JP2004300607A - 印刷用塗工紙及びその製造方法 - Google Patents

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秀昭 二艘木
Kiyoshi Hatakeyama
清 畠山
Yukiko Ohira
由紀子 大平
Jun Makihara
潤 牧原
Hiroichi Morii
博一 森井
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Abstract

【課題】印刷用塗工紙に関し、白紙光沢度が高く、紙厚や剛度が一般の印刷用紙に要求される特性を満たし、塗工紙表面の微小な光沢むらが少なく、印刷物のモトリングが良好な印刷用塗工紙及びその製造方法を提供する。
【解決手段】原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成した塗工紙の製造方法において、フィルム転写塗工方式で第一層目を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、第三層を形成し、第三層目の乾燥に熱風温度が190℃以上270℃未満の熱風を用いた熱風乾燥機を使用することを特徴とする印刷用塗工紙の及びその製造方法。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷用塗工紙に関し、白紙光沢度が高く、白紙面感が良好で、かつ印刷後のモトリングが良好な印刷用塗工紙及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オフセット印刷のデジタル化が進み、CTP等の導入により短時間に低コストでの製版作成が可能となってきた。一方でグラビア印刷については、印刷物の光沢感、重厚感がオフセット印刷に比べて良好であるため、写真集や高級美術印刷などで採用されているが、製版コストが高く小ロットの印刷には不向きである。このため、オフセット印刷でグラビア印刷並の光沢感、重厚感が得られる用紙への要望が非常に高まっている。具体的には、色調の再現性を高めるために白色度が高く、印刷物の高級感を出すために白紙および印刷光沢度が高く、画像の再現性および可読性を高めるために塗工紙表面の微小な光沢むら、所謂「面感」および画線部の着肉むら、所謂「モットリング」が少ないオフセット印刷用塗工紙が求められている。
【0003】
これらの光沢ムラを改善するために、種々の検討がなされてきた。例えば、原紙あるいは塗工紙を加湿、加熱した後高温でソフトカレンダー処理する方法(特許文献1、特許文献2参照)、特定の粒子径を有するラテックス及び特定の還元末端基量、分子量を有するデンプンを使用する方法(特許文献3参照)、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化反応により製造された米粒状または紡錘状の軽質炭酸カルシウムを使用する方法(特許文献4参照)により、光沢ムラを改善することが開示されている。また、板状の形状を有するカオリンは、炭酸カルシウムに比べて顔料の配向性が高いために、配向ムラに起因する微小光沢ムラが顕著になると考えられており、炭酸カルシウムを65重量%以上配合する塗料を塗工することにより、カレンダー処理後の微小光沢ムラを低減する方法も提案されている。(特許文献5参照)。
【0004】
しかしながら、上記のような従来の方法では、高白紙光沢度で、微小光沢ムラが非常に少なく、非常に面感の優れた印刷用塗工紙を得ることは困難であった。
【0005】
一方、印刷後のモットリングについてもコート原紙の平滑度、吸水性、地合ムラ等や、ブレード条件、塗工量等の塗工条件、乾燥条件等が影響すると考えられている。例えば、省力、省スペースの観点から乾燥ゾーンの長さをできる限り短くする場合急激な乾燥を行う必要があるが、その結果、塗工直後の塗工層において、バインダー成分(澱粉、ラテックス)の塗工層表面へのマイグレーションが大きく、原紙層への浸透が不均一になり、印刷ムラ、すなわちモットリング(単色ベタ印刷部の光沢ムラ)が劣る問題が生じる。また、塗工液濃度が高すぎる場合、塗工液の流動性が悪化し、スタラグマイト(ブレードの刃先に発生する乾燥した鍾乳石状の塗工液組成物の凝集物)等が発生するため、塗工液濃度をある程度低くする必要があるが、濃度が低すぎる場合にも上記のようなムラが生じる問題があった。
以上のように高白紙光沢度で、微小光沢ムラが非常に少なく、非常に面感の優れた印刷用塗工紙を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開平4−370298号公報
【特許文献2】特開平4−361695号公報
【特許文献3】特開平9−77862号公報
【特許文献4】特開平11−107193号公報
【特許文献5】特開平9−228298号公報
【発明が解決しようとする課題】
この様な状況に鑑みて、本発明の課題は、白紙光沢度が高く、塗工紙表面の微小な光沢むらおよび印刷物のモトリングが良好な印刷用塗工紙及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【発明を解決するための手段】
本発明者らは、上記の如き困難な状況において鋭意検討を重ねた結果、原紙上にフィルム転写塗工方式で第一層目を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、第三層を順次形成するトリプル塗工方式を採用し、第三層目の塗工後に塗工紙を乾燥する際に、熱風乾燥機に190℃以上270℃未満の加熱空気を使用することで、特に塗工速度が1000m/min以上であっても、白紙光沢度が高く、微小光沢ムラが極めて少なく、モットリングが良好な塗工紙が得られ、その製造方法を見出した。
【0007】
本発明において、白紙光沢度が高く、微小光沢むらが極めて少なく、モットリングが良好な塗工紙が得られる理由は以下のように考えられる。
【0008】
フィルム転写塗工方式は、ロール上に形成させた塗料膜を塗工原紙に転写させるため、原紙表面の凹凸を被覆する塗工層の厚さが均一である。一方で、ブレード塗工方式は過剰量の塗料を原紙に塗布した後に目標の塗料量が得られるようブレードで掻き落すため、塗工後の表面の平滑性はフィルム転写塗工方式と比較して高いが、原紙表面の凹凸を埋めるため、塗工層の厚さは不均一になる。原紙上に塗工された塗料は原紙への脱水、および塗料表面からの水の蒸発により乾燥されるが、その際、塗工層の厚さが不均一であれば乾燥までの水の移動も不均一になるため、不均一なバインダーマイグレーションの発生により塗工層表面の吸水性や塗工層の可塑性も不均一な塗工紙が得られる。
【0009】
また、第一層目の塗工層を塗工・乾燥する際、原紙に脱水される水により原紙が膨潤し平滑性が低下する。ブレード塗工方式で第一層目を形成させた場合、塗工層厚が不均一なため原紙に脱水される水の量も部分的に異なり、局所的に膨潤の大きい、平滑性の低い原紙となってしまう。これに対してフィルム転写塗工方式では塗工層の膜厚が均一であるため、原紙の膨潤の程度も相対的に均一となる。このため、第一層目をフィルム転写塗工方式にし、第二層目をブレード塗工方式にすることで、第三層目を塗工する前の段階で、原紙の吸水性、可塑性の局所的なむらが少なく、原紙の膨潤による平滑性の低下が少ない原紙が得られることが、第三層目の塗工層を塗工した後に、白紙光沢度が高く、また微小光沢むらが少ない良好な面が得られる理由と考えられた。
【0010】
さらに、第三層目を塗工した後の乾燥において、190℃以上270℃未満の加熱空気、好ましくは熱源としてガスバーナーを使用することにより、バインダーマイグレーションを適度に抑止できるため、従来のダブル塗工ではモットリングが劣るような高温度の熱風で乾燥しても、モットリングが非常に良好な塗工紙が得られる。
【0011】
また、本発明においては、塗工層に配合する顔料については、第三層目の塗工層に0.35〜0.55μmの小粒子径の炭酸カルシウムを顔料100重量部当たり50重量部以上配合することで、白紙光沢度が向上し、微小光沢ムラが更に少なくなり、白紙光沢度の標準偏差が0.80以下になる。
【0012】
尚、本発明で用いる平均粒子径は、マルバーン(株)製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定器:マスターサイザーSを用いて、重量累積分布の50%の点を平均粒子径として測定した。平均粒子径の値としては、測定原理の違いから、従来の光透過式粒度分布測定装置に比べ、多くの場合0.1〜0.2μm程度大きな値を示すものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明においては、原紙上に顔料と接着剤を含む塗工層を3層設け、第三層目の塗工後に塗工紙を乾燥する際に、熱風乾燥機に190℃以上270℃未満の加熱空気を使用して印刷用塗工紙を得るものである。
【0014】
原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工層である第1層は、フィルム塗工方式で塗工し、第2層はブレード塗工方式で設ける。
【0015】
本発明の第1、2層の塗工層に使用する顔料は、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、プラスチックピグメント等を単独あるいは併用しても良い。本発明においては、微小光沢むらを抑制し、面感を向上させるために、第2層の顔料として、0.45〜1.5μmの炭酸カルシウムを顔料100重量部あたり50重量部以上含有することが好ましく、より好ましくは80重量部以上である。
【0016】
本発明の第1、2層の塗工層に使用する接着剤としては、スチレン/ブタジエン系、スチレン/アクリル系、エチレン/酢酸ビニル系、ブタジエン/メチルメタクリレート系、酢酸ビニル/ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、顔料100重量部当たり5〜50重量部、より好ましくは10〜40重量部の範囲で使用される。
【0017】
また、本発明においては第1、2塗工層を形成するために、塗工する為の塗工液には顔料と接着剤と共に、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、滑剤など、通常の塗工紙用塗料に配合される各種助剤が適宜使用できる。
【0018】
塗工層の塗工量としては、第1層は、原紙の片面当たり2〜8g/mを塗工することが好ましい。第一層目の塗工量が2g/m2未満の場合、目標とするような原紙の平滑性向上および吸水性の低下効果が得られないため、最終的な塗工紙で表面性が良好にならない。第一層目の塗工量が8g/mを超える場合、塗工制御が難しい場合があり幅方向の塗工量むらが不均一になるため良好な白紙面感を得ることは出来なかった。また第2層の塗工量は、良好な表面性を得るために片面あたり5〜10g/mが好ましい。
【0019】
原紙上に顔料と接着剤を含有する塗工層を2層設けた塗工紙は、更にブレード塗工方式で第3層の塗工層を設ける。
【0020】
本発明の第3層の塗工層に使用する顔料は、好ましくは0.35μm以上0.55μm以下、より好ましくは0.50μm以下の炭酸カルシウム含有することである。更に、塗工層に含まれる顔料100重量部当たりに平均粒子径が0.35μm以上0.55μm未満の炭酸カルシウムを50〜100重量部、平均粒子径が0.35μm以上0.55μm以下のカオリンを0〜50重量部含有することが好ましい。本発明の効果をより発揮させるためには、上記炭酸カルシウムを顔料100重量部当たり、より好ましくは80重量部以上である。その他の顔料としては、カオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、プラスチックピグメントを併用しても良い。
【0021】
本発明の第3層の塗工層に使用する接着剤としては、第1、2層と同様にスチレン/ブタジエン系、スチレン/アクリル系、エチレン/酢酸ビニル系、ブタジエン/メチルメタクリレート系、酢酸ビニル/ブチルアクリレート系等の各種共重合体およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸/メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤は、単独もしくは複数の混合で塗料に配合することが可能で、顔料100重量部当たり、フィルム転写塗工用塗料の場合4〜40重量部、ブレード塗工用塗料の場合6〜30部使用ことが好ましく、より好ましくはフィルム転写塗工用塗料で6〜35重量部、ブレード塗工用塗料の場合の範囲10〜20重量部で使用される。
【0022】
また、第3塗工層を形成するために、塗工する為の塗工液には顔料と接着剤と共に、必要に応じて分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、滑剤など、通常の塗工紙用塗料に配合される各種助剤が適宜使用でき、第3層目の塗工量は、高白紙光沢度で白紙面感を良好するためには片面当たり7〜14g/mが好ましく、より好ましくは、5〜10g/mである。
【0023】
本発明に使用できる熱風乾燥機は、第三層目については熱風の温度が190℃以上270℃未満であり、好ましくは190℃以上240℃未満である。また好ましくはガスバーナーを熱源とする乾燥空気を使用し、対流により用紙に熱エネルギーを投入するエアードライヤー方式であることが有効である。塗工紙に吹き付ける熱風の風圧は10mmAq以上110mmAq以下が好ましい。また、熱風の露点温度は45℃以上55℃以下が好ましい。熱風温度が190℃未満の場合、特に塗工速度が1000m/分以上になると印刷物のモットリングが劣る傾向にある。一方で、熱風温度が270℃以上にすると、蒸発能力が過大になるため、最適な水分蒸発速度にコントロールすることが出来ない。本発明においては、コーターで塗工する際に片面当たりブレードで二度、両面の合計で四度塗工する場合があり、各塗工後の乾燥ゾーンを短くして効率的に乾燥することが好ましい。本発明で規定する乾燥条件で塗工紙を乾燥する事により、1度の塗工において、エアードライヤー方式の熱風乾燥機の乾燥ゾーンを3基以下の短い乾燥ゾーンで、よりモットリング改善の効果を発揮することができる。
【0024】
本発明において原紙に配合されるパルプの種類等は特に限定されない。広葉樹クラフトパルプ(以下、LBKPとする)、針葉樹クラフトパルプ(以下、NBKPとする)等の化学パルプを主体とするが、目的とする白色度が得られる範囲内でサーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、古紙パルプ等およびそれを漂白したものを配合することが可能である。原紙に内添する填料は、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、水和珪酸、ホワイトカーボン、酸化チタン、合成樹脂填料など、一般に製紙用途として用いられている公知の填料の何れも使用できる。さらに必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、着色顔料、染料、消泡剤などを含有してもよい。
【0025】
原紙の抄紙方法については特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、丸網マシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙方式で抄紙した原紙のいずれであってもよく、勿論、メカニカルパルプを含む中質原紙および回収古紙パルプを含む原紙も、目的とする白色度が得られる範囲内で使用できる。原紙としては、坪量により本発明の効果が変わるものではないが、一般の印刷用塗工紙に用いられる坪量30から200g/mの原紙が用いられる。
【0026】
本発明において、第1層の塗工層を設けるためのフィルム転写塗工方式としては、ゲートロールコーター、トランスファーロールコーター等の、ロールでメタリングした塗膜をロールに転写する方式の他、シムサイザー、JFサイザー等のロッドもしくはブレードでメタリングした塗膜をロールに転写する方式も使用可能である。フィルム転写塗工は一般的にはマシンのサイズプレス部で、従来クリアーコートしていた塗工部を顔料塗工に転用する事が一般的であるが、コーターにフィルム転写方式の塗工部を組み込んで使用しても良い。フィルム塗工方式を用いて原紙に第1層の塗工層を設けた下塗り塗工原紙は、キャレンダーにて平滑化処理を施すことも可能である。平滑化処理方法としては、金属ロールだけからなるキャレンダーの他に、金属ロールと樹脂ロールからなるキャレンダーも使用可能である。
本発明において、第2層、第3層を設けるためのブレード塗工方式としては、フラデドニップ方式、ジェットファウンテン方式、バリドウェルタイムファウンテン方式、ショートドウェルタイムアプリケーション方式等、塗料を原紙にアプリケートした後にブレードでメタリングする方式であればどのような塗工方式も問題なく使用できるが、バリドウェルタイムファウンテン方式は塗料の保水性、濃度に応じてドウェルタイムを変更することで、ブレードでのメタリング時に流動性を最適化できるため望ましい。本発明においては、トータルの塗工量が、原紙片面当たり12〜40g/mの時に本発明の効果がより発揮され、更に好ましくは12〜25g/mである。
原紙に三層の塗工層を形成した塗工紙は、次にカレンダー処理する。本発明に使用できるカレンダーは、金属ロールとコットンロールからなるスーパーカレンダーや、金属ロールと樹脂ロールからなるソフトカレンダーを、単段もしくは多段に組み合わせた形であれば何れも使用できる。特に、坪量の低い薄物塗工紙においては不透明度の確保が重要であり、高温でソフトカレンダー処理する方が低密度で不透明度が高い塗工紙が得られるので好ましい。本発明において、微小光沢むらの向上のために、塗工紙の白色度を83.0%以上にすることが好ましい。
【0027】
以上のように、原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成した塗工紙において、フィルム転写塗工方式で第一層目を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、及び好ましくは小粒径の炭酸カルシウムを含有する第三層を形成し、第三層目の塗工後の乾燥に熱源として好ましくはガスバーナーを使用した熱風乾燥機で190℃以上270℃未満の熱風を使用することにより、特に塗工速度が1000m/分以上においても、高白色度でありながら白紙光沢度、印刷光沢度が高く、印刷物の非画線部、画線部の微小な光沢むらが少なく、印刷物のモットリングが良好な印刷用塗工紙が得られる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。尚、特に断らない限り、例中の部、および%はそれぞれ、重量部および重量%を示す。選られた印刷用塗工紙について、以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
<評価方法>
(顔料の平均粒子径) レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名:マスターサイザーS)を用いて、体積累積分布の50%点を平均粒子径として測定した。
(顔料のハンター白色度) 分散液で供給される顔料はあらかじめ乾燥機にて水分を蒸発させた後、得られる顔料固形物を乳鉢で粗粉砕した。粉体で供給される顔料および粗粉砕した顔料固形物は、ミル粉砕器(柴田科学器械工業(株)製、機器名:小型粉砕器SCM−40A)を用いて粉砕し、それを加圧成形して得られる顔料プレートのハンター白色度を、JIS P−8122に従い測定した。(ブレード操業性) 目標塗工速度、および目標塗工量において、ブレード刃先汚れの状況を目視で評価した。刃先汚れが認められない場合を「○」、刃先に塗料が裏回りした場合を「×」とした。
(坪量) JIS P 8124:1998に従った。
(紙厚、密度) JIS P 8118:1998に従った。
(白紙光沢度) JIS P 8142:1998に従った。
(塗工紙の白色度) JIS P−8122に従った。
(印刷光沢度) RI−II型印刷試験機を用い、東洋インキ製造株式会社製枚葉プロセスインキ(商品名TKハイエコー紅 MZ)を0.30cc使用して印刷を行い、一昼夜放置後、得られた印刷物の表面をJIS P 8142:1998に従って測定した。
(光沢度の標準偏差) 特開平4−124440号公報に準じて作製されたScanning Micro Glossmeter(島津製作所製)を用いて光沢度を測定し、標準偏差を求めた値である。測定条件は、波長220nm、スポット径0.4mm、入射角75度として、CD方向(試料長さ102mm中の156点照射測定)の5箇所を測定し、標準偏差を求めた。本発明においては、光沢度の標準偏差の数値が0.8以下の時が、微小光沢むらが少なく面感が優れる。
(印刷物のモトリング) 四色平判印刷機(マンローランド社製R300)を用い、印刷速度8、000枚/hr、印圧15/100mmの条件で、東洋インキ(株)製ハイエコー・Mタックインキを用い、墨→藍→紅→黄の順に四色印刷した。得られた印刷物について、藍紅重ねの50%網点部分の着肉むらを目視で、(優)◎>○>△>×>××(劣)の序列で五段階評価した。
[実施例1]
製紙用パルプとして化学パルプを100部、填料として軽質炭酸カルシウムを10部含有する坪量65g/mの原紙に、顔料として重質炭酸カルシウムA(平均粒子径:1.00μm、白色度:94.3%)が100部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを3部、燐酸エステル化澱粉を30部加え、さらに水を加えて40%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり3g/mとなるように、塗工速度1000m/分のフィルムトランスファーロールコーターで両面塗工(以下、「アンダー塗工」と表記する)を行った。塗工後の塗工紙は蒸気を熱源とするエアードライヤー方式の熱風乾燥機(乾燥ゾーン5基)で熱風温度が170℃、熱風の風圧が100mmAqの条件で乾燥した。これをアンダー塗工原紙として、さらに、顔料として重質炭酸カルシウムAが100部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを5部、リン酸エステル化澱粉を10部加え、さらに水を加えて62%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり7g/mとなるように、塗工速度1000m/分のブレードコーターで両面塗工(以下、「プレ塗工」と表記する)を行った。塗工後の塗工紙は蒸気を熱源とするエアードライヤー方式の熱風乾燥機(乾燥ゾーン3基)で熱風温度が170℃、熱風の風圧が100mmAqの条件で乾燥した。これに引き続き、顔料として重質炭酸カルシウムB(平均粒子径:0.49μm、白色度:94.6%)が80部、カオリンA(平均粒子径:0.49μm、白色度:90.0%)が20部からなる顔料に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.1部、バインダーとしてカルボキシ変性スチレンブタジエンラテックスを14部、リン酸エステル化澱粉を4部加え、さらに水を加えて65%濃度に調整した塗工液を、塗工量が片面あたり10g/mとなるように、塗工速度1000m/分のブレードコーターで両面塗工(以下、「トップ塗工」と表記する)を行った。塗工後の塗工紙はガスバーナーを熱源とするエアードライヤー方式の熱風乾燥機(乾燥ゾーン3基)で熱風温度が200℃、熱風の風圧が70mmAqの条件で乾燥した。得られた塗工紙を金属ロールとコットンロールからなる12段のスーパーカレンダー(クライネウエファーズ製)を用いて、処理速度600m/min、処理線圧200kg/cm、金属ロール表面温度65℃の条件で処理し、印刷用塗工紙を得た。
[実施例2]
トップ塗工後の乾燥の熱風温度を230℃にした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]
トップ塗工後の乾燥の熱風温度を260℃にした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例1]
トップ塗工後の乾燥に蒸気加熱方式の熱風乾燥機で熱風温度が170℃、熱風の風圧が100mmAqの条件で乾燥した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
トップ塗工後の乾燥に、ガス赤外線乾燥装置(マースデン社製、放射長1000mm)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例3]
フィルムトランスファーロールコーターによるアンダー塗工を行わず、またブレードコーターでのプレ塗工の塗工量を10g/m、トップ塗工の塗工量を10g/mとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
[比較例4]
トップ塗工後の乾燥にガスバーナーを熱源とする熱風乾燥機で熱風温度が170℃、熱風の風圧が100mmAqの条件で乾燥した以外は、実施例1と同様の方法で印刷用塗工紙を得た。
【0029】
上記条件で製造した印刷用塗工紙において、ブレードコーターでの操業性、および塗工紙の坪量、紙厚、密度、白紙光沢度、印刷光沢度、白紙表面の微小光沢標準偏差、印刷物のモトリングを評価し、結果を表1に示した。
【0030】
【表1】
Figure 2004300607
表1から明らかなように、実施例で得られる印刷用塗工紙は、高白色度でありながら白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙表面の微小な光沢むらが少なく、印刷物のモトリングが良好な印刷用塗工紙を製造できる事は明らかである。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、高白色度でありながら白紙光沢度、印刷光沢度が高く、白紙表面の微小な光沢むらが少なく、印刷物のモトリングが良好な印刷用塗工紙を、特に塗工速度1,000m/min以上においても問題なく、効率的に製造する事が出来る。

Claims (5)

  1. 原紙上に、顔料および接着剤を含有する塗工層を形成した印刷用塗工紙において、フィルム転写塗工方式で第一層目の塗工層を形成した後に、ブレード塗工方式で第二層、第三層を順次形成し、第三層目塗工後の乾燥に190℃以上270℃未満の加熱空気を使用することを特徴とする印刷用塗工紙。
  2. 加熱空気の熱源として、ガスバーナーを使用することを特徴とする請求項1記載の印刷用塗工紙。
  3. 第三層目の塗工層に含まれる顔料として、平均粒子径が0.35μm以上0.55μm未満の炭酸カルシウムを100重量部当たり50重量部以上含有することを特徴とする請求項1または2記載の印刷用塗工紙。
  4. 塗工紙表面の白紙光沢度の標準偏差が0.80以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷用塗工紙。
  5. 原紙に、顔料及び接着剤を配合する塗工液を塗工する印刷用塗工紙の製造方法において、フィルム転写方式で塗工液を原紙に1度塗工・乾燥した後、その上に、ブレード方式で塗工液を2度塗工した後に、エアードライヤー方式の熱風乾燥機を用いて、乾燥温度が190℃以上270℃未満の加熱空気で乾燥することを特徴とする印刷用塗工紙の製造方法。
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