JP2005247598A - 精密プレス成形用プリフォームの製造方法および光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、所定重量の光学ガラスからなるプリフォームを製造する方法であって、(1)エッチング処理により除去される表面層の厚さが0.5μm以上である、(2)プリフォームが液相温度における粘度10dPa・s以下のガラスからなる、(3)プリフォームが屈折率1.75以上でアッベ数50以下の光学ガラスからなる、(4)エッチング処理の前にアニール処理を行う、(5)所定重量の光学ガラスからなる複数のプリフォームを作製する、精密プレス成形用プリフォームの製造方法である。
【選択図】 なし
Description
精密プレス成形法は、プレス成形によって、高精度な加工が施されたプレス成形型の成形面をガラスに転写して光学機能面を形成する方法であって、例えば研磨加工では莫大な手間とコストがかかる非球面レンズなどを生産性よく量産することができる。このような精密プレス成形は、表面が滑らかで内部、表面ともに欠陥のないプリフォームを必要とする。
熱間成形法は優れた製法ではあるが、溶融ガラスからプリフォーム1個分に相当する溶融ガラス塊を分離してガラス塊を直接成形してプリフォームにするため、内部品質は勿論、プリフォームの表面状態や重量精度の高いガラス塊を作らなければならない。
したがって、これらの問題を同時に解決することは、これまで難しいのが実状であった。
(1)溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記表面層の厚みが0.5μm以上であることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法(以下、製造方法1と称す。)、
(2)溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスの液相温度における粘度が10dPa・s以下であることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法(以下、製造方法2と称す。)、
(3)溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスが屈折率(nd)1.75以上で、アッベ数(νd)50以下の光学ガラスであることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法(以下、製造方法3と称す。)、
(4)溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形してアニール処理したのち、前記ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法(以下、製造方法4と称す。)、
(5)溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形する工程を繰り返して一定重量のガラス塊を複数作製し、前記複数のガラス塊を一定の条件でエッチング処理して、各ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを複数作製することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法(以下、製造方法5と称す。)、
(6)ガラス塊全体をエッチング液に浸漬してエッチング処理する上記(1)ないし(5)項のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(7)溶融ガラスを、表面が曲率の異なる曲面により構成されるガラス塊または球状のガラス塊に成形する上記(1)ないし(6)項のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法、
(8)上記(1)ないし(7)項のいずれか1項に記載の製造方法により作製された精密プレス成形用プリフォームを、精密プレス成形する工程を有することを特徴とする光学素子の製造方法、
(9)プレス成形型にプリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを共に加熱して精密プレス成形する上記(8)項に記載の光学素子の製造方法、及び
(10)予熱されたプレス成形型に、別途に加熱したプリフォームを導入して精密プレス成形する上記(8)項に記載の光学素子の製造方法、
を提供するものである。
特に熱間成形によりガラス表面から深層に及ぶ範囲に存在する脈理などの欠陥を除去することができるので、確実に高品質なプリフォームを製造することができる。
さらに、熱間成形によって高品質の精密プレス成形用プリフォームを確実に成形することが難しかった、液相温度における粘度が10dPa・s以下であるガラス、あるいは熱間成形時に失透し易かったり、液相温度が高くなることにより流出粘度が低くなる屈折率(nd)が1.75以上かつアッベ数(νd)が50以下のガラスでも熱間成形により研磨加工などの機械加工を施さなくても、高品質のプリフォームを確実に製造することができる。
さらに、熱間成形の重量精度の高いガラス塊を多量に製造できるという特徴と、一定のエッチング条件のもとでは除去されるガラスの重量が等しくなるというエッチング処理の特徴を組合せることによって、重量精度の高く、高品質なプリフォームを容易に多量に製造することもできる。
また本発明の光学素子の製造方法によれば、高品質な光学素子を高い生産性のもとに製造することができる。
[プリフォームの製造方法]
本発明のプリフォームの製造方法は、溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、所定重量の光学的に均質な光学ガラスからなるプリフォームを製造する方法であって、以下に示すプリフォームの製造方法1〜5の5つの態様がある。
第2の態様(プリフォームの製造方法2)は、プリフォームが液相温度における粘度10dPa・s以下であるガラスからなることを特徴とするものである。
第3の態様(プリフォームの製造方法3)は、プリフォームが屈折率(nd)1.75以上で、アッベ数(νd)50以下の光学ガラスからなることを特徴とするものである。
第4の態様(プリフォームの製造方法4)は、溶融ガラスからガラス塊を成形してアニール処理し、前記ガラス塊の表面層をエッチング処理により除去して光学的に均質な光学ガラスからなるプリフォームを作製することを特徴とするものである。
第5の態様(プリフォームの製造方法5)は、溶融ガラスをガラス塊に成形する工程を繰り返して一定重量のガラス塊を複数作製し、前記複数のガラス塊を一定の条件でエッチング処理して、各ガラス塊の表面層を除去することにより、所定重量の光学的に均質な光学ガラスからなるプリフォームを複数作製することを特徴とするものである。
まずガラス塊を成形するために、十分清澄、均質化された溶融ガラスを用意し、その溶融ガラスを一定流量でパイプから流出する。そして、流出する溶融ガラスから所定重量の溶融ガラス塊を分離する。分離方法としては、パイプから溶融ガラスを滴下して、所定重量のガラス滴として分離する方法(滴下法という。)、パイプから流出する溶融ガラス流の先端部を支持体で支持し、前記ガラス流のパイプ側と先端部の間にくびれを作る。それから上記支持体を急速に降下し、くびれから先端側の溶融ガラス塊を分離する方法(降下切断法という。)、パイプから流出する溶融ガラス流を切断刃で切断し、所定重量の溶融ガラス塊を分離する方法(機械切断法という。)などがある。パイプより単位時間あたりのガラス流出量を一定に保つことにより、分離の間隔を一定にすれば等重量の溶融ガラス塊を得ることができる。
したがって、プリフォームの製造方法5によれば、エッチング処理によって得られるプリフォームの重量精度はガラス塊の重量精度と同等にすることができる。
このようにして得たガラス塊の表面を光学顕微鏡で拡大観察すると、ガラス塊全面にわたって脈理が認められる。前記ガラス塊の全表面をエッチング処理により所定の深さまで除去したガラス塊には、上記脈理が認められない。したがって、この脈理は表面近傍に局在する表面脈理であることがわかる。ガラス塊表面の変質層、例えばヤケなどは、表面から深さ0.1μm以下の部分に限られるが、表面脈理は光学顕微鏡を用いた目視により認識可能な深さにまで達しているため、ガラス塊表面から少なくとも0.5μm以上の深さまでエッチング処理することが望まれる。
精密プレス成形によって作製される光学素子としては、レンズなどの回転対称軸を一つ備える形状のものが圧倒的に多い。したがって、プリフォームの形状としても、球状、回転対称軸を一つ備える形状(例えば、回転楕円体や、球を一定の軸方向に延ばした形状やつぶした形状など)が望まれている。このような形状のプリフォームを作製するには、目的とするプリフォーム形状に相似する形状のガラス塊を成形しエッチング処理すればよい。
一方、球状ガラス塊の球対称性に注目すると、エッチング処理により除去される深さが対称性のために全表面において均一になり、球状ガラス塊をエッチング処理すれば容易に球状プリフォームを作製できるというメリットがある。
プリフォームの製法1、4、5についてはガラスの制限は特にないが、前記製法の適用が好ましいガラスは、プリフォームの製法2におけるガラス(ガラス1という。)、あるいはプリフォームの製法3におけるガラス(ガラス2という。)と共通する。よってここではガラス1とガラス2について説明する。
ガラス1は、液相温度における粘度が10dPa・s以下のガラスである。ガラス塊を成形する際にガラスの流出温度(流出時の溶融ガラスの温度)を失透防止のため液相温度よりも十分高くしなければならない。そのため、ガラスの流出粘性(流出時の溶融ガラスの粘度)は10dPa・sよりもさらに低粘性になり、先に説明した理由により表面脈理が発生したり、表面近傍に微小な気泡が取り込まれるなど表面欠陥ができやすい。このようなガラスを使用してガラス塊を熱間成形しても、エッチング処理により上記表面欠陥層を除去できるので、確実に高品質なプリフォームを製造することができる。本発明の適用がより効果的なガラスとしては、液相温度における粘度が6dPa・s以下のガラスであり、さらに効果的なガラスとしては、液相温度における粘度が5dPa・s以下のガラスであり、より一層効果的なガラスとしては、液相温度における粘度が4dPa・s以下のガラスである。
ガラス2は、屈折率(nd)が1.75以上かつアッベ数(νd)が50以下の光学ガラスである。上記光学恒数を有し、精密プレス成形性を向上するために低温軟化性が付与されたガラスは、高屈折率付与成分(例えば、Nb2O5、TiO2、WO3、La2O3、Gd2O3、Y2O3、Yb2O3、Ta2O5など)を多く含む。そのため、旧来の安定したガラスに比べると、高温状態におけるガラス安定性が低下する傾向があり、ガラス1と同様、液相温度における粘度が低下する傾向が生じる。そのため、ガラス1と同様の問題が生じやすいが、本発明の製造方法によればガラス2を使用しても高品質なプリフォームを確実に製造することができる。
P2O5、Nb2O5およびLi2Oを含むガラスはアッベ数(νd)が35以下の領域(主として、高屈折率高分散領域)をカバーし、B2O3およびLa2O3を含むガラスはアッベ数(νd)が30以上の領域(主として、高屈折率低分散領域)をカバーする。
P2O5、Nb2O5およびLi2Oを含むガラスは、ガラス網目構造形成成分としてP2O5を含み、高屈折率高分散付与成分としてNb2O5を含む。また低温軟化性付与成分としてLi2Oを含み、上記光学特性と低温軟化性を実現している。
ガラスAにおいて、P2O5は、上記のようにガラスの網目構造の形成物であり、ガラスに製造可能な安定性を持たせるための必須成分である。しかし、P2O5の含有量が45モル%を超えると、ガラスの転移温度や屈伏点が上昇し、耐候性も悪化する傾向がある。また15モル%未満では、ガラスの失透傾向が強くなりガラスが不安定となるので、P2O5の含有量を15〜45モル%の範囲とすることが好ましく、17〜40モル%の範囲とするのがより好ましい。以下、各成分の含有量は特記しない限りモル%にて表示するものとする。
MgO、CaO、SrOはガラスの安定性や耐候性を調整するために導入された成分であるが、あまりにも多く導入すると、ガラスが非常に不安定となるので、導入量をそれぞれ0〜20%にするのが好ましく、0〜15%がより好ましい。
ただし、TeO2は毒性があるため、環境影響上から使用しないことが望ましく、同様にPbO、As2O3、CdO、Tl2Oや放射性物質、Cr、Hgなどの化合物も使用しないことが望ましい。また、Ag2Oも特別、必要もないので導入しないことが好ましい。
なお、ガラスAの原料しては、P2O5についてはH3PO4、メタリン酸塩、五酸化二燐など、B2O3についてはHBO3、B2O3などを用い、他の成分については炭酸塩、硝酸塩、酸化物などを適宜に用いることが可能である。これらの原料を所定の割合に秤取し、混合して調合原料とし、これを1000〜1400℃に加熱した溶解炉に投入し、溶解、清澄、攪拌し、均質化した得られた溶融ガラスを使用することができる。
B2O3−La2O3系ガラスにおいて、B2O3はガラスの網目構造形成のための必須成分である。特にLa2O3、さらにGd2O3などの高屈折率成分を多く導入する場合、ガラスの形成のために主な網目構造形成として必要であるが、60%を超えて導入すると、ガラスの屈折率が低下し、高屈折ガラスを得るという目的に適さなくなるのに対し、15%未満では失透に対して十分な安定性を得られず、また溶融性が低下するため、その導入量を15〜60%にするのが好ましい。より好ましくは20〜60%、さらに好ましくは20〜45%の範囲である。
ZrO2は高屈折率・低分散の成分として使われる。少量のZrO2を導入することにより、ガラスの屈折率を低下させずに、高温粘性や失透に対する安定性を改善する効果がある。しかし、15%を超えて導入すると、液相温度が急激に上昇し、失透に対する安定性も悪化するので、その導入量を0〜15%にするのがよい。より好ましくは0〜10%の範囲、さらに好ましくは1〜10%の範囲である。
Bi2O3は屈折率を高め、ガラス安定性を向上する働きをするが、過剰導入によりガラスが着色するので0〜10%の導入が好ましい。
B2O3、SiO2、La2O3、Gd2O3、ZnO、Li2O、ZrO2、Ta2O5の各成分を含むガラスにおいて、高屈折率・低分散(nd>1.75かつνd>25)の高機能性を保つためにはLa2O3+Gd2O3の合計量を12%以上にするのが好ましく、12〜35%とするのがさらに好ましい。
Lu2O3は他の成分に比べて使用頻度が少ない。また、希少価値の高い物質でもあることから光学ガラス原料としては高額であり、コスト面からは使用したくない成分である。また敢えて導入する必要もないので、Lu2O3を導入しないことが望ましい。
なお、ガラスBには物性調整のために、合計量で5%以下のTiO2、Al2O3、Ga2O3などを導入してもよい。
ガラス成分としてB2O3 15〜60%、SiO2 0〜40%、La2O3 5〜22%、Gd2O3 0〜20%、ZnO 0〜45%、 Li2O 0〜15%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、ZrO2 0〜15%、Ta2O5 0〜15%、WO3 0〜15%、Nb2O5 0〜10%、MgO 0〜15%、CaO 0〜15%、SrO 0〜15%、BaO 0〜15%、Y2O3 0〜15%、Yb2O3 0〜15%、TiO2 0〜20%、Bi2O3 0〜10%を含むガラス、
さらに前記いずれかのガラスであって、B2O3、SiO2、ZnO、Li2O、La2O3、Gd2O3、ZrO2、Ta2O5、WO3、Y2O3、Yb2O3の合計含有量が95%以上のものがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましく、100%であることが一層好ましい。
第1の範囲は屈折率(nd)が極めて高い範囲であり、ガラス2の中でも液相粘性が低い。高屈折率ガラスは、一定の屈折率(nd)に対してアッベ数(νd)が小さいほうが比較的安定性を向上させやすいが、アッベ数(νd)が大きくなると安定したガラスを得るのが難しくなる。そのため、第2の範囲も第1の範囲同様、ガラスBの中でも液相粘性が低くなる。
Al(PO3)3はガラスの網目構造を構成する成分であり、ガラスの耐候性を高める最も重要な成分であるが、その含有量が20%を超えると、ガラスの熱安定性が低下し、液相温度も光学特性(分散が高くなる)も大幅に悪化する恐れがあるので、その導入量を20%以下に制限することが好ましい。より好ましくは0.5〜15%の範囲である。
ZrF4はガラスの網目構造を構成する成分であり、安定性を向上させ、耐久性も向上させる成分であるが、10%を超えて導入すると、必要な光学特性が得られないだけでなく、過剰な導入は安定性も低下させるため、導入量は10%以下とすることが望ましい。
CaF2、SrF2は耐失透性を維持しつつ、低分散化するために必要な成分である。特にCaF2がAlF3との組み合わせでガラス構造を強化する役割を果たし、ガラスの安定化には欠かせない成分である。CaF2、SrF2それぞれの導入量が2%未満ではガラスの安定性向上の観点から十分な量とは言えず、また所望の光学恒数を得ることが困難になる。また、CaF2、SrF2とも45%を超えて多く導入すると、ガラスを不安定化にする恐れがあるので、CaF2、SrF2の導入量はともに2〜45%の範囲にとすることが好ましく、CaF2を5〜40%、SrF2を3〜35%の範囲とすることがより好ましい。
BaF2は耐久性の向上と低分散化に効果あるが30%を超えて導入すると安定性が低下するため導入量は30%以下とすることが望ましい。
LiF、NaF、KFは少量の添加によりガラスの耐失透性や分散性を良化する効果があるが、過剰導入により、ガラスの安定性が急速に悪化し、耐久性も悪くなるので、LiF、NaF、KFの導入量はそれぞれ0〜10%、0〜15%、0〜15%にするのが好ましい。より好ましいLiF、NaF、KFの導入量はそれぞれ0〜5%、0〜10%、0〜10%である。
ガラスCからなるガラス塊を成形する場合、800〜1100℃の温度で溶融、清澄した後、大気中、乾燥雰囲気中、あるいはアルゴンなどの希ガスや窒素ガスなどの不活性ガスに酸素ガスを混合した雰囲気(この場合、酸素の割合は0.1〜50体積%であることが好ましい。)で白金合金製の流出パイプを通じてガラスを流出して、上記浮上成形法によりガラス塊を作製する。
一方、難溶性の塩が生成することを利用することもできる。難溶性の塩は液中で沈殿するためエッチング液が飽和してエッチング速度が低下しにくい。また沈殿物も除去すれば繰り返し繰り返しエッチング液として使用することもできる。
このようにして作製したプリフォームを洗浄した後に、必要に応じて離型膜などの薄膜を表面に形成してもよい。離型膜としては炭素含有膜、自己組織化膜などを例示することができる。
本発明の光学素子の製造方法は、上記製造方法により作製した精密プレス成形用プリフォームを加熱、精密プレス成形することを特徴とするものである。
精密プレス成形はモールドオプティクス成形法とも呼ばれ、既に当該発明の属する技術分野においてはよく知られたものである。光学素子の光線を透過したり、屈折させたり、回折させたり、反射させたりする面を光学機能面と呼ぶ。例えばレンズを例にとると非球面レンズの非球面や球面レンズの球面などのレンズ面が光学機能面に相当する。精密プレス成形法はプレス成形型の成形面を精密にガラスに転写することにより、プレス成形で光学機能面を形成する方法である。つまり光学機能面を仕上げるために研削や研磨などの機械加工を加える必要がない。
精密プレス成形法に使用するプレス成形型としては公知のもの、例えば炭化珪素、超硬材料などの型材の成形面に離型膜を設けたものを例示できるが、炭化珪素製のプレス成形型が好ましい。離型膜としては炭素含有膜、貴金属合金膜などを使用することができるが、耐久性、コストの面などから炭素含有膜が好ましい。
プレス圧力は適宜調整すればよいが、5〜15MPa程度の範囲を目安にすることができる。また、プレス時間も適宜調整すればよいが、10〜300秒の範囲を目安にすることができる。
次に本発明の光学素子の製造方法に特に好適な精密プレス成形法について説明する。
この方法は、プレス成形型に前記プリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを共に加熱し、精密プレス成形するというものである(精密プレス成形法1とういう)。
精密プレス成形法1において、プレス成形型と前記プリフォームの温度をともに、プリフォームを構成するガラスが106〜1012dPa・sの粘度を示す温度に加熱して精密プレス成形を行うことが好ましい。
また前記ガラスが1012dPa・s以上、より好ましくは1014dPa・s以上、さらに好ましくは1016dPa・s以上の粘度を示す温度にまで冷却してから精密プレス成形品をプレス成形型から取り出すことが望ましい。
上記の条件により、プレス成形型成形面の形状をガラスにより精密に転写することができるとともに、精密プレス成形品を変形することなく取り出すこともできる。
この方法は、前記プリフォームを加熱した後に、プレス成形型に導入し、精密プレス成形する、すなわち、プレス成形型とプリフォームを別々に予熱し、予熱したプリフォームをプレス成形型に導入して精密プレス成形するというものである(精密プレス成形法2という)。
この方法によれば、前記プリフォームをプレス成形型に導入する前に予め加熱するので、サイクルタイムを短縮化しつつ、表面欠陥のない良好な面精度の光学素子を製造することができる。
なおプレス成形型の予熱温度をプリフォームの予熱温度よりも低く設定することが好ましい。このようにプレス成形型の予熱温度を低くすることにより、前記型の消耗を低減することができる。
また、プリフォーム加熱をプレス成形型内で行う必要がないので、使用するプレス成形型の数を少なくすることもできる。
精密プレス成形法2において、前記プリフォームを構成するガラスが109dPa・s以下、より好ましくは105〜109dPa・sの粘度を示す温度に予熱することが好ましい。
また、前記プリフォームを浮上しながら予熱することが好ましく、さらに前記プリフォームを構成するガラスが105.5〜109dPa・s、より好ましくは105.5dPa・s以上109dPa・s未満の粘度を示す温度に予熱することがさらに好ましい。
またプレス開始と同時又はプレスの途中からガラスの冷却を開始することが好ましい。
なおプレス成形型の温度は、前記プリフォームの予熱温度よりも低い温度に調温させるが、前記ガラスが109〜1012dPa・sの粘度を示す温度を目安にすればよい。
精密プレス成形された光学素子はプレス成形型より取り出され、必要に応じて徐冷される。また、レンズを成形した場合には、心取り加工を行ってもよい。また、必要に応じて表面に光学薄膜をコートしてもよい。
このようにして、ガラス1やガラス2からなる高品質な光学素子を高い生産性のもとに作製することができる。
実施例
(1)表1〜表4にプリフォームを作るためのガラス材料の組成及びその特性として屈折率(nd)、アッべ数(νd)、転移温度(Tg)、屈伏点 (Ts)、及び液相温度(L.T.)を示す。上記ガラスの特性は各成分の原料として各々相当する酸化物、フッ化物、水酸化物、炭酸塩、及び硝酸塩を使用し、ガラス化した後に表1〜表4に示す組成となるように秤量し、十分混合した後、白金坩堝に投入して電気炉で1050〜1200℃の温度範囲で溶融、清澄、攪拌して均質化し、適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ後、ガラス転移温度まで冷却してから直ちにアニール炉に入れ、室温まで徐冷したものを試料にして測定したものである。
(a)屈折率(nd)及びアッべ数(νd)
徐冷降温速度を−30℃/hにして得られた光学ガラスについて測定した。
(b)転移温度(Tg)及び屈伏点温度(Ts)
理学電機株式会社の熱機械分析装置により昇温速度を4℃/分にして測定した。
(c)液相温度(L.T.)
400〜1150℃の温度勾配のついた失透試験炉に1時間保持し、倍率80倍の顕微鏡により結晶の有り無しを観察し、液相温度を測定した。
(d)液相粘性
“JIS Z 8803−1991「液体の粘度−測定方法」8.単一円筒形回転粘度計による粘度測定”に基づき、回転円筒法によってガラスの液相温度における粘性を測定した。
(e)磨耗度(FA)
測定面積が9cm2の試料を、水平に毎分60回転する鋳鉄製平面皿の中心より80mmの定位置に保持し、平均粒径20μmのアルミナ砥粒10gに水20mlを添加したラップ液を5分間一様に供給し、9.80Nの荷重をかけてラッピングする。ラッピング前後の試料質量を秤量して磨耗重量mを求める。同様にして日本光学硝子工業会で指定された標準試料(BSC7)の磨耗質量m0を測定し、次式により磨耗度(FA)を算出する。
(なお、dは試料の比重、d0は標準試料(BSC7)の比重である)
上記ガラスを作るには、各成分の原料として各々相当する酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物など、例えば、Al(PO3)3、Ba(PO3)2、AlF3、YF3、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、NaFなどを用いて表5〜表8に示した所定の割合に250〜300g秤量し、十分に混合して調合バッチと成し、これを白金るつぼに入れ、1200〜1450℃に保持した電気炉中において、攪拌しながら大気中、乾燥雰囲気、あるいはアルゴンなどの希ガスや窒素など不活性ガスと呼ばれるガスに0.1〜50体積%の酸素ガスを混合した雰囲気中で2〜4時間、加熱、溶融を行った。溶融後、溶融ガラスを40×70×15mmのカーボン製の金型に流し込み、ガラス転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラス転移温度付近で約1時間アニール処理した後、炉内で室温まで放冷した。得られたガラス中には、顕微鏡で観察できる結晶は析出していなかった。
溶融ガラスの流出は、大気中、乾燥雰囲気中、あるいは酸素ガスを0.1〜50体積%含む不活性ガス(窒素またはアルゴン、または窒素とアルゴンの混合ガス)雰囲気中で行った。
流出する溶融ガラスから所定重量の溶融ガラス塊を滴下法により分離してガスを噴出するガラス塊成形型で受け、ガラスを浮上しながら上下動させて球状のガラス塊に成形した。一定の時間間隔で滴下する溶融ガラス滴を次々とガラス塊成形型で受けて浮上成形することにより、一定重量のガラス塊を次々と成形する。ガラス塊が変形しない温度にまで冷却した後に型から取り出す。このようにして表1〜表9に示す各ガラスからなる球状ガラス塊を複数個作製した。
これらガラス塊の表面を光学顕微鏡で拡大観察すると微細な表面脈理が全表面にわたって観察された(図1参照)。
このレンズの表面を光学顕微鏡で拡大観察したところ、使用したプリフォーム同様、表面脈理も内部の脈理も認められず、高品質なレンズであることが確かめられた。
プレス成形型に予熱された上記プリフォームを導入し、精密プレス成形する方法でも高品質、高精度な光学ガラスからなる非球面レンズを成形することができた。
なお、プリフォームの形状、寸法は作製しようとする精密プレス成形品の形状等により適宜、決めればよい。
なお、得られた各光学素子の光学機能面には必要に応じて反射防止膜あるいは高反射膜などの光学多層膜を形成することもできる。
2 下型
3 案内型(胴型)
4 プリフォーム
9 支持棒
10 支持台
11 石英管
12 ヒーター
13 押し棒
14 熱伝対
Claims (10)
- 溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記表面層の厚みが0.5μm以上であることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - 溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスの液相温度における粘度が10dPa・s以下であることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - 溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形し、該ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製すること、および前記ガラスが屈折率(nd)1.75以上で、アッベ数(νd)50以下の光学ガラスであることを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - 溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形してアニール処理したのち、前記ガラス塊をエッチング処理して、ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを作製することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - 溶融ガラスから所定重量の精密プレス成形用プリフォームを製造する方法において、
溶融ガラスをガラス塊に成形する工程を繰り返して一定重量のガラス塊を複数作製し、前記複数のガラス塊を一定の条件でエッチング処理して、各ガラス塊の表面層を除去することにより、前記重量の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォームを複数作製することを特徴とする精密プレス成形用プリフォームの製造方法。 - ガラス塊全体をエッチング液に浸漬してエッチング処理する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
- 溶融ガラスを、表面が曲率の異なる曲面により構成されるガラス塊または球状のガラス塊に成形する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の精密プレス成形用プリフォームの製造方法。
- 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法により作製された精密プレス成形用プリフォームを、精密プレス成形する工程を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
- プレス成形型にプリフォームを導入し、前記成形型とプリフォームを共に加熱して精密プレス成形する請求項8に記載の光学素子の製造方法。
- 予熱されたプレス成形型に、別途に加熱したプリフォームを導入して精密プレス成形する請求項8に記載の光学素子の製造方法。
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