JP5203770B2 - 印刷用紙の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、微塗工タイプの印刷用紙に関し、特にオフセット印刷などに適する印刷用紙の製造方法に関する。
紙は、新聞、書籍、雑誌、ポスター、カレンダー、パンフレット、包装紙など、ほとんどの場合印刷を施されて使用されており、印刷用紙の種類および特性は、各種印刷方式や用途によって様々である。一例を挙げると、オフセット印刷方式は、版面に親油性の画線部(印刷しようとする部分)と親水性の非画線部とを作り、湿し水と呼ばれる水を薄く塗り、次にインキを塗ると水をはじいた画線部にだけインキが付着するので、これをブランケットに転写し、さらにこのブランケットから紙にインキを転移させる方式である。湿し水を使用するため、水に濡れたときブランケットに付着して紙粉として取られないように、用紙には表面強度が重視される。また、グラビア印刷方式は、版上の凹部にインキを盛り紙に転写する方式であるため、版と紙とが均一に接し網点の抜け(スペックル)が起こらないように、表面に微小な凹凸がなく平滑性が高いことが要求される。
印刷用紙の一種に、スーパーカレンダー紙(通称SC:Super Calendered Paper)と呼ばれるものがあり、欧米では近年、雑誌や宣伝用のチラシ、カタログ等として、オフセット印刷あるいはグラビア印刷等によるカラー印刷に使用されている。このスーパーカレンダー紙は、通常の新聞用紙、印刷用紙などの非塗工紙と軽量塗工紙(通称LWC:Light Weight coat paper)との中間に位置する高品質の非塗工紙であり、非塗工紙でありながら軽量塗工紙並みに光沢性や平滑性に優れた用紙である。スーパーカレンダー紙は白紙光沢度や印刷品質(印刷面感、印刷光沢度、インキ着肉性等)によってだいたい大きく3つに分けられ、例えば目安として、上級グレードでは白紙光沢度が約48%以上、中級グレードでは約33〜48%、下級グレードでは約33%以下程度である。
スーパーカレンダー紙は、軽量でかつ光沢度を高くするために、通常、主原料は紙厚の厚くなりやすいグラウンドパルプやサーモメカニカルパルプ等の機械パルプである。紙は、軽量すなわち低坪量になるほど不透明度が低くなるため、厚さでこれを補うことは1つの方法である。また、填料は光沢度が高くなりやすいカオリンを配合し、抄紙後にスーパーカレンダー処理して製造される。
スーパーカレンダーは、カレンダー処理の方法の1つであり、通常、抄紙された紙を一旦巻き取ってから、改めてカレンダー掛けが別処理として行われるオフラインカレンダー方式である。その上、スーパーカレンダー仕上げの速度は、通常500m/分程度であり、生産効率は低い。交互に鋼と弾性体の多数のロールから構成されるスーパーカレンダーは、線圧180〜450Kgf/cm、ニップ圧140〜300Kgf/cmであり、ロール温度は60〜80℃が一般的である。この処理は、線圧のかかった多数のロール間のニップを通過するために、得られる紙は高い光沢と平滑性を有するが、潰れることは避けられず高い不透明度と高いこし(剛度)を得ることは難しい。
この他のカレンダー処理として、ソフトカレンダーがある。ソフトカレンダーは、例えば特許文献1(特許第3064290号公報)に塗工紙の製造方法として記載されているように、金属ロールと弾性ロールとを組み合わせ、少ないニップ数でカレンダー掛けをする仕上げ方法である。弾性ロールは、スーパーカレンダーと同等もしくはそれ以上の硬度を有する特殊合成樹脂被覆ロールを使用しており、高ニップ圧下で耐熱性、耐摩耗性に優れ、傷が付きにくい特別な素材が用いられる。この方法は、スーパーカレンダーとは異なり、オンラインカレンダーとして使用することができ、生産効率や高い光沢と平滑性に加えてこしも良好なことから、有効なカレンダー処理である。また、特許文献2(特許第3256957号公報)には、同じく塗工紙の製造方法として、4ニップのソフトカレンダー処理を行うことが記載されている。
一方で、紙の技術に関しては、近年の社会的な環境負荷軽減の面から、古紙を原料とした脱墨パルプ(古紙パルプ)の利用が促進されている。また、製造方法の大きな変化として、従来の酸性紙に代わり、保存性に優れる中性紙への移行が進んでいる。中性紙とは、紙の状態でpHが6〜弱アルカリ性のものであり、サイズ剤として中性サイズ剤を使用し、填料は炭酸カルシウムを主体としている。炭酸カルシウムは、従来の酸性紙に用いられていたクレーやタルクに比べて白さが強く、脱墨パルプを配合する特に新聞用紙では、中性抄紙は有効な手段となっている。そして、高い白色度を得るため、また、古紙由来の炭酸カルシウムを有効利用するためなどから、炭酸カルシウムの増量化も進められている。
特許第3064290号公報 特許第3256957号公報
上記のように、海外ではスーパーカレンダー紙が汎用されているが、国内でも最近は、例えばいわゆるフリーペーパーやフリーマガジンと呼ばれる、広告収入を元に対象読者を性別や年齢層に応じて特定した無料の情報誌や各種広告の発行部数が増えており、このような、従来の塗工紙ほど強い光沢や印刷効果は求めないものの、軽量でかつ従来の新聞用紙や印刷用紙などの非塗工紙に比べて印刷品質に優れる用紙に対する要望は、今後ますます高まっていくと予想される。また、カラー化やビジュアル化の進行に伴い、印刷面感への要求も高まると予想される。
そして、スーパーカレンダー紙においても、環境面から脱墨パルプの利用を増やすことが望まれるが、脱墨パルプを高配合とすると白色度が低くなり、また、パルプ繊維の劣化や損傷によって十分な紙厚が得られず、カレンダー処理を行っても紙が潰れにくいため、通常のスーパーカレンダー処理では所望の白紙光沢度を得ることは困難である。所望の白紙光沢度を得るために、カレンダー線圧を極端に高くすると、繊維が破壊されて表面強度が低下することや、幅方向のプロファイルが取れずに巻き姿が悪くなるなどの問題がある。
そこで、本発明は、脱墨パルプを高配合し軽量であるにもかかわらず、不透明度、白紙光沢度、平滑性が高く、印刷適性に優れる印刷用紙の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の印刷用紙の製造方法は、脱墨パルプを50重量%以上配合し、紡錘凝集型軽質炭酸カルシウムまたは針状凝集型軽質炭酸カルシウムの少なくとも1種を填料として配合した紙料を抄紙した紙の上に、無機顔料の1種類または2種類以上併用した顔料と接着剤とを含有する塗工液を片面当たり0.5〜3g/m の塗工量となるように塗工して塗工層を設け、6ニップ以上のホットソフトニップカレンダーで処理し、白紙光沢度が34.8%以上であることを特徴とする。
請求項2に係る発明の印刷用紙の製造方法は、前記填料の配合割合が紙中灰分として10〜35重量%添加することを特徴とする。
請求項3に係る発明の印刷用紙の製造方法は、前記6ニップ以上のホットソフトニップカレンダーで処理する条件が、温度110〜250℃、線圧250〜500kN/mの条件であることを特徴とする。
本発明によれば次の効果が奏される。
(ア)6ニップ以上のホットソフトニップカレンダーで処理することにより、脱墨パルプを高配合して、従来の機械パルプとカオリンを主体としたスーパーカレンダー紙と同等以上の品質を有する印刷用紙を得ることができる。
(イ)オフセット印刷が優れた印刷用紙を得ることができる。
(ウ)脱墨パルプを高配合していながら、白色度が良好な印刷用紙を得ることができる。
(エ)白紙光沢度、平滑性に優れる
(オ)軽量でありながら不透明度が良好である。
1.原紙の製造
本発明では、パルプ、填料、および必要に応じて各種薬品類等を添加して紙料を調製して原紙を製造する。
<パルプ>
本発明では、パルプとして、脱墨パルプ(以下「DIP」ということがある)を50重量%以上配合し、好ましくは70重量%以上配合する。脱墨パルプ以外には、所望の効果を阻害しない範囲で、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒または未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グラウンドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミメカニカルパルプ等)を任意の割合で配合して使用することができる。
<填料>
本発明者らは、種々の填料の光沢度に及ぼす影響について鋭意研究した結果、紡錘凝集(ロゼッタ)型軽質炭酸カルシウムあるいは針状凝集型軽質炭酸カルシウムが、光沢性発現に優れることを見出した。紡錘凝集(ロゼッタ)型軽質炭酸カルシウムや針状軽質炭酸カルシウムを使用した場合は、カオリンや紡錘型、針状、球状、立方体状軽質炭酸カルシウムや重炭酸カルシウムを用いた場合よりも、その特殊な形状によりカレンダー処理前の原紙の嵩が向上し、カレンダー処理の効果が向上するためと考えられる。また、軽質炭酸カルシウムは、生産コストや操業性、および低添加量で高い不透明度が得られる点で優れ、さらに紡錘凝集型または針状凝集型の特殊な形状によりさらに不透明度が向上し好ましい。
紡錘凝集(ロゼッタ)型軽質炭酸カルシウムとは、紡錘形状の軽質炭酸カルシウムの一次粒子が放射状に凝集してロゼッタ型の二次粒子を形成したものであり、製品としてはSpecialty Minerals Inc.社のアルバカーHO、アルバカー5970アルバカーLO等を挙げることができる。ここで、放射状とは、例えば上記二次粒子の中心近傍から、各一次粒子の長手方向が放射状に伸びたものである。
図1は、紡錘凝集型軽質炭酸カルシウム(二次粒子)の形態の一例を示す電子顕微鏡像である。この図において、各一次粒子の基部同士が凝集し、各一次粒子がその先端へ向かって放射状に伸びている。また、各一次粒子は基部の幅(径)がやや大きく、先端に向かって細くなっている。なお、図中のmicronは、μmを示す。紡錘凝集型軽質炭酸カルシウムの粒径は、小さすぎると抄紙機での歩留まりが低下し断紙などの原因になることや不透明度が低下し、一方、大きすぎると平滑性が低下することから、粒径が1.0〜4.0μmのものが望ましい。この粒径は、セディグラフ(マイクロメリテックス社製)で測定した値である。
また、針状凝集型軽質炭酸カルシウムは、例えば特開2000−264628号公報、特開2002−284522号公報等に記載の方法により製造することができ、針状のものが凝集していわゆるイガグリ状の形状を形成しているものである。
図2は、針状凝集型軽質炭酸カルシウム(二次粒子)の形態の一例を示す電子顕微鏡像である。針状凝集型軽質炭酸カルシウム粒径は、一次粒子の短径が0.1〜0.5μm程度であることが好ましい。この範囲は可視光領域の1/2であって光学的性能が高く、紙の不透明度や白色度をより向上させることができる。
填料の配合割合は、少なすぎると光沢発現性が低下し、多すぎると用紙の強度が低下することから、全パルプ重量に対して15〜45重量%添加することが好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。なお、本発明の印刷用紙において、紙中灰分は高いほどカレンダー処理の効果が出やすく、平滑度が高くなるため白紙光沢度が向上し、またスペックル数も低減され望ましい。
本発明において紙中灰分は、10〜35重量%程度が好適であり、より好ましくは15〜28重量%である。紙中灰分に対する紡錘凝集(ロゼッタ)型軽質炭酸カルシウムまたは針状凝集型軽質炭酸カルシウムの割合は50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上であることが好ましい。通常、紙中灰分は新たに添加される填料の他、脱墨パルプ等のパルプによって持ち込まれるものもある。脱墨パルプに由来する灰成分の中では、炭酸カルシウムの割合が多くを占める場合が多いが、脱墨パルプには炭酸カルシウム以外の灰成分も多く含まれており、その割合は脱墨パルプの原料となった新聞古紙、雑誌古紙等の古紙種類や回収状況等によって異なり、品質変動の要因になる。
また、灰成分はトナーや異物を含有し、紙面ダートや紙面欠陥の原因となる場合もある。そのため、脱墨パルプの灰分を填料として利用することも行うが、脱墨パルプ中の灰成分を洗浄工程である程度洗い出し、新たにフレッシュな填料として、上記の紡錘凝集(ロゼッタ)型軽質炭酸カルシウムまたは針状凝集型軽質炭酸カルシウムを添加する。
また、本発明においては、紡錘凝集(ロゼッタ)型軽質炭酸カルシウムや針状凝集型軽質炭酸カルシウム以外に、所望の効果を阻害しない範囲で、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の填料を併用することができる。また、紡錘凝集(ロゼッタ)型軽質炭酸カルシウムと針状凝集型軽質炭酸カルシウムとを併用してもよい。
<添加剤等>
その他必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、着色剤、染料、嵩高剤、消泡剤等を含有してもよい。
<抄紙方法>
本発明の印刷用紙は、紙面pHが6〜弱アルカリである中性紙とすることが好ましく、中性抄紙法では、内添中性サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤等を使用できる。従来のスーパーカレンダー紙は、填料として主にカオリンを用い酸性抄紙法により製造されているが、酸性紙は保存性に劣るなどの問題がある。また、本発明では中性抄紙することにより、DIPを増配することができる。集荷された古紙は通常、アルカリ性の薬品のもとで処理されDIPが製造されるため、酸性抄紙の条件下ではDIPに含まれる炭酸カルシウムのカルシウムイオンが硫酸バンドと反応し石膏(硫酸カルシウム)となって析出する問題があり、酸性抄紙でDIPを多量に使用することは難しい。また、中性抄紙によれば、古紙パルプ由来の炭酸カルシウムを有効利用し省資源化を図ることができる、紙の保存性に優れるなどの利点がある。
<抄紙機>
本発明に使用される抄紙機の型式は特に限定はなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機、円網抄紙機等を適宜使用できるが、特に、ツインワイヤー抄紙機のうち両面から脱水するギャップフォーマー型抄紙機が望ましい。ギャップフォーマー型で抄造することで、填料が紙の表層に分布し、印刷時にインキが表層の填料に保持され紙内部への浸透が抑えられるので、印刷光沢度が高くなる。長網型抄紙機の場合には、填料の表裏差が出るために、白紙光沢度や印刷光沢度の表裏差が発生しやすい。また、オントップ型抄紙機の場合には、ギャップフォーマー型ほど填料が紙表層に分布しないので、ギャップフォーマー型抄紙機で製造された印刷用紙と同レベルの印刷光沢度が得られるとはいえない。また、抄紙の速度は特に制限されず、通常500m/分以上であり、本発明では1500m/分以上の高速でも製造することができる。
<表面処理>
本発明においては、水溶性高分子物質を主成分とする表面処理剤を塗工層の形成前に原紙に塗布してもよい。水溶性高分子物質としては、澱粉類および/またはポリアクリルアミド類が好ましく使用される。澱粉類は表面強度の向上に効果的であり、具体的には酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉、エーテル化澱粉、リン酸変性澱粉、カチオン化澱粉等の変性澱粉が挙げられる。また、ポリアクリルアミド類はネッパリ性が低く好ましい。
表面処理剤には、必要に応じて消泡剤、増粘剤、あるいは防腐剤等の助剤を適宜添加することもできる。なお、表面処理剤を原紙へ塗布する際の固形分濃度としては、3〜20重量%程度で調節される。また、塗布量としては片面当たり固形分重量で0.05〜1g/m、好ましくは0.1〜0.5g/m程度で調節される。0.05g/m未満では十分な表面強度が得られない場合があり、一方、1g/mを越えると表面強度は問題ないが、表面が硬くなるためにグラビア印刷でのスペックル数が多くなりやすい。両面当たりでは、0.1〜2g/m、好ましくは0.2〜1g/mである。
表面処理剤を原紙へ塗布するための塗工装置としては、特に限定されるものではなく、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、エアーナイフコーター等、一般に公知公用の装置が適宜使用される。
2.塗工層の形成
本発明では、上記のようにして得られた原紙の上に、少なくとも顔料と接着剤とを含有する塗工液を片面当たり3g/m以下の塗工量となるように塗工して塗工層を設ける。
<顔料>
顔料としては、塗工用顔料として従来から用いられているものであればよく、特に限定されないが、例えばカオリン、クレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料、およびプラスチックピグメント等の有機顔料を挙げることができる。これらは必要に応じて単独または2種類以上併用してもよい。中でも、塗工適性が良好であることからクレー、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウムが好ましい。
<接着剤>
接着剤としては、塗工紙用に従来から用いられているものであればよく、特に限定されないが、例えばスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体(ラテックス)、あるいはポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体などが挙げられる。これらは必要に応じて単独または2種類以上を併用してもよい。中でも、霧状に塗工液が飛び散るミスチングの防止など操業性の面から、澱粉とラテックスを併用することが好ましく、特にヒドロキシエチル化澱粉とスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスの併用が好ましい。この場合、澱粉とラテックスの配合割合は特に限定されないが、1/5〜5/1程度である。
<塗工液の調製>
本発明では、顔料100重量部に対して接着剤20〜100重量部程度の割合で配合し塗工液を調製する。塗工液には、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等の通常使用される各種助剤を添加してもよい。
<塗工量>
本発明においては、軽量でかつ非塗工紙の風合いに近い印刷用紙とするために、塗工量は少なければ少ないほど望ましく、片面当たり3.0g/m以下であり、これは微塗工の中でも超微塗工と呼ばれる領域である。この範囲で塗工することにより、軽量で非塗工紙の風合いに限りなく近く、また、後述するホットソフトニップカレンダー処理の効果が発現しやすく、白紙光沢度をより向上させることができる。より好ましくは2g/m以下、さらに好ましくは1.5g/m以下である。塗工量の下限は特に限定されないが、通常の操業性から片面0.5g/m以上程度である。
<塗工装置>
塗工液を塗工する方法は、従来公知の塗工装置を使用すればよく制限されないが、例えばブレードコータ、バーコータ、ロールコータ、エアナイフコータ、リバースロールコータ、カーテンコータ、ブレードメタリングサイズプレスコータ、ロッドメタリングサイズプレスコータ、ゲートロールコータ等を用いて、原紙上に片面ずつもしくは両面同時に両面塗工する。中でも、ゲートロールコータ、ロッドメタリングサイズプレスなどのフィルム転写型ロールコータは、ごく少ない塗工量の場合でも均一な塗工層を形成することができ好ましい。
塗工層を乾燥する方法としては、例えば蒸気加熱シリンダー、加熱熱風エアドライヤー、ガスヒータードライヤー、電気ヒータードライヤー、赤外線ヒータードライヤー、高周波ヒータードライヤー等を単独または併用することができる。
<水分>
塗工乾燥後の紙中水分は特に限定されないが4〜8%程度である。なお、水分を多く含む状態でカレンダー処理されると、可塑性が出て形状が平らになりやすくカレンダーの掛かりが良くなって光沢性が向上するため、本発明では水分を前記範囲よりも高く調整してもよい。但し、印刷時の干ジワやブリスターの抑制等とのバランス等も考慮する必要がある。
また、本発明では、後述するホットソフトニップカレンダー処理を行う過程で、水分を付与してもよい。水分付与の時期と回数は特に制限されないが、例えば、紙のフェルト面(F面)とワイヤー面(W面)について、それぞれのカレンダー処理される前の金属ロール処理面の表面に水分を付与することが望ましい。弾性ロールに接しカレンダー処理される前が望ましい。水分付与はスプレー式加湿装置等によって行い、水付着量は0.2〜2.5g/m程度が好ましい。水付着量はオンラインBM計によって測定することができる。
3.カレンダー処理
本発明では、上記のようにして製造された超微塗工タイプの紙に対し、抄紙機のカレンダーパートにおいて、温度110〜250℃、線圧250〜500kN/mの条件にて、6ニップ以上のホットソフトニップカレンダーで処理して仕上げを行う。
<ホットソフトニップカレンダー>
ホットソフトニップカレンダーは、HSNPまたはホットソフトカレンダーとも呼ばれ、前述したように、従来、スーパーカレンダーに使用されるコットンロールは内部発熱の問題で耐熱性に劣り、耐圧・耐久性も劣るため高速化に限界があったのに対し、耐熱性、耐圧性に優れるプラスチックの弾性ロールを使用することにより、1000m/分を超える高速での操業も可能となり、原紙がオンライン(抄紙された後そのまま)でカレンダーパートに進むことから、生産性も向上する。また、高温で処理することにより、紙表層部のみを可塑化した状態で金属ロールの表面を紙表面に転写させるため、スーパーカレンダーと比較すると、同一の厚さまで紙を潰した場合、優れた表面性、印刷適性が得られる。
弾性ロールの材質としては、耐熱性に優れる変性ウレタン系、エポキシ系、ポリエーテル系等のプラスチックからなるものが好ましい。
本発明において、ホットソフトニップカレンダーの型式はタンデムタイプが好適である。タンデムタイプとは、一対の金属ロールと弾性ロールとを重ねた2ロールからなるセットを、横に並列に設置したタイプである。タンデムタイプは、金属ロールと弾性ロールとを交互に縦に重ねていき、原紙をロールに沿って折り曲げながら通紙するタイプに比べて、通紙の容易さや省スペース等の面からも好ましいが、原紙が蛇行する必要がないため、シワの発生や光沢ムラを抑えることができる。タンデムタイプは、ストレートスタックなどとも呼ばれる。
本発明では、原紙に脱墨パルプを50%重量以上配合しているため、機械パルプを主体にした原紙よりも紙厚が低くなり、通常のカレンダー処理では光沢度向上効果が発現しにくい。仮に、白紙光沢度45%以上を実現しようとすれば、従来のスーパーカレンダー処理では20段以上のニップが必要であり、10段を想定すると線圧800kN/m程度で処理しなければならず、パルプ繊維の損傷が激しくなって紙の表面強度も低下し、現実的ではない。これに対し、本発明では、上記の製造方法により、脱墨パルプを高配合した場合でも、従来の多段のスーパーカレンダーでは得られない領域の光沢性を得ることができる。
また、本発明では超微塗工の範囲で塗工層を設けることにより、白紙光沢度および印刷後光沢度をより向上させることができ、この理由は明らかではないが、例えば塗工液中の接着剤としてラテックスを使用した場合、ホットソフトニップカレンダー下でラテックスが熱で溶解することにより、光沢性が発現しやすくなると考えられる。
<処理条件>
本発明における処理温度は、110℃未満では光沢発現性が不十分であり、250℃を超えるとロールの耐久性に問題があるため、温度110〜250℃で処理することが好適である。線圧は、250kN/m未満では光沢発現性が不十分であり、500kN/mを超えるとロールの耐久性に問題があるため、線圧250kN/m以上500kN/m以下、より望ましくは300kN/m以上で処理することが好適である。より好ましくはまた、ニップ数は6ニップ以上が必要であり、上限は特に限定されるものではないが8〜10ニップ程度である。6ニップより少ないと、光沢発現性が不十分である。
4.紙質、品質他
本発明の印刷用紙において、坪量、紙厚、密度等の各紙質は特に限定されるものではないが、坪量は40〜80g/m、紙厚は45〜90μm、密度は0.85〜1.20g/cm程度が適当である。白紙光沢度は30%以上、好ましくは35%以上である。また、本発明の印刷用紙は、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式など各種の印刷方式に使用することができる。
また、本発明では平滑性を表面粗さ(PPSラフネス:パーカー・プリント・サーフ・ラフネス)で表す。表面粗さは、王研式平滑度やベック平滑度等の表面にエアーを吹き付け何秒で通り過ぎるかを測定する方法に比べて、凸部は矯正されたものの窪みが残っているような場合も見逃すことがない。
以下、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中、部および%は、特に断らない限りそれぞれ重量部および重量%を示す。
<内添填料>
PCC−A:紡錘凝集型軽質炭酸カルシウム(粒子径1.72μm、比表面積11m/g、吸油量121ml/100g)
PCC−B:針状凝集型軽質炭酸カルシウム(製品名ベルカーブ(Velacarb)、Specialty Minerals Inc.製)
<塗工液の調製>
[塗工液1]
粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)100部からなる顔料に、分散剤として対顔料でポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加してセリエミキサーで分散し、固形分濃度が70%の顔料スラリーを調製した。このようにして得られた顔料スラリーに非増粘型のスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(旭化成(株)製:S2188)20部およびヒドロキシエチル化澱粉20部を接着剤として加え、蛍光染料を0.5部、さらに水を加えて固形分濃度25%の塗工液を調製した。
[塗工液2]
粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)100部に代えて、2級クレー(イメリス社製:KCS、体積分布平均粒径1.4μm)50部、粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)50部を用いた以外は、実施例1と同様にして塗工液を調製した。
[塗工液3]
粗粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)100部に代えて、2級クレー(イメリス社製:KCS、体積分布平均粒径1.4μm)100部を用いた以外は、実施例1と同様にして塗工液を調製した。
<印刷用紙の製造>
[実施例1]
DIP70部、TMP15部、KP15部の割合で混合離解し、所定フリーネスに調製したパルプスラリーに、硫酸バンドを1.5%添加し、填料としてPCC−Aを対絶乾パルプ25重量%添加し、歩留り向上剤を100ppm(製品名R-300、ソマール社製)添加し、ギャップフォーマー型のベルベフォーマー抄紙機にて1500m/分の速度で中性抄紙し、片面あたりの塗工量が固形分で1.5g/mになるように、塗工液1をゲートロールコータにより両面塗工を行い乾燥した後、ホットソフトニップカレンダー(淀鋼KURSTER製、弾性ロール径990mm、金属ロール(チルドロール)径1350mm)を用いて、通紙速度1500m/分、金属ロール表面温度150℃、線圧400kN/mで6ニップのホットソフトニップカレンダー処理を行い、印刷用紙を得た。
[実施例2]
塗工液1の代わりに塗工液2を用いた以外は、実施例1と同様にして印刷用紙を得た。
[実施例3]
填料としてPCC−Aに代えてPCC−Bを用いた以外は、実施例1と同様にして印刷用紙を得た。
[実施例4]
填料としてPCC−Aに代えてPCC−Bを用い、かつ塗工液1の代わりに塗工液3を用いた以外は、実施例1と同様にして印刷用紙を得た。
[比較例1]
塗工液1の代わりにゲートロールコータにてヒドロキシエチル化澱粉(製品名ETHYLEX2025、Staley社製)を両面当たり0.7g/mになるように塗布乾燥した以外は、実施例1と同様にして印刷用紙を得た。
[参考例]
TMP75部、KP25部の割合で混合離解し、所定フリーネスに調製したパルプスラリーに、硫酸バンドを3.0%添加し、カオリンを対絶乾パルプ30重量%添加し、歩留り向上剤を100ppm(製品名R-300、ソマール社製)添加し、ギャップフォーマー型のベルベフォーマー抄紙機にて1500m/分の速度で酸性抄紙して、酸性原紙を得た。
次いで、弾性ロール径990mm、金属ロール(チルドロール)径1350mmのホットソフトニップカレンダー(淀鋼KURSTER製)を用いて、通紙速度1500m/分、金属ロール表面温度150℃、線圧400kN/mで6ニップのホットソフトニップカレンダー処理を行い、印刷用紙を得た。
以上の製造例で得られた原紙、並びに実施例比較例で得られた印刷用紙について、下記の測定や評価を行った結果を表1、2に示す。
(ア)水分:オンラインBM計にて測定した。
(イ)坪量:JIS P 8124に準じて測定した。
(ウ)紙厚:JIS P 8118に準じて測定した。
(エ)密度:JIS P 8118に準じて坪量と紙厚から求めた。
(オ)灰分:JIS P 8251(対応ISO 1762)に準じて測定し、灰化は525℃、2時間で行った。
(カ)白色度:JIS 8124に準じて測定した。
(キ)不透明度:JIS P 8149に準じて測定した。
(ク)白紙光沢度:JIS P 8142に準じて測定した。
(ケ)表面粗さ(PPSラフネス):JIS P 8151に準じて測定した。
(コ)印刷後光沢度:ローランドオフセット平判印刷機(4色)に平判印刷用インキ(東洋インキ製造株式会社製ハイユニティーネオL)を用いて、A3サイズの版で印刷速度8000枚/時間で印刷し、得られた印刷物(4色ベタ印刷部)の表面をJIS P 8142に基づいて測定した。
(サ)表面強度(10枚ピック):ローランド枚葉印刷機R302を用い、インキとして東洋インキ製レオエコーSOYL藍(オフ輪用低タックインキ)を用い、800sphの速度で藍ベタを印刷し、10枚印刷する間に発生したピッキングの個数を測定した。
表1および表2に示すデータから、以下のことがいえる。
(1)本発明の実施例1〜5と比較例1の比較から、本発明により得られた印刷用紙は、白紙光沢度、平滑性が優れていることが分かる。また、白紙光沢度、印刷光沢度が明らかに向上していることがわかる。
(2)本発明の実施例1〜5と参考例の比較から、前記印刷用紙は、脱墨パルプを高配合しかつ軽量でありながら、脱墨パルプを配合せず機械パルプとカオリンを主体とした従来のスーパーカレンダー紙(参考例)と同等あるいはそれ以上に、不透明度、白紙光沢度などの白紙物性に優れ、印刷品質が良好な印刷用紙が得られていることが分かる。
紡錘凝集型軽質炭酸カルシウムの二次粒子形状の電子顕微鏡像の一例を示す図である。 針状凝集型軽質炭酸カルシウムの二次粒子形状の電子顕微鏡像の一例を示す図である。

Claims (3)

  1. 脱墨パルプを50重量%以上配合し、紡錘凝集型軽質炭酸カルシウムまたは針状凝集型軽質炭酸カルシウムの少なくとも1種を填料として配合した紙料を抄紙した紙の上に、無機顔料を1種類または2種類以上併用した顔料と接着剤とを含有する塗工液を片面当たり0.5〜3g/m の塗工量となるように塗工して塗工層を設け、6ニップ以上のホットソフトニップカレンダーで処理し、白紙光沢度が34.8%以上であることを特徴とする印刷用紙の製造方法。
  2. 前記填料の配合割合が紙中灰分として10〜35重量%添加することを特徴とする請求項1記載の印刷用紙の製造方法。
  3. 前記ホットソフトニップカレンダーで処理する条件が、温度110〜250℃、線圧250〜500kN/mの条件であることを特徴とする請求項1記載の印刷用紙の製造方法。
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