JP2004256958A - 印刷用塗工紙 - Google Patents
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Abstract
【課題】白紙光沢度が高く、塗工紙表面の微小な光沢むらが非常に少なく、従来にない面感を有した印刷用塗工紙を提供することにある。
【解決手段】原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成したオフセット印刷用塗工紙において、フィルム転写塗工方式で第一層目の塗工層を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、第三層を形成し、第三層目の塗工層の顔料として平均粒子径が0.35μm以上0.55μm以下の炭酸カルシウムを含有することを特徴とする印刷用塗工紙。
【解決手段】原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成したオフセット印刷用塗工紙において、フィルム転写塗工方式で第一層目の塗工層を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、第三層を形成し、第三層目の塗工層の顔料として平均粒子径が0.35μm以上0.55μm以下の炭酸カルシウムを含有することを特徴とする印刷用塗工紙。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷用塗工紙に関し、白紙光沢度が高く、かつ面感の良好な印刷用光沢塗工紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷物のビジュアル化傾向やカラー化が進み、印刷用紙の高品質化の要求が高まってきている。特に、従来から、高級美術印刷、カタログ、パンフレット、カレンダー等においては、印刷仕上がりでの高級感を求められてきており、記録物の美観の観点から塗工紙の白さ、色相、白紙光沢度、印刷光沢度等に対して、より厳しい目が向けられており、高白色度、高白紙光沢度のものが求められている。さらに、これらの品質に加えて、見た目の表面の均一さ、所謂「面感」は、紙の品質評価の重要な要素のひとつとなってきている。
【0003】
この面感として評価されるものは、実質的には、紙表面の白さや光沢度(白紙光沢度、印刷光沢度)、それに紙の厚さなどの均一性であって、これらにバラツキがあれば、面感は低い評価が与えられる。紙の場合には、製紙工程における坪量、紙厚の変動が紙表面の不均一の原因となり、面感についての低い評価の原因となる。また、紙表面に各種の顔料を塗工したコート紙においては、塗工の目的が平滑性、白さ、光沢、不透明度等の向上にあるために、ムラの発生は、塗工目的を達成することができず、商品としては当然のことながら、品質不合格ということになる。特に、コート紙表面上に生じる「梨地ムラ」と呼ばれる微細な光沢ムラは、品質上問題となる。
【0004】
面感に影響を及ぼす要因としては、コート原紙の平滑度、吸水性、地合ムラ等や、ブレード条件、塗工量等の塗工条件、乾燥条件、塗工層表面の顔料配向ムラ等が挙げられる。例えば、省力、省スペースの観点から乾燥ゾーンの長さをできる限り短くする場合、急激な乾燥を行う必要があるが、その結果、塗工直後の塗工層において、バインダー成分(澱粉、ラテックス)のマイグレーションが大きく、原紙層への浸透が不均一になり、印刷ムラ、すなわりモットリング(単色ベタ印刷部の光沢ムラ)やトラッピングムラ(重ね刷り時の印刷ムラ)が増加する問題が生じる。また、塗工液濃度が高すぎる場合、塗工液の流動性が悪化し、スタラグマイト(ブレードの刃先に発生する乾燥した鍾乳石状の塗工液組成物の凝集物)等が発生するため、塗工液濃度をある程度低くする必要があるが、濃度が低すぎる場合にも上記のようなムラの問題が生じることが知られている。一方で、スタラグマイトが生じない領域においても、塗工液濃度が高いとブレード圧を高くする必要があるが、高いブレード加圧により塗工面は荒れやすくなる傾向にあり、光沢ムラが酷くなると言われている。
【0005】
これらの光沢ムラ、印刷ムラを改善するために、種々の検討がなされてきた。例えば、原紙あるいは塗工紙を加湿、加熱した後高温でソフトカレンダー処理する方法(特許文献1、特許文献2参照)、特定の粒子径を有するラテックス及び特定の還元末端基量、分子量を有するデンプンを使用する方法(特許文献3参照)、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化反応により製造された米粒状または紡錘状の軽質炭酸カルシウムを使用する方法(特許文献4参照)により、光沢ムラを改善することが開示されている。また、板状の形状を有するカオリンは、炭酸カルシウムに比べて顔料の配向性が高いために、配向ムラに起因する微小光沢ムラが顕著になると考えられており、炭酸カルシウムを65重量%以上配合する塗料を塗工することにより、カレンダー処理後の微小光沢ムラを低減する方法も提案されている。(特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、上記のような従来の方法では、高白紙光沢度で、微小光沢ムラが非常に少なく、非常に面感の優れた印刷用塗工紙を得ることは困難であった。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−370298号公報
【特許文献2】
特開平4−361695号公報
【特許文献3】
特開平9−77862号公報
【特許文献4】
特開平11−107193号公報
【特許文献5】
特開平9−228298号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この様な状況に鑑みて、本発明の課題は、高白紙光沢度で、塗工紙表面の微小な光沢むらが非常に少なく、従来にない面感を有した印刷用塗工紙を提供することにある。
【0009】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成した塗工紙において、フィルム転写塗工方式で第一層目の塗工層を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、第三層を形成し、第三層目の塗工層が顔料として平均粒子径が0.35μm以上0.55μm以下、好ましくは0.40μm以上0.55μm以下の炭酸カルシウムを含有することにより、白紙光沢度が高く、塗工紙表面の微小な光沢むらが極めて少なく、従来にない面感を有した印刷用塗工紙を得ることができ、本発明を成すに至った。
【0010】
本発明においては、原紙上にフィルム塗工方式で第1層設けた後、ブレード塗工方式で第2層を設けた上に、0.35〜0.55μmの小粒子径の炭酸カルシウムを含む塗工層を、形成することが重要である。例えば、トータルの塗工量が同一で、原紙上に第1層にフィルム塗工を設けた後、上記の0.35〜0.55μmの小粒子径の炭酸カルシウムを含む塗工層を第2層として設けたのみの場合には、白紙光沢度も高くなく、微小光沢むらも劣っていた。
【0011】
本発明において、白紙光沢度が高く、微小光沢むらが極めて少なく、良好な面感が得られる理由は以下のように考えられる。
【0012】
フィルム転写塗工方式は、ロール上に形成させた塗料膜を塗工原紙に転写させるため、原紙表面の凹凸を被覆する塗工層の厚さが均一である。一方で、ブレード塗工方式は過剰量の塗料を原紙に塗布した後に目標の塗工量が得られるようブレードで掻き落すため、塗工後の表面の平滑性はフィルム転写塗工方式と比較して高いが、原紙表面の凹凸を埋めるため、塗工層の厚さは不均一になる。原紙上に塗工された塗料は原紙への脱水、および塗料表面からの水の蒸発により乾燥されるが、その際、塗工層の厚さが不均一であれば乾燥までの水の移動も不均一になるため、不均一なバインダーマイグレーションの発生により塗工層表面の吸水性や塗工層の可塑性も不均一な塗工紙が得られる。
【0013】
また、第一層目の塗工層を塗工・乾燥する際、原紙に脱水される水により原紙が膨潤し平滑性が低下する。ブレード塗工方式で第一層目を形成させた場合、塗工層厚が不均一なため原紙に脱水される水の量も部分的に異なり、局所的に膨潤の大きい、平滑性の低い原紙となってしまう。これに対してフィルム転写塗工方式では塗工層の膜厚が均一であるため、原紙の膨潤の程度も相対的に均一となる。このため、第一層目をフィルム転写塗工方式にし、第二層目をブレード塗工方式にすることで、第三層目を塗工する前の段階で、原紙の吸水性、可塑性の局所的なむらが少なく、原紙の膨潤による平滑性の低下が少ない原紙が得られることが、白紙光沢度が高く、また微小光沢むらが少ない良好な面考えられる理由と考えられた。
【0014】
また、塗工層に配合する顔料については、主に炭酸カルシウムとカオリン、クレーが使用される。板状の形状を有するカオリンは、不定形の炭酸カルシウムに比べて塗工紙の光沢発現性が高いため、白紙光沢度の高い塗工紙を製造する上で多用されるが、一方で顔料の配向性が高いために、配向むらに起因する微小光沢むらが顕著になると思われる。そのため、本発明で目標としたような、白紙光沢度が高く、かつ微小光沢むらが少ない白紙面感の良好な塗工紙を製造する上では、カオリンに匹敵する光沢発現性の高い炭酸カルシウムを配合することが必要となる。0.35〜0.55μmの小粒子径の炭酸カルシウムを第三層目の塗工層に配合することで、従来のフィルム転写・ブレードダブル塗工やブレード・ブレードダブル塗工において第二層目に同様な小粒子径の炭酸カルシウムを配合した場合と比較して白紙光沢度の発現性が高く、また前述の原紙平滑性が高いという両者の相互作用により、従来の塗工紙に無い高い白紙光沢度と、微小光沢むらが非常に少なく良好な白紙面感を両立することが可能となったものと考えられた。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明においては、原紙上に顔料と接着剤を含む塗工層を3層設けることにより、印刷用塗工紙を得るものである。
【0016】
原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工層である第1層は、フィルム塗工方式で塗工し、第2層はブレード塗工方式で設ける。
【0017】
本発明の第1、2層の塗工層に使用する顔料は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、プラスチックピグメント等を単独あるいは併用しても良い。本発明においては、微小光沢むらを抑制し、面感を向上させるために、第2層の顔料として、0.45〜1.5μmの炭酸カルシウムを顔料100重量部あたり50重量部以上含有することが好ましく、より好ましくは80重量部以上である。
【0018】
本発明の第1、2層の塗工層に使用する接着剤としては、スチレン/ブタジエン系、スチレン/アクリル系、エチレン/酢酸ビニル系、ブタジエン/メチルメタクリレート系、酢酸ビニル/ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、顔料100重量部当たり5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部の範囲で使用される。
【0019】
また、本発明においては第1、2塗工層を形成するために、塗工する為の塗工液には顔料と接着剤と共に、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、滑剤など、通常の塗工紙用塗料に配合される各種助剤が適宜使用できる。
【0020】
塗工層の塗工量としては、第1層は、原紙の片面当たり2〜8g/m2を塗工することが好ましい。第一層目の塗工量が2g/m2未満の場合、目標とするような原紙の平滑性向上および吸水性の低下効果が得られないため、最終的な塗工紙で表面性が良好にならない。第一層目の塗工量が8g/m2を超える場合、塗工制御が難しい場合があり幅方向の塗工量むらが不均一になるため良好な白紙面感を得にくい。また第2層の塗工量は、良好な表面性を得るために片面あたり5〜10g/m2が好ましい。
【0021】
原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工層を2層設けた塗工紙は、更にブレード塗工方式で第3層の塗工層を設ける。
【0022】
本発明の第3層の塗工層に使用する顔料は、0.35μm以上0.55μm以下、好ましくは0.40μm以上0.55μm以下の炭酸カルシウム含有することが重要である。特にこのような小粒径の炭酸カルシウムを使用することにより、微小光沢むらが極めて向上し、白紙光沢度が高くなる。0.35μm未満では、操業性に劣ってしまう。0.55μmを超えると白紙光沢度が低く、微小光沢むらが改善しない。本発明の効果をより発揮させるためには、上記炭酸カルシウムを顔料100重量部当たり、50重量以上含有することが好ましく、より好ましくは80重慮部以上である。その他の顔料としては、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、プラスチックピグメントを併用しても良い。
【0023】
本発明の第3層の塗工層に使用する接着剤としては、第1、2層と同様にスチレン/ブタジエン系、スチレン/アクリル系、エチレン/酢酸ビニル系、ブタジエン/メチルメタクリレート系、酢酸ビニル/ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、単独もしくは複数の混合で塗料に配合することが可能で、顔料100重量部当たり、フィルム転写塗工用塗料の場合4〜40重量部、ブレード塗工用塗料の場合6〜30部使用ことが好ましく、より好ましくはフィルム転写塗工用塗料で6〜35重量部、ブレード塗工用塗料の場合の範囲10〜20重量部で使用される。
【0024】
また、第3塗工層を形成するために、塗工する為の塗工液には顔料と接着剤と共に、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、滑剤など、通常の塗工紙用塗料に配合される各種助剤が適宜使用でき、第3層目の塗工量は、高白紙光沢度で白紙面感を良好するためには片面当たり7〜14g/m2が好ましい。
【0025】
本発明において原紙に配合されるパルプの種類等は特に限定されない。広葉樹クラフトパルプ(以下、LBKPとする)、針葉樹クラフトパルプ(以下、NBKPとする)等の化学パルプを主体とするが、目的とする白色度が得られる範囲内でサーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、古紙パルプ等およびそれを漂白したものを配合することが可能である。原紙に内添する填料は、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、水和珪酸、ホワイトカーボン、酸化チタン、合成樹脂填料など、一般に製紙用途として用いられている公知の填料の何れも使用できる。さらに必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、着色顔料、染料、消泡剤などを含有してもよい。
【0026】
原紙の抄紙方法については特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、丸網マシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙方式で抄紙した原紙のいずれであってもよく、勿論、メカニカルパルプを含む中質原紙および回収古紙パルプを含む原紙も、目的とする白色度が得られる範囲内で使用できる。原紙としては、坪量により本発明の効果が変わるものではないが、一般の印刷用塗工紙に用いられる坪量30から200g/m2の原紙が用いられる。
【0027】
本発明において、第1層の塗工層を設けるためのフィルム転写塗工方式としては、ゲートロールコーター、トランスファーロールコーター等の、ロールでメタリングした塗膜をロールに転写する方式の他、シムサイザー、JFサイザー等のロッドもしくはブレードでメタリングした塗膜をロールに転写する方式も使用可能である。フィルム転写塗工は一般的にはマシンのサイズプレス部で、従来クリアーコートしていた塗工部を顔料塗工に転用する事が一般的であるが、コーターにフィルム転写方式の塗工部を組み込んで使用しても、本発明で得られる効果を何ら変えることはない。フィルム塗工方式を用いて原紙に第1層の塗工層を設けた下塗り塗工原紙は、キャレンダーにて平滑化処理を施すことも可能である。平滑化処理方法としては、金属ロールだけからなるキャレンダーの他に、金属ロールと樹脂ロールからなるキャレンダーも使用可能である。 本発明において、第2層、第3層を設けるためのブレード塗工方式としては、フラデドニップ方式、ジェットファウンテン方式、バリドウェルタイムファウンテン方式、ショートドウェルタイムアプリケーション方式等、塗料を原紙にアプリケートした後にブレードでメタリングする方式であればどのような塗工方式も問題なく使用できるが、バリドウェルタイムファウンテン方式は塗料の保水性、濃度に応じてドウェルタイムを変更することで、ブレードでのメタリング時に流動性を最適化できるため望ましい。本発明においては、トータルの塗工量が、原紙片面当たり12〜40g/m2の時に本発明の効果がより発揮され、更に好ましくは12〜25g/m2である。
原紙に三層の塗工層を形成した塗工紙は、次にカレンダー処理する。本発明に使用できるカレンダーは、金属ロールとコットンロールからなるスーパーカレンダーや、金属ロールと樹脂ロールからなるソフトカレンダーを、単段もしくは多段に組み合わせた形であれば何れも使用できる。特に、坪量の低い薄物塗工紙においては不透明度の確保が重要であり、高温でソフトカレンダー処理する方が低密度で不透明度が高い塗工紙が得られるので好ましい。本発明において、微小光沢むらの向上のために、塗工紙の白色度を83.0%以上にすることが好ましい。
【0028】
以上のように、原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成した塗工紙の製造方法において、フィルム転写塗工方式で第一層目を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、及び小粒径の炭酸カルシウムを含有する第三層を形成することにより、白紙光沢度が高く、印刷物の非画線部、画線部の微小な光沢むらが極めて少なく、面感に優れた印刷用塗工紙が得られる。本発明においては、白紙光沢度が70%以上、好ましくは75〜90%の時に微小光沢むらを抑える効果がより顕著になるものである。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。尚、特に断らない限り、例中の部、および%はそれぞれ、重量部および重量%を示す。選られた印刷用塗工紙について、以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
<評価方法>
(顔料の平均粒子径) レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名:マスターサイザーS)を用いて、体積累積分布の50%点を平均粒子径として測定した。
(顔料のハンター白色度) 分散液で供給される顔料はあらかじめ乾燥機にて水分を蒸発させた後、得られる顔料固形物を乳鉢で粗粉砕した。粉体で供給される顔料および粗粉砕した顔料固形物は、ミル粉砕器(柴田科学器械工業(株)製、機器名:小型粉砕器SCM−40A)を用いて粉砕し、それを加圧成形して得られる顔料プレートのハンター白色度を、JIS P−8122に従い測定した。
(坪量) JIS P 8124:1998に従った。
(紙厚、密度) JIS P 8118:1998に従った。
(クラークこわさ) JIS P 8143:1996に従った。
(白紙光沢度) JIS P 8142:1998に従った。
(塗工紙の白色度) JIS P−8122に従った。
(印刷光沢度) RI−II型印刷試験機を用い、東洋インキ製造株式会社製枚葉プロセスインキ(商品名TKハイエコー紅 MZ)を0.30cc使用して印刷を行い、一昼夜放置後、得られた印刷物の表面をJIS P 8142:1998に従って測定した。
(光沢度の標準偏差) 特開平4−124440号公報に準じて作製されたScanning Micro Glossmeter(島津製作所製)を用いて光沢度を測定し、標準偏差を求めた値である。測定条件は、波長220nm、スポット径0.4mm、入射角75度として、CD方向(試料長さ102mm中の156点照射測定)の5箇所を測定し、標準偏差を求めた。本発明においては、光沢度の標準偏差の数値が0.8%以下の時が、微小光沢むらが極めて少なく面感が優れる。
[実施例1]
製紙用パルプとして化学パルプを100重量部、填料として軽質炭酸カルシウムを10重量部含有する坪量65g/m2の原紙に、顔料として重質炭酸カルシウムA(平均粒子径:1.00μm)が100重量部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1重量部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを5重量部、燐酸エステル化澱粉を20重量部加え、さらに水を加えて40重量%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり3g/m2となるように、塗工速度1000m/分のフィルムトランスファーロールコーターで両面塗工(以下、「アンダー塗工」と表記する)を行った。これをアンダー塗工原紙として、さらに、顔料として重質炭酸カルシウムAが100重量部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1重量部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを5重量部、リン酸エステル化澱粉を10重量部加え、さらに水を加えて62重量%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり7g/m2となるように、塗工速度1000m/分のブレードコーターで両面塗工(以下、「プレ塗工」と表記する)を行った。これに引き続き、顔料として重質炭酸カルシウムB(平均粒子径:0.49μm)が80重量部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が20重量部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1重量部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを14重量部、リン酸エステル化澱粉を4重量部加え、さらに水を加えて65重量%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり10g/m2となるように、塗工速度1000m/分のブレードコーターで両面塗工(以下、「トップ塗工」と表記する)を行った。得られた塗工紙を金属ロールとコットンロールからなる12段のスーパーカレンダー(クライネウエファーズ製)を用いて、処理速度600m/min、処理線圧200kg/cm、金属ロール表面温度65℃の条件で処理し、印刷用塗工紙を得た。
[実施例2]
顔料として重質炭酸カルシウムC(平均粒子径:0.47μm)が80重量部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が20重量部からなる顔料を配合した塗料でトップ塗工を実施した以外は、実施例1と同様な方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]
顔料として重質炭酸カルシウムB(平均粒子径:0.49μm)が40重量部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が60重量部からなる顔料を配合した塗料でトップ塗工を実施した以外は、実施例1と同様な方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例1]
フィルムトランスファーロールコーターによるアンダー塗工を行わず、またブレードコーターでのプレ塗工の塗工量を10g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
フィルムトランスファーロールコーターによるアンダー塗工を3g/m2でプレ塗工なしで、ブレードコーターでのトップ塗工の塗工量を17g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
顔料として重質炭酸カルシウムA(平均粒子径:1.00μm)が80重量部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が20重量部からなる顔料を配合した塗料でトップ塗工を実施した以外は、実施例1と同様な方法で印刷用塗工紙を得た。
上記条件で製造した印刷用塗工紙において、塗工紙の坪量、密度、白紙光沢度、印刷光沢度、白紙表面の微小光沢標準偏差を評価し、結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
表1から明らかなように、実施例で得られる印刷用塗工紙は、高白色度で白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙表面の微小な光沢むらが極めて少ない印刷用塗工紙を得ることができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、高白色度で白紙光沢度が高く、白紙表面の微小な光沢むらが極めて少ない印刷用塗工紙を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷用塗工紙に関し、白紙光沢度が高く、かつ面感の良好な印刷用光沢塗工紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷物のビジュアル化傾向やカラー化が進み、印刷用紙の高品質化の要求が高まってきている。特に、従来から、高級美術印刷、カタログ、パンフレット、カレンダー等においては、印刷仕上がりでの高級感を求められてきており、記録物の美観の観点から塗工紙の白さ、色相、白紙光沢度、印刷光沢度等に対して、より厳しい目が向けられており、高白色度、高白紙光沢度のものが求められている。さらに、これらの品質に加えて、見た目の表面の均一さ、所謂「面感」は、紙の品質評価の重要な要素のひとつとなってきている。
【0003】
この面感として評価されるものは、実質的には、紙表面の白さや光沢度(白紙光沢度、印刷光沢度)、それに紙の厚さなどの均一性であって、これらにバラツキがあれば、面感は低い評価が与えられる。紙の場合には、製紙工程における坪量、紙厚の変動が紙表面の不均一の原因となり、面感についての低い評価の原因となる。また、紙表面に各種の顔料を塗工したコート紙においては、塗工の目的が平滑性、白さ、光沢、不透明度等の向上にあるために、ムラの発生は、塗工目的を達成することができず、商品としては当然のことながら、品質不合格ということになる。特に、コート紙表面上に生じる「梨地ムラ」と呼ばれる微細な光沢ムラは、品質上問題となる。
【0004】
面感に影響を及ぼす要因としては、コート原紙の平滑度、吸水性、地合ムラ等や、ブレード条件、塗工量等の塗工条件、乾燥条件、塗工層表面の顔料配向ムラ等が挙げられる。例えば、省力、省スペースの観点から乾燥ゾーンの長さをできる限り短くする場合、急激な乾燥を行う必要があるが、その結果、塗工直後の塗工層において、バインダー成分(澱粉、ラテックス)のマイグレーションが大きく、原紙層への浸透が不均一になり、印刷ムラ、すなわりモットリング(単色ベタ印刷部の光沢ムラ)やトラッピングムラ(重ね刷り時の印刷ムラ)が増加する問題が生じる。また、塗工液濃度が高すぎる場合、塗工液の流動性が悪化し、スタラグマイト(ブレードの刃先に発生する乾燥した鍾乳石状の塗工液組成物の凝集物)等が発生するため、塗工液濃度をある程度低くする必要があるが、濃度が低すぎる場合にも上記のようなムラの問題が生じることが知られている。一方で、スタラグマイトが生じない領域においても、塗工液濃度が高いとブレード圧を高くする必要があるが、高いブレード加圧により塗工面は荒れやすくなる傾向にあり、光沢ムラが酷くなると言われている。
【0005】
これらの光沢ムラ、印刷ムラを改善するために、種々の検討がなされてきた。例えば、原紙あるいは塗工紙を加湿、加熱した後高温でソフトカレンダー処理する方法(特許文献1、特許文献2参照)、特定の粒子径を有するラテックス及び特定の還元末端基量、分子量を有するデンプンを使用する方法(特許文献3参照)、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化反応により製造された米粒状または紡錘状の軽質炭酸カルシウムを使用する方法(特許文献4参照)により、光沢ムラを改善することが開示されている。また、板状の形状を有するカオリンは、炭酸カルシウムに比べて顔料の配向性が高いために、配向ムラに起因する微小光沢ムラが顕著になると考えられており、炭酸カルシウムを65重量%以上配合する塗料を塗工することにより、カレンダー処理後の微小光沢ムラを低減する方法も提案されている。(特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、上記のような従来の方法では、高白紙光沢度で、微小光沢ムラが非常に少なく、非常に面感の優れた印刷用塗工紙を得ることは困難であった。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−370298号公報
【特許文献2】
特開平4−361695号公報
【特許文献3】
特開平9−77862号公報
【特許文献4】
特開平11−107193号公報
【特許文献5】
特開平9−228298号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この様な状況に鑑みて、本発明の課題は、高白紙光沢度で、塗工紙表面の微小な光沢むらが非常に少なく、従来にない面感を有した印刷用塗工紙を提供することにある。
【0009】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成した塗工紙において、フィルム転写塗工方式で第一層目の塗工層を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、第三層を形成し、第三層目の塗工層が顔料として平均粒子径が0.35μm以上0.55μm以下、好ましくは0.40μm以上0.55μm以下の炭酸カルシウムを含有することにより、白紙光沢度が高く、塗工紙表面の微小な光沢むらが極めて少なく、従来にない面感を有した印刷用塗工紙を得ることができ、本発明を成すに至った。
【0010】
本発明においては、原紙上にフィルム塗工方式で第1層設けた後、ブレード塗工方式で第2層を設けた上に、0.35〜0.55μmの小粒子径の炭酸カルシウムを含む塗工層を、形成することが重要である。例えば、トータルの塗工量が同一で、原紙上に第1層にフィルム塗工を設けた後、上記の0.35〜0.55μmの小粒子径の炭酸カルシウムを含む塗工層を第2層として設けたのみの場合には、白紙光沢度も高くなく、微小光沢むらも劣っていた。
【0011】
本発明において、白紙光沢度が高く、微小光沢むらが極めて少なく、良好な面感が得られる理由は以下のように考えられる。
【0012】
フィルム転写塗工方式は、ロール上に形成させた塗料膜を塗工原紙に転写させるため、原紙表面の凹凸を被覆する塗工層の厚さが均一である。一方で、ブレード塗工方式は過剰量の塗料を原紙に塗布した後に目標の塗工量が得られるようブレードで掻き落すため、塗工後の表面の平滑性はフィルム転写塗工方式と比較して高いが、原紙表面の凹凸を埋めるため、塗工層の厚さは不均一になる。原紙上に塗工された塗料は原紙への脱水、および塗料表面からの水の蒸発により乾燥されるが、その際、塗工層の厚さが不均一であれば乾燥までの水の移動も不均一になるため、不均一なバインダーマイグレーションの発生により塗工層表面の吸水性や塗工層の可塑性も不均一な塗工紙が得られる。
【0013】
また、第一層目の塗工層を塗工・乾燥する際、原紙に脱水される水により原紙が膨潤し平滑性が低下する。ブレード塗工方式で第一層目を形成させた場合、塗工層厚が不均一なため原紙に脱水される水の量も部分的に異なり、局所的に膨潤の大きい、平滑性の低い原紙となってしまう。これに対してフィルム転写塗工方式では塗工層の膜厚が均一であるため、原紙の膨潤の程度も相対的に均一となる。このため、第一層目をフィルム転写塗工方式にし、第二層目をブレード塗工方式にすることで、第三層目を塗工する前の段階で、原紙の吸水性、可塑性の局所的なむらが少なく、原紙の膨潤による平滑性の低下が少ない原紙が得られることが、白紙光沢度が高く、また微小光沢むらが少ない良好な面考えられる理由と考えられた。
【0014】
また、塗工層に配合する顔料については、主に炭酸カルシウムとカオリン、クレーが使用される。板状の形状を有するカオリンは、不定形の炭酸カルシウムに比べて塗工紙の光沢発現性が高いため、白紙光沢度の高い塗工紙を製造する上で多用されるが、一方で顔料の配向性が高いために、配向むらに起因する微小光沢むらが顕著になると思われる。そのため、本発明で目標としたような、白紙光沢度が高く、かつ微小光沢むらが少ない白紙面感の良好な塗工紙を製造する上では、カオリンに匹敵する光沢発現性の高い炭酸カルシウムを配合することが必要となる。0.35〜0.55μmの小粒子径の炭酸カルシウムを第三層目の塗工層に配合することで、従来のフィルム転写・ブレードダブル塗工やブレード・ブレードダブル塗工において第二層目に同様な小粒子径の炭酸カルシウムを配合した場合と比較して白紙光沢度の発現性が高く、また前述の原紙平滑性が高いという両者の相互作用により、従来の塗工紙に無い高い白紙光沢度と、微小光沢むらが非常に少なく良好な白紙面感を両立することが可能となったものと考えられた。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明においては、原紙上に顔料と接着剤を含む塗工層を3層設けることにより、印刷用塗工紙を得るものである。
【0016】
原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工層である第1層は、フィルム塗工方式で塗工し、第2層はブレード塗工方式で設ける。
【0017】
本発明の第1、2層の塗工層に使用する顔料は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、プラスチックピグメント等を単独あるいは併用しても良い。本発明においては、微小光沢むらを抑制し、面感を向上させるために、第2層の顔料として、0.45〜1.5μmの炭酸カルシウムを顔料100重量部あたり50重量部以上含有することが好ましく、より好ましくは80重量部以上である。
【0018】
本発明の第1、2層の塗工層に使用する接着剤としては、スチレン/ブタジエン系、スチレン/アクリル系、エチレン/酢酸ビニル系、ブタジエン/メチルメタクリレート系、酢酸ビニル/ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、顔料100重量部当たり5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部の範囲で使用される。
【0019】
また、本発明においては第1、2塗工層を形成するために、塗工する為の塗工液には顔料と接着剤と共に、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、滑剤など、通常の塗工紙用塗料に配合される各種助剤が適宜使用できる。
【0020】
塗工層の塗工量としては、第1層は、原紙の片面当たり2〜8g/m2を塗工することが好ましい。第一層目の塗工量が2g/m2未満の場合、目標とするような原紙の平滑性向上および吸水性の低下効果が得られないため、最終的な塗工紙で表面性が良好にならない。第一層目の塗工量が8g/m2を超える場合、塗工制御が難しい場合があり幅方向の塗工量むらが不均一になるため良好な白紙面感を得にくい。また第2層の塗工量は、良好な表面性を得るために片面あたり5〜10g/m2が好ましい。
【0021】
原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工層を2層設けた塗工紙は、更にブレード塗工方式で第3層の塗工層を設ける。
【0022】
本発明の第3層の塗工層に使用する顔料は、0.35μm以上0.55μm以下、好ましくは0.40μm以上0.55μm以下の炭酸カルシウム含有することが重要である。特にこのような小粒径の炭酸カルシウムを使用することにより、微小光沢むらが極めて向上し、白紙光沢度が高くなる。0.35μm未満では、操業性に劣ってしまう。0.55μmを超えると白紙光沢度が低く、微小光沢むらが改善しない。本発明の効果をより発揮させるためには、上記炭酸カルシウムを顔料100重量部当たり、50重量以上含有することが好ましく、より好ましくは80重慮部以上である。その他の顔料としては、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、プラスチックピグメントを併用しても良い。
【0023】
本発明の第3層の塗工層に使用する接着剤としては、第1、2層と同様にスチレン/ブタジエン系、スチレン/アクリル系、エチレン/酢酸ビニル系、ブタジエン/メチルメタクリレート系、酢酸ビニル/ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、単独もしくは複数の混合で塗料に配合することが可能で、顔料100重量部当たり、フィルム転写塗工用塗料の場合4〜40重量部、ブレード塗工用塗料の場合6〜30部使用ことが好ましく、より好ましくはフィルム転写塗工用塗料で6〜35重量部、ブレード塗工用塗料の場合の範囲10〜20重量部で使用される。
【0024】
また、第3塗工層を形成するために、塗工する為の塗工液には顔料と接着剤と共に、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、滑剤など、通常の塗工紙用塗料に配合される各種助剤が適宜使用でき、第3層目の塗工量は、高白紙光沢度で白紙面感を良好するためには片面当たり7〜14g/m2が好ましい。
【0025】
本発明において原紙に配合されるパルプの種類等は特に限定されない。広葉樹クラフトパルプ(以下、LBKPとする)、針葉樹クラフトパルプ(以下、NBKPとする)等の化学パルプを主体とするが、目的とする白色度が得られる範囲内でサーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、古紙パルプ等およびそれを漂白したものを配合することが可能である。原紙に内添する填料は、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、水和珪酸、ホワイトカーボン、酸化チタン、合成樹脂填料など、一般に製紙用途として用いられている公知の填料の何れも使用できる。さらに必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、着色顔料、染料、消泡剤などを含有してもよい。
【0026】
原紙の抄紙方法については特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、丸網マシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙方式で抄紙した原紙のいずれであってもよく、勿論、メカニカルパルプを含む中質原紙および回収古紙パルプを含む原紙も、目的とする白色度が得られる範囲内で使用できる。原紙としては、坪量により本発明の効果が変わるものではないが、一般の印刷用塗工紙に用いられる坪量30から200g/m2の原紙が用いられる。
【0027】
本発明において、第1層の塗工層を設けるためのフィルム転写塗工方式としては、ゲートロールコーター、トランスファーロールコーター等の、ロールでメタリングした塗膜をロールに転写する方式の他、シムサイザー、JFサイザー等のロッドもしくはブレードでメタリングした塗膜をロールに転写する方式も使用可能である。フィルム転写塗工は一般的にはマシンのサイズプレス部で、従来クリアーコートしていた塗工部を顔料塗工に転用する事が一般的であるが、コーターにフィルム転写方式の塗工部を組み込んで使用しても、本発明で得られる効果を何ら変えることはない。フィルム塗工方式を用いて原紙に第1層の塗工層を設けた下塗り塗工原紙は、キャレンダーにて平滑化処理を施すことも可能である。平滑化処理方法としては、金属ロールだけからなるキャレンダーの他に、金属ロールと樹脂ロールからなるキャレンダーも使用可能である。 本発明において、第2層、第3層を設けるためのブレード塗工方式としては、フラデドニップ方式、ジェットファウンテン方式、バリドウェルタイムファウンテン方式、ショートドウェルタイムアプリケーション方式等、塗料を原紙にアプリケートした後にブレードでメタリングする方式であればどのような塗工方式も問題なく使用できるが、バリドウェルタイムファウンテン方式は塗料の保水性、濃度に応じてドウェルタイムを変更することで、ブレードでのメタリング時に流動性を最適化できるため望ましい。本発明においては、トータルの塗工量が、原紙片面当たり12〜40g/m2の時に本発明の効果がより発揮され、更に好ましくは12〜25g/m2である。
原紙に三層の塗工層を形成した塗工紙は、次にカレンダー処理する。本発明に使用できるカレンダーは、金属ロールとコットンロールからなるスーパーカレンダーや、金属ロールと樹脂ロールからなるソフトカレンダーを、単段もしくは多段に組み合わせた形であれば何れも使用できる。特に、坪量の低い薄物塗工紙においては不透明度の確保が重要であり、高温でソフトカレンダー処理する方が低密度で不透明度が高い塗工紙が得られるので好ましい。本発明において、微小光沢むらの向上のために、塗工紙の白色度を83.0%以上にすることが好ましい。
【0028】
以上のように、原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成した塗工紙の製造方法において、フィルム転写塗工方式で第一層目を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、及び小粒径の炭酸カルシウムを含有する第三層を形成することにより、白紙光沢度が高く、印刷物の非画線部、画線部の微小な光沢むらが極めて少なく、面感に優れた印刷用塗工紙が得られる。本発明においては、白紙光沢度が70%以上、好ましくは75〜90%の時に微小光沢むらを抑える効果がより顕著になるものである。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。尚、特に断らない限り、例中の部、および%はそれぞれ、重量部および重量%を示す。選られた印刷用塗工紙について、以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
<評価方法>
(顔料の平均粒子径) レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名:マスターサイザーS)を用いて、体積累積分布の50%点を平均粒子径として測定した。
(顔料のハンター白色度) 分散液で供給される顔料はあらかじめ乾燥機にて水分を蒸発させた後、得られる顔料固形物を乳鉢で粗粉砕した。粉体で供給される顔料および粗粉砕した顔料固形物は、ミル粉砕器(柴田科学器械工業(株)製、機器名:小型粉砕器SCM−40A)を用いて粉砕し、それを加圧成形して得られる顔料プレートのハンター白色度を、JIS P−8122に従い測定した。
(坪量) JIS P 8124:1998に従った。
(紙厚、密度) JIS P 8118:1998に従った。
(クラークこわさ) JIS P 8143:1996に従った。
(白紙光沢度) JIS P 8142:1998に従った。
(塗工紙の白色度) JIS P−8122に従った。
(印刷光沢度) RI−II型印刷試験機を用い、東洋インキ製造株式会社製枚葉プロセスインキ(商品名TKハイエコー紅 MZ)を0.30cc使用して印刷を行い、一昼夜放置後、得られた印刷物の表面をJIS P 8142:1998に従って測定した。
(光沢度の標準偏差) 特開平4−124440号公報に準じて作製されたScanning Micro Glossmeter(島津製作所製)を用いて光沢度を測定し、標準偏差を求めた値である。測定条件は、波長220nm、スポット径0.4mm、入射角75度として、CD方向(試料長さ102mm中の156点照射測定)の5箇所を測定し、標準偏差を求めた。本発明においては、光沢度の標準偏差の数値が0.8%以下の時が、微小光沢むらが極めて少なく面感が優れる。
[実施例1]
製紙用パルプとして化学パルプを100重量部、填料として軽質炭酸カルシウムを10重量部含有する坪量65g/m2の原紙に、顔料として重質炭酸カルシウムA(平均粒子径:1.00μm)が100重量部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1重量部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを5重量部、燐酸エステル化澱粉を20重量部加え、さらに水を加えて40重量%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり3g/m2となるように、塗工速度1000m/分のフィルムトランスファーロールコーターで両面塗工(以下、「アンダー塗工」と表記する)を行った。これをアンダー塗工原紙として、さらに、顔料として重質炭酸カルシウムAが100重量部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1重量部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを5重量部、リン酸エステル化澱粉を10重量部加え、さらに水を加えて62重量%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり7g/m2となるように、塗工速度1000m/分のブレードコーターで両面塗工(以下、「プレ塗工」と表記する)を行った。これに引き続き、顔料として重質炭酸カルシウムB(平均粒子径:0.49μm)が80重量部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が20重量部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1重量部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを14重量部、リン酸エステル化澱粉を4重量部加え、さらに水を加えて65重量%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり10g/m2となるように、塗工速度1000m/分のブレードコーターで両面塗工(以下、「トップ塗工」と表記する)を行った。得られた塗工紙を金属ロールとコットンロールからなる12段のスーパーカレンダー(クライネウエファーズ製)を用いて、処理速度600m/min、処理線圧200kg/cm、金属ロール表面温度65℃の条件で処理し、印刷用塗工紙を得た。
[実施例2]
顔料として重質炭酸カルシウムC(平均粒子径:0.47μm)が80重量部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が20重量部からなる顔料を配合した塗料でトップ塗工を実施した以外は、実施例1と同様な方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]
顔料として重質炭酸カルシウムB(平均粒子径:0.49μm)が40重量部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が60重量部からなる顔料を配合した塗料でトップ塗工を実施した以外は、実施例1と同様な方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例1]
フィルムトランスファーロールコーターによるアンダー塗工を行わず、またブレードコーターでのプレ塗工の塗工量を10g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
フィルムトランスファーロールコーターによるアンダー塗工を3g/m2でプレ塗工なしで、ブレードコーターでのトップ塗工の塗工量を17g/m2とした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
顔料として重質炭酸カルシウムA(平均粒子径:1.00μm)が80重量部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が20重量部からなる顔料を配合した塗料でトップ塗工を実施した以外は、実施例1と同様な方法で印刷用塗工紙を得た。
上記条件で製造した印刷用塗工紙において、塗工紙の坪量、密度、白紙光沢度、印刷光沢度、白紙表面の微小光沢標準偏差を評価し、結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
表1から明らかなように、実施例で得られる印刷用塗工紙は、高白色度で白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙表面の微小な光沢むらが極めて少ない印刷用塗工紙を得ることができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、高白色度で白紙光沢度が高く、白紙表面の微小な光沢むらが極めて少ない印刷用塗工紙を得ることができる。
Claims (2)
- 原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成したオフセット印刷用塗工紙において、フィルム転写塗工方式で第一層目の塗工層を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、第三層を形成した印刷用塗工紙であって、第三層目の塗工層の顔料として平均粒子径が0.35μm以上0.55μm以下の炭酸カルシウムを含有することを特徴とする印刷用塗工紙。
- 前記平均粒子径が0.35μm以上0.55μm以下の炭酸カルシウムの含有量が顔料100重量部当たり50重量部以上であること特徴とする請求項1に記載の印刷用塗工紙。
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