JP2005232214A - 高分子分散型液晶表示素子用組成物及び高分子分散型液晶表示素子 - Google Patents

高分子分散型液晶表示素子用組成物及び高分子分散型液晶表示素子 Download PDF

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Abstract

【課題】揮発性の高い化合物を用いることなく低温域での低駆動電圧特性に優れ、電圧保持率が高くアクティブ素子にて駆動可能な、高分子分散型液晶表示素子用組成物、及び高分子分散型液晶表示素子を提供する。
【解決手段】特定の液晶組成物と、特定のラジカル重合性化合物と重合開始剤を含有した高分子分散型液晶素子用組成物及び当該組成物を用いた高分子分散型液晶表示素子。当該液晶表示素子は、幅広い動作温度範囲を有し、散乱特性に優れ、且つそれらの経時変化が少なく、耐熱性、耐光性にも優れた表示素子であり、光散乱を利用するディスプレイに非常に実用的である。
【選択図】なし

Description

本発明はアクティブ素子にて駆動可能な高分子分散型液晶表示素子に有用な組成物、及びこれを用いた高分子分散型液晶表示素子に関する。
高分子分散型液晶表示素子は、偏光板を必要としないため、従来の偏光板を用いた、TN、STN、IPS又はVAモードの液晶表示素子に比べ、明るい表示が実現できるメリットがあり、素子の構成も単純であることから、非特許文献1に見られるような調光ガラス等の光シャッター用途、時計等セグメント表示用途に応用されている。また、高精細表示を実現する為、非特許文献2及び非特許文献3に見られるように、アクティブ駆動素子と組み合わせて、プロジェクター用途、反射型ディスプレイ用途等への応用も検討されている。
高分子分散型液晶表示素子をアクティブ駆動で動作させる為には、低い電圧により駆動できると共に、高い電圧保持率を有することが必要となり、さらに実用的な表示素子においてはこれらの特性が幅広い温度範囲で達成されなければならない。低電圧駆動の技術として、特許文献1に液晶の連続相中に透明性固体物質を3次元網目状構造に形成した技術が開示されており、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4には側鎖型ラジカル重合性化合物を用いて、低駆動電圧を達成する技術が開示されているが、これらの発明においては液晶材料としてシアノ系化合物をを用いているため高い電圧保持率を達成することは困難であり、アクティブ駆動素子への応用はできないものであった。
一方、低電圧駆動が可能で、且つ電圧保持率が高い液晶組成物として特許文献5にはフッ素系又は塩素系の液晶組成物を用いて達成した例が開示されている。しかしながら、当該引用文献記載の組成物においてはプレポリマー(本発明における一般式(II-b)で表される化合物に替えて用いられている。)に分子量250以下の単官能アクリレートを使用しているため、液晶表示素子の製造工程中の真空状態で単官能アクリレートが揮発し組成物の比率が変化する問題を有していた。
また、特許文献6にはフッ素系の液晶組成物を用いて高電圧保持率及び低駆動電圧を達成した例が開示されている。しかし、当該引用文献記載の液晶組成物は結晶化温度が−10℃程度であるため、事実上の低電圧可能な動作下限温度は0℃程度である。
このように、高分子分散型液晶表示素子において、低温領域での低電圧化が困難であり、特にアクティブ駆動用途においては、0℃以下の低温域での低電圧駆動は達成されておらず、より低温域での低電圧動作が求められていた。加えて、低温領域での駆動電圧の温度依存性も大きい為、温度依存性を小さくできる組成物、及び温度依存性が小さい素子が求められていた。
特開平1−198725号公報(請求項1) 特開平6−32761号公報(9から12頁) 特開平11−29527号公報(19から22頁) 特開2002−293827号公報(17から18頁) 特開平5−339573号公報(5から8頁) 特開平9−255954号公報(16から24頁) ディスプレイ国際ワークショップ(IDW)‘97ダイジェスト、1997年 (156ページ) 1991年 ソサイエティー・フォオ・インフォメーション・ディスプレイ (SID) インターナショナル・シンポジウム ダイジェスト・オブ・ テクニカル・ペーパー (251頁) 2001年 ソサイエティー・フォオ・インフォメーション・ディスプレイ (SID) インターナショナル・シンポジウム ダイジェスト・オブ・ テクニカル・ペーパー (264頁)
本発明の課題は、揮発性の高い化合物を用いることなく低温域での低駆動電圧特性に優れ、電圧保持率が高くアクティブ素子にて駆動可能な、高分子分散型液晶表示素子用組成物、及び高分子分散型液晶表示素子を提供することにある。特に、モバイル用途において、低温域での低駆動電圧特性に優れ、温度依存性の小さいアクティブ素子にて駆動可能である、高分子分散型液晶表示素子用組成物、及び高分子分散型液晶表示素子を提供することである。
本発明は、上記課題を解決するために、種々の液晶組成物とラジカル重合性化合物との組み合わせを検討した結果、課題を解決するに至った。
すなわち、一般式(I-a)及び一般式(I-b)
Figure 2005232214
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよく、
A1及びA2はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基を表し、該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、
X1及びX7はそれぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
X2からX6及びX8からX12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
Z1及びZ3はそれぞれ独立して、単結合又は−CH2−CH2−を表し、
Z2及びZ4はそれぞれ独立して、単結合、−CH2−CH2−又は−CF2O−を表し、
n1及びn2は0又は1である。)
で表される化合物群から選ばれる少なくとも一種類以上の化合物を含有し、
一般式(II-b)
Figure 2005232214
(式中、B5、B6及びB7はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1から15のアルキレン基を表し、該アルキレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有していても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、1,4-フェニレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、1,4-シクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基又は3,3'-スピロビシクロブチレンで置換されていても良く、該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、該アルキレン基中の少なくとも一つ以上のCH2基は一般式(II-a)
Figure 2005232214
(式中、B1は、炭素数2から30のアルキル基を表し、該アルキル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子を有していても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、1,4-フェニレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、1,4-シクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基又は3,3'-スピロビシクロブチレンで置換されていても良く、
B2は、水素原子又は炭素数1から30のアルキル基を表し、該アルキル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子を有していても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、1,4-フェニレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、1,4-シクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基又は3,3'-スピロビシクロブチレンで置換されていても良い。)
で置換され、B5、B6及びB7の炭素原子数の合計は5以上であり、
B3及びB4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、
m及びnはそれぞれ独立して1、2又は3を表す。)
で表される重合性化合物を含有し、
さらに、重合開始剤を含有することを特徴とする、高分子分散型液晶素子用組成物及び当該組成物を構成部材とした高分子分散型液晶素子を提供する。
本発明の高分子分散型液晶表示素子用組成物、及び高分子分散型液晶表示素子により、揮発性の化合物を用いることなく低温域での低駆動電圧特性に優れ、且つ高電圧保持率を有する液晶表示素子を得ることができた。加えて、この組成物及び素子は幅広い動作温度範囲を有し、散乱特性に優れ、且つそれらの経時変化が少なく、耐熱性、耐光性にも優れた表示素子であり、光散乱を利用するディスプレイに非常に実用的である。
以下に本発明の一例について説明する。本発明の高分子分散型液晶表示素子用組成物は、一般式(II-b)で表される重合性化合物が熱、又は紫外線等の活性エネルギー線により重合し、それに伴い一般式(I-a)及び一般式(I-b)からなる群から選ばれる化合物を含有する液晶組成物と相分離を引き起こし、透明性高分子物質と液晶組成物からなる高分子分散型液晶表示素子を得る目的に使用される。
高分子分散型液晶表示素子の駆動電圧に関する記述として、特開平6-222320号公報において次式の関係が示されている。
Figure 2005232214
(Vthはしきい値電圧を表わし、1Kii及び2Kiiは弾性定数を表わし、iは1、2又は3を表わし、△εは誘電率異方性を表わし、<r>は透明性高分子物質界面の平均空隙間隔を表わし、Aは液晶組成物に対する透明性高分子物質のアンカリングエネルギーを表わし、dは透明性電極を有する基板間の距離を表わす。)
これによると、高分子分散型液晶表示素子の駆動電圧は、透明性高分子物質界面の平均空隙間隔、基板間の距離、液晶組成物の弾性定数・誘電率異方性、及び液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーによって決定される。この中で温度により変化をするパラメーターは、液晶組成物の弾性定数・誘電率異方性、及び液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーであるが、低温域では誘電率異方性は増加する為、低温域で駆動電圧を上昇させる要因となるのは、液晶組成物の弾性定数と液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーとなる。そのため、低温域での低電圧駆動を達成するには、幅広い液晶温度範囲、特に低温領域でのネマティック安定性に優れる液晶組成物を用いなければならず、且つ低温域での液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーが小さい組み合わせを見出さなければならない。
そこで、種々の液晶組成物とラジカル重合性化合物との組み合わせを検討した結果、一般式(I-a)及び(I-b)で表される化合物群から一種類以上を含有する液晶組成物と、一般式(II-b)で表される重合性化合物を、重合開始剤を用いて重合させた透明性高分子物質との組み合わせが、低温域での液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーが小さいことを見出した。
一般式(I-a)及び一般式(I-b)で表される化合物は高分子分散型液晶表示素子中に形成される調光層内の液晶組成物を形成する化合物である。この液晶組成物としては、幅広い液晶温度範囲を有するのみならず、高い比抵抗値、高い誘電率異方性、高い屈折率異方性、低い粘性を有することが好ましい。更に、液晶組成物としての、耐熱性、耐光性に優れることも好ましい条件である。特にアクティブ素子で駆動させるためには、高い比抵抗値、高い誘電率異方性を有し、且つ耐熱性、耐光性に優れることは必須条件である。一般式(I-a)及び一般式(I-b)で表される化合物は相溶性が高いため幅広い液晶温度範囲、特に低温域でのネマティック安定性に優れ、且つ高誘電率、高い比抵抗値を有する化合物である。
一般式(I-a)及び一般式(I-b)において、R1及びR2としては、炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、該アルケニル基は式(V-a)
Figure 2005232214
(構造式は右端で直接もしくは酸素原子を介して環に連結しているものとする。)で表されるものが好ましく、炭素原子数1から5のアルキル基がより好ましい。
A1及びA2としては、1,4-シクロヘキシレン基が好ましく、
Z1及びZ2としては、単結合が好ましく、
X1及びX2としては、フッ素原子もしくはトリフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子がより好ましく、
具体的には一般式(V-1)から一般式(V-33)で表される化合物が好ましい。
Figure 2005232214
Figure 2005232214
(式中、R11は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)
また、更なる液晶温度領域の拡大、高誘電率、又は低粘性を得るため、一般式(I-a)及び一般式(I-b)で表される化合物に加えて、一般式(III-a)、又は一般式(IV-a)で表される化合物を含有することも好ましい。
一般式(III-a)においてR3及びR4としては、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、該アルケニル基は式(V-a)で表されるものが好ましい。
また、特に低粘性を得たい場合は、n3が0を表し、A4及びA5が、1,4シクロへキシレン基を表し、Z6が単結合を表すことが好ましく、
特に液晶温度範囲を拡大するには、n3が0又は1を表し、A3及びA4が、1,4シクロへキシレン基を表し、A5が1,4フェニレン基(該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)を表し、Z5が単結合又は−CH2CH2−を表し、Z6が単結合を表すことが好ましく、
特に高屈折率を得るためには、n3が1を表し、A3が1,4シクロへキシレン基又は1,4フェニレン基(該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)を表し、A4及びA5が、1,4フェニレン基(該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)を表すことが好ましい。
具体的には一般式(III-1)から一般式(III-5)で表される化合物が好ましい。
Figure 2005232214
(式中、R12及びR13はそれぞれ独立して炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、X21からX26はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。)
一般式(IV-a)においてR5としては、炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)が好ましく、式(V-a)で表されるものがより好ましい。
X13としては、フッ素原子又はトリフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
また、特に高誘電率を得たい場合は、n4が0又は1を表し、A6が1,4シクロへキシレン基を表し、A7が1,4シクロへキシレン基、又は1,4-フェニレン基(該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有することができる。)を表し、A8が2又は3-フルオロ1,4-フェニレン基又は2,6又は3,5ジフルオロ1,4-フェニレン基を表し、Z7及びZ8が単結合を表すことが好ましい。
特に液晶温度範囲を拡大するには、n3が2を表し、A6が1,4シクロへキシレン基を表し、A7が1,4シクロへキシレン基、又は1,4-フェニレン基を表し、A8が2-フルオロ-1,4-フェニレン基、3-フルオロ-1,4-フェニレン基、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン基又は3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン基を表し、Z7及びZ8がそれぞれ独立して単結合又は−CH2CH2−を表すことが好ましい。
具体的には一般式(IV-1)から一般式(IV-4)で表される化合物が好ましい。
Figure 2005232214
(式中、R14は炭素原子数1から5のアルキル基又は炭素原子数2から6のアルケニル基(該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい。)を表し、X31からX34はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子を表し、Z11は単結合又は-CH2CH2-を表す。)
これら(IV-1から4)の中でも(IV-5から7)の化合物がより好ましい。
Figure 2005232214
(式中、R15は炭素原子数2から6のアルケニル基を表し、X35からX37はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表す。)
これらの液晶組成物は不純物等を除去する、又は比抵抗値を更に高くする目的で、シリカ、アルミナ等による精製処理を施しても良い。比抵抗値としては1012Ω・cm以上が好ましく、1013Ω・cm以上がより好ましい。
更に、目的に応じて液晶組成物中に、キラル化合物、染料等のドーパントを添加することもできる。
重合性化合物は高分子分散型液晶表示素子中に形成される調光層内の透明性高分子物質を形成する化合物であり、この化合物を熱、又は活性エネルギー線等で重合させることにより透明性高分子物質を得ることができる。高分子分散型液晶表示素子の低温域での低駆動電圧化を達成する為には、前記液晶組成物の幅広い液晶温度範囲を達成するだけでは不十分であり、前述の如く、低温域での液晶組成物と透明性高分子物質間のアンカリングエネルギーが小さい組み合わせを見出さなければならない。詳しくは、透明高分子物質の表面エネルギーが液晶組成物の同等程度であることが好ましく、且つこのような特性が低温域でも達成されることが好ましい。このような透明高分子物質は、一般式(II-b)で表される重合性化合物から得ることができる。この化合物中に存在する一般式(II-a)で表される部分構造の存在により、透明高分子物質の表面エネルギーをコントロールすることができ、低温域での低電圧駆動を実現する。
一般式(II-b)中のB5、B6及びB7としてはこれらの基中の炭素原子数の合計が5から31となるアルキレン基の組み合わせが好ましく、炭素原子数の合計が5から20となるアルキレン基の組み合わせがより好ましく、炭素原子数の合計が10から15となるアルキレン基の組み合わせが更に好ましく、該アルキレン基の2つ以上6つ以下のCH2基が酸素原子で置換されているアルキレン基が好ましく、2つのCH2基が酸素原子に置換されていることがより好ましい。また、m及びnは1が好ましく、m及びnが1でB5、B6及びB7炭素原子数の合計が5から15のアルキレン基であり、該アルキレン基の2つのCH2基が酸素原子に置換されていることがより好ましい。
B5、B6及びB7中に存在する一般式(II-a)の置換基の数としては、2から4つが好ましく、2つがより好ましい。B1、B2は直鎖状でも分岐鎖を有していても良いが、直鎖状の場合は、少なくとも一方が炭素原子数5から16のアルキル基であることが好ましく、10から14がより好ましい(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、で置換されていても良い)。該アルキル基中の1つのCH2基がCOOで置換されているものが更により好ましい。
また分岐鎖を有する場合は、少なくとも一方の分岐鎖中の主鎖の炭素原子数が5から16のアルキル基であるものが好ましく、10から14がより好ましい(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、で置換されていても良い)。該アルキル基中の1つのCH2基がCOOで置換されているものが更により好ましい。
B3、B4としては水素原子が好ましい。
更に、重合性化合物としては、一般式(II-c)で表される化合物
Figure 2005232214
(式中、B8、B9及びB10はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−又は、−OCO−で置換されていても良いが、B8、B9及びB10の炭素原子数の合計は3から29であり、
B11及びB13はそれぞれ炭素原子数2から25のアルキル基を表し、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、
B12及びB14はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1から25のアルキル基を表し、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)
が好ましく、一般式(II-c)において、B8、B9及びB10の炭素原子数の合計が5から20であり、B11及びB13が炭素原子数5から25のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であり、B12及びB14が水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基(該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、CO、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)であるものがより好ましく、
一般式(II-c)において、B8、B9及びB10の炭素原子数の合計が8から15であり、B11及びB13が炭素原子数8から16の直鎖状のアルキル基であり、該アルキル基中の一つのCH2基が−COO−で置換されている、もしくはB11及びB13が分岐型のアルキル基であり、該アルキル基の主鎖の炭素原子数が8から16のアルキル基であり、該アルキル基中の一つのCH2基が−COO−で置換されており、B12及びB14が水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基であるものが更に好ましい。
具体的には式(II-d)で表される化合物が好ましい。
Figure 2005232214
(式中、p及びrは0又は1を表し、qは2から9を表し、s及びtは0、1、2又は3を表し、B21及びB22は、炭素原子数6から14の直鎖アルキル基又は主鎖の炭素原子数が6から14である炭素原子数が7から23の分岐鎖を有するアルキル基を表し、B21及びB22は、水素原子又は炭素原子数1から5のアルキル基を表す。)
高分子分散型液晶の透明性高分子物質を形成する重合性化合物としては、上記多官能重合性化合物を1種類又は2種類以上用いることができ、単官能重合性化合物と併用することもできるが、単官能重合性化合物と併用すると、未重合重合性化合物が残存する可能性があり、それにより特性の経時変化、信頼性悪化等が懸念される為、一般式(II-b)で表される化合物のみで構成されるものが好ましく、一般式(II-c)で表される化合物のみで構成されるものがより好ましく、一般式(II-d)で表される化合物のみで構成されるものが更により好ましい。
また、高分子分散型液晶表示素子の製造工程中の真空注入条件による重合性化合物の揮発が起こらないという条件を考慮すると、重合性化合物の分子量は、300から1500が好ましく、500から1000がより好ましい。更に、重合性化合物を硬化させた透明性高分子物質の表面エネルギーが20から40mN/m2となることが好ましく、27から37mN/m2となることがより好ましい。
これらの重合性化合物は不純物等を除去する、又は高比抵抗値を大きくする目的で、シリカ、アルミナ等による精製処理を施しても良い。比抵抗値としては1011Ω・cm以上が好ましく、1012Ω・cm以上がより好ましく、1013Ω・cm以上が最も好ましい。
重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を用いることが可能であるが、ラジカル重合により重合することが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤を用いることができるが、光重合開始剤が好ましい。具体的には以下の化合物が好ましい。
ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系;
ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル系;
ベンゾフェノン、ο−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;
2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系;
ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系;
10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が好ましい。
この中でも、ベンジルジメチルケタールが最も好ましい。
各成分の組成比としては一般式(I-a)及び一般式(I-b)で表される化合物群から選ばれる液晶化合物を59から89質量%含有し、一般式(II-b)で表される重合性化合物を10から40量%含有し、重合開始剤を0.1から2質量%含有することが好ましく、一般式(I-a)及び一般式(I-b)で表される化合物群から選ばれる液晶化合物を63から75質量%含有し、一般式(II-b)で表される重合性化合物を24から36質量%含有し、重合開始剤を0.1から2質量%含有することが更に好ましい。
高分子分散型液晶表示素子の作製方法について説明する。本発明の高分子分散型液晶表示素子は、少なくとも一方が透明の2枚の基板間に、本発明の高分子分散型液晶表示素子用組成物を狭持した後、熱、又は活性エネルギー線を照射することによって重合性化合物を重合させ、液晶組成物との相分離を誘発させることにより、液晶組成物と透明性高分子物質からなる調光層が形成されることによって得られる。
2枚の基板はガラス、プラスチックの如き柔軟性をもつ透明な材料を用いることができ、一方はシリコン等の不透明な材料でも良い。また光吸収、鏡面反射、拡散反射、再帰性反射、ホログラム反射等の機能を付加することもできる。またガラス基板表面にはポリイミド等によるコーティングを施すこともできる。
2枚の基板間には、周知の液晶デバイスと同様、間隔保持用のスペーサーを介在させることができる。基板間の厚み、すなわち調光層の厚みは、2から30μmが好ましく、2から10μmがより好ましく3から6μmが更により好ましい。
2枚の基板間に高分子分散型液晶表示素子用組成物を狭持させるに方法は、通常の真空注入法、又はODF法などを用いることができる。この時、高分子分散型液晶表示素子用組成物は均一なアイソトロピック状態であることが好ましい。
重合性化合物を重合させる方法としては、紫外線照射が好適である。紫外線を発生させるランプとしては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、照射する紫外線の波長としては、高分子分散型液晶表示素子用組成物に含有されている光重合開始剤の吸収波長領域であり、且つ含有されている液晶組成物の吸収波長域でない波長領域の紫外線を照射することが好ましく、具体的には、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプを使用して330nm以下の紫外線をカットして使用することが好ましく、350nm以下の紫外線をカットして使用することがより好ましい。
照射する紫外線の強度は、目的とする調光層を得るため適宜調整することができるが、1から200mw/cm2が好ましく、2から100mw/cm2がより好ましい。紫外線を照射する時間は照射する紫外線強度により適宜選択されるが、10から600秒が好ましい。
また、紫外線照射の時の温度は、調光層の特性を決める重要な要素となるが、高分子分散型液晶表示素子用組成物のアイソトロピック−ネマティック転移点よりわずかに高い温度が好ましく、具体的には転移点+0.1から3℃が好ましい。
上述の手法、又はそれ以外の手法で作製された、高分子分散型液晶表示素子内の調光層は、液晶組成物が透明性高分子物質でカプセル状に閉じ込められた構造、液晶組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造、又は両者が混在した構造等を有しているが、液晶組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造であることが好ましく、紫外線照射によって、液晶組成物の連続相中に透明性高分子物質の3次元ネットワーク構造が形成された構造がより好ましい。
ネットワーク構造の平均空隙間隔は高分子分散型液晶表示素子の特性に大きく影響し、平均空隙間隔としては、0.2から2μmが好ましく、0.2から1μmがより好ましく、0.3から0.7μmが最も好ましい。
本発明の高分子分散型液晶表示素子は低温における駆動電圧が小さいことを特徴とするが、セル厚5μmにおけるV90が7.5v以下であることが好ましく、6.5v以下であることがより好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
実施例中の高分子分散型液晶表示素子は以下の方法で作製した。
液晶組成物、重合性化合物、光重合開始剤からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を真空注入法でセル厚5μmのITO付きガラスセル内に注入した。この時、高分子分散型液晶表示素子用組成物が常に均一状態となるよう、真空注入装置内の温度をコントロールした。また真空度は2パスカルとなるよう設定した。注入後ガラスセルを取り出し、注入口を封口剤3026E(スリーボンド社製)で封止した後、高分子分散型液晶表示素子用組成物のアイソトロピック−ネマチック転移点より1から2℃高い温度にコントロールし、紫外線カットフィルターUV-35(東芝硝子社製)を介した照射強度が10mw/cm2となるように調整されたメタルハライドランプを120秒間照射して、高分子分散型液晶表示素子を得た。
実施例中に示される液晶組成物の特性の略号、及び意味は以下の通りである。
TN-I :ネマチック相-等方性液体相転移温度(℃)
T→N :固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度(℃)
また、液晶温度範囲(ネマチック液晶温度範囲)とは特に指定がない限り、固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度からネマチック相-アイソトロピック相転移温度までを意味する。
実施例中に示される高分子分散型液晶表示素子の特性の略号、及び意味はは以下に示す通りである。
V10:電圧無印加時の高分子分散型液晶表示素子の光透過率(T0)を0%とし、印加電圧を増加させていき光透過率がほとんど変化しなくなった時の光透過率(T100)を100%とした時、光透過率が10%となる印加電圧値。
V90:電圧無印加時の高分子分散型液晶表示素子の光透過率(T0)を0%とし、印加電圧を増加させていき光透過率がほとんど変化しなくなった時の光透過率(T100)を100%とした時、光透過率が90%となる印加電圧値。
電圧保持率(VHR)は、液晶電圧保持率測定システムVHR-A1(東陽テクニカ社製)を用いて測定し、パルス幅は64μsec、フレーム周期は16.67msec、印加電圧は5vとし、面積比で求めた。
(実施例1)
液晶組成物(A)が70%、ラジカル重合性化合物(M)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(A)の液晶温度範囲は-43から85.2℃であり、この素子のV90は25℃で5.5v、0℃で5.6v、-10℃で5.9vであった。また電圧保持率(VHR)は99.0%であった。
Figure 2005232214
Figure 2005232214
(実施例2)
液晶組成物(B)が70%、ラジカル重合性化合物(M)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(B)の液晶温度範囲は-36から96.5℃であり、この素子のV90は25℃で5.7v、0℃で5.8v、-10℃で6.0vであった。また電圧保持率(VHR)は98.8%であった。
Figure 2005232214
(実施例3)
液晶組成物(C)が70%、ラジカル重合性化合物(M)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(C)の液晶温度範囲は-44から81.5℃であり、この素子のV90は25℃で5.1v、0℃で5.1v、-10℃で5.5vであった。また電圧保持率(VHR)は99.1%であった。
Figure 2005232214
(実施例4)
液晶組成物(D)が70%、ラジカル重合性化合物(M)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(D)の液晶温度範囲は-44から86.4℃であり、この素子のV90は25℃で5.2v、0℃で5.2v、-10℃で5.7vであった。また電圧保持率(VHR)は98.7%であった。
Figure 2005232214
(実施例5)
液晶組成物(D)が70%、ラジカル重合性化合物(N)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(D)の液晶温度範囲は-44から86.4℃であり、この素子のV90は25℃で6.1v、0℃で6.2v、-10℃で6.5vであった。また電圧保持率(VHR)は98.9%であった。
Figure 2005232214
(実施例6)
液晶組成物(E)が70%、ラジカル重合性化合物(M)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(E)の液晶温度範囲は-41から84.3℃であり、この素子のV90は25℃で6.0v、0℃で6.2v、-10℃で6.3vであった。また電圧保持率(VHR)は98.5%であった。
Figure 2005232214
(実施例7)
液晶組成物(F)が70%、ラジカル重合性化合物(M)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(F)の液晶温度範囲は-38から88.8℃であり、この素子のV90は25℃で5.0v、0℃で5.0v、-10℃で5.5vであった。また電圧保持率(VHR)は99.1%であった。
Figure 2005232214
(比較例1)
液晶組成物(G)が70%、ラジカル重合性化合物(M)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(G)の液晶温度範囲は0から103℃であり、この素子のV90は25℃で6.0v、0℃で6.8v、-10℃で18.5vであった。また電圧保持率(VHR)は98.8%であった。
Figure 2005232214
(比較例2)
液晶組成物(D)が70%、ラジカル重合性化合物HX-220(日本化薬社製)29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(D)の液晶温度範囲は-44から86.4℃であり、この素子のV90は25℃で25.5v、0℃で32.8v、-10℃で40.6vであった。また電圧保持率(VHR)は81.1%であった。
(比較例3)
液晶組成物(G)が70%、ラジカル重合性化合物A-OCD(新中村化学社製)17.64%、ラウリルアクリレート(LA)11.76%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(G)の液晶温度範囲は0から103℃であり、この素子のV90は25℃で3.6v、0℃で4.5v、-10℃で18.3vであった。また電圧保持率(VHR)は98.5%であった。
(比較例4)
液晶組成物(H)が70%、ラジカル重合性化合物(M)が29.4%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(H)の液晶温度範囲は-24から109.5℃であり、この素子のV90は25℃で5.1v、0℃で5.3v、-10℃で6.5vであった。また電圧保持率(VHR)は60.3%であった。
Figure 2005232214
(比較例5)
液晶組成物(D)が70%、ラジカル重合性化合物HX-220(日本化薬社製)17.64%、ラウリルアクリレート(LA)11.76%、光重合開始剤イルガキュア651(チバスペシャリティーケミカルズ社製)が0.6%からなる高分子分散型液晶表示素子用組成物を調合し、前述の手法で高分子分散型液晶表示素子を得た。液晶組成物(H)の液晶温度範囲は-44から86.4℃であり、この素子のV90は25℃で4.8v、0℃で5.0v、-10℃で7.6vであった。また電圧保持率(VHR)は83.3%であった。
以上の実施例及び比較例で使用した液晶組成物、その液晶温度範囲、使用したラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及びこれらを用いて得られた高分子分散型液晶表示素子の特性を評価した結果を表1にまとめる。
Figure 2005232214
表1より、トラン系の液晶化合物を用いた比較例1及び3の高分子分散型液晶表示素子は低温におけるV90が高い問題がある。液晶化合物にナフタレン系の材料を用い、重合性化合物として一般式(II-b)で表される化合物を用いない比較例2及び5の高分子分散型液晶表示素子はV90が高く、電圧保持率も低い。シアノ系の液晶材料を用いた比較例4の高分子分散型液晶表示素子は電圧保持率が著しく低くアクティブ駆動用としての使用は困難である。
これらに較べ、実施例1から7の高分子分散型液晶表示素子は-10℃における駆動電圧が低く電圧保持率(VHR)が高いことがわかる。

Claims (10)

  1. 一般式(I-a)及び一般式(I-b)
    Figure 2005232214
    (式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよく、
    A1及びA2はそれぞれ独立して、1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基を表し、該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、
    X1及びX7はそれぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、イソシアネート基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基又はジフルオロメトキシ基を表し、
    X2からX6及びX8からX12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を表し、
    Z1及びZ3はそれぞれ独立して、単結合又は−CH2−CH2−を表し、
    Z2及びZ4はそれぞれ独立して、単結合、−CH2−CH2−又は−CF2O−を表し、
    n1及びn2は0又は1である。)
    で表される化合物群から選ばれる少なくとも一種類以上の化合物を含有し、
    一般式(II-b)
    Figure 2005232214
    (式中、B5、B6及びB7はそれぞれ独立して単結合又は炭素数1から15のアルキレン基を表し、該アルキレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、メチル基を有していても良く、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、1,4-フェニレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、1,4-シクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基又は3,3'-スピロビシクロブチレンで置換されていても良く、該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、該アルキレン基中の少なくとも一つ以上のCH2基は一般式(II-a)
    Figure 2005232214
    (式中、B1は、炭素数2から30のアルキル基を表し、該アルキル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子を有していても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、1,4-フェニレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、1,4-シクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基又は3,3'-スピロビシクロブチレンで置換されていても良く、
    B2は、水素原子又は炭素数1から30のアルキル基を表し、該アルキル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子を有していても良く、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−、−OCO−、1,4-フェニレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、1,4-シクロヘキシレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基又は3,3'-スピロビシクロブチレンで置換されていても良い。)
    で置換され、B5、B6及びB7の炭素原子数の合計は5以上であり、
    B3及びB4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、
    m及びnはそれぞれ独立して1、2又は3を表す。)
    で表される重合性化合物を含有し、
    さらに、重合開始剤を含有することを特徴とする、高分子分散型液晶素子用組成物。
  2. 一般式(II-b)で表される化合物がが一般式(II-c)
    Figure 2005232214
    (式中、B8、B9及びB10はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から15のアルキレン基を表し、該アルキレン基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−又は、−OCO−で置換されていても良いが、B8、B9及びB10の炭素原子数の合計は3から29であり、
    B11及びB13はそれぞれ炭素原子数2から25のアルキル基を表し、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良く、
    B12及びB14はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1から25のアルキル基を表し、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして酸素原子、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されていても良い。)
    で表される、請求項1記載の高分子分散型液晶素子用組成物。
  3. 一般式(III-a)
    Figure 2005232214
    (式中、R3及びR4はそれぞれ独立して、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよく、
    A3、A4及びA5はそれぞれ独立して1,4-フェニレン基又は1,4-シクロヘキシレン基を表し、該1,4-フェニレン基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、
    Z5及びZ6はそれぞれ独立して、単結合又は−CH2−CH2−を表し、
    n3は、0、1又は2を表す。ただし、n3=2の場合、複数存在するA3及びZ5は同一であっても異なっていても良い。)
    で表される化合物を含有する請求項1又は2記載の高分子分散型液晶素子用組成物。
  4. 一般式(IV-a)
    Figure 2005232214
    (式中、R5は炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数2から10のアルケニル基を表し、該アルキル基又はアルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよく、
    A6、A7及びA8はそれぞれ独立して1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基又はインダン-2,5-ジイル基、を表し、該1,4-フェニレン基、インダン-2,5-ジイル基は非置換であるか又は置換基として1個又は2個以上のフッ素原子、塩素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基を有することができ、
    Z7及びZ8は、それぞれ独立して単結合、−CH2CH2−又は−CF2O−を表し、
    X13はフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又はイソシアネート基を表し、
    n4は、0、1又は2を表す。ただし、n4=2の場合、複数存在するA6及び各Z7は同一であっても異なっていても良い。)
    で表される化合物を含有する請求項1、2又は3記載の高分子分散型液晶素子用組成物。
  5. 一般式(IV-a)において、R5が炭素原子数2から10のアルケニル基(該アルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は、酸素原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子で置換されていてもよい)を表す、請求項4記載の高分子分散型液晶素子用組成物。
  6. 一般式(III-a)、及び一般式(IV-a)で表される化合物を含有する請求項4記載の高分子分散型液晶素子用組成物。
  7. 一般式(I-a)及び一般式(I-b)で表される群の含有率が59から89質量%であり、一般式(II-b)で表される化合物の含有率が10から40量%であり、重合開始剤の含有率が0.1から2質量%ある請求項1又は2記載の高分子分散型液晶素子用組成物。
  8. 請求項1から7記載の高分子分散型液晶表示素子用組成物を用いたアクティブ駆動高分子分散型液晶表示素子。
  9. 電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、この基板間に支持された調光層を有し、該調光層が請求項1から7記載の組成物に紫外線を照射することによって得られたアクティブ駆動高分子分散型液晶表示素子。
  10. 調光層が液晶の連続層中に透明性高分子物質の3次元網目構造を形成して成る、請求項9記載の高分子分散型液晶表示素子。
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