JP2005200323A - 3,4−ジアセトキシ−1−ブテン及びそれを用いた誘導体の製造方法 - Google Patents

3,4−ジアセトキシ−1−ブテン及びそれを用いた誘導体の製造方法 Download PDF

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康彦 久米野
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Toshiyuki Suzuki
敏之 鈴木
Kuni Chin
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Abstract


【課題】 温和な反応条件の下に高収率かつ安価にブテン誘導体類を製造する方法を提供する。
【解決手段】 3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテン(以下、3,4−HABEと略記)及び/又は3−アセトキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン(以下、3,4−AHBEと略記)と無水酢酸とをアセチル化反応させることにより3,4−ジアセトキシ−1−ブテン(以下、3,4−DABE、と略記)を製造する方法であって、該3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEが、1,3−ブタジエンと酢酸とを分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下にアセトキシ化反応させて得られる反応生成物から3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物を蒸留により分離して得られるものであることを特徴とする3,4−DABEの製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、ビニルエチレンカーボネート及び3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン(以下、これらを総称してブテン誘導体という)の製造方法に関するものである。詳しくは、1,3−ブタジエンと酢酸との反応により1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを製造する際の副生物を原料とすることにより、工業的に有利に該ブテン誘導体を得る方法に関する。
従来、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの製造方法としては、例えば、1,3−ブタジエンと酢酸及び無水酢酸をハロゲン化リチウムや酸化テルルなどの触媒の存在下にアセトキシ化反応させる方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この方法では、用いる均一系の触媒に問題がある。すなわち、ハロゲン化リチウムの場合では、酢酸の存在下ではハロゲン化水素となり反応中に系外に留出し、酸化テルルの場合では、昇華性があるため反応後の蒸留精製中に系外に排気されるため、工業化するには多くの問題点を残している。
また、別の方法として、酢酸カリウムの存在下、3,4−エポキシ−1−ブテンを無水酢酸と反応させることにより、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを製造する方法が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしこの方法では、原料の3,4−エポキシ−1−ブテンが、銀系触媒の存在下に、1,3−ブタジエンと酸素とを気相反応させる(例えば、特許文献2参照)ため、生産性が悪く大きな設備投資が必要となる。また、3,4−エポキシ−1−ブテンは、安定性に欠け取り扱いに際して注意を要するなど、工業的に安価に製造するには依然として課題がある。
次に、従来、ビニルエチレンカーボネートの製造方法としては、例えば、過酸化水素と氷酢酸から生ずる過酢酸によりオキシラン環を経るブタジエンのヒドロキシアセテート化またはジアセテート化を行い、その加水分解によって3−ブテン−1,2−ジオールを合成し、これをナトリウム触媒で炭酸ジエチルとエステル交換反応させる方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。この方法は、実験室的な手法としては有用であるが、収率が低く経済性の点で問題がある他に、爆発性の強い取り扱いの上で極めて注意を要する過酢酸を用いるなど工業的には好ましくない。
また、別の方法として、エポキシブテンと二酸化炭素を触媒の存在下に反応させてビニルエチレンカーボネートを製造する方法が種々提唱されている。その際に用いる触媒としては、有機第3級ホスフィン化合物、クロム、マンガン、ルテニウム、ロジウム、カドミウムの金属のハロゲン化物と有機第3級ホスフィン化合物等が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしこれらの方法では、反応は180℃以上、50Kg/cm2 以上という高温、高圧下で行われているため、反応器などの設備費が高くなり経済的に有利な方法とはいえない。また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムとトリフェニルホスフィンの組み合わせからなる触媒を用いる方法がある(例えば、非特許文献3参照)。しかしこの方法では、触媒として高価で空気に対し不安定なパラジウム触媒を使用するため、その回収、再使用に十分な注意が必要であり、少しでも損失があるとコスト高になる欠点がある。
この様な工業上の欠点に対して、アルケニル置換アルキレンオキシドと二酸化炭素とをアルカリ金属の臭素化物及び/又は塩化物を触媒としアルコールの存在下で反応させるこ
とにより、温和な条件下で製造する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、この方法においては、ハロゲン化合物が用いられていることから、装置上の制約があり工業的に実施するには問題がある。また、安定性に欠け取り扱いに際して注意を要するエポキシブテンを原料として用いなければならないなど、工業的に安価に製造するには依然として課題があった。
最後に、従来、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテンの製造方法としては、適切な加水分解剤を用いて、3,4−エポキシ−1−ブテンを加水分解することにより得る方法がある。例えば、硫酸等の酸触媒によるソルボリシスによる方法が開示されている(例えば、非特許文献4参照)。また、酸化レニウム(例えば、特許文献5参照)やヨウ化水素酸と有機溶媒可溶性ヨウ化物塩との混合物の存在下に水と加水分解する方法が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
いずれの方法も、温和な条件で容易に高収率で3,4−エポキシ−1−ブテンから3,4−ジヒドロキシ−1−ブテンを得ることができる。しかしながら、これらの方法では、原料の3,4−エポキシ−1−ブテンが、銀系触媒の存在下に、1,3−ブタジエンと酸素とを気相反応させる(例えば、特許文献2参照)ため、生産性が悪く大きな設備投資が必要となる。また、3,4−エポキシ−1−ブテンは、安定性に欠け取り扱いに際して注意を要するなど、工業的に安価に製造するには依然として課題がある。
Sakae Uemura et.al,"Liquid-phase 1,4-Diacetoxylation of Conjugated Dienes with Tellurium(IV) Oxide and Alkali Metal Halides",Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions1,1985,499-503 特表2002−538130号公報 特開平03−502330号公報 浅井,「ビニルエチレンカーボナートの重合と生成ポリマーの反応」,生産研究,1973年7月,第25巻,第7号,p.297 特公昭48−22702号公報 特開平8−59557号公報 タツオ・フジナミ(Tatuo Fujinami),「ケミストリ レターズ(Chemistry Letters)」,(日本),第2号;1985年,p.199−200 Neil W. Boaz,"The Stereochemistry of Solvolysis of an Acyclic Allylic Epoxide",Tetrahedron: Asymmetry,Vol.6 No.1,1995,15-16 独国特許第4,429,700号明細書 特表2002−514164号公報
本発明の目的は、従来法のエポキシブテンを出発物質とする方法と比較して、温和な反応条件の下に高収率かつ安価に該ブテン誘導体を製造することができる方法を提供することにある。
本発明者等は、1,3−ブタジエンと酢酸とを分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下にアセトキシ化反応させて1,4−ジアセトキシー2−ブテン(1,4−ブタンジオールとテトラヒドロフランの原料)を製造する際に副生する3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテン(以下、3,4−HABEと略記)及び3−アセトキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン(以下、3,4−AHBEと略記)のうち少なくとも1種を用い、無水酢酸とアセチル化反応させることにより高収率で目的とする3,4−ジアセトキシ−1−ブテン(以下、3,4−DABEと略記)が得られることを発見し、本発明を完成するに至った。この方法は副生物の有効利用であるため有益かつ経済性に優れ、また従来法の原料で
あるエポキシブテンに替えて、安定かつ毒性が低く取り扱いが容易な原料を使用するため、工業的に非常に有用である。
即ち、本発明は、以下の通りの要旨を有するものである。
(1)3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEと無水酢酸とをアセチル化反応させることにより3,4−DABEを製造する方法であって、3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEが、1,3−ブタジエンと酢酸とを分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下にアセトキシ化反応させて得られる反応生成物から3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物を蒸留により分離して得られるものであることを特徴とする3,4−DABEの製造方法。
(2)上記(1)の混合物が、3,4−DABEを60重量%以上含有するものである、(1)に記載の3,4−DABEの製造方法。
(3)上記(1)及び(2)により生成した3,4−DABE中に含まれる1,2−ジアセトキシブタンを抽出蒸留により分離することを特徴とする(1)及び(2)の3,4−DABEの製造方法。
(4)上記(1)〜(3)で得られた3,4−DABEと低分子カーボネート化合物とを塩基性触媒及びアルコールの存在下に逐次的にアルコリシス反応とエステル交換反応させることを特徴とするビニルエチレンカーボネートの製造方法。
(5)上記(4)の塩基性触媒が、金属アルコキシド及び/又は金属アルコキシド源であ
る、(4)に記載のビニルエチレンカーボネートの製造方法。
(6)上記(1)〜(3)により得られた3,4−DABEと水とを酸触媒の存在下に加水分解反応させることを特徴とする3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン(以下、3,4−DHBEと略記)の製造方法。
(7)上記(6)の酸触媒が、固体酸触媒である、(6)に記載の3,4−DHBEの製造方法。
(8)上記(6)または(7)により得られた3,4−DHBEと低分子カーボネート化合物とを塩基性触媒の存在下または不存在下にエステル交換反応させることを特徴とするビニルエチレンカーボネートの製造方法
本発明の製造方法によれば、1,4−ブタンジオールを製造する際の副生物を原料とすることにより、温和な反応条件の下に高収率かつ安価に各種ブテン誘導体を製造することができる。
以下、本発明につき詳細に説明する。
(1)3,4−DABEの製造方法
<3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物>
本発明において出発原料として用いる3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物は、1,3−ブタジエンと酢酸とを分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下にアセトキシ化反応させて1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを製造する際に同時に生成する副生成物である。なお主生成物である1,4−ジアセトキシ−2−ブテンからは、化学工業の基礎となる化合物である1,4−ブタンジオール及びテトラヒドロフランが製造される。
アセトキシ化反応は、例えば、特開平8−3110号公報に記載の方法で、触媒の存在下に高温高圧で実施される。触媒としては、パラジウム及び/又は白金含有触媒(特に担
持触媒)が好適なものとして挙げられる。また触媒組成物として用いる場合には、パラジウム又は白金に加えて、Te,Cu,Sb,Se又はBiなどの他の金属を含んでいても良
い。特に、パラジウムとテルルの組み合わせで、パラジウム1グラム原子に対しテルルを0.15〜0.5グラム原子用いた担持触媒が好ましい。担体としては、シリカ、アルミナ、活性炭等が好ましい。
反応温度は通常、20〜150℃の範囲であり、反応圧力は通常、0.49〜9.81MPaの範囲が好適である。
本反応系内には分子状酸素を存在させる必要がある。分子状酸素とは、必ずしも純粋な酸素である必要はなく、ヘリウム,窒素,アルゴンなどの不活性ガスで希釈された酸素を用いることができ、例えば空気でも良い。酸素の使用量は化学量論量以上であれば良く特に限定されるものではないが、安全上の理由から工業的には爆発組成とならないような範囲が好ましい。
アセトキシ化反応混合物から、3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物を分離する方法は、通常、蒸留が一般的である。特に、分解反応や転化反応を防止するために、減圧で操作することが好ましい。一般的な蒸留塔を用いた場合、塔底温度としては、通常、110℃以上、好ましくは120℃以上で、通常、190℃以下、好ましくは150℃以下である。圧力としては、通常、0.1kPa以上、好ましくは1kPa以上で、通常、20kPa以下、好ましくは5kPa以下である。
蒸留によって分離された3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物には、通常3,4−DABEが含まれる。3,4−DABEは、3,4−HABE及び3,4−AHBEが無水酢酸とアセチル化反応する際には不活性物質として反応には供せず、そのまま最終反応物に加わる。
3,4−DABEの含量は、混合物の総重量に対して、通常、60重量%以上、好ましくは70重量%以上で、通常、95重量%以下、好ましくは90重量%以下である。その他には、上記の3,4−DABE、3,4−HABE及び3,4−AHBE以外に1,2−ジアセトキシブタン(以下、1,2−DABと略記)、1−ヒドロキシ−2−アセトキシブタン(以下、1,2−HABと略記)及び1−アセトキシ−2−ヒドロキシブタン(1,2−AHBと略記)など少量存在する。
<無水酢酸>
無水酢酸は、一般に市販されているもの(例えば純度98%以上品等)が使用できる。ただし、無水酢酸中に含まれる不純物の種類、及び量は少ないことが好ましい。
<抽出溶剤>
生成した3,4−DABEには通常1,2−DABが含まれる。1,2−DABは、3,4−DABEと沸点が非常に近く、通常の蒸留では容易に分離できない。このため第三溶媒(以下、抽剤と略称)を添加する抽出蒸留により分離を行うのが一般的である。抽剤としては、各成分を効率よく分離できるものであれば特に制限はない。
3,4−DABEを塔頂から回収する場合、使用できる好ましい抽剤としては、1,2−DABの抽剤中での無限希釈活量係数(γ∞,DAB)と3,4−DABEの抽剤中での無限希釈活量係数(γ∞,DABE)との比(分離係数,S=γ∞,DAB/γ∞,DABE)が、通常、0.9以下、好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。また、標準沸点が、通常、150℃以上、好ましくは200℃以上で、通常、400℃以下、好ましくは300℃以下である。これらの溶媒は単独で用いても混合して用いても良い。例えば、特に好ましい抽剤としては、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、シクロデカン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、シクロデセン、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、デカノン、ウンデカノン、ドデカノン、ヘキサン酸、ヘプタン酸、
オクタン酸、オクタン酸エチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリクロロベンゼン等が挙げられる。Sが0.9以上となる
溶媒は、3,4−DABEと1,2−DABの分離が極めて悪くなる傾向がある。また、沸点が上記の範囲を外れる溶媒は、3,4−DABEの沸点と懸け離れているため抽剤として機能しない。
一方、3,4−DABEを塔底から抽剤とともに回収する場合、使用できる好ましい抽剤としては、前述のように無限希釈活量係数との比が、通常、1.1以上、好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.4以上である。また、標準沸点が、通常、150℃以上、好ましくは200℃以上で、通常、400℃以下、好ましくは300℃以下である。これらの溶媒は単独で用いても混合して用いても良い。例えば、特に好ましい抽剤としては、ガンマ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。Sが1.1以下となる溶媒は、3,
4−DABEと1,2−DABの分離が極めて悪くなる傾向がある。また、沸点が上記の範囲を外れる溶媒は、3,4−DABEの沸点と懸け離れているため抽剤として機能しない。
本明細書において、無限希釈活量係数とは、A・クラムト(A.Klamt)、「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー」(Journal of Physical
Chemistry)、(米国)、アメリカ化学会、1995年、第99巻、p.2224に記載する方法、すなわち、量子化学計算により分子表面の電荷密度を計算し,異種分子間の相互作用を活量係数として算出されたものである。
さらに詳細に、計算方法を述べると次の通りである。
(1)経験的分子軌道法AM1+モンテ・カルロ法により、溶質分子のエネルギー的に最も安定な構造を得た。
(2)得られた分子構造についてCOSMO−RS(Conductor like Screening Model for Real Solvent)モデルを用いた密度汎関数法(DFT)計算を行い、分子表面の電荷密度
を求めた。
(3)溶液中の溶質−溶媒間の化学ポテンシャルを、異なる電荷密度をもつ分子表面の接触による相互作用として表す統計熱力学に従ってそれぞれ推算した。
(4)計算した化学ポテンシャルに基づいて無限希釈溶液における溶質の活量係数を求めた。
使用したソフトウエア:(1)Spartan
(2)TURBOMOLE
(3),(4)COSMOtherm/COSMObase
<反応条件>
3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物と無水酢酸とをアセチル化反応させることにより3,4−DABEを製造する。
無水酢酸の量は、混合物中の水酸基の総和1モルに対し、通常、0.1モル以上、好ましくは0.8モル以上、更に好ましくは1.0モル以上で、通常、10モル以下、好ましくは5モル以下、更に好ましくは、1.5モル以下である。通常、無水酢酸の使用量は多い方が反応時間も短く収率も高くなるが、多すぎると経済性の点で問題がある。
反応温度は、無水酢酸の量などの条件にもよるが、通常、80℃以上、好ましくは100℃以上で、通常、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。反応温度が低過ぎると反応の進行が遅くなる傾向があり、一方、高過ぎると、副反応を起こしたり、得られた3,4−DABEが重合し反応液の粘度が高くなる場合がある。混合物、無水酢酸及び反応により生成した酢酸とでリフラックスする温度が最適である。
反応時間は、無水酢酸の量及び反応温度などの条件によるが、通常、0.5時間以上、好ましくは1時間以上で、通常、12時間以下、好ましくは6時間以下である。
本発明のアセチル化反応においては、塩基性物質を用いて水酸基の活性を高めることにより反応時間の短縮及び収率の向上を図ることができる。
用いる塩基性物質としては、例えば、ピリジンやイミダゾールなどの弱塩基化合物や陰イオン交換樹脂の様な固体塩基などが挙げられる。使用量については、3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物の水酸基の合計1当量に対して、塩基としての当量換算で、通常、0.01以上、好ましく0.1以上で、通常、5.0以下、好ましくは1.0以下である。使用量が少な過ぎる場合には、顕著な反応促進効果が得られない。一方、使用量が多過ぎる場合には、用いる塩基性物質によっては、反応後の精製において負荷が生じ工業的に不利になる場合がある。
この反応は、通常無溶媒中で行われるが、必要に応じて適当な有機溶媒中で反応しても差し支えない。この際用いることができる有機溶剤として、例えば、反応に関与しないと考えられるn−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶剤、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶剤、DMF、DMAcなどのアミド系溶剤などが挙げられる。また、この反応系には、必要に応じて、3,4−DABEの重合禁止剤として、p-ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体やジフェニルピクリルヒドラジルなどのニトロ化合物などの添加剤を使用しても良い。
<反応形式>
本発明における反応形式は、バッチ設備で行うのが簡便かつ効率的であるが、反応液が大量にある場合には、例えばプラグフローなどの連続設備を用いて製造しても良い。
<精製処理>
3,4−DABEに適した精製方法としては、通常蒸留による精製が挙げられる。その際の条件としては、温度が通常80℃〜120℃、圧力が通常、0.6kPa〜6.5kPaの減圧蒸留にて行うことができる。また、更に純度を上げる必要がある場合には、次の抽出蒸留が有効である。
<抽出蒸留>
精製された混合物より3,4−DABEを抽出蒸留により分離する方法としては、以下の(1)、(2)が考えられる。また形式は、バッチ蒸留、連続蒸留のどちらでもかまわないが、以下に連続蒸留のケースを示す。ここで抽剤 1)は、無限希釈活量係数の比が1
以下の抽剤であり、抽剤 2)は、無限希釈活量係数の比が1以上の抽剤である。
(1)混合物につき、抽剤として 1)を用いて抽出蒸留を行い、塔頂より3,4−DAB
Eと 1)を留出させ、塔底より1,2−DABと 1)の混合液を抜き出し、留出混合液を通常の蒸留に供して3,4−DABEを分離する方法。
(2)混合物につき、抽剤として 2)を用いて抽出蒸留を行い、塔頂より1,2−DAB
と 2)を留出させ、塔底より3,4−DABEと 2)の混合液を抜き出し、塔底混合液を通常の蒸留に供して3,4−DABEを分離する方法。
上記の(1)及び(2)の抽出蒸留を行う場合、理論段数が、通常、10以上、好ましくは20以上の蒸留塔を使用する。還流比は、通常、0.5以上、30以下程度であり、環流比が余りに小さすぎると分離効率が悪化する傾向がある。また、環流比が大きすぎると、塔系も大きくなり工業的に不利になる場合がある。通常、蒸留塔の上段側に抽剤を供給し、混合物は蒸留塔の中段より下側に供給する。いずれのケースも、抽剤の使用量は混合物に対して、通常、等量以上であり、また、塔頂圧は、通常、0.001MPa以上で、通常、0.05MPa以下である。
次に、3,4−DABE及び1,2−DABの2種を含む混合物から3,4−DABE
を分離取得する方法について図面を用いながら、更に具体的な実施態様を示す。
図1は、3,4−DABE及び1,2−DABの2種を含む混合物から、抽剤 1)(図
中ではSOL(1)と表示)を用いて3,4−DABEを分離する方法である。図1において、3,4−DABE及び1,2−DABの2種を含む混合物がライン1より蒸留塔D1に送られ、また、抽剤 1)がライン2より蒸留塔D1に送られる。蒸留塔D1では抽出
蒸留が行われ、塔頂からライン3を通じて3,4−DABEと抽剤 1)の混合物が抜き出
されて蒸留塔D2に送られ、塔底からはライン4を通じて1,2−DABと抽剤 1)の混
合物が抜き出されて蒸留塔D3に送られる。蒸留塔D2では3,4−DABEと抽剤 1)
とが蒸留分離され、塔頂からライン5を通じて3,4−DABEが、塔底からライン6を通じて抽剤 1)が各々抜き出される。一方、蒸留塔D3には、ライン4を通じて1,2−
DABと抽剤 1)の混合物が供給されて蒸留分離が行われる。塔頂からは1,2−DAB
がライン7を通じて抜き出される。塔底から抽剤 1)が抜き出される。
図2は、3,4−DABE及び1,2−DABの2種を含む混合物から、抽剤 2)(図
中ではSOL(2)と表示)を用いて3,4−DABEを分離する方法である。図2において、3,4−DABE及び1,2−DABの2種を含む混合物がライン1より蒸留塔D1に送られ、また、抽剤 2)がライン2より蒸留塔D1に送られる。蒸留塔D1では抽出
蒸留が行われ、塔頂からライン3を通じて1,2−DABと抽剤 2)の混合物が抜き出さ
れて蒸留塔D3に送られ、塔底からはライン4を通じて3,4−DABEと抽剤 2)の混
合物が抜き出されて蒸留塔D2に送られる。蒸留塔D3では1,2−DABと抽剤 2)と
が蒸留分離され、塔頂からライン7を通じて1,2−DABが、塔底からライン8を通じて抽剤 2)が各々抜き出される。一方、蒸留塔D2には、ライン4を通じて3,4−DA
BEと抽剤 2)の混合物が供給されて蒸留分離が行われる。塔頂からは3,4−DABE
がライン5を通じて抜き出される。塔底から抽剤 2)が抜き出される。
(2)ビニルエチレンカーボネートの製造方法
<低分子カーボネート化合物>
本発明において出発原料として用いられる低分子カーボネート化合物とは、数平均分子量が通常300以下のものをいう。具体的には、次のジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートが挙げられる。
まず、ジアルキルカーボネートとしては、アルキル基部分の炭素数が、通常、1〜6個のものである。具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。また、2個のアルキル基は同一でも異なっていても良い。
次に、アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどが挙げられる。
最後に、ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどが挙げられる。また、2個のアリール基は同一でも異なっていても良い。
これらの低分子カーボネート化合物の中では、ジアルキルカーボネートが取扱の容易さの点において好ましく、特にジメチルカーボネートが反応性、経済性の点において最も好ましい。
<塩基性触媒>
上記(1)で得られた3,4−DABEと低分子カーボネート化合物とを、塩基性触媒及びアルコールの存在下に逐次的にアルコリシス反応及びエステル交換反応させる。
ここで用いられる塩基性触媒は、一般的なエステル交換触媒の使用が可能であるが、塩基性の強いものが好ましい。具体例としては、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドなどの金属アルコキシドが挙げられる。また、金属アルコキシド
源として、後述するアルコールと共存させると金属アルコキシドを生成する、Li、Na、Kなどのアルカリ金属単体やMgなどのアルカリ土類金属単体、n−ブチルリチウム,t−ブチルリチウム、フェニルリチウムなどの有機リチウム化合物、ナトリウムアミドなどの金属アミド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、LiBH4
どの金属水素化物を挙げることができる。
この中で、アルカリ金属単体、アルカリ土類金属単体、有機リチウム化合物,金属アミド、金属水素化物を用いた場合には、塩基性が強過ぎるため、3,4−DABEや低分子カーボネート化合物の存在する反応系に直接投じて用いるとカルボニル基などに対する副反応を起こす場合がある。また、塩基性の強さの点では水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなども適用できるが、これらは金属アルコキシドなどと比べると触媒活性が低く、3,4−DABEのアセトキシ基の加水分解を起こし経時的に失活する場合がある。
従って、塩基性触媒としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシドが好ましく、中でも、取り扱いの容易さ及び経済性の点でナトリウムメトキシドが最も好ましい。これらの塩基性触媒は、2種以上を併用しても良い。
<アルコール>
ここで用いられるアルコールとしては、特に制限はないが、具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール等の炭素数1〜8の脂肪族1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数1〜6の脂肪族2価アルコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族2価アルコール、ベンゼンジメタノール(オルト、メタ、パラ)等の芳香族2価アルコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールが挙げられる。中でも炭素数1〜8の脂肪族1価アルコールが好ましく、反応性及び経済性の点でメタノールが特に好ましい。
<反応条件:3,4−DABEから合成する場合>
上記(1)で得られた3,4−DABEと低分子カーボネート化合物とを、塩基性触媒及びアルコールの存在下に逐次的にアルコリシス反応及びエステル交換反応させてビニルエチレンカーボネートを製造する。
低分子カーボネート化合物の量は、3,4−DABEを含有する混合物中のアルコールの水酸基と反応性を有する化合物(3,4−DABE、3,4−HABE、3,4−AHBE、1,2−DAB、1,2−HAB及び1,2−AHB)の総和1モルに対し、通常、0.1モル以上、好ましくは1.0モル以上で、通常、5モル以下、好ましくは3モル以下である。通常、低分子カーボネート化合物の使用量は多い方が、収率は高くなる。また、触媒の使用量が多い及び/又は反応温度が高いなどの反応がより速やかに進行する条
件においては、低分子カーボネート化合物の使用量が少なくても高い収率が得られる場合がある。
アルコールの量は、3,4−DABEを含有する混合物中のアセトキシ基の総和1当量に対し、通常、0.01当量以上、好ましくは0.1当量以上で、通常、5当量以下、好ましくは2当量以下である。
触媒の使用量が多い及び/又は反応温度が高いなどの反応がより速やかに進行する条件
においては、アルコールの使用量は少ない方が収率が高くなるので好ましい。一方、アルコールの使用量が多過ぎると、平衡反応の問題からエステル交換反応の押し切りが鈍り、収率が上がり難くなる傾向がある。
塩基性触媒は、反応系中に含有する水分により活性が低下する場合がある。
原因としては、加水分解により触媒自体が変質する場合と、3,4−DABEのアセトキシ基が加水分解を起こし、その結果生成した酢酸が触媒毒となる場合が考えられるが、いずれの場合もほぼ当量の水分が塩基性触媒の活性に影響を及ぼすものと考えられる。
従って、用いる塩基性触媒の使用量は、反応系中の水分のモル数の合計を超えて使用するのが好まく、3,4−DABE1モルに対して、通常、0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは、0.03モル以上で、通常、1モル以下、好ましくは0.2モル以下、更に好ましくは0.1モル以下とするのが適当である。塩基性触媒の使用量が少な過ぎると反応の進行が遅くなる傾向がある。一方、多過ぎると、反応条件によっては副反応を起こし易くなる傾向がある。
反応温度は、触媒の種類及び量などの条件によるが、通常、40℃以上、好ましくは80℃以上で、通常、190℃以下、好ましくは150℃以下である。反応温度が低過ぎると反応の進行が遅くなる傾向がり、一方、高過ぎると、副反応を起こしたり、得られたビニルエチレンカーボネートが重合し反応液の粘度が高くなる場合がある。
反応時間は、触媒の種類や量及び反応温度などの条件によるが、通常、0.5時間以上、好ましくは1時間以上で、通常、12時間以下、好ましくは4時間以下である。
この反応は、通常無溶媒中で行われるが、必要に応じて適当な有機溶媒中で反応しても差し支えない。この際用いることができる有機溶剤として、例えば、反応に関与しないと考えられるn−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶剤、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶剤、DMF、DMAcなどのアミド系溶剤などが挙げられる。また、この反応系には、必要に応じて、ビニルエチレンカーボネートの重合禁止剤として、p-ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体やジフェニルピクリルヒドラジルなどのニトロ化合物などの添加剤を使用しても良い。
<反応条件:3,4−DHBEから合成する場合>
後述の(3)から得られた3,4−DHBEと低分子カーボネート化合物とを、塩基性触媒の存在下または不存在下にエステル交換反応させてビニルエチレンカーボネートを製造することもできる。
塩基性触媒を用いなくても、反応温度を上げたり反応時間を長くすることによってエステル交換反応を進行させることはできるが、副反応を起こしたり、得られた3,4−DHBEが重合反応を起こし反応液の粘度が上昇するなど問題を生じる場合があるため、塩基性触媒を適量用いる方が好ましい。
低分子カーボネート化合物の量は、3,4−DHBE1モルに対し、通常、0.1モル以上、好ましくは1.0モル以上で、通常、5モル以下、好ましくは3モル以下である。通常、低分子カーボネート化合物の使用量は多い方が、収率は高くなる。また、触媒の使用量が多い及び/又は反応温度が高いなどの反応がより速やかに進行する条件においては
、低分子カーボネート化合物の使用量が少なくても高い収率が得られる場合がある。
塩基性触媒として金属アルコキシドを用いると、反応系中に含有する水分により活性が低下する場合がある。その場合、ほぼ当量の水分が塩基性触媒の活性に影響を及ぼすものと考えられる。
従って、用いる塩基性触媒の使用量は、反応系中の水分のモル数の合計を超えて使用するのが好まく、3,4−DHBE1モルに対して、通常、0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは、0.03モル以上で、通常、1モル以下、好ましくは0.2モル以下、更に好ましくは0.1モル以下とするのが適当である。塩基性触媒の使用量が少な過ぎると反応の進行が遅くなる傾向がある。一方、多過ぎると、反応条件によっては副反応を起こし易くなる傾向がある。
反応温度は、触媒の種類及び量などの条件によるが、通常、40℃以上、好ましくは80℃以上で、通常、190℃以下、好ましくは150℃以下である。反応温度が低過ぎると反応の進行が遅くなる傾向がり、一方、高過ぎると、副反応を起こしたり、得られたビニルエチレンカーボネートが重合し反応液の粘度が高くなる場合がある。
反応時間は、触媒の種類や量及び反応温度などの条件によるが、通常、0.5時間以上、好ましくは1時間以上で、通常、12時間以下、好ましくは4時間以下である。
この反応は、通常無溶媒中で行われるが、必要に応じて適当な有機溶媒中で反応しても差し支えない。この際用いることができる有機溶剤として、例えば、反応に関与しないと考えられるn−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶剤、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶剤、DMF、DMAcなどのアミド系溶剤などが挙げられる。また、この反応系には、必要に応じて、ビニルエチレンカーボネートの重合禁止剤として、p-ベンゾキノンなどのベンゾキノン誘導体やジフェニルピクリルヒドラジルなどのニトロ化合物などの添加剤を使用しても良い。
<反応形式:3,4−DABEから合成する場合>
本発明における反応形式は、同一釜を用いてメタノリシス反応とエステル交換反応を同時に行うため、簡便かつ効率的である。また、必要とあらば、反応釜を分けてメタノリシス反応とエステル交換反応を2段反応で行うこともできる。
また、本反応は、バッチ設備でも連続設備でも適用できる。反応液が大量にある場合には、例えばプラグフローなどの連続設備を用いて製造しても良い。
<反応形式:3,4−DHBEから合成する場合>
本発明における反応形式は、バッチ設備でも連続設備でも適用できる。反応液が大量にある場合には、例えばプラグフローなどの連続設備を用いて製造しても良い。
<精製処理>
ビニルエチレンカーボネートに適した精製方法としては、通常蒸留による精製が挙げられる。その際の条件としては、温度が通常80℃〜140℃、圧力が通常、0.1kPa〜4.5kPaの減圧蒸留にて行うことができる。
(3)3,4−DHBEの製造方法
<酸触媒>
本発明に用いられる酸触媒としては、一般的なルイス酸やブレンステッド酸なら何でもよく、加水分解速度の点では、酸強度の強い塩酸、硫酸及び固体酸触媒などを用いることができる。
特に、固体酸触媒を用いると、後処理を含めた取り扱いが容易であり、かつ加水分解によって生成した酢酸の回収が容易に行えるなどの点で好ましい。用いる固体酸触媒としては、シリカ−アルミナ、活性土、シリカ、陽イオン交換樹脂等が挙げられるが、陽イオン交換樹脂が加水分解速度が大きく、副生物も少ないので好ましい。陽イオン交換樹脂としては、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を母体とするスルホン酸型強酸性イオン交換樹脂が好適であり、ゲル型樹脂でもポーラス型樹脂でもよい。その具体例としては、例えば三菱化学(株)製SK1B、SK104、SK108、PK208、PK216、PK228等が挙げられる。
なお、加水分解速度の点では一般的には塩基性触媒の方が、上記の酸触媒よりも有利である。塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物が一般的であり、その他には、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシドなどの金属アルコキシドやナトリウム、カリウムなどの
アルカリ金属単体などが挙げられる。
しかしながら、これらの塩基性触媒の場合には、加水分解によって生成する酢酸と塩を形成するため酢酸の総当量以上に必要とする場合がある。このことは酢酸の回収が容易にできなくなるという点から、工業的には不利である。但し、上記の酸触媒は加水分解速度が塩基性触媒より劣るため、加水分解反応を押し切る目的で一部塩基性触媒を併用することも考えられる。
<反応条件>
上記(1)で得られた3,4−DABEと水とを酸触媒の存在下に加水分解反応させ3,4−DHBEを製造する。
加水分解反応は、通常、30℃以上、好ましくは40℃以上で、通常、110℃以下、好ましくは90℃以下で実施される。温度が低過ぎると反応速度が著しく遅く、多量の触媒を必要となるため工業的には不利である。一方、温度が余り高過ぎると、副反応が増加し収率にも悪影響を及ぼす場合がある。反応圧力については、特に限定はされないが、通常は常圧〜1MPaの範囲である。反応時間は、反応温度、用いる酸触媒や水の量、反応形式によっても異なるが、通常、1時間以上、好ましくは2時間以上で、通常50時間以下、好ましくは20時間以下である。反応時間が短すぎると、加水分解反応が不十分になる場合がある。一方、反応時間が長過ぎると、反応温度によっては副反応を起こしたり、また工業的にも不利となる。
上記(1)で得られた3,4−DABEと水との比率は、水が反応原料であると同時に溶媒でもあるので、化学量論量以上用いられる。3,4−DABEと水とのモル比は、通常、2以上、好ましくは4以上で、通常、100以下、好ましくは50以下の範囲で用いられる。
酸触媒の量は、用いる触媒の酸強度や反応形式や反応温度及び時間によっても異なるが、バッチ反応によって上記の条件で行う場合には、3,4−DABEに含まれるアセトキシ基1当量に対して、通常、0.01当量以上、好ましくは0.03当量以上で、通常、1当量以下、好ましくは0.5当量以下の範囲である。酸触媒の量が少な過ぎると、加水分解反応が不十分になる場合がある。一方、酸触媒の量が多過ぎると、反応温度によっては副反応を起こしたりする場合がある。
<反応形式>
加水分解反応は、バッチ式でも連続式でも任意の方法で実施される。イオン交換樹脂を用いる場合、懸濁状態で反応させる方式でも、イオン交換樹脂の充填層に反応原料を通過させる方式でもよく、工業的には固定床連続法が有利である。
<水及び酢酸の除去>
加水分解によって生成した酢酸と水を除去するには、通常減圧留去する方法が一般的である。その際の条件としては、工業的には温度が通常60℃〜90℃、圧力が通常2kPa〜20kPaの範囲にて行うことができる。
<精製処理>
3,4−DHBEに適した精製方法としては、通常蒸留による精製が挙げられる。その際の条件としては、温度が通常80℃〜120℃、圧力が通常、0.6kPa〜6.0kPaの減圧蒸留にて行うことができる。
<用途>
本発明の製造方法により得られる各種ブテン誘導体は、アクリル酸、メタアクリル酸,アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、ビニルピロリドン、エチレン、プロピレンなどと共重合させることにより物性の改良や機能性の付与等の用途に用いることができる。
また、3,4−DHBEの場合は、上記に加えて、ジオールとしてポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂などの構成成分に加えることにより物性の改良や機能性の付与等の用途に用いることができる。
以下に、実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の例において該ブテン誘導体の定量はガスクロマトグラフィーで行った。
<アセトキシ化反応>
パラジウム5.0重量%及びテルル1.56重量%を含有した担持触媒(球状シリカ担体)4gを内径12mm(有効断面積1.005cm2)のステンレス製反応管に充填し、反
応圧力5.9MPa、反応温度80℃において1,3−ブタジエン0.15モル/時、酢酸2.5モル/時、酸素6%を含有する窒素100Nl/時の流量で流通し、連続的に反応を500時間実施した。続いて、温度135℃,圧力12kPaにて酢酸及び水を蒸留で除去しアセトキシ化反応混合物1510gを得た。
<3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物の分離蒸留>
アセトキシ化反応混合物1500gを内容積2Lの三つ口フラスコに入れ、これに攪拌機、温度計、蒸留塔(オルダーショウ;75mmφ、実段数30段)を取り付け、還流比15の下で内温140℃、圧力0.2kPaにて約2時間減圧蒸留を行ったところ、160gの蒸留精製物が得られた。これをガスクロマトグラフィーにて定量分析を行ったところ、主な含有成分は次の通りであった。(この混合物を、混合物Aと称する)
3,4−DABE 73.6重量%
3,4−HABE及び3,4−AHBE 18.4重量%
1,2−DAB 3.1重量%
1,2−HAB及び1,2−AHB 1.5重量%
その他 3.4重量%
従って、得られた混合物100g中には、3,4−DABEが0.428モル、3,4−HABE及び3,4−AHBEが0.142モル、アルコールの水酸基と反応性を有する化合物(3,4−DABE、3,4−HABE、3,4−AHBE、1,2−DAB、1,2−HAB及び1,2−AHB)の総和が0.599mol含有されていた。
実施例1
撹拌機、温度計、冷却管を備えた容量500mlの四つ口フラスコに、混合物A250g、無水酢酸50.6gを仕込んだ。その後反応器内を乾燥窒素で置換し、130℃まで昇温した。130℃に達した後、この温度を維持して5時間反応を継続させた。反応終了後、内容物を分析したところ3,4−HABE、3,4−AHBEの3,4−DABEへの転化率は96.6%であった。
得られた内容物を撹拌機、温度計、蒸留塔(オルダーショウ;実段5段)を備えた容量1lの四つ口フラスコに移し、液温を110℃圧力を7kPaにて、2時間かけて未反応の無水酢酸及び酢酸等を除去した。その後、更に減圧度を上げて蒸留精製したところ、圧力1kPa留出温度86℃にて、224gの留出物が得られた。この留出物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、3,4−DABEが94.5重量%、1,2−DABが4.0重量%、その他が1.5重量%であった。
実施例2
実施例1において、130℃に達した時にピリジン6.0gを添加し、この温度にて
2時間反応を行ったところ3,4−HABE、3,4−AHBEの3,4−DABEへの
転化率は99.2%であった。
実施例3
実施例1において得られた3,4−DABE溶液の組成に則して、3,4−DABE95重量%と1,2−DAB5重量%からなる混合液から抽剤としてウンデカノールを用いて抽出蒸留を行うことにより1,2−DABを留去する方法について、ASPENTEC社製静的シミュレータソフトASPENを用いた蒸留シミュレーションを行った。
なお、シミュレーションの物性モデルは、前掲のジャーナル オブ フィジカルケミストリー12頁に記載の方法により算出した無限希釈活量係数をもとにパラメータを決定したNRTLで均一系として計算したものを用いた。以後の蒸留シミュレーションの結果も同様に計算した。
予め所定の方法によって算出された各物性値は次の通りである。
ウンデカノール中での無限希釈活量係数(100℃)
1,2−DAB :1.57
3,4−DABE:2.21
無限活量係数の比:0.71
ウンデカノールの標準沸点:245℃(ドルトムントデータバンク2
003年版より引用)
その結果、理論段62段(塔頂の凝縮器及び塔底のリボイラもそれぞれ1段とする)の蒸留塔の上から56段目に、3,4−DABE19kmol/Hr、1,2−DAB1kmol/Hrを導入し、また、上から3段目に抽剤としてウンデカノール200kmol/Hrを導入し、還流比20、塔頂圧力0.013MPaで抽出蒸留を行ったところ、塔頂から1,2−DAB0.5%を含む3,4−DABEとウンデカノールの混合物(3,4−DABE95.1mol%、ウンデカノール4.5mol%)が得られた。
更に、塔頂からの留出物を理論段12段の蒸留塔の上から6段目に供給し、還流比10、塔頂圧力0.013MPで通常の蒸留を行ったところ、塔頂から1,2−DAB0.5%を含む3,4−DABEが得られた。
実施例4
実施例1において得られた3,4−DABE溶液の組成に則して、3,4−DABE95重量%と1,2−DAB5重量%からなる混合液から抽剤としてプロピレンカーボネートを用いて抽出蒸留を行うことにより3,4−DABEを留出精製する方法について、ASPENTEC社製静的シミュレータソフトASPENを用いた蒸留シミュレーションを行った。
同じくジャーナル オブ フィジカルケミストリーに記載の方法によって算出された各物性値は次の通りである。
プロピレンカーボネート中での無限希釈活量係数(100℃)
1,2−DAB :1.62
3,4−DABE:1.33
無限活量係数の比:1.22
プロピレンカーボネートの標準沸点:242(ドルトムントデータバンク2003
年版より引用)
その結果、理論段62段(塔頂の凝縮器及び塔底のリボイラもそれぞれ1段とする)の蒸留塔の上から16段目に、3,4−DABE19kmol/Hr、1,2DAB1kmol/Hrを導入し、また、上から3段目に抽剤としてプロピレンカーボネート100kmol/Hrを導入し、還流比20、塔頂圧力0.013MPaで抽出蒸留を行ったとこ
ろ、塔底から1,2−DAB0.5%を含む3,4−DABEとプロピレンカーボネートの混合物(3,4−DABE12.1mol%、プロピレンカーボネート87.8mol%)が得られた。
更に、塔底から得られた混合物を理論段12段の蒸留塔の上から6段目に供給し、還流比20、塔頂圧力0.013MPで通常の蒸留を行ったところ、塔頂から1,2−DAB0.5%を含む3,4−DABEが得られた。
実施例5
容量70mlの撹拌機を備えたステンレス製オートクレーブに、実施例1で得られた留出物10.00g、ジメチルカーボネート6.18g、メタノール3.66g、触媒としてナトリウムメトキシド0.123g仕込みオートクレーブを密封した。その後反応器内を乾燥窒素で置換し大気圧とした後、130℃まで昇温した。昇温及び反応の進行に伴い圧力は若干上昇したが、0.7MPaで一定となった。かかる状態を維持して4時間反応を継続させた。反応終了後、内容物を分析したところ留出物中の3,4−DABEのビニルエチレンカーボネートへの転化率は70.1%であった。
本発明における3,4−ジアセトキシ−1−ブテン及び1,2−ジアセトキシブタンを含む混合物から3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを分離する方法の一実施態様を示す説明図 本発明における3,4−ジアセトキシ−1−ブテン及び1,2−ジアセトキシブタンを含む混合物から3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを分離する方法の他の実施態様を示す説明図

Claims (8)

  1. 3−ヒドロキシ−4−アセトキシ−1−ブテン(以下、3,4−HABEと略記)及び/又は3−アセトキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン(以下、3,4−AHBEと略記)と無水酢酸とをアセチル化反応させることにより3,4−ジアセトキシ−1−ブテン(以下、3,4−DABE、と略記)を製造する方法であって、3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEが、1,3−ブタジエンと酢酸とを分子状酸素及びパラジウム系触媒の存在下にアセトキシ化反応させて得られる反応生成物から3,4−HABE及び/又は3,4−AHBEを含有する混合物を蒸留により分離して得られるものであることを特徴とする3,4−DABEの製造方法。
  2. 混合物が、更に、3,4−DABEを60重量%以上含有するものである、請求項1に記載の3,4−DABEの製造方法。
  3. 反応により生成した3,4−DABE中に含まれる1,2−ジアセトキシブタンを抽出蒸留により分離することを特徴とする請求項1または2に記載の3,4−DABEの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造法により得られた3,4−DABEと低分子カーボネート化合物とを塩基性触媒及びアルコールの存在下に逐次的にアルコリシス反応とエステル交換反応させることを特徴とするビニルエチレンカーボネートの製造方法。
  5. 塩基性触媒が、金属アルコキシド及び/又は金属アルコキシド源である、請求項4に記載
    のビニルエチレンカーボネートの製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の製造法により得られた3,4−DABEと水とを酸触媒の存在下に加水分解反応させることを特徴とする3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン(以下、3,4−DHBEと略記)の製造方法。
  7. 酸触媒が、固体酸触媒である、請求項6に記載の3,4−DHBEの製造方法。
  8. 請求項6または7に記載の製造法により得られた3,4−DHBEと低分子カーボネート化合物とを塩基性触媒の存在下または不存在下にエステル交換反応させることを特徴とするビニルエチレンカーボネートの製造方法。
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