JP2005162682A - 非加熱蒸散剤 - Google Patents

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純郎 勝田
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Abstract

【課題】ファン式や自然蒸散式などの非加熱蒸散方式に適した有効成分を選択し、これを含有する有用な非加熱蒸散剤の提供。
【課題の解決手段】有効成分として、次式(I)
【化1】
Figure 2005162682

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)で表されるフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物を薬剤担持体に含有させた非加熱蒸散剤。好ましくは、薬剤担持体に遠心力及び/又はファンによる風力を作用させて有効成分を蒸散させる形態、ならびに薬剤担持体が200〜2000cm2の表面積を有するセルロース基材から成形され有効成分を自然蒸散させる形態。
【選択図】図4

Description

本発明は、有用なベンジルアルコールエステル誘導体を含有する非加熱蒸散剤に関するものである。
害虫、例えば蚊や蚋などを駆除するために、薬剤を閉鎖空間(建築物や自動車の室内、アウトドアスポーツにおけるテント内など)全体に蒸散、放出させる薬剤蒸散方法として、熱エネルギーを利用した蚊取線香や電気蚊取マット、液体式電気蚊取(リキッド)が一般的である。この方式に適用される有効成分は、30℃における蒸気圧が10〜30mPa程度のアレスリン、フラメトリン、プラレトリンが主体で、これらは100℃以上に加熱することにより効率的に蒸散するものの常温で蒸散させるのは難しい。一方、電源として乾電池を用い、薬剤含浸体にファン等の風をあてて常温で薬剤を蒸散、放出させるファン式薬剤蒸散装置も携帯用として実用化されている。後者の方式には、アレスリン、プラレトリンよりも蒸気圧の高いトランスフルトリン[2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート]や4−メトキシメチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2−ジメチル−3−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボキシレート[以降、化合物Mと称す]が使用され、熱エネルギーを必要としないことがメリットとなっている。
近年、ファンを駆動させるモーターをも具備せず、自然蒸散による蒸散方式を目指した提案もある。例えば特開平9−308421号公報は、折り畳み可能な紙製の穴を多数有する筒状体に常温揮散性の薬剤を保持させてなる防虫材を開示するが、筒状体の構造が複雑で製造性が良いとは言えない。また、特開2000−189032号公報には、繊維状の薬剤保持体として、多数のセルを接合してなるハニカム構造体が示されているが、特開平9−308421号公報と同様、製造性や蒸散の効率性において十分満足のいくものではなかった。これは、有効成分よりもハニカム構造体の検討に重点が置かれてきたことに一因し、事実これらの公報は種々の多岐にわたる有効成分を網羅する。従って、ファン式や自然蒸散式を含む非加熱蒸散剤に適した有効成分の検討は重要な課題であった。
特開平9−308421号公報 特開2000−189032号公報
本発明は、ファン式や自然蒸散式などの非加熱蒸散方式に適した有効成分を選択するとともに、これを含有する有用な非加熱蒸散剤を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、次のような構成を採用する。
(1)有効成分として、次式(I)
Figure 2005162682

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)で表されるフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物を薬剤担持体に含有させた非加熱蒸散剤。
(2)薬剤担持体に遠心力及び/又はファンによる風力を作用させて有効成分を蒸散させる形態である(1)に記載の非加熱蒸散剤。
(3)薬剤担持体が粒径2〜8mmのセルロース製ビーズである(2)に記載の非加熱蒸散剤。
(4)薬剤担持体が200〜2000cm2の表面積を有するセルロース基材から成形され、有効成分を自然蒸散させる形態である(1)に記載の非加熱蒸散剤。
本発明の非加熱蒸散剤は、有効成分として、蒸気圧が高く基礎殺虫活性に優れたフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物を含有し、その使用に当たっては、エアーコンディショナーや扇風機の風の当たる場所や、外気が入り込む窓などはもちろん、風通しの少ない場所でも設置可能である。そして、この非加熱蒸散剤によれば、屋内や屋外のペット小屋などで、蚊や蚋、ハエ、ユスリカなどの各種害虫に対し、簡便でしかも長期間にわたり優れた害虫防除効果を示すのでその実用性は極めて高い。
本発明で用いられる有効成分は、次式(I)
Figure 2005162682

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)で表されるフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物で、具体的には、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート(以降、化合物Aと称す)、及び4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート(以降、化合物Bと称す)である。これらは、ピレスロイド系殺虫成分に該当し、特開昭57−165343号公報において既に公知であるが、非加熱蒸散剤への適用に関する記載は全くない。
しかるに、本発明者らは、2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボン酸エステルの蒸散性に着目し、式(I)のフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物が、高い蒸散性を有するとともに基礎殺虫活性に優れ、非加熱蒸散剤の有効成分として極めて有用であることを知見したものである。
式(I)の化合物が適用される非加熱蒸散剤としては、薬剤担持体に遠心力及び/又はファンによる風力を作用させて有効成分を蒸散させる、いわゆるファン方式の形態や、薬剤担持体が相応の表面積を有し有効成分を自然蒸散させる形態などがあげられる。
現在使用されているトランスフルトリンや化合物Mは、ファン方式に有効なものの、自然蒸散型に適用した場合、風通しの少ない広い空間では薬剤の拡散性が幾分不足することがあるので、本発明の化合物は特に後者の方式に有用である。
前者のファン方式では、ハニカム状に形成した紙、パルプ等のセルロース系もしくは多孔質セラミック系の薬剤担持体に、そのまま静止状態でファンからの風力を当ててもよいが、好ましくは粒径2〜8mmのセルロース製(紙、パルプ、ビスコース等)ビーズからなる薬剤担持体を通気部が設けられたカートリッジに収納し、このカートリッジを回転させる方式を採用する。このように、遠心力が作用する状況下で薬剤を蒸散させることによって、より効率的な蒸散性能を奏しえる。なお、カートリッジをドーナツ状とし、その内側にファンを一体的に形成すると、蒸散性能の点で一層有利となり成型上の問題も生じない。
カートリッジの材質はポリエステルなどの薬剤非吸着性のものが好ましく、また、ファンやカートリッジを回転させるモーター駆動用の電源としては、乾電池が使いやすいが、太陽電池や蓄電池、あるいは交流電源も採用しうる。
一方、非加熱蒸散剤の形態が後者の自然蒸散型の場合には、十分量の薬剤を蒸散させるために、薬剤担持体の表面積として200〜2000cm2程度確保するのが好ましい。そして、薬剤担持体は、通常、空気の移動を受けて薬剤が蒸散しやすいように、セルロース基材を用いてハニカム構造体や段ボール積層体等に成形されたり、複数枚のプラスチック製の羽根部材を備えた風車型等に構成される。その外、例えば粉剤や粒剤形態とし、散布により薬剤を蒸散させるようにしてもよいし、また、紙、織布、不織布あるいはポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック基材からなるシート製剤としてもよい。更に、アダマンタン、シクロドデカン、トリイソプロピル−トリオキサン等の昇華性担体やポリビニルアルコール、アルギン酸、カラギーナン等のゲル化剤を用いた形態に調製することもできる。
式(I)の化合物を薬剤担持体に担持させるにあたっては、必要に応じ溶剤(エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、灯油等の炭化水素類、グリコール類、エステル類など)、希釈剤(ケイ酸、カオリン、タルク等の各種鉱物質粉末や、木粉、小麦粉等の各種植物質粉末など)、界面活性剤、分散剤、徐放化剤、噴射剤などを用い、従来から知られている各種処理手段を採用することができる。また、前記化合物に、安定剤、香料、着色剤、帯電防止剤などを適宜配合してもよく、更に、前記化合物の蒸散性能に支障をきたさない限りにおいて、蒸散性の高い他の殺虫成分(例えば、エムペントリン、トランスフルトリン、化合物M、フラメトリンなど)、忌避成分(例えば、ディート、ヒノキチオール、カルボン、サフロール、シトロネラール、ケイ皮アルデヒドなどの防虫香料など)、殺ダニ剤、殺菌剤、消臭剤などを添加して多目的組成物とすることもできる。
薬剤担持体に担持させる式(I)の薬剤量は、担持体の材質、使用場所、使用期間などを考慮して適宜決定すればよいが、通常30〜500mgが適当である。化合物の担持量が30mgより少ないと、害虫防除効果の持続性に不足を生じる場合があり、一方500mgを超えても使用期間が必要以上に延長されるだけで格別のメリットはない。
なお、薬剤担持量と連動する着色剤を担持させ、薬剤の蒸散終了を示すインジケーターとして利用することも可能である。
こうして得られた本発明の非加熱蒸散剤は、モーター等を駆動させて遠心力及び/又はファンによる風力、あるいはモーター等の駆動装置を使用せずに外部から受ける風力、例えばエアーコンディショナー、扇風機のエアーや、窓を通して入り込む風を利用して薬剤担持体から薬剤を蒸散させ、害虫防除効果を奏することはもちろん、風通しの少ない場面でも有効に害虫防除効果を発揮しうる。ここで、害虫防除効果とは致死に至る殺虫作用を必然とせず、蚊に対する刺咬阻止、忌避作用を含めた広義の防虫効果を意味する。なお、有効成分の蒸散量は使用場所や使用条件等にもよるが、1時間当たり0.01〜0.5mg程度である。
かかる本発明の成果は、本発明で用いる式(I)の有効成分が、従来のトランスフルトリンや化合物Mに比べて蒸気圧が高く、しかもすぐれた基礎殺虫活性を有することを踏まえ、種々の組み合わせを検討して初めて得られたものである。
そして、これを用いた本発明の害虫防除方法によれば、屋内はもちろん屋外のペット小屋などで、蚊や蚋、ハエ、ユスリカなどの各種害虫に対し、簡便でしかも長期間にわたり優れた害虫防除効果を示すので極めて実用性が高い。
次に、具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明の非加熱蒸散剤を更に詳細に説明する。
図1は本発明におけるファン方式の非加熱蒸散剤の一実施例の中央断面図を示す。
非加熱蒸散剤1は、薬剤担持体2を収納する環状カートリッジ3とこの内側に配設されたシロッコファン4と、これらを回転させて薬剤担持体2に担持させた薬剤を蒸散させるモーター5を備えている。モーター5を回転させると、遠心力とシロッコファン4による風力が生じ、上面吸気口6から流入した空気はカートリッジ3の内部を通り開口スリット(図示せず)から排気口7を経て流出するが、この空気の流れにのって薬剤担持体2に担持させた薬剤は空中に放散される。非加熱蒸散剤1は、電源としての乾電池8を収容し、外表面には電源スイッチ9が付設されている。
本実施例では、360時間用として、化合物A[2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート]100mgを、平均外径が約3mmの粒状発泡セルロースビーズ[商品名:ビスコパール(レンゴー株式会社製)]1.2gに含浸させて得られた薬剤担持体2を、外径6.5cm、内径4cm、高さ2cmの環状カートリッジ3に収納した。なお、環状カートリッジ3は、側面に高さ方向ほぼ全長に幅2mmの開口スリットを3mmおきに備えている。
また、本実施例の非加熱蒸散剤1は、モーター作動用電源がDC3.0Vで、モーター5の回転数が1200rpm仕様のものを用いた。
本非加熱蒸散剤1にカートリッジ3を装填し、25m3の和室で使用した。本非加熱蒸散剤1は、遠心力の作用とファンによる風力のダブル効果で和室内の薬剤拡散性にすぐれ、約360時間(1日12時間使用として約1ケ月)にわたり、蚊や蚋などの防除に有効であった。
図2は本発明における自然蒸散型の非加熱蒸散剤の一実施例の斜視図、及び図3はそれの保護カバーを装填した形態の断面図を示す。
風車10を次のとおり作製した。すなわち、針金を用いて薬剤担持体(羽根部材)2の外枠(短径6.5cm、長径7.5cmの略楕円)を6個形成し、その先端を固定部材11に差し込み、化合物B[4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート]が練りこまれたレーヨン繊維製シート[風車あたりの薬剤量:150mg]を薬剤担持体(羽根部材)2の外枠に張設して風車10を構成した。固定部材11と支持体軸部12の間に回転用ボールベアリング13を介装させて風車10を取り付け、更に風車10の周囲に保護カバー14を装填して本発明の非加熱蒸散剤1を得た。
非加熱蒸散剤1を風通しのよい犬小屋の壁に設置したところ、ボールベアリング13の作用で風車10がよく回転し、1時間当たりの薬剤蒸散量は平均で約0.11mgであった。本非加熱蒸散剤1は、電池や駆動装置を必要とせず簡便で使いやすく、犬はおよそ2ケ月間にわたり蚊に悩まされることがなかった。
図4は本発明における自然蒸散型の非加熱蒸散剤の他の実施例の斜視図を示す。
正背面部の厚さが2cmで側面部が横幅10cm×高さ5cmの直方状のポリエステル製プラスチックケース(15)2個と、その外側に横幅10cm×高さ5cmのポリエステル製プラスチック板16を並べ、それらの背面部で接合し正面部で開閉可能な合冊型に形成した。プラスチックケース(15)の左右両側面部に横幅8.5cm×高さ3.5cmの開口窓17を設置し、上下面部にもそれぞれ6個の外径1cmの開口窓17を設けた。横幅9.5cm×高さ24cmの紙(表面積:228cm2)を、横幅9.5cm×高さ4.5cmのひだ折り状(山折り部と谷折り部の個数:6個、ピッチ幅:6mm、山の高さ:16mm)とし、これに化合物A[2,3,5,6−テトラフルオロベンジル−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート]40mgを担持させてなる薬剤担持体2を作製した。この薬剤担持体2とともに脱落防止用のプラスチック製ネット18をそれぞれプラスチックケース(15)に収納して非加熱蒸散剤1(総薬剤担持量:80mg、総表面積:456cm2)を得た。
本非加熱蒸散剤1を風通しの少ない玄関の棚上に置いて使用したところ、電池や駆動装置を必要とせず簡便で使いやすく、およそ2ケ月間にわたり十分な害虫防除効果を示した。本非加熱蒸散剤1の有効成分は拡散性に優れ、1時間当たりの薬剤蒸散量が平均で約0.08mgの値であった。一方、比較試験として実施したトランスフルトリン製剤の場合、同条件における薬剤蒸散量は平均で約0.04mgと幾分低く、自然蒸散型において安定した効力を奏するには、風の作用を期待せざるを得なかった。
本発明におけるファン方式の非加熱蒸散剤の一実施例の中央断面図を示す。 本発明における自然蒸散型の非加熱蒸散剤の一実施例の斜視図を示す。 それの保護カバーを装填した形態の断面図を示す。 本発明における自然蒸散型の非加熱蒸散剤の他の実施例の斜視図を示す。
符号の説明
1:非加熱蒸散剤
2:薬剤担持体
3:カートリッジ
4:シロッコファン
5:モーター
6:吸気口
7:排気口
8:乾電池
9:電源スイッチ
10:風車
11:固定部材
12:支持体軸部
13:回転用ボールベアリング
14:保護カバー
15:プラスチックケース
16:プラスチック板
17:開口窓
18:プラスチック製ネット

Claims (4)

  1. 有効成分として、次式(I)
    Figure 2005162682

    (式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)で表されるフッ素置換ベンジルアルコールエステル化合物を薬剤担持体に含有させたことを特徴とする非加熱蒸散剤。
  2. 薬剤担持体に遠心力及び/又はファンによる風力を作用させて有効成分を蒸散させる形態であることを特徴とする請求項1に記載の非加熱蒸散剤。
  3. 薬剤担持体が粒径2〜8mmのセルロース製ビーズであることを特徴とする請求項2に記載の非加熱蒸散剤。
  4. 薬剤担持体が200〜2000cm2の表面積を有するセルロース基材から成形され、有効成分を自然蒸散させる形態であることを特徴とする請求項1に記載の非加熱蒸散剤。
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