JP2005154304A - ラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体、および用途 - Google Patents

ラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体、および用途 Download PDF

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Abstract

【課題】
化学性能、物理性能に優れ、かつ、柔軟性や基材との密着性に優れる硬化物を与え、さらに、良好な貯蔵安定性を有するラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体を提供する。
【解決手段】
ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートと、1分子中に環状酸無水基を1個以上有する化合物とを用い、該ヒドロキシル基と該環状酸無水基をハーフエステル化反応させて、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を得、さらに該化合物の該カルボキシル基と、モノビニル(チオ)エーテル化合物を付加反応させて得られるラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、新規なラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体、その製造方法、前記のラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体を含有する熱硬化性組成物および用途に関する。さらに詳しく言えば、本発明は、有機溶剤に対する溶解性や各種樹脂に対する相溶性に優れたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体、その製造方法、さらには、ラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体を含有する、良好な化学性能、物理性能および耐候性を有すると共に、特に貯蔵安定性に優れた熱硬化性組成物とその用途に関する。
従来、カルボキシル基を有する化合物と、該カルボキシル基と加熱により化学結合を形成しうる反応性官能基、例えば、エポキシ基、オキセタン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基、ケタール基等を有する化合物との組み合わせからなる熱硬化性組成物は公知である。
これらの熱硬化性組成物は、得られる硬化物の化学性能、物理性能さらには耐候性などが優れていることから、例えば、塗料、インク、接着剤、プラスチック成型品、あるいは感光性レジストなどの分野において広く利用されている。
しかしながら、カルボキシル基と前記反応性官能基とは反応性が高いため、カルボキシル基含有化合物と該反応性官能基を含有する化合物とが共存する組成物においては、貯蔵中にゲル化を起こしたり、可使時間が短くなるなど、その安定性が問題となる。また、カルボキシル基含有化合物はその強い水素結合のために、熱硬化性組成物中に共存する樹脂成分や有機溶媒に対して溶解性や相溶性が劣り、そのためその使用に関しては制限があった。
このような問題を解決する方法として、例えば、カルボキシル基をt−ブチルエステルとしてブロック化し、加熱によりイソブテン脱離分解により遊離のカルボキシル基を再生する方法などが提案されている。(特許文献1)
しかしながら、カルボキシル基をt−ブチルエステルとしてブロック化し、加熱によりイソブテン脱離分解により遊離のカルボキシル基を再生する方法は、カルボキシル基の再生に170〜200℃程度の高温を必要とし、必ずしも十分に満足しうる物性が得られるとはいえないなどの問題があった。
本発明者らは、先にポリカルボキシル化合物のカルボキシル基を単官能性ビニルエーテル等でブロックした潜在化カルボキシル化合物およびそれを含有する熱硬化性組成物を提案している(特許文献2)。上記化合物は比較的低い温度において遊離カルボキシル基を再生し、良好な化学性能、物理性能を有する硬化物を与えることが知られている。しかしながら、得られる硬化物は、主架橋方式がカルボキシル基とエポキシ基とのエステル結合であるため、耐熱性、耐久性の面では、優れた特性を発揮するものの、柔軟性や密着性、強靭性の面では、必ずしも満足いくものではない。
さらに、本発明者らは、前述の問題を解決した、1分子中にカルボキシル基とヒドロキシル基をそれぞれ1個以上有する化合物とビニルエーテル化合物を反応させたヒドロキシ酸ポリへミアセタールエステル誘導体およびそれを含有する熱硬化性組成物を提案している(特許文献3)。
上記化合物は、カルボキシル基とヒドロキシル基の異なる官能基を再生することから、それを含有する熱硬化性組成物は、エステル結合とエーテル結合の2つの架橋方式による高耐熱性、高耐久性、高密着性、高強靭性の硬化物を与えるが、カルボキシル基とヒドロキシル基は、硬化システムの特性上、同一の硬化触媒は使用できず、目的とする硬化物を得るには、非常に高い硬化温度を必要とする。
特開平1−104646号公報 欧州特許出願公開公報第643,112号明細書 特願2001−284310号公報
本発明の第1の目的は、比較的低い温度において、化学性能、物理性能、さらには耐候性などに優れる硬化物を与えると共に、かつ良好な貯蔵安定性を有し、有機溶剤および樹脂との相溶性に優れた熱硬化性組成物を構成するラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、前記のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体の製造方法を提供することにある。
またさらに、本発明の第3の目的は、前記のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体を用いた熱硬化性組成物を提供することにある。
また、本発明の第4の目的は、前記の熱硬化性組成物を硬化してなる硬化物および用途を提供することにある。
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する熱硬化性組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、潜在化されたカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を同一分子中にそれぞれ1個以上有する化合物を得て、さらに、前記成分と、前記の潜在化されたカルボキシル基と化学結合を形成しうる反応性官能基2個以上を有する化合物とを必須成分とする熱硬化性組成物が、熱硬化後、緻密な架橋構造を有し、種々の硬化膜特性の向上に寄与することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[11]である。
[1] ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートと、1分子中に環状酸無水基を1個以上有する化合物を用い、該ヒドロキシル基と該環状酸無水基をハーフエステル化反応させて、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を得、さらに該化合物の該カルボキシル基と、モノビニル(チオ)エーテル化合物を付加反応させて得られるラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体。
[2] 下記式(1)で表される前記の[1]に記載のラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体。
Figure 2005154304
[(ここで、m、nは1〜6の整数、RおよびRは炭素数1〜50の有機基であり、Rは水素原子またはCH基であり、Aは下記式(2)または(3)で表される基を示す。)
Figure 2005154304
(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基、Rは炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子である。)
Figure 2005154304
(式中、R、Rはそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基、R10は2価の炭素数1〜18の有機基、R11は2価の炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子であり、Yをヘテロ原子とする複素環を形成する。)]
[3] 次の工程Iおよび工程IIを行うことを特徴とするラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体の製造方法。
工程I:ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを原料とし、該ヒドロキシル基に、1分子中に環状酸無水基を1個以上有する化合物をハーフエステル化反応させる工程。
工程II:さらに、生成したカルボキシル基に対して、モノビニル(チオ)エーテル化合物を付加反応させる工程。
[4] 前記の工程Iの反応において、触媒として塩基触媒を使用する前記の[3]に記載のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体の製造方法。
[5]前記の[1]または[2]に記載のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体を重合することにより得られる重合体。
[6] A成分;前記の[1]または[2]に記載のラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体と、
B成分;カルボキシル基と化学結合を形成しうる反応性官能基を1分子中に2個以上有する化合物とを含有してなることを特徴とする熱硬化性組成物。
[7] さらに、C成分:酸触媒とを含有してなる前記の[6]に記載の熱硬化性組成物。
[8] C成分の酸触媒が、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒である前記の[6]または[7]に記載の熱硬化性組成物。
[9] B成分の反応性官能基が、エポキシ基、オキセタン基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基およびケタール基の中から選ばれた少なくとも1種である前記の[6]〜[8]のいずれかに記載の熱硬化性組成物。
[10] 前記の[6]〜[9]のいずれかに記載の熱硬化性組成物を硬化してなる樹脂硬化物。
[11] 前記の[6]〜[9]のいずれかに記載の熱硬化性組成物を硬化して用いる電子部品。
本発明によれば、各種の有機溶媒に対する溶解性や樹脂に対する相溶性に優れ、ラジカル重合により重合体を与えるラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)が提供される。
また、本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)を配合することにより、貯蔵安定性にも優れる熱硬化性組成物が提供される。
さらに、本発明の熱硬化性組成物を硬化することにより、柔軟性や耐久性、基材との密着性に優れた樹脂硬化物と、これら性能を生かした電子部品とが提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)は、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(a1)と、1分子中に環状酸無水基を1個以上有する化合物(a2)とを用いて、該ヒドロキシル基と該環状酸無水基をハーフエステル化反応させて、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a12)を得、さらに化合物(a12)の該カルボキシル基とモノビニル(チオ)エーテル化合物(a3)を付加反応させて得られる。
本発明のラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体(A)は、下記式(1)で表される。
Figure 2005154304
[(ここで、m、nは1〜6の整数、Rは炭素数1〜50の2〜12価の有機基であり、具体的には、例えば、炭素数1〜50の置換または無置換の炭化水素あるいは置換または無置換の芳香族基等である。
は、炭素数1〜50の2価の有機基であり、具体的には、例えば、炭素数1〜50の置換もしくは無置換のアルキル基またはグリコール残基である。
は、水素原子または水素原子またはCH基である。
は、下記式(2)または式(3)で表される基を示す。
Figure 2005154304
(式中、R、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基、Rは炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子である。)
Figure 2005154304
(式中、R、Rはそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基、R10は2価の炭素数1〜18の有機基、R11は2価の炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子であり、Yをヘテロ原子とする複素環を形成する。)]
前記式(2)における、R、RおよびRは、それぞれ水素原子または炭素数1〜18の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の有機基、Rは、炭素数1〜18の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の有機基であって、これらの有機基は、適当な置換基を有していてもよく、Yは酸素原子またはイオウ原子である。
前記式(3)におけるR、Rは、それぞれ水素原子または炭素数1〜18の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の有機基、これらの有機基は、適当な置換基を有していてもよく、R10は2価の炭素数1〜18の有機基、R11は2価の炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子であり、Yをヘテロ原子とする複素環を形成する。
本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)は、次の方法により製造することができる。
すなわち、工程Iの反応として、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(a1)の該ヒドロキシル基に、1分子あたり環状酸無水基を1個以上有する化合物(a2)を開環ハーフエステル化反応させ、次いで工程IIの反応として、前記の工程Iの反応で得られた化合物を出発原料として、この化合物の新たに生成したカルボキシル基に対して、モノビニル(チオ)エーテル化合物(a3)を付加させることにより、該カルボキシル基がブロック化されたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)が得られる。
前記の一連の2段階の反応は、逐次行ってもよいし、中間反応物を一旦回収することなく、同一反応容器中で継続して行ってもよい。
次に、ラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)の製造に用いる原料について説明する。
前記のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(a1)としては、下記の式(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005154304
(ここで、Rは、Rは炭素数1〜50の有機基であり、Rは水素原子またはCH基である。)
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
前記のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(a1)としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;プロピレングリコールポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の各種ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の多価アルコール−(メタ)アクリル酸エステル類;メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種アルコキシ(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート等のグリシジル(メタ)アクリレートのフェノール類またはカルボン酸付加物;2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジカルボン酸アルキレンオキサイド付加物のモノ(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
これらのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(a1)の中でも、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートが、反応性、入手性の点から好ましい。
前記の原料(a1)は1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。
1分子中に1個以上の環状カルボン酸無水基を有する化合物(a2)としては、次の1)、2)の化合物が挙げられる。
1) 1分子中に1個の環状カルボン酸無水基を有する化合物。
より具体的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸等の芳香族カルボン酸無水物;無水コハク酸、無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸等の脂肪族カルボン酸の無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ハイミック酸、無水クロレンド酸(商品名は無水へット酸)等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
2) 1分子中に2個以上の環状カルボン酸無水基を有する化合物。
より具体的には、無水ピロメリット酸3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族カルボン酸無水物;ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族カルボン酸の無水物;水添無水トリメリット酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
前記の1分子中に環状酸無水基を1個以上有する化合物(a1)は、環状カルボン酸無水基以外の官能基を有していてもよく、カルボキシル基を有している場合、該カルボキシル基は工程IIで、前記のビニル(チオ)エーテル(a3)と反応し、本発明の自己架橋性樹脂(A)の潜在性活性基の一部として機能させることができる。具体的には、例えば、無水トリメリット酸等のベンゼンポリカルボン酸の一部が無水物を形成したものや、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸等のシクロアルカンポリカルボン酸の一部が無水物を形成したもの等が好適に使用することができる。
これらの環状酸無水物(a2)の中でも、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が、入手性の点と、得られる自己架橋性樹脂(A)の溶剤や樹脂に対する溶解性の点から好ましく挙げられる。
前記の原料(a2)は1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。
モノビニル(チオ)エーテル化合物(a3)としては、下記の式(5)または式(6)で表される鎖状または環状ビニル(チオ)エーテル化合物が挙げられる。なお、モノビニル(チオ)エーテルとは、モノビニルエーテルまたはモノビニルチオエーテルを意味する。
Figure 2005154304
(ここで、R、R、R、R、Yは式(2)に同じであり、R、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基、Rは炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子である。)
Figure 2005154304
(ここで、R、R、R10、R11、Yは式(3)に同じであり、R、Rはそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基、R10は2価の炭素数1〜18の有機基、R11は2価の炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子であり、Yをヘテロ原子とする複素環を形成する。)
前記式(5)で表される鎖状のビニル(チオ)エーテルとしては、具体的には例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、2−エチルへキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;ヒドロキシエチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ヘキサンジオールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のヒドロキシル基を含むビニルエーテル類;エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル等のアルキレングリコールアルキルビニルエーテル類;アミノプロピルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等のその他のビニルエーテル類、およびこれらに対応するビニルチオエーテル類が挙げられる。
またさらに、前記式(6)で表される環状のビニル(チオ)エーテル化合物としては、具体的には例えば、2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−2−カルボン酸ナトリウム、およびこれらに対応する環状ビニルチオエーテル化合物などが挙げられる。
前記のモノビニル(チオ)エーテル化合物(a3)のなかでも、脂肪族ビニルエーテルが入手性および工程Iで生成するカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a12)との反応性の点から好ましく挙げられる。
前記の原料(a3)は1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。
次に、前記の工程Iおよび工程IIについて述べる。
まず、工程Iのヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(a1)の該ヒドロキシル基と1分子あたり環状酸無水基を1個以上有する化合物(a2)との開環ハーフエステル化反応は、ヒドロキシル基1モルに対して、環状酸無水基1モルが反応して、該環状酸無水基が開環して遊離のカルボキシル基1モルが生成する反応である。この開環ハーフエステル化反応は、公知の方法で行うことができ、例えば、有機溶媒中で室温〜200℃の温度で行うことができる。
工程Iの開環ハーフエステル化反応における原料(a1)と(a2)の使用比率は、目的に応じて、任意に選択することができるが、通常、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート(a1)の該ヒドロキシル基1モルあたり、環状酸無水基が0.2〜2モル、好ましくは0.5〜1.5モル、さらに好ましくは、0.8〜1.2モルになるように(a2)成分を用いるのが適している。
工程Iの開環ハーフエステル化反応に際しては、反応を促進するために有機アミン化合物などの触媒を使用することができる。具体的には、そのような触媒としては、例えば、メチルアミン、ブチルアミン、t−ブチルアミン、アミルアミン、オクチルアミン、シクロへキシルアミン、s−ブチルアミン、エチルアミン、ビニルメチルアミン、アリルアミン、エトキシメチルアミン等の第1級アミン類;ジヘキシルアミン、ジドデシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアミルアミン、ジメチルアミン等の第2級アミン類;トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;フェニルプロピルアミン、フェニルエチルアミン、メトキシベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、ベンジルアミン、ジメチルベンジルアミン等のベンゼン環を有する脂肪族アミン類;モルホリン、メチルモルホリン等のモルホリン誘導体;t−ブチルアニリン等のアニリン誘導体;ジメチルトルイジン等の芳香族アミン類;2−ヒドロキシピリミジン、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン等のピリジン誘導体;ピペリジン、メチルピペリジン、ベンジルピロリジン等のピペリジン誘導体;メチルピロリジン等のピロリジン誘導体;ピロール等のピロール誘導体;2−ヒドロキノリン、3−ヒドロキノリン、4−ヒドロキノリン、2−メチルキノリン、4−メチル−8−ヒドロキノリン等のキノリン誘導体;ベンゾイミダゾール、メチルイミダゾール、イミダゾール等のイミダゾール誘導体;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
また、ジブチルすずジラウレートやブチルチンオキシアセテートなどの有機スズ化合物も反応を促進させる触媒として使用することができる。
前記の触媒は、1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。
前記の触媒の使用量は、原料である化合物(a1)と化合物(a2)との合計量100重量部に対して、好ましくは、0.005〜10重量部であり、より好ましくは、0.01〜5重量部である。
次に、工程IIの反応に関して述べる。
前記の工程Iで得られた中間原料(a12)を出発原料として、これに前記にモノビニル(チオ)エーテル化合物(a3)を付加反応させることによって、本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)を得る反応である。
この付加反応は、それ自体既知の方法で行うことができ、例えば、室温〜200℃の温度で行うことができる。
工程IIの付加反応における原料(a12)と(a3)の使用比率は、目的に応じて、任意に選択することができるが、通常、開環ハーフエステル化物(a12)の生成カルボキシル基1モル当たり、ビニルエーテル基が0.2〜2モル、特に0.5〜1.5モルになるように(a3)成分を用いるのが適している。
工程IIのブロック化反応に際しては、反応を促進させる目的で酸触媒を使用することができる。そのような触媒としては、例えば、下記の式(7)で表される酸性リン酸エステルが挙げられる。
Figure 2005154304
(式中のR12は炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基、hは1または2である。)
より具体的には、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール等の第一級アルコール類、およびイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノール等の第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
前記の触媒は、1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。
酸触媒の使用量は、特に制限はないが、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートの該ヒドロキシル基に環状酸無水物を開環ハーフエステル化反応させた化合物とモノビニル(チオ)エーテル化合物(a3)の合計量100重量部に対して、通常、0.0005〜5重量部が好ましく、特に、0.001〜1重量部が好ましい。
合成するラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体の分子量、その誘導体を使用する用途、選択する配合系にもよるが、通常、得られる誘導体の酸価は、50mgKOH/g以下である。より好ましくは、誘導体の酸価は10mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは、5mgKOH/g以下である。
特に、フラックスやはんだペーストに本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体を用いる場合には、誘導体の酸価が低い方が、保存性等においてより安定性に優れるので望ましい。
また、前記の反応系を均一にして、反応を容易にする目的で有機溶媒を使用することができる。そのような有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレピン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル等のエステルおよびエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;さらに、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール誘導体が挙げられる。
より好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
前記の有機溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。前記の有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、通常、5〜95質量部、好ましくは、20〜80質量部である。
全2段階の反応において、有機溶媒は、同一の、あるいは相異なる溶媒を用いることができ、後段の工程IIの反応においては、前段階で用いた溶媒の一部または全部を留去等の方法で除去してもよいし、除去せず、そのままあるいはさらに溶媒を追加して使用してもよい。
本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)は、単独であるいは重合開始剤の存在下で重合することにより、重合体が得られる。この重合体は、慣用のラジカル重合と同様の手法で得ることができる。ここで、用いられる重合開始剤としては、具体的には例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケテール類;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルへキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキシン等のジアルキルパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルへキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−ミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシマレエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−へキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−へキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、アセチルシクロへキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のパーオキシエステル類;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロへキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔2−(1−ヒドロキブチル)〕−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキエチル)−プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロへキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジスルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリジン−2−イル)プロパン〕ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン〕、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等のアゾ化合物などが挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
より好ましくは、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)や3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンが挙げられる。
また、本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)は、他のラジカル重合性単量体を共重合させることにより、重合体を得ることもできる。ここで、用いられるラジカル重合性単量体とは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、p−ビニルトルエン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのヒドロキシル基にε−カプロラクトンを付加した単量体、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロール化(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール化(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有単量体のカルボキシル基を前記のビニルエーテル化合物でブロック化した単量体、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができ、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。これらの単量体のうち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレンが特に好ましい。
本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)は、前記の重合開始剤とラジカル重合性単量体を有機溶媒中で30〜120℃の温度範囲で重合することが望ましい。ここで、重合温度が、30℃未満の場合、重合反応が完結しないため好ましくなく、また、120℃を超える場合は、式(1)のビニルエーテルによるブロックが外れる恐れがあるため好ましくない。有機溶媒としては、種々の溶媒が挙げられ、その具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン類、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテル類などが挙げられる。有機溶剤は、1種または2種以上を組合わせて用いることができる。
重合開始剤の添加量は、本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)と前記ラジカル重合性単量体はの合計量100重量部あたり、通常、0.1〜30重量部の範囲で選ばれる。重合開始剤の量が0.1重量部未満では、重合転化率が低下し、単量体が残存するため、また、30重量部を超える場合は、反応熱が高くなり、式(1)のビニルエーテルによるブロックがはずれるおそれがあるため好ましくない。
さらに、本発明の熱硬化性組成物は、A成分として、ラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体と、B成分としてラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体と反応する基を2個以上有する化合物を用いる。前記のA成分のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。B成分として、前記のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体と反応する基を2個以上有する化合物は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
本発明に用いるB成分の化合物としては、前記A成分が加熱により遊離カルボキシル基を再生した際、これと反応して化学結合を形成しうる反応性官能基2個以上、好ましくは2〜50個を1分子中に有するものが挙げられる。
該反応性官能基については、カルボキシル基と反応する性質を有するものであればよく、特に制限はないが、例えば、エポキシ基、オキセタン基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基、ケタール基などが好ましく挙げられる。B成分中には、これらの反応性官能基は、1種含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
このようなB成分の化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどの単独重合体または共重合体などのエポキシ基含有化合物が挙げられ、さらに、ポリカルボン酸あるいはポリオールとエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジル化合物などのエポキシ基含有化合物が挙げられる。より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が挙げられる。
さらに、式(8)で表される化合物の縮合体が挙げられる。
(R13−Si−(OR144−k ・・・(8)
(式中のR13およびR14は、それぞれ炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基、kは0、1または2である。)
またさらに、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリ−n−ブトキシシランなどのα,β−不飽和シラン化合物の単独重合体または共重合体、およびこれらの化合物の加水分解生成物などのシラノール基やアルコキシシラン基含有化合物;脂肪族ポリオール類、フェノール類、ポリアルキレンオキシグリコール類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのα,β−不飽和化合物の単独重合体または共重合体、およびこれらのポリオール類のε−カプロラクトン付加物などのヒドロキシル基含有化合物;脂肪族、芳香族のジアミノ化合物やポリアミノ化合物および前記ポリオールのシアノエチル化反応生成物を還元して得られるポリアミノ化合物などのアミノ基含有化合物;脂肪族、芳香族ポリイミノ化合物などのイミノ基含有化合物;p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、メチレンビス(フェニルイソシアネート)、リジンメチルエステルジイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)フマレート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエートおよびこれらのビュレット体やイソシアヌレート体、さらにはこれらのイソシアネート類と前記ポリオールとのアダクト化合物などのイソシアネート基含有化合物;前記イソシアネート基含有化合物のフェノール類、ラクタム類、活性メチレン類、アルコール類、酸アミド類、イミド類、アミン類、イミダゾール類、尿素類、イミン類、オキシム類によるブロック体などのブロック化イソシアネート基含有化合物;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピレンカーボネートの単独重合体または共重合体、前記エポキシ基含有化合物と二酸化炭素との反応により得られる多価シクロカーボネート基含有化合物などのシクロカーボネート基含有化合物;前記多価ヒドロキシル基含有化合物とハロゲン化アルキルビニルエーテル類との反応によって得られる多価ビニルエーテル化合物、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類と多価カルボキシル基含有化合物や前記ポリイソシアネート化合物との反応により得られるポリビニルエーテル化合物、ビニルオキシアルキル(メタ)アクリレート類とα,β−不飽和化合物との共重合体などのビニルエーテル化合物、およびこれらに対応するビニルチオエーテル化合物などのビニルエーテル基やビニルチオエーテル基含有化合物;メラミンホルムアルデヒド樹脂、グリコリルホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、アミノメチロール基やアルキル化アミノメチロール基含有α,β−不飽和化合物の単独重合体または共重合体などのアミノメチロール基やアルキル化アミノメチロール基含有化合物;多価ケトン、多価アルデヒド化合物、前記多価ビニルエーテル化合物などとアルコール類やオルソ酸エステル類との反応によって得られる多価アセタール化合物、およびこれらとポリオール化合物との縮合体、さらには前記ビニルオキシアルキル(メタ)アクリレートとアルコール類やオルソ酸エステルとの付加物の単独重合体または共重合体などのアセタール基やケタール基含有化合物などが挙げられる。
オキサゾリン基を含有する化合物としては、例えば、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,6−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ヘキサン、1,8−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)オクタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,2−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン等が挙げられる。
前記のオキサゾリン基を含有する化合物の市販品としては、例えば、2−エチル−2−オキサゾリンを1〜5モル%をアクリル系モノマーなどと共重合させた日本触媒化学(株)製、商品名「エポクロスK−1000」および「エポクロスK−2000」シリーズ(数平均分子量70,000〜80,000)等があり、好適に使用できる。
オキセタン基を含有する化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、ジ〔1−エチル(3−オキセタニル)〕メチルエーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、1,4−ビス〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ベンゼン、1,3−ビス〔(1−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ベンゼン、4,4’−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ビフェニル、フェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
本発明の熱硬化性組成物においては、B成分の化合物として、1種の反応性官能基を有する前記化合物の他に、前記の反応性官能基を2種以上を有する化合物を用いても良い。また、該B成分は、1種単独で配合しても良いし、2種以上を組み合わせてもよい。ただし、この際、それぞれの官能基が互いに活性である組み合わせは、貯蔵安定性が損なわれるので好ましくない。
このような好ましくない組み合わせとしては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル、シクロカーボネ−ト基およびシラノール基の中から選ばれる官能基とアミノ基またはイミノ基との組み合わせ、イソシアネ−ト基またはビニルエーテル基とヒドロキシル基との組み合わせなどが挙げられる。
本発明の熱硬化性組成物のA成分のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体は、加熱下において、遊離カルボキシル基を再生し、B成分の反応性官能基と化学結合を形成するものである。この反応の他に、さらに分子内分極構造に基づく、いわゆる活性エステルとしてB成分の反応性官能基に付加反応を起こし得る。この際には、架橋反応時に脱離反応を伴わないため、揮発性有機物質の排出低減にも貢献することができる。
前記のA成分とB成分の混合比については、A成分が加熱下において生じる遊離カルボキシル基と、これらの官能基と加熱により化学結合するB成分の官能基とが当量比0.1:0.9〜0.9:0.1の割合になるように各成分を含有することが好ましい。前記のA成分とB成分の当量比が範囲外であると、熱硬化が不十分となり、得られる硬化物および成型品の機械特性値が低下する恐れがあり、好ましくない。
本発明の熱硬化性組成物においては、前記のA成分の化合物は1種類用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよいし、また前記のB成分の化合物は1種類用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
本発明においては、これらの組成物に、場合により該組成物の長期にわたる貯蔵安定性を良好に保ち、かつ低温にて短時間で硬化する際に、硬化反応を促進し、硬化物に良好な化学性能および物理性能を付与する目的で、C成分として加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒を含有させることができる。
この熱潜在性酸触媒は、60℃以上の温度において、酸触媒活性を示す化合物が望ましい。この熱潜在性酸触媒が60℃未満の温度で酸触媒活性を示す場合、得られる組成物は貯蔵中に増粘したり、ゲル化したりするなど、好ましくない事態を招来する恐れがある。該C成分の熱潜在性酸触媒としては、プロトン酸をルイス塩基で中和した化合物(i)、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物(ii)、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物(iii)、スルホン酸エステル類(iv)、リン酸エステル類(v)、オニウム化合物類(vi)、およびアルミニウム錯体から誘導される化合物(vii)が好ましく挙げられる。
該プロトン酸をルイス塩基で中和した化合物(i)としては、例えばハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノおよびジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノおよびジエステル類、等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロへキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエチノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミンもしくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには、酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュアー2500X、X47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリーズ社製)などが挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物(ii)としては、例えばBF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を前記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。あるいは上記ルイス酸とトリアルキルホスフェートとの混合物(iii)も挙げられる。該スルホン酸エステル類(iv)としては、例えば式(9)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2005154304
(式中のR15はフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基またはアルキル基、R16は一級炭素または二級炭素を介してスルホニルオキシ基と結合している炭素数3〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基、飽和もしくは不飽和のシクロアルキルまたはヒドロキシシクロアルキル基である)
前記の化合物としては、具体的には例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類とn−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノ−ルなどの第一級アルコール類またはイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノ−ル、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール類とのエステル化物、さらには前記スルホン酸類とオキシラン基含有化合物との反応により得られるβ‐ヒドロキシアルキルスルホン酸エステル類などが挙げられる。
該リン酸エステル類(v)としては、例えば、工程Iで用いることのできる前記の酸触媒、すなわち前記の式(7)で表される化合物が挙げられる。
また該オニウム化合物(vi)としては、例えば式(10)〜(13)
[R17 NR18+・X- ・・・・・(10)
[R19 PR20+・X- ・・・・・(11)
[R21 OR22+・X- ・・・・・(12)
[R23 SR24+・X- ・・・・・(13)
(式中のR17、R19、R21、R23は炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基またはシクロアルキル基であって、2個のR17、R19、R21、R23は互いに結合してN、P、OまたはSをヘテロ原子とする複素環を形成していてもよく、R18、R20、R22、R24は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、X-はSbF -、AsF -、PF -またはBF -である)で表される化合物などが挙げられる。
また、触媒としてアルミニウム錯体から誘導される化合物(vii)を使用することができる。具体的には、オクチル酸アルミニウム等の金属石鹸、β−ジケトネートアルミニウム錯体、β−ジケトエステラートアルミニウム錯体、o−カルボニルフェノレートアルミニウム錯体が挙げられる。上記アルミニウム錯体の配位子として用いられるβ−ジケトンとしては、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、2,4−ペンタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、5−ジメチル−2,4−へキサンジオン、5−フェニル−2,4−ペンタンジオン、2,6−ジメチル−3,5−へプタンジオン、2,6−テトラメチル−3,5−ペンタンジオン等が挙げられる。
また、β−ジケトエステルとしては、エチルアセトアセテート、プロピルアセトアセテート、ブチルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテート、エチルベンゾイルアセテート等が挙げられ、o−カルボニルフェノールとしては、2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド、2’−ヒドロキシ−アセトフェノン、メチル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
さらに、活性力を高めるために、上記アルミニウム錯体にさらにシラノール化合物を混合したアルミニウム錯体を用いてもよい。そのようなシラノール化合物としては、トリフェニルシラノール、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、へキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカトリフルオロデシルトリメトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン等が挙げられる。
本発明組成物において、C成分の熱潜在性酸触媒は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよく、またその添加量は本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)を含有する熱硬化性組成物の総固形分量100重量部あたり、通常0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。熱潜在性酸触媒の量が0.01重量部未満では触媒効果が十分に発揮されず、また、10重量部を超えると、最終的に得られる硬化物が着色したり、耐水性が低下したりすることがあり、好ましくない。
前記のC成分の他にさらに、光の照射により酸を発生する触媒の化合物を配合してもよい。光により酸を発生する触媒を配合した場合、ラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)が分解し、元のカルボキシル基を再生することから、露光後、アルカリ水溶液、あるいは有機溶剤などの現像液を用いて現像できる特徴が付与できる。前記の光の照射により酸を発生する触媒化合物としては、例えばアリールジアゾニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、2,6−ジニトロベンジル−p−トルエンスルホネート、α−p−トルエンスルホニルオキシアセトフェノンなどがある。市販品のスルホニウム塩としては、例えばサンエイドSI−60L、SI−80L、SI−100L(いずれも商品名、三新化学工業(株)製)などが使用し得る。
これらの光の照射により酸を発生する化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせても良い。その添加量は、本発明のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)を含有する熱硬化性組成物の総固形分100重量部あたり、0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。添加量が0.01重量部未満では触媒効果が充分に発揮されないし、10重量部を超える場合には、添加量に見合うだけの著しい増量効果が期待できない。
本発明の熱硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて熱可塑性樹脂、溶剤、着色顔料、フィラー、エラストマー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、流動調整剤等を配合することができる。
本発明の熱硬化性樹脂に用いる熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ロジン樹脂等が挙げられる。
本発明の熱硬化性樹脂に用いる溶剤としては、特に限定されない。通常の汎用溶剤の中から適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、前記のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)の製造時の反応に用いたものと同じ溶剤を使用することができる。
その添加量は、およそ、0〜50重量%である。
本発明の熱硬化性樹脂の製造は、主成分であるラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)をはじめとする諸成分を一括ないし逐次で配合して、羽根形撹拌機、デソルバー、ニーダー、ボールミル混練機、ロール分散機等を用いて、通常の方法で混合を行えばよい。
混合の温度は、混合成分にもよるが、通常、結露や溶剤の揮散を避ける為に、10〜30℃が好ましい。
本発明の熱硬化性組成物は、熱硬化することによって、好ましい樹脂硬化物を得ることができる。硬化に用いる装置は、特に制限はなく、密封式硬化炉や連続硬化が可能なトンネル炉等の硬化装置を採用することができる。加熱源は、特に制約されることなく、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等の方法で行うことができる。
硬化に要する温度および時間については、ラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)が遊離カルボキシル基を再生する温度、反応性官能基の種類、熱潜在性触媒の種類などにより異なるが、通常、50〜250℃の範囲の温度で2分ないし10時間程度加熱することにより、硬化が完了する。
より好ましい、反応条件としては、反応温度として80〜200℃の範囲の温度、反応時間として10分ないし1時間程度加熱する条件が挙げられる。
本発明の熱硬化性組成物は、塗料、インク、接着剤、成型品等の汎用用途に加え、電子部品用途として、カラー液晶表示装置、カラービデオカメラなどに装着されるカラーフィルター、IC回路およびホトマスクの製造に関する感光性レジスト、実装基板等に部品を装着する際のはんだ付け用フラックスおよびフラックスを含有したはんだペースト等に用いることができる。
感光性レジストへの応用としては、前述の光の照射により酸を発生する化合物を使用し得る。照射する光としては、可視光線、紫外線、X線および電子線などが使用できる。露光した後、アルカリ性水溶液、あるいは有機溶媒などの現像液を用いて現像することによりポジあるいはネガパターンを得ることができる。その後、前述の加熱を行うことにより、つまり、通常の50〜200℃の範囲の温度で、2分ないし10時間程度加熱することにより、パターン化した硬化物を得ることができる。
このようにして得られたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A)を用いて硬化させた樹脂は、通常のヘミアセタールエステル誘導体に比較して、硬化膜の柔軟性に優れ、耐久性や基材との密着性に関しても優れた特徴を有する。
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
次に用いた測定方法、評価方法を示す。
1.<IRの測定条件>
機種;日本分光(株)製、FT/IR−600
セル;臭化カリウムを用いた液膜法
分解;4cm−1
積算回数;32回
2.<H−NMRの測定条件>
機種;日本ブルカー(株)製、400MHzのAdvance400
積算回数;16回
溶媒;CDCl、TMS基準
3.<13C−NMRの測定条件>
機種;日本ブルカー(株)製、400MHzのAdvance400
積算回数;1024回
溶媒;CDCl、TMS基準
4.<粘度測定>
機種;東機産業(株)製、EHD型粘度計
測定温度;25℃
5.<酸価の測定>
JIS K 0070−3(1992)の方法に準じて測定した。
実施例1;ラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A−1)の製造
<工程I>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた200mLの4つ口フラスコに、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸無水物23.3グラム、メチルエチルケトン27.0グラムを仕込み、温度を60℃に昇温し、同温度を維持しながら2−ヒドロキシエチルメタクリレート27.7グラムを滴下した。同温度を維持しながら2時間反応を続け、サンプリングした反応液の酸価の測定により、反応率が98%になったところで反応を終了した。
<工程II>
その後、系内の温度を65℃に上げて、n−ブチルビニルエーテル21.2グラムを滴下した。同温度で2時間反応を続け、混合物の酸価が5mgKOH/g以下になった時点で反応を終了した。放冷後、分液ロートに生成物を移し、10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100グラムでアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまで200グラムの脱イオン水で水洗を繰り返した。次いで、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥した後、浴温度35℃で減圧濃縮し、さらに残渣を真空ポンプで乾燥することにより、ラジカル重合性へミアセタール誘導体(A−1)61.9グラムを得た。仕込み組成、反応条件、粘度等の分析結果を表1に示す。
実施例2、3;ラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体(A−2、A−3)の製造
表1に示したように仕込み組成や条件を変更した以外は、実施例1と同様にして反応し、さらに精製して淡黄色のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A−2、A−3)を得た。実施例1と同様に仕込み組成と反応条件、粘度等の分析結果を表1に示す。
Figure 2005154304
表1中の成分および略号は、以下のものを示す。
*1) エピクロンB−4400(5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロへキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、大日本インキ化学工業(株)製、商品名)
*2) リカシッドTDA−100(3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、新日本理化(株)製、商品名)
実施例1〜3において得られたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A−1〜3)は、赤外吸収スペクトル測定(IRスペクトル)とH−NMR、13C−NMRより構造を確認した。実施例1〜3の化合物の構造を下記式(14)〜(16)に示す。また、実施例1で得られたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A−1)のIRスペクトルのチャートを図1に、H−NMRチャートを図2に、13C−NMRチャートを図2に示す。
Figure 2005154304
Figure 2005154304
Figure 2005154304
図1より、カルボン酸誘導体のカルボニルに由来する吸収が、1724cm−1に観察され、さらに、カルボキシル基に由来する2500〜3500cm−1付近のブロードな吸収が消失していることが確認できた。
図2より、ヘミアセタール構造に起因するピークが5.6ppmに観察され、メタクリレート構造に起因するピークが5.9ppmと6.1ppmに観察できた。
図3より、エステル構造のカルボニル炭素に起因するピークが167ppm付近と171ppm付近に、ヘミアセタール構造に基づくメチンカーボンのピークが100ppm付近に、メタクリレート構造に起因するピークが126ppm付近にそれぞれ観察された。
以上の結果より、得られたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A−1)は式(14)の構造であることが確認できた。
実施例4〜9
実施例1〜3で得られたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体(A−1〜3)を用いて、熱硬化性組成物を製造した。
配合組成を表2に示す。得られた熱硬化性樹脂を用いて、次の方法により硬化物を得た。
<硬化膜の物性測定方法>
試験片の作成は、陽極酸化されたブラシ研磨アルミニウム板上に、表2に記載した実施例4〜9の組成物を用いて、乾燥膜厚で50μmになるようにバーコーターにて塗装し、80℃で30分間プリベイクした後、180℃、60分間硬化させて試験片を作成した。
上記の方法により作成した硬化膜の試験片を用い、下記に示す試験方法により性能評価を行った。
(1)耐酸性−1
40重量%硫酸2mlを試験片上にスポット上に載せ、20℃で48時間放置後、硬化膜の異常を目視にて判定した。
(2)耐酸性−2
40重量%硫酸2mlを試験片上にスポット上に載せ、60℃で30分間加熱後、硬化膜の異常を目視にて判定した。
(3)耐酸性−3
試験片を0.1規定硫酸中に浸漬し、60℃で24時間保った後、硬化膜の異常を目視にて判定した。
(4)耐衝撃性
衝撃変形試験器[JIS K5400(1979)613.3 B法]を用い、半径6.35mmの撃ち型に試験片をはさみ、500gのおもりを40cmの高さから落下させた際の硬化膜の損傷を目視にて判定した。
(5)ヌープ硬度
(株)島津製作所製のM型微小硬度計にて20℃で測定した。数値の大きいほど硬いことを示す。
(6)アセトン抽出分
試験片をアセトン溶剤中で3時間抽出したのちの残存試験片重量(%)を求めた。
(7)キシレン払拭性
試験片を混合キシレン(JIS K2435品)で湿潤させたガーゼで強くこすり、10往復したのちの試験片表面を目視判定した。
(8)引張り強度、弾性率
(株)島津製作所製オートグラフAGS−Hを用いて測定した
(9)硬化膜Tg(℃)
TMA(セイコーインスツルメント(株)製TMA/SS150)を用い、10℃/分で昇温した時の硬化物の伸び率が急変する温度を硬化膜Tg(℃)とした。
(10)貯蔵安定性試験
表2で示した組成物10gを50℃で密封貯蔵し、30日間貯蔵後の状態を目視により観察した。
これらの結果を表2に示す。
<フォトレジストの性能評価>
なお、実施例8については、プリベイク後、ポジパターンを通して、UV照射装置としてトスキュアー401(商品名、東芝ライテック(株)製)を用い、高圧水銀灯で150mJ/cm密着照射し、次いで、アルカリ現像液NMD−3(商品名、東京応化工業(株)製)に25℃で60秒間ディップ現像してパターン化したものを180℃で60分間硬化させて試験片を作成した。
フォトレジストとしての高感度、高解像度の評価は次の評価による。
高感度;KODAK Contact Control Guide C−3を用い、150mJ/cmで露光後、上記方法で硬化膜を作成した。その結果、4ステップまで硬化膜が作成できることを確認した。
高解像度;上記方法で硬化膜を作成したところ、ラインアンドスペースが5μm×5μmまで形成できることを確認した。
Figure 2005154304
表2中の成分および略号は、以下のものを示す。
*1) 1,4−シクロへキサンジカルボン酸とイソプロピルビニルエーテルの付加反応物
*2) ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
*3) 東都化成(株)製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
*4) オクチル酸亜鉛とトリエタノールアミンを等モルで反応させた亜鉛錯体の80重量%シクロヘキサノン溶液
*5) 日本油脂(株)製「BTTB」(商品名)、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン
*6) 2,4−ジエチルチオキサントン
実施例4〜9では、透明性に優れた硬化膜が得られた。
表2より明らかなように、硬化膜性能において、本発明の実施例4〜7は、比較例1、2と比べて、均一でツヤのある硬化膜が得られ、耐酸性、耐衝撃性、硬度、耐久性、貯蔵安定性の全ての硬化膜特性において優れた性能を発揮することが確認できた。さらに、実施例8に関しては、高感度、高解像度性をも示し、優れた硬化樹脂となることがわかる。
図1は、実施例1で得られたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体の赤外吸収スペクトルチャートである。 図2は、実施例1で得られたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体のH−NMRチャートである。 図3は、実施例1で得られたラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体の13C−NMRチャートである。

Claims (11)

  1. ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートと、1分子中に環状酸無水基を1個以上有する化合物とを用い、該ヒドロキシル基と該環状酸無水基をハーフエステル化反応させて、カルボキシル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を得、さらに該化合物の該カルボキシル基と、モノビニル(チオ)エーテル化合物を付加反応させて得られるラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体。
  2. 下記式(1)で表される請求項1に記載のラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体。
    Figure 2005154304
    [(ここで、m、nは1〜6の整数、RおよびRは炭素数1〜50の有機基であり、Rは水素原子またはCH基であり、Aは下記式(2)または(3)で表される基を示す。)
    Figure 2005154304
    (式中、R、RおよびRはそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基、Rは炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子である。)
    Figure 2005154304
    (式中、R、Rはそれぞれ水素原子または炭素数1〜18の有機基、R10は2価の炭素数1〜18の有機基、R11は2価の炭素数1〜18の有機基、Yは酸素原子またはイオウ原子であり、Yをヘテロ原子とする複素環を形成する。)]
  3. 次の工程Iおよび工程IIを行うことを特徴とするラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体の製造方法。
    工程I:ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを原料とし、該ヒドロキシル基に、1分子中に環状酸無水基を1個以上有する化合物をハーフエステル化反応させる工程。
    工程II:さらに、生成したカルボキシル基に対して、モノビニル(チオ)エーテル化合物を付加反応させる工程。
  4. 前記の工程Iの反応において、触媒として塩基触媒を使用する請求項3に記載のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体の製造方法。
  5. 請求項1または請求項2に記載のラジカル重合性へミアセタールエステル誘導体を重合することにより得られる重合体。
  6. A成分;請求項1または請求項2に記載のラジカル重合性ヘミアセタールエステル誘導体と、
    B成分;カルボキシル基と化学結合を形成しうる反応性官能基を1分子中に2個以上有する化合物とを含有してなることを特徴とする熱硬化性組成物。
  7. さらに、C成分:酸触媒、
    とを含有してなる請求項6に記載の熱硬化性組成物。
  8. C成分の酸触媒が、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒である請求項6または7に記載の熱硬化性組成物。
  9. B成分の反応性官能基が、エポキシ基、オキセタン基、オキサゾリン基、シラノール基、アルコキシシラン基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シクロカーボネート基、ビニルエーテル基、ビニルチオエーテル基、アミノメチロール基、アルキル化アミノメチロール基、アセタール基およびケタール基の中から選ばれた少なくとも1種である請求項6〜8のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
  10. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物を硬化してなる樹脂硬化物。
  11. 請求項6〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物を硬化して用いる電子部品。
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