JP2005232161A - 新規なトリフェニルメタン誘導体、それを含有する有機ゲル化剤、有機ゲルおよび有機ファイバー - Google Patents
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Abstract
【解決手段】特定の化学構造式で示されるトリフェニルメタン誘導体。該トリフェニルメタン誘導体を含有する有機ゲル化剤。該有機ゲル化剤と有機溶媒を含有する有機ゲル。該有機ゲルからなり、直径500nm以下であることを特徴とする有機ファイバー。
【選択図】なし
Description
有機ゲルは、構成成分として水より高沸点の有機溶媒を用いることにより、高温で使用可能な衝撃・振動吸収材料、医薬品除放性付与材料、有機物の液体の回収剤、電解液の固体化、化粧品用シリコンオイルゲル、更に得られた有機ナノファイバーをテンプレートとして用いて作製される金属ナノワイヤー等の電子デバイス用配線材料、ナノスケールの物質の分離膜、高効率な光触媒、ナノファイバーからなる不織布(ナノファブリック)を利用した再生医療用培地やバイオ・ケミカルハザード防止用フィルターなどとして、ヒドロゲルでは達成困難な用途に用いることができる。
また、特許文献1には、ニトロ基を有する芳香族ジカルボン酸から構成されるポリアミドと塩化鉄等の金属塩を用いる有機ゲル化剤が記載されているが、まずゲル化剤を溶媒に均一に溶解した後凝集剤としての金属塩を添加するといった二段の操作が必要であり、金属塩による着色、容器や器具の腐食といった問題も生じてくる。
更に、特許文献2には、シクロヘキサン誘導体からなる有機ゲル化剤が記載されているが、最小ゲル化濃度が15g/L以上であり、ゲル化能として十分なものとはいえない。
[1]一般式(1)で示されるトリフェニルメタン誘導体。
[2] 一般式(1)においてnが0又は1である[1]のトリフェニルメタン誘導体。
[3] 一般式(2)で示される[2]のトリフェニルメタン誘導体。
[4] R1が炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基である[3]のトリフェニルメタン誘導体。
[5] R1が炭素数6〜10の直鎖又は分岐状アルキル基である[3]のトリフェニルメタン誘導体。
[6] R1が炭素数11〜20の直鎖又は分岐状アルキル基である[3]のトリフェニルメタン誘導体。
[7] [1]〜[6]のいずれかのトリフェニルメタン誘導体を含有する有機ゲル化剤。
[8] [7]の有機ゲル化剤と有機溶媒を含有する有機ゲル。
[9] [8]の有機ゲルからなり、直径500nm以下であることを特徴とする有機ファイバー。
また、本発明のトリフェニルメタン誘導体より極めて簡易なプロセスで有機ナノファイバーを製造できる。このトリフェニルメタン誘導体より得られる有機ナノファイバーは、該有機ナノファイバーをテンプレートとして用いて作製される金属ナノワイヤー等の電子デバイス用配線材料、ナノスケールの物質の分離膜、高効率な光触媒、また、ナノファイバーからなる不織布(ナノファブリック)を利用した再生医療用培地やバイオ・ケミカルハザード防止用フィルターなどに用いることができる。
これらの中で、特に,n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコサデシル、ネオペンチル基が好ましい。
なお、一般式(1)及び(2)の複数個のR1は、同一でも異なっていても良い。
炭素数2〜10の直鎖又は分岐状アルキレン基としては、例えば、エチレン,プロピレン,ブチレン,イソブチレン,ペンチレン,イソペンチレン,ネオペンチレン,ヘキシル,シクロヘキシレン,へプチレン,オクチレン,ノニレン,デカニレン基などが挙げられる。
トリフェニルメタン誘導体として、一般式(1)の化合物の中でも、nが0又は1である化合物はトリフェニルメタン構造原料の入手のしやすさから好ましく,さらにウレア結合を有する化合物はゲル化能が高いことから、一般式(1)においてnが0でXがNHである一般式(2)の化合物が特に好ましい。
R1の炭素数が1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基であると例えばプロピレンカーボネートのような極性が高い溶媒に対するゲル化能が高い。また、R1の炭素数が6〜10の直鎖又は分岐状アルキル基であるとイソプロパノールのような極性溶媒に対するゲル化能が高い。更に、R1の炭素数が11〜20の直鎖又は分岐状アルキル基であるとトルエン,デカリンのような疎水性溶媒に対するゲル化能が高い。すなわち,本発明の有機ゲル化剤は化合物中の側鎖の種類を変えることにより,多種多様な極性の溶媒に対してゲル化が可能となる。
一般式(1)で示されるトリフェニルメタン誘導体は、トリフェニルメタントリイソシアネートと、下記の式(3)で示されるモノアミン、式(4)で示されるモノオールおよび式(5)で示されるモノカルボン酸またはその酸ハロゲン化物から選ばれる化合物を、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、メチレンクロライド、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒の存在下、若しくは無溶媒下で反応させるか、トリフェニルメタントリアミン(ロイコ塩基)に、下記の式(6)で示されるモノイソシアネートまたは式(5)で示されるモノカルボン酸の酸ハロゲン化物を、上記の溶媒存在下若しくは無溶媒下で反応させることにより得ることができる。反応溶液の濃度は1〜90%が好ましく,5〜50%が特に好ましい。
式(3)で示されるモノアミン化合物は、式(4)で示されるモノオール化合物の末端ヒドロキシ基をアミノ基に変換することにより合成することができ、例えば,ハンツマン・コーポレーション製ジェファーミンMシリーズが商品名として挙げられる。
式(5)で示されるモノカルボン酸化合物は、上記式(4)で示されるモノオールの末端ヒドロキシ基を酸化することにより合成できる。
式(6)で示されるモノイソシアネート化合物は、上記式(3)で示されるモノアミンの末端アミノ基をイソシアネート基に変換することにより合成できる。
なお、本発明のトリフェニルメタン誘導体は、塗料用硬化剤として使用されるトリフェニルメタントリイソシアネートから製造されることが原料入手の点から好ましい。
トリフェニルメタン構造は剛直でありながら、側鎖が放射状に伸びているため結晶化が起こりにくく、疎水性相互作用による自己組織化が起こりやすい。また、ウレア結合、ウレタン結合およびアミド結合の結合群は水素結合性が大きく、分子間相互作用による巨大繊維状会合体を形成しやすい。
また、本発明のトリフェニルメタン誘導体は、有機溶媒と混合することにより膨潤して有機ゲルを形成する。有機ゲルを作る場合の有機溶媒に対するトリフェニルメタン誘導体の使用量は、有機溶媒の種類によって異なるが、通常1〜50g/L、好ましくは2〜15g/Lである。ゲル化温度は室温から有機溶媒の沸点の間で選択することができる。
なお、各実施例で得られたトリフェニルメタン誘導体のゲル化能試験を次のように行った。
蓋付試験管に化合物(トリフェニルメタン誘導体)0.01gを入れ、1mlの有機溶媒を加えて加熱溶解した。得られた溶液を室温(25℃)で30分静置し、10g/L濃度でのゲル化の可否を調べた。ゲル化したものについては最小ゲル化濃度(g/L)を求めた。すなわち蓋付試験管に化合物を0.01gから減らして精秤し、1mlの各有機溶媒を加えて、80〜200℃に1分間加熱溶解後ゲル化濃度を下げた溶液を調製し、25℃の恒温槽に静置した。30分後、試験管を傾けても溶液が染み出さず、軽く振っても形の崩れない状態をゲルと判断し、その際の最小ゲル化濃度(g/L)を測定した。なお、試験結果を表1に示すが、ゲル化能を示さなかったものについては×とし、ゲル化能試験を実施していないものについては−とする。
反応容器に、ステアリルアミン(関東化学製試薬)2.96gの乾燥メチレンクロライド10mL溶液を仕込み、トリフェニルメタントリイソシアネート(TPMTI)の酢酸エチル27重量%溶液(住化バイエルウレタン製、商品名:デスモジュールRE、NCO当量:441)4.38gにジメチルアセトアミド(DMAc)10mLを加えた溶液を滴下ロートを用いて、ゆっくり滴下し、室温で1時間攪拌した。IR(KBr法)における2230cm−1のNCO基の消失により、反応の終了を確認した。得られた反応混合物を多量の蒸留水中に加え晶析し、カラムクロマトグラフィーにより分離精製後,目的生成物を得た。収量は10.0g(収率90%)であった。ゲル化能試験結果を表1に示す。
元素分析値(C76H130N6O3として)
C H N 理論値(%) 77.6、11.1、7.2
C H N 実測値(%) 78.1、11.0、7.4
IR分析ではNCO(イソシアネート基)由来の2231cm-1の吸収ピークが消失し、ウレア由来の1639cm-1の吸収ピークが認められた。
仕込み原料と元素分析およびIR分析から、生成物の構造式は式(7)と判定される。
実施例1において,ステアリルアミンをオクチルアミン(花王製)4.35gに代えた以外は同様とした。ゲル化能試験結果を表1に示す。
元素分析値(C46H70N6O3として)
C H N 理論値(%) 73.2、9.3、11.1
C H N 実測値(%) 73.1、9.4、11.0
IR分析ではNCO(由来の2231cm-1の吸収ピークが消失し、ウレア由来の1636cm-1の吸収ピークが認められた。
仕込み原料と元素分析およびIR分析から、生成物の構造式は式(8)と判定される。
実施例1において,ステアリルアミンをn−ブチルアミン(関東化学製試薬)4.35gに代えた以外は同様とした。ゲル化能試験結果を表1に示す。
元素分析値(C34H46N6O3として)
C H N 理論値(%) 69.6, 7.9, 14.3
C H N 実測値(%) 69.8,7.8, 14.1
IR分析ではNCO(由来の2231cm-1の吸収ピークが消失し、ウレア由来の1637cm-1の吸収ピークが認められた。
仕込み原料と元素分析およびIR分析から、生成物の構造式は式(9)と判定される。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
最小ゲル化濃度(g/L)
有機溶媒 実施例1 実施例2 実施例3
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
トルエン 2 × −
1,1,2,2-テトラクロロエタン 4 − −
デカリン 2 × ×
2-プロパノール × 5 ×
ベンゾニトリル × 5 ×
プロピレンカーボネート × × 5
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
この試験結果から、本発明のトリフェニルメタン誘導体は、低分子の有機化合物でありながら、他の凝集剤の使用を必要とせず、置換基の種類を代えることにより数種類の有機溶媒を加温下でゲル化させる能力を有していることが分かる。
tert−ブタノール200g(2.7mol),1,9−ノナンジオール100g(0.625mol)及び硫酸2gを500mlナスフラスコに入れ,5時間加熱還流後,水酸化ナトリウム水溶液で中和した。未反応tert−ブタノールを留去後,ヘキサンを加え攪拌した。ヘキサン不溶のジオール濾過により取り除きヘキサン層を水洗後,無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後,溶媒を留去し,得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し,9−tert−ブトキシー1−ナノオールを得た。
次に実施例1において,ステアリルアミンを9−tert−ブトキシー1−ナノオール4.05gに代え,触媒としてジラウリル酸ジブチルスズを1000ppm加えた以外は同様とした。
元素分析値(C61H97N3O9として)
C H N 理論値(%) 72.1,9.6,4.1
C H N 実測値(%) 72.0,9.5,4.3
IR分析ではNCO(由来の2231cm-1の吸収ピークが消失し、ウレタン由来の1620cm-1の吸収ピークが認められた。
仕込み原料と元素分析およびIR分析から、生成物の構造式は式(10)と判定される。なお該構造式において+はtert−ブチル基を示す。
蓋付試験管に実施例1で得られた化合物(トリフェニルメタン誘導体)0.01gを入れ、1mlの1,1,2,2−テトラクロロエタンを加えて加熱溶解した。得られた溶液を室温(25℃)で30分静置し,得られた有機ゲルを貧溶媒であるメタノールに6時間浸漬し,溶媒置換させた。白色のゲル状物を60℃のオーブンで1時間加熱乾燥させ,白色固体を得た。白色固体は電界放射型走査電子顕微鏡で観察した。その結果、図1に示すように,直径50nm〜150nm程度の有機ファイバーが確認された。
Claims (9)
- 一般式(1)においてnが0又は1である請求項1に記載のトリフェニルメタン誘導体。
- R1が炭素数1〜5の直鎖又は分岐状アルキル基である請求項3に記載のトリフェニルメタン誘導体。
- R1が炭素数6〜10の直鎖又は分岐状アルキル基である請求項3に記載のトリフェニルメタン誘導体。
- R1が炭素数11〜20の直鎖又は分岐状アルキル基である請求項3に記載のトリフェニルメタン誘導体。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載のトリフェニルメタン誘導体を含有する有機ゲル化剤。
- 請求項7に記載の有機ゲル化剤と有機溶媒を含有する有機ゲル。
- 請求項8記載の有機ゲルからなり、直径500nm以下であることを特徴とする有機ファイバー。
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