JP2005223468A - 準平面型マイクロ波伝送線路 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ジョセフソン電圧標準装置のマイクロ波信号配線に用いて好適な準平面型マイクロ波伝送線路を提供する。
【解決手段】 準平面型マイクロ波伝送線路は、基板上に形成された信号配線導体と、前記信号配線導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体の上部で前記信号配線導体から所定距離を離した位置に形成された一対の接地導体とから構成される。ここにおいて、導体は超伝導体であり、絶縁体は誘電体であり、また、接地導体の間を一部で電気的に接続するエアブリッジが設けられる。
【選択図】 図3
【解決手段】 準平面型マイクロ波伝送線路は、基板上に形成された信号配線導体と、前記信号配線導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体の上部で前記信号配線導体から所定距離を離した位置に形成された一対の接地導体とから構成される。ここにおいて、導体は超伝導体であり、絶縁体は誘電体であり、また、接地導体の間を一部で電気的に接続するエアブリッジが設けられる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、ジョセフソン電圧標準装置のマイクロ波信号配線に用いて好適な準平面型マイクロ波伝送線路に関する。
従来から、マイクロ波〜ミリ波を扱う集積回路で用いられる伝送線路としては、マイクロストリップ線路、スロット線路、コプレナー線路等が用いられている。例えば、マイクロ波伝送線路として用いられるコプレナー導波路(Coplanar Waveguide:CPW)は、図1に示すように、誘電体基板1の一面に信号配線導体2と接地導体3aおよび接地導体3bが設けられた配線構造となっているマイクロ波伝送線路である。この特性インピーダンスは、信号配線導体2と接地導体3aおよび接地導体3bの間隔、導体幅により決まる。
コプレナー導波路は、信号配線の信号配線導体2が2つの接地導体3aおよび接地導体3bにはさまれた構造になっており、誘電体基板1において、基板の一面のみを使って信号伝送回路を構成できるため、回路の特性評価や他の回路との接続が容易になる。また、コプレナー導波路においては、曲がっている部分については、図2に示すように、接地導体間(3aと3b)をつないだ構造のエアブリッジ4を設ける構成としている。これは、マイクロ波伝送線路を曲げると好ましくないモードの電磁波がマイクロ波伝送線路内に発生するため、これを打ち消すために用いられる構造である。なお、図2において、5は絶縁体層、6は絶縁体に開けた貫通孔のビアである。
この種のマイクロ波伝送線路の公知文献としては、例えば、特許文献1に記載されている「マイクロ波伝送線路」が公知である。このマイクロ波伝送線路は、誘電体基板上または半導体基板上に設けた第1の導体膜と第2の導体膜とのそれぞれの端部を絶縁膜を介して重ね合わせた構造となっており、このような構造とすることにより、導体損が小さく、特性インピーダンスの低い線路を誘電体基板上に構成できるものとなっている。
特開昭60−172801号公報
ところで、ジョセフソン電圧標準装置は、バイアス電流とマイクロ波の印加により一定電圧を発生するジョセフソン接合の多数個を直列接続したジョセフソン接合アレーで構成される。このため、このジョセフソン電圧標準装置を構成するためには、基板上にジョセフソン接合アレーおよびマイクロ波伝送線路を配置して構成されるものとなる。
ジョセフソン電圧標準装置におけるマイクロ波伝送線路としては、マイクロストリップ線路とコプレナー導波路が利用されてきた。前述したように、コプレナー導波路は、誘電体基板1の一面に信号配線導体2と接地導体3aおよび接地導体3bが設けられた配線構造(図1)であるため、誘電体基板上に信号配線導体2が接地導体3aおよび接地導体3bにはさまれた構造になっており、誘電体基板の一面のみを使ってマイクロ波の信号伝送ができる。
コプレナー導波路を用いると、誘電体基板の一面のみを使って信号伝送することができるため、回路の特性評価や他の回路との接続が容易になるが、しかし、コプレナー導波路は、信号配線導体と接地導体の間の距離が小さいことが、不純物による絶縁性能の減少や、作製中のごみによる短絡故障が発生する確率が大きく、歩留まりを下げるという問題点があるものとなっている。
信号配線導体と接地導体の距離は大きい方が都合がよいが、この距離は伝送線路に必要とされるインピーダンスにより決まるので、簡単には大きくすることができない。更に、回路構成上において、曲がった部分を設ける必要がある場合には、コプレナー導波路を用いるマイクロ波伝送線路では、図2に示すように、曲がっている部分の接地導体間(3aと3b)をつないだ構造のエアブリッジ4が必要とされ、このエアブリッジ4を設けるため、更に絶縁体層5を設けて、更に、そこに電気的接続のため貫通孔のビア6を設けて接地導体3aおよび接地導体3bの間をエアブリッジ4に対して電気的に接続しなければならない。
つまり、コプレナー導波路を用いるマイクロ波伝送線路では、エアブリッジ4を構成するため、信号配線導体2,接地導体3aおよび接地導体3bの配線層の他に、さらにもう1層の配線層(エアブリッジ4)が必要となり、これら2つの配線層を電気的に分離するための誘電体層または絶縁体層(絶縁体層5)が設けられなければならない。また、配線のため、接地導体3a、3bとエアブリッジ4を接続するための貫通孔のビア6を作製する必要が生ずるものとなっている。このような複雑な構造が、歩留まりの低下につながる可能性があるという問題が生じている。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ジョセフソン電圧標準装置のマイクロ波信号配線に用いて好適な準平面型マイクロ波伝送線路を提供することにある。
上記のような目的を達成するため、本発明による準平面型マイクロ波伝送線路は、基本的な構成として、従来、同一層で構成されていたマイクロ波線路の信号配線導体と接地導体の間に、誘電体または絶縁体をはさむことによって、準平面型となるが、信号配線導体と接地導体を分離する。このような構成により、電気的には信号配線と接地導体は完全に分離されるので、不純物による絶縁性能の低下やごみなどによる短絡故障を防ぐことができる。
すなわち、本発明による準平面型マイクロ波伝送線路は、第1の態様として、基板上に形成された信号配線導体と、前記信号配線導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体の上部で前記信号配線導体から所定距離を離した位置に形成された一対の接地導体とから構成されることを特徴とするものである。
また、本発明による準平面型マイクロ波伝送線路は、第2の態様として、基板上に形成された一対の接地導体と、前記接地導体を覆う絶縁体と、前記絶縁体の上部で前記接地導体から所定距離を離した位置に形成された信号配線導体とから構成されることを特徴とするものである。
これらの態様において、本発明による準平面型マイクロ波伝送線路においては、上記導体は超伝導体であり、上記絶縁体は誘電体であることを特徴とするものとなっている。また、前記接地導体の間を一部で電気的に接続するエアブリッジが設けられるものとなっている。
本発明による準平面型マイクロ波伝送線路を用いれば、従来、同一層で構成されていたマイクロ波線路の信号配線導体と接地導体の間に、誘電体または絶縁体がはさまれて、信号配線導体と接地導体を分離しているので、ビアを用いることなくエアブリッジが実現でき、作製プロセスが簡略化され歩留まりも改善される。
また、マイクロ波伝送線路の信号配線導体と接地導体の間に、より誘電率の大きな誘電体をはさむほど、同一インピーダンスの場合には中心導体と外部導体の間の距離を大きくすることができるので、小さなインピーダンスのマイクロ波伝送線路も作製が容易になるという利点が得られる。そのため、微細加工の負担、例えば、加工精度やアライメント精度の要求が小さくなる。
以下、本発明を実施する場合の形態について、図面を参照して説明する。図3は、本発明の一実施例にかかる準平面型マイクロ波伝送線路の構成を示す部分断面図である。図3において、10は絶縁体または誘電体で構成される基板、11は絶縁体、12は信号配線導体、13は一対で設けられる接地導体である。
図3に示されるように、本発明にかかる準平面型マイクロ波伝送線路は、基板上10に形成された信号配線導体12と、信号配線導体12を覆う絶縁体11と、絶縁体11の上部で信号配線導体12から所定距離を離した位置に形成された一対の接地導体13とから構成される。このような構造とすることにより、従来、同一層で構成されていたマイクロ波線路の信号配線導体と接地導体の間に、誘電体または絶縁体が挟み込まれ、準平面型となるが、信号配線導体と接地導体とが分離され、電気的には信号配線と接地導体は完全に分離される。これにより、不純物による絶縁性能の低下やごみなどによる短絡故障を防ぐことができる。
図4は、本発明の一実施例にかかる準平面型マイクロ波伝送線路のエアブリッジの構造を説明する部分断面図である。図4において、10は絶縁体または誘電体で構成される基板、11は絶縁体、12は信号配線導体、13は一対で設けられる接地導体、14はエアブリッジの接続導体、15はエアブリッジである。エアブリッジ15の部分を構成する場合、基板10上に信号配線導体12を形成し、それを絶縁体11で覆う。その上に接地導体13を形成する(図3)。接地導体13と同じ層の導体14でつないで、エアブリッジ15を構成する。このように、エアブリッジ15を構成するには、単に誘電体または絶縁体に穴(ビア)をあける必要がなく、接続導体14により接続するだけでよい。
前述した実施例の準平面型マイクロ波伝送線路では、最初に基板10上に信号配線導体12のパターンを形成し、絶縁体11で覆ったあとに、接地導体13のパターンを形成したが、これを逆にして、最初に基板上に接地導体のパターンを形成し、誘電体または絶縁体で覆ったあとに、信号配線導体を形成しても良い。
図5は、本発明の他の一実施例にかかる準平面型マイクロ波伝送線路の構成を示す部分断面図である。図5において、20は絶縁体または誘電体で構成される基板、21は絶縁体、22は信号配線導体、23は一対で設けられる接地導体である。
図5に示されるように、他の実施例にかかる準平面型マイクロ波伝送線路においては、基板上20に形成された一対の接地導体23と、接地導体23を覆う絶縁体21と、絶縁体21の上部で接地導体23から所定距離を離した位置に形成された信号配線導体22とから構成される。このような構造とすることにより、従来、同一層で構成されていたマイクロ波線路の信号配線導体と接地導体の間に、誘電体または絶縁体が挟み込まれ、準平面型となるが、信号配線導体と接地導体とが分離され、電気的には信号配線と接地導体は完全に分離される。これにより、不純物による絶縁性能の低下やごみなどによる短絡故障を防ぐことができる。
また、このような構成となる準平面型マイクロ波伝送線路を用いるとマイクロ波の伝送回路を適切に配線して回路構成することができるので、ジョセフソン電圧標準装置を構成する場合に利用できる。
図6は、準平面型マイクロ波伝送線路を用いてジョセフソン接合の多数個を直列接続したジョセフソン接合アレーによるジョセフソン電圧標準装置の回路構成を説明する図である。ジョセフソン電圧標準装置は、ジョセフソン接合がバイアス電流とマイクロ波の印加により一定電圧を発生するので、そのジョセフソン接合アレーの発生電圧のオンオフを制御することによって、プログラマブルに希望する電圧を発生させる構成としている。ここで入力端子35からマイクロ波を供給するマイクロ波の信号線路30として、前述した準平面型マイクロ波伝送線路が用いられる。このジョセフソン電圧標準装置は、
(a)多数個の直列接続されたジョセフソン接合を2進数区切り(2の冪乗での区切り)による区間1,2,3,4、…に分けて、
(b)区間ごとにバイアス電流を流すための複数の端子36を設け、
(c)この端子36からそれぞれの区間ごとに独立した、正または零、あるいは、負または零の組み合わせのバイアス電流を印加して、
(d)全区間について正のバイアス電流を印加したときの正の最大出力電圧値から、全区間について負のバイアス電流を印加したときの負の最大出力電圧値までの間の任意の出力電圧を、2進数で区切った最小の接合数のジョセフソン接合アレーの出力電圧を最小分解能として出力する。
(a)多数個の直列接続されたジョセフソン接合を2進数区切り(2の冪乗での区切り)による区間1,2,3,4、…に分けて、
(b)区間ごとにバイアス電流を流すための複数の端子36を設け、
(c)この端子36からそれぞれの区間ごとに独立した、正または零、あるいは、負または零の組み合わせのバイアス電流を印加して、
(d)全区間について正のバイアス電流を印加したときの正の最大出力電圧値から、全区間について負のバイアス電流を印加したときの負の最大出力電圧値までの間の任意の出力電圧を、2進数で区切った最小の接合数のジョセフソン接合アレーの出力電圧を最小分解能として出力する。
なお、図6において、30は準平面型マイクロ波伝送線路、31から34は各区間のジョセフソン接合、35はマイクロ波を印加するためのマイクロ波入力端子、36はバイアス電流を流すための端子、37はマイクロ波の印加のためのマイクロ波終端抵抗、38は出力電圧を得るための出力電圧端子である。また、マイクロ波を印加するための交流回路と、バイアス電流を印加するための直流回路とを分離するためキャパシタンス、ローパスフィルタ等が設けられるが、ここでは図示されていない。
このジョセフソン電圧標準装置は、回路を構成するチップ内に多数個の直接接続したジョセフソン接合、電気信号配線、外部入出力用の端子などがマイクロ波伝送線路を中心として作製され集積化されて、プログラマブル電圧標準素子が作製され、ジョセフソン電圧標準装置とされる。ここでの信号配線には準平面型マイクロ波伝送線路が用いられて、直列接続するジョセフソン接合の多数個が形成される。
ジョセフソン電圧標準装置では、『ジョセフソン接合の両電極に周波数fのマイクロ波を加えると、一定の電圧V=f(h/2e)の間隔でステップ電流が現れる。ここで、hはプランク定数、eは単位電荷定数である』という性質を利用して一定電圧を発生させるので、標準電圧とする例えば1ボルトを発生させるためには、チップ内に集積するジョセフソン接合数は非常に多くなる。マイクロ波は、扱いやすさから例えばf=16GHz前後の値を用いる。その場合に、ジョセフソン接合の1つあたりに発生する電圧は約33μVとなり、1ボルトの出力電圧を得るには、約3万個の接合を必要とする。具体的には、例えば、全体を8ビットの電圧分解能でプログラマブルに電圧を発生させるとして、最小ビットの電圧を発生させる接合単位を128個の接合で構成すると、ジョセフソン接合の全体の接合数は32,768個となる。
図7に、準平面型マイクロ波伝送線路を用いるジョセフソン電圧標準装置の全体の等価回路を示している。4096個ずつ8本のアレーに分けて、マイクロ波を8本のアレーに分岐して供給し、50オームの終端抵抗でターミネートしている。交流的には8本のアレーが並列に、直流的にはキャパシタンスとローパスフィルタ(LPF)ですべて結合が直列になるようにする。ここでのマイクロ波を供給する線路40に、準平面型マイクロ波伝送線路(図3)が用いられ、線路40が曲がる部分41にはエアブリッジ(図4)が用いられる。
本発明の準平面型マイクロ波伝送線路は、ジョセフソン電圧発生装置のマイクロ波信号配線に用いて好適なものとなる。例えば、窒化ニオブ(NbN)を電極材料とするジョセフソン接合を用いる回路、具体的には、高温(10K程度)で動作可能なS(超伝導)/N(常伝導)/S(超伝導)型超伝導接合アレー集積回路によるジョセフソン電圧発生装置に用いられる。
本発明による準平面型マイクロ波伝送線路を用いれば、信号配線導体と接地導体が電気的に完全に絶縁されるため、ごみや不純物による絶縁性能の劣化または短絡故障の可能性が非常に小さくなり、さらに、マイクロ波ストリップ線路を曲げたときに必要なエアブリッジがビアなしで実現できるため作製が容易になる。以上の効果は、作製の歩留まりを大幅に向上させ、電圧標準チップの製造コストを下げるために有効である。
1:基板
2:信号配線導体
3a,3b:接地導体
4:エアブリッジ
5:絶縁体層
6:ビア(穴)
10:基板
11:絶縁体
12:信号配線導体
13:接地導体
14:接続導体
15:エアブリッジ
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12:信号配線導体
13:接地導体
14:接続導体
15:エアブリッジ
Claims (5)
- 基板上に形成された信号配線導体と、
前記信号配線導体を覆う絶縁体と、
前記絶縁体の上部で前記信号配線導体から所定距離を離した位置に形成された一対の接地導体と
から構成されることを特徴とする準平面型マイクロ波伝送線路。 - 基板上に形成された一対の接地導体と、
前記接地導体を覆う絶縁体と、
前記絶縁体の上部で前記接地導体から所定距離を離した位置に形成された信号配線導体と
から構成されることを特徴とする準平面型マイクロ波伝送線路。 - 上記導体は超伝導体である
ことを特徴とする上記請求項1または請求項2に記載の準平面型マイクロ波伝送線路。 - 上記絶縁体は誘電体である
ことを特徴とする上記請求項1または請求項2に記載の準平面型マイクロ波伝送線路。 - 基板上に形成された信号配線導体と、
前記信号配線導体を覆う絶縁体と、
前記絶縁体の上部で前記信号配線導体から所定距離を離した位置に形成された一対の接地導体と、
前記接地導体の間を一部で電気的に接続するエアブリッジと
から構成されることを特徴とする準平面型マイクロ波伝送線路。
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