しかしながら、一例である成膜装置やエッチング装置に用いる放電発生部材に関して、材質としてアルミナは、セラミック材料としては最も広く普及している材料であるが、耐熱衝撃性に弱く且つ熱伝導率が低いため、高パワーの高周波電力を投入すると、局所的に高温になり、熱応力で破壊してしまうといった課題があり、また、窒化アルミニウムは、室温での誘電特性はアルミナと同等であり、その他の物性でアルミナより優れているが、RF波の透過率が使用時間とともに徐々に低下し、プラズマ処理速度が低くなるといった課題があった。
また、イットリア、YAGなどの材質は、耐食性について石英ガラス、アルミナ、窒化アルミニウムよりも優れるが、強度、耐熱衝撃性が低くなるため、高パワーの高周波電力が使用される条件では熱応力で破壊してしまうといった課題があった。
ところで、上述した石英ガラス、アルミナ、窒化アルミニウム、イットリア及びYAGを誘電体とした場合、比誘電率εrがいずれも12以下と低い値である。そして、これらの材質を反応容器として使用する場合、プラズマ密度を高める為には、印加電圧の出力を高めなければならないといった課題があった。
一般的に比誘電率εrの誘電体に対し、その誘電体の内部では電磁波の波長がおよそ1/εr1/2に短縮されるので、誘電体の比誘電率εrが大きいと誘電体を伝搬する電磁波の波長が短くなり、電磁界エネルギーを誘電体に集中させた後、放電することができるため、プラズマ密度が高まり、プラズマの放電が安定することが知られている。
従って、従来の反応容器に使用されている比誘電率の低い石英ガラス、アルミナ等は、プラズマ処理装置に用いる場合には、プラズマ密度を高める為に、出力を高めなければならないといった課題があった。
一方、比誘電率εrの値の高い材質として、一般的に共振器等に利用されているチタン酸バリウムや酸化チタン系セラミックスが挙げられる。この誘電体をプラズマ処理装置の反応容器として用いた場合、出力の大きな高周波電力を印加すると、結晶界面の応力を誘発して亀裂進展による絶縁破壊を招きやすく、プラズマ密度を向上させることが困難であった。つまり、高い高周波電力を印加すると放電電流が大きくなるものの、アーク放電が発生するので粒界部分の耐電圧を越えてしまうことにより絶縁破壊を起こしやすいものと考える。
特に、比誘電率εrが190以上の材料の代表としてチタン酸バリウム系のセラミックスがあるが、この材料はtanδの値が0.03以上と大きいので、電磁界エネルギーの多くが熱エネルギーに変換され、大きく発熱しやすく、電磁界エネルギーを効率良くプラズマに伝達できないため、プラズマ密度を向上させることが極めて困難であるという課題があった。
チタン酸バリウム系のセラミックスはtanδの値が大きいので、電磁界エネルギーの多くが熱エネルギーに変換され大きく発熱しやすく、電磁界エネルギーを効率良くプラズマに伝達できないため、プラズマ密度を向上させることが極めて困難であるという課題があった。
また、tanδの値が大きいと、特に反応容器の高周波印加用のRFコイルを配置する部分だけが発熱するため、反応容器の発熱状態に分布が生じるということがあった。プラズマ処理の際、反応ガスとして使用されているハロゲン系腐食性ガスは、反応容器の内壁面のセラミックスと反応して内壁面上にハロゲン化物を生成し、反応生成物として堆積するが、反応容器に生じた温度分布の要因で内周面の位置によっては堆積量に差が生じてしまう。そのため反応生成物の堆積が多い部分で、堆積可能な許容量を超えると、被処理物上に剥がれ落ちてパーティクルとなるという課題があった。
一方、放電発生部材を用いた一例であるレーザー発振器においては、上述の酸化チタン径セラミックスあるいはチタン酸バリウム系セラミックスを用いた場合は、放電発生部材の比誘電率の高さから放電電流が大きくなるものの、アーク放電が発生すると絶縁破壊を起こしやすいため、高出力の放電圧を得ることができないといった課題があった。
また、従来の放電発生部材として用いられている誘電体の酸化チタン系セラミックスやチタン酸バリウムといった単独の結晶相からなる放電発生部材は、電気的な絶縁破壊強度が強いことが知られているが、出力の大きな高周波電源により電圧を印加すると、結晶界面の応力を誘発して亀裂進展による絶縁破壊を招きやすいといった課題があった。
さらに、従来の放電発生部材は、放電時に電極のコーナー部に放電エネルギーが集中することによって、放電発生部材が破壊するという課題があった。
また、挿通するガスの解離等によりアーク放電が起こると、従来の放電発生部材は、表面に亀裂が発生したり、破壊したりするという課題があった。
そこで、特許文献11や12の材質がこれらの課題を解決する上で有効であったが、Na2Oの含有量に規定がなく、これらの材質を用いるとコンタミが発生するといった課題があった。
本発明は、上記の事情に鑑みて完成されたもので、その目的は従来の放電発生部材が有する問題点を解決し、低い周波数の電源からの印加電圧でも高い出力を得ることができ、且つ、高電圧放電やアーク放電発生時においても破壊されず安定で、コンタミやパーティクルの発生を抑制した放電効率の高い放電発生部材を提供することである。
本発明の放電発生部材は、焼結体がセラミック焼結体からなる放電発生部材において、上記焼結体のNa2O含有量が100ppm以下で、且つ、tanδが5×10−4以下、比誘電率εrが20以上であることを特徴とするものである。
また、本発明の放電発生部材は、上記焼結体の結晶相としてMgTiO3及びCaTiO3を含有し、平均ボイド占有率が5%以下、粒界層の厚みを20nm以下で、上記焼結体のMgがMgO換算で1〜15重量%含有することを特徴とするものである。
また、本発明の放電発生部材は、上記焼結体中に、Si、Mn、Ni、Ce及びCrから選ばれる少なくとも1種以上が、それぞれSiO2、MnO2、NiO、CeO2及びCr2O3換算で、合計が5重量%以下含有されていることを特徴とするものである。
また、本発明の放電発生部材は、上記焼結体の平均結晶粒径が1〜15μmの範囲であることを特徴とするものである。
さらに、本発明の放電発生部材は、上記焼結体の外周面に電極を形成したことを特徴とするものである。
またさらに、本発明の放電発生部材は、上記焼結体を筒状に形成するとともに、その外周に帯状の導電体の電極を形成してなり、上記導電体は、上記焼結体の長手方向全域で少なくとも2箇所以上形成されていることを特徴とするものである。そして、上記焼結体の肉厚を1〜5mmとしたことを特徴とするものである。
本発明の放電発生部材は、焼結体がセラミック焼結体からなる放電発生部材において、上記焼結体のNa2O含有量が100ppm以下で、且つ、tanδが5×10−4以下、比誘電率εrが20以上であるので、高周波電力による高圧放電、アーク放電による破損を防止し、また、発熱を抑えることができるので熱応力による破損を防止することができるとともに、高周波の出力を上げずに高密度な安定したプラズマを発生させることができる。そのため、電力消費を抑えても従来のプラズマ処理が可能となる。
また、電磁界エネルギーが熱エネルギーに変換される割合が低いため、放電発生部材を形成する焼結体の温度分布を均一にさせることができ、プラズマ処理により発生したハロゲン化物が反応容器の内壁面に均一に付着させることが可能となる。これにより、ハロゲン化物の保持量を増加させることが可能となり、反応容器のクリーニングまでの期間を長くすることが可能となる。
また、比誘電率が20以上と高くなっているので、焼結体の厚みを増すことが可能となり、その結果、強度を向上させることが可能となる。また、大型の焼結体となっても、発熱による変形や破損がなくなる。また、RF波の透過率が使用時間とともに徐々に低下することなく、プラズマ処理速度が安定したものとなる。また、プラズマに対する耐食性も高く、大きく削られて、その形状が刻々と変化してプラズマ状態(均一性やプラズマ密度)が損なわれることがない。
また、本発明の放電発生部材は、上記焼結体の結晶相としてMgTiO3及びCaTiO3を含有し、平均ボイド占有率が5%以下、粒界層の厚みを20nm以下で、上記焼結体のMgがMgO換算で1〜15重量%含有するので、比誘電率を80〜180で達成することが可能となる。
また、本発明の放電発生部材は、上記焼結体中に、Si、Mn、Ni、Ce及びCrから選ばれる少なくとも1種以上が、それぞれSiO2、MnO2、NiO、CeO2及びCr2O3換算で合計が5重量%以下含有されているので、放電時における結晶界面の亀裂進展が進行して絶縁破壊に至ることを抑制することが可能となる。
また、上記焼結体の平均ボイド占有率が5%以下、粒界層の厚みが20nm以下としたことにより、放電ガスに浸食されず、さらに放電時における結晶界面の亀裂進展が進行して絶縁破壊に至ることを抑制することができる。
また、上記焼結体の平均結晶粒径が1〜15μmの範囲であるので、粒子同士の結合力が十分となるため強度を向上させて安定することが可能となる。
さらに、上記焼結体を筒状に形成するとともに、その外周に帯状の導電体の電極を形成してなり、上記導電体は、上記焼結体の長手方向全域で少なくとも2箇所以上形成されていることを特徴とするので、小スペースでも表面積の大きい放電が可能となり、放電空間の利用率を向上され、安定した放電を提供できる。
また、筒状とすることで、放電発生部材の内周をガスが軸方向に流れ、その流れは放電発生部材の断面において略円対称に流れる。そして、2箇所の電極間に高周波電源より高周波の電圧を印加すると筒内の回りに放電が発生し、放電が円対称となり、同軸型の励起が得ることができる。
そして、上記焼結体の肉厚を1〜5mmとしたことにより、印加電圧によって破損しない高効率な放電が可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は本発明に係る放電発生部材の一実施例を示す断面概略図である。
図1は放電発生部材1を反応容器2に用いたプラズマ処理装置100であり、プラズマ処理装置100は、内部が排気可能で減圧可能な放電発生部材1からなる反応容器2と、反応容器2内に原料ガスを供給するガス導入部23を有する原料ガス供給手段と、反応容器2内に誘導コイル21を介して高周波電力を供給する第一の高周波電力供給部22と、反応容器2内に配置された被処理物保持手段14と、反応容器2内の反応後のガスを排気する排気手段15と、被処理物保持手段の一方には第二の高周波電力供給部が配置して構成されている。
そして、反応容器2内に、ガス導入部23から原料ガスを減圧状態で供給するとともに、誘導コイル21に高周波電力を供給し、反応容器2を誘電体とすることで、被処理物保持手段13により保持される被処理物14の上面に、反応容器2の内部でプラズマを発生させる構成である。誘導コイル21は反応容器2の一部を構成するプレート状の天板2aの上面に螺旋状に配置されており、その一部に高周波電力を印加することが可能となっている。
ところで、図1では、反応容器2は筒状体の側面部2bとプレート状の天板2aから構成したものを示しているが、反応容器2を一体もので製作しても機能上問題はない。また、側面部2bに関してもさらに細かく分割したものでも問題はない。
ここで、被処理物保持手段13としては、半導体ウエハなどを保持する公知な手段であればよく、真空で使用する場合は、静電チャックで吸着させ、サセプタカバーを用いれば良い。また、下部チャンバー10が処理室とならない場合には、ステンレスなどの金属製のものを使用しても良いが、反応容器2と同様な材質とする方が好ましい。また、反応容器2と下部チャンバー10を一体もので製作しても問題ない。
本発明の放電発生部材1は、セラミック焼結体からなる焼結体3で構成されており、焼結体3のNa2O含有量が100ppm以下で、且つ、tanδが5×10−4以下、比誘電率εrが20以上であることを特徴とするものである。
その為、例えば、Arプラズマを生成するプラズマ処理装置に用いた場合、反応容器2にアルミナを用いた場合と比較して、数倍のプラズマ電子密度を得ることができ発生効率の高いプラズマ処理装置100を得ることができる。
ところで、比誘電率εrは高い程好ましく、比誘電率εrが高い程、装置の小型化が可能となり、電気的損失が小さく、高性能となる。例えば、マイクロ波等の高い周波数の印加電圧としなくとも、充分に高いプラズマ密度を得ることが可能となる。13.56MHzのRF波において、上述したような従来の材質よりもプラズマ電子密度の高いプラズマ処理装置を得ることが可能で、好ましくは比誘電率εrが80〜190の範囲であれば良く、さらに好ましくは100〜190の範囲であることが良い。
他方、tanδが3×10−4を超える場合には、電磁界エネルギーが熱エネルギーに変換される割合が高くなるため、反応容器の温度分布が生じてしまう。そのためプラズマ処理により発生したハロゲン化物が反応容器の内壁面に均一に付着させられなくなる。これにより、ハロゲン化物の保持量が少なくなり、反応容器のクリーニングまでの期間が短くなるという問題が多くなる。
これらの効果は、焼結体3の高い誘電率と低いtanδによる作用と考えられ、高誘電率による表面波の短波長化と低tanδの電磁界と熱との低エネルギー交換率によるものと推測される。
また、本発明のプラズマ処理装置100のプラズマ電子密度の軸方向依存性は、その上流部において極めて高い値となる傾向にある。この効果に対しても、焼結体3の高い誘電率と低いtanδを反映したものと推測される。
ところで、焼結体3のNa2O量が100ppm以下としているのは、100ppmより含有量が多い場合、放電ガス中にNa成分が混入され、被処理物14にNa成分が付着し、その後の工程において欠陥になってしまう。その為、Na2O量は100ppmであることが重要で、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下であることが良い。
尚、Naの定量分析としては、ICP−MASSやフレームレス原子吸光分光分析などを用いれば良い。
そして、Na成分が少ない程、焼結体3のtanδの値を小さくすることができ、13.56MHzのRF波でtanδが3×10−4以下である場合に、放電の際の高周波がかかっても破損の無い焼結体3を得ることができる。
ところで、放電発生部材1は、焼結体3の結晶相としてMgTiO3及びCaTiO3を含有し、平均ボイド占有率が5%以下、粒界層の厚みを20nm以下で、焼結体3のMgがMgO換算で1〜15重量%含有することを特徴とすれば、比誘電率を80〜180で達成することが可能となる。
一般にCaTiO3は、MgTiO3とは固溶し難い。その為、焼結体中にCaTiO3からなる結晶とMgTiO3からなる結晶が混在する場合には、MgTiO3からなる結晶がCaTiO3からなる結晶に対して転位をピン止めする作用を奏し、耐絶縁破壊性、耐放電スパッタ性を向上させることができると考えられる。尚、ここで言う「ピン止め」とは、結晶中の転位の伝搬を抑制する作用のことを言う。
上記ピン止め効果は、次のようなメカニズムによって起こると考えられ、一般的に、絶縁破壊はCaTiO3結晶の誘電現象の機構に起因する。即ち、絶縁性を有するCaTiO3結晶に電圧を印加して内部に電界を生じさせると、結晶内部で電界の向きに沿った分極が起こり電位差を持つ。これが誘電性を発現する仕組みであり、金属酸化物は電界強度に対する分極の度合いが大きい為、一般に比誘電率εrの大きな材料となり得る。その一方で結晶内部の分極は結晶の歪みを伴い、結晶界面に応力を誘発する、結晶界面に発生する応力は、分極の度合いが大きいほど(=比誘電率εrが大きいほど)高い。結晶内部の分極によって生じた結晶歪み応力によって結晶粒界に亀裂が生じ、それが徐々に進展し、ついには絶縁破壊する。
上記亀裂を抑制するためには、比誘電率εrの高いCaTiO3結晶界面で発生する応力に伴って生じる転位をピン止めできる作用を有する結晶を上記結晶界面に存在させることが望ましい。この作用を有する結晶相がMgTiO3である。
本発明に用いる焼結体3にMgTiO3からなる結晶相を含有させることにより、分極により生じたCaTiO3結晶粒界の亀裂はその進展を抑制され、絶縁破壊を起こし難くなって機械的強度の向上が見られる。
また、その際の焼結体としてMgがMgO換算で1〜15重量%することが必要である。焼結体3の比誘電率εrに対し、焼結体3の内部では電磁波の波長がおよそ1/εr1/2に短縮される。そして、焼結体3の比誘電率εrが大きいと焼結体3を伝搬する電磁波の波長が短くなり、電磁界エネルギーを焼結体3に集中させた後、放電することができるため、プラズマの放電が安定する。従って、放電プラズマを安定させるためには、焼結体3のεrの値は大きい方が好ましい。つまり、本発明の焼結体3において、Mg量が少ない方が好ましいが、1重量%未満では前記ピン止め効果が小さくなり、耐絶縁破壊性の向上が抑制される。また、逆に15重量%を超えるとMgを含む粒子のクラスター化によって亀裂進展の経路が増加し、耐絶縁破壊性の向上が著しくなる。よって、Mgの含有量はMgO換算で1〜15重要%が必要で、好ましくは1〜12重量%の範囲が良い。
また、本発明の焼結体3は、電磁界エネルギーが熱エネルギーに変換される割合が低く、プラズマ密度を向上させることができる。つまり、13.56MHzのRF波を用いた場合でtanδが3×10−4以下であるために、放電の際に高周波がかかっても焼結体3が発熱し難いからである。
さらに、本発明のプラズマ処理装置100に用いる焼結体3は、プラズマに対する耐食性が高いことも起因していると考えられ、大きく削られて、その形状が刻々と変化してプラズマ状態(均一性やプラズマ密度)が損なわれることがない。
ところで、MgTiO3及びCaTiO3の各結晶相の存在はX線回折法により確認することができる。例えば、本発明の焼結体3をX線回折法にて分析した結果、Mg量およびCa量をICP発光分光分析法で測定し、Mg量をMgTiO3量に換算、CaをCaTiO3量に換算し、得られたMgTiO3量とCaTiO3量を合計で100重量%となるように重量%に換算する。
また、本発明の焼結体3は、放電時における亀裂進展が進行して絶縁破壊に至ることを抑制するために、焼結体3に、Si、Mn、Ni、Ce及びCrから選ばれる少なくとも1種以上が、それぞれSiO2、MnO2、NiO、CeO2及びCr2O3換算で、合計が5重量%以下含有されていることが望ましい。これらの成分を含有することにより、放電時に亀裂進展の進行を抑制できる理由は、これらの成分が、MgTiO3からなる結晶粒子内に固溶し、上記ピン止めの作用を向上させるためである。
本発明の焼結体3中にSi、Mn、Ni、Ce及びCrのいずれかを含有する場合、その存在量はICP発光分光分析法により測定し、それぞれSiO2、MnO2、NiO、CeO2及びCr2O3の重量%に換算する。
さらに、焼結体3の平均ボイド占有率が5%以下とすることが望ましいのは、平均ボイド占有率が5%を超えると結晶粒界に気孔が集中して存在することがあり、その結果、上記ピン止め効果が小さくなり、結晶界面を起点として絶縁破壊が起こりやすくなるからである。その為、耐絶縁破壊性を向上させるために、平均ボイド占有率は5%以下であることが必要で、好ましくは1%以下がよい。さらには0.3%以下が好ましい。また、高い耐絶縁破壊性の他に、放電ガスに対する耐腐食性および高気密性を有し、さらに装置内に不純物ガスを発生させないためにも少ない方が良い。
尚、これらの平均ボイド占有率を測定する方法としては、試料片を採取し、表面を鏡面加工後に、ニレコ社製の「LUZEX−FS」画像解析処理装置にて測定すればよい。条件の一例としては、倍率100倍、測定面積9.0×104μm2、測定ポイント10箇所、測定総面積9.0×105μm2の範囲を測定すればよい。
また、粒界層の厚みを20nm以下とするのは、上記ピン止め効果を発現するためであり、粒界層の厚みが20nmを超えると、粒界が起点となって絶縁破壊が起こりやすくなるため、耐絶縁破壊性が低下する。さらに、粒界層は放電ガスに対して耐食性が低いことが多く、耐食性を損なわない観点からも粒界層はできるだけ狭い方がよい。粒界層の厚みとしては20nm以下であることが重要で、好ましくは10nm以下、さらに好ましくは3nm以下であることがよい。また実質的に粒界層が存在しない場合においても上記ピン止め効果により、耐絶縁性を著しく向上させることは可能である。
また、焼結体3の平均結晶粒径が1〜15μmの範囲であることが好ましい。ところで、平均結晶粒径が1〜15μmの範囲とするのは、1μmよりも小さいものを製作するのが困難で、また、15μmよりも大きくなると、強度が損なわれ、高周波電力を印加した際に破損しやすくなってしまう。その為、平均結晶粒径は1〜15μmの範囲であることが好ましく、部材自体の材料強度を向上させ安定させることが可能となる。さらに好ましい範囲として、5〜12μmの範囲が良い。
また、本発明の放電発生部材1は、図1に限らず、図2や図3に示すようなエッチング装置、アッシング装置、CVD装置、プラズマクリーニング装置などのプラズマ処理装置100にも適用可能である。
図2は曲率を備えたドーム形状の反応容器2で、その外周には螺旋状に誘導コイル20が配置されている。そして、反応容器2の内部には複数のガス供給ノズル19が配置されている。
また、図3は反応容器2がベルジャー形状をしており、上端の開口部にガス導入部23を形成しており、ガス導入部23のすぐ下部の狭くなった部分の外周にのみ誘導コイル24を螺旋状に配置している。
さらに、本発明の放電発生部材1は、例えば図4のようなガスレーザー発振器用として好適に用いられ、特に炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、ヘリウム・ネオンレーザー、カドミウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、フッ素レーザー、フッ化水素レーザー、炭酸ガス・窒素・ヘリウムガスレーザーに好適であり、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザーに好適であり、炭酸ガスレーザーに最も好適である。
また、本発明の放電発生部材1は、小型で高出力のレーザー発振器を得るために、放電空間6となる内周部に凹凸を設け、放電面積を大きくすることが望ましい。前記凹凸を設ける場合の面積は、凹凸がない場合の面積の1.5倍以上であることが望ましい。凹凸の形成方法としては押出成形を用いて、予め断面が複数のスリットとなるような形状にすればよい。
さらに、小型で高出力のレーザー発振器を得るために、本発明の放電発生部材1を金属電極の上に蒸着法により形成させることができる。この場合、金属電極は、放電面積を大きくするために凹凸を設けることが望ましい。前記蒸着法により作製した放電発生部材1は、上述の放電発生部材1の製造方法により得られたものと比較して、高電圧グロー放電に対して安定であり、アーク放電が起こっても破壊されにくい高強度な放電発生部材1となる。
図4は本発明のガスレーザー発振器用の放電発生部材1を用いたレーザー発振器を示している。図4において、41は送風機、43は円筒形状の電極部材、44は円筒形状の電極部材43近辺に設置した電極である。45は電極44に接続した高周波電源、46は放電空間である。47は全反射鏡、48は部分透過鏡、49は熱交換器、50は部分透過鏡48から取り出されるレーザービーム、51はレーザーガス配管、52はレーザーガス、53は真空ポンプ、54はレーザーガスボンベ、55aは供給流量調整器、55bは排出流量調整器、56はレーザー出力検出器、57は放電電流検出器、58は放電電流制御部、60は信号線、61は圧力検出器、62はレーザーガス供給量制御部である。なお、図4において、電極部材43はレーザーガス管51の機能を兼ね備えている。
以上のように構成されたガスレーザー発振装置の動作を説明する。送風機41によりレーザーガス配管51を通し、レーザーガス管51にレーザーガス52を強制的に循環させる。電極44は放電発生部材1直近に設置されており、このとき高周波電源45に接続された電極44から、セラミック焼結体からなる放電発生部材1を介して放電空間46に高電圧が印加され、電極部材43内部にグロー放電を発生させる。
全反射鏡47からはごく微量のレーザービームが取り出されており、それをレーザー出力検出器56に照射してレーザー出力をモニタし、放電電流制御部58で設定されているレーザー出力設定値と同じになるように放電電流検出器57によって印加電圧を制御している。レーザー出力検出器56は熱電対を用い照射されたレーザービーム出力に応じた電圧を出力する方式などがとられており、熱電対以外にもフォトダイオード、cdsセルといった光検出素子を使用することも可能である。
レーザーガスは矢印52で示すように、送風機41から圧縮されて排出され高温となるため送風機41下流側に配置された熱交換器49により冷却されている。また放電空間46を通過した後のレーザーガスも放電エネルギーが印加され高温になるため同様に冷却されている。
グロー放電により励起されたレーザーガスはレーザー発振し、全反射鏡47および部分透過鏡48の間をレーザービームが往復しながら増幅され共振状態となる。この共振状態から全反射鏡47、部分透過鏡48間のレーザービームの一部が部分透過鏡48よりレーザービームとして共振器外部へ取り出され(レーザービームを矢印50で示す)、このレーザービームが金属切断、溶接などの加工に用いられる。
レーザーガスはその一部が排出流量調整器55bを通じ真空ポンプ53によってレーザー発振装置外部へ取り出され廃棄される。廃棄されたレーザーガスと同量の新しいレーザーガスをボンベ54から供給流量調整器55aを通してレーザー発振装置内部へ供給することにより内部圧力が一定になるよう維持している。内部圧力は圧力検出器61によって検出され、信号がレーザーガス供給量制御部62に送られる。レーザーガス供給量制御部62内においてあらかじめ設定されている圧力となるよう信号をドライバ59に送って供給流量調整器55aおよび排出流量調整器55bの両者または一方を制御し、圧力を一定としている。通常は排出流量調整器55aのみを制御して圧力を調節している。このとき供給流量調整器55aおよび排出流量調整器55bによって制御される真空ポンプ53からのレーザーガス排出量は一定の値に固定されている。
レーザーガスは放電空間46を通過する際に放電エネルギーを与えられる。レーザーガスの組成は各種のガスからなりたっているが、放電エネルギーによってその組成の一部が解離する。解離したガスはその後、逆過程を経て再度もとの組成にもどる。この解離とその逆過程は時間の経過とともに平衡状態となり、ガス配管経路内には一定量の解離したガスが存在することとなる。解離したガスは本来のレーザーガスの組成とは異なるため、グロー放電が不安定となり局所的にアーク放電を発生させる。このアーク放電が発生しても本発明の電極部材を用いることにより、電極部材に微細な亀裂が入ったり、破壊したりせず使用することができる。
しかしながら、前記アーク放電が発生すると放電電流の振動率が増大するといった悪影響が発生する。このような現象を緩和するにはガス配管経路内に存在する解離したガスの量を減少させればよい。解離したガスの量とその逆過程で元に戻ったガスの量が平衡となった状態でレーザーガス中に存在する解離したガスの量が決定されている。
そこで前記のように解離したガスを含んでいるレーザーガスの一部を真空ポンプ53によってレーザー発振装置の外部へ取り出して廃棄している。廃棄されたレーザーガスと同量の新しいレーザーガスをレーザー発振装置内部へ供給することによりガス配管経路内に存在する解離したガスの量を減少させる。このようにしてガスレーザー発振装置を長期間使用した場合、本発明の電極部材を用いることにより、放電による電極44の摩耗、電極部材43内面における不純物の付着などを抑制することができ安定したグロー放電を得ることができる。
また、本発明の放電発生部材1は、小型で高出力のレーザー発振器を得るために、放電空間46に接する面に凹凸を設け、放電面積を大きくすることが望ましい。前記凹凸を設ける場合の面積は、凹凸がない場合の面積の1.5倍以上であることが望ましい。従来の電極部材では、凹凸を設けた場合、アーク放電等により破壊されやすいが、本発明の電極部材を用いた場合には、このような破壊は発生しない。
さらに、小型で高出力のレーザー発振器を得るために、電極部材を金属電極の上に蒸着法により形成させることができる。この場合、金属電極は、放電面積を大きくするために凹凸を設けることが望ましい。前記蒸着法により作製した電極部材は、上述の本発明の電極部材の製造方法により得られたものと比較して、高電圧グロー放電に対して安定であり、アーク放電が起こっても破壊されにくい高強度な電極部材である。
また、本発明の放電発生部材1は、オゾナイザーなどのオゾン発生装置の放電発生部材1としても使用することができる。
図5は本発明の放電発生部材1を用いた無声放電によるオゾン発生装置の概略図である。図5において、高電圧電極70と接地電極71は放電ギャップ72が形成されるように並設し、アーク放電を防止するための放電発生部材1を放電ギャップ72間に介在させている。放電ギャップ72間に高圧交流電源74より発生させた、例えば10数kVの高電圧を印加することによって、微小放電柱75の集合体である無声放電を発生させて、放電ギャップ72中の酸素含有ガス76(空気など)をイオン化し、オゾン77を発生させることができる。
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更は何等差し支えない
次に、本発明にかかる放電発生部材1の製造方法について説明する。例えば、以下の工程(1a)〜(6a)から成る。
(1a)出発原料として、高純度の炭酸マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末を用いて、所望の割合となるように秤量後、純水を加え、混合原料の平均粒径が2.0μm以下、望ましくは0.6〜1.4μmとなるまで1〜100時間、ジルコニアボール等を使用したボールミルにより湿式混合及び粉砕を行って混合物を得る。この混合物を乾燥後、900〜1100℃で1〜10時間仮焼し、仮焼物Aを得る。
(2a)出発原料として、高純度の炭酸カルシウムおよび酸化チタンの各粉末を用いて、所望の割合となるように秤量後、純水を加え、混合原料の平均粒径が2.0μm以下、望ましくは0.6〜1.4μmとなるまで1〜100時間、ジルコニアボール等を使用したボールミルにより湿式混合及び粉砕を行って混合物を得る。この混合物を乾燥後、900〜1100℃で1〜10時間仮焼し、仮焼物Bを得る。
(3a)得られた仮焼物A、BおよびSiO2、MnO2、NiO、CeO2及びCr2O3のうち少なくとも1種を混合し、純水を加え、平均粒径が2.0μm以下、望ましくは0.6〜1.4μmとなるまで1〜100時間、ジルコニアボール等を使用したボールミルにより湿式混合及び粉砕を行う。
(4a)更に、3〜10重量%のバインダーを加えてから脱水し、その後公知の例えばスプレードライ法等により造粒または整粒し、得られた造粒体又は整粒粉体等を公知の成型法、例えば冷間静水圧プレス法、押し出し成形法、インジェクション成形法等の公知の成形方法によりプラズマ処理装置100を得るための形状に成形する。
尚、造粒体又は整粒粉体等の形態は粉体等の固体のみならず、スラリー等の固体、液体混合物でも良い。この場合、液体は水以外の液体、例えばIPA(イソプロピルアルコール)、メタノ−ル、エタノ−ル、トルエン、アセトン等でも良い。
(5a)得られた成形体を大気中1250〜1350℃で、5〜10時間保持して焼成する。
(6a)得られた焼成体をさらに大気中1100〜1200℃に加熱後、平均降温速度15〜40℃/時間で降温して熱処理する。
上述の製造方法により、MgTiO3及びCaTiO3の結晶相を有する放電発生部材1を得ることができる。
本発明の材料を使用することにより、プラズマ発生条件として、特に出力を少なく出来るという特徴がある。そのため従来プラズマ処理容器用材料として使用されている石英部材、アルミナ焼結体、窒化アルミニウム焼結体、イットリア焼結体、YAG焼結体を使用した時よりもプラズマ発生条件の出力を落として同じプラズマ密度を確保出来るという特徴がある。また、同一のプラズマ条件では、アルミナより耐食性が優れるものの、イットリア、YAGよりは耐食性が劣るが、プラズマの出力条件を低く設定出来るため、耐食性を損なわないことが可能となる。
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更は何等差し支えない。
次に、実施例を挙げて本発明の放電発生部材をより詳細に説明する。
(実施例1)
まず、以下の(1b)〜(6b)に示す手順にて本発明のプラズマ処理装置を作製した。
(1b)出発原料として、高純度の炭酸マグネシウムおよび酸化チタンの各粉末を用いて、所望の割合となるように秤量後、純水を加え、混合原料の平均粒径が2.0μm以下となるまで20時間、ジルコニアボール等を使用したボールミルにより湿式混合及び粉砕を行い混合物を得た。この混合物を乾燥後、1000℃で4時間仮焼し、仮焼物Aを得た。
(2b)出発原料として、高純度の炭酸カルシウムおよび酸化チタンの各粉末を用いて、所望の割合となるように秤量後、純水を加え、混合原料の平均粒径が2.0μm以下となるまで20時間、ジルコニアボール等を使用したボールミルにより湿式混合及び粉砕を行い混合物を得た。この混合物を乾燥後、900〜1100℃で1〜10時間仮焼し、仮焼物Bを得た。
(3b)得られた仮焼物AとBの合計100重量部に対して、酸化クロム(Cr2O3)を2重量%混合し、純水を加え、平均粒径が1.0〜1.5μmとなるまで、ジルコニアボール等を使用したボールミルにより湿式混合及び粉砕を行った。なお、仮焼粉AとBの混合比率は、MgTiO3およびCaTiO3換算で合計100重量部とした場合、所望のMgO量になるよう調整した。
(4b)更に、3〜10重量%のバインダーを加えて、スラリーを製作し、押出成形法により成形体を得た後、切削加工により所望の形状に成形した。
(5b)得られた成形体を500〜800℃にて脱脂した後、大気中1300℃で8時間保持して焼成した。
(6b)得られた焼成体をさらに大気中1150℃に加熱後、平均降温速度25℃/時間で降温して熱処理し、プラズマ処理装置100に用いる焼結体3を得た。
次に、放電発生部材を用いて、図6のような、軸流型ガスレーザー発信器80を製作した。この軸流型ガスレーザー発信器80では、電源周波数100kHzの交流電源81から印加されて放電する金属電極82の間に、レーザーガスを通す放電管として放電発生部材を用いている。
この放電発生部材に矢印83で示すようにレーザーガス(炭酸ガス)を供給し、金属電極82により放電励起して発生したレーザービームを100時間連続して取り出した。
表1によれば、平均ボイド占有率が5%以下、粒界相の厚みが20nm以下で、MgOが1〜15重量%含有する範囲であれば、破損しなかったことが判った。
(実験例2)
次に、上述の製法を用いて、MgをMgO換算で10重量%含有し、かつ、Na2O含有量を70ppmとしたMgTiO3及びCaTiO3を結晶相とするものを製作した。尚、この時の焼結体のtanδは2.8×10−4(13.56MHz)であった。
この時、筒状の焼結体の肉厚を0.5mm、1mm、3mm、5mm、7mmとして100kHz、500Wの電力を供給してSiウエハの放電プラズマクリーニングを実施した。そして、絶縁破壊の有無と不純物除去能力の比較を行った。
表2の結果、肉厚0.5mmでは絶縁破壊によって放電管に亀裂が生じた。また、肉厚7mmでは不純物除去能力がアルミナ放電管並に低下することがわかった。
また、電源周波数100kHzの交流電源が印加されて放電する金属電極の間に、酸素ガスを通す誘電体である放電プラズマクリーニング装置として、実施例で得た放電プラズマクリーニング装置を100時間連続して稼働させた結果、本発明の誘電体を用いた場合、100時間の放電終了後でも、亀裂や破壊は全く観察されなかった。
(実験例3)
次に、上述の製法を用いて、MgをMgO換算で10重量%含有し、かつ、Na2O含有量を70ppmとしたMgTiO3及びCaTiO3を結晶相とするものを製作した。尚、この時の焼結体のtanδは2.8×10−4(13.56MHz)であった。
そして、製造した焼結体を用いて図1のプラズマ処理装置100を製作して以下の実験を行った。
そして、比較例として、99.5%純度アルミナとイットリア、石英についても同様な装置を製作した。
次に比較例として用いた99.5%純度のアルミナの製法について説明する。
出発原料として、99.5%純度のアルミナ粉末を用いて、所望の割合となるように酸化マグネシウムを加え、イオン交換水、高純度アルミナボールを使用して湿式粉砕、混合を繰り返し、平均粒径3μm以下のアルミナスラリーを製作する。好ましくは1.5〜2.5μmが良い。これに7重量%の有機バインダーを加えてから、前記スラリーをスプレードライ法にて造粒、整粒する。得られた造粒体をゴム型に充填し、蓋をしてシールし、CIP法にて78.5MPa(800kg/cm2)にて成形を行う。所望の形状に切削加工を施し、トップ温度1650℃の大気雰囲気にて焼成を行う。厚み研削、外辺研削、穴加工などを行い所望の形状のプラズマ処理装置を得る。
次に比較例として用いたイットリアの製法について説明する。
出発原料として、99.9%純度のイットリア粉末を用いて、イオン交換水、ジルコニアボールを使用して湿式粉砕を繰り返し、平均粒径3μm以下のイットリアスラリーを製作する。これに7重量%程度の有機バインダーを加えてから、前記スラリーをスプレードライ法にて造粒を行う。得られた造粒体をゴム型に充填し、蓋をしてシールし、CIP法にて78.5MPa(800kg/cm2)にて成形を行う。所望の形状に切削加工を施し、トップ温度1700℃の大気雰囲気または酸素雰囲気のいずれかにて焼成を行う。厚み研削、外辺研削、穴加工などを行い所望の形状のプラズマ処理装置を得る。
石英ガラスについては、公知な信越石英社製の石英ガラスを所定の形状に加工した部材を購入し、比較用材料とした。
上述のようにして製作した本発明の焼結体(試料No.1)、純度99.5重量%のアルミナ焼結体(試料No.2)、イットリア焼結体(試料No.3)、石英ガラス(試料No.4)をそれぞれ用意し、フッソ系腐食ガス下でプラズマに曝した時の耐食性について実験を行った。
本実験では、本発明及び従来の耐食性部材を25.4mm×25.4mm×厚み2mmに製作した後、表面にラップ加工を施して鏡面にしたものを試料とし、この試料をRIE(Reactive Ion Etching)装置にセットしてCF4+CHF3+Arガス雰囲気下でプラズマ中に4時間曝した後、処理前後の重量の減少量から1分間当たりのエッチングレートを算出した。エッチングレートの数値は、99.5重量%アルミナ焼結体(試料No.2)のエッチングレートを10とした時の相対比較で示す。
表3の結果、本発明の誘電体部材(試料No.1)は、フッソ系腐食ガスに対して、従来の耐食性部材と比較して優れた耐食性を有していた。
(実験例4) 反応容器の焼結体として、本発明のもので比誘電率ε=138と、比誘電率ε=3.8の石英ガラス、比誘電率ε=9.9(13.56MHz)の99.5重量%アルミナ焼結体、比誘電率ε=11.4の99.9重量%イットリア焼結体からなる4種類の窓を取り付けて動作させた時の電子密度のRF波電力依存性を示している。このデータを採るための実験は以下のように行った。アンテナよりRF波供給部を介して導入し、Arプラズマを生成した。そしてRF波発振器を調整して、RF波の供給出力を100W〜1000Wまでの範囲で断続的に変化させてその出力に対応したプラズマ電子密度をプラズマ発生室内の所定の軸方向位置(Z=20cm)にプローブを配置して測定した。
結果は図6に示す。
図6によれば、従来の石英ガラスに比べて2〜3倍程度、耐食性部材に比べて1.5〜2.5倍の電子密度が得られた。また、RF波発振器の出力を下げても、所望の高密度プラズマを生じることが判明した。そして、供給されるRF波エネルギーの出力を下げられるので、部材の耐食性が抑制出来る。そのため、同一プラズマ密度の条件下では耐食性に優れるイットリア焼結体とほぼ同等の耐食性が得られる。
これらの結果は、本発明の焼結体3の高い誘電率と低いtanδによる効果と考えられ、高誘電率による表面波の短波長化によるものと考えられる。本発明の焼結体3がダウンストリームプラズマの生成に極めて有利であることが判る。
(実験例5)
上述の製造方法により製作したMgTiO3及びCaTiO3の結晶相を有する放電発生部材を用いて、各周波数おける誘電率及びtanδを測定した。測定時の厚みは2mmとした。
表4の結果、各周波数においても誘電率が138以上で、且つtanδが4.8×10−4以下の値を得ることができた。