JP2005226096A - 電子部品用銅又は銅合金板・条材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 樹脂密着性に優れかつ電気絶縁性を有する放熱板用銅又は銅合金板・条材を得る。
【解決手段】 最表面にSi換算付着量で0.5mg/m以上のシラン化合物被膜が形成され、その下層に厚さ1000〜2000Åの酸化皮膜が形成された銅又は銅合金板・条材。40℃〜60℃のシランカップリング剤水溶液を、銅又は銅合金板・条の表面に塗布して該表面にシラン化合物被膜を形成した後、これを加熱処理し、前記シラン化合物皮膜の下層に前記銅又は銅合金板・条の酸化皮膜を厚さ1000〜2000Åの厚さで形成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、半導体装置等の電子部品に用いる銅又は銅合金板・条材に関する。より詳しくは、樹脂との密着性に優れ、樹脂系接着剤によって樹脂又は半導体素子との接着及び封止樹脂との接着を要するBGA(Ball Grid Alley)の放熱板用として特に適する銅又は銅合金板・条材に関する。
LSIの小型化、高集積化に伴い、半導体パッケージはQFP(Quad Flat Package)からBGAへと変化している。また、パッケージの放熱性の観点から放熱板を装着したBGAが開発されてきた。この放熱板付きBGAパッケージは、樹脂基板に樹脂系接着剤を用いて放熱板を接着し、半導体素子の接着にも樹脂系接着剤を使用して製造される。放熱板には通常、熱伝導性の高い銅又は銅合金が使用されるが、その表面には耐食性を加味するため、Niめっきが施されている(下記特許文献1)。
このBGAパッケージは、通常リフローはんだ付けによってプリント基板に実装されるが、その際の熱応力による影響等により樹脂との接着界面で剥離する場合があり、放熱板と樹脂基板の間又は放熱板と半導体素子との間に生じる隙間により放熱性が低下し、部品の機能を失うことになる。そのため、現状では放熱板と樹脂接着剤の接合界面に黒化処理を施し、樹脂との密着性を向上させることで剥離問題を回避している(下記特許文献2)。
しかし、黒化処理は処理コストが高く処理が非常に複雑で処理皮膜の安定性が悪い。そこで、皮膜安定性に優れ、低コストかつ樹脂密着性に優れるシラン化合物を皮膜とした表面処理技術が提案された(下記特許文献3,4)。
特開平3−294494号公報 特開平3−236267号公報 特開2001−342580号公報 特開2002−270740号公報
銅又は銅合金板・条の表面にシラン化合物皮膜を形成すると、樹脂密着性に優れるため、放熱板等の電子部品の用途に適するが、さらにこのシラン処理した放熱板等の電子部品用銅又は銅合金板・条には、半導体チップとの間で電気絶縁性が求められることがある。
本発明はこの要請に対応してなされたもので、樹脂密着性に優れかつ電気絶縁性を有する電子部品用銅又は銅合金板・条材を得ることを目的とする。
本発明に係る電子部品用銅又は銅合金板・条材は、最表面にSi換算付着量で0.5mg/m以上のシラン化合物被膜が形成され、その下層に厚さ1000〜2000Åの酸化皮膜が形成されていることを特徴とする。この酸化皮膜は基材である銅又は銅合金板・条の表面が酸化されて形成される銅又は銅合金の酸化皮膜である。
この銅又は銅合金板・条材は、片面に前記シラン化合物皮膜及び酸化皮膜が形成され、他方の面にNi又はNi合金めっきが施されていることが望ましい。
また、本発明に係る電子部品用銅又は銅合金板・条材の製造方法は、40℃〜60℃のシランカップリング剤水溶液を、銅又は銅合金板・条の表面に塗布して該表面にシラン化合物被膜を形成した後、これを加熱処理し、前記シラン化合物皮膜の下層に前記銅又は銅合金板・条の酸化皮膜を厚さ1000〜2000Åの厚さで形成することを特徴とする。
本発明に係る銅又は銅合金板・条は、最表面にシラン化合物皮膜が形成されていることにより樹脂密着性に優れ、半導体装置等の電子部品用、特にBGA用の放熱板用として好適である。同時に、前記シラン化合物皮膜の下層に、基材である銅又銅合金板・条の表面が酸化してできた、所定厚さの酸化皮膜が形成されていることにより、優れた電気絶縁性が得られる。
また、片面に前記シラン化合物皮膜及び酸化皮膜を形成し、他方の面にNi又はNi合金めっきを形成した場合、片面が樹脂により被われ、他方の面が大気に露出する放熱板等において、他方の面の耐食性が向上する。
シラン化合物皮膜は、基材である銅又は銅合金板・条やその表面に形成される酸化被膜と化学的な結合(共有結合)を形成することが可能であり、さらにシラン化合物皮膜がもつ有機官能基は樹脂とも共有結合を形成する。その結果、樹脂と基材である銅又は銅合金板・条との密着性が向上し、同時に、酸化被膜の存在により電気絶縁性を付与することが可能となる。
金属板・条材の最表層にシラン化合物皮膜が形成されることにより、高い樹脂密着性が得られ、高いダイシェア強度値が得られ、シェア強度測定時の樹脂破壊モードが樹脂内破壊となる。このシラン化合物皮膜はアミノ基を有するアミノシラン化合物であるとより密着効果が高い。
皮膜中におけるシラン化合物のSi換算付着量が0.5mg/mに満たない場合、十分な皮膜が形成されずに樹脂との密着性が不十分で、シェア強度測定時の樹脂の破壊が樹脂内破壊と界面剥離が混じった状態(一部界面剥離状態)になる。また、シラン化合物の付着量が余りに多くなると、均一に塗布するのが難しくなり、製品毎に付着量のばらつきが出て、かえって樹脂密着性が劣ってくる可能性がある。従って、シラン化合物のSi換算付着量は0.5mg/m以上とし、望ましくは0.5〜5mg/m、さらに望ましくは0.5〜3mg/mとする。
シラン化合物皮膜と樹脂とは化学的な結合を形成するが、結合に寄与するシランカップリング剤の有機官能基は、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基のいずれでも良く、望ましくはアミノ基を有するシランカップリング剤がより効果が高い。アミノシラン化合物としては、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、p−[N−(2−アミノエチル)アミノメチル]フェネチルトリメトキシシラン、3−[N−アリル−N(2−アミノエチル)]アミノプロピルトリメトキシシラン等を用いることができる。
一方、シラン化合物被膜の下層に形成された酸化被膜の存在により、電気絶縁効果を確保するのであるが、その被膜厚さが1000Åに満たないと、十分な電気絶縁性が得られない。また、酸化被膜厚さが2000Åを超える場合、電気絶縁性は十分付与できるが、酸化皮膜の剥離による密着性の劣化が生じる。従って、酸化皮膜厚さは1000〜2000Åとし、より高い電気絶縁効果を得るためには酸化皮膜は厚い方がよく、望ましくは1500〜2000Åとする。
このようなシラン化合物皮膜と酸化皮膜を基材である銅又は銅合金板・条の表面に形成するには、まず、シランカップリング剤水溶液を、銅又は銅合金板・条の表面に塗布する。この塗布の方法は、シランカップリング剤水溶液中に1秒以上浸漬させればよいが、スプレー、ハケやロールによる塗布等、他の方法でも良い。また、液安定性付与のため溶媒としてアルコール等を添加してもよい。
シランカップリング剤の処理濃度は、濃度0.05%(vol%)以上が適しており、これにより、Si換算付着量が0.5mg/m以上のシラン化合物皮膜を形成することができる。濃度0.05%未満では、シリコン換算付着量が0.5mg/m以上のシラン化合物皮膜を得るのが難しくなり、シェア強度測定時の樹脂破壊モードが一部界面剥離状態となるなど、樹脂密着性が不十分となる。また、処理温度(水溶液温度)は40〜60℃が適し、この温度範囲内においてより安定した樹脂密着性が得られる。
続いて、シラン化合物被膜を付着させた銅又は銅合金板・条を適当な加熱条件下で加熱する。250〜300℃×1分〜10分程度加熱(温度が高いほど短時間でよい)することにより、銅又は銅合金板・条表面に酸化被膜を厚さ1000〜2000Å程度成長させることができ、その結果十分な電気絶縁性が得られる。この加熱によって樹脂密着性は低下しない。
銅合金板・条の樹脂と接合させる面には、前記シラン化合物皮膜及び酸化皮膜を形成し、他方の面には耐食性付与のため、Ni又はNi合金めっきを施すことが望ましい。Ni合金めっきは、Ni−Sn、Ni−Fe、Ni−P、Ni−Co等の2元系、あるいはNi−Cu−Sn、Ni−Cu−Fe、Ni−Co−P等の3元系、さらには多元系であってもよい。
基材である銅又は銅合金板・条としては、純銅、Cu−Fe−P系合金、Cu−Ni−Si系合金、Cu−Cr−Zr合金等、必要とされる用途に合わせて適宜選べばよい。
板厚0.4mmのCu−0.1wt%Fe−0.03wt%P(C19210)からなる銅合金板の片面にNiめっきを行い、続いて、表1に示すNo.1〜17については、同表に示すシランカップリング剤の水溶液に、種々の条件(濃度、温度、浸漬時間)にて浸漬処理を行い、シラン化合物皮膜を形成させた。その後、表1に示す種々の加熱条件にて酸化被膜を形成させた。No.18,19についてはシラン処理を行わず、No.20については比較のため黒化処理を行った。
No.1〜20の銅合金板材を供試材とし(各No.とも複数個)、非Niめっき面について、シラン化合物付着量、酸化皮膜厚さ、電気絶縁性(接触抵抗)及び樹脂密着性(シェア強度と樹脂破壊モード)を下記要領にて測定した。ただし、No.18〜20についてはシラン化合物付着量の測定は行っていない。
Figure 2005226096
[シラン化合物付着量] シラン化合物の付着量(Si量換算)は、ICP発光法を用いて測定した。
[酸化皮膜厚さ] 酸化皮膜の厚さはカソード還元法を用いて測定した。供試材を0.1N−KCl水溶液中にて0.1mA/cmで電解し、酸化銅が還元されるときの電位と反応に使用された電気量を測定する。得られた電気量に見合う亜酸化銅の量を求め、酸化皮膜厚さに換算した。
[電気絶縁性] 電気絶縁性に関しては、4端子法による接触抵抗測定にて評価した。
[樹脂密着性] 樹脂密着性は、供試材から切り出した試験材の非Niめっき面に、フィルムタイプのオレフィン系樹脂接着剤(住友3M社製1592)を用いてSiチップを接着した後、200℃の温度雰囲気下にてせん断強度(ダイシェア強度)を測定した。同時に、樹脂の破壊モードを検査した。この時、破壊モードが樹脂内破壊のものを○、一部界面剥離を△、完全界面剥離のものを×とした。
Figure 2005226096
測定結果を表2に示す。
表2に示すように、シラン化合物の付着量と酸化皮膜厚さが適切なNo.1〜11は、シェア強度が高く、破壊モードが樹脂内であり、絶縁抵抗も高い。なお、No.12,13はシラン処理温度が適切でなかったため、破壊モードが樹脂内のものと一部界面剥離のものが混在していたが、トータルで樹脂密着性は合格圏内と評価した。
一方、No.14はシラン化合物の付着量が少ないため、樹脂密着性が劣り、No.15,16は酸化皮膜厚さが小さいため絶縁抵抗が低く、No.17は酸化皮膜厚さが過大なため樹脂密着性が劣り、No.18,19はシラン化合物被膜を形成していないため、樹脂密着性が劣る。
実施例1のNo.2と同じ条件で、シラン化合物皮膜及び酸化皮膜を形成し、シラン化合物付着量、酸化皮膜厚さ、電気絶縁性(接触抵抗)及び樹脂密着性(シェア強度と樹脂破壊モード)を測定した。ただし、樹脂密着性については、実施例1のフィルムタイプのオレフィン系樹脂接着剤(住友3M社製1592)の代わりに、エポキシ系の樹脂接着剤(エイブルスティック社製561K)を用いた。
測定結果は、シラン化合物付着量;1mg/m、酸化皮膜厚さ;1800Å、絶縁抵抗:2000mΩ以上、シェア強度:2.1N/mm、樹脂破壊モード:樹脂内であった。

Claims (3)

  1. 銅又は銅合金板・条を基材とし、その最表面にSi換算付着量で0.5mg/m以上のシラン化合物被膜が形成され、その下層に前記銅又は銅合金板・条の酸化皮膜が1000〜2000Åの厚さで形成されていることを特徴とする電子部品用銅又は銅合金板・条材。
  2. 前記銅又は銅合金板・条の片面に前記シラン化合物皮膜及び酸化皮膜が形成され、他方の面にNi又はNi合金めっきが施されていることを特徴とする請求項1に記載された電子部品用銅又は銅合金板・条材。
  3. 40℃〜60℃のシランカップリング剤水溶液を、銅又は銅合金板・条の表面に塗布して該表面にシラン化合物被膜を形成した後、これを加熱処理し、前記シラン化合物皮膜の下層に前記銅又は銅合金板・条の酸化皮膜を厚さ1000〜2000Åの厚さで形成することを特徴とする電子部品用銅又は銅合金板・条材の製造方法。
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