JP2002105028A - アリル化合物の製造方法 - Google Patents

アリル化合物の製造方法

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JP2002105028A
JP2002105028A JP2000298704A JP2000298704A JP2002105028A JP 2002105028 A JP2002105028 A JP 2002105028A JP 2000298704 A JP2000298704 A JP 2000298704A JP 2000298704 A JP2000298704 A JP 2000298704A JP 2002105028 A JP2002105028 A JP 2002105028A
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Hironobu Ono
博信 大野
Michael Rettoboru
マイケル レットボル
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 3,4−ジアシルオキシブテン−1又は1,
4−ジアシルオキシブテン−2を工業的に有利に製造す
る方法を提供する。 【解決手段】 3,4−ジアシルオキシ−1−ブテン
(3,4-ジアシルオキシ体)及び3−ブテン−1,2−ジ
オールモノカルボキシレート(3,4-モノアシルオキシ
体)を含むアリル原料化合物を、固体酸触媒の存在下に
予めアシルオキシ化反応させて、アリル原料化合物中に
含まれる該3−ブテン−1,2−ジオールモノカルボキ
シレート(3,4-モノアシルオキシ体)を3,4−ジアシ
ルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ体)に変換
させた後に、得られた混合物の異性化反応を行い、1,
4−ジアシルオキシ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ
体)を含むアリル異性体生成物を得ることを特徴とする
アリル化合物の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、1,4−ジアシル
オキシ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ体)又は3,
4−ジアシルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ
体)等のアリル化合物を製造する方法に関し、詳しく
は、ジアシルオキシ体とモノアシルオキシ体とを含むア
リル原料化合物から、工業的有利に1,4−ジアシルオ
キシ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ体)又は3,4
−ジアシルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ
体)を製造する方法に関する。
【0002】本発明の方法により得られる1,4−ジア
セトキシブテン−2(1,4-ジアセトキシ体)は、1,4
−ブタンジオール又はテトラヒドロフラン等を製造する
ための重要な中間体である。一方、3,4−ジアセトキ
シブテン−1(3,4-ジアセトキシ体)はビタミンAアセ
テート等のテルペンテン化合物をはじめ、医薬、農薬、
各種香料等を製造するための重要な中間体である。
【0003】
【従来の技術】1,4−ジアセトキシブテン−2及び
3,4−ジアセトキシブテン−1は、酢酸溶媒中ブタジ
エンを分子状酸素で酸化することにより得られることは
公知である(例えば特開昭48-72090号公報、特開昭48-9
6513号公報等)。しかしながら、この方法では、1,4
−ジアセトキシブテン−2と3,4−ジアセトキシブテ
ン−1の生成比率は主に触媒の性能に左右されることか
ら、任意の比率で製造することは極めて困難であった。
【0004】また、1,2−エポキシブテン−3をアセ
トキシ化することにより容易に3,4−ジアセトキシブ
テン−1を得ることはできるが、この方法では1,4−
ジアセトキシブテン−2を得るのは極めて困難であっ
た。一方、1,4−ジアセトキシブテン−2のみを選択
的に製造するためには、3,6−ジヒドロ−1,2−ジ
オキシイン等の極めて特殊な原料を必要とすることか
ら、工業的規模での製造は事実上不可能であった。
【0005】そこで、3,4−ジアセトキシブテン−1
及び/又は1,4−ジアセトキシブテン−2を特定の触
媒を用いて異性化して、それぞれ対応する異性体である
1,4−ジアセトキシブテン−2及び/又は3,4−ジ
アセトキシブテン−1を製造する方法については、従来
からいろいろな方法が提案されている。例えば、触媒と
して塩化白金化合物を用いる方法(ドイツ特許第273
6695号明細書、同第2134115号明細書)、パ
ラジウム化合物を塩化水素又は臭化水素の共存下に用い
る方法(特開昭57−140744号公報)、PdCl
2 (PhCN)2 炭素数6〜20の化合物を用いる方法
(米国特許第4,095,030号明細書)等が知られ
ている。しかしながら、これらの方法は、触媒の安定性
に問題があり、このため腐食性の高いハロゲン化合物を
多量に使わざるを得ないという問題点を抱えている。
【0006】一方、ハロゲン化合物を使用しない方法と
して、パラジウム化合物と有機ホスフィンからなる触媒
を用いる方法(特開昭55−11555号公報)やアル
ミナ、ゼオライト等の酸触媒を用いて気相で異性化する
方法(ドイツ特許第3326668号明細書、特開昭5
0−126611号公報)も提案されているが、活性や
触媒寿命の点で満足できるものではない。。また従来よ
り、安価な触媒として硫酸触媒が知られていたが、副反
応により目的生成物の収率が著しく低下する問題があっ
た。この問題を改善する為に特開昭47−30616号
公報においては、ブタジエンのアセトキシ化反応により
得られたジアセトキシ体とモノアセトキシ体を含む混合
物中のモノアセトキシ体を原料として、硫酸触媒を用い
て異性化反応させる場合において、高沸点生成物副生等
の副反応を抑制する為に、予めモノアセトキシ体及び水
を除去した後に、異性化反応させる方法が開示されてい
る。しかし、この方法を用いると反応中の副反応は抑制
されるが、硫酸を分離する蒸留塔の塔底で高温にさらさ
れることにより副反応が起こり、目的生成物の収率が低
下する問題がある。また、硫酸を使用すると反応後の触
媒の処理(リサイクルする場合には精製設備が、またリ
サイクルしない場合には中和処理設備と副生する硫酸塩
の処理)にコストがかかる等の問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述した異性化反応、
例えば3,4−ジアセトキシブテン−1の異性化により
1,4−ジアセトキシブテン−2を得る反応は平衡濃度
に達した時点で反応が終了となる。このことは即ち、
1,4−ジアセトキシブテン−2を原料に用いた場合に
は、同様な平衡反応により3,4−ジアセトキシブテン
−1が製造できることを意味する。
【0008】この異性化反応により、3,4−ジアセト
キシブテン−1または1,4−ジアセトキシブテン−2
のみを優先的に得たい場合には、反応後の混合液から目
的物である異性体生成物を分離し、他方は反応系へリサ
イクルすることにより、その収率は向上する。しかし、
通常ブタジエンのアセトキシ化反応により得られる生成
物中には、水酸基を有するモノアセトキシ体、例えば3-
ブテン-1,2-ジオールモノアセトキシレートと、水酸基
を有さないジアセトキシ体、例えば3,4-ジアセトキシ-1
-ブテンが含まれている。モノアセトキシ体は、副反応
による高沸点生成物等の生成を促進することにより、目
的生成物の収率を低下させる問題がある。また、モノア
セトキシ体はジアセトキシ体に比べ、その異性化反応速
度は一般的に著しく遅く、条件によってはモノアセトキ
シ体が反応系へ溜まり込み、リサイクルプロセスを構築
できない、つまり、高い収率を得ることが困難となる。
このことは、目的物である異性化化合物を工業的に製造
する為には、極めて問題となる。
【0009】従って、工業的には水酸基を有するモノア
セトキシ体を除去してから異性化反応をする必要がある
が、モノアセトキシ体とジアセトキシ体とは沸点が近
く、蒸留分離が困難である。更には、分離によりモノア
セトキシ体を除去した場合には、モノアセトキシ体は異
性化反応系に関与しない為、その分だけ収率が低下して
しまう。
【0010】そこで、反応性の低いモノアセトキシ体を
エステル化(アセトキシ化)により反応性の高いアリル
原料化合物へ変換し、異性化する方法が開発できれば容
易にリサイクルプロセスを構築できる。モノアセトキシ
体をエステル化(アセトキシ化)する手法としては、前
記特開昭47−30616号公報において、無水酢酸等
のカルボン酸無水物を使用する方法が開示されている
が、このカルボン酸無水物は極めて高価であり、経済的
な理由で工業化は困難である。
【0011】従って、本発明の目的は、1,4−ジアシ
ルオキシブテン−2又は3,4−ジアシルオキシブテン
−1を工業的に有利に製造するプロセスを提供すること
にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らが鋭意
検討を重ねた結果、極めて安価で入手が容易である固体
酸触媒、特には陽イオン交換樹脂の存在下で、反応性の
低いモノアセトキシ体をエステル化(ジアセトキシ化)
させ、次いで得られた混合物を異性化することにより、
所望のアリル異性体生成物を高い収率で製造することが
可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち、本発明の第1の要旨は、3,4−ジ
アシルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ体)及
び3−ブテン−1,2−ジオールモノカルボキシレート
(3,4-モノアシルオキシ体)を含むアリル原料化合物
を、固体酸触媒の存在下に予めアシルオキシ化反応させ
て、アリル原料化合物中に含まれる該3−ブテン−1,
2−ジオールモノカルボキシレート(3,4-モノアシルオ
キシ体)を3,4−ジアシルオキシ−1−ブテン(3,4-
ジアシルオキシ体)に変換させた後に、得られた混合物
の異性化反応を行い、1,4−ジアシルオキシ−2−ブ
テン(1,4-ジアシルオキシ体)を含むアリル異性体生成
物を得ることを特徴とするアリル化合物の製造方法、に
存する。
【0014】また、本発明の第2の要旨は、1,4−ジ
アシルオキシ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ体)及
び2−ブテン−1,4−ジオールモノカルボキシレート
(1,4-モノアシルオキシ体)を含むアリル原料化合物
を、固体酸触媒の存在下に予めアシルオキシ化反応させ
て、アリル原料化合物中に含まれる該ア2−ブテン−
1,4−ジオールモノカルボキシレート(1,4-モノアシ
ルオキシ体)を1,4−ジアシルオキシ−2−ブテン
(1,4-ジアシルオキシ体)に変換させた後に、得られた
混合物の異性化反応を行い、3,4−ジアシルオキシ−
1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ体)を含むアリル異性
体生成物を得ることを特徴とするアリル化合物の製造方
法、に存する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、モノアシルオキシ体と
ジアシルオキシ体を含む混合物中の、反応性の低いモノ
アセトキシ体を予めアセトキシ化させてジアセトキシ体
を含む混合物を得た後に、異性化反応することにより、
対応する異性化生成物である1,4−ジアシルオキシ−
2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ体)又は3,4−ジア
シルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ体)を製
造する方法である。
【0016】本発明で使用するアリル原料化合物は、通
常、カルボン酸及び酸素の存在下に、ブタジエンをアシ
ルオキシ化反応させ得られた、3,4−ジアシルオキシ
−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ体)及び3−ブテン
−1,2−ジオールモノアシルオキシレート(3,4-モノ
アシルオキシ体)からなる3,4−二置換ブテン−1、
並びに、1,4−ジアシルオキシ−2−ブテン(1,4-ジ
アシルオキシ体)及び1−アシルオキシ−4−ヒドロキ
シ−2−ブテン(1,4-モノアシルオキシ体)からなる
1,4−ニ置換ブテン−2を含む反応混合物を使用する
ことが可能である。なお、ここで3−ブテン−1,2−
ジオールモノアシルオキシレートとしては、4−アシル
オキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテンと3−アセトキシ
−4−ヒドロキシ−1−ブテンの2種類の化合物が存在
する。
【0017】ここで、カルボン酸とは、炭素数2〜11
の脂肪酸や炭素数7〜16の芳香族カルボン酸が挙げら
れ、中でも酢酸、プロピオン酸、酪酸等の炭素数2〜8
の脂肪酸が好ましい。このカルボン酸をRACOOHで
表した場合、ブタジエンにRAC(O)O−基に相当す
るアシルオキシ基が置換することにより反応が進行す
る。RAとしては、炭素数1〜10のアルキル基又は炭
素数6〜15のアリール基が挙げられ、中でも炭素数1
〜3のアルキル基が好ましく、特にはRAとしてはメチ
ル基が好ましい。
【0018】アシルオキシ化反応工程は、公知の方法、
例えばブタジエンをパラジウム等の触媒の存在下、通常
温度は40〜120℃、好ましくは50〜100℃、圧
力は常圧〜20MPa、好ましくは常圧〜10MPaの
条件下で行う。上述したアシルオキシ化反応工程により
得られた反応混合物は、分離工程に供給し、蒸留分離に
より、3,4−二置換ブテン−1を主成分とする混合物
又は1,4−二置換ブテン−2を主成分とする混合物を
分離する。目的物として1,4−ジアシルオキシ−2−
ブテンを得る場合には、この分離工程において、3,4
−二置換ブテン−1を主成分とする混合物を分離し、こ
れを本発明のアシルオキシ化反応に供給することができ
る。一方、目的物として3,4−ジアシルオキシ−1−
ブテンを得る場合には、この分離工程において、1,4
−二置換ブテン−2を主成分とする混合物を分離し、こ
れを本発明のアシルオキシ化反応に供給することができ
る。
【0019】この蒸留分離工程の蒸留条件としては、一
般的には理論段数が5〜100の蒸留塔を用い、塔底温
度を100〜240℃として蒸留分離する。また、この
蒸留操作は、例えば目的生成物よりも低沸点生成物を蒸
留分離した後に高沸点生成物を蒸留分離するといった、
複数の蒸留塔を組み合わせても良い。更には、分離工程
(2)の前に、未反応のブタジエンを分離する設備を設
けても良い。上記の分離工程により得られた3,4−二
置換ブテン−1を主成分とする混合物又は1,4−二置
換ブテン−2を主成分とする混合物中には、それぞれモ
ノアシルオキシ体とジアシルオキシ体が含まれている。
例えば、3,4−二置換ブテン−1の場合には、3,4
−ジアシルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ
体)及び3−ブテン−1,2−ジオールモノアシルオキ
シレート(3,4-モノアシルオキシ体)が含まれ、また、
1,4−二置換ブテン−2の場合には、1,4−ジアシ
ルオキシ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ体)及び1
−アシルオキシ−4−ヒドロキシ−2−ブテン(1,4-モ
ノアシルオキシ体)が含まれる。
【0020】上述したように、モノアシルオキシ体はジ
アシルオキシ体に比べて異性化反応速度が著しく遅い。
従って、本発明においては、目的物として1,4−ジア
シルオキシ−2−ブテンを得る場合には、上記分離工程
で分離した3,4−二置換ブテン−1を主成分とする混
合物中の3−ブテン−1,2−ジオールモノアシルオキ
シレート(3,4-モノアシルオキシ体)を、固体酸触媒、
特には陽イオン交換樹脂の存在下において予めアシルオ
キシ化して、3,4−ジアシルオキシ−1−ブテン(3,
4-ジアシルオキシ体)を主成分とする混合物を得る。
【0021】また、同様に目的物として目的物として
3,4−ジアシルオキシ−1−ブテンを得る場合には、
1,4−ニ置換ブテン−2を主成分とする混合物中の1
−アシルオキシ−4−ヒドロキシ−2−ブテン(1,4-モ
ノアシルオキシ体)を、陽イオン交換樹脂の存在下にお
いて予めアシルオキシ化して、1,4−ジアシルオキシ
−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ体)を主成分とする
混合物を得る。
【0022】このような本発明のアシルオキシ化反応の
条件は、固体酸触媒、中でも陽イオン交換樹脂を存在さ
せることを特徴とするが、従来使用されていた無水酢酸
は高価であるばかりではなく、モノアセトキシ体と水の
両方に対して量論量で消費されてしまうが、固体酸触
媒、中でも陽イオン交換樹脂は再生により繰り返し再使
用することができるので、工業的な意義は極めて大き
い。
【0023】採用できるイオン交換樹脂の種類として
は、スチレン系、メタクリル酸系、アクリル酸系等の陽
イオン交換樹脂が挙げられ、ゲル型、ポーラス型、ハイ
ポーラス型や、スルホン酸型、アクリル酸型のものも使
用できる。中でもスチレン系陽イオン交換樹脂が好まし
い。イオン交換樹脂の使用量としては、特に制限されな
いが、触媒活性と経済性の観点から、回分法の場合には
アリル原料化合物1kgに対して、好ましくは0.01
〜5kgであり、更に好ましくは0.05〜1kgであ
り、連続法の場合には、空間速度(space vol
ume)は、アリル化合物1リットル、1時間当たり、
好ましくは0.05〜10リットル、更に好ましくは
0.2〜2リットルである。アシルオキシ化反応温度と
しては、通常20〜200℃であり、好ましくは30〜
120℃、更に好ましくは40〜100℃である。アシ
ルオキシ化反応は、回分法で連続法でも実施できる。圧
力は常圧、加圧の何れでも良いが、一般的には常圧〜2
MPa、好ましくは常圧〜0.5MPaの範囲で行われ
る。
【0024】アシルオキシ化反応により得られた混合物
は、次いで異性化反応工程に供され、3,4−ジアシル
オキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ体)は1,4
−ジアシルオキシ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ
体)に異性化され、また、逆に、1,4−ジアシルオキ
シ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ体)は3,4−ジ
アシルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ体)に
異性化される。
【0025】本発明の異性化反応に用いられる異性化触
媒は、特に制限はないが、好ましくは周期表の第8〜1
0族(IUPAC 無機化学命名法改訂版(1989))の金属の
化合物及び有機リン化合物を含むものである。金属化合
物としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウ
ム、ロジウム、白金、イリジウム、オスミウム及びパラ
ジウムの化合物から選ばれる1種以上の化合物が挙げら
れるが、これらの中では、ニッケル、パラジウム、白金
化合物がより好ましく、更にはパラジウム化合物が特に
好ましい。
【0026】前記金属化合物は、例えば、酢酸塩、アセ
チルアセトナート、ハライド、硫酸塩、硝酸塩、有機
塩、無機塩、アルケン化合物、アミン化合物、ピリジン
化合物、ホスフィン配位化合物、ホスファイト配位化合
物等が挙げられる。ルテニウム化合物としては、RuC
3、Ru(OAc)3、Ru(acac) 3、RuCl2
(PPh33等が挙げられ、オスミウム化合物として
は、OsCl 3、Os(OAc)3等が挙げられ、ロジウ
ム化合物としては、RhCl3、Rh(OAc)3、ロジ
ウムジアセテート二量体、Rh(acac)(CO)2、[Rh
(OAc)(COD)]2、[RhCl(COD)]2
Rh(COD)OAcなどが挙げられる。
【0027】また、イリジウム化合物としては、IrC
3、Ir(OAc)3等が挙げられ、ニッケル化合物と
しては、NiCl2、NiBr2、Ni(NO32、Ni
SO 4、Ni(COD)2、NiCl2(PPh32等が
挙げられる。パラジウム化合物としては、例えば、Pd
(0)やPdCl2 、PdBr2 、PdCl2 (CO
D)、PdCl2 (PPh32 、Pd(PPh34
Pd2(dba)3・CHCl3、K2PdCl4、K2Pd
Cl6(potassium hexachloropalladate(IV))、PdC
2(PhCN)2、PdCl2(CH3CN)2、Pd
(dba)2、Pd2(dba)3、Pd(NO3 2
Pd(OAc)2 、Pd(CF3COO)2、PdS
4、Pd(acac)2 、カルボキシレート化合物、
オレフィン含有化合物、Pd(PPh34等の有機ホス
フィン含有化合物、アリルパラジウムクロライド二量体
等を挙げることができ、これらの中、Pd(OAc)
2 、PdCl2 等のパラジウムのカルボキシレート化合
物又はハロゲン化物が好ましい。白金化合物としては、
Pt(acac)2、PtCl2(COD)、PtCl2
(CH3CN)2、PtCl2(PhCN)2、Pt(PP
34、K2PtCl4、Na2PtCl6、H2PtCl6
等が挙げられる。(ここで、COD:シクロペンタジエ
ン、dba:ジベンジリデンアセトン、acac:アセチル
アセトナートを表す。)本発明においては、上述した金
属化合物の形態には特に制限されず、活性な金属錯体種
は単量体、二量体及び/又は多量体であってもかまわな
い。
【0028】これらの金属化合物の使用量については特
に制限はないが、触媒活性と経済性の観点から、反応原
料であるアリル化合物に対して1×10-8(0.01モ
ルppm)〜1モル当量、好ましくは1×10-7(0.
1モルppm)〜0.001モル当量の範囲、特に好ま
しくは10-6〜0.0001モル等量の範囲で使用され
る。
【0029】本発明の異性化反応に用いられる有機リン
化合物については、特に限定はされないが、ホスフィン
類、ホスファイト類、ホスホナイト類、ホスフィナイト
類等が挙げられ、これらは単座でも多座せあってもよい
が、中でもホスファイト類が好ましい。好ましいホスフ
ァイト化合物は、下記一般式(I)、(II)、(III)、
(IV)、(V)及び(VI)で示される化合物の中の少な
くとも一種である。
【0030】
【化1】
【0031】式(I)〜(VI)において、R10〜R
21は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、
シクロアルキル基、アリーロキシ基、アルキルアリーロ
キシ基、アリールアルコキシ基、又はアリール基を表
し、更に置換基を有していてもよい。R10〜R21として
アルキル基を用いる場合、又は、アルキル骨格を有する
置換基(アルキルアリーロキシ基中のアルキル基等)を
用いる場合には、その炭素数は通常1〜20であり、好
ましくは1〜14である。その具体例としては、例えば
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル
基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、
t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等で
ある。また、アルキル基又はアルキル骨格部分は更に置
換基を有していてもよく、置換基としては、炭素数1〜
10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、ア
ミノ基、シアノ基、炭素数2〜10のエステル基、ヒド
ロキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0032】また、R10〜R21としてアリール基を用い
る場合又はアリール骨格を有する置換基を用いる場合に
は、その炭素数は通常6〜20であり、好ましくは6〜
14である。具体例としては、フェニル基、トリル基、
キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ナフチル基、
ジ−t−ブチルナフチル基等が挙げられる。アリール基
又はアリール骨格部分は更に置換基を有していてもよ
く、置換基としては、水素原子、炭素数1〜20のアル
キル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数3〜2
0のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、
炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数6〜20のア
ルキルアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリーロ
キシ基、炭素数6〜20のアリールアルキル基、炭素数
6〜20のアリールアルコキシ基、シアノ基、炭素数2
〜20のエステル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子が
挙げられる。
【0033】R10〜R21の具体例としては、フェニル
基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチ
ルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチル
フェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフ
ェニル基、2-エチルフェニル基、2-イソプロピルフェニ
ル基、2-t-ブチルフェニル基、2,4-ジ-t-ブチルフェニ
ル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-ク
ロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロ
ロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロ
フェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、4-トリフルオロ
メチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシ
フェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフ
ェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基、
トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペン
タフルオロフェニル基、及び下記の(C-1)〜(C-8)が
挙げられる。
【0034】
【化2】
【0035】Z1〜Z4及びA1〜A3は、それぞれ独立し
て、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキ
レン基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリー
レン基、又は−Ar1 −(Q1)n −Ar2−なる真中に
二価の連結基を有してもよいジアリーレン基(但し、A
1 及びAr2 は、それぞれ独立して、置換基を有して
もよい炭素数6〜18のアリーレン基を表す。)を表
す。Tは、炭素原子、アルカンテトライル基、ベンゼン
テトライル基、又はT2-(Q2)n-T2で表される置換
基を有していてもよい四価の基であり、T1及びT2は、
それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルカントリイル
基及び炭素数6〜15のベンゼントリイル基から選ばれ
る置換基を有していてもよい三価の有機基を表す。Q1
及びQ2は、それぞれ独立して、−CR2223−、−O
−、−S−又は−CO−を表し、nは0又は1であり、
22及びR23は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1
〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基で
あり、置換基を有していてもよい。
【0036】また、Z1〜Z4又はA1〜A3がアルキレン
基の場合、その具体例としては、例えばテトラメチルエ
チレン基、ジメチルプロピレン基等が挙げられ、Zが置
換基を有してもよいアルキレン基の場合には、置換基と
しては炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10
のアリール基、アミノ基、シアノ基、アミド基、ニトロ
基、トリフルオロメチル基、トリメチルシリル基、炭素
数3〜10のエステル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原
子が挙げられる。
【0037】また、Z1〜Z4又はA1〜A3が置換基を有
していてもよいアリーレン基の場合には、その具体例と
しては、例えばフェニレン基やナフチレン基等が挙げら
れ、置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素
数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール
基、アミノ基、シアノ基、炭素数2〜10のエステル
基、アミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、トリ
メチルシリル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子等が挙
げられる。
【0038】更に、Z1〜Z4又はA1〜A3が−Ar1
(Q)n −Ar2 −なる真中に二価の連結基を有しても
よいジアリーレン基の場合、Ar1 及びAr2 は置換基
を有してもよいアリーレン基であり、その炭素数は6〜
24、更には6〜16が好ましく、置換基の好ましい具
体例としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜
10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、ア
ミノ基、シアノ基、炭素数2〜10のエステル基、ヒド
ロキシ基及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0039】また、A1〜A3及びZ1〜Z4の具体例とし
ては、−(CH22 −、−(CH 2 3 −、−(CH
24 −、−(CH25 −、−(CH26 −、−C
H(CH3 )−CH(CH3 )−、−CH(CH3 )C
2 CH(CH3 )−、−C(CH32 −C(CH
32 −、−C(CH3 2 −CH2−C(CH3
2−、及び下記の(A−1)〜(A−46)が挙げられ
る。また、A1〜A3の具体例としては(A−47)も挙
げられる。
【0040】
【化3】
【0041】
【化4】
【0042】
【化5】
【0043】
【化6】
【0044】
【化7】
【0045】
【化8】
【0046】そして、式(I)〜(VI)の化合物の好ま
しい具体例として、下記の(1)〜(11)及び(P
1)〜(P21)を例示することができる。
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】また、下記の様な化合物(12)を使用す
ることもできる。
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
【化14】 ホスフィン類の具体例としては、トリフェニルホスフィ
ン、トリ(ノルマルブチル)ホスフィン、トリ(t−ブ
チル)ホスフィン、ジフェニルホスフィノエタン、ジフ
ェニルホスフィノメタン、ジフェニルホスフィノプロパ
ン、ジフェニルホスフィノブタンや、下記の(13)〜
(20)を例示することができる。
【0053】
【化15】
【0054】また、ホスホナイト類、ホスフィナイト類
としては、下記の(21)〜(35)を例示することが
できる。
【0055】
【化16】
【0056】
【化17】
【0057】
【化18】 異性化反応系内における、これらの有機リン化合物の上
記金属化合物に対する比率(モル比)は、通常0.1〜
10000であり、好ましくは0.5〜500、特に好
ましくは1.0〜100の範囲で使用される。上記金属
化合物と有機リン化合物はそれぞれ単独に反応系に添加
してもよいし、或いは予め錯化した状態で使用しても良
い。
【0058】本発明においては、特定の金属化合物と有
機リンを含む触媒を用いる異性化反応系中に、脂肪酸や
芳香族カルボン酸等の炭素数2〜8のカルボン酸を存在
させることにより、異性化反応を促進するという利点を
有する。中でも、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の脂肪酸
が好ましく、酢酸が最も好ましい。酢酸の存在量は、触
媒活性、触媒の安定性及び経済性の観点から、酢酸:原
料であるアリル原料化合物の合計量(重量比)で、通常
5:1〜1:1000であり、好ましくは、4:1〜
1:100、更に好ましくは2:1〜1:10の範囲内
である。
【0059】異性化反応は、通常は液相で行い、溶媒の
存在下或いは非存在下の何れでも実施しうるが、通常は
異性化反応に溶媒を使用して均一系で実施するのが好ま
しい。溶媒としては、触媒及び原料化合物を溶解するも
のであれば使用可能であり特に限定はない。溶媒の具体
例としては、例えば、酢酸等のカルボン酸類、メタノー
ル等のアルコール類、ジグライム、ジフェニルエーテ
ル、ジベンジルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、
ジオキサン等のエーテル類、N−メチルピロリドン(NM
P)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミ
ド等のアミド類、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸
ブチル、γ−ブチロラクトン、ジ(n-オクチル)フタレ
ート等のエステル類、トルエン、キシレン、ドデシルベ
ンゼン等の芳香族炭化水素類、異性化反応系内で副生物
として生成する高沸物、原料であるアリル化合物自体等
が挙げられる。これらの中でも、酢酸が異性化反応を促
進するという点で好ましい。
【0060】これらの溶媒の使用量は特に限定されるも
のではないが、通常、原料であるアリル化合物の合計量
に対して0.1〜20重量倍、好ましくは0.5〜10
重量倍である。本発明においては、3,4−ジアセトキ
シブテン−1の異性化により1,4−ジアセトキシブテ
ン−2を得る反応は平衡反応であり、120℃での平衡
混合物は、約60〜65モル%の1,4−ジアセトキシ
ブテン−2と35〜40モル%の3,4−ジアセトキシ
ブテン−1を含有する。このことは、即ち、1,4−ジ
アセトキシブテン−2を主成分として含む反応混合物
は、異性化反応させることにより、3,4−ジアセトキ
シブテン−1を主成分として含む生成物が得られること
を意味している。
【0061】異性化反応により得られる生成物中の1,
4−ジアセトキシブテン−2と3,4−ジアセトキシブ
テン−1のモル比の範囲は通常、90:10〜10:9
0であるが、その範囲内では80:20、70:30、
60:40、50:50、40:60、30:70、2
0:80等のいずれの比率の生成物でも製造することが
できる。この比率は、特に限定されないが、反応条件や
プロセスの経済性により調節することが可能となる。
【0062】本発明の異性化反応系中には、原料や基質
以外の反応副生物や触媒の分解物等を含んでいてもよ
い。具体的には、異性化反応系中に、ブタンジオールモ
ノアセトキシレート、1-アセトキシブタン-2-オン、4-
アセトキシブタナール、4-アセトキシクロトンアルデヒ
ド、ジアセトキシブタン、アセトキシヒドロキシブタ
ン、ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、1,2
−ブテンジオール、1-アセトキシ-1,3-ブタジエン、ジ
アセトキシオクタジエンから選ばれる1種以上の化合物
(C)が存在していてもよい。
【0063】これらの化合物(C)は、異性化反応系内
において、原料であるアリル化合物の合計量に対して
(化合物(C):アリル化合物)、重量比で、通常1:
1〜1:10000、好ましくは5:1〜1:100
0、更に好ましくは2:1〜1:500、特に好ましく
は0.1:1〜1:100の範囲存在していてもよい。
本発明においては、異性化反応系中に水が多量に存在す
ると、異性化反応が著しく阻害されるため水の存在量は
少ない方が転化率が高くなるという点で好ましいが、溶
媒又は反応原料から完全に水を除外するためには、極め
て大きなエネルギーを必要とする。従って、工業的に
は、異性化反応混合液中の水の存在量は、好ましくは
0.1〜5wt%であり、更に好ましくは0.5〜2wt%
である。水は反応系に様々なルートから混入しうるが、
中でも溶媒又は異性化反応の促進剤として用いられるカ
ルボン酸は、しばしば水を同伴する。このような場合、
カルボン酸に対する水の重量比は、好ましくは1以下で
ある。
【0064】本発明の異性化方法は、回分式、連続式の
何れでも実施できる。回分式で異性化反応を行う場合を
より具体的に説明すると、触媒構成成分を溶媒に溶解
し、この中に例えば3,4−ジアセトキシブテン−1を
主体とする原料を導入し、攪拌下十分転化する時間触媒
と接触させる。連続式で行う場合には、例えば3,4−
ジアセトキシブテン−1を主体とする原料と触媒成分を
連続的に反応槽に供給し、目的生成物である異性化物を
含む反応液を連続的に抜き出した後蒸留し、触媒成分を
含む残留液を連続的に反応系に循環して再利用する方式
が考えられる。
【0065】異性化の反応温度は、通常50〜200
℃、好ましくは80〜160℃である。反応温度が低す
ぎると活性が低く、また、高すぎると触媒の安定性が低
下し好ましくない副反応が起こる。反応圧力について
は、特に制限はなく、常圧〜3MPaの範囲、好ましく
は常圧〜2MPaの範囲から適宜選択される。また、反
応時間も特に制限がなく触媒の量、反応温度等の因子か
ら反応速度を考慮して適宜選択する。
【0066】本発明においては、上述した陽イオン交換
樹脂を用いたアシルオキシ化反応と異性化反応とを同一
の反応器内で行うことも可能であり、その場合、反応器
の建設費が低減できるというメリットがある。このよう
に同一の反応器内で行う場合には、異性化反応とジアセ
トキシ化反応を同一の反応条件、即ち上述した異性化反
応条件下で実施することが可能である。
【0067】上述した異性化反応において得られた反応
生成物は、必要に応じて酢酸又は酢酸と水を蒸留分離し
た後、目的物である1,4−ジアシルオキシブテン−2
又は3,4−ジアシルオキシブテン−1を主体とする成
分を蒸留や抽出等の方法により分離、回収することがで
きる。また、異性化反応により得られた反応生成物は、
必要に応じて酢酸又は酢酸と水を蒸留分離した後、上述
した分離工程、モノアシルオキシ体のアシルオキシ化反
応工程又は異性化反応工程にリサイクルすることにより
目的物の収率を向上させることができる。中でも、異性
化反応生成物を、分離工程(工程(2))にリサイクル
する方法を採用するのが、蒸留塔の数を少なく出来、か
つ異性化反応器内での異性体存在比率を有利に出来ると
いう点で好ましい。
【0068】図1は、ブタジエンのアセトキシ化反応に
続く、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン及び1−ブテ
ン−3,4−ジオールモノアセテートを異性化するプロ
セスにおいて、モノアセトキシ体を陽イオン交換樹脂を
用いてジアセトキシ体へ変換する場合を例にとり、本発
明の一連のプロセスを示す図である。尚、各フローに記
載されている物質は主成分を表し、その他の物質が混在
していても良い。
【0069】尚、図1は代表例であって、以下に記載の
プロセスでも良い。 1)D1及びD2は一つの蒸留塔であっても良く、複数
の分離塔の組み合わせでも良い。 2)R2及びR3は一つの反応器であっても良い。 3)D2において、(7)と(8)は同一フローとして抜き出
し、1,4−二置換−2−ブテンと高沸点成分を別途分
離しても良い。 4)D3において、反応液を(15)に続く(17)から抜き出
した後に二置換ブテン類と高沸点成分及び触媒を別途分
離しても良く、D3で分離して二置換ブテン類を(16)か
ら、高沸点成分及び触媒を(15)以降のフローへ流しても
良い。この場合、(16)を後段のプロセスへ流しても良
く、全量または任意の量を(18)〜(20)の任意のフローへ
流しても良い。 5)フロー(15)の全量又は任意の量を(17)〜(20)の任意
のフローへ流しても良い。
【0070】
【実施例】以下に本発明をより更に具体的に説明する
が、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に
制約されるものではない。尚、以下の例における反応結
果はガスクロマトグラフィーにより反応液組成を分析し
た結果より算出した。また、以下の実施例において使用
した略記を下記に示す。 3,4−DABE:3,4−ジアセトキシブテン−1 3,4−HABE:3−ブテン−1,2−ジオールモノ
アセトキシレート 1,4−DABE:1,4−ジアセトキシブテン−2 1,4−HABE:1−アシルオキシ−4−ヒドロキシ
−2−ブテン
【0071】実施例 (ブタジエンのアセトキシ化反応工程及び分離工程)P
d−Te触媒の存在下に、ブタジエン、酢酸、6%酸素
/94%窒素混合ガスを流通させ、80℃、6MPaの
条件でアセトキシ化反応させて、1,4-DABE 80mol%、3,4
-DABE 9mol%、3,4-HABE 3mol%及び酢酸 7mol%を含む混
合物を得、この混合物5.0kgを30段の蒸留カラムを用
いて蒸留した。圧力を80mmHgに維持し、塔底の最高温度
は170℃であった。還流比を15とし、塔頂温度が130〜14
0℃℃の温度範囲において450〜500gの留出物が得られ
た。この留出物中には3,4-DABE73mol%、3,4-HABE 22mol
%、その他の成分5mol%が含まれていた。 (モノアセトキシ体(HABE)のアセトキシ化反応工程)
反応器内に、 と、酢酸 10ml(73mmol)、及び4-アセトキシ-
3-ヒト゛ロキシ-1-フ゛テン(3,4-HABE) 44mol%,3-アセトキシ-4-ヒト゛ロキシ-
1-フ゛テン(3,4-HABE) 40mol%、3,4-DABE 16mol%、1,4-DABE
1mol%を含む混合溶液 10ml と酢酸 10ml(73mmol)及
び、酢酸で洗浄したスルホン酸型強酸性陽イオン交換樹
脂(三菱化学(株 商品名:タ゛イヤオンSK1BH)7.9gを入
れ、65℃で9時間反応を行った。その結果、反応生成液
中には、4-アセトキシ-3-ヒト゛ロキシ-1-フ゛テン(3,4-HABE) 26mol%,3
-アセトキシ-4-ヒト゛ロキシ-1-フ゛テン(3,4-HABE) 14mol%、3,4-DABE
52mol%、1,4-DABE 8mol%が含まれていた。反応時間によ
るシ゛アセトキシフ゛テン類の生成量(3,4-DABE及び1,4-DABEの合
計量)を下記表に示した。
【0072】
【表1】
【0073】(異性化反応工程) [反応例1](3,4-DABE 100mol%の異性化反応) 3,4-DABE1ml(6.3mmol)中にPd(dba)2 3.7mg
(6.4μmol)及びホスファイト化合物P9 28mg(26.1
μmol)を120℃で溶解させた。次いでこの溶液5μl
を、酢酸(1ml)と3,4-DABE1ml(6.3mmol)を含む
別のフラスコに加えて120℃で1時間反応させた。反応
生成液中には1,4-DABE 41mol%と未反応の3,4-DABE 59mo
l%が存在した。尚、反応系中においてPd金属の析出は
認めらなかった。
【0074】[反応例2](3,4-DABE 89mol%及び3,4-H
ABE 11mol%の異性化反応) 3,4-DABE1ml(6.3mmol)中にPd(dba)2 3.7mg(6.
4μmol)及びホスファイト化合物(P9) 28mg(26.1
μmol)を120℃で溶解させた。次いでこの溶液5μl
を、3,4-DABE 89mol% と3,4-HABE 11mol%からなる溶液
1ml(6.3mmol)と酢酸(1ml)を含む別のフラスコ
に加えて120℃で1時間反応させた。反応生成液中には
1,4-異性体 28mol%(1,4-DABE及び1,4-HABE)と3,4-異
性体 72mol%(3,4-DABE及び3,4-HABE)が存在した。
尚、反応系中においてPd金属の析出は認めらなかっ
た。
【0075】[反応例3](3,4-DABE 78mol%及び3,4-H
ABE 22mol%の異性化反応) 3,4-DABE1ml(6.3mmol)中にPd(dba)2 3.7mg(6.
4μmol)及びホスファイト化合物(P9) 28mg(26.1
μmol)を120℃で溶解させた。次いでこの溶液5μl
を、3,4-DABE 78mol% と3,4-HABE 22mol%からなる溶液
1ml(6.5mmol)と酢酸(1ml)を含む別のフラスコ
に加えて120℃で1時間反応させた。反応生成液中には
1,4-異性体 21mol%(1,4-DABE及び1,4-HABE)と3,4-異
性体 79mol%(3,4-DABE及び3,4-HABE)が存在した。
尚、反応系中においてPd金属の析出は認めらなかっ
た。 (リサイクル工程)異性化反応工程により得られた反応
生成物から、理論段数5段、還流比2、塔頂圧力100
mmHg、塔底温度150〜160℃の条件で水及び酢
酸を蒸留により塔頂から留去した後(ここで蒸留条件の
記載要)、3,4-DABE及び1,4-DABEを含む缶出液を、上述
したブタジエンのアセトキシ化反応の生成液の一部に添
加し、得られた混合液を上述した分離工程と同様の条件
により蒸留分離を行った。その結果、上記分離工程と同
様に3,4-異性体を主成分とする留出物を得ることができ
た。
【0076】
【発明の効果】本発明の方法を採用することにより、ブ
タジエンのアシルオキシ化反応により得られた生成液中
のモノアシルオキシ体を有効に利用して、3,4−ジア
シルオキシブテン−1又は1,4−ジアシルオキシブテ
ン−2を高転化率、高選択率で、且つ、金属の析出を抑
制しつつ、工業的に有利に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一連のプロセスの1例を示す図であ
る。
【符号の説明】
3,4−DABE 3,4−ジアセトキシ−1−ブテ
ン 3,4−HABE 1−ブテン−3,4−ジオールモ
ノアセテート 1,4−DABE 1,4−ジアセトキシ−2−ブテ
ン 1,4−HABE 1−アセトキシ−4−ヒドロキシ
−2−ブテン BD 1,3−ブタジエン O2 酸素 AcOH 酢酸 Cat 触媒 L.B. 低沸点成分混合物 H.B. 高沸点成分混合物 (1)〜(20) 各フローの番号 R1 ブタジエンのアセトキシ化反応器
(アシルオキシ化反応工程(1)) R2 モノアセトキシ体をジアセトキシ
体へエステル化する反応器(ジアシルオキシ化反応工程
(3)) R3 異性化反応器(異性化反応工程
(4)) D1 アセトキシ化反応液から低沸及び
高沸成分を分離する蒸留塔 D2 3,4−二置換−1−ブテンと
1,4−二置換−2−ブテンを分離する蒸留塔(分離工
程(2)) D3 異性化反応液から酢酸及び水を分
離する蒸留塔
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 Fターム(参考) 4C037 BA03 4H006 AA02 AC11 AC14 AC41 AC48 BA72 BE20 4H039 CA29 CA66 CJ10 CJ90

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 3,4−ジアシルオキシ−1−ブテン
    (3,4-ジアシルオキシ体)及び3−ブテン−1,2−ジ
    オールモノカルボキシレート(3,4-モノアシルオキシ
    体)を含むアリル原料化合物を、固体酸触媒の存在下に
    予めアシルオキシ化反応させて、アリル原料化合物中に
    含まれる該3−ブテン−1,2−ジオールモノカルボキ
    シレート(3,4-モノアシルオキシ体)を3,4−ジアシ
    ルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオキシ体)に変換
    させた後に、得られた混合物の異性化反応を行い、1,
    4−ジアシルオキシ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ
    体)を含むアリル異性体生成物を得ることを特徴とする
    アリル化合物の製造方法。
  2. 【請求項2】 1,4−ジアシルオキシ−2−ブテン
    (1,4-ジアシルオキシ体)及び2−ブテン−1,4−ジ
    オールモノカルボキシレート(1,4-モノアシルオキシ
    体)を含むアリル原料化合物を、固体酸触媒の存在下に
    予めアシルオキシ化反応させて、アリル原料化合物中に
    含まれる該ア2−ブテン−1,4−ジオールモノカルボ
    キシレート(1,4-モノアシルオキシ体)を1,4−ジア
    シルオキシ−2−ブテン(1,4-ジアシルオキシ体)に変
    換させた後に、得られた混合物の異性化反応を行い、
    3,4−ジアシルオキシ−1−ブテン(3,4-ジアシルオ
    キシ体)を含むアリル異性体生成物を得ることを特徴と
    するアリル化合物の製造方法。
  3. 【請求項3】 固体酸触媒が陽イオン交換樹脂である請
    求項1又は2に記載のアリル化合物の製造方法。
  4. 【請求項4】 異性化反応系内に陽イオン交換樹脂を存
    在させることにより、アリル原料化合物中の3−ブテン
    −1,2−ジオールモノカルボキシレート(3,4-モノア
    シルオキシ体)又は2−ブテン−1,4−ジオールモノ
    カルボキシレート(1,4-モノアシルオキシ体)をアシル
    オキシ化反応させて対応するアシルオキシ化合物に変換
    させる反応と、アリル原料化合物の異性化反応とを、異
    性化反応系内において行う請求項3に記載のアリル化合
    物の製造方法。
  5. 【請求項5】 カルボン酸及び酸素の存在下に、ブタジ
    エンをアシルオキシ化反応させて得られた反応生成物を
    アリル原料化合物とする請求項1〜4のいずれかに記載
    のアリル化合物の製造方法。
  6. 【請求項6】 ブタジエンをジアセトキシ化反応させて
    得られた反応生成物から、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン
    (3,4-ジアセトキシ体)を50〜99mol%、3-ブテ
    ン-1,2-ジオールモノアセトキシレート(3,4-モノアセ
    トキシ体)を0.1〜50mol%含有する混合物を分
    離し、次いで分離した混合物中の3-ブテン-1,2-ジオー
    ルモノアセトキシレート(3,4-モノアセトキシ体)をア
    セトキシ化反応させた後、異性化反応を行う請求項5に
    記載のアリル化合物の製造方法。
  7. 【請求項7】 ブタジエンをジアセトキシ化反応させて
    得られた反応生成物から、1,4-ジアセトキシ-2-ブテン
    (1,4-ジアセトキシ体)を50〜99mol%、1-アセ
    トキシ-4-ヒドロキシ-2-ブテン(1,4-モノアセトキシ
    体)を0.1〜50mol%含有する混合物を分離し、
    次いで分離した混合物中の1-アセトキシ-4-ヒドロキシ-
    2-ブテン(1,4-モノアセトキシ体)をアセトキシ化反応
    させた後、異性化反応を行う請求項6に記載のアリル化
    合物の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7の方法により得られたアリ
    ル異性体生成物が1,4−ジアセトキシブテン−2(1,
    4-ジアセトキシ体)であって、この1,4−ジアセトキ
    シブテン−2を更に水素化及び加水分解させて1,4-ブタ
    ンジオール及び/又はテトラヒドロフランを製造する方
    法。
  9. 【請求項9】 請求項8の方法により得られた1,4-ブタ
    ンジオールを原料として製造されたポリエステル及び/
    又はポリウレタン。
  10. 【請求項10】 請求項8の方法により得られたテトラ
    ヒドロフランを原料として製造されたポリアルキレンエ
    ーテルグリコール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005200323A (ja) * 2004-01-14 2005-07-28 Mitsubishi Chemicals Corp 3,4−ジアセトキシ−1−ブテン及びそれを用いた誘導体の製造方法
JP2006282564A (ja) * 2005-03-31 2006-10-19 Mitsubishi Chemicals Corp ジアセトキシアリル化合物の異性化方法
JP2007326852A (ja) * 2006-05-10 2007-12-20 Mitsubishi Chemicals Corp ジアセトキシアリル化合物の異性化方法
JP2009019009A (ja) * 2007-07-12 2009-01-29 Mitsubishi Chemicals Corp アリル化合物誘導体の製造方法

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