JP4918746B2 - オフセット印刷用塗工紙の製造方法及び塗工紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム転写方式で塗工し、優れた印刷適性を備えたオフセット印刷用塗工紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷物に対し、写真や図案を多用し、更にカラー化するなどにより、視覚的に内容を強力に伝達しようとする(以下視覚化という)強い要望がある。一方、低コストで効率的に塗工紙を製造するために、抄紙機と塗工機が一体化したオンマシンコーターが幅広く用いられている。
【0003】
オンマシンコータの塗工方式には、主としてフィルム転写方式とブレード塗工方式が用いられている。フィルム転写方式は、計量されたアプリケーターロール上の塗工液を原紙に転写する方式であり、塗工時に原紙にかかる負荷がブレード塗工方式と比較して相対的に小さいため、操業時の断紙トラブル等が少ないという利点がある。しかし、フィルム転写塗工の代表的な塗工方式であるゲートロールコーター等では、塗料粘度が高い場合、ボイリング等の操業トラブルが発生するため、ブレード塗工と比較して塗料濃度が低いのが一般的である。塗料濃度が低い場合、塗料は原紙中に浸透しやすく、原紙被覆性を良好にするのは困難である。
【0004】
また、原紙被覆性を良好にするには、塗工量を相対的に多くする手法があるが、フィルム転写塗工は、アプリケータロール上の塗工液が原紙へ転写する際の転写性に限界があるため、ブレード塗工と比較して高塗工量を得ることが困難であること、原紙に転写されない塗工液が塗工時に飛散すること(以下ミストという)が問題となるため、高塗工量化は困難である。
【0005】
このように、視覚化に適するグレードの塗工紙を製造するためには、一般的に原紙被覆性を良好にする必要があるが、フィルム転写塗工で良好な原紙被覆性を得ることは困難であり、視覚化と効率化を同時に達成することは現状では困難である。この傾向は、塗料が浸透しやすい密度が低い原紙を使用した場合、顕著になる。
【0006】
一般に塗工紙は、高光沢塗工紙と艶消し塗工紙に大別される。高光沢塗工紙は、従来高級印刷に用いられていたアート紙、スーパーアート紙、コート紙などであり、印刷仕上がりは白紙光沢も印刷光沢も高いグロス調である。艶消し塗工紙は白紙光沢と印刷光沢によりダル調、マット調がある。マット調は、白紙面、印刷面ともに光沢が低くフラットで落ち着いた感じの印刷物で、ダル調は、白紙光沢度は低いが、印刷光沢度は高いという、グロス調とマット調の中間のものである。マット調は、従来のグロス調に比べて印刷後の文字部が読みやすく、近年需要が増えている。高光沢塗工紙、ダル調塗工紙、マット調塗工紙は印刷前の光沢度に差はあるものの、いずれにおいても、印刷後の光沢度が高いことは重要課題のひとつである。
【0007】
フィルム転写塗工方式を用いて高品質塗工紙を製造する方法のひとつとして、高塗工量にする手法がある。フィルム転写塗工をもちいて高塗工量にする方法のひとつに、アプリケーターロール上の塗工液の原紙への転写性を向上させる方法がある。アプリケーターロール上の塗工液の原紙への転写性を改善する方法として、塗工液の保水性を低くし、アプリケーターロールが原紙に接触する際に、塗工液が原紙へしみ込みやすくする(転写しやすくする)手法がある。しかし、相対的に塗工液の原紙への転写性は良好になるものの、塗工量の絶対量を大きく左右する事は困難であり、高塗工量にし、優れた印刷適性を備えた塗工紙を得るという本来の目的を達成することは困難である。
【0008】
フィルム転写塗工をもちいて高塗工量にする他の手法のひとつとして、アプリケーターロール上の塗工液の絶対量を増やし、原紙へ転写する絶対量を増やす方法がある。しかし、一般的に用いられている塗工液を用いて、アプリケーターロール上の塗工液を増やした場合、原紙への転写率に限界があるため、アプリケータロール上から原紙へ転写する絶対量が増加すると同時に、転写せずにアプリケータロール上に残る絶対量も増加する。転写せずにアプリケータロール上に残った塗工液の一部はミストとなって飛散するめ、転写せずにアプリケータロール上に多量の塗工液が残るということは、ミストの絶対量が増え製造時のトラブルの要因になり、特に高速塗工ほど問題になる。
【0009】
アプリケータロール上の塗工液の絶対量を増やす方法として塗工液濃度を高くする手法が一般的であるが、塗工液濃度を高くした場合、塗工液粘度も同時に高くなる。フィルム転写塗工方式であるトランスファーロールコーターは、アプリケーターロールの外側に配置されているインナーロールと更に外側のアウターロール間のニップ上に塗工液が供給されるコーターである。インナーロールとアウターロールは共に常時回転しているため、塗工液粘度が高い場合塗工液は跳ね上がり(以下ボイリングという)、操業上大きなトラブルとなる。
【0010】
以上のようにフィルム転写塗工は、ブレード塗工と比較して、塗工量を多くすることが難しい。そのため、印刷適性を良好にするためには、低塗工量で原紙被覆性を良好にする必要がある。原紙被覆性を良好にするには、保水性の高い塗工液を用いることが一般的である。しかし、保水性が高い塗工液を用いると、一般的に粘度が高くなる傾向にあり、ボイリング等が発生する問題がある。
【0011】
従来、メタードフィルムトランスファー方式を用いて、特定の式に該当する塗工液を塗工することによって、操業性が良好で印刷適性に優れた印刷用塗工紙等が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、ボイリングなどが発生し、耐ブリスター性が十分でないという問題があった。
【0012】
このように、従来の技術の単なる応用では、フィルム転写方式の塗工を用いた場合、塗工適性が良好であり、印刷適性の優れたオフセット印刷用塗工紙を得ることは困難であった。
【特許文献1】
特開2000−256988号公報
【発明が解決しようとする課題】
このような状況に鑑みて、本発明の課題は、フィルム転写方式で塗工した際の塗工適性が良好であり、優れた印刷適性を備えたオフセット印刷用塗工紙を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について鋭意研究した結果、原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工液を塗工するオフセット印刷用塗工紙の製造方法において、マルバーン社製マスターサイザーSを用いて測定したレーザー法およびマイクロメトリクス社製セディグラフ5100を用いて測定した沈降法で測定した顔料平均粒子径の比(レーザー法/沈降法)が4.0〜8.0の範囲である無機顔料を顔料100重量部当たり50重量部以上含む塗工液を、原紙にフィルム転写方式で塗工することにより、塗工適性が良好で、優れた印刷適性を備えたオフセット印刷用塗工紙を製造することができ、前記課題が解決されることを見いだし本発明を完成した。
【0014】
本発明においては、特に密度が0.3〜0.8g/cm3である原紙を用いた場合、塗工量を減らしても原紙被覆性が良好なため、印刷適性に優れ、塗工適性が良好である。また、顔料100重量部に対してポリビニルアルコール(PVA)を0.1重量部以上2.0重量部未満含有した塗工液を使用した場合、フィルム転写方式で塗工する場合においても高塗工量化が容易であるため、塗料による原紙被覆性を大幅に改善可能になる。塗工適性を良好にするために、接着剤(バインダー)の総量も顔料100重量部に対して、接着剤の配合量が5〜18重量部であることが望ましい。また、本発明のフィルム塗工においては、特にトランスファーロールコーターを用いる場合に、塗工適性の効果が顕著である。
【0015】
【発明実施の形態】
本発明においては、原紙上に、特定形状の無機顔料及び接着剤を含有する塗工液を塗工することが重要である。
【0016】
無機顔料としては、レーザー法および沈降法で測定した顔料粒子径の比(レーザー法/沈降法)が3.0〜10の範囲である無機顔料を使用することが重要である。例えばクレー等の板状顔料の粒径をレーザー法で測定した場合、最も大きな面の粒径を中心に測定される傾向にある。一方、沈降法で顔料の粒径を測定した場合、板状顔料の厚さが沈降する際の抵抗に影響を与えるため、厚さが薄い顔料ほど粒径の測定値がより小さくなる傾向にある。従って、レーザー法および沈降法で測定した顔料粒子径の比(レーザー法/沈降法の値、以下形状指数と略)を測定することにより、顔料の形状を評価することができ、この値が大きい顔料は板状面積に対する厚さが小さいことを意味する。形状指数が3.0未満の場合、顔料形状はよりブロック状に近づき、同塗工量で比較した場合、原紙被覆性は相対的に劣る。形状指数が10を越える場合は、顔料は薄く板状になるが、同体積あたりの比表面積は大きくなり塗料粘度が極めて高くなり、ボイリング等の操業トラブルの要因になる。塗料による原紙被覆性を良好にし、白紙光沢度および印刷光沢度を向上させ、かつ塗工適性を良好にするには、形状指数が3.0〜10の範囲である顔料を用いることが重要である。顔料による原紙被覆性および塗工適性を最適化させるには、形状指数が4.0〜8.0の範囲であることがより好ましい。また、顔料の平均粒子径としては、レーザー法で測定した値が0.5〜8.0μmが好ましく、沈降法で測定した値は、0.2〜2.0μmが好ましい。
【0017】
また、形状指数が3.0〜10の範囲である無機顔料の配合量は、50重量部以上であり、好ましくは70重量部以上である。配合部数が50重量部未満の塗料の場合、原紙にフィルム転写方式で塗工した場合、塗料の多くは原紙内部に浸透し、原紙被覆性を良好にするのは困難である。
【0018】
上記の顔料を使用した場合、白紙光沢度および印刷光沢度が向上し、被覆性に優れる塗工層を得ることができるため、塗工量を減らし、原紙坪量を増やし、更なる低密度化をはかることが可能になる。
【0019】
本発明のレーザー法および沈降法で測定した顔料粒子径の比(レーザー法/沈降法)が3.0〜10の範囲である無機顔料の種類としては、従来から用いられている、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料であり、これらの無機顔料は必要に応じて単独または2種類以上併用して使用でき、好ましくは、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレーである。また、本発明で用いられる形状指数が3.0〜10の範囲外の顔料としては、塗工用顔料として従来から用いられているカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ケイ酸、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料を併用して使用することもできる。
【0020】
本発明において用いる接着剤は塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、あるいはポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体などの通常の塗工紙用接着剤1種以上を適宜選択して使用される。これらの接着剤は顔料100重量部対して5〜50重量部、より好ましくは10〜30重量部程度の範囲で使用される。フィルム塗工における塗工適性を向上させるためには、接着剤の総量を5〜18重量部にすることが好ましく、より好ましくは8〜16重量部である。この範囲が好ましいのは、接着剤の総量が18重量部を越える場合、塗料の粘度は高くなり、ボイリング等の操業トラブルが生じ易く、5重量部未満の場合は、原紙にフィルム転写方式で塗工した際に、十分な表面強度を得難いためである。また、オフセット輪転印刷時の耐ブリスター性を向上させるためには、澱粉の配合量を2重量部未満とすることが好ましい。
【0021】
本発明においては、助剤として塗工用顔料100重量部に対してポリビニルアルコール(PVA)を0.1重量部以上2.0重量部未満含有することが好ましい。PVAを接着剤としてではなく助剤として0.1重量部以上2.0重量部未満配合することにより、塗工液の原紙への転写性が飛躍的に良好になり、白紙光沢度、インキ着肉性に優れ、塗工適性が向上する。また、塗工液の転写性、塗工液粘度のバランスを考慮すると、最も好ましいPVAの配合量は0.1〜1.0重量部である。また、PVAの重合度は、500〜3000ものが好ましい。
【0022】
本発明の塗工液には、助剤としてPVA以外に分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等の通常使用される各種助剤を使用しても良い。また、塗工適性、印刷適性を良好にするために、本発明の塗工液の固形分濃度は、45〜65重量%に調節することが好ましい。塗工液粘度は60rpmで測定したB型粘度が50〜5000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明おいて原紙は、密度が好ましくは0.3〜0.8g/cm3であり、より好ましくは密度が0.3〜0.7g/cm3、更に好ましくは0.3〜0.6g/cm3である。密度が0.3〜0.8g/cm3のものを用いることにより、塗工量を減らしても原紙被覆性が良好なため、インキ着肉性に優れ、更なる低密度化をはかることが可能になる。原紙の密度が0.3g/cm3未満の時は、形状指数が3.0〜10の範囲である無機顔料を顔料100重量部当たり50重量部以上含有した塗料を用いても、塗料の浸透性は大きくなり、塗工適性が劣る傾向にある。
【0024】
原紙を構成するパルプは、化学パルプ、半化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等を用いることできるが、機械パルプを10重量%以上含有させることが好ましい。機械パルプは化学パルプに比べ繊維が剛直なので、機械パルプを配合した原紙は抄紙工程でかかる各種の圧力で紙層が潰れることが少なく、全体として嵩高になるから、原紙内部の空隙量が増し、不透明度が向上し、同時に剛度も大きくなる。機械パルプの中でもグランドパルプは低密度化への寄与が高く好ましく用いることができる。機械パルプの配合量が10重量%未満では、填料やカレンダー条件を最適化しても相対的に不透明度および剛度が劣る。機械パルプは白色度や塗工適正等の点から製紙用パルプの60重量%以下とすることが好ましい。
【0025】
原紙に用いる填料は、無定型シリケート、無定型シリカ、タルク、カオリン、クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができ、配合量は、原紙重量当たり3〜20重量%程度である。これら填料は紙料スラリーの抄紙適性や強度特性を調節する目的で、単独または2種以上を混合使用しても良い。
【0026】
これらの紙料に必要に応じ通常抄紙工程で使用される薬品類、例えば紙力増強剤、サイズ剤、消泡剤、着色剤、嵩高剤、柔軟化剤などを添加し、抄紙する。本発明においては、低密度化のためには、パルプの繊維繊維間結合を阻害する作用を持つ有機化合物である嵩高剤、柔軟化剤を原紙重量当たり0.1〜2.0重量%配合することが好ましい。
【0027】
原紙の抄紙方法については特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、丸網マシン、二者を併用した板紙マシン、ヤンキードライヤマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙方式で抄紙した原紙のいずれであってもよく、勿論、メカニカルパルプを含む中質原紙および回収古紙パルプを含む原紙も使用できる。また、サイズプレス、ビルブレード、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレスを使用して、澱粉、ポリビニルアルコールなどを予備塗工した原紙等も使用可能である。塗工原紙としては、一般の塗工紙に用いられる坪量が25〜400g/m2程度の原紙が適宜用いられ、好ましくは、25〜200g/m2である。
本発明において、調整された塗工液は、トランスファーロールコーター、メタリングサイズプレスに代表されるフィルム転写方式で、一層もしくは二層以上を原紙上に片面づつもしくは両面同時に両面塗工する。片面あたりの塗工量は7g/m2以上であることが好ましく、更に好ましくは10g/m2以上である。片面あたりの塗工量が7g/m2より低い場合、十分な原紙被覆性が得られず、十分なインキ着肉性を得ることは困難である。特に、フィルム転写方式で塗工量を10g/m2以上塗工した場合でもボイリングやミストの発生がなく塗工適性が良好であり、転写性が良好で印刷適性に優れるものである。また、特にトランスファーロールコーターにおいて優れた効果を発揮するものである。トランスファーロールコーターの場合、アプリケーターロールに対するインナーロール及びアウターロールの周速比は、50〜95%が好ましい。本発明において、特に塗工速度が1000m/分以上、より好ましくは1100m/分以上の高速時にミストやボイリングの発生を抑えることができる。
【0028】
湿潤塗工層を乾燥させる手法としては、例えば蒸気過熱シリンダー、加熱熱風エアドライヤー、ガスヒータードライヤー、電気ヒータードライヤー、赤外線ヒータードライヤー、高周波ヒータードライヤー等各種の方法が単独または併用して用いられる。
【0029】
以上の様に塗工乾燥された塗工紙は、カレンダ処理無しまたは、スーパーカレンダー処理、高温ソフトニップカレンダー処理等で平滑化する。本発明の効果は、特に白紙光沢度が10〜70%、坪量が25〜120g/m2のオフセット印刷用塗工紙において優れるものである。
【0030】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、勿論これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ重量%を示す。尚、塗工液および得られたオフセット印刷用塗工紙について以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
〈評価方法〉
(1)形状指数:固形分濃度8%の顔料スラリーを超音波処理し、顔料粒径測定に用いた。レーザー回折・散乱法(Malvern社製MastersizerSを用いて測定)で測定した顔料の平均粒子径の値を、沈降法(Micromeritics社製Sedigraph 5100を用いて測定)で測定した値で除した値を形状指数と定義した。
(2)白紙光沢度:JIS P 8142に基づいて測定した。
(3)印刷光沢度:東芝オフセット輪転機(4色)を用いて、B縦サイズの版とオフセット印刷用インキ(東洋インキ製 レオエコーM)を用いて印刷速度500rpmで印刷し、得られた印刷物(4色ベタ印刷部)の表面をJIS P 8142に基づいて測定した。
(4)インキ着肉性:東芝オフセット輪転機(4色)を用いて、B縦サイズの版とオフセット印刷用インキ(東洋インキ製 レオエコーM)を用いて印刷速度500rpmで印刷し、得られた印刷物(藍単色ベタ印刷部)のインキ着肉性を4段階で目視評価した。◎:非常に優れる、○:優れる、△:やや問題有り、×:問題有り
(5)ミスト発生量:フィルム転写塗工時のミスト発生量を、特開平11−333353号公報に基づいて測定し、以下の基準で評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
(6)塗工液転写性:フィルム転写塗工における塗工液の転写性を、塗工アプリケーションへの塗工液供給量と塗工量の関係から測定し、以下の基準で評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
(7)ボイリング:トランスファーロールコーターのインナーロールとアウターロール間におけるボイリングの程度を、以下の基準で目視評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
[実施例1]
エンジニアードカオリン(イメリス社製 Contour1500, 形状指数4.6)100部からなる無機顔料に、分散剤として対顔料でポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加してセリエミキサーで分散し、固形分濃度が64%の顔料スラリーを調製した。このようにして得られた顔料スラリーにスチレンブタジエンラテックス(ガラス転移温度20℃)16部、PVA(クラレ社製PVA117)を0.5部加え、さらに水を加えて固形分濃度60%の塗工液を得た。
【0031】
製紙用パルプとして広葉樹晒しクラフトパルプ70%、針葉樹サーモメカニカルパルプ30%を用い、内添填料として炭酸カルシウムを原紙重量あたり10%含有し、パルプの繊維間結合を阻害する作用をもつ有機化合物である多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物(花王(株)社製 KB110)を原紙重量あたり0.4%含有した密度が0.58g/cm3である坪量62g/m2の中質紙に、片面あたりの塗工量が、固形分で12.0g/m2になるように、1200m/分の塗工速度のトランスファーロールコーターで両面塗工を行い、紙水分が5.5%になるように乾燥した。トランスファーロールコーターのアプリケーターロール:インナーロール:アウターロールの周速比は100:70:70と一定、各ロール間の圧力も一定とし、塗工量は塗工液濃度を変更することにより調整した。
【0032】
次いで、ロール温度130℃、2ニップ、カレンダー線圧100kg/cm、通紙速度400m/分でソフトニップカレンダー処理を行いオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例2]
無機顔料として、エンジニアードカオリン(イメリス社製 Contour1500, 形状指数4.6)55部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−90,形状指数1.1)45部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]顔料を大粒径カオリン(エンゲルハルド社製 Ultimatte, 形状指数5.8)60部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−90,形状指数1.1)40部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例4]
実施例1において、PVAの配合量を1.5部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例5]
実施例1において、接着剤の配合量をスチレンブタジエンラテックス(ガラス転移温度20℃)15部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉1.5部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例6]
実施例1において、PVAを無配合に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例1]
無機顔料として、エンジニアードカオリン(イメリス社製 Contour1500, 形状指数4.6)45部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−90,形状指数1.1)55部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
無機顔料として、エンジニアードカオリン(イメリス社製 カピムDG, 形状指数2.3)55部、粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製 FMT−75,形状指数1.0)45部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
無機顔料として、カオリン(形状指数11.0)100部に変更した以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
【0033】
以上の結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明により、フィルム転写方式で塗工した際の塗工適性が良好であり、インキ着肉性が良好で、耐ブリスター性等の印刷適性に優れたオフセット印刷用塗工紙を効率よく得ることができる。
Claims (7)
- 原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工液を塗工するオフセット印刷用塗工紙の製造方法において、顔料としてマルバーン社製マスターサイザーSを用いて測定したレーザー法およびマイクロメトリクス社製セディグラフ5100を用いて測定した沈降法で測定した顔料平均粒子径の比(レーザー法/沈降法)が4.0〜8.0の範囲である無機顔料を顔料100重量当たり50重量部以上含む塗工液を、原紙にフィルム転写方式で塗工することを特徴とするオフセット印刷用塗工紙の製造方法。
- 原紙の密度が0.3〜0.8g/cm3であることを特徴とする請求項1記載のオフセット印刷用塗工紙の製造方法。
- 顔料100重量部に対して、助剤としてポリビニルアルコール(PVA)を0.1重量部以上2.0重量部未満含有することを特徴とする請求項1または2記載のオフセット印刷用塗工紙の製造方法。
- 顔料100重量部に対して、接着剤の配合量が5〜18重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工紙の製造方法。
- フィルム転写方式の塗工において、トランスファーロールコーターを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工紙の製造方法。
- 前記無機顔料の平均粒子径が、レーザー法で測定した値が0.5〜8.0μmであり、かつ、沈降法で測定した値が0.2〜2.0μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のオフセット印刷用塗工紙の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法で製造されたことを特徴とするオフセット印刷用塗工紙。
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