JP3756537B2 - ジメチルデカンジアールおよびその製造方法 - Google Patents
ジメチルデカンジアールおよびその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、一般式(I)
【化6】
(式中、AおよびBはどちらか一方がメチル基を、他方が水素原子を表す。)
で示される新規なジメチルデカンジアールおよびその製造方法、ならびにそれを酸化する一般式(III )
【化7】
(式中、AおよびBは上記定義のとおりである。)
で示されるジメチルデカン二酸の製造方法に関する。本発明により提供される一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールは、一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸の製造原料として有用である。一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を成分とするポリエステルジオールは優れた耐加水分解性を示し、高性能ポリウレタンの成分としてポリウレタン樹脂、繊維、塗料、フィルムなどに用いられる。
【0002】
【従来の技術】
一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールは文献に記載のない新規化合物である。
一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸の合成法として下記の方法が知られている。
(1)一般式(III )においてA=H、B=Meである3,8−ジメチルデカン二酸を、2,7−オクタンジオンを出発原料として、ブロモ酢酸エチルのリフォルマトスキー(Reformatsky )反応、水酸基の臭素化反応、脱臭化水素反応、二重結合の水素化反応、エステルの加水分解反応の5段階で合成する方法(ジュスティヒ リービッヒ アンナーレン デア ヘミー(Ann.)、580巻、125〜31ページ(1953年)参照)。
(2)一般式(III )においてA=H、B=Meである3,8−ジメチルデカン二酸を、メチルマロン酸ジエチルと1,4−ジブロモブタンからマロン酸縮合、加水分解、脱炭酸で得られる2,7−ジメチルオクタン二酸を中間体とし、これを酸塩化物に変換した後、ジアゾケトンを経て合計7段階で合成する方法(ジュスティヒ リービッヒ アンナーレン デア ヘミー(Ann.)、598巻、1〜24ページ(1956年)参照)。
(3)一般式(III )においてA=Me、B=Hである3,7−ジメチルデカン二酸を、Geranium macrorhizumの精油から分離されるゲルマクロン(germacrone)を水素化、オゾン分解、過塩素酸分解することにより得る方法(ケム リスティ(Chem.listy)、52巻 1174〜1179ページ(1958年)参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1)および(2)の3,8−ジメチルデカン二酸を合成する方法はいずれも多くの反応工程を要し、しかも高価なまたは取り扱い時に危険性の高い原料や反応剤を用いる点で工業的製法とは言えない。一方、上記(3)の3,7−ジメチルデカン二酸を合成する方法は天然精油を原料とし、オゾンや過塩素酸という爆発性のある反応剤を用いる点で工業的製法とは言えない。したがって、安価な原料および安価な反応剤を用いて短工程で一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を経済的に製造する方法の開発が強く望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、一般式(I)で示される3,8−ジメチルデカンジアールおよび3,7−ジメチルデカンジアールが、それぞれ一般式(III )で示される3,8−ジメチルデカン二酸および3,7−ジメチルデカン二酸の経済的製法の中間体となることを見いだし、その製法を確立することにより上記の目的を達成した。
【0005】
一般式(I)においてA=H、B=Meで示される3,8−ジメチルデカンジアールは、例えば、一般式(II)においてA=H、B=Meで示される2,7−ジメチル−1,7−オクタジエンを、また一般式(I)においてA=Me、B=Hで示される3,7−ジメチルデカンジアールは、例えば、一般式(II)においてA=Me、B=Hで示される2,6−ジメチル−1,7−オクタジエンを,それぞれ触媒の存在下に一酸化炭素および水素の混合ガスを用いてヒドロホルミル化することにより製造できる。なお、2,7−ジメチル−1,7−オクタジエンおよび2,6−ジメチル−1,7−オクタジエンはそれぞれイソプレンとギ酸塩および水からパラジウム触媒の作用により合成できる(それぞれ特公昭62−41576号公報および特開昭55−157521号公報参照)。
【0006】
本発明の一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールを製造する反応の触媒としては、オレフィンと一酸化炭素および水素との反応、すなわちオレフィンのヒドロホルミル化反応の触媒作用を有するものであれば使用可能であるが、元素周期表における第8族元素を成分とする化合物、またはこれらとリン化合物もしくは窒素化合物との組み合わせが適しているが、特にロジウム化合物とリン化合物からなる触媒が好適である。
【0007】
上記のロジウム化合物としては、ヒドロホルミル化反応の触媒能を有するか、またはヒドロホルミル化の反応系内で活性化処理を行うことにより触媒能を獲得する化合物であれば使用可能であり、例えば、酸化ロジウム、塩化ロジウム、臭化ロジウムなどの無機塩;酢酸ロジウム、プロピオン酸ロジウムなどのカルボン酸塩;ロジウムアセチルアセトナートなどのキレート化合物、Rh4 (CO)12、[Rh(CO)2 Cl]2 、Rh(CO)2 (CH3 COCHCOCH3 )などのカルボニル化合物;Rh/C、Rh/シリカ、Rh/アルミナ、Rhブラックなどの金属を挙げることができる。これらのロジウム化合物の使用量は併用するリン化合物の種類および量、あるいは反応条件によっても異なるが、反応混合液中でのロジウム原子濃度として、0.005〜5ミリグラム原子/l、好ましくは0.01〜0.5ミリグラム原子/lである。
【0008】
上記ロジウム化合物と共に用いるリン化合物としては、上記ロジウム化合物を単独で用いた場合に比べて触媒活性を増大するおよび/または触媒寿命を改善する作用を持つものであれば使用可能であるが、例えば、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、m−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノブタンなどのホスフィン類;トリエチルホスファイト、トリメチロールプロパンホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリ(o−トリル)ホスファイト、トリ(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのホスファイト類を挙げることができる。これらの有機リン化合物の使用量はロジウム1グラム原子当たり1〜1000モル、好ましくは10〜500モル、特に好ましくは50〜300モルである。
【0009】
本発明の一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールを製造する反応は、60〜150℃、特に90〜130℃の温度範囲で実施することが好ましい。反応温度が60℃未満の場合には反応速度が遅くなり、150℃を越える場合には触媒の安定性を維持しにくい傾向にある。
【0010】
反応圧力は、反応温度にもよるが、10〜150気圧、特に60〜120気圧の範囲が好ましい。反応圧力が10気圧未満の場合は反応速度および選択率が低下する。また、反応圧力に関して特に上限はないが、反応装置および操作性の点から150気圧以下で実施することが工業的に好ましい。
【0011】
本反応で用いる一酸化炭素および水素の比率は、反応器への入りガスのモル比として一酸化炭素/水素=1/3〜3/1の範囲で実施することが好ましい。なお、ヒドロホルミル化反応に対して不活性なガスが共存しても差し支えない。
【0012】
本反応においては溶媒は使用しなくてもかまわないが、ヒドロホルミル化反応に対して不活性な溶媒であれば、これを用いることもできる。使用可能な溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物を挙げることができる。溶媒の使用量は任意であるが、容積効率の点から原料となる一般式(II)で示されるジオレフィンに対して50重量倍以下の量が適当である。
【0013】
本反応はバッチ式、連続式のいずれの方法でも行うことができる。バッチ式で実施する場合には、触媒成分、一般式(II)で示されるジオレフィン、必要に応じて溶媒を反応器に仕込み、一酸化炭素と水素の混合ガスで加圧後、所定の温度で反応させる方法、あるいは触媒成分と溶媒を仕込んだ反応器を一酸化炭素と水素の混合ガスで加圧、昇温後にこれに一般式(II)で示されるジオレフィンと必要に応じて溶媒との混合物をフィードする方法を採用することができる。
【0014】
本反応においては、転化率が100%になるまで反応させることもできるが、100%未満の転化率で実施することも可能である。
【0015】
反応終了後は、一酸化炭素および水素をパージし、必要に応じて溶媒を蒸留回収した後、蒸留、薄膜蒸発、水蒸気蒸留あるいは抽出などの精製手段により一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールを得ることができる。精製過程で分離された触媒成分を再使用することも可能である。
【0016】
このようにして得られた一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールから酸化反応により一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を製造することができる。これは、アルデヒドをカルボン酸に変換する方法として通常知られている方法で実施可能であり、例えば、金属塩を触媒とする酸素酸化法を挙げることができる。なお、一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールは上記の手段により精製したものを本酸化反応に用いることもできるが、精製することなく本反応に使用することも可能である。
【0017】
本発明の一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールから一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を製造する反応の触媒としては、銅、コバルト、マンガン、鉄などの遷移金属、またはこれらの塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物;酢酸塩、プロピオン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩などのカルボン酸塩;アセチルアセトナートのようなジケトン錯体が使用可能である。これらの金属あるいは金属塩は単独または2種以上を混合して用いることができ、また金属塩は無水物であっても含水物であってもよい。これらの触媒の使用量はその種類および反応条件によって異なるが、反応混合液中での金属原子換算濃度として0.1〜1000ppm、好ましくは1〜100ppmである。
【0018】
本反応においては溶媒は使用しなくてもかまわないが、酸化反応に対して不活性な溶媒であれば、これを用いることもできる。使用可能な溶媒として、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類;水を挙げることができる。これらは単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。溶媒の使用量は任意であるが、容積効率の点から原料となる一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールに対して50重量倍以下の量が適当である。
【0019】
一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールを酸化する反応は、反応混合液の融点にもよるが、10〜100℃、特に30〜80℃の温度範囲で実施することが好ましい。反応温度が30℃未満の場合には反応速度が遅くなり、80℃を越える場合には反応の制御が困難となる傾向にある。
【0020】
本酸化反応は酸素または空気のような酸素と不活性気体との混合物中で行うことができる。工業的には空気を用いることが有利であり、反応圧力に関して特に上限はないが、反応装置および安全性の点から50気圧以下、特に10気圧以下で実施することが好ましい。
【0021】
本反応はバッチ式、連続式のいずれの方法でも行うことができる。バッチ式で実施する場合には、触媒、一般式(I)で示されるジメチルデカンジアール、必要に応じて溶媒を反応器に仕込み、酸素または空気のような酸素と不活性気体との混合物の存在下に所定の圧力および温度で反応させる方法、あるいは触媒と溶媒を仕込んだ反応器を酸素または空気のような酸素と不活性気体との混合物の存在下に所定の圧力および温度に保ちながらこれに一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールと必要に応じて溶媒との混合物をフィードする方法を採用することができる。いずれの反応方式においても、酸素または空気のような酸素と不活性気体との混合物を張り込んで用いてもよく、流通させて用いてもよい。
【0022】
本反応においては、転化率が100%になるまで反応させることもできるが、100%未満の転化率で実施することも可能である。
【0023】
反応終了後は、反応系内のガスをパージし、必要に応じて溶媒を蒸留回収した後、晶析、蒸留、薄膜蒸発、水蒸気蒸留あるいは抽出などの精製手段により一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1 3,8−ジメチルデカンジアールの合成
5lの加圧反応器にRh(CO)2(CH3COCHCOCH3)83.3mgとトリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト20.87gのベンゼン500ml溶液を入れ、一酸化炭素/水素(1/1)混合ガスで80気圧に加圧した。100℃まで昇温した後、これに2,7−ジメチル−1,7−オクタジエン2.05kgを5時間かけてフィードした。この間、圧力は80気圧に保った。フィード終了後、さらに同温度および圧力で5時間反応を続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージした。反応液を取り出し、ベンゼンを減圧下で留去した後、蒸留精製により3,8−ジメチルデカンジアールを無色透明の液体として得た。沸点77〜78℃/0.2mmHg。収量は1.64kg、収率は56%であった。構造決定に用いた機器分析データを以下に示す。
1 H−NMR分析(CDCl3溶媒)δ 0.96(d,6H);1.29(brs,8H);2.05(m,2H);2.18〜2.45(m,4H);9.85(t,2H)
IR分析 ν 2,970〜2,850;2,730;1,725;1,460;1,380;1,015 cm −1
GC−質量分析 m/z(相対強度) 71(100),41(74),55(74),81(62),69(60),43(40),95(37)
【0026】
実施例2 3,8−ジメチルデカン二酸の合成
5lの加圧反応器にCu(OCOCH3)2(H2O)0.19gおよび酢酸1.5lを入れ、空気で7気圧に加圧した後、50℃に昇温した。空気を240l/hrの速度で流通しながら、これに3,8−ジメチルデカンジアール750gと酢酸750mlとの混合物を3時間かけてフィードした。フィード終了後、同じ温度および圧力で反応を4時間続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージして反応液を取り出した。これを窒素雰囲気下で110℃にて1時間加熱した。酢酸を減圧下で留去した後、酢酸/水(1/1)の混合溶媒から再結晶を2回繰り返すことにより、3,8−ジメチルデカン二酸を融点76.5〜77.5℃の白色の固体として得た。収量は449gであった。また、母液から酢酸と水を減圧下で留去した後、先と同様の再結晶操作を行うことにより、99gの3,8−ジメチルデカン二酸を得た。これらを合計した収率は63%であった。機器分析データを以下に示す。
1 H−NMR分析(CDCl3溶媒)δ 0.97(d,6H);1.28(brs,8H);1.96(m,2H);2.09〜2.38(m,4H);10.4(br)
IR分析(ヌジョール法) ν 1,700 cm −1
FAB−質量分析 m/z(相対強度) 231(100),213(100)
【0027】
実施例3 3,7−ジメチルデカンジアールの合成
5lの加圧反応器にRh(CO)2(CH3COCHCOCH3)83.3mgとトリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト20.87gのベンゼン500ml溶液を入れ、一酸化炭素/水素(1/1)混合ガスで90気圧に加圧した。100℃まで昇温した後、これに2,6−ジメチル−1,7−オクタジエン2.05kgを5時間かけてフィードした。この間、圧力は90気圧に保った。フィード終了後、さらに同温度および圧力で5時間反応を続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージした。反応液を取り出し、ベンゼンを減圧下で留去した後、単蒸留にて触媒成分を除去した。得られた留出液を精密蒸留することにより3,7−ジメチルデカンジアールをほぼ無色透明の液体として得た。沸点99〜100℃/0.85mmHg。収量は1.20kg、収率は41%であった。構造決定に用いた機器分析データを以下に示す。
1 H−NMR分析(CDCl3溶媒)δ 0.89(d,3H);0.95(d,3H);1.10〜1.50(m,8H);1.65(m,1H);2.04(m,1H);2.19〜2.47(m,4H);9.85(m,2H)
IR分析 ν 2,960〜2,850;2,720;1,720;1,455;1,375 cm −1
GC−質量分析 m/z(相対強度) 41(100),55(100),71(75),81(73),95(63),154(3),165(2)
【0028】
実施例4 3,7−ジメチルデカン二酸の合成
5lの加圧反応器にCu(OCOCH3)2(H2O)0.19gおよび酢酸1.5lを入れ、空気で7気圧に加圧した後、50℃に昇温した。空気を240l/hrの速度で流通しながら、これに3,7−ジメチルデカンジアール750gと酢酸750mlとの混合物を3時間かけてフィードした。フィード終了後、同じ温度および圧力で反応を6時間続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージして反応液を取り出した。これを窒素雰囲気下で110℃にて1時間加熱した。酢酸を減圧下で留去した後、残液を蒸留して、3,7−ジメチルデカン二酸をほぼ無色透明の液体として得た。沸点175〜180℃/0.80mmHg。収量は435g、収率は61%であった。機器分析データを以下に示す。
1 H−NMR分析(CDCl3溶媒)δ 0.89(d,3H);0.97(d,3H);1.08〜1.50(m,8H);1.68(m,1H);1.95(m,1H);2.10〜2.42(m,4H);11.4(br,2H)
IR分析 ν 3,000〜2,850;1,720〜1,700;1,280;1,220;930 cm −1
【0029】
実施例5〜7 ジメチルデカンジアールの合成
100mlの加圧反応器にRh(CO)2 (CH3 COCHCOCH3 )1.3mg、トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト324mg、それぞれ表1に記載した溶媒20ml並びに一般式(II)においてそれぞれ表1で表されるAおよびBで示されるジメチルオクタジエン20.0gを入れ、一酸化炭素/水素(1/1)混合ガスで80気圧に加圧した。それぞれ表1に示した温度まで昇温した後、圧力を80気圧に保って6時間加熱撹拌を続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージした。反応液を取り出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、一般式(I)においてそれぞれ表1で表されるAおよびBで示されるジメチルデカンジアールがそれぞれ表1に記載した収率で生成していることが判明した。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例8〜11 ジメチルデカン二酸の合成
100mlの加圧反応器にそれぞれ表2に記載した金属塩3.5mgおよび酢酸20mlを入れ、空気で7気圧に加圧した後、50℃に昇温した。空気を5l/hrの速度で流通しながら、これに一般式(I)においてそれぞれ表2で表されるAおよびBで示されるジメチルデカンジアール10gと酢酸20mlとの混合物を20分間かけてフィードした。フィード終了後、同じ温度および圧力で反応を6時間続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージして反応液を取り出した。反応液の一部をメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、表2に示す収率で一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸が生成していることが認められた。
【0032】
【表2】
【0033】
参考例1 3,8−ジメチルデカン二酸を酸成分とするポリエステルジオールの合成
3,8−ジメチルデカン二酸6.90kg、1,4−ブタンジオール3.24kgを反応器に仕込み、常圧にて200℃で生成する水を留去しながらエステル化反応を行った。反応物の酸価が30以下になった時点で、テトライソプロピルチタネート134mgを加え、200〜100mmHgに減圧しながら、さらにエステル化反応を続けた。酸価が1.0になった時点で真空ポンプにより徐々に真空度を上げて反応を完結させた。このようにして得られるポリエステルポリオールは水酸基価56.7、酸価0.01であり、数平均分子量は1,980であった。
【0034】
参考例2 3,7−ジメチルデカン二酸を酸成分とするポリエステルジオールの合成
3,7−ジメチルデカン二酸6.90kg、を3,8−ジメチルデカン二酸6.90kgに代えて用いる他は参考例1に記載と同様の操作を行った結果、得られたポリエステルポリオールは酸価0.01であり、数平均分子量は1,980であった。
【0035】
参考例3 アジピン酸を酸成分とするポリエステルジオールの合成
3,8−ジメチルデカン二酸6.90kgに代えてアジピン酸4.38kgを用いる他は参考例1に記載した方法と同様の操作により、酸価0.02、数平均分子量2,010のポリエステルジオールを調製した。
【0036】
参考例4 ポリエステルジオールの耐加水分解性評価
ポリエステルジオールを100℃の熱水中に10日間浸漬し、加水分解による酸価の増大を調べることにより、耐加水分解性を評価した。3,8−ジメチルデカン二酸を酸成分とする参考例1のポリエステルジオールでは試験後の酸価が0.48、3,7−ジメチルデカン二酸を酸成分とする参考例2のポリエステルジオールでは試験後の酸価が1.02であったのに対して、参考例3のポリエステルジオールではその値は50以上と大きく、前二者は優れた耐加水分解性を持つことが判明した。
【0037】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)で示される新規なジメチルデカンジアールは、優れた耐加水分解性ポリウレタン樹脂合成用の一成分となる一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸の製造原料として有用である。
【産業上の利用分野】
本発明は、一般式(I)
【化6】
(式中、AおよびBはどちらか一方がメチル基を、他方が水素原子を表す。)
で示される新規なジメチルデカンジアールおよびその製造方法、ならびにそれを酸化する一般式(III )
【化7】
(式中、AおよびBは上記定義のとおりである。)
で示されるジメチルデカン二酸の製造方法に関する。本発明により提供される一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールは、一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸の製造原料として有用である。一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を成分とするポリエステルジオールは優れた耐加水分解性を示し、高性能ポリウレタンの成分としてポリウレタン樹脂、繊維、塗料、フィルムなどに用いられる。
【0002】
【従来の技術】
一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールは文献に記載のない新規化合物である。
一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸の合成法として下記の方法が知られている。
(1)一般式(III )においてA=H、B=Meである3,8−ジメチルデカン二酸を、2,7−オクタンジオンを出発原料として、ブロモ酢酸エチルのリフォルマトスキー(Reformatsky )反応、水酸基の臭素化反応、脱臭化水素反応、二重結合の水素化反応、エステルの加水分解反応の5段階で合成する方法(ジュスティヒ リービッヒ アンナーレン デア ヘミー(Ann.)、580巻、125〜31ページ(1953年)参照)。
(2)一般式(III )においてA=H、B=Meである3,8−ジメチルデカン二酸を、メチルマロン酸ジエチルと1,4−ジブロモブタンからマロン酸縮合、加水分解、脱炭酸で得られる2,7−ジメチルオクタン二酸を中間体とし、これを酸塩化物に変換した後、ジアゾケトンを経て合計7段階で合成する方法(ジュスティヒ リービッヒ アンナーレン デア ヘミー(Ann.)、598巻、1〜24ページ(1956年)参照)。
(3)一般式(III )においてA=Me、B=Hである3,7−ジメチルデカン二酸を、Geranium macrorhizumの精油から分離されるゲルマクロン(germacrone)を水素化、オゾン分解、過塩素酸分解することにより得る方法(ケム リスティ(Chem.listy)、52巻 1174〜1179ページ(1958年)参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1)および(2)の3,8−ジメチルデカン二酸を合成する方法はいずれも多くの反応工程を要し、しかも高価なまたは取り扱い時に危険性の高い原料や反応剤を用いる点で工業的製法とは言えない。一方、上記(3)の3,7−ジメチルデカン二酸を合成する方法は天然精油を原料とし、オゾンや過塩素酸という爆発性のある反応剤を用いる点で工業的製法とは言えない。したがって、安価な原料および安価な反応剤を用いて短工程で一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を経済的に製造する方法の開発が強く望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討の結果、一般式(I)で示される3,8−ジメチルデカンジアールおよび3,7−ジメチルデカンジアールが、それぞれ一般式(III )で示される3,8−ジメチルデカン二酸および3,7−ジメチルデカン二酸の経済的製法の中間体となることを見いだし、その製法を確立することにより上記の目的を達成した。
【0005】
一般式(I)においてA=H、B=Meで示される3,8−ジメチルデカンジアールは、例えば、一般式(II)においてA=H、B=Meで示される2,7−ジメチル−1,7−オクタジエンを、また一般式(I)においてA=Me、B=Hで示される3,7−ジメチルデカンジアールは、例えば、一般式(II)においてA=Me、B=Hで示される2,6−ジメチル−1,7−オクタジエンを,それぞれ触媒の存在下に一酸化炭素および水素の混合ガスを用いてヒドロホルミル化することにより製造できる。なお、2,7−ジメチル−1,7−オクタジエンおよび2,6−ジメチル−1,7−オクタジエンはそれぞれイソプレンとギ酸塩および水からパラジウム触媒の作用により合成できる(それぞれ特公昭62−41576号公報および特開昭55−157521号公報参照)。
【0006】
本発明の一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールを製造する反応の触媒としては、オレフィンと一酸化炭素および水素との反応、すなわちオレフィンのヒドロホルミル化反応の触媒作用を有するものであれば使用可能であるが、元素周期表における第8族元素を成分とする化合物、またはこれらとリン化合物もしくは窒素化合物との組み合わせが適しているが、特にロジウム化合物とリン化合物からなる触媒が好適である。
【0007】
上記のロジウム化合物としては、ヒドロホルミル化反応の触媒能を有するか、またはヒドロホルミル化の反応系内で活性化処理を行うことにより触媒能を獲得する化合物であれば使用可能であり、例えば、酸化ロジウム、塩化ロジウム、臭化ロジウムなどの無機塩;酢酸ロジウム、プロピオン酸ロジウムなどのカルボン酸塩;ロジウムアセチルアセトナートなどのキレート化合物、Rh4 (CO)12、[Rh(CO)2 Cl]2 、Rh(CO)2 (CH3 COCHCOCH3 )などのカルボニル化合物;Rh/C、Rh/シリカ、Rh/アルミナ、Rhブラックなどの金属を挙げることができる。これらのロジウム化合物の使用量は併用するリン化合物の種類および量、あるいは反応条件によっても異なるが、反応混合液中でのロジウム原子濃度として、0.005〜5ミリグラム原子/l、好ましくは0.01〜0.5ミリグラム原子/lである。
【0008】
上記ロジウム化合物と共に用いるリン化合物としては、上記ロジウム化合物を単独で用いた場合に比べて触媒活性を増大するおよび/または触媒寿命を改善する作用を持つものであれば使用可能であるが、例えば、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、m−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノプロパン、ジフェニルホスフィノブタンなどのホスフィン類;トリエチルホスファイト、トリメチロールプロパンホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリ(o−トリル)ホスファイト、トリ(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのホスファイト類を挙げることができる。これらの有機リン化合物の使用量はロジウム1グラム原子当たり1〜1000モル、好ましくは10〜500モル、特に好ましくは50〜300モルである。
【0009】
本発明の一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールを製造する反応は、60〜150℃、特に90〜130℃の温度範囲で実施することが好ましい。反応温度が60℃未満の場合には反応速度が遅くなり、150℃を越える場合には触媒の安定性を維持しにくい傾向にある。
【0010】
反応圧力は、反応温度にもよるが、10〜150気圧、特に60〜120気圧の範囲が好ましい。反応圧力が10気圧未満の場合は反応速度および選択率が低下する。また、反応圧力に関して特に上限はないが、反応装置および操作性の点から150気圧以下で実施することが工業的に好ましい。
【0011】
本反応で用いる一酸化炭素および水素の比率は、反応器への入りガスのモル比として一酸化炭素/水素=1/3〜3/1の範囲で実施することが好ましい。なお、ヒドロホルミル化反応に対して不活性なガスが共存しても差し支えない。
【0012】
本反応においては溶媒は使用しなくてもかまわないが、ヒドロホルミル化反応に対して不活性な溶媒であれば、これを用いることもできる。使用可能な溶媒として、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄化合物を挙げることができる。溶媒の使用量は任意であるが、容積効率の点から原料となる一般式(II)で示されるジオレフィンに対して50重量倍以下の量が適当である。
【0013】
本反応はバッチ式、連続式のいずれの方法でも行うことができる。バッチ式で実施する場合には、触媒成分、一般式(II)で示されるジオレフィン、必要に応じて溶媒を反応器に仕込み、一酸化炭素と水素の混合ガスで加圧後、所定の温度で反応させる方法、あるいは触媒成分と溶媒を仕込んだ反応器を一酸化炭素と水素の混合ガスで加圧、昇温後にこれに一般式(II)で示されるジオレフィンと必要に応じて溶媒との混合物をフィードする方法を採用することができる。
【0014】
本反応においては、転化率が100%になるまで反応させることもできるが、100%未満の転化率で実施することも可能である。
【0015】
反応終了後は、一酸化炭素および水素をパージし、必要に応じて溶媒を蒸留回収した後、蒸留、薄膜蒸発、水蒸気蒸留あるいは抽出などの精製手段により一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールを得ることができる。精製過程で分離された触媒成分を再使用することも可能である。
【0016】
このようにして得られた一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールから酸化反応により一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を製造することができる。これは、アルデヒドをカルボン酸に変換する方法として通常知られている方法で実施可能であり、例えば、金属塩を触媒とする酸素酸化法を挙げることができる。なお、一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールは上記の手段により精製したものを本酸化反応に用いることもできるが、精製することなく本反応に使用することも可能である。
【0017】
本発明の一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールから一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を製造する反応の触媒としては、銅、コバルト、マンガン、鉄などの遷移金属、またはこれらの塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物;酢酸塩、プロピオン酸塩、2−エチルヘキサン酸塩などのカルボン酸塩;アセチルアセトナートのようなジケトン錯体が使用可能である。これらの金属あるいは金属塩は単独または2種以上を混合して用いることができ、また金属塩は無水物であっても含水物であってもよい。これらの触媒の使用量はその種類および反応条件によって異なるが、反応混合液中での金属原子換算濃度として0.1〜1000ppm、好ましくは1〜100ppmである。
【0018】
本反応においては溶媒は使用しなくてもかまわないが、酸化反応に対して不活性な溶媒であれば、これを用いることもできる。使用可能な溶媒として、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類;水を挙げることができる。これらは単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。溶媒の使用量は任意であるが、容積効率の点から原料となる一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールに対して50重量倍以下の量が適当である。
【0019】
一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールを酸化する反応は、反応混合液の融点にもよるが、10〜100℃、特に30〜80℃の温度範囲で実施することが好ましい。反応温度が30℃未満の場合には反応速度が遅くなり、80℃を越える場合には反応の制御が困難となる傾向にある。
【0020】
本酸化反応は酸素または空気のような酸素と不活性気体との混合物中で行うことができる。工業的には空気を用いることが有利であり、反応圧力に関して特に上限はないが、反応装置および安全性の点から50気圧以下、特に10気圧以下で実施することが好ましい。
【0021】
本反応はバッチ式、連続式のいずれの方法でも行うことができる。バッチ式で実施する場合には、触媒、一般式(I)で示されるジメチルデカンジアール、必要に応じて溶媒を反応器に仕込み、酸素または空気のような酸素と不活性気体との混合物の存在下に所定の圧力および温度で反応させる方法、あるいは触媒と溶媒を仕込んだ反応器を酸素または空気のような酸素と不活性気体との混合物の存在下に所定の圧力および温度に保ちながらこれに一般式(I)で示されるジメチルデカンジアールと必要に応じて溶媒との混合物をフィードする方法を採用することができる。いずれの反応方式においても、酸素または空気のような酸素と不活性気体との混合物を張り込んで用いてもよく、流通させて用いてもよい。
【0022】
本反応においては、転化率が100%になるまで反応させることもできるが、100%未満の転化率で実施することも可能である。
【0023】
反応終了後は、反応系内のガスをパージし、必要に応じて溶媒を蒸留回収した後、晶析、蒸留、薄膜蒸発、水蒸気蒸留あるいは抽出などの精製手段により一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸を得ることができる。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1 3,8−ジメチルデカンジアールの合成
5lの加圧反応器にRh(CO)2(CH3COCHCOCH3)83.3mgとトリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト20.87gのベンゼン500ml溶液を入れ、一酸化炭素/水素(1/1)混合ガスで80気圧に加圧した。100℃まで昇温した後、これに2,7−ジメチル−1,7−オクタジエン2.05kgを5時間かけてフィードした。この間、圧力は80気圧に保った。フィード終了後、さらに同温度および圧力で5時間反応を続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージした。反応液を取り出し、ベンゼンを減圧下で留去した後、蒸留精製により3,8−ジメチルデカンジアールを無色透明の液体として得た。沸点77〜78℃/0.2mmHg。収量は1.64kg、収率は56%であった。構造決定に用いた機器分析データを以下に示す。
1 H−NMR分析(CDCl3溶媒)δ 0.96(d,6H);1.29(brs,8H);2.05(m,2H);2.18〜2.45(m,4H);9.85(t,2H)
IR分析 ν 2,970〜2,850;2,730;1,725;1,460;1,380;1,015 cm −1
GC−質量分析 m/z(相対強度) 71(100),41(74),55(74),81(62),69(60),43(40),95(37)
【0026】
実施例2 3,8−ジメチルデカン二酸の合成
5lの加圧反応器にCu(OCOCH3)2(H2O)0.19gおよび酢酸1.5lを入れ、空気で7気圧に加圧した後、50℃に昇温した。空気を240l/hrの速度で流通しながら、これに3,8−ジメチルデカンジアール750gと酢酸750mlとの混合物を3時間かけてフィードした。フィード終了後、同じ温度および圧力で反応を4時間続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージして反応液を取り出した。これを窒素雰囲気下で110℃にて1時間加熱した。酢酸を減圧下で留去した後、酢酸/水(1/1)の混合溶媒から再結晶を2回繰り返すことにより、3,8−ジメチルデカン二酸を融点76.5〜77.5℃の白色の固体として得た。収量は449gであった。また、母液から酢酸と水を減圧下で留去した後、先と同様の再結晶操作を行うことにより、99gの3,8−ジメチルデカン二酸を得た。これらを合計した収率は63%であった。機器分析データを以下に示す。
1 H−NMR分析(CDCl3溶媒)δ 0.97(d,6H);1.28(brs,8H);1.96(m,2H);2.09〜2.38(m,4H);10.4(br)
IR分析(ヌジョール法) ν 1,700 cm −1
FAB−質量分析 m/z(相対強度) 231(100),213(100)
【0027】
実施例3 3,7−ジメチルデカンジアールの合成
5lの加圧反応器にRh(CO)2(CH3COCHCOCH3)83.3mgとトリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト20.87gのベンゼン500ml溶液を入れ、一酸化炭素/水素(1/1)混合ガスで90気圧に加圧した。100℃まで昇温した後、これに2,6−ジメチル−1,7−オクタジエン2.05kgを5時間かけてフィードした。この間、圧力は90気圧に保った。フィード終了後、さらに同温度および圧力で5時間反応を続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージした。反応液を取り出し、ベンゼンを減圧下で留去した後、単蒸留にて触媒成分を除去した。得られた留出液を精密蒸留することにより3,7−ジメチルデカンジアールをほぼ無色透明の液体として得た。沸点99〜100℃/0.85mmHg。収量は1.20kg、収率は41%であった。構造決定に用いた機器分析データを以下に示す。
1 H−NMR分析(CDCl3溶媒)δ 0.89(d,3H);0.95(d,3H);1.10〜1.50(m,8H);1.65(m,1H);2.04(m,1H);2.19〜2.47(m,4H);9.85(m,2H)
IR分析 ν 2,960〜2,850;2,720;1,720;1,455;1,375 cm −1
GC−質量分析 m/z(相対強度) 41(100),55(100),71(75),81(73),95(63),154(3),165(2)
【0028】
実施例4 3,7−ジメチルデカン二酸の合成
5lの加圧反応器にCu(OCOCH3)2(H2O)0.19gおよび酢酸1.5lを入れ、空気で7気圧に加圧した後、50℃に昇温した。空気を240l/hrの速度で流通しながら、これに3,7−ジメチルデカンジアール750gと酢酸750mlとの混合物を3時間かけてフィードした。フィード終了後、同じ温度および圧力で反応を6時間続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージして反応液を取り出した。これを窒素雰囲気下で110℃にて1時間加熱した。酢酸を減圧下で留去した後、残液を蒸留して、3,7−ジメチルデカン二酸をほぼ無色透明の液体として得た。沸点175〜180℃/0.80mmHg。収量は435g、収率は61%であった。機器分析データを以下に示す。
1 H−NMR分析(CDCl3溶媒)δ 0.89(d,3H);0.97(d,3H);1.08〜1.50(m,8H);1.68(m,1H);1.95(m,1H);2.10〜2.42(m,4H);11.4(br,2H)
IR分析 ν 3,000〜2,850;1,720〜1,700;1,280;1,220;930 cm −1
【0029】
実施例5〜7 ジメチルデカンジアールの合成
100mlの加圧反応器にRh(CO)2 (CH3 COCHCOCH3 )1.3mg、トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト324mg、それぞれ表1に記載した溶媒20ml並びに一般式(II)においてそれぞれ表1で表されるAおよびBで示されるジメチルオクタジエン20.0gを入れ、一酸化炭素/水素(1/1)混合ガスで80気圧に加圧した。それぞれ表1に示した温度まで昇温した後、圧力を80気圧に保って6時間加熱撹拌を続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージした。反応液を取り出し、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、一般式(I)においてそれぞれ表1で表されるAおよびBで示されるジメチルデカンジアールがそれぞれ表1に記載した収率で生成していることが判明した。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例8〜11 ジメチルデカン二酸の合成
100mlの加圧反応器にそれぞれ表2に記載した金属塩3.5mgおよび酢酸20mlを入れ、空気で7気圧に加圧した後、50℃に昇温した。空気を5l/hrの速度で流通しながら、これに一般式(I)においてそれぞれ表2で表されるAおよびBで示されるジメチルデカンジアール10gと酢酸20mlとの混合物を20分間かけてフィードした。フィード終了後、同じ温度および圧力で反応を6時間続けた。反応器を冷却した後、容器内のガスをパージして反応液を取り出した。反応液の一部をメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、表2に示す収率で一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸が生成していることが認められた。
【0032】
【表2】
【0033】
参考例1 3,8−ジメチルデカン二酸を酸成分とするポリエステルジオールの合成
3,8−ジメチルデカン二酸6.90kg、1,4−ブタンジオール3.24kgを反応器に仕込み、常圧にて200℃で生成する水を留去しながらエステル化反応を行った。反応物の酸価が30以下になった時点で、テトライソプロピルチタネート134mgを加え、200〜100mmHgに減圧しながら、さらにエステル化反応を続けた。酸価が1.0になった時点で真空ポンプにより徐々に真空度を上げて反応を完結させた。このようにして得られるポリエステルポリオールは水酸基価56.7、酸価0.01であり、数平均分子量は1,980であった。
【0034】
参考例2 3,7−ジメチルデカン二酸を酸成分とするポリエステルジオールの合成
3,7−ジメチルデカン二酸6.90kg、を3,8−ジメチルデカン二酸6.90kgに代えて用いる他は参考例1に記載と同様の操作を行った結果、得られたポリエステルポリオールは酸価0.01であり、数平均分子量は1,980であった。
【0035】
参考例3 アジピン酸を酸成分とするポリエステルジオールの合成
3,8−ジメチルデカン二酸6.90kgに代えてアジピン酸4.38kgを用いる他は参考例1に記載した方法と同様の操作により、酸価0.02、数平均分子量2,010のポリエステルジオールを調製した。
【0036】
参考例4 ポリエステルジオールの耐加水分解性評価
ポリエステルジオールを100℃の熱水中に10日間浸漬し、加水分解による酸価の増大を調べることにより、耐加水分解性を評価した。3,8−ジメチルデカン二酸を酸成分とする参考例1のポリエステルジオールでは試験後の酸価が0.48、3,7−ジメチルデカン二酸を酸成分とする参考例2のポリエステルジオールでは試験後の酸価が1.02であったのに対して、参考例3のポリエステルジオールではその値は50以上と大きく、前二者は優れた耐加水分解性を持つことが判明した。
【0037】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)で示される新規なジメチルデカンジアールは、優れた耐加水分解性ポリウレタン樹脂合成用の一成分となる一般式(III )で示されるジメチルデカン二酸の製造原料として有用である。
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