JP4367020B2 - 1,6−ヘキサンジオールの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロヘキサンの液相酸化反応液から分離、回収されるオリゴマーを含んだカルボン酸含有混合物を、少なくとも1個の水酸基を有する炭素数1〜6からなる化合物群の少なくとも1アルコール化合物でエステル化したエステル化合物含有混合物を水素により水素化分解して1,6−ヘキサンジオールを効率的に製造する方法に関するものである。1,6−ヘキサンジオールは、ポリウレタンエラストマー、合成樹脂添加剤、医農薬中間体などに利用されている有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
シクロヘキサンの液相空気酸化により、ε−カプロラクタムの合成原料として有用なシクロヘキサノール及びシクロヘキサノンが工業的に製造されている。1,6−ヘキサンジオールなどのジオール化合物は、基本的には、この酸化反応で副生するカルボン酸含有混合物をアルコール化合物でエステル化した後、生成したエステル化物を水素で水素化分解して製造される。
【0003】
シクロヘキサノール及びシクロヘキサノンの製造を目的にするシクロヘキサンの酸化反応において、副生物として種々のカルボン酸が生成する。具体的な副生成物としては、カプロン酸、吉草酸、酪酸、プロピオン酸及び酢酸などの一塩基酸、さらにアジピン酸、グルタール酸、コハク酸などの二塩基酸、またオキシ酸であるε−オキシカプロン酸あるいはその環化物であるε−カプロラクトンなどがである。(例えば非特許文献1参照)
【0004】
しかしながら、酸化反応で生成するこれらカルボン酸含有混合物は、オキシ酸やジオール類も存在するため、酸化反応工程及びその後の処理工程でかなりの割合が縮合しオリゴマーとなって存在する。従って、ここで対象として扱う実際のカルボン酸含有混合物は、上記カルボン酸化合物の大部分が種々のオリゴマーとして存在しているものである。すなわち、例えばアジピン酸やε−オキシカプロン酸やグルタール酸などはそのままの形では存在しているのは僅かであり、大半は縮合しオリゴマーになっている。
【0005】
酸化反応液から1,6−ヘキサンジオールなどのジオール化合物の製造法としては、上記の副生カルボン酸類の混合物をアルカリ洗浄でナトリウム塩として、アジピン酸やオキシカプロン酸を主成分とするカルボン酸の混合物をメチルイソブチルケトンなどの有機溶剤で抽出し、これを1,6−ヘキサンジオールなどのジオール化合物でエステル化した後に、エステル化液に銅−クロム系などの触媒を数重量%加えて、200〜300kg/cmの圧力下、240〜290℃の反応温度で該エステル化物を水素で水素化分解してジオール化合物を得る方法も知られている。(例えば特許文献1参照)
【0006】
このようにエステル類を水素化分解して1,6−ヘキサンジオールに変換する反応は、通常、液相懸濁床反応で高い水素圧、高い反応温度条件で行われる。この反応では触媒としては銅含有の粉末触媒をエステル液に懸濁する。このようにして得られた反応液中には、生成1,6−ヘキサンジオールと共に粉末の触媒が懸濁状態で含有されている。従って、1,6−ヘキサンジオールを製品として取り出すまでには、触媒含有反応液のポンプによる移送、反応液からの触媒のろ過、分離が不可欠となっている。このように液相懸濁床触媒反応による1,6−ヘキサンジオールの製法には、プロセス上、運転上にも煩雑な工程、操作が伴い、大きな問題点を抱えている。
特に、銅−クロム系触媒を使用する場合には有害なクロムを含むため、液相懸濁床反応プロセスでは粉末触媒のハンドリングに特別な対策が必要であり、また工程で排出される排水や廃液の処理にも特別な設備が必要となるなどの欠点を有する。さらに、液相懸濁反応では,触媒成分の一部が反応液に溶解する。
このため、反応液から製品の1,6−ヘキサンジオールなどのジオール化合物を蒸留分離しする際に、蒸留釜残の処理が問題となっている。
このように副生カルボン酸を含有する混合物を出発物質として、エステル合成を経由し、液相懸濁床での水素化分解反応による1,6−ヘキサンジオールの従来製法には、数多くの問題点を残している。
特に、液相懸濁床でのエステルの水素化分解反応では、高い水素圧条件下で行われ、反応後には粉末触媒の分離ろ過をする必要があるなど触媒の取り扱いに関わる問題は大きい。
この対策として液相固定床での水素化分解も想定されえるが、過酷な反応条件即ち、高い水素圧力ならびに高い反応温度の解決には至っていない。
【0007】
また、その他の方法として、副生カルボン酸類の混合物を水抽出し、メタノールのような低分子モノアルコールでエステル化し、種々の蒸留分離工程を経てアジピン酸とオキシカプロン酸の成分をアジピン酸ジエステルやオキシカプロン酸エステルの形に換えて取り出し、前者は水素化分解し1,6−ヘキサンジオールに、後者は環化しカプロラクトンに変換するプロセスが開示されている。(例えば特許文献2参照)
即ち、この発明では、エステル化、蒸留などを組み合わせた複雑なプロセスによって、水素化分解反応の原料としてアジピン酸の低分子モノアルコールエステルを取り出している。従って1,6−ヘキサンジオールの合成段階ではアジピン酸ジメチルのようなクリーンな低分子エステル化合物の水素化分解である。このため、水素化分解反応工程でのエステル原料だけを基準にすると1,6−ヘキサンジオールの収率は高く、反応も懸濁床触媒反応のみならず固定床触媒反応も可能である。しかしながら、副生カルボン酸含有混合物中の1,6−ヘキサンジオールへの有効成分を基準にした場合の1,6−ヘキサンジオールの収率は高いとは言えない。しかも、多くの蒸留工程を含む複雑なプロセスであるため、必ずしも経済的に有利な製法になっていない。
【0008】
また、副生カルボン酸類の混合物からアジピン酸とヒドロキシカプロン酸を取り出し、モノアルコールでエステル化し蒸留後得られるアジピン酸ジエステルとヒドロキシカプロン酸エステルを水素化分解し1,6−ヘキサンジオールに変換する方法が開示されている。(例えば特許文献3参照)
この方法も、例えば、メタノールをエステル化剤に用いる場合、アジピン酸ジメチルとヒドロキシカプロン酸メチルを水素化分解し1,6−ヘキサンジオールを合成するものであり、前述の特許文献2と同様に、クリーンな低分子エステルを水素化分解工程での原料にすることを特徴にしている。そのような原料を用いての水素化分解反応は固定床触媒又は懸濁床触媒を用いる方法で行われる。この方法でも、水素化分解工程のみでの1,6−ヘキサンジオール収率は高いが、副生カルボン酸類に1,6−ヘキサンジオールへの有効成分となる高沸点成分が含まれている場合は原料基準で高い収率を得るのが難しくなることが想定される。しかも、副生カルボン酸類からアジピン酸ジエステルとヒドロキシカプロン酸エステルを取り出すプロセスは、非常に複雑なものとなっている。
【0009】
例えば、アジピン酸ジメチルやアジピン酸ジエチルを気化させ、水素と共に流して、銅クロム系の固定床触媒上で反応させて、1,6−ヘキサンジオールを連続的に製造する方法が開示されている。(例えば特許文献4参照)
それによると160−250℃、10−70気圧の条件であるにも拘わらず高い収率で1,6−ヘキサンジオールが得られ、しかも触媒の分離操作を必要としない方法である。しかしながら、気相反応とするために、反応原料はアジピン酸ジメチルやアジピン酸ジエチルのような低分子エステルに限定されている。
【0010】
さらに、アジピン酸ジエステルやヒドロキシカプロン酸エステルの固定床触媒での気相水素化分解反応による1,6−ヘキサンジオールの製造法も開示されている。(例えば特許文献5参照)
触媒は銅、マンガン、アルミニウムを含む触媒などを用いているが、原料のエステル化合物は気相反応を行うためアジピン酸やヒドロキシカプロン酸とC1−C4のモノアルコールとのエステル化合物としている。この方法でも使用できる原料は比較的低沸のエステル化合物に限られている。
【0011】
【非特許文献1】
触媒,33,5,341(1991)
【特許文献1】
特公昭53−33567号公報
【特許文献2】
特表2000−506134号
【特許文献3】
特表2003−503469号公報
【特許文献4】
特開昭64−85938号公報
【特許文献5】
特表2001−527056号公報
【0012】
このように、シクロヘキサンの酸化反応で副生するオリゴマーを含んだカルボン酸含有混合物を原料にして、1,6−ヘキサンジオールを経済的、かつ、より安全な条件下で製造する方法は確立されてはいない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シクロヘキサンの液相酸化反応で得られる反応液からシクロヘキサノール、シクロヘキサノン及び未反応シクロヘキサンを除いて回収されるカルボン酸含有混合物を出発原料として、1,6−ヘキサンジオールを経済的かつより安全な条件下にて効率よく製造しようとするものである。
すなわち、本発明では安価なカルボン酸含有混合物とアルコール類とより合成されるエステル化合物含有混合物から銅を含有した触媒の存在下で水素化分解して1,6−ヘキサンジオールを製造するに際して、触媒の分離を必要とせず、経済的かつより安全な条件下での製造方法を開発することを目的としたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、
シクロヘキサンを液相酸化して得られた酸化反応液からシクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンを分離し、回収されたカルボン酸含有混合物を原料として1,6−ヘキサンジオールを製造するに際して、
(1)該カルボン酸含有混合物を少なくとも1個の水酸基を有する炭素数1〜6からなる化合物群の少なくとも1アルコール化合物でエステル化して、エステル化合物含有混合物とし、
(2)銅を含有した固体触媒を固定床触媒とし、
(3)該エステル化合物含有混合物を、
(4)低級モノアルコールと共存させて、
(5)トリクル反応条件下にて、
水素と接触分解させることを特徴とする1,6−ヘキサンジオールの製造法により解決される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の方法を詳しく説明する。
シクロヘキサンの酸素酸化反応では,副生物として、種々のカルボン酸、例えば、一塩基酸としてカプロン酸、吉草酸、酪酸、プロピオン酸及び酢酸などが生成し、二塩基酸としてアジピン酸、グルタール酸、コハク酸などが生成し、また、オキシ酸としてε−オキシカプロン酸あるいはその環化物、即ち、ε−カプロラクトンなどが生成する。その他、アルコール類も生成する。(非特許文献1)カルボン酸含有混合物は、水抽出あるいは、有機溶媒抽出したものを使用するのが好ましい。あるいは、一度、アルカリ抽出をし、中和したのちに水抽出あるいは有機溶媒抽出をしてもよい。このカルボン酸等の混合物は抽出回収過程で一部縮合するため、得られる所謂カルボン酸含有混合物は種々の分子量のオリゴマーや有機酸、アルコールものより成っている。特にオリゴマーの含有量は多い。カルボン酸含有混合物の組成の一例を次に示す。
各種オリゴマー 30〜70重量%
アジピン酸 5〜20重量%
オキシカプロン酸 1〜10重量%
グルタール酸 0〜5重量%
カプロラクトン 0〜3重量%
コハク酸 0〜3重量%
シクロヘキサノール 0〜3重量%
このカルボン酸含有混合物の成分、組成は、シクロヘキサンの酸化条件、その後の抽出条件によって異なり、限定されるものではない。
本発明ではこのようなカルボン酸含有混合物をエステル化したものを水素化分解し1,6−ヘキサンジオールに変換しようとするものであるが、エステル化する前のカルボン酸含有混合物中で1,6−ヘキサンジールに誘導される成分は、アジピン酸、オキシカプロン酸、カプロラクトンのみでなく、オリゴマーを構成しているユニットにも1,6−ヘキサンジールに変換されうるものが多く含まれる。
【0016】
本発明の反応で使用されるエステル化合物含有混合物は、前述のようにシクロヘキサンの酸化反応の工程より回収されるアジピン酸、グルタール酸及びコハク酸などの二塩基酸、及びオキシカプロン酸などのオキシ酸、各種オリゴマーを含むカルボン酸含有混合物を、アルコール化合物でエステル化することにより得られ、エステル化合物含有混合物の酸価としては、5mg−KOH/gr以下のものが好ましく用いられる。
エステル化用のアルコール化合物としては、特に制限はないが、少なくとも1個の水酸基を有する炭素数1〜6の化合物群からなる少なくとも1アルコール化合物が好ましい。
すなわち、エステル化用のアルコール化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオールなどの二価アルコール、及びヘキサノール、ペンタノール、ブタノール、プロパノール、エタノール、メタノールなどの一価アルコールが挙げられ、これらから選ばれる1種以上のアルコールの混合物を使用することもできる。
混合組成比としては、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの二価アルコールが30重量%以上含まれ、一価アルコールが5重量%以上から成るアルコール混合物が好ましく用いられる。
このようなアルコール混合物と上記カルボン酸含有混合物から得られるエステル化合物含有混合物は、各種エステル化合物の混合物からなる。
即ち、エステル化合物含有混合物は、低分子量のものから分子量が数百〜数千単位の各種オリゴマーを含有するものである。
【0017】
カルボン酸含有混合物とアルコール化合物からエステル化合物含有混合物を得る方法としては、通常、カルボン酸含有混合物とアルコール化合物とから成る溶液を、例えば、50〜300℃に加熱しながら生成水を留去していく。このようにしてエステル化反応を進行させ、溶液の酸価が5以下になるまで反応を行う。
この反応を行うに際しては、溶液中にエステル化触媒として酸触媒を加えても、加えなくても何ら問題ない。そのような酸触媒としては、硫酸、p−トルエンスルフォン酸などエステル化反応に公知の均一系触媒、さらにシリカアルミナ、ゼオライト、硫酸化ジルコニア、タングステン酸ジルコニア、ヘテロポリ酸、イオン交換樹脂などの不均一系の固体酸触媒などが用いられるが、得られるエステル化合物含有混合物は、反応後に触媒と分離しておくのが好ましい。
触媒を用いない場合では、カルボン酸含有混合物とアルコール化合物を含む溶液を適度な温度で加熱し、生成水をバブリング等で反応系外に留去させることにより、低酸価のエステル化合物含有混合物を得ることができる。
また、固体酸触媒が充填された固定床触媒反応器にカルボン酸含有混合物およびアルコール化合物を流通反応させる方法によっても目的のエステル化合物含有混合物を得ることができる。
【0018】
本発明では、上記エステル化合物含有混合物を固定床触媒上で水素ガスにより水素化分解し、1,6−ヘキサンジオールに変換する。
その方法について以下詳細に述べる。
固体触媒を固定床流通反応器に充填して、所定の条件下で前記のエステル化合物含有混合物と水素ガスを連続的に供給する。
固体触媒は、銅を含有する成形したものを用い、銅を含んだ触媒であれば組成については特に限定するものではない。例えば、CuO−ZnO、CuO−ZnO−Al、CuO−SiO、CuO−ZrO、CuO−Crなど公知の水素化分解反応、水素添加反応に活性を発現する銅含有触媒およびそれらを主成分とする触媒が好適に用いられる。成形された固体触媒であれば、ペレット、破砕品など形状は限定されるのもではない。
エステル化合物含有混合物の供給速度は、触媒反応層の体積を基準に、通常、LHSV(液空時速度)を0.01〜10/Hrであり、好ましくは0.05〜5/Hr、さらに好ましくは0.1〜1/Hrである。
【0019】
本発明では、低級モノアルコールを共存させることが重要である。低級モノアルコールとしては、炭素数1〜6の脂肪族モノアルコールが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。好ましくは、メタノールである。
エステル化合物含有混合物と低級モノアルコールを共存させる方法としては、特に制限はないが、エステル化合物含有混合物を低級モノアルコールに溶解させて反応部に導入する方法が簡便で好ましい。あるいは、反応部に低級モノアルコールとエステル化合物含有混合物をそれぞれ個別に導入しても何ら問題はない。
低級モノアルコールの使用量は、原料のエステル化合物含有混合物に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは、0.2〜4重量部である。低級モノアルコールを使用しなければ、1,6−ヘキサンジオールの収率が低い。
【0020】
また、反応に不活性な溶媒を同伴させてもよい。例えば、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、シクロペンタン、ペンタンのような飽和炭化水素類は溶媒として或いは不純物として原料中に入っていても問題はない。さらにエーテル類も原料に同伴されても反応に影響を与えない。
反応に不活性な溶媒の使用量については、特に制限はないが、原料のエステル化合物含有混合物に対し、0〜10重量部で良い。
【0021】
本発明は、銅を含有した固体触媒上にエステル化合物含有混合物、低級モノアルコールと水素ガスを供給するものであるが、トリクル反応条件下でのエステル化合物含有混合物の水素化分解である。
すなわち、反応状態としては水素ガス雰囲気下にある固定床触媒の上部から液状のエステル化合物含有混合物が流れ落ちながら1,6−ヘキサンジオールに変換させるものである。
ここで用いるエステル化合物含有混合物は、炭素数C1〜C6のモノエステル、ジエステルのような低分子量のものから分子量が数百〜数千であるオリゴマーのエステルの混合物であるが、大部分はオリゴマーのエステルである。
このため、このエステル化合物含有混合物は室温では液状物であるが、沸点も高く、例えば300℃でも液状となっている。したがって本発明の下記反応条件では、エステル化合物含有混合物はトリクル状態で触媒と接触する。
【0022】
反応器には水素ガスを供給するが、その水素圧は、通常、1MPa以上とする。高くても10MPa以下で充分である。さらに高い圧力の水素圧でも構わないが、高くしても反応成績が向上する訳ではない。むしろこれより高い圧力にした場合、デメリットの方が大きくなる。例えば、反応圧を必要以上の高くすることは無駄なエネルギーの消費をもたらすだけである。
また、反応器も必要以上の耐圧仕様になるため高価となり実用的にも好ましくない。さらに、液相懸濁床反応のような高圧条件下では、生成物の過分解による副生物が多くなり、1,6−ヘキサンジオールの収量が低下することになり好ましくない。
したがって、本発明方法での水素圧は、好ましくは1〜10MPa、さらに好ましくは3〜9MPaである。
なお、水素圧があまりに低いと水素化分解反応速度が遅くなり目的生成物である1,6−ヘキサンジオールの収量が低下するので望ましくない。
水素ガスの供給速度は定圧換算で触媒反応層の体積を基準に、通常、GHSV(ガス空時速度)を100〜10000/Hrとするのが適当である。
また、水素ガスに不活性なガスも同伴させてもよい。例えば窒素、アルゴン、メタン、エタン、ブタン等が挙げられるが、これらは反応に影響を与えるものではない。
【0023】
本発明では反応温度を、通常、190〜250℃とする。好ましくは200〜230℃である。反応温度が250℃より高くなると副生物が多く生成するようになる。さらに充填した触媒が劣化し易くなり、固定床触媒反応としては好ましくない結果をもたらす。
また、反応温度があまりに低いと反応が進行しなくなり目的生成物である1,6−ヘキサンジオールの収量が低下し好ましくない。
【0024】
本発明で得られる1,6−ヘキサンジオールは、水素化分解された反応液から、例えば通常の減圧蒸留装置を用いて、容易に分離精製される。
【0025】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例、比較例中のエステル価の転化率(以下、EV転化率と表記する)、反応液中の1,6−ヘキサンジオール収量、有効成分基準での1,6−ヘキサンジオール収率は次のように定義している。
EV転化率(%)=(反応前の原料エステル液EV値−反応後液のEV値)/反応前の原料エステル液EV値 ×100
反応液中の1,6−ヘキサンジオール収量(重量%)=反応後液100grに含まれる1,6−ヘキサンジオールの重量(gr)
有効成分基準での1,6−ヘキサンジオール収率(モル%)=1,6−ヘキサンジオール生成量(モル)/カルボン酸含有混合物中の1,6−ヘキサンジオールへの有効成分モル数(モル)
【0026】
参考例(エステル化合物含有混合物の調整)
原料となるカルボン酸含有混合物は、シクロヘキサンの液相酸化反応で得られた酸化反応液からシクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンを除いたものである。すなわち、シクロヘキサンの液相空気酸化反応液を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、この洗浄液を希硫酸で中和した後、メチルイソブチルケトンで抽出して濃縮して得た。このカルボン酸含有混合物の酸価(AV)は中和滴定により366mg−KOH/grと定量された。
その組成は、アジピン酸が9.8重量%、オキシカプロン酸が3.0重量%、カプロラクトンが0.1%、グルタール酸が0.8重量%、コハク酸が1.2重量%含まれるが、大半が酸性のオリゴマーである。オリゴマーはアジピン酸やオキシカプロン酸など種々の有機酸、オキシ酸、アルコール類が縮合したものであり分子量も数百から数千の種々のものである。
オリゴマーを構成するユニットとして存在するアジピン酸およびオキシカプロン酸、カプロラクトンも含め、該カルボン酸含有混合物中にはアジピン酸およびオキシカプロン酸、カプロラクトンの1,6−ヘキサンジオールへの有効成分が合計で65重量%含有していると換算された。
このカルボン酸含有混合物液100重量部に対し、1,6−ヘキサンジオール65重量%、1,5−ペンタンジオール13重量%、ヘキサノール、ペンタノール、ブタノールの一価アルコール9重量%が含まれるアルコール混合物を80重量部加え、無触媒で250℃でエステル化しエステル化液を153重量部得た。なおこのエステル化液中には1,6−ヘキサンジオールが5重量%存在し、その酸価は1mg−KOH/gr以下であった。
【0027】
実施例1(水素化分解反応)
内径10mlの固定床流通反応器にCuO−ZnO触媒(宇部興産(株)製 UHP−Tタブレット成形品)を1−2mmのサイズに破砕したものを8ml充填した。触媒層の温度を220℃とし、これに7MPaの水素ガス流通下、上記の参考例で得たエステル化合物含有混合物液をメタノールの40重量%溶液(重量比:メタノール/エステル化合物含有混合物液=1.5)で流通した。エステル化合物含有混合物液のLHSVは0.38/hrとした。供給した水素ガスのGHSVは室温、常圧換算で2250/hrとした。
反応開始後3時間の時点で反応器から流出した反応液を捕集した。その一部を鹸化後中和滴定しエステル価を求めた。また、反応液中の1,6−ヘキサンジオール収量をガスクロマトグラフィーにより定量した。その結果、EV転化率は85.7%であり、反応液中の1,6−ヘキサンジオール収量は66.0重量%であった。なお、これはカルボン酸含有混合物中の1,6−ヘキサンジオールへの有効成分基準に換算すると1,6−ヘキサンジオール収率は85.3モル%である。
【0028】
実施例2
実施例1において、反応温度を230℃、水素圧を9MPa、水素ガス流速GHSVを5325/hrとした以外は実施例1と同様な条件でエステル液の水素化分解を用った。
その結果、EV転化率は91.5%であり、反応液中に1,6−ヘキサンジオール収量は68.7重量%で含まれていた。これは、カルボン酸含有混合物中の1,6−ヘキサンジオールへの有効成分を基準に換算すると1,6−ヘキサンジオール収率89.3モル%である。
【0029】
実施例3
実施例1において、反応温度を220℃、水素圧を3MPaとした以外は実施例1と同様な条件でエステル液の水素化分解を行った。
その結果、EV転化率は84.3%であり、反応液中の1,6−ヘキサンジオール収量は65.2重量%であった。これは、カルボン酸含有混合物中の1,6−ヘキサンジオールへの有効成分を基準に換算すると1,6−ヘキサンジオール収率84.2モル%である。
【0030】
実施例4
実施例1において、触媒としてCuO−SiO2系(日産スードヘミー(株)製T−366)1−2mmの大きさに破砕したものを8ml充填し、水素圧を3MPaとした以外は実施例1と同様な条件でエステル液の水素化分解を行った。
その結果、EV転化率は85.3%であり、反応液中の1,6−ヘキサンジオール収量は65.9重量%であった。これは、カルボン酸含有混合物中の1,6−ヘキサンジオールへの有効成分を基準に換算すると1,6−ヘキサンジオール収率85.2モル%である。
【0031】
実施例5
実施例1の水素化分解反応を1031時間継続して行った。その結果、1031時間経過時点での活性及び1,6−ヘキサンジオールの収率は初期の結果(実施例1)と殆ど変わらずEV転化率は87.4%であり、反応液中の1,6−ヘキサンジオール収量は66.5重量%であった。これは、カルボン酸含有混合物中の1,6−ヘキサンジオールへの有効成分を基準に換算すると1,6−ヘキサンジオール収率86.1モル%である。
【0032】
比較例 1
容積300mlのオートクレーブに、参考例で得たエステル液25g、メタノール75ml、粉末のCuO−ZnO触媒(宇部興産(株)製 UHP−C)を3gr仕込んだ。水素ガスの導入し、水素圧7MPaの加圧条件下で攪拌しながら220℃で3時間反応を行った。室温まで冷却し、放圧後、反応液を取り出し加圧ろ過で触媒と反応液を分離した。反応液を分析した結果、EV転化率は24.0%であり、反応液中の1,6−ヘキサンジオール収量は12.9重量%であった。これは、カルボン酸含有混合物中の1,6−ヘキサンジオールへの有効成分を基準に換算すると1,6−ヘキサンジオール収率14モル%である。
このように、液相中での反応では、1,6−ヘキサンジオールの収率は低いものであった。
【0033】
実施例1〜5および比較例1を表1にまとめて示した。
【表1】
Figure 0004367020
〔備考〕EV転化率:エステル価転化率、
1,6−HDL:1,6−ヘキサンジオール、
水素ガスのGHSV:室温、常圧換算での値
*:カルボン酸含有混合物中の有効成分を基準にしてのHDL収率
【0034】
【発明の効果】
本発明により、シクロヘキサンを液相酸化して得られた酸化反応液からシクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンを分離し、回収されたカルボン酸含有混合物を原料とするエステル混合物から1,6−ヘキサンジオールを製造するに際して、触媒の分離工程を必要とせず、低水素圧で連続的に、経済上有利に1,6−ヘキサンジオールを製造することが可能となった。

Claims (1)

  1. シクロヘキサンを液相酸化して得られた酸化反応液からシクロヘキサノールおよびシクロヘキサノンを分離し、回収されたオリゴマーを30〜70重量%含有するカルボン酸含有混合物を原料として1,6−ヘキサンジオールを製造するに際して、
    (1)該カルボン酸含有混合物を少なくとも1個の水酸基を有する炭素数1〜6からなる化合物群の少なくとも1アルコール化合物でエステル化して、エステル化合物含有混合物とし、
    (2)銅を含有した固体触媒を固定床触媒とし、
    (3)該エステル化合物含有混合物を、
    (4)該エステル化合物含有混合物に対し、0.1〜10重量部のメタノールと共存させて、
    (5)反応圧1〜10MPa、反応温度190〜250℃のトリクル反応条件下にて、
    水素と接触分解させることを特徴とする1,6−ヘキサンジオールの製造法。
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