JP2005232626A - マット調微塗工紙及びその製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】 嵩高性を有するとともに印刷特性に優れかつ黄変化による変色の少ないマット調微塗工紙を提供する。
【解決手段】 基紙上に、Ｔｇが−１０〜０℃で、アクリロニトリル量が１５％以下のラテックスを全顔料に対して８〜１５％含有した塗工層を設け、２００℃以上の高温で、１または２パスでそのニップ線圧の合計が１５００Ｎ／ｃｍ未満の低ニップ圧のオンマシンソフトカレンダー処理を行うことで、嵩密度が０．９８ｇ／ｃｍ³ 以下でかつ１１０℃で４８時間加熱処理したときの処理前後のＪＩＳ Ｚ８７２９による色差ｂ値の差異が７未満となり、嵩高性があってかつ黄変化による変色が無いマット調の塗工紙を生産性良く製造するようにした。

Description

本発明は、オンマシンソフトカレンダーにて製造できるマット調微塗工紙及びその製造方法に関するものである。

従来、マット調の微塗工紙は、抄紙機におけるゲートロールコーターまたはロッドメタリングサイズプレスなどのサイズプレスにて塗工を行った後、高温ソフトカレンダー処理を行って製造していた。

また、原紙上に、アクリロニトリル１〜３０重量％含有し、Ｔｇ（ガラス転移温度）が０〜２５℃であるラテックスと、顔料とを含有する塗工層を設けた塗工紙を、高温ソフトカレンダー（温度が１５０℃以上、例えば１８０℃、ニップ線圧が１７００〜２８００Ｎ／ｃｍ程度）で処理することで、不透明度、剛度及び白紙光沢が高く、印刷適性に優れ、なおかつ高温でのソフトカレンダー処理によっても黄変化による変色の少ない印刷用塗工紙を得ることは知られている（例えば、特許文献１参照。）。
特開平９−２５６２９６号公報

ところが、従来のソフトカレンダー処理によるマット調の微塗工紙の製造方法において、オフセット印刷用紙として好適に適用できる嵩高性を持たせるように、一層低いニップ圧で処理するために、一層高温で処理した場合には、塗工層に含まれるラテックス中の成分、特に塗工液中のラテックスの含有量を低減しながら接着強度を確保するために添加されるアクリロニトリルが大きな原因となって、熱による黄変化が発生するという問題があった。

また、上記特許文献１に開示された技術によれば、塗工液のラテックスとしてアクリロニトリルを１〜３０重量％含有し、Ｔｇが０〜２５℃のラテックスを用いると、黄変化をある程度抑制できるとされているが、上記のようにオフセット印刷用紙として好適な嵩高性を有するマット調の微塗工紙を製造すべく、より低ニップでより高温での処理を行うと、黄変化の発生を効果的に抑制することができないという問題がある。

本発明は、上記従来の問題点に鑑み、低ニップ・高温でソフトカレンダー処理することで嵩高性を有するとともに印刷特性に優れかつ黄変化による変色の少ないマット調微塗工紙及びその製造方法を提供することを課題とする。

本発明のマット調微塗工紙は、基紙上に、Ｔｇが−１０〜０℃で、アクリロニトリル量が１５％以下のラテックスを全顔料に対して８〜１５％含有した塗工層が設けられ、オンマシンソフトカレンダー処理を行って成り、嵩密度が０．９８ｇ／ｃｍ³ 以下でかつ１１０℃で４８時間加熱処理したときの処理前後のＪＩＳ Ｚ８７２９による色差ｂ値の差異が７未満、好適には５以下であるものである。

ラテックスは一般にスチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどから成り、アクリロニトリルは塗工液中のラテックスの含有量を低減しながら接着強度を確保したり、印刷光沢を向上するために添加されているが、本発明においては高温での黄変化の原因の一つであるラテックスのアクリロニトリル含有量を１５％以下と少なくすることにより、マット調の塗工紙を得るため低ニップ圧で高温のオンマシンソフトカレンダー処理を行うことで、嵩密度が０．９８ｇ／ｃｍ³ 以下でかつ１１０℃で４８時間加熱処理したときの処理前後のＪＩＳ Ｚ８７２９による色差ｂ値の差異が７未満、好適には５以下であるマット調微塗工紙を得ることができる。また、ラテックスのＴｇが−１０〜０℃となるようにブタジエンの含有量を増加させることで、全顔料に対するラテックスの含有量を８〜１５％と従来に比して１０％程度少なくしても必要な接着強度が確保されるとともに、ラテックスの含有量が少なくてすむことで、耐べたつき性が悪化するようなこともなく、ロール汚れなどの不具合の発生も抑制することができる。

また、塗工層のラテックスのゲル量が８０〜９５％であるのが好ましい。ゲル量は接着力の指標であり、８０〜９５％と高いことによって黄変化の大きな原因であるアクリロニトリルを少なくしても必要な接着力を確保することができる。

また、塗工層のラテックス中の粒子の平均粒径を１００〜１４０ｎｍとすることで、塗工層の必要な強度と塗工性の両方を確保することができて好ましい。粒径が１４０ｎｍを超えると十分な強度が得られず、１００ｎｍ未満であると塗工性が低下して塗工層による原紙層の被覆性が悪化する。

また、塗工層の顔料は、炭酸カルシウムが３０〜７０％、それ以外がクレーであるのが好適である。

また、塗工層の塗工量を１０〜２０ｇ／ｍ² とすると、微塗工紙として適切な厚さの塗工層が形成されて好適である。

また、本発明のマット調微塗工紙の製造方法は、基紙を抄紙する工程と、その基紙上にオンマシンサイズプレスにてＴｇが−１０〜０℃で、アクリロニトリル量が１５％以下のラテックスを全顔料に対して８〜１５％含有する塗工液を塗工する工程と、オンマシンソフトカレンダーにより２００〜３００℃の高温でかつ１または２パスでそのニップ線圧の合計が８００〜１５００Ｎ／ｃｍで処理する工程とを有するものである。

この構成によると、抄紙機のオンマシンサイズプレスで塗工し、かつオンマシンで高温・低ニップ圧のソフトカレンダー処理を行うことにより、嵩高性を有し黄変化の少ないマット調微塗工紙を製造することができる。

また、ソフトカレンダーの金属ロールを電磁誘導作用により加熱すると、２００〜３００℃の高温域においても所望の温度に精度良く加熱することができ、品質の高いマット調の白紙光沢を実現することができる。

本発明によれば、Ｔｇが−１０〜０℃で、アクリロニトリル量が１５％以下のラテックスを全顔料に対して８〜１５％含有した塗工層を設けることで、高温のソフトカレンダー処理を行っても黄変化を抑制でき、低ニップにて嵩高性のあるマット調塗工紙を得ることができる。かくして、１または２パスでそのニップ線圧の合計が１５００Ｎ／ｃｍ未満の低ニップでかつ２００℃以上の高温でオンマシンソフトカレンダー処理を行うことで、嵩密度が０．９８ｇ／ｃｍ³ 以下でかつ１１０℃で４８時間加熱処理したときの処理前後のＪＩＳ Ｚ８７２９による色差ｂ値の差異が７未満であるマット調微塗工紙を得ることができる。

以下、本発明のマット調微塗工紙及びその製造方法の実施形態について、詳細に説明する。

本発明のマット調微塗工紙は、抄紙機において抄造された基紙上に、オンマシンのゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスなどのサイズプレスにて塗工を行って乾燥した後、オンマシンソフトカレンダーにて低ニップ圧・高温にてソフトカレンダー処理を行うことによって製造される。

基紙としては、ＬＢＫＰ、ＮＢＫＰなどの化学パルプ、ＧＰ、ＰＧＷ、ＲＭＰ、ＴＭＰ、ＣＴＭＰ、ＣＭＰ、ＣＧＰなどの機械パルプ、ＤＩＰなどの古紙パルプ、などの木材パルプを主成分として、バインダー及びサイズ剤や定着剤、歩留り向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を必要に応じて１種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造された原紙が用いられる。

塗工層は、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートから選ばれた複数の材料を少なくとも含有するとともに、必要に応じてその他の材料を添加して成り、Ｔｇが−１０〜０℃で、アクリロニトリル量が１５％以下となるように配合されたラテックスと、顔料とから成る塗工液を塗工して形成されている。塗工量は固形分で１０〜２０ｇ／ｍ² が好適である。

ラテックスは、その微粒子の粒子径を１００〜１４０ｎｍの範囲とすることで、塗工層の必要な強度と塗工性の両方を確保することができて好適である。また、ラテックスは、そのゲル量が８０〜９５％と高いものを用いることで、上記のようにアクリロニトリル量を低減しても必要な接着力を確保することができて好適である。また、ラテックスの配合量は、全顔料に対して８〜１５％が好適である。このように従来に比して１０％程度少なくしても必要な接着強度が確保されるとともに、ラテックスの含有量が少なくてすむことで、耐べたつき性が悪化するようなこともなく、ロール汚れなどの不具合の発生も抑制することができる。

塗工層の顔料としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、無定形シリケート、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸、アルミナ、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどから適宜に選択した１種又は２種以上を混合したものを用いることができるが、炭酸カルシウムとクレーを５０重量％づつ配合したものを標準として、炭酸カルシウムを３０〜７０％の間で調整し、それ以外をクレーとした配合が好適である。

また、上記塗工液には、その他の添加剤として、カチオン系染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、潤滑剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤や酸化防止剤などを適宜添加することもできる。

オンマシンソフトカレンダー処理は、所定温度に加熱した金属ロールと弾性ロールの組み合わせによりカレンダー処理を行うが、金属ロールをその幅方向に分割制御可能な電磁誘導作用により加熱すると、２００〜３００℃の高温域においても所望の温度に精度良く加熱することができ、品質の高いマット調の微塗工紙を実現することができる。

また、オンマシンソフトカレンダー処理において、金属ロールと弾性ロールの組み合わせによる２ロール１ニップの段を１段または２段設け、そのニップ線圧の合計を１５００Ｎ／ｃｍ以下とすることで、４００〜３０００ｍ／分、好適には１４００〜２３００ｍ／分の通紙速度においても、オフセット印刷に適した嵩高性を有する処理ができて好適である。なお、弾性ロールの材質は、耐熱性に優れる変性ウレタン系、エポキシ系、ポリエーテル系等のプラスチックから成り、ショア硬度が８５〜９３が好ましい。

次に、本発明のいくつかの実施例と比較例を説明する。

試料のオフセット印刷用のマット調微塗工紙は、次のようにして作製した。抄紙機のサイズプレスによる塗工用の塗工液として、炭酸カルシウムとクレーを５０重量％づつ混合した顔料に対して、表１に示すように、各実施例と各比較例に応じた各種組成のラテックスを全顔料に対して１０〜１４重量％配合して調整した。そして、抄紙機のオンマシンのサイズプレスにて塗工液を固形分で１０〜２０ｇ／ｍ² の塗工量にて塗工し、１段のニップ部を有するオンマシンソフトカレンダーにて、１５０℃、２００℃、２５０℃、３００℃、３５０℃の各温度で、また５００Ｎ／ｃｍ、８００Ｎ／ｃｍ、１０００Ｎ／ｃｍ、１５００Ｎ／ｃｍ、２０００Ｎ／ｃｍの各ニップ線圧でソフトカレンダー処理を行い、マット調微塗工紙を作製した。そして、嵩高性、黄変化、ロール汚れ、表面強度、経済性の評価及びそれらによる総合評価を行った。

黄変化の評価は、次のように行った。塗工紙を１１０℃で４８時間加熱処理した場合の処理前後の色差ｂ値（ＪＩＳ Ｚ ８７２９ 参照）の差異により、
○：差異５未満
△：差異５以上〜７未満
×：差異７以上
と評価した。

ロール汚れの評価は、次のように行った。塗工紙（４０，０００ｍ巻、１０本）をカレンダー処理した後の塗工液によるカレンダーロールの汚れを目視し、
○：汚れが無いまたは少ない
△：汚れがある
×：汚れが多い
と相対評価した。

表面強度の評価は、次のように行った。ＲＩ−１型印刷機（明製作所製）を用い、東洋インキ製のＴＶ−２４を使用し、インキ量０．３５ｍｌ一定で印刷し、印刷面のピッキングの程度を目視し、
○：ピッキングが全くない
△：ピッキングが若干見られるが使用に問題ない
×：ピッキングが多数発生し、使用不可
と相対評価した。

また、経済性の評価は、主にラテックスの単価と配合量により相対評価し、相対的にコスト高になるものを△、それ以外を○とし、総合評価は以上の評価項目から○と△と×の３段階に相対評価した。

各実施例及び比較例における各種ラテックスの組成とソフトカレンダー処理温度及びニップ線圧に応じた嵩高性、黄変化、ロール汚れ、表面強度、経済性及び総合評価の評価結果を、表１に示した。

表１において、Ｔｇ：−５℃、アクリロニトリル量：５％、ゲル量：９０％のラテックスを１３％配合した塗工液を塗工し、温度２５０℃、ニップ圧１０００Ｎ／ｃｍで高温・低ニップ圧ソフトカンダー処理を行った、本発明の典型例としての実施例１では、マット調微塗工紙に必要な０．９８ｇ／ｃｍ³ 以上の嵩高性、すなわち０．９５ｇ／ｃｍ³ の嵩高性を確保しつつ、黄変化及びロール汚れが無く、所定の表面強度を確保でき、また経済性も悪くなく、良好な総合評価が得られている。

ラテックスのＴｇを−１０℃に変化させた実施例２の場合も良好な結果が得られている。また、Ｔｇを０℃に変化させた実施例３では、接着強度を確保するため配合量を１４％に高めたことによって、経済性で若干劣るものの良好な結果が得られている。一方、Ｔｇを−１５℃に変化させた比較例１では、ロール汚れが著しいために総合評価は不可（×印）であり、逆にＴｇを５℃に変化させた比較例２では接着強度を確保するため配合量を１４％に高めたことによって、ロール汚れが発生するとともに表面強度及び経済性で若干劣るため、総合評価は不適（△印）である。

ラテックス中のアクリロニトリル量を１０％に高めた実施例４でも、良好な総合評価が得られ、アクリロニトリル量を１５％に高めた実施例５では黄変化が若干悪化するが良好な総合評価が得られている。一方、アクリロニトリル量を０％にした実施例６でも、ラテックスとしてＴｇが−５℃のものを採用したことで良好な総合評価が得られている。これに対して、アクリロニトリル量を２０％まで高めた比較例３では黄変化が著しくなって総合評価は不可となっている。

また、高温ソフトカレンダー処理の温度を２００℃まで低下させた実施例７においては、嵩高性が若干向上して同様に良好な総合評価が得られており、また逆に３００℃まで高めた実施例８では嵩高性が若干低下して黄変化も発生し始めるが、総合評価としてはなおは良好である。一方、高温ソフトカレンダー処理の温度を１５０℃まで低下させた比較例４では、嵩高性は得られるが、表面強度が低下するため総合評価は不適となり、逆に３５０℃まで高くした比較例５では黄変化が著しくなるとともにロール汚れも発生するため総合評価は不可となっている。

また、高温ソフトカレンダー処理のニップ圧を、８００Ｎ／ｃｍまで低くした実施例９では嵩高性が０．８８ｇ／ｃｍ³ と良好となり、逆に１５００Ｎ／ｃｍ程度まで高くした実施例１０では嵩高性が０．９８ｇ／ｃｍ³ と若干低下するるが、何れも良好な総合評価が得られている。一方、ニップ圧を５００Ｎ／ｃｍまで低くした比較例６では嵩高性は０．７８ｇ／ｃｍ³ と向上するが、表面強度も十分でないため、総合評価は不適であり、逆にニップ圧を２０００Ｎ／ｃｍまで高くした比較例７では嵩高性は１．０６ｇ／ｃｍ³ と著しく低下しかつロール汚れも発生するため、総合評価は不可となっている。

本発明のマット調微塗工紙は、ラテックスにおけるアクリロニトリル含有量を少なくしたことによって、高温でソフトカレンダー処理を行っても黄変化を抑制できるとともに低ニップにて嵩高性のあるマット調塗工紙を得ることができ、オフセット印刷用マット調微塗工紙として有用である。

Claims (7)

1. 基紙上に、Ｔｇが−１０〜０℃で、アクリロニトリル量が１５％以下のラテックスを全顔料に対して８〜１５％含有した塗工層が設けられ、オンマシンソフトカレンダー処理を行って成り、嵩密度が０．９８ｇ／ｃｍ³ 以下でかつ１１０℃で４８時間加熱処理したときの処理前後のＪＩＳ Ｚ８７２９による色差ｂ値の差異が７未満であることを特徴とするマット調微塗工紙。
2. 塗工層のラテックスのゲル量が８０〜９５％であることを特徴とする請求項１記載のマット調微塗工紙。
3. 塗工層のラテックス中の粒子の平均粒径が１００〜１４０ｎｍであることを特徴とする請求項１または２記載のマット調微塗工紙。
4. 塗工層の顔料は、炭酸カルシウムが３０〜７０％、それ以外がクレーであることを特徴とする請求項１〜３の何れかに記載のマット調微塗工紙。
5. 塗工層の塗工量は、１０〜２０ｇ／ｍ² であることを特徴とする請求項１〜４の何れかに記載のマット調微塗工紙。
6. 基紙を抄紙する工程と、その基紙上にオンマシンサイズプレスにてＴｇが−１０〜０℃で、アクリロニトリル量が１５％以下のラテックスを全顔料に対して８〜１５％含有する塗工液を塗工する工程と、オンマシンソフトカレンダーにより２００〜３００℃の高温でかつ１または２パスでそのニップ線圧の合計が８００〜１５００Ｎ／ｃｍで処理する工程とを有することを特徴とするマット調微塗工紙の製造方法。
7. ソフトカレンダーの金属ロールを電磁誘導作用により加熱することを特徴とする請求項６記載のマット調微塗工紙の製造方法。