〔第1実施形態〕
以下、図1〜図13を用いて、本発明に係る車両用アンダプロテクタ構造の第1実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置10が搭載されたSUV(スポーツユーティリティヴィークル)タイプの自動車12の外観斜視図が示されている。この図に示されるように、この種の自動車12では、車体の前端部に配置されるフロントバンパ14の高さが高めに設定されている。なお、図2に示されるように、フロントバンパ14は、車両幅方向を長手方向として配置された長尺状のフロントバンパリインフォースメント16と、このフロントバンパリインフォースメント16の前側に配置され意匠を構成するフロントバンパカバー18と、フロントバンパリインフォースメント16とフロントバンパカバー18との間に介在される長尺状のアブソーバ(緩衝材)20と、によって構成されている。また補足すると、図1は、フロントバンパ14におけるフロントバンパカバー18の一部とアブソーバ20を除去し(カットラインを符号CLで示す)、フロントバンパリインフォースメント16と車両用アンダプロテクタ装置10との関連性を視覚的に捉え易いようにした図である。
車両用アンダプロテクタ装置10は、上記フロントバンパ14の下側に車両幅方向を長手方向として配置されたバー状のアンダプロテクタ本体22と、このアンダプロテクタ本体22を車体前部に揺動可能に支持する複数の支持手段24と、によって構成されている。なお、アンダプロテクタ本体22及びフロントバンパリインフォースメント16は、フロントバンパ14のコーナー部(図1に示される車両横軸Qに対して約30°の接触角をなす位置)をほぼカバーする幅方向寸法を有している。アンダプロテクタ本体22は、その長手方向(車両幅方向)に複数本(一例として、本実施形態では、三本)に分割されている。以下、分割された各要素を「プロテクタバー26」と称す。プロテクタ部としてのプロテクタバー26は、パイプ状の芯材26Aと、この芯材26Aの外周部に巻き付けられた弾性部材(保護材)26Bと、によって構成されている。
一方、支持手段24は、各プロテクタバー26の長手方向の両端部に対応してそれぞれ配設されている。具体的な構成について説明すると、図2〜図6に示されるように、支持手段24は、側面視でアングル状に形成された取付ブラケット28と、この取付ブラケット28に揺動可能に支持された支持部材としての支持アーム30と、支持アーム30に所定の保持力を与える保持手段32と、によって構成されている。
取付ブラケット28の上部34は車両後方側が開放された断面コ字状に形成されており、ボルト36及びウエルドナット38によってフロントバンパリインフォースメント16の後部壁16Aに固定されている。また、取付ブラケット28の下部40は車両下方側が開放された断面コ字状に形成されており、ボルト42及びウエルドナット44によってフロントバンパリインフォースメント16の下部壁16Bに固定されている。
また、取付ブラケット28の下部40の左右の側壁40Aの間には、隣接する一対の支持アーム30の基端部が挿入されている。一対の支持アーム30の基端部及び取付ブラケット28の左右の側壁40Aには、図6に示されるように、同軸上にボルト挿通孔46、48が形成されている。また、一対の支持アーム30の基端部の間及び各支持アーム30の基端部の外側には(各支持アーム30の基端部の軸方向の位置決めをするための)円筒状のスペーサ50がそれぞれ配設されており、四個のボルト挿通孔46、48及び三個のスペーサ50内へ一方の側壁40Aの外側から取付ボルト(段付きボルト)52(広義には回転中心軸と把握される要素である)が挿入され、他方の側壁40Aの外側からナット54が締め込まれることにより、一対の支持アーム30が取付ボルト52回りに揺動可能に支持されている。
なお、取付ボルト52及びナット54の締付けトルクは、保持手段32が支持アーム30に与える付勢力(保持力)との関係で、スペーサ50と支持アーム30の基端部の側面との間に所定の摩擦力が作用するように定められている。
図4〜図6に示されるように、保持手段32は、角柱状のガイド部材56と、このガイド部材56に巻装された付勢手段としての圧縮コイルスプリング58と、によって構成されている。さらに、ガイド部材56は、角柱状に形成された軸部56Aと、この軸部56Aの下端部近傍に一体形成された鍔状のスプリング係止部56Bと、このスプリング係止部56Bの下面側から所定の幅をもって延出されかつ先端部の断面形状が半円形状とされたアーム押圧部56Cと、によって構成されている。
取付ブラケット28の上部34の下端には、中央部に方形のガイド孔60が形成された取付座62が溶接により配設されている。このガイド孔60内へガイド部材56の上端部が挿通されることにより、ガイド部材56は回り止めされた状態で上下方向に移動可能とされている。
圧縮コイルスプリング58の上端部は取付座62の下面に当接係止されており、又下端部はガイド部材56のスプリング係止部56Bに当接係止されている。従って、圧縮コイルスプリング58は、ガイド部材56を車両下方側へ押圧付勢している。
上述したガイド部材56のアーム押圧部56Cは、隣接する一対の支持アーム30の基端部に形成されたカム部64に同時に当接されている。換言すれば、アーム押圧部56Cは、隣接する一対の支持アーム30のカム部64に掛け渡される程度の幅方向寸法を有している。従って、隣接する一対の支持アーム30は、同一の保持手段32によって保持されていることになる。
また、上記カム部64は、角部を境にして互いに略直交する第1カム面64Aと第2カム面64Bとを備えている。ガイド部材56のアーム押圧部56Cの押圧点(付勢力の荷重作用点)は、支持アーム30の回転中心軸となる取付ボルト52よりも車両後方側へ所定距離だけオフセットした位置に設定されている。従って、支持アーム30は、取付ボルト52回りに車両前方側へ回転付勢されている。
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図2に示される状態が、車体前部が衝突体66に衝突した瞬間の状態(衝突体66を取り除けば、通常の車両走行時における車両用アンダプロテクタ装置10の組付状態)である。なお、この衝突体66は歩行者の脚部を模擬したもので、概略的には大腿部を模擬した上部円筒部66Aと、脛部を模擬した下部円筒部66Bと、膝部を模擬した屈曲部66Cとから成る。この状態では、圧縮コイルスプリング58の付勢力を受けてガイド部材56のアーム押圧部56Cが、支持アーム30のカム部64の第1カム面64Aを車両下方側へ押圧している。このため、支持アーム30は、取付ボルト52を回転中心として車両前方側へ所定回転角だけ回転した位置に保持されている。
より具体的には、アンダプロテクタ本体22は、フロントバンパカバー18の前面より後方でフロントバンパリインフォースメント16の前面より前方の所定位置に保持されている。アンダプロテクタ本体22がこの位置に保持された状態を維持できるのは、取付ボルト52の締結力によってスペーサ50と支持アーム30の側面との間に生じる摩擦力と、圧縮コイルスプリング58の付勢力によって支持アーム30に作用する車両前方側への回転モーメントとが、この位置で釣合うように締付トルク等が設定されているからである。なお、上記構成以外にも別途ストッパを設ける構成を採ってもよい。また、このときのアンダプロテクタ本体22の位置は、フロントバンパカバー18の下端とタイヤ68の接地面の前端とを結ぶ線分P(アプローチアングルライン)に対して下側にはみ出した位置とされている。
図2に示される状態(図2を車両用アンダプロテクタ装置10の組付状態を現した側面図と観た場合)から衝突時になると、図3に示されるように、フロントバンパカバー18及びアブソーバ20が車両前後方向に圧縮変形した後、衝突体66の下部円筒部66Bが車両用アンダプロテクタ装置10のアンダプロテクタ本体22に当接する。なお、衝突体66との衝突時に、アンダプロテクタ本体22のプロテクタバー26が衝突体66の下部円筒部66Bの重心位置Gに当接するように、支持アーム30の腕の長さ等が設定されている。このように設定する意図は、プロテクタバー26が衝突体66の下部円筒部66Bの重心G付近に当たることで下部円筒部66B自身の回転モーメントを抑えることができ、ひいては屈曲部66Cの曲がりを最小限に抑えることができるからである。
これにより、アンダプロテクタ本体22のプロテクタバー26が二点鎖線図示位置から実線図示位置まで取付ボルト52回りに車両後方側へ回転する。またこの際、プロテクタバー26の弾性部材26Bが弾性変形する。その後、衝突体66の上部円筒部66Aが、屈曲部66C回りに実線図示位置から二点鎖線図示位置まで屈曲する。上記のプロテクタバー26の車両後方側への移動とその際の弾性部材26Bの弾性変形により、衝突体66へ入力される筈の衝突反力(即ち、衝突時のエネルギー)の一部が吸収される。これにより、衝突時の衝突体66への入力荷重が低減されると共に、プロテクタバー26にプロテクトされることで衝突体66がフロントバンパ14の下側へ潜り込む事態が未然に防止される。
なお、図3における実線図示位置がプロテクタバー26の最大後方移動位置であり、二点鎖線図示位置から実線図示位置までの移動距離S0が、車体前部が衝突体66と衝突した際の最大移動距離ということになる。また、上部円筒部66Aが二点鎖線図示位置まで屈曲したときの屈曲角θが、上部円筒部66Aの最大の曲がり角である。
ここで、本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置10では、車両幅方向を長手方向として配置されるアンダプロテクタ本体22が複数本のプロテクタバー26に分割されているため、一本物のアンダプロテクタと比較すると、車両幅方向のどの位置で衝突体66と衝突したかによる衝突体66への入力荷重のバラツキが低減される。
のみならず、前記構成を採った場合、アンダプロテクタ本体22の左右両サイドの端部を支持する支持アーム30以外は、アンダプロテクタ本体22の分割位置にて支持アーム30が隣接して二本配置されることとなり、それぞれの支持アーム30の基端部に対応して保持手段32を配置したならば、プロテクタバー26に与えられる支持剛性が支持アーム30が一本のところと二本のところとで異なってくる。そこで、本実施形態では、そのことに着目し、これを避けるため、分割位置から延出された隣接する一対の支持アーム30を共通の保持手段32によって保持させることとした。これにより、例えば、任意の単一のプロテクタバー26に衝突体66が衝突した場合も、たまたま隣り合うプロテクタバー26の分割位置を跨いで二つのプロテクタバー26に衝突体66が衝突した場合も、保持手段32の変位は殆ど変わらず、略一定となる。その結果、本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置10では、衝突体66が車両幅方向のどの位置で衝突しても、衝突体66に作用する反力を略均一にして衝突体66に対する影響を最小限に抑えることができる。
また、本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置10では、支持アーム30の基端部に第1カム面64A及び第2カム面64Bを備えたカム部64を設け、当該カム部64に共通のガイド部材56を当接させることとしたので、何ら部品点数を増加させることなく、支持アーム30の回転量に応じて当該支持アーム30に作用する付勢力を調節することができる。
以下、図7〜図9を用いて、上記効果、即ち同一のアンダプロテクタ本体22内では、車両幅方向の位置を問わず、衝撃エネルギーがほぼ一定、つまり衝突体66に与える反力と移動量はほぼ一定になることを説明する。
図7は、仮にアンダプロテクタ本体22が支持手段24によって両端で単純二点支持された場合において、衝突体66がアンダプロテクタ本体22に衝突荷重F0を与えた状態をモデル化したものである。このときの衝突荷重F0の荷重入力点におけるアンダプロテクタ本体22の撓み量をSbとすれば、衝突体66がアンダプロテクタ本体22に与える衝突エネルギーは、概略0.5×F0×Sbで表される。
一方、アンダプロテクタ本体22の中央にF0の荷重をかけた場合の撓み量をS0とすると、アンダプロテクタ本体22の片側の支持手段24からの距離Xと左右の支持手段24間の距離Lとの比から、Sb=S0×F0×(X/L)2×(1−X/L)2/16であり、図8のようになる。
また、そのときの支持手段24(X=0の側)での反力Fは、F=F0×(1−X/L)で表され、図9のようになる。
従って、各荷重位置で、さらに支持手段24(支点)が(S0−Sb)の移動を行えば、荷重点は合計Sbの移動量となり、0.5×F0×Sbは一定となり、衝撃エネルギーはほぼ一定になる。
図10には、その場合のアンダプロテクタ本体22の移動量と荷重の関係が示されている。このような荷重を発生するように、支持手段24の支持アーム30のカム部64と圧縮コイルスプリング58の特性を決めれば、アンダプロテクタ本体22の撓みと支持点の弾性特性を合わせることで、衝突荷重の入力位置に関係なく、ほぼ一定のエネルギー吸収特性及びほぼ同一の衝突体66の移動量を得ることができる。なお、一例として、F0は4kN程度、Sbは20mm程度である。
次に、路面の突起物等に車両用アンダプロテクタ装置10のアンダプロテクタ本体22が干渉した場合の本装置の作動について説明する。
図11に示されるように、車両用アンダプロテクタ装置10のプロテクタバー26が車止め等の路面の突起物70と干渉すると、プロテクタバー26には車両後方側への押圧力が作用する。このため、プロテクタバー26は取付ボルト52回りに車両後方側へ回転される。この車両後方側への押圧力がF0を超えると、ガイド部材56が支持アーム30のカム部64の第1カム面64Aを乗り越え、第2カム面64Bに到る。このため、圧縮コイルスプリング58の付勢力が漸次減少し、支持アーム30に与える回転力が減少していく。そして、プロテクタバー26がアプローチアングルラインP内の所定の位置(S1)に到ると停止する。これをグラフ化したものが、図12である。
このように本実施形態によれば、プロテクタバー26のフロントバンパ14の下側後方への移動量が所定量(略S0、正確にはS0を若干超えた付近である(図12参照))に達すると、保持手段32から支持アーム30に作用する反力が減少するため、車両後方側へ揺動されたプロテクタバー26ひいてはアンダプロテクタ本体22を、元の位置に復帰させることなく、車体前部の裏面側の所定位置(アプローチアングルラインP内)に保持することが可能となる。従って、路面の車止め等の突起物70とアンダプロテクタ本体22とが干渉した場合には、干渉したプロテクタバー26を車両後方側へ大きく揺動させ、その位置に保持することができる。その結果、本実施形態によれば、プロテクタバー26ひいてはアンダプロテクタ本体22が破損するのを防止することができる。つまり、最初の突起物70との接触でプロテクタバー26をアプローチアングルラインP内へ移動させてしまえば(退避させれば)、次の突起物70とは干渉しなくなり、大きな負荷が繰り返しプロテクタバー26に作用するのを未然に防ぐことができる。
さらに、本実施形態のように、アンダプロテクタ本体22を複数本に分割することにより、突起物70と干渉した際にアンダプロテクタ本体22に捩れが生じ難いというメリットもある。
なお、悪路等、突起物70が存在する場所を通過した後、アンダプロテクタ本体22を手で引き戻せば、ガイド部材56の押圧位置が第2カム面64Bから第1カム面64Aに切り替わるので、車両用アンダプロテクタ装置10を元の状態に容易に復帰させることができる。
また、図13に示されるように、アンダプロテクタ本体22への負荷が除去された場合に、アンダプロテクタ本体22が自動的に元の位置に復帰する特性が得られるように、カム部64と圧縮コイルスプリング58との関係を調整してもよい。この特性の場合、プロテクタバー26の移動量がS0に達した以降、緩やかな荷重増加特性を示す。このような緩やかな荷重増加がもたらされる特性とした場合、プロテクタバー26と突起物70との当接荷重が大きくならないため、プロテクタバー26の表面の損傷を小さく抑えることができると共に、荷重が除去された後は、圧縮コイルスプリング58の付勢力によってプロテクタバー26を自動的に元の位置に復帰させることができる。
なお、上記構成においては、圧縮コイルスプリング58とガイド部材56から成る保持手段32を設定したが、これに限らず、図14に示されるように、ねじりコイルスプリング72を設ける構成を採ってもよい。
簡単に説明すると、この実施形態では、保持手段32及びカム部64に替えて、取付ボルト52にねじりコイルスプリング72が巻装されており、一対の支持アーム74の基端部間に配置されている。ねじりコイルスプリング72の一端部は取付ブラケット76の後端部に形成されたスプリング係止部78に係止されており、又他端部は係止ピン80に係止されている。係止ピン80の両端部は、一対の支持アーム74の下縁に係止されている。これにより、ねじりコイルスプリング72は、一対の支持アーム30を取付ボルト52回りに時計方向へ回転付勢している。なお、取付ブラケット76の前端下部にはストッパピン82が配設されており、支持アーム74の回転ストロークを所定範囲に規制している。また、支持アーム74の基端部には前述したカム部64は形成されていない。
上記構成によっても、図1に示される車両用アンダプロテクタ装置10と同様の作用・効果が得られる。また、圧縮コイルスプリング58の付勢力によってガイド部材56がカム部64を押圧する構成ではなく、ねじりコイルスプリング72の回転付勢力のみが支持アーム74を回転させる力として作用する構成であるため、特性的には図10の破線で示した特性になる。
〔第2実施形態〕
以下、図15及び図16を用いて、本発明に係る車両用アンダプロテクタ構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
この実施形態では、車両用アンダプロテクタ装置90がアンダプロテクタ本体22を強制的にアプローチアングルラインPよりも内側に退避させる強制退避手段92を備えている点に特徴がある。
具体的に説明すると、図15及び図16に示されるように、取付ブラケット28の上部34には、駆動源となるモータ94がモータ取付ブラケット76を用いてボルト及びナットで固定されている。モータ94の出力軸96は車両下方側へ向けて延出されており、取付座62に図示しないベアリング等を介して回転自在に軸支されている。また、出力軸96の先端部の外周面にはウォームギヤ98が形成されている。
一方、隣接する一対の支持アーム30の基端部の間には、セクタギヤ100が配置されている。セクタギヤ100の後端部の外周には、ウォームギヤ98と噛み合う歯部100Aが形成されている。また、セクタギヤ100は、その上部後方寄りの部位にて取付ボルト52に回転可能に支持されている。さらに、セクタギヤ100の前端部には係合ピン102が貫通状態で配置されており、当該係合ピン102の軸方向の両端部が一対の支持アーム30の上縁部に当接係止されている。
上記構成によれば、悪路走行時等、アンダプロテクタ本体22が繰り返し突起物70と当たるような場合には、モータ94を駆動させて、出力軸96をその軸線回りに回転させることにより、セクタギヤ100が取付ボルト52を中心として反時計方向へ回転される。このため、係合ピン102と係合状態にある一対の支持アーム30も取付ボルト52回りに反時計方向へ強制的に回転される。そして、アンダプロテクタ本体22がアプローチアングルラインPよりも内側へ移動した時点で、モータ94が停止される。これにより、アンダプロテクタ本体22を強制的に車両後方側へ退避させることができ、突起物70と繰り返し干渉することによるアンダプロテクタ本体22等の破損を防止することができる。
なお、係合ピン102は一対の支持アーム30の上縁部に当接係止されているだけなので、衝突体66との衝突時には、プロテクタバー26は前述した第1実施形態と同様に車両後方側へ回転(揺動)することができる。
また、この第2実施形態の構成を採る場合には、アンダプロテクタ本体22への負荷が除かれた場合には速やかに一対の支持アーム30を係合ピン102に当接させるべく、カム部64と圧縮コイルスプリング58との関係特性は、前述した図13に示されるものが使用される。
さらに、上記強制退避手段92の作動は、トランスミッションのシフトレンジに連動させると更に効果的である。すなわち、悪路走行時のときのように、ローレンジ又はエクストラローレンジが選択されたときに、モータ94を駆動させてアンダプロテクタ本体22を強制的に退避させるようにすると効果的である。そして、強制退避後、他のシフトレンジが選択された場合には、モータ94を逆転駆動させて強制退避状態を解除すればよい。但し、必ずしもシフトレンジに自動的に連動させる必要はなく、前記の作動をスイッチの手動操作によって行わせても差し支えない。
〔第3実施形態〕
以下、図17〜図21を用いて、第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置110では、小型のSUVタイプの自動車(即ち、比較的フロントバンパ14の高さが低いSUVタイプの自動車)112に対して好適となるように、アンダプロテクタ本体114が平行リンク機構によって構成された支持手段116によって揺動可能に支持されている点に特徴がある。
具体的に説明すると、図17に示されるように、本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置110では、車両幅方向に二分割されたアンダプロテクタ本体114と、このアンダプロテクタ本体114を車体前部に揺動可能に支持する複数の支持手段116と、を含んで構成されている。支持手段116は、各プロテクタバー118の長手方向の両端部にそれぞれ配設されている。
図18〜図21に示されるように、支持手段116は、側面視で略アングル状に構成された取付ブラケット120を備えている。取付ブラケット120は、フロントバンパリインフォースメント16の後部壁16Aにボルト36及びウエルドナット38で固定された断面コ字状の上部122と、この上部122に溶接されかつフロントバンパリインフォースメント16の下部壁16Bの下側に配置される断面コ字状の下部124と、によって構成されている。下部124の前端部には、車両上方側へ折り返されることによりフランジ部124Aが一体に形成されている。このフランジ部124Aには、スプリング係止孔126(図20参照)が形成されている。
上記取付ブラケット120の下部124の内側には、前後に平行に配置された一対のリンク128、130の上端部がピン132を中心として揺動可能に支持されている。各リンク128、130の断面形状はコ字状とされている。また、前側のリンク128の上端部には舌片状のストッパ片134が一体に形成されており、車両前方側への揺動角が所定角度になるとストッパ片134がフランジ部124Aに干渉して、プロテクタバー118がそれ以上車両前方側へ移動しないようになっている。
上記前後一対のリンク128、130の下端部には、正面視で上方が開放されたコ字状に形成されたアーム取付ブラケット135がピン136を中心として揺動可能に支持されている。このアーム取付ブラケット135の底部には、角柱状の支持アーム138の基端部が溶接されている。支持アーム138は車両前後方向を長手方向として配置されており、その前端部にはプロテクタバー118の芯材118Aが溶接により固定されている。
さらに、取付ブラケット120の上部122のフランジ部124Aに形成されたスプリング係止孔126には、広義には付勢手段として把握される引張コイルスプリング140の一端部が係止されている。引張コイルスプリング140の他端部はアーム取付ブラケット135の側壁上部に形成されたスプリング係止部142(図19参照)に係止されている。これにより、引張コイルスプリング140は取付ブラケット120の下部124とアーム取付ブラケット120との間に斜めに掛け渡されることとなり、前後一対のリンク128、130を介して支持アーム138ひいてはプロテクタバー118を車両前方側へ回転付勢している。
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図18及び図19に示された状態が、車体前部が衝突体66に衝突した瞬間の状態である。この状態では、引張コイルスプリング140の付勢力によって支持手段116を介して、アンダプロテクタ本体114が車両前方側の所定位置(アプローチアングルラインPに対して下側にはみ出した位置)に保持されている。なお、保持位置は、ストッパ片134がフランジ部124Aに当接した位置である。
この状態から衝突時になると、図21に実線で示されるように、フロントバンパカバー18及びアブソーバ20が車両前後方向に圧縮変形した後、衝突体66の下部円筒部66Bが車両用アンダプロテクタ装置110のアンダプロテクタ本体114に当接する。これにより、アンダプロテクタ本体114のプロテクタバー118は最大で実線図示位置まで後方移動する。
より具体的には、衝突体66の下部円筒部66Bによってプロテクタバー118が車両後方側へ押圧されることにより、引張コイルスプリング140の付勢力に抗してこれを伸長させ、アーム取付ブラケット135及び支持アーム138が前後一対のリンク128、130の上端部を中心として車両後方側かつ車両上方側へ平行移動する。これにより、プロテクタバー118は初期組付位置(図18図示位置)から図21の実線図示位置へと後方移動する。この際、プロテクタバー118の弾性部材118Bは弾性変形する。その後、衝突体66の上部円筒部66Aが、屈曲部66C回りに車両後方側へ若干屈曲する。上記のプロテクタバー118の車両後方側への移動とその際の弾性部材118Bの弾性変形により、衝突体66へ入力される筈の衝突反力(即ち、衝突時のエネルギー)の一部が吸収される。これにより、衝突時の衝突体66への入力荷重が低減されると共に、プロテクタバー118にプロテクトされることで衝突体66がフロントバンパ14の下側へ潜り込む事態が未然に防止される。
なお、負荷が除去された後は、引張コイルスプリング140の付勢力によってプロテクタバー118は元の位置に復帰する。
一方、プロテクタバー118が突起物と干渉した際には、支持手段116を構成する平行リンク機構の車両後方側及び車両上方側への変位量が更に増加することで、突起物を乗り越える。
ここで、本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置110では、上記の如く、支持手段116が平行リンク機構として構成されているため、比較的フロントバンパ14の高さが低い小型のSUVタイプの自動車112に対して好適である。つまり、第1実施形態のように支持アームが取付部回りに回転するタイプの場合、プロテクタバーは後方移動するにあたって円弧の軌跡を描くため、フロントバンパの高さが低いと、わだち路等を走行した際にプロテクタバーが干渉するおそれがある。しかし、本実施形態のように平行リンク機構を利用すれば、このような車種に対して適用しても支障を来たさない。
〔第4実施形態〕
以下、図22〜図26を用いて、第4実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置150では、本格的な悪路走行を意図したSUVタイプの自動車(即ち、エンジンルームの底部にエンジン部品保護のためのアンダカバー186(図23、図24、図26参照)が取り付けられたSUVタイプの自動車)152に対して好適となるように、アンダプロテクタ本体154を車両前方側かつ車両上方側へ留め置くことを可能とするための機構を備えている点に特徴がある。
具体的に説明すると、図22に示されるように、本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置150では、第1実施形態と同様に車両幅方向に三分割されたアンダプロテクタ本体154と、このアンダプロテクタ本体154を車体前部に揺動可能に支持する複数の支持手段156と、を含んで構成されている。支持手段156は、各プロテクタバー118の長手方向の両端部にそれぞれ配設されている。
図23〜図26に示されるように、支持手段156は、側面視で略直角三角形状に形成された断面コ字状の取付ブラケット158を備えている。取付ブラケット158は、その上部がフロントバンパリインフォースメント16の後部壁16Aの下部にボルト36及びウエルドナット38で固定されている。また、取付ブラケット158の両側部158Aは、取付ブラケット158の中央部158Bよりも下方へ膨らみかつ前方へも膨らんだ略直角三角形状とされている。さらに、取付ブラケット158の中央部158Bには、切り起こしによるスプリング係止部160が一体に形成されている。
上記取付ブラケット120の両側部158Aの下縁側には、前部に対して後部が上方へ所定角度屈曲された支持アーム162の基端部が取付ボルト52回りに揺動可能に支持されている。支持アーム162の先端部は、プロテクタバー164の芯材164Aに溶接により固着されている。
また、支持アーム162の基端部上面と前述したスプリング係止部160との間には、広義には付勢手段として把握される圧縮コイルスプリング166が介在されている。圧縮コイルスプリング166の支持アーム162側の端部には、先端部が半球状に形成されたガイド部材168が装着されている。従って、圧縮コイルスプリング166は、支持アーム162の基端部を略車両斜め後方下側へ押圧付勢しており、これにより支持アーム162を取付ボルト52回りに車両前方側かつ車両上方側へ回転付勢している。
また、上記構成の取付ブラケット158の両側部158Aの下縁前部内側には、ストッパ機構170が配設されている。ストッパ機構170は、取付ブラケット158の両側部158Aの下縁前部の内側に配設された一対のプレート172、174を備えている。一方のプレート172の基端部には、手動又は図示しないモータ等の駆動手段によって回転されるロッド176が、取付ブラケット158の一方の側部158Aの外側から貫通されており、ナット178で締結されることで一方のプレート172とロッド176と一体化されている。従って、ロッド176がその軸線回りに回転すると、プレート172も同一方向へ同一角度だけ回転する。他方のプレート174の基端部は、取付ブラケット158の他方の側部158Aにピン(図示省略)でヒンジ結合されている。他方のプレート174の先端部は、一方のプレート174の先端部とシャフト182によって連結されている。そして、このシャフト182は支持アーム162の上面に対向して干渉可能に配置されている。
さらに、上記構成の支持アーム162の屈曲部近傍(前方側)には、ハンガブラケット184が固定されている。ハンガブラケット184の上面後端部には、支持アーム162の上面との間にシャフト182が挿入可能な隙間が形成されるように延出された舌片状の係合部184Aが一体に形成されている。
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図24に実線で示された状態が、車体前部が衝突体66に衝突した瞬間の状態である。この状態では、圧縮コイルスプリング166の付勢力によって支持手段156を介して、アンダプロテクタ本体154が車両前方側の所定位置(アプローチアングルラインPに対して下側にはみ出した位置)に保持されている。なお、保持位置は、ストッパ機構170のシャフト182に支持アーム162の上面が当接した位置である。
この状態から衝突時になると、フロントバンパカバー18及びアブソーバ20が車両前後方向に圧縮変形した後、図24に二点鎖線で示されるように、衝突体66の下部円筒部66Bが車両用アンダプロテクタ装置150のアンダプロテクタ本体154に当接する。これにより、アンダプロテクタ本体154のプロテクタバー164は最大で二点鎖線図示位置まで後方移動する。
より具体的には、衝突体66の下部円筒部66Bによってプロテクタバー164が車両後方側へ押圧されることにより、圧縮コイルスプリング166の付勢力に抗してこれを縮ませ、プロテクタバー164を初期組付位置(図24実線図示位置)から図24の二点鎖線図示位置へと後方移動させる。この際、プロテクタバー164の弾性部材164Bは弾性変形する。その後、衝突体66の上部円筒部66Aが、屈曲部66C回りに車両後方側へ若干屈曲する。上記のプロテクタバー164の車両後方側への移動とその際の弾性部材164Bの弾性変形により、衝突体66へ入力される筈の衝突反力(即ち、衝突時のエネルギー)の一部が吸収される。これにより、衝突時の衝突体66への入力荷重が低減されると共に、プロテクタバー164にプロテクトされることで衝突体66がフロントバンパ14の下側へ潜り込む事態が未然に防止される。
なお、負荷が除去された後は、圧縮コイルスプリング166の付勢力によってプロテクタバー164は元の位置に復帰する。
一方、予め悪路走行が予定される場合等においては、手動又は図示しないモータを駆動させて、ロッド176を図25の矢印G方向へ所定角度回転させる。これにより、双方のプレート172、174がロッド176と同一方向へ回転し、それに伴ってシャフト182も支持アーム162の上面上を摺動していく。そして、図26の二点鎖線図示位置まで支持アーム162が車両前方側へ回転すると、ハンガブラケット184の係合部184Aにシャフト182が係合される(噛み合う)。その後もモータが駆動回転されることによりロッド176が所定角度だけ軸線回りに回転し、シャフト182のハンガブラケット184への係合量が増加しつつ、図26の実線図示位置まで支持アーム162が車両上方側へ持ち上げられる。そして、この実線図示位置で支持アーム162が保持されることにより、悪路走行等を行っても、アンダプロテクタ本体154が路面の突起物によって損傷を受けるのを防止することができる。
このように本実施形態に係る車両用アンダプロテクタ装置150では、摺動又は自動にて支持アーム162を初期の組付位置よりも車両前方側かつ車両上方側へ移動(退避)させることができるので、エンジンアンダカバー186(図26参照)が配設されているタイプのSUVタイプの自動車112において、アンダプロテクタ本体114の後方移動動作がエンジンアンダカバー186によって阻害されるおそれもなくなる。
なお、この第4実施形態において手動ではなくモータ等の駆動装置を使用する場合には、前述した第2実施形態と同様に、トランスミッションのシフトレンジ(即ち、ローレンジ又はエクストラローレンジが選択された場合)に連動してモータを作動させるようにしてもよい。
また、この実施形態では、圧縮コイルスプリング166を用いたが、これに限らず、トーションバー等の他のばね方式も採用可能である。
上述した第3実施形態及び第4実施形態では、支持手段116、156ごとに支持アーム138、162を回転付勢する付勢手段が単独で用いられていたが、隣り合う支持手段116、156が配設される部分では、第1実施形態と同様に、保持手段を共用することも可能である。その場合は、第3実施形態及び第4実施形態も本発明の一実施形態となる。例えば、第3実施形態の場合であれば、引張コイルスプリング140の一端部をY字状に形成し、当該Y字状の端部を隣り合う取付ブラケット120のフランジ部124Aに同時に係止させる。さらに、引張コイルスプリング140の他端部にT字ピン状のフックを取り付けておき、当該フックの両端部を隣り合うアーム取付ブラケット135に形成した切欠に同時に係止させて、共通の引張コイルスプリング140の付勢力が隣り合うアーム取付ブラケット135に同時に作用するようにすればよい。