JP4266829B2 - 印刷用塗工紙の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、フィルム転写方式で塗工し、優れた印刷適性を備えた印刷用塗工紙の製造方法及びその塗工紙に関するものである。
近年、オフセット印刷用塗工紙やグラビア印刷用塗工紙などの印刷物に対し、写真や図案を多用し、更にカラー化するなどにより、視覚的に内容を強力に伝達しようとする(以下視覚化という)強い要望がある。一方、低コストで効率的に塗工紙を製造するために、抄紙機と塗工機が一体化したオンマシンコーターが幅広く用いられている。オンマシンコータの塗工方式には、主としてフィルム転写方式とブレード塗工方式が用いられている。フィルム転写方式は、計量されたアプリケーターロール上の塗工液を原紙に転写する方式であり、塗工時に原紙にかかる負荷がブレード塗工方式と比較して相対的に小さいため、操業時の断紙トラブル等が少ないという利点がある。しかし、フィルム転写塗工は、アプリケータロール上の塗工液が原紙へ転写する際の転写性に限界があるため、ブレード塗工と比較して高塗工量を得ることが困難であること、原紙に転写されない塗工液が塗工時に飛散すること(以下ミストという)が問題となっている。視覚化に適するグレードのオフセット印刷用塗工紙等を製造するためには、一般的に塗工量を多くする必要がある。しかし、フィルム転写塗工で高塗工量を得ることは困難であり、視覚化と効率化を同時に達成することは現状では困難である。
このような状況に鑑みて、本発明の課題は、フィルム転写方式で塗工した際の塗工適性が良好であり、オフセット印刷やグラビア印刷などの優れた印刷適性を備えた印刷用塗工紙の製造方法およびその塗工紙を提供することにある。
本発明の塗工液に用いられる顔料としては、特に制限はなく、発明の目的を損なわない範囲で複数の顔料を併用することができる。顔料としては、塗工紙用に従来から用いられている、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料であり、これらの顔料は必要に応じて単独または2種類以上併用して使用できる。好ましくは、印刷適正を向上させるために、カオリンを顔料100重量部当たり75重量部以上配合することが好ましい。
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、勿論これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ重量%を示す。尚、塗工液および得られた印刷用塗工紙について以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
〈評価方法〉
(1)白紙光沢度:JIS P 8142に基づいて測定した。
(2a)オフセット印刷用塗工紙の印刷光沢度: 東芝オフセット輪転機(4色)を用いて、B縦サイズの版とオフセット印刷用インキ(東洋インキ製 レオエコーM)を用いて印刷速度500rpmで印刷し、得られた印刷物(4色ベタ印刷部)の表面をJIS P 8142に基づいて測定した。
(2b)グラビア印刷用塗工紙の印刷光沢度: 大蔵省式グラビア単色印刷機を用いて、印刷速度40m/min、印圧10kgf/cmで印刷し、得られた印刷物の表面をJIS P 8142に基づいて測定した。
(3)インキ着肉性:東芝オフセット輪転機(4色)を用いて、B縦サイズの版とオフセット印刷用インキ(東洋インキ製 レオエコーM)を用いて印刷速度500rpmで印刷し、得られた印刷物(藍単色ベタ印刷部)のインキ着肉性を4段階で目視評価した。◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題有り、×:問題有り
(4)ミスト発生量:フィルム転写塗工時のミスト発生量を、特開平11−333353号公報に基づいて測定し、以下の基準で評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
(5)塗工液転写性:フィルム転写塗工における塗工液の転写性を、塗工アプリケーションへの塗工液供給量と塗工量の関係から測定し、以下の基準で評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
(6)ボイリング:トランスファーロールコーターのインナーロールとアウターロール間におけるボイリングの程度を、以下の基準で目視評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
(7)耐ブリスター性:オフセット輪転印刷の4色重ね印刷部(インキ濃度:墨1.80、藍1.50、紅1.45、黄1.05、X−Rite社製、X−Rite 408で測定)でブリスターが発生した温度を指標として評価した。
(8)網点欠落(ミスドット)率:上記したグラビア単色印刷方式により印刷された塗工紙の網点欠落率は、目視により評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
オフセット印刷用塗工紙に関する実施例及び比較例
[実施例1]
微粒クレー(IMERYS社製DB−GRAZE)26部、一級クレー(IMERYS社製DB−PRIME)26部、二級クレー(J.M.HUBER社製HS−H)26部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)22部からなる顔料に、分散剤として対顔料でポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加して、セリエミキサーで分散し、固形分濃度が70%の顔料スラリーを調整した。このようにして得られた顔料スラリーにスチレンブタジエンラテックス(ガラス転移温度20℃)16部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉4部、PVA(クラレ社製PVA117)を0.5部加え、さらに水を加えて固形分濃度60%の塗工液を得た。坪量62g/m2の中質紙に片面あたりの塗工量が、固形分で12.0g/m2になるように、1200m/分の塗工速度のトランスファーロールコーターで両面塗工を行い、紙水分が5.5%になるように乾燥した。トランスファーロールコーターのアプリケーターロール:インナーロール:アウターロールの周速比は100:70:70と一定、各ロール間の圧力も一定とし、塗工量は塗工液濃度を変更することにより調整した。
[実施例2]
実施例1において、片面あたりの塗工量を固形分で14g/m2になるように両面塗工を行った以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]
実施例1において、片面あたりの塗工量を固形分で7.5g/m2になるように両面塗工を行なった以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例4]
実施例1において、PVAの配合量を1.5部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例5]
実施例1において、片面あたりの塗工量を固形分で6.5g/m2になるように両面塗工を行なった以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例6]
実施例1において、顔料配合を一級クレー(IMERYS社製DB−PRIME)25部、二級クレー(J.M.HUBER社製HS−H)25部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)25部、粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−75)25部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例1]
実施例1において、PVAの配合量を0.05部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
実施例1において、PVAの配合量を2.5部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
微粒クレー(IMERYS社製DB−GRAZE)26部、一級クレー(IMERYS社製DB−PRIME)26部、二級クレー(J.M.HUBER社製HS−H)26部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)22部からなる顔料に、分散剤として対顔料でポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加して、セリエミキサーで分散し、固形分濃度が70%の顔料スラリーを調整した。このようにして得られた顔料スラリーにスチレンブタジエンラテックス(ガラス転移温度20℃)16部、PVA(クラレ社製PVA117)を0.5部加え、さらに水を加えて固形分濃度60%の塗工液を得た。坪量62g/m2の中質紙に片面あたりの塗工量が、固形分で12.0g/m2になるように、1200m/分の塗工速度のトランスファーロールコーターで両面塗工を行い、紙水分が5.5%になるように乾燥した。トランスファーロールコーターのアプリケーターロール:インナーロール:アウターロールの周速比は100:70:70と一定、各ロール間の圧力も一定とし、塗工量は塗工液濃度を変更することにより調整した。
[実施例7]
実施例6において、片面あたりの塗工量を固形分で14g/m2になるように両面塗工を行なった以外は実施例6と同様の方法でオフセット輪転印刷用塗工紙を得た。
[実施例8]
実施例6において、片面あたりの塗工量を固形分で7.5g/m2になるように両面塗工を行なった以外は実施例6と同様の方法でオフセット輪転印刷用塗工紙を得た。
[実施例9]
実施例6において、PVAの配合量を1.5部に変更した以外は実施例6と同様の方法でオフセット輪転印刷用塗工紙を得た。
[実施例10]
実施例6において、片面あたりの塗工量を固形分で6.5g/m2になるように両面塗工を行なった以外は実施例6と同様の方法でオフセット輪転印刷用塗工紙を得た。
[実施例11]
実施例6において、接着剤の配合量をスチレンブタジエンラテックス(ガラス転移温度20℃)15部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉1.5部に変更した以外は実施例6と同様の方法でオフセット輪転印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
実施例6において、PVAの配合量を0.05部に変更した以外は実施例6と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例4]
実施例6において、PVAの配合量を2.5部に変更した以外は実施例6と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例5]
実施例6において、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉4部を追加した以外は実施例6と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例11]
微粒クレー(IMERYS社製DB−GRAZE)26部、一級クレー(IMERYS社製DB−PRIME)26部、二級クレー(J.M.HUBER社製HS−H)26部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)22部からなる顔料に、分散剤として対顔料でポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加して、セリエミキサーで分散し、固形分濃度が70%の顔料スラリーを調整した。このようにして得られた顔料スラリーにスチレンブタジエンラテックス(ガラス転移温度−10℃)8部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉1部、PVA(クラレ社製PVA117)を0.5部加え、さらに水を加えて固形分濃度60%の塗工液を得た。坪量62g/m2の中質紙に片面あたりの塗工量が、固形分で12.0g/m2になるように、1200m/分の塗工速度のトランスファーロールコーターで両面塗工を行い、紙水分が5.5%になるように乾燥した。トランスファーロールコーターのアプリケーターロール:インナーロール:アウターロールの周速比は100:70:70と一定、各ロール間の圧力も一定とし、塗工量は塗工液濃度を変更することにより調整した。
[実施例12]
実施例11において、片面あたりの塗工量を固形分で14g/m2になるように両面塗工を行なった以外は実施例11と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
[実施例13]
実施例11において、片面あたりの塗工量を固形分で7.5g/m2になるように両面塗工を行なった以外は実施例11と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
[実施例14]
実施例11において、PVAの配合量を1.5部に変更した以外は実施例11と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
[実施例15]
実施例11において、片面あたりの塗工量を固形分で6.5g/m2になるように両面塗工を行なった以外は実施例11と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
[実施例16]
実施例11において、顔料配合を一級クレー(IMERYS社製DB−PRIME)25部、二級クレー(J.M.HUBER社製HS−H)25部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)25部、粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−75)25部に変更した以外は実施例11と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
[比較例6]
実施例11において、PVAの配合量を0.05部に変更した以外は実施例11と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
[比較例7]
実施例11において、PVAの配合量を2.5部に変更した以外は実施例11と同様の方法でグラビア印刷用塗工紙を得た。
本発明により、フィルム転写方式で塗工した際の塗工適性が良好であり、、インキ着肉性等が良好で、耐ブリスター性に優れ(オフセット輪転印刷用塗工紙の場合)、網点欠落率が低く(グラビア印刷用塗工紙の場合)、優れた印刷適性を備えオフセット印刷用塗工紙及びグラビア印刷用塗工紙などの印刷用塗工紙を効率よく得ることができる。
Claims (4)
- 原紙上の顔料および接着剤を含有する塗工液を塗工するオフセット印刷用塗工紙の製造方法において、顔料100重量部に対して助剤としてポリビニルアルコール(PVA)を0.1重量部以上2.0重量部未満、接着剤として澱粉を0重量部を超えて2.0重量部未満含有した塗工液を、フィルム転写方式で塗工することを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙の製造方法。
- 顔料100重量部に対して、接着剤の配合量が18重量部以下であることを特徴とする請求項1記載のオフセット輪転印刷用塗工紙の製造方法。
- 原紙上の片面当たりの塗工量が7g/m2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット印刷用輪転塗工紙の製造方法。
- フィルム転写方式の塗工において、トランスファーロールコーターを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオフセット輪転印刷用塗工紙の製造方法。
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