す必要がある。
なお、国内産普通小麦種子を外国産小麦種子と同様の条件で圧潰すると、胚芽自体が細かく割れて、その後の選別(ふるい)工程で小麦粉や種皮(フスマ)とうまく選別することができなくなる傾向がある。そのため、純度の高い圧潰胚芽を効率的に得るという点では外国産の小麦を用いるのがより好ましい。また国内産小麦種子を用いる場合は、これに適した条件を設定する必要がある。
胚芽の選別に用いる篩のメッシュサイズは、胚芽、胚乳、種皮等を大きさにより分級し、圧潰胚芽の画分が取得可能なサイズであれば特に限定されない。具体的なメッシュサイズは、例えば通常800μm〜1500μm、好ましくは1100μm〜1400μm程度が適当である。さらに、必要に応じて、得られた圧潰胚芽画分に含まれる種皮、胚乳、ゴミ等を風力、静電気力、目視等を利用して除去してもよい。これら圧潰胚芽の選別は、製粉用の選別装置、例えば株式会社エムテック製の乾燥食品用徐塵機(LVSJ型)等を用いて行うこともできる。また適当なメッシュサイズの篩をもちいて、人力により選別を行うこともできる。
圧潰胚芽の純度は、タンパク質の合成効率の高い胚芽抽出物が調製可能なものであれば特に限定されないが、通常50%以上、好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上が適当である。ここで、「胚芽の純度」とは、任意のサンプル1g当たりに含まれる胚芽の重量割合として表した値である。
圧潰胚芽を、抽出物の製造に直ぐ使用しない場合は、通常室温以下の温度で保存、特に好ましくは凍結保存をしておくのが適当である。保存温度は、通常25℃以下、好ましくは4℃以下、より好ましくは0℃以下、特に好ましくは−10〜−80℃が適当である。これにより、タンパク質合成活性を保持させることができる。
上記方法により取得された圧潰胚芽は、特に胚乳等の洗浄を行うことなく、抽出物の調製に用いることができる。
2)胚芽抽出物の調製
胚芽抽出物は、先ず、(i)上記方法で得られる圧潰胚芽と抽出溶媒(水性媒体)とを混和し、(ii)混和物からタンパク質合成能を有する画分を採取することにより調製することができる。
用いる抽出溶媒の量は、圧潰胚芽1gに対して、通常0.1ミリリットル以上、好ましくは0.5ミリリットル以上、より好ましくは1ミリリットル以上である。抽出溶媒量の上限は特に限定されないが、通常、圧潰胚芽1gに対して、10ミリリットル以下、好ましくは5ミリリットル以下である。
抽出溶媒としては、タンパク質合成活性を損なわない組成を有する水性媒体であれば特に制限されないが、例えば緩衝液、カリウムイオン、マグネシウムイオン及び/又はチオール基の酸化防止剤を含む水溶液を用いることが好ましい。また、必要に応じて、カルシウムイオン、L型アミノ酸等をさらに添加してもよい。例えば、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)−KOH、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、L型アミノ酸及び/又はジチオスレイトールを含む溶液や、Pattersonらの方法(非特許文献3)を一部改変した溶液(HEPES−KOH、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、塩化カルシウム、L型アミノ酸及び/又はジチオスレイトールを含む溶液)を抽出溶媒として使用することができる。抽出溶媒中の各成分の組成・濃度はそれ自体既知であり、無細胞タンパク質合成用の胚芽抽出物の製造法に通常用いられるものを採用すればよい。
圧潰胚芽に抽出溶媒(水性媒体)を加え、温和に撹拌・混合することにより、胚芽から翻訳必須成分が抽出され、タンパク質合成活性を有する画分を抽出することができる。
抽出温度は30℃以下、好ましくは0〜26℃、特に好ましくは0〜10℃である。遠心分離前の溶媒との混和抽出にかかる時間は工業的な生産方法及び抽出成分の安定性を加味すると短い方がよく、好ましくは30min以下である。攪拌速度としては胚芽細胞があまりぼろぼろにならない条件が好ましく、好ましくは1,000rpm以下、さらに好ましくは0〜600rpm、さらに好ましくは10〜100rpm程度である。
3)胚芽抽出物の採取
上記で得られた胚芽抽出物を遠心分離、Buffer交換等により分離・精製して採取する。Buffer交換のためのゲルろ過としては、例えば予め溶液(HEPES−KOH、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、ジチオスレイトール)で平衡化しておいたゲルろ過装置を用いて行うことができる。ゲルろ過溶液中の各成分の組成・濃度もそれ自体既知であり、無細胞タンパク質合成用の胚芽抽出物、例えば胚芽抽出物の製造法に通常用いられるものを採用すればよい。用いるゲルはBuffer交換が可能なものであれば、分画分子量等は特に限定されないが、分画分子量としては、例えば2500以上のものが適当である。
4)微生物の排除
胚芽抽出物含有液(以下これを「胚芽抽出液」と略称することがある)には、微生物、特に糸状菌(カビ)などの胞子が混入していることがあり、これら微生物を排除しておくことが好ましい。特に長期(1日以上)の無細胞タンパク質合成反応中に微生物の繁殖が見られることがあるので、これを阻止することは重要である。微生物の排除手段は特に限定されないが、ろ過滅菌フィルターを用いるのが好ましい。フィルターのポアサイズとしては、混入する可能性のある微生物が排除可能なサイズであれば特に限定されないが、通常0.1〜1マイクロメーター、好ましくは0.2〜0.5マイクロメーターが適当である。ちなみに、小さな部類の枯草菌の胞子サイズは0.5μmx1μmであることから、0.2マイクロメーターのフィルター(例えばSartorius製のMinisartTM等)を用いるのが胞子の除去にも有効である。ろ過に際して、先ずポアサイズが大きめのフィルターを用い、次に混入する可能性のある微生物が排除可能なポアサイズのフィルターを用いて、ろ過するのが好ましい。
これら微生物の排除は、次に述べる活性化剤による処理やアフィニティ担体による処理の後に行っても良い。
5)活性化剤処理
上記胚芽抽出物の調製法のいずれかの工程において、さらに活性化剤による処理を行うことにより、タンパク質合成活性が優れた無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物とすることができる。活性化剤による処理は、例えば特願2004−228349号明細書に記載されている方法により行うことができる。その概要を次に述べる。
活性化剤としては、水不溶性の固体担体であり、該固体担体と胚芽抽出物とを接触させることにより該抽出物のタンパク質合成能(合成活性)が向上し得るものであれば特に限定されない。具体的には、例えば酸化アルミニウム、活性酸化アルミニウム、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ゲルクロマトグラフィー用担体、各種リガンドが結合したカラム担体等が挙げられる。
酸化チタンとしては2酸化チタンが好ましく、酸化ジルコニウムとしては2酸化ジルコニウムが好ましい。ゲルクロマトグラフィー用担体としては、例えば酸化アルミニウム系担体、ポリビニルアルコール系担体、アガロース系担体、セルロース系担体、デキストラン系担体等が挙げられ、これらの中で酸化アルミニウム系担体が好ましい。
また、各種リガンドが結合したカラム担体としては、例えば強陰イオン交換体の結合した担体であるQuanternary ammonium結合担体、Quanternary aminoethyl結合担体、弱陰イオン交換体の結合した担体であるdiethylaminoethyl結合担体、強陽イオン交換体の結合した担体であるmethyl sulphonate結合担体、sulphopropyl結合担体、弱陽イオン交換体の結合した担体であるcarboxymethyl結合担体、表面が酸性、塩基性若しくは中性である活性酸化アルミニウム等が挙げられる。
これらの中で、活性炭、methyl sulphonate結合担体、sulphopropyl結合担体、carboxymethyl結合担体、塩基性である活性酸化アルミニウムが好ましい。
これら活性化剤は、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、これらの活性化剤はそれ自体既知の通常用いられるものであり、容易に入手することができる。
活性化剤による処理方法も特に限定されず、各工程の特徴に応じて適当な処理方法、例えば活性化剤と胚芽抽出液とを混合して接触させた後に、活性化剤を分離する方法等を採用すれば良い。また活性化剤を充填したカラムに胚芽抽出液を通して処理することもできる。
活性化剤の使用量は特に制限されず、得られた胚芽抽出物のタンパク質合成活性を指標として、適宜使用量を決めれば良い。具体的には、酸化アルミニウムの場合、胚芽重量換算で1g当たり3〜1000mg、好ましくは15〜640mg程度が適当である。
胚芽抽出液の活性化剤による処理時間(胚芽抽出物と活性化剤との接触時間)に特に制限は無く、通常5〜60分、好ましくは10〜20分程度が適当である。また、処理温度にも特に制限は無く、通常4〜50℃、好ましくは20〜25℃程度が適当である。
6)アフィニティ担体処理
さらに、上記胚芽抽出物には、タンパク質の精製に用いるアフィニティ担体に結合する物質が含まれている可能性がある。これらの物質は、アフィニティ担体を用いて目的タンパク質を精製する際に、不純物として目的タンパク質に混入する可能性がある。それ故、上記胚芽抽出液の調製法のいずれかの工程において、アフィニティ担体処理により、これらの物質を胚芽抽出物から予め排除しておいても良い。アフィニティ担体処理は、例えば国際出願番号PCT/JP2005/3508号明細書に記載されている方法により行うことができる。その概要を次に述べる。
「アフィニティ担体」とは、特定のタンパク質と親和性を有し、これらと結合し、これらを吸着する性質を有する物質を保持した担体を意味する。該アフィニティ担体は、特定のタンパク質と結合し、これを吸着することによって、特定のタンパク質、又は該タンパク質を介した他タンパク質の精製等に用い得るものである。
本発明において、胚芽抽出物から除去(排除)する「アフィニティ担体に結合する物質」とは、上記アフィニティ担体に結合し、タンパク質合成活性を有する胚芽抽出液から該物質を除去してもタンパク質合成能が保持されるものであれば如何なるものであってもよい。また、該胚芽抽出液の「タンパク質合成能が保持される」とは、該胚芽抽出液のタンパク質合成能が、合成される目的タンパク質の利用に充分な量を合成し得る程度に保たれることを意味する。具体的には、未処理の同じ胚芽抽出液と比較してそのタンパク質合成能が70%以上に保たれるものを意味する。これらには、タンパク質合成活能が未処理の胚芽抽出液と比較して上昇するものも含まれる。
用いうるアフィニティ担体としては、一般的にタンパク質の精製に用いられるものが挙げられる。具体的には、例えば、コバルト担体、ニッケル担体等の金属キレート担体、HiTrap cheleting HP(アマシャム社製)、IPAC Metal Chelating Resin(エプロジェン社製)等の金属キレート用担体とニッケルイオン、コバルトイオン、亜鉛イオンなどの金属イオンの組み合わせによる金属キレート担体、抗体結合担体、マルトース結合担体、グルタチオン結合担体、メトトレキサート結合担体、Protein G結合担体、Protein A結合担体、抗体のFc部位結合担体、4−aminophenylarsine oxide結合担体、セルロース結合担体等が挙げられる。また、抗体結合担体としては、例えば、抗HA抗体結合担体、抗FLAG抗体結合担体、抗mycタグ抗体結合担体、抗T7抗体結合担体、抗V5抗体結合担体、抗チオレドキシン抗体結合担体、抗CAT抗体結合担体、抗GFP抗体結合担体、抗β−gal抗体結合担体等が挙げられる。
また、アフィニティ担体として、タンパク質と物質間の相互作用の解析に用い得るものを使用することもできる。これらの担体は、特定のタンパク質に結合する(特定のタンパク質と親和性を有する)物質、例えば医薬活性化合物、酵素阻害物質、ATPアナログ、核酸、タンパク質、ポリペプチド等を保持した担体である。
タンパク質と親和性を有する物質が保持される(固定化されている)担体としては、本発明の胚芽抽出物の製造方法や、タンパク質の精製、あるいはタンパク質―物質間相互作用解析などに用いられるものであれば如何なるものであってもよい。具体的には、アガロース、セルロース、セファロースや、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリレート、テフロン(登録商標)、ポリアセタール等を用いた、ボール又はビーズ、ギヤ、マイクロプレート等が挙げられる。これら担体は、上記したタンパク質の精製で用いられるものとほぼ同様である。これら担体へのタンパク質と親和性を有する物質の固定化は、それ自体既知の方法で行うことができる。
アフィニティ担体の選択は、該アフィニティ担体に結合する物質を胚芽抽出液から除去して、タンパク質の合成能が保持されるか否かを指標として行なうことができる。具体的には、例えばアフィニティ担体と胚芽抽出液とを接触させた(以下、この操作を「吸着」と称することがある)後、該胚芽抽出液を用いて目的タンパク質を合成する。ここで、合成された目的タンパク質の量を、未処理の胚芽抽出液で合成した目的タンパク質の量と適当な方法で比較し、未処理の胚芽抽出液で合成したものと比較して30%以上の合成量を示すものを選択する方法が挙げられる。
かくして選択される好ましいアフィニティ担体は、目的タンパク質(合成対象となるタンパク質)によっても異なるが、金属キレート担体、グルタチオン結合担体等が挙げられる。好ましい金属キレート担体としては、コバルト担体、ニッケル担体等が挙げられる。さらに具体的には、コバルト担体としては、Talon Metal Affinty Resin(クローンテック社製、BD Bioscience社製)等が挙げられ、ニッケル担体としては、Ni−NTA−Agarose(キアゲン社製)、Ni−NTA−Sepharose(アマシャム社製)等が挙げられる。
胚芽抽出液とアフィニティ担体とを接触させる方法としては、上記胚芽抽出液中の、アフィニティ担体に結合すべき物質が該アフィニティ担体に結合するに十分な方法であれば特に制限はなく、アフィニティ担体の種類に応じて適宜選択することができる。但し、上記胚芽抽出液のタンパク質合成能が保持されるように行うことは重要である。
また、接触させるアフィニティ担体と胚芽抽出液の体積量は、これらの種類によって適宜選択し得るが、胚芽抽出液に対して1/100以上の体積量のアフィニティ担体を用いることが好ましく、さらに好ましくは1/10〜10倍の体積量、最も好ましくは1/5〜2倍の体積量のアフィニティ担体を用いることが好ましい。
具体的な胚芽抽出液とアフィニティ担体との接触法は、アフィニティ担体と胚芽抽出液を適当な容器中で混合するバッチ法、あるいはアフィニティ担体を適当なカラムに詰めた後に、胚芽抽出液を該カラムに添加するカラム法等が挙げられる。カラム法を用いる場合、アフィニティ担体は、予め適当な緩衝液で平衡化しておくことが好ましい。適当な緩衝液とは、用いるアフィニティ担体の種類によって適宜選択されるが、胚芽抽出液を添加する前には、該胚芽抽出液と同様の緩衝液に交換しておくことが好ましい。
接触させる温度は、胚芽抽出液中のアフィニティ担体に結合すべき物質が結合できて、かつ胚芽抽出液のタンパク質合成能が保持される範囲であればよい。具体的には、例えば0〜50℃が好ましく、2〜30℃がより好ましい。特に胚芽抽出液としてコムギ胚芽抽出液を用いる場合、好ましくは4〜26℃で接触させることが好ましい。接触させる時間は、胚芽抽出液中のアフィニティ担体に結合すべき物質が結合できて、胚芽抽出液のタンパク質合成活性が低下しない範囲であればよく、具体的には、例えば、1分以上、好ましくは5〜100分、さらに好ましくは10〜60分である。
金属キレート担体を用いる場合には、胚芽抽出液中に含まれる還元剤、特にジチオスレイトールの濃度によっては、金属が担体から遊離することがあるが、遊離した金属が、タンパク質合成活性に著しく影響しない限り用いることができる。また、還元剤の濃度を調節したり、他の還元剤を用いること等によってこの金属の遊離を阻害することは有効である。また、金属キレート担体と胚芽抽出液とを接触させる際に、イミダゾールなどのイミダゾール環を有する化合物又はその誘導体(以下、これを「イミダゾール類」と称することがある)を添加すれば、上記金属キレート担体に、弱く非特異的に結合している物質の吸着が抑えられるので、タンパク質合成能を保持するために有効である。イミダゾール類の具体的な濃度としては、1mM以上、好ましくは2〜50mM、さらに好ましくは10〜20mM程度が適当である。
また、胚芽抽出液とアフィニティ担体との接触は、水性媒体との混和後であれば、いずれの製造工程で行ってもよい。
上記処理が行われた無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物は、特定のアフィニティ担体に結合し、該胚芽抽出液のタンパク質合成能に大きく影響しない物質が除去されているので、これを用いて目的タンパク質を発現させ、アフィニティ担体を用いて精製すれば、高純度の目的タンパク質を効率的に取得することができる。
7)胚芽抽出液の保存
調製された胚芽抽出液は、そのまま、必要であれば適当な装置、例えば限外濾過装置を用いて濃縮した後に、必要に応じて保存し、目的タンパク質の合成に用いることができる。また、翻訳鋳型及び核酸分解阻害剤以外の翻訳反応用添加物を添加した液(本明細書中ではこれを「レディメイド型胚芽抽出液」と称することがある)として保存することもできる。
保存は、短期間(2〜3時間程度)であれば、冷蔵(0〜10℃)でも良いかが、長時間(3時間以上)の保存が必要な場合は、凍結しておくことが好ましい。凍結温度は、通常−50℃以下、好ましく−80℃以下が適当である。
また、胚芽抽出液は、例えば特開2000−316594号公報、特開2002−125693号公報等に記載の方法等を用いて凍結乾燥して保存することもできる。
2.無細胞タンパク質合成方法
上記胚芽抽出液にタンパク質合成に必要な翻訳鋳型、核酸分解酵素阻害剤、各種イオン、基質、エネルギー源等(以下、これを「翻訳反応用添加物」と称することがある)を添加して目的タンパク質合成用システムに付し、胚芽抽出物を翻訳鋳型に接触させることによりタンパク質合成を行うことができる。
無細胞タンパク質合成系によるタンパク質の合成は、上記で得られた胚芽抽出液を使用する点を除き、従来と同様の方法で行うことができる。この方法は、公知のバッチ法であってもよいし、Spirinら(A. S. Spirin et al. (1988), Science, 242, 1162-1164 )や横山ら(木川ら、第21回日本分子生物学会、WID6)の連続式無細胞系タンパク質合成システムのようなアミノ酸、エネルギー源の連続供給系であってもよい。バッチ法ではタンパク質合成を長時間行うと反応が停止することがあるため、後者のアミノ酸、エネルギー源の連続供給系を使用することにより、反応を長時間維持させることができ、一層の効率化が可能となる。また、連続供給系でタンパク質を合成する場合には、透析法を使用することもできる。例えば、上記胚芽抽出液を透析内液に、エネルギー源やアミノ酸を含む混合液を透析外液に用いた限外濾過膜透析系では、タンパク質を連続的に大量調製することが可能である。
ここで、エネルギー源としては、アデノシン三リン酸(ATP)、クレアチンリン酸等が挙げられ、アミノ酸としては20種類のL型アミノ酸が挙げられる。グアノシン三リン酸(GTP)は、従来、タンパク質合成に必須の成分と考えられていたが、必ずしも必要ではない。
各種イオンとしては、カリウムイオンやマグネシウムイオンが挙げられる。また、他の成分として、アデノシン−3’,5’サイクリック一リン酸若しくはその塩(cAMP)やcAMP誘導体を添加しても良い。合成系に添加するcAMPの濃度は0.4〜6.4ミリモル/リットル程度が好ましい。これにより、さらに合成活性を増強させることができる場合がある。この方法の詳細は、特願2004−29426号明細書に記載されている。
本発明の胚芽抽出物にはタンパク質合成反応に必要とされる量のtRNAが含まれているため、従来のように、別途調製したtRNAを追加することは必須要件ではない。
3.タンパク質合成用溶液およびタンパク質合成用キット
また、上記胚芽抽出液と、翻訳鋳型及び核酸分解阻害剤以外の翻訳反応用添加物を添加した液、例えばタンパク質合成に必須の成分であるATP、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、L型アミノ酸、カリウムイオン及びマグネシウムイオン等とを含有する水溶液は、レディメイド型無胚芽抽出液として簡便に使用することができる。上記成分の含有量は特に限定されず、無細胞タンパク質合成反応を行いうる濃度であればよい。本発明の無細胞タンパク質合成溶液は、タンパク質合成に際して従来のように反応溶液の調製を必要とせず、目的とする翻訳鋳型(mRNA)を添加するだけで、簡便に、効率的に、大量にタンパク質を合成することができる。該タンパク質合成用溶液は、溶媒として上記抽出溶媒を用い、それに必要に応じて上記成分を添加することにより調製できる。
本発明のキットは、少なくとも上記胚芽抽出物(抽出液)、上記タンパク質合成用溶液、又は圧潰胚芽を含み、任意の要素として、希釈液(緩衝液)、透析液、エネルギー供給液、発現ベクター、コントロール用発現ベクター、制限酵素、胚芽抽出物の調製やタンパク質合成に用いる材料・器具等を含んでいてもよい。材料・器具としては、容器、ゲルろ過の担体やカラム、透析カップ等が含まれる。また、該キットにはRNAポリメラーゼ等の転写系に用いる試薬が含まれていてもよい。
本発明におけるキットとは、本発明の胚芽抽出物の製造方法、タンパク質合成方法、タンパク質合成溶液に用いる試薬や材料・器具により構成される一連のセットを意味するが、パーツ毎に別々に構成され、また別々に用いられるものであっても、本発明のキットに含まれる。
さらに、圧潰胚芽、抽出溶媒、ゲルろ過の材料・器具、透析カップ、及び/又は翻訳反応用添加物を添加した溶液等を含む無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物の調製とタンパク質合成用のキットは、研究や教育の教材として特に好適である。
(実施例)
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、lはリットル、mlはミリリットル、Mはモル/リットル、mMはミリモル/リットル、μgはマイクログラム、μlはマイクロリットルをそれぞれ表す。
圧潰胚芽の調製
セパレーターで粗い異物(ごみ)を除去して精選したカナダ産NO1ウエスタン・レッド・スプリング、アメリカ産(ダーク)ノーザン・スプリングの混合物、オーストラリア産スタンダード・ホワイトを、ビューラー株式会社製のローラーミル、シフター、ピュリファイアーを用いて、次のとおり粉砕・選別を行い、圧潰胚芽を得た。
まず、目が粗いローラーミルで小麦種子を圧潰した。圧潰された胚芽はシフターに通して段階的に振り分けた。引き続きピュリファイアーに通してセモリナ(胚乳粉砕物)をより分け、純度の高い圧潰胚芽を得た。純度の低い圧潰胚芽を含む画分については、初めのローラーより目が細かいローラーミルで再度圧潰した後、シフター、ピュリファイアーに通して純度の高い圧潰胚芽を得た。
得られた圧潰胚芽は更に製粉用の選別装置、株式会社エムテック製の乾燥食品用徐塵機(LVSJ型)にかけ、95%以上の純度の圧潰胚芽(純度の異なる2種類の胚芽:「胚芽A」、「胚芽B」及び小麦種の異なる「胚芽C」)を得た。なお、胚芽A、Cの選別に用いた篩のメッシュサイズは1190〜1410μ、胚芽Bの選別に用いた篩のメッシュサイズは840〜1000μである。胚芽A、B及びCの純度は、それぞれ96%、88%及び73%であった。
抽出液の調製(1)
実施例1で取得した小麦胚芽(胚芽A)を冷凍状態(-20℃)で保存したものを、ホモジナイザー(PA-92、SMT社製)での破砕と薬さじの混和の2条件で小麦胚芽中に含まれるリボソーム等の成分の抽出を行った。
(1)ホモジナイザーを使用したリボソーム等の成分抽出
55 g冷凍状態の小麦胚芽に4℃に冷やしておいた180 mlのBuffer 1(53 mM Hepes-KOH (pH7.8), 133 mM 酢酸カリウム, 6.66 mM酢酸マグネシウム,5.3 mMジチオスレイトール, 2.6 mM塩化カルシウム, 0.4 mM 各20種アミノ酸濃度)を加えて、500 ml容のホモジナイザー(PA-92、SMT社製)専用容器に入れ、セットした。10,000 rpm、1分30秒間、4 ℃の条件でホモジナイズし、抽出を行った。抽出を行った溶液を遠心チューブに移し、30,000×gの条件で遠心分離を3回行った。140 mlの遠心分離後の油脂層を取り除いた上清をBuffer 2(40 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 5 mM酢酸マグネシウム, 4 mMジチオスレイトール, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mM)で平衡化を行ったセファデックスG-25カラムにかけ、脱塩及びBuffer交換を行った。カラムから溶出したボイドボリューム付近の210 ml程度の溶液を再度30,000×gの条件で遠心分離を行った。210 mlの遠心分離後の上清を、膜濃縮装置(TFFシステム、日本ポール社製)を用い膜濃縮し、Buffer 3(30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mM)にBuffer交換を行った。その膜濃縮を行った溶液を調製し、260 nm条件での吸光度で200 Absに濃度調整を行った。
遠心分離工程において、ホモジナイザーを使用して作製した抽出液は遠心分離後の上層部にくる油脂量が目に見えて多く、さらにG-25カラムを使用したBuffer交換工程において、ホモジナイザーを使用して作製した抽出液ではBuffer交換の途中において、カラムが詰まっていき、徐々に流量が減少していった。その後、カラムは使用できない状態となった。
(2)溶媒との混和のみでのリボソーム等の成分抽出
55 g冷凍状態の小麦胚芽中に胚芽に対して4℃以下のBuffer1180 mlを添加して、薬さじで30秒ほど均等になるように混和した。混和を行った溶液を遠心チューブに移し、30,000×gの条件で遠心分離を3回行った。140 mlの遠心分離後の油脂層を取り除いた上清をBuffer 2で平衡化を行ったG-25カラム(アマシャム社製)にかけ、脱塩及びBuffer交換を行った。カラムから溶出した210 ml程度の溶液を再度30,000×gの条件で遠心分離を行った。210 mlの遠心分離後の上清を、膜濃縮装置(TFFシステム、日本ポール社製)を用い膜濃縮し、Buffer 3にBuffer交換を行った。その膜濃縮を行った溶液を調製し、260 nm条件での吸光度で200 Absに濃度調整を行った。
ホモジナイザーを用いて抽出を行った抽出液と異なり、本抽出液には遠心分離後の上層部にくる油脂がほとんどなく、G-25カラムに詰まり等の現象も見られなかった。
mRNA溶液の調製
(1)小麦胚芽無細胞タンパク質合成系用plasmidの作製
SP6プロモーター配列およびリボソーム結合配列を5’→3’の順に含むオリゴDNA(配列番号1)を化学合成により取得した。
タンパク質合成用ベクターであるpEU3b(Sawasaki, T., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99(23), 14652-14657(2002))からSP6プロモーター配列、Ω配列およびマルチクローニングサイトを除去して、NaeIで切断し、上記で取得した配列番号1で示されるDNA断片とライゲーションを行った。このプラスミドをpEUbluntとした。
緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするDNA配列が含まれるプラスミド(Plasmid-pCaMV35S-sGFP(S65T)-NOS3'(25)、Haas, J. et al., Curr. Biol., 6(3), 315-324(1996))を鋳型として、配列番号2および3に記載の塩基配列を有するプライマーを用いてPCRを行った。増幅されたDNA断片をSfi Iで切断し、pEUbluntをSmaIおよびSfi Iで切断したものとライゲーションを行った。得られたプラスミドをGFP/pEUとした。
また、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードするDNA配列が含まれるプラスミドpEU-DHFR(TOYOBO社製)鋳型として、配列番号4および5に記載の塩基配列を有するプライマーを用いてPCRを行った。増幅されたDNA断片をSfi Iで切断し、pEUbluntをSmaIおよびSfi Iで切断したものとライゲーションを行った。得られたプラスミドをDHFR/pEUとした。
さらに、PTP1B(GenBank Accession No. BC015660)鋳型として、配列番号6および7に記載の塩基配列を有するプライマーを用いてPCRを行った。増幅されたDNA断片をSfi Iで切断し、pEUbluntをSmaIおよびSfi Iで切断したものとライゲーションを行った。得られたプラスミドをPTP1B /pEUとした。
以下、これらのプラスミドを適宜用いて合成反応を行った。
(2)mRNA溶液の調製
上記(1)で調製したGFP/pEUおよびDHFR/pEUを鋳型として、SP6 RNAポリメラーゼ(Promega社製)を用いて転写を行い、得られたRNAをエタノール沈殿により定法に従い精製して用いた。精製を行ったmRNAをRNase-free水に溶解させ、mRNA溶液とした。
抽出液の評価(1)
(1)合成反応液の調製
上記2種類の抽出方法で抽出を行った抽出液を用い、無細胞蛋白合成反応液を調製し、それぞれの抽出液の性能を検討した。
反応液は、小麦胚芽抽出液260 nm条件での吸光度で40 Abs量、0.4μg/μl Creatine kinase, 0.64 U/μl RNase inhibitor, 0.4μg/μl mRNA(GFP,DHFR), 30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mMを含むように調製した。
(2)合成反応
調製した合成反応液:50μlを透析カップ(第一化学薬品社製)中に入れ、Buffer 3(30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mM):2.5 mlを透析外液とし26 ℃の条件で48時間合成反応を行った。
GFPの蛍光強度の結果を図1に示す。X軸はサンプルの調製条件、Y軸はタンパク質合成反応液100μlあたりに含まれるGFPの蛍光強度を示す。SDS-PAGEを使用して合成サンプルを電気泳動した結果を図2に示す。SDS-PAGEの電気泳動サンプル量は合成反応液1μl分の結果を示す。レーン1,2,3は溶媒の混和のみで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルであり、レーン4,5,6はホモジナイザーで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルを示す。
ホモジナイザーを使用した条件と溶媒の混和のみの条件で行った抽出液のタンパク質合成活性を比較した結果、溶媒の混和のみで抽出したものが比較的合成活性が高かった。ホモジナイザーで抽出されることにより、細胞自体が粉々になり脂質以外にもRNaseやProtease等のタンパク質合成を阻害する、又は合成に必要のないものまで抽出されることにより、合成活性を下げている可能性が考察される。
また製造の工程の作業性においても、ホモジナイザーを使用し、胚芽を粉々に砕くような工程はカラムが詰まる等の問題が発生することにより製造効率性が悪いことが考察される。
抽出液の調製(2)
実施例1で取得した胚芽A,Bを溶媒混和で小麦胚芽中に含まれるリボソーム等の成分の抽出を行った。
(1)溶媒との混和のみでのリボソーム等の成分抽出
胚芽A、Bに対して4℃以下のBuffer1を添加して、薬さじで30秒ほど均等になるように混和した。混和を行った溶液を遠心チューブに移し、30,000×gの条件で遠心分離を3回行った。140 mlの遠心分離後の油脂層を取り除いた上清をBuffer 2で平衡化を行ったG-25カラム(アマシャム社製)にかけ、脱塩及びBuffer交換を行った。カラムから溶出した210 ml程度の溶液を再度30,000×gの条件で遠心分離を行った。210 mlの遠心分離後の上清を、膜濃縮装置(TFFシステム、日本ポール社製)を用い膜濃縮し、Buffer 3にBuffer交換を行った。その膜濃縮を行った溶液を調製し、260 nm条件での吸光度で200 Absに濃度調整を行った。
抽出液の評価(2)
(1)合成反応液の調製
上記2種類の小麦胚芽の保存状態の異なった胚芽の抽出を行った抽出液を用い、無細胞タンパク質合成反応液を調製し、それぞれの抽出液の性能を検討した。
反応液は、小麦胚芽抽出液260 nm条件での吸光度で40 Abs量、0.4μg/μl Creatine kinase, 0.64 U/μl RNase inhibitor, 30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mMとし、mRNAを0.4, 1.0, 2.0μg/μl(GFP,DHFR)の3条件になるように調製した。
(2)合成反応
調製した合成反応液:50μlを透析カップ(第一化学薬品社製)中に入れ、Buffer 3(30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mM):2.5 mlを透析外液とし26 ℃の条件で48時間合成反応を行った。
GFPの蛍光強度の結果を図3に示す。X軸はサンプルの調製条件、Y軸はタンパク質合成反応液100μlあたりに含まれるGFPの蛍光強度を示す。SDS-PAGEを使用して合成サンプルを電気泳動した結果を図4に示す。SDS-PAGEの電気泳動サンプル量は合成反応液1μl分の結果を示す。レーン1,2,3は胚芽Aで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルであり、レーン4,5,6は胚芽Bで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルであり、レーン1,4はmRNA濃度が0.4μg/μl条件で、2,5は1.0μg/μl条件で、3,6は2.0μg/μl条件で合成したサンプルである。
図から明らかな通り、相対的に純度の高い胚芽Aの合成活性が高い結果となった。また胚芽AにおいてはmRNA濃度を高くすると合成活性が高くなる結果となった。
胚芽A、Bの比較結果の理由としては、網目の大きなシフターで選別することによって、胚芽のサイズに近いより大きな不要物(胚乳、ガラス質部位、ふすま等)が除去され胚芽としての純度が高くなり、そのことにより抽出液中のタンパク質合成必須成分が高くなることによって合成活性が高くなっていることが予想される。
抽出液の調製(3)
実施例1で取得した小麦胚芽2種胚芽A、Bについて冷凍(-20℃)保存したものと冷蔵(4℃)保存したものを溶媒混和で小麦胚芽中に含まれるリボソーム等の成分の抽出を行った。
(1)溶媒との混和のみでのリボソーム等の成分抽出
冷凍状態と冷蔵状態でそれぞれ保存した上記小麦胚芽2種に対して4℃以下のBuffer1を添加して、薬さじで30秒ほど均等になるように混和した。混和を行った溶液を遠心チューブに移し、30,000×gの条件で遠心分離を3回行った。140 mlの遠心分離後の油脂層を取り除いた上清をBuffer 2で平衡化を行ったG-25カラム(アマシャム社製)にかけ、脱塩及びBuffer交換を行った。カラムから溶出した210 ml程度の溶液を再度30,000×gの条件で遠心分離を行った。210 mlの遠心分離後の上清を、膜濃縮装置(TFFシステム、日本ポール社製)を用い膜濃縮し、Buffer 3にBuffer交換を行った。その膜濃縮を行った溶液を調製し、260 nm条件での吸光度で200 Absに濃度調整を行った。
抽出液の評価(3)
(1)合成反応液の調製
上記2種類の小麦胚芽の保存状態の異なった胚芽の抽出を行った抽出液を用い、無細胞タンパク質合成反応液を調製し、それぞれの抽出液の性能を検討した。
反応液は、小麦胚芽抽出液260 nm条件での吸光度で40 Abs量、0.4μg/μl Creatine kinase, 0.64 U/μl RNase inhibitor, 0.4μg/μl mRNA(GFP,DHFR), 30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mMを含むように調製した。
(2)合成反応
調製した合成反応液:50μlを透析カップ(第一化学薬品社製)中に入れ、Buffer 3(30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mM):2.5 mlを透析外液とし26 ℃の条件で48時間合成反応を行った。
GFPの蛍光強度の結果を図5に示す。X軸はサンプルの調製条件、Y軸はタンパク質合成反応液100μlあたりに含まれるGFPの蛍光強度を示す。SDS-PAGEを使用して合成サンプルを電気泳動した結果を図6に示す。SDS-PAGEの電気泳動サンプル量は合成反応液1μl分の結果を示す。レーン1,2,3,4は冷凍条件の胚芽Aで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルであり、レーン5,6は冷蔵条件の胚芽Aで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルであり、レーン7,8は冷蔵条件の胚芽Cで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルであり、レーン9,10は冷凍条件の胚芽Aで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルであり、レーン11,12は冷凍条件の胚芽Cで作製した抽出液を使用してDHFRを合成したサンプルでありサンプルを示す。
冷蔵状態保存の胚芽と冷凍状態保存の胚芽から抽出した抽出液を比較した結果、冷凍保存の胚芽で抽出したものが比較的タンパク質合成活性が高かった。これは冷蔵保存の場合、空気酸化等が起こりやすく、細胞内の還元状態が弱まることにより、合成活性が低くなっている可能性が高いことが考察される。
胚芽抽出液の活性化処理
(1)活性炭の処理
市販活性炭(SIGMA Charcol, activated C-4386)に脱イオン水を加え、1時間室温にて膨潤させた。その後、50ml用の遠心分離用チューブ(falcon)に入れ、膨潤後の活性炭体積に対して20倍量の脱イオン交換水を加え、縣濁し、8000×g、4℃、5分間遠心分離を行い、上清をすてた。この操作を5回行い、活性炭中に含まれるゴミ、または活性炭作成時のBuffer等の除去を行った。洗浄後の活性炭体積に対して20倍量の透析外液を加え、同じ方法で3回洗浄及びBufferによる活性炭の平衡化を行った。最後に8000×g、4℃、5分間遠心分離を行い、沈殿した活性炭を翻訳反応の活性化処理に用いた。
(2)小麦胚芽抽出液の活性炭による処理
実施例2(2)で作製した胚芽抽出液1 mlに対して、上記の方法で処理を行った活性炭50μg (湿重量)を添加し、氷上にて冷やしながら2分間懸濁後、8000×g、4℃、5分間遠心分離を行った。その上清を回収し、活性炭処理小麦胚芽抽出液とした。
胚芽抽出液の評価(3)
(1)合成反応液の調製
上記処理を行った抽出液と処理を行わなかった2種類の抽出液を用い、無細胞タンパク質合成反応液を調製しそれぞれの抽出液の性能を検討した。
反応液は、小麦胚芽抽出液260 nm条件での吸光度で40 Abs量、0.4 μg/μl Creatine kinase, 0.64 U/μl RNase inhibitor, 0.8μg/μl mRNA(GFP,DHFR), 30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mMを含むよう調製した。
(2)合成反応
調製した合成反応液:50μlを透析カップ(第一化学薬品社製)中に入れ、Buffer 3(30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mM):2.5 mlを透析外液とし26 ℃の条件で24時間合成反応を行った。
GFPの蛍光強度の結果を図7に示す。X軸はサンプルの調製条件、Y軸はタンパク質合成反応液1μlあたりに含まれるGFPの蛍光強度を示す。その結果から、活性炭処理を行った小麦胚芽抽出液のほうが約10 %程度GFPの蛍光強度が高くなった。
サイクリック−アデノシン1リン酸(cAMP)添加効果
(1)合成反応液の調製
胚芽Aを使用して実施例5と同様の方法で作製した比較的活性の高い抽出液を用いて無細胞タンパク質合成反応液を調製し、cAMPの添加効果を検討した。
反応液は、小麦胚芽抽出液260 nm条件での吸光度で40 Abs量、0.4 μg/μl Creatine kinase, 0.64 U/μl RNase inhibitor, 30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 Mm,0.4μg/μlまたは1.0μg/μl mRNA(GFP,PTP1B), 0 mMまたは1.6 mM cAMPを含むよう調製した。
(2)合成反応
調製した合成反応液:50μlを透析カップ(第一化学薬品社製)中に入れ、0 mM または1.6 mM cAMPを含むよう調製したBuffer 3(30 mM Hepes-KOH (pH7.8), 100 mM 酢酸カリウム, 2.65 mM酢酸マグネシウム, 2.5 mMジチオスレイトール, 1.2 mM ATP, 16 mMクレアチンリン酸, 0.38 mMスペルミジン, 各20種アミノ酸濃度が0.3 mM):2.5 mlを透析外液とし26 ℃の条件で24時間合成反応を行った。
GFPの蛍光強度の結果を図8に示す。X軸はサンプルの調製条件、Y軸はタンパク質合成反応液1μlあたりに含まれるGFPの蛍光強度を示す。その結果から、高濃度側の1.0μg/μl mRNAの条件のときがcAMP添加を行った効果が高く、行わなかったものに比べ、約50 %程度GFPの蛍光強度が高くなった。図9はSDS-PAGEの電気泳動サンプル量は合成反応液1μl分の結果を示す。レーン1,2,5,6はcAMPを添加した反応液を使用してGFPを合成したサンプルであり、レーン3,4,7,8はcAMPを添加しなかった反応液を使用してGFPを合成したサンプルである。SDS-PAGEの結果からもcAMPを添加することで合成量が高くなることがわかった。
PTP1Bの蛍光強度の結果を図10に示す。X軸はサンプルの調製条件、Y軸はタンパク質合成反応液1μlあたりに含まれるPTP1BのpNPP分解活性を示す。pNPP脱リン酸化活性測定は、Nicholas K. Tonksらの論文(The Journal of Biological Chemistry Vol.263,No.14,Issue of May15, pp.6731-6737,1988)に記載の方法を用いた。その結果から、高濃度側の1.0μg/μl mRNAの条件のときがcAMP添加を行った効果が高く、行わなかったものに比べ、約80%程度PTP1BのPNPP分解活性が高くなった。図11はSDS-PAGEの電気泳動サンプル量は合成反応液1μl分の結果を示す。レーン1,2,5,6はcAMPを添加した反応液を使用してPTP1Bを合成したサンプルであり、レーン3,4,7,8はcAMPを添加しなかった反応液を使用してPTP1Bを合成したサンプルである。SDS-PAGEの結果からもcAMPを添加することで合成量が高くなることがわかった。
抽出条件によるタンパク質合成活性の違いを示す図である。 抽出条件によるタンパク質合成活性の違いを示す電気泳動の結果の写真である。 胚芽純度によるタンパク質合成活性の違いを示す図である。 胚芽純度によるタンパク質合成活性の違いを示す電気泳動の結果の写真である。 胚芽保存条件及び小麦品種によるタンパク質合成活性の違いを示す図である。 胚芽保存条件及び小麦品種によるタンパク質合成活性の違いを示す電気泳動の結果の写真である。 活性炭処理によるタンパク質合成活性の増強を示す図である。 cAMP添加によるタンパク質合成活性の増強を示す図である。 cAMP添加によるタンパク質合成活性の増強を示す電気泳動の結果の写真である。 cAMP添加にによるタンパク質合成活性の増強を示す図である。 cAMP添加によるタンパク質合成活性の増強を示す電気泳動の結果の写真である。

Claims (7)

  1. (i)圧潰された胚芽と水性媒体とを混和する工程、(ii)混和物からタンパク質合成能を有する画分を採取する工程を含むことを特徴とする無細胞タンパク質合成用胚芽抽出物の製造方法。
  2. 胚芽が冷凍保存されたものである請求項1に記載の方法。
  3. 抽出が濾過又は遠心分離により行われる請求項1又は2に記載の方法。
  4. 胚芽が未洗浄である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された胚芽抽出物を、翻訳鋳型に接触させることを特徴とする無細胞タンパク質合成方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された胚芽抽出物、ATP、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ、L型アミノ酸、カリウムイオン及びマグネシウムイオンを含有することを特徴とする無細胞タンパク質合成用溶液。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された胚芽抽出物、請求項6に記載のタンパク質合成用溶液又は圧潰された胚芽を含むことを特徴とする無細胞タンパク質合成用キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110964736A (zh) * 2018-09-28 2020-04-07 康码(上海)生物科技有限公司 一种体外蛋白合成体系及其用于提高蛋白合成效率的方法、试剂盒

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