JP2005203025A - 光記録媒体の反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット - Google Patents

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【課題】光記録ディスク(CD−RW,DVD−RAM)などの光記録媒体のAg合金反射層およびこのAg合金反射層を形成するための銀合金スパッタリングターゲットを提供する。

【解決手段】Cu:0.05〜2.0質量%、In:0.05〜2.0質量%、Al:0.01〜1.0質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる組成の銀合金からなる光記録媒体の反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲットおよびこのターゲットをスパッタリングすることにより形成された経時変化の少ない光記録媒体の反射膜。
【選択図】 なし

Description

この発明は、半導体レーザーなどのレーザービームを用いて音声、映像、文字などの情報信号を再生あるいは記録・再生・消去を行う光記録ディスク(CD−RW,DVD−RAM)などの光記録媒体の構成層である半透明反射膜または反射膜(以下、両者を含めて反射膜と呼ぶ)をスパッタリング法にて形成するための銀合金スパッタリングターゲットに関するものである。
従来、CD−R,CD−RW,DVD−R,DVD−RW,DVD−RAMなどの光記録媒体の反射膜としてAgまたはAg合金反射膜が使用されており、このAgまたはAg合金反射膜は400〜830nmの幅広い波長域での反射率が高く、特に他の金属の反射膜にくらべて、CDおよびDVDにおいて使用されている波長:780nmおよび650nmのレーザー光に対する反射率が優れているところから広く使用されている。
前記従来のAg合金反射膜として、In:0.1〜20原子%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる組成の銀合金からなる光記録媒体の反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲットおよびそのターゲットを用いて形成した反射膜が知られている(特許文献1参照)。
さらに、前記従来のAg合金反射膜として、AgZn(0.85<x<0.9999、0.0001<y<0.15)によって定義されるAg合金反射膜、AgAl(0.95<x<0.9999、0.0001<z<0.05)によって定義されるAg合金反射膜、AgZnAl(0.80<x<0.998、0.001<y<0.15、0.001<z<0.05)によって定義されるAg合金反射膜、AgMn(0.925<x<0.9999、0.0001<t<0.075)によって定義されるAg合金反射膜、AgGe(0.97<x<0.9999、0.0001<z<0.03)によって定義されるAg合金反射膜、AgCuMn(0.825<x<0.9998、0.0001<p<0.10、0.0001<t<0.075)によって定義されるAg合金反射膜などが提案されている(特許文献2参照)。
特開平10−143917号公報 特開2002−117587号公報
しかし、光記録媒体の中でも記録層に相変化記録材料を用い、繰り返し記録・再生・消去を行う光記録媒体においては、記録・再生・消去の繰り返し回数が増大するにつれて、従来のAgまたはAg合金反射膜は反射率が低下し、長期に亘る十分な記録再生耐性が得られなかった。
この原因として従来のAgまたはAg合金反射膜は、腐食しやすいこと(すなわち、耐食性が十分でないこと)、光記録媒体に繰り返し記録・再生・消去を行うと、レーザー光の照射によりAg反射膜の加熱冷却が繰り返され、それによってAg反射膜が再結晶化し、結晶粒が粗大化するためにエラーの増大は避けられないこと、などを突き止めたのである。
そこで本発明者らは、従来のAg合金反射膜がかかえるこれら問題点を解決することのできるAg合金反射膜を得るべく研究を行なっていたところ、
(イ)Ag−Cu−In−Al系のAg合金からなるターゲットを作製し、このターゲットを用いてスパッタリングすることにより得られたAg合金反射膜は、光記録媒体に繰り返し記録・再生・消去を行うためのレーザー光を頻繁に照射しても、Ag反射膜の加熱冷却が繰り返されることによるAg反射膜の再結晶化が一層少なく、したがって、レーザー光の頻繁な照射によるAg反射膜の結晶粒の粗大化が原因となるエラーを極めて少なくすることができる、
(ロ)前記ターゲットを構成するAg−Cu−In−Al系のAg合金の内でもCu:0.05〜2.0質量%、In:0.05〜2.0質量%、Al:0.01〜1.0質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる成分組成のAg合金が好ましい、という研究結果が得られたのである。
この発明は、かかる研究結果に基づいて成されたものであって、
(1)Cu:0.05〜2.0質量%、In:0.05〜2.0質量%、Al:0.01〜1.0質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる組成の銀合金からなる光記録媒体の反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット、に特徴を有するものである。
前記(1)記載のターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成されたAg反射膜はターゲットとほぼ同一の成分組成を有し、このスパッタリングすることにより形成されたAg反射膜はレーザー光を長期間照射しても劣化しない耐熱性に優れたものであるから、この発明は、前記(1)記載のターゲットを用いてスパッタリングすることにより形成されたAg反射膜をも含むものである。したがって、この発明は、
(2)Cu:0.05〜2.0質量%、In:0.05〜2.0質量%、Al:0.01〜1.0質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる組成の銀合金からなる光記録媒体の反射膜、に特徴を有するものである。
この発明の銀合金反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットは、原料として純度:99.99質量%以上のAgおよびいずれも純度:99.9質量%以上のCu、In,Alを用意し、まず、Agを高真空または不活性ガス雰囲気中で溶解し、得られた溶湯にCu、In,Alを所定の含有量となるように添加し、その後、真空または不活性ガス雰囲気中で鋳造してインゴットを作製し、これらインゴットを熱間加工したのち機械加工することにより製造することができる。
次に、この発明のAg合金からなる反射膜およびこのAg合金からなる反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットにおける成分組成を前記の如く限定した理由を説明する。
Cu:
Cu成分は、Agに固溶し、Ag合金反射膜の再結晶化防止をさらに促進する成分であるが、Cuを0.05質量%未満含んでも格段の効果が得られず、一方、2.0質量%を越えて含有すると、スパッタにより形成されたAg合金反射膜の熱伝導率が低下し、高速記録に支障をきたすようになるので好ましくない。したがって、Ag合金反射膜およびこのAg合金反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットに含まれるこれら成分の含有量は0.05〜2.0質量%(一層好ましくは0.2〜0.5質量%)に定めた。
In:
Inは、スパッタにより形成された膜中の結晶粒を微細化し、膜の表面粗さを小さくする効果、およびAgに固溶して結晶粒の強度を高め、結晶粒の再結晶粒化を防止し、スパッタにより形成された反射膜の反射率の低下を抑制する効果があるが、Inを0.05質量%未満含んでも十分に結晶粒を微細化することと結晶粒の再結晶粒化を防止することができないので、光記録媒体に繰り返し記録、再生、消去を行うことによる反射膜の反射率の低下を抑止することができず、一方、Inが2.0質量%を越えて含有すると、反射率の低いInの特性が現れるようになり、スパッタにより形成されたAg合金反射膜の反射率が低下するので好ましくない。また、Inを2.0質量%を越えて含有すると、スパッタにより形成されたAg合金反射膜の熱伝導率が低下し、高速記録に支障をきたすようになるので好ましくない。したがって、Ag合金反射膜およびこのAg合金反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットに含まれるこれらInの含有量は0.05〜2.0質量%(一層好ましくは0.2〜1.0質量%)に定めた。
Al:
Alは、ターゲットに含むことにより得られるスパッタ膜の結晶粒径の粗大化を防止し、さらにこのスパッタ膜をAg合金反射膜として使用した場合に再結晶化防止をさらに促進する成分であるが、Alを0.01質量%未満含んでも格段の効果が得られず、一方、1.0質量%を越えて含有すると、光記録媒体の反射膜の要求特性であるAg合金反射膜の反射率および熱伝導率が低下し、高速記録に支障をきたすようになるので好ましくない。したがって、Ag合金反射膜およびこのAg合金反射膜を形成するためのスパッタリングターゲットに含まれるAlの含有量は0.01〜1.0質量%(一層好ましくは0.1〜0.5質量%)に定めた。
上述のように、この発明の光記録媒体の反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲットを用いて作製した反射膜は、従来の光記録媒体の反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲットを用いて作製した反射膜に比べて、経時変化による反射率の低下が少なく、長期にわたって使用できる光記録媒体を製造することができ、メディア産業の発展に大いに貢献し得るものである。
原料として純度:99.99質量%以上の高純度Ag、いずれも純度:99.9質量%以上のCu、InおよびAlを用意し、まず、Agを高周波真空溶解炉にて溶解したのちCu、InおよびAlをAg溶湯に添加し、溶解後炉内圧力が大気圧となるまでArガスを充填したのち黒鉛製鋳型に鋳造することによりインゴットを作製し、得られたインゴットを600℃、2時間加熱した後、熱間圧延し、機械加工することにより直径:125mm、厚さ:5mmの寸法を有し、表1に示される成分組成を有する本発明ターゲット1〜18、比較ターゲット1〜6および従来ターゲット1〜3を製造した。
これら表1に示される本発明ターゲット1〜18、比較ターゲット1〜6および従来ターゲット1〜3をそれぞれ無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、これを直流マグネトロンスパッタ装置に装着し、真空排気装置にて直流マグネトロンスパッタ装置内を1×10-4Paまで排気した後、Arガスを導入して1.0Paのスパッタガス圧とし、続いて直流電源にてターゲットに100Wの直流スパッタ電力を印加し、前記ターゲットに対抗しかつ70mmの間隔を設けてターゲットと平行に配置した縦:30mm、横:30mm、厚さ:0.5mmの無アルカリガラス基板と前記ターゲットの間にプラズマを発生させ、厚さ:100nmのAg合金反射膜を形成した。
このようにして形成した厚さ:100nmのAg合金反射膜について、下記の試験を行った。
(a)膜の熱伝導率試験
Ag合金反射膜の比抵抗を四探針法により測定し、ウィーデマンフランツの法則に基づく式:κ=2.44×10−8T/ρ(ただし、κ:熱伝導率、T:絶対温度、ρ:比抵抗)により比抵抗値から熱伝導率を計算により求め、その結果を表2に示した。
(b)結晶粒の粗大化試験
Ag合金反射膜の成膜直後の平均面粗さを走査型プローブ顕微鏡により測定してその結果を表2に示し、その後、形成したAg合金反射膜を真空中、温度:250℃、30分間保持したのち、再度同じ条件で表面粗さを測定し、その結果を表2に示して結晶粒の粗大化のしやすさを評価した。
ただし、走査型プローブ顕微鏡にはセイコーインスツルメンツ株式会社製SPA−400AFMを用い、1μm×1μmの領域の平均面粗さ(Ra)を測定した。平均面粗さはJISB0601で定義される中心線平均粗さを面に対して適用できるように三次元に拡張したものであり、次式で表されるものである。
Ra=1/S∫∫|F(X,Y)−Z|dXdY
ただし、F(X,Y):全測定データの示す面、
:指定面が理想的にフラットであると仮定したときの面積、
:指定面内のZデータの平均値。
(c)膜の耐食性試験
Ag合金反射膜の成膜直後の反射率を分光光度計により測定してその結果を表2に示し、その後、形成したAg合金反射膜を温度:80℃、相対湿度:85%の恒温恒湿槽にて200時間保持したのち、再度同じ条件で反射率を測定した。得られた反射率データから、波長:405nmおよび650nmにおける各反射率を求め、その結果を表2に示して光記録媒体の反射膜として耐食性を評価した。
Figure 2005203025
Figure 2005203025
表1〜2に示される結果から、この発明の本発明ターゲット1〜18を用いてスパッタリングを行うことにより得られた反射膜は、従来ターゲット1〜3を用いてスパッタリングを行うことにより得られた反射膜に比べて、温度:80℃、相対湿度:85%の恒温恒湿槽にて200時間保持後の反射率の低下が少なく、熱伝導率に優れ、さらに結晶粒が粗大化しにくいことがわかる。しかし、この発明の範囲から外れてCu,InおよびAlを含む比較ターゲット1〜6は、反射率が低下したり、熱伝導率が低下したり、さらに結晶粒が粗大化したりして好ましくない特性が現れることが分かる。

Claims (2)

  1. Cu:0.05〜2.0質量%、In:0.05〜2.0質量%、Al:0.01〜1.0質量%を含有し、残部がAgおよび不可避不純物からなる組成の銀合金からなることを特徴とする光記録媒体の反射膜形成用銀合金スパッタリングターゲット。
  2. 請求項1記載のターゲットをスパッタリングすることにより形成された経時変化の少ない光記録媒体の反射膜。
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