JP3882462B2 - アリル化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アリル位にアシルオキシ基を有する化合物をアリル転位により異性化する方法に関し、詳しくは、3,4−二置換ブテン−1又は1,4−二置換ブテン−2を特定の触媒を用いて異性化してそれぞれ対応する異性体である1,4−二置換ブテン−2又は3,4−二置換ブテン−1を製造する方法に関する。本発明の方法により得られる1,4−ジアセトキシブテン−2は、1,4−ブタンジオール又はテトラヒドロフラン等を製造するための重要な中間体である。一方、3,4−ジアセトキシブテン−1はビタミンAアセテート等のテルペンテン化合物をはじめ、医薬、農薬、各種香料等を製造するための重要な中間体である。
【0002】
【従来の技術】
1,4−ジアセトキシブテン−2及び3,4−ジアセトキシブテン−1は、酢酸溶媒中ブタジエンを分子状酸素で酸化することにより得られることは公知である(例えば特開昭48-72090号公報、特開昭48-96513号公報等)。しかしながら、この方法では、1,4−ジアセトキシブテン−2と3,4−ジアセトキシブテン−1の生成比率は主に触媒の性能に左右されることから、任意の比率で製造することは極めて困難であった。
また、1,2−エポキシブテン−3をアセトキシ化することにより容易に3,4−ジアセトキシブテン−1を得ることはできるが、この方法では1,4−ジアセトキシブテン−2を得るのは極めて困難であった。一方、1,4−ジアセトキシブテン−2のみを選択的に製造するためには、3,6−ジヒドロ−1,2−ジオキシイン等の極めて特殊な原料を必要とすることから、工業的規模での製造は事実上不可能であった。
【0003】
そこで、3,4−ジアセトキシブテン−1又は1,4−ジアセトキシブテン−2を特定の触媒を用いて異性化して、それぞれ対応する異性体である1,4−ジアセトキシブテン−2又は3.4−ジアセトキシブテン−1を製造する方法については、従来からいろいろな方法が提案されている。例えば、触媒として塩化白金化合物を用いる方法(ドイツ特許第2736695号明細書、同第2134115号明細書)、パラジウム化合物を塩化水素又は臭化水素の共存下に用いる方法(特開昭57−140744号公報)、PdCl2(PhCN)2炭素数6〜20の化合物を用いる方法(米国特許第4,095,030号明細書)等が知られている。しかしながら、これらの方法は、触媒の安定性に問題があり、このため腐食性の高いハロゲン化合物を多量に使わざるを得ないという問題点を抱えている。
【0004】
一方、ハロゲン化合物を使用しない方法として、パラジウム化合物と有機ホスフィンからなる触媒を用いる方法(特開昭55−11555号公報)やアルミナ、ゼオライト等の酸触媒を用いて気相で異性化する方法(ドイツ特許第3326668号明細書、特開昭50−126611号公報)も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述のごとく1,4−ジアセトキシブテン−2と3,4−ジアセトキシブテン−1は、全く異なる製品群の中間体であることから、その需要比は地域や時代、或いはそれを実施する企業の事業背景などにより異なっている。従って、3,4−ジアセトキシブテン−1又は1,4−ジアセトキシブテン−2を特定の触媒を用いて異性化して、それぞれ対応する異性体である1,4−ジアセトキシブテン−2又は3,4−ジアセトキシブテン−1を工業的に製造することの意義は極めて大きい。しかしながら、前記従来法においては、触媒の活性が満足すべきレベルにはない、或いは選択性が十分ではない等という問題があり、工業的観点からは決して満足できるものではなかった。従って、本発明の目的は、3,4−ジアセトキシブテン−1又は1,4−ジアセトキシブテン−2等のアリル化合物を異性化させることにより、高転化率、高選択率であり、且つ金属の析出を起こすことなく、目的とする1,4−ジアセトキシブテン−2又は3,4−ジアセトキシブテン−1等のアリル化合物を製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討した結果、特定の触媒の存在下にて、3,4−ジアセトキシブテン−1又は1,4−ジアセトキシブテン−2等のアリル原料化合物をアリル転位により異性化させることにより、高転化率、高選択率であり、且つ金属の析出を起こすことなく、目的とする異性体生成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、式(a′)で表される3,4−二置換ブテン−1を式(b′)で表される1,4−二置換ブテン−2に異性化するか、又は式(b′)で表される1,4−二置換ブテン−2を式(a′)で表される3,4−二置換ブテン−1に異性化するアリル化合物の製造方法において、異性化反応を周期律表第8〜10族の金属の化合物及び式( II )〜( VI )のいずれかで表されるホスファイト化合物の存在下に行うことを特徴とするアリル化合物の製造方法に、存する。
(式中、R 6 及びR 7 はそれぞれアシルオキシ基を表す)
(式中、Z 1 〜Z 4 は置換基を有していてもよいビフェニルジイル基を表す。Tは炭素原子又はアルカンテトライル基を表す。A 1 は置換基を有するアリーレン基又はテトラメチレン基を表す。A 2 及びA 3 は置換基を有していてもよいビフェニルジイル基又はアルキレン基を表す。R 13 〜R 21 はそれぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表す)
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の異性化反応に用いられる原料は、下記の式(a′)又は(b′)で表されるものである。
(式中、R 6 及びR 7 はそれぞれアシルオキシ基を表す)
【0009】
上記の式(a′)及び(b′)において、R 6 及びR 7 としてはアセチルオキシが最も好ましい。すなわち、本発明において異性化反応に供する原料としては3,4−ジアセトキシブテン−1又は1,4−ジアセトキシブテン−2が最も好ましい。
【0010】
また、原料の1例である3,4−ジアセトキシブテン−1は、公知の方法、例えばブタジエンをパラジウム等の触媒の存在下、酢酸及び酸素と反応させて1,4−ジアセトキシブテン−2を製造する際の副生物として得られるものであり、例えば(特公昭51−23008号公報又は同59−28553号公報)に準拠して製造することができる。
原料は純品でもよいが、複数のアリル化合物の混合物であってもよく、原料のアリル化合物以外に、後述するようなこの異性化反応を妨げない他の成分、例えば、酢酸、水等を含む混合物であってもよい。
【0011】
本発明の反応に用いられる異性化触媒は、周期表の第8〜10族(IUPAC 無機化学命名法改訂版(1989))の金属の化合物及びホスファイト化合物を含むものである。金属化合物としては、例えば鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、白金、イリジウム、オスミウム及びパラジウムの化合物から選ばれる1種以上の化合物が挙げられるが、これらの中では、ニッケル、パラジウム、白金化合物がより好ましく、更にはパラジウム化合物が特に好ましい。
前記金属化合物は、例えば、酢酸塩、アセチルアセトナート、ハライド、硫酸塩、硝酸塩、有機塩、無機塩、アルケン化合物、アミン化合物、ピリジン化合物、ホスフィン配位化合物、ホスファイト配位化合物等が挙げられる。
【0012】
ルテニウム化合物としては、RuCl3、Ru(OAc)3、Ru(acac)3、RuCl2(PPh3)3等が挙げられ、オスミウム化合物としては、OsCl3、Os(OAc)3等が挙げられ、ロジウム化合物としては、RhCl3、Rh(OAc)3、ロジウムジアセテート二量体、Rh(acac)(CO)2、[Rh(OAc)(COD)]2、[RhCl(COD)]2、Rh(COD)OAcなどが挙げられる。
また、イリジウム化合物としては、IrCl3、Ir(OAc)3等が挙げられ、ニッケル化合物としては、NiCl2、NiBr2、Ni(NO3)2、NiSO4、Ni(COD)2、NiCl2(PPh3)2等が挙げられる。
【0013】
パラジウム化合物としては、例えば、Pd(0)やPdCl2 、PdBr2 、PdCl2 (COD)、PdCl2 (PPh3 )2 、Pd(PPh3)4、Pd2(dba)3・CHCl3、K2PdCl4、K2 PdCl6(potassium hexachloropalladate(IV))、PdCl2(PhCN)2、PdCl2(CH3CN)2、、Pd(dba)2、Pd2(dba)3、Pd(NO3 )2 、Pd(OAc)2 、Pd(CF3COO)2、PdSO4、Pd(acac)2 、カルボキシレート化合物、オレフィン含有化合物、Pd(PPh3)4等の有機ホスフィン含有化合物、アリルパラジウムクロライド二量体等を挙げることができ、これらの中、Pd(OAc)2 、PdCl2 等のパラジウムのカルボキシレート化合物又はハロゲン化物が好ましい。
白金化合物としては、Pt(acac)2、PtCl2(COD)、PtCl2(CH3CN)2、PtCl2(PhCN)2、Pt(PPh3)4、K2PtCl4、Na2PtCl6、H2PtCl6等が挙げられる。(ここで、COD:シクロペンタジエン、dba:ジベンジリデンアセトン、acac:アセチルアセトナートを表す。)
本発明においては、上述した金属化合物の形態には特に制限されず、活性な金属錯体種は単量体、二量体及び/又は多量体であってもかまわない。
【0014】
これらの金属化合物の使用量については特に制限はないが、触媒活性と経済性の観点から、反応原料であるアリル化合物に対して1×10-8(0.01モルppm)〜1モル当量、好ましくは1×10-7(0.1モルppm)〜0.001モル当量の範囲、特に好ましくは10-6〜0.0001モル当量の範囲で使用される。本発明に用いられるホスファイト化合物は下記一般式(I)〜( VI )のいずれかで表されるものであるが、なかでも一般式( II )〜( VI )のいずれかで表されるものが好ましい。
【0015】
【化3】
【0016】
式(I)〜(VI)において、R10〜R21は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリーロキシ基、アルキルアリーロキシ基、アリールアルコキシ基、又はアリール基を表し、更に置換基を有していてもよい。
【0017】
R10〜R21としてアルキル基を用いる場合、又は、アルキル骨格を有する置換基(アルキルアリーロキシ基中のアルキル基等)を用いる場合には、その炭素数は通常1〜20であり、好ましくは1〜14である。その具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等である。また、アルキル基又はアルキル骨格部分は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、アミノ基、シアノ基、炭素数2〜10のエステル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0018】
また、R10〜R21としてアリール基を用いる場合又はアリール骨格を有する置換基を用いる場合には、その炭素数は通常6〜20であり、好ましくは6〜14である。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ジ−t−ブチルフェニル基、ナフチル基、ジ−t−ブチルナフチル基等が挙げられる。
アリール基又はアリール骨格部分は更に置換基を有していてもよく、置換基としては、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリーロキシ基、炭素数6〜20のアルキルアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリーロキシ基、炭素数6〜20のアリールアルキル基、炭素数6〜20のアリールアルコキシ基、シアノ基、炭素数2〜20のエステル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0019】
R10〜R21の具体例としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、2-イソプロピルフェニル基、2-t-ブチルフェニル基、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基、及び下記の(C-1)〜(C-8)が挙げられる。
【化4】
Z1〜Z4及びA1〜A3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキレン基、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリーレン基、又は−Ar1 −(Q1)n −Ar2−なる真中に二価の連結基を有してもよいジアリーレン基(但し、Ar1 及びAr2 は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリーレン基を表す。)を表す。Tは、炭素原子、アルカンテトライル基、ベンゼンテトライル基、又はT2-(Q2)n-T2で表される置換基を有していてもよい四価の基であり、T1及びT2は、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルカントリイル基及び炭素数6〜15のベンゼントリイル基から選ばれる置換基を有していてもよい三価の有機基を表す。Q1及びQ2は、それぞれ独立して、−CR22R23−、−O−、−S−又は−CO−を表し、nは0又は1であり、R22及びR23は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であり、置換基を有していてもよい。
【0020】
また、Z1〜Z4又はA1〜A3がアルキレン基の場合、その具体例としては、例えばテトラメチルエチレン基、ジメチルプロピレン基等が挙げられ、Zが置換基を有してもよいアルキレン基の場合には、置換基としては炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、アミノ基、シアノ基、アミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、トリメチルシリル基、炭素数3〜10のエステル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子が挙げられる。
また、Z1〜Z4又はA1〜A3が置換基を有していてもよいアリーレン基の場合には、その具体例としては、例えばフェニレン基やナフチレン基等が挙げられ、置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、アミノ基、シアノ基、炭素数2〜10のエステル基、アミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、トリメチルシリル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子等が挙げられる。
更に、Z1〜Z4又はA1〜A3が−Ar1 −(Q)n −Ar2 −なる真中に二価の連結基を有してもよいジアリーレン基の場合、Ar1 及びAr2 は置換基を有してもよいアリーレン基であり、その炭素数は6〜24、更には6〜16が好ましく、置換基の好ましい具体例としては炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、アミノ基、シアノ基、炭素数2〜10のエステル基、ヒドロキシ基及びハロゲン原子等が挙げられる。
また、A1〜A3及びZ1〜Z4の具体例としては、−(CH2 )2 −、−(CH2 )3 −、−(CH2 )4 −、−(CH2 )5 −、−(CH2 )6 −、−CH(CH3 )−CH(CH3 )−、−CH(CH3 )CH2 CH(CH3 )−、−C(CH3 )2 −C(CH3 )2 −、−C(CH3 )2 −CH2−C(CH3 )2 −、及び下記の(A−1)〜(A−46)が挙げられる。また、A1〜A3の具体例としては(A−47)も挙げられる。
【0021】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0022】
そして、式(I)〜(VI)の化合物の好ましい具体例として、下記の(1)〜(11)及び(P1)〜(P21)を例示することができる。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
異性化反応系内における、これらのホスファイト化合物の上記金属化合物に対する比率(モル比)は、通常0.1〜10000であり、好ましくは0.5〜500、特に好ましくは1.0〜100の範囲で使用される。上記金属化合物とホスファイト化合物はそれぞれ単独に反応系に添加してもよいし、或いは予め錯化した状態で使用しても良い。
【0023】
本発明においては、特定の金属化合物とホスファイトを含む触媒を用いる異性化反応系中に、脂肪酸や芳香族カルボン酸等の炭素数2〜8のカルボン酸を存在させることにより、異性化反応を促進するという利点を有する。中でも、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の脂肪酸が好ましく、酢酸が最も好ましい。酢酸の存在量は、触媒活性、触媒の安定性及び経済性の観点から、酢酸:原料であるアリル原料化合物の合計量(重量比)で、通常5:1〜1:1000であり、好ましくは、4:1〜1:100、更に好ましくは2:1〜1:10の範囲内である。
【0024】
異性化反応は、通常は液相で行い、溶媒の存在下或いは非存在下の何れでも実施しうるが、通常は異性化反応に溶媒を使用して均一系で実施するのが好ましい。溶媒としては、触媒及び原料化合物を溶解するものであれば使用可能であり特に限定はない。
【0025】
溶媒の具体例としては、例えば、酢酸等のカルボン酸類、メタノール等のアルコール類、ジグライム、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ジ(n-オクチル)フタレート等のエステル類、トルエン、キシレン、ドデシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、異性化反応系内で副生物として生成する高沸物、原料であるアリル化合物自体等が挙げられる。これらの中でも、酢酸が異性化反応を促進するという点で好ましい。
これらの溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、通常、原料であるアリル化合物の合計量に対して0.1〜20重量倍、好ましくは0.5〜10重量倍である。
【0026】
本発明においては、3,4−ジアセトキシブテン−1の異性化により1,4−ジアセトキシブテン−2を得る反応は平衡反応であり、120℃での平衡混合物は、約60〜65モル%の1,4−ジアセトキシブテン−2と35〜40モル%の3,4−ジアセトキシブテン−1を含有する。このことは、即ち、1,4−ジアセトキシブテン−2を主成分として含む反応混合物は、異性化反応させることにより、3,4−ジアセトキシブテン−1を主成分として含む生成物が得られることを意味している。
【0027】
異性化反応により得られる生成物中の1,4−ジアセトキシブテン−2と3,4−ジアセトキシブテン−1のモル比の範囲は通常、90:10〜10:90であるが、その範囲内では80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80等のいずれの比率の生成物でも製造することができる。この比率は、特に限定されないが、反応条件やプロセスの経済性により調節することが可能となる。
【0028】
本発明の異性化反応系中には、原料や基質以外の反応副生物や触媒の分解物等を含んでいてもよい。
具体的には、異性化反応系中に、ブタンジオールモノアセトキシレート、1-アセトキシブタン-2-オン、4-アセトキシブタナール、4-アセトキシクロトンアルデヒド、ジアセトキシブタン、アセトキシヒドロキシブタン、ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、1,2−ブテンジオール、1-アセトキシ-1,3-ブタジエン、ジアセトキシオクタジエンから選ばれる1種以上の化合物(C)が存在していてもよい。
これらの化合物(C)は、異性化反応系内において、原料であるアリル化合物の合計量に対して(化合物(C):アリル化合物)、重量比で、通常1:1〜1:10000、好ましくは5:1〜1:1000、更に好ましくは2:1〜1:500、特に好ましくは0.1:1〜1:100の範囲存在していてもよい。
【0029】
本発明においては、異性化反応系中に水が多量に存在すると、異性化反応が著しく阻害されるため水の存在量は少ない方が転化率が高くなるという点で好ましいが、溶媒又は反応原料から完全に水を除外するためには、極めて大きなエネルギーを必要とする。従って、工業的には、異性化反応混合液中の水の存在量は、好ましくは0.1〜5wt%であり、更に好ましくは0.5〜2wt%である。水は反応系に様々なルートから混入しうるが、中でも溶媒又は異性化反応の促進剤として用いられるカルボン酸は、しばしば水を同伴する。このような場合、カルボン酸に対する水の重量比は、好ましくは1以下である。
【0030】
本発明は、上述したようにブタジエンを、酢酸及び酸素の存在下にジアセトキシ化反応させて得られた1,4-ジアセトキシ-2-ブテンと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを含む反応生成物から、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンを主成分とする反応液を分離して、次いで本発明の方法により異性化させることにより1,4-ジアセトキシ-2-ブテンを得るプロセスとして採用する場合にも有効である。
【0031】
このようなブタジエンのジアセトキシ化反応により得られた反応生成物を原料として用いる場合には、反応生成物中に、1,4-ジアセトキシ-2-ブテンや3,4-ジアセトキシ-1-ブテン等のジアセトキシ体以外にも、上述した化合物(C)と同様の化合物が存在するため、更に、蒸留等の方法により、3,4-二置換-1-ブテン体又は1,4-二置換-2-ブテン体のいずれか一方の成分を主体として含有する混合物を分離し、次いでこの混合物の異性化反応を行うのが好ましい。
【0032】
このように蒸留等の操作により分離された3,4-二置換-1-ブテン体及び/又は1,4-二置換-2-ブテン体を含有する混合物中には、ジアセトキシ体とモノアセトキシ体が含有されているが、モノアセトキシ体はジアセトキシ体に比べて異性化反応速度が非常に低い。従って、このようなジアセトキシ体とモノアセトキシ体の混合物の異性化反応を行う場合には、1)異性化反応を行う前に予めモノアセトキシ体のアセトキシ化反応(エステル化反応)を行い、次いで得られたジアセトキシ体を含む混合物の異性化反応を行う方法か、或いは2)異性化反応系中でモノアセトキシ体のアセトキシ化反応(エステル化反応)を同時に行う方法を採用するのがよい。
【0033】
上述したモノアセトキシ体、例えば3-ブテン-1,2-ジオールモノアセトキシレート及び/又は1-アセトキシ-4-ヒドロキシ-2-ブテン等のアセトキシ化反応(エステル化反応)は、無水酢酸を存在させることにより進行する。無水酢酸の量は、特に制限されないが、モノアセトキシ体に対して等モル付近であればよい。無水酢酸を使用する場合の、エステル化反応の反応温度は、通常40〜200℃であり、好ましくは100〜160℃である。
【0034】
上述したモノアセトキシ体のアセトキシ化反応は、イオン交換樹脂及び酢酸を存在させることによっても進行する。イオン交換樹脂を用いることにより、高価な無水酢酸を使用することなくアセトキシ化反応を実施できるという利点を有する。酢酸の量は特に制限されないが、反応が平衡反応であるので、酢酸の量が多くなるほどアセトキシ化反応の転化率は向上する。
採用できるイオン交換樹脂の種類としては、スチレン系、メタクリル酸系、アクリル酸系等の陽イオン交換樹脂が挙げられ、中でもスチレン系陽イオン交換樹脂が好ましい。イオン交換樹脂の使用量としては、特に制限されないが、触媒活性と経済性の観点から、回分法の場合にはアリル原料化合物1kgに対して、好ましくは0.01〜5kgであり、更に好ましくは0.05〜1kgであり、連続法の場合には、空間速度(space volume)は、アリル化合物1リットル、1時間当たり、好ましくは0.05〜10リットル、更に好ましくは0.2〜2リットルである。イオン交換樹脂を使用する場合の、エステル化反応温度としては、通常20〜200℃であり、好ましくは30〜120℃、更に好ましくは40〜100℃である。
【0035】
上述したような、異性化反応系中でモノアセトキシ体のアセトキシ化反応(エステル化反応)を同時に行う方法2)を採用する場合には、上記の無水酢酸やイオン交換樹脂及び酢酸を用いることにより、異性化反応とエステル化反応を同一の反応条件、即ち上述した異性化反応条件下で実施することが可能である。
【0036】
本発明の異性化方法は、回分式、連続式の何れでも実施できる。
回分式で異性化反応を行う場合をより具体的に説明すると、触媒構成成分を溶媒に溶解し、この中に例えば3,4−ジアセトキシブテン−1を主体とする原料を導入し、攪拌下十分転化する時間触媒と接触させる。反応終了後は、蒸留等の手段により、反応液から目的の1,4−ジアセトキシブテン−2等を主体とする成分を分離、回収することができる。
1,4−ジアセトキシブテン−2と3,4−ジアセトキシブテン−1の分離は通常蒸留や抽出等の方法により行うことができる。
【0037】
連続式で行う場合には、例えば3,4−ジアセトキシブテン−1を主体とする原料と触媒成分を連続的に反応槽に供給し、目的生成物である異性化物を含む反応液を連続的に抜き出した後蒸留し、触媒成分を含む残留液を連続的に反応系に循環して再利用する方式が考えられる。
異性化の反応温度は、通常50〜200℃、好ましくは80〜160℃である。反応温度が低すぎると活性が低く、また、高すぎると触媒の安定性が低下し好ましくない副反応が起こる。反応圧力については、特に制限はなく、常圧〜3MPaの範囲、好ましくは常圧〜2MPaの範囲から適宜選択される。また、反応時間も特に制限がなく触媒の量、反応温度等の因子から反応速度を考慮して適宜選択する。
【0038】
なお、3,4-ジ置換体の異性化により、対応する1,4-ジ置換体を得る反応は平衡反応であり、触媒は反応原料組成から平衡組成へより近づける役割をなす。つまり、出発原料が3,4-ジ置換体と1,4-ジ置換体のいずれを主体とする混合物の場合であってもその効果は同じである。従って、1,4−ジアセトキシブテン−2を主体とする成分の異性化反応については、原料として1,4−ジアセトキシブテン−2又はこれを含む混合物を用いる他は、上述した3,4−ジアセトキシブテン−1を主体とする原料の異性化反応に準じて行うことができる。
【0039】
本発明によれば、3,4-ジ置換ブテン-1及び/又は1,4-ジ置換ブテン-2を、周期表の第8〜10族の元素の金属化合物を含む触媒の存在下で異性化させる際、該金属化合物の析出を抑制しつつ、且つ、異性化生成物を10モル%以上の収率で得ることが可能となる。
【0040】
【実施例】
以下に本発明をより更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。尚、以下の例における反応結果はガスクロマトグラフィーにより反応液組成を分析した結果より算出した。
3,4−ジアセトキシブテン−1(以下、3,4−DABEと略記することがある)を原料にした場合、生成物として1,4−ジアセトキシブテン−2(以下、1,4−DABEと略記することがある)以外検出できないので、1,4−ジアセトキシブテン−2の収率をもって反応成績とした。また、ホスファイト化合物としては、前記の(P1)〜(P21)を用い、ホスファイトを使用する全ての反応は窒素雰囲気下において実施した。
【0041】
実施例1〜7及び比較例1
窒素置換した10mlのフラスコに3,4−ジアセトキシブテン−1(0.633mmol)、Pd(OAc)2(0.0221mmol)、前記ホスファイト化合物(0.041mmol)及び酢酸(1ml)を加えて80℃で1時間反応させた。1,4−ジアセトキシブテン−2(1,4−DABE)の収率を表1に示した。尚、いずれの系でもPd金属の析出は認められなかった。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例8
実施例3で使用した酢酸の代わりにジグライム1mlを使用し、反応温度を120℃に変更した以外実施例3と同様の反応を行った所、1,4−DABEの収率は56.5%であった。この場合もパラジウム金属の析出は観測できなかった。
【0044】
比較例2
実施例8で使用した(P3)の代わりにP(OPh)3(0.082mmol)を使用し、反応温度を120℃から100℃に変更した以外実施例8と同様の反応を行った所、1,4−DABEの収率は10.9%であった。パラジウムの析出は観測されなかった。
【0045】
実施例9
Pd(OAc)2(0.633mmol)、ホスファイト化合物として(P3)(0.041mmol)、酢酸(0.037ml)、ジグライム1ml及び3,4−ジアセトキシブテン−1(3,4−DABE)又は1,4−ジアセトキシブテン−2(1,4−DABE)を0.633mmol仕込み、68℃で反応を行った結果を図1に示した。どちらの原料でもほぼ100分程度で異性化反応が終了し、平衡濃度に達することが判明した。この場合もホスファイト化合物が存在する限りパラジウムの析出は認められなかった。
【0046】
実施例10,11及び比較例3(Pd系P19〜21使用例)
3,4−ジアセトキシブテン−1 1mol(6.3mmol)中に、Pd(OAc)2 21μmol(5mg)と前記ホスファイト化合物(P19)〜(P21)各々12mgを溶解させ、次いで酢酸(10μl)を加えて120℃で30分反応させた。結果を下記表2に示した。尚、いずれの系でもPd金属の析出は認められなかった。
【表2】
【0047】
実施例12(Pd系、P13使用)
Pd(dba)2 3.7mg(6.4μmol)と前記ホスファイト化合物(P13)40mg(51μmol)を、3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.3mmol)に120℃で溶解させ、ついでこの溶液10μlを、酢酸(1ml)と3,4−ジアセトキシブテン1 1ml(6.3mmol)を含む別のSchlenk tubeに加えて、120℃で3時間反応させた。モルバランスは99%以上であり、反応生成液を分析したところ、1,4−DABEが62%と3,4−DABEが38%含まれていた。また、この反応においてPd金属の析出は認められなかった。
【0048】
実施例13(酢酸量の影響)
下記表3に示した濃度のPd(OAc)2と3,4−DABEに対して4モル当量のビスホスファイト(P4)を、表3に示した量の酢酸と3,4−DABE 1ml(6.3mmol)を含むフラスコに加えて120℃で1時間反応させた。結果を表3に示した。また、この反応においてPd金属の析出は認められなかった。
【表3】
*においては、反応時間を15分間とした。
表3の結果より、酢酸の濃度が高い領域、即ちPd化合物濃度が低い領域では、モルバランスが98%以上と高くなることが分かる。
【0049】
実施例14〜21及び比較例4〜7(温度と時間の影響)
3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.3mmol)中にPd(OAc)2 1.5mg(6.7μmol)及び下記表4に示したホスファイト化合物26.8μmolを120℃で溶解させた。次いでこの溶液3μlを、酢酸(1ml)と3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.3mmol)を含む別のフラスコに加えて120℃で1時間又は140℃で3時間反応させた。結果を下記表4に示した。モルバランスは98%以上であり、反応生成液中には1,4−DABEと未反応の3,4−DABEのみが存在した。尚、いずれの系でもPd金属の析出は認められなかった。
【0050】
【表4】
120℃での平衡点においては、反応混合液中に1,4−DABEが63%、3,4−DABEが37%含まれていた。
【0051】
実施例22(追加実施例;Pt系、ホスファイトP13使用)
3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.3mmol)中に、Pt(acac)2 2.5mg(6.21μmol)と前記ホスファイト化合物(P13)10mg(13μmol)を溶解させ、次いで、酢酸(1ml)を加えて120℃で1時間反応させた。反応生成液をGC分析したところ、1,4−DABEが17mol%(tranc/cis=4.5)と3,4−DABEが83mol%含まれていた。また、この反応においてPt金属の析出は認められなかった。
【0052】
実施例23(追加実施例;Rh系、ホスファイトP13使用)
3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.3mmol)中に、[Rh(COD)OAc]2 1.8mg(3.5μmol)と前記ホスファイト化合物(P13)10mg(13μmol)を溶解させ、次いで酢酸(1ml)を加えて120℃で1時間反応させた。反応生成液をGC分析したところ、1,4−DABEが6.3%(tranc/cis=4.3)と3.4−DABEが92%含まれていた。また、この反応においてRh金属の析出は認められなかった。
【0053】
実施例24(追加実施例;Ni系、ホスファイトP4使用)
3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.3mmol)中に、Ni(COD)2 8mg(29μmol)と前記ホスファイト化合物(P4)62mg(58μmol)を溶解させた。次いでこの溶液10μlを、酢酸(1ml)と3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.3mmol)を含む別のSchlenk tubeに加えて、120℃で1時間反応させた。反応生成液をGC分析したところ、1,4−DABEが0.8%(tranc/cis=8.8)と3,4−DABEが99%含まれていた。また、この反応においてNi金属の析出は認められなかった。
【0054】
実施例25(水存在下での異性化:H2O/CH3COOH=0.02)
3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.3mmol)中に、Pd(dba)2 3.7mg(6.4μmol)と前記ホスファイト化合物(P13)40mg(51μmmol)を120℃で溶解させた。次いでこの溶液3μlを、酢酸1ml、水20μl(1.1μmol)及び3,4−ジアセトキシブテン−1 1ml(6.4mmol)を含む別のSchlenk tubeに加えて、120℃で1時間反応させた。反応生成液をGC分析したところ、20%の1,4−DABEと80%の3,4−DABEが含まれており、モルバランスは99%以上であった。また、この反応においてPd金属の析出は認められなかった。
【0055】
比較例8(ホスファイト不存在下の例)
窒素置換した10mlのフラスコに3,4−ジアセトキシブテン−1(0.633mmol)、Pd(OAc)2 (0.06mmol)及びジグライム1mlを使用し、反応温度120℃で1時間反応を行った所、1,4−DABEの収率は1.3%であった。しかしながら、反応終了後のフラスコ表面にパラジウムの金属ミラーが観測された。
【0056】
比較例9
比較例8で使用したPd(OAc)2の代わりにPdCl2(0.06mmol)を使用した以外比較例1と同様の反応を行った。その結果、1,4−DABEの収率は58%であった。しかしながら、反応終了後フラスコ表面にパラジウムの金属ミラーが観測された。
【0057】
比較例10
比較例8で使用したPd(OAc)2の代わりにPdCl2(PPh3)2(0.06mmol)を使用した以外比較例1と同様の反応を行った。しかしながら、1,4−DABEの生成を検出できなかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、3,4−二置換ブテン−1及び/又は1,4−二置換ブテン−2等のアリル原料化合物を第8〜10族の金属化合物及びホスファイト化合物を含む触媒を用いて異性化させることにより、高転化率、高選択率で、且つ、金属の析出を抑制しつつ、対応する異性体である1,4−二置換ブテン−2及び/又は3,4−二置換ブテン−1等を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】3,4−ジアセトキシブテン−1及び1,4−ジアセトキシブテン−2の異性化反応速度。
Claims (14)
- 式(a′)で表される3,4−二置換ブテン−1を式(b′)で表される1,4−二置換ブテン−2に異性化するか、又は式(b′)で表される1,4−二置換ブテン−2を式(a′)で表される3,4−二置換ブテン−1に異性化するアリル化合物の製造方法において、異性化反応を周期律表第8〜10族の金属の化合物及び式( II )〜( VI )のいずれかで表されるホスファイト化合物の存在下に行うことを特徴とする方法。
(式中、R 6 及びR 7 はそれぞれアシルオキシ基を表す)
(式中、Z 1 〜Z 4 は置換基を有していてもよいビフェニルジイル基を表す。Tは炭素原子又はアルカンテトライル基を表す。A 1 は置換基を有するアリーレン基又はテトラメチレ
ン基を表す。A 2 及びA 3 は置換基を有していてもよいビフェニルジイル基又はアルキレン基を表す。R 13 〜R 21 はそれぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表す) - 式( II ′)において、Z 1 がそれぞれのベンゼン環に置換基としてt−ブ
チル基を有するビフェニルジイル基であり、R 13 が置換基を有していてもよいナフチル基であることを特徴とする請求項2記載の方法。 - 式( IV ′)において、A 1 は置換基としてt−ブチル基を有するビフェニ
ルジイル基であり、R 16 〜R 19 はそれぞれ置換基を有するフェニル基又は置換基を有していないナフチル基であることを特徴とする請求項5記載の方法。 - 式(a′)で表される3,4−二置換ブテン−1を式(b′)で表される1,4−二置換ブテン−2に異性化するか、又は式(b′)で表される1,4−二置換ブテン−2を式(a′)で表される3,4−二置換ブテン−1に異性化するアリル化合物の製造方法において、異性化反応を周期律表第8〜10族の金属の化合物及び式(V′)で表されるホスファイト化合物の存在下に行うことを特徴とする方法。
(式中、R 6 及びR 7 はそれぞれアシルオキシ基を表す)
(式中、A 2 は置換基を有するビフェニルジイル基を表す。Z 2 は置換基を有するビフェニルジイル基を表す。R 20 およびR 21 はそれぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表す) - 式(V′)において、A 2 及びZ 2 がそれぞれ置換基としてt−ブチル基を有するビフェニルジイル基であり、R 20 及びR 21 がそれぞれ置換基を有するフェニル基であることを特徴とする請求項7記載の方法。
- 異性化反応を酢酸の存在下に行うことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
- 周期律表第8〜10族の金属がパラジウムであることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
- 式(a′)及び(b′)において、R 6 及びR 7 がいずれもアセチルオキシ基であることとを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の方法。
- 式(a′)で表される3,4−二置換ブテン−1及び式(b′)で表される1,4−二置換ブテン−2の混合物を異性化反応に供して、3,4−二置換ブテン−1に対する1,4−二置換ブテン−2の比率を変化させることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の方法。
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