JP2005154191A - 湿式吹付け用不定形耐火物及びその施工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】湿式吹付け工法において、早期強度発現性を有し、それによって厚肉施工の際に生じる吹付け施工体の剥離、脱落の欠点を解消すると共に、キャスタブル混練物圧送時に充分な作業可能時間を有する湿式吹付け用不定形耐火物及びその施工方法を提供する。
【解決手段】粗粒ないし超微粉に粒度調整された耐火性骨材及び12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメントを含有してなるキャスタブル粉末に水を混練して得られたキャスタブル混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、吹付ノズルにて圧搾空気と共にリチウム塩溶液を添加して吹付け施工するための不定形耐火組成物において、前記キャスタブル粉末が、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体、縮合体、重合体及び共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜0.5質量%含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】粗粒ないし超微粉に粒度調整された耐火性骨材及び12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメントを含有してなるキャスタブル粉末に水を混練して得られたキャスタブル混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、吹付ノズルにて圧搾空気と共にリチウム塩溶液を添加して吹付け施工するための不定形耐火組成物において、前記キャスタブル粉末が、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体、縮合体、重合体及び共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜0.5質量%含有することを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、湿式吹付け用不定形耐火物及びその施工方法に関し、更に詳細には、窯炉内張り用耐火物として使用される湿式吹付け用不定形耐火物及びその施工方法に関する。
湿式吹付け施工法として、例えば特許文献1には、泥漿状の不定形耐火物を圧送機によって輸送管で圧送し、該輸送管の先端に設けられた先絞りノズルで圧搾空気と共に、硬化促進剤を添加し吹付けることを特徴とする不定形耐火物の吹付施工法が開示されている。即ち、湿式吹付け施工法は、予め水によって混練した不定形耐火物を圧送し、圧送途中の圧送管(ホース)あるいは吹付けノズル部において、硬化促進剤(凝結剤)を添加して吹付ける施工方法である。この湿式吹付け施工法は、枠無しで、短時間で施工可能であり、施工体も乾式吹付け施工に比べて緻密で、流し込み施工体と同等の品質を実現できることから、近年、施工の省力化及び低コスト化の観点から、耐火物を使用する各窯炉の補修及びイニシャルライニングの施工方法として採用されている。
上述のような湿式吹付け施工法は、耐火材料と凝結剤の凝集反応により窯炉壁、底、天井等に耐火材料を接着させるものであるが、凝集反応が早過ぎると、接着率が低下して施工体の表面が凝集し過ぎて層状の施工体となり易い。
上述のような湿式吹付け施工法は、耐火材料と凝結剤の凝集反応により窯炉壁、底、天井等に耐火材料を接着させるものであるが、凝集反応が早過ぎると、接着率が低下して施工体の表面が凝集し過ぎて層状の施工体となり易い。
また、セメントを含有する不定形耐火材料の湿式吹付け施工法においては、上記の凝集反応とは別にセメントの硬化反応も起こる。セメント硬化反応は早い程、天井部を施工する場合や、損耗厚みが厚い箇所の補修及びイニシャルライニング施工の場合において、施工体の剥離・落下が起こり難く、非常に有利となる。天井部を施工する場合や、損耗厚みが厚い箇所の補修及びイニシャルライニング施工の場合においては、凝集反応が適度なスピードで起こり、施工体表面がウエットな状態で、層状になり難いことが望ましい。また、施工体表面が最終強度を得るまでの時間を短かくするためには、セメント硬化反応ができる限り早く起こることが好ましい。
湿式吹付け施工法に使用される凝結剤としては、従来から、液状のアルミン酸アルカリ塩、珪酸アルカリ塩などが、混練した耐火材料に対して広く使用されている。ところが、前記凝結剤だけでは混練した耐火材料を凝集させる力が弱く、更に、セメントの硬化反応も遅いため、天井部を施工する場合や、損耗厚みが厚い箇所の補修及びイニシャルライニング施工の場合などの吹付け施工体が厚い場合において施工中に剥離落下するなど、安定した使用ができないなどの欠点がある。
このような問題点を解決する手段として、特許文献2には、耐火性骨材100重量部(質量部)に対して塩基性乳酸アルミニウム0.05〜2重量部(質量部)添加した吹付材を、予め施工水分を添加した後、ノズル内にて珪酸ソーダを添加して吹付けることを特徴とした、耐火物吹付け施工方法が開示されている。この施工方法は、耐火性骨材に塩基性乳酸アルミニウムを添加したキャスダブル混練物に凝結剤として珪酸ソーダを使用したものであり、乳酸アルミニウムと凝結剤とのゲル化反応を特徴とするものである。
更に、特許文献3には、溶融金属容器の耐火物の補修などに使用する湿式吹付け用キャスダブルであって、0.1〜3質量%の12CaO・7Al2O3を含むアルミナセメント、10質量%未満の前記以外のアルミナセメント、0.05〜2質量%の乳酸アルミニウム、0.1〜1質量%の分散剤、残部が耐火性の骨材及び微粉とからなることを特徴とする湿式吹付け用キャスダブル(請求項1);請求項1記載のキャスダブルと水を混練し、更に急結剤として珪酸アルカリ溶液を添加したことを特徴とする湿式吹付け材料が開示されている。即ち、特許文献3は、施工体の強度発現までの時間を短縮するために、12CaO・7Al2O3を含むアルミナセメント及び急結剤(凝結剤)とゲル化反応性のある乳酸アルミニウムを添加したキャスダブルに珪酸アルカリ溶液を添加するものである。
更に、吹付け施工体に凝結性を付与するために、消石灰スラリーを凝結剤に使用することが開示されている。例えば、特許文献4には、型を用いずに、表面上にセメント含有量の低いキャスト可能な耐火性材料を配置する方法であって、(a)セメント含有量の低いキャスト可能な乾燥材料を水と混合して、ポンプによる供給が可能なセメント含有量の低いキャスト可能な湿潤混合物を形成する工程と、(b)該セメント含有量の低いキャスト可能な湿潤混合物をホースを通してノズルまでポンプにより供給する工程と、(c)該セメント含有量の低いキャスト可能な湿潤混合物に添加されるべきセメント硬化剤の一定量を計量添加して、表面と接触する際に該セメント含有量の低いキャスト可能な湿潤混合物をほぼ瞬間的に硬化させる工程と、(d)ノズルにおいて、空気及び該セメント硬化剤を該セメント含有量の低いキャスト可能な混合湿潤物に導入して、セメント含有量の低いキャスト可能な最終混合物を形成する工程と、(e)該セメント含有量の低いキャスト可能な最終混合物を所望の厚さとなるまで表面上にスプレイする工程と、を備えることを特徴とする上記配置方法(請求項1);前記セメント硬化剤とは、水和酸化カルシウムであり、前記添加されるべきセメント硬化剤の一定量とは、セメント含有量の低いキャスト可能な乾燥材料の乾燥重量(質量)の0.01%から5%であることを特徴とする方法(請求項4);さらに、ノズルにおいて、前記水和酸化カルシウムをセメント含有量の低いキャスト可能な混合物内に導入する前に、所定量の水和酸化カルシウムと水とを混合する工程を備えることを特徴とする方法(請求項6)が開示されている。
更に、特許文献5には、消石灰を5〜60重量%(質量%)と、残部が水からなるスラリーであって、前記スラリー100重量%(質量%)に対し、リチウム塩をLi2Oに換算して0.01〜10重量%(質量%)と、分散剤を0.1〜10重量%(質量%)外掛け添加したリチウム塩を含有する消石灰スラリー系急結剤が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載の耐火物吹付け施工方法において、塩基性乳酸アルミニウムはセメントの水和反応を阻害する作用があるため、塩基性乳酸アルミニウムを添加した吹付け施工体は最終強度が得られるまでに長い時間を必要とし、例えば混銑車のような施工後短時間で傾動や移動を行わなければならない場合は、充分な施工体強度が得られていないために、傾動または輸送を行うと、吹付け施工体が剥離・落下するなどの危険性がある。また、セメントを使用せずに塩基性乳酸アルミニウムと凝結剤とのゲル化反応のみの施工体の最終強度は、先のような施工の場合、不充分である。上記理由から充分な強度が得られるまで養生を行う必要があり、工事時間が長くなったり、施工体の最終強度不足などの問題点がある。
また、特許文献3に記載のキャスダブルにおいては、早期強度発現効果を目的とした12CaO・7Al2O3を含むアルミナセメントを使用するため、作業可能時間が短かくなるため、搬送ホース内で材料が硬化しホース内閉塞が生じる場合があり、施工時の温度が高い夏場は、特にこのような問題が顕著となる。また、凝集反応が早く起き易いため、接着率が低下したり、施工体が層状となる場合がある。
更に、特許文献4及び5のように、消石灰スラリーを凝結剤として使用することにより、凝結剤中の固体粒子が沈降したり、粘性が上昇することに伴い、凝結剤搬送ホース内で凝結剤の凝集反応が始まり、ホース内閉塞が生じる場合がある。また、凝集反応が早く起き易いため、接着率が低下したり、施工体が層状となる場合がある。また、消石灰スラリーの経時変化により施工体の品質も変化し、均一な施工体が得られない。
即ち、湿式吹付け用不定形耐火物に早期強度発現性を付与するために、湿式吹付け用不定形耐火物に、粉体、スラリー、液体凝結剤が添加されている。このような湿式吹付け用不定形耐火物は、施工期間の短縮等の利点を有するものの、それぞれ下記のような欠点を有する:
粉体凝結剤を添加した湿式吹付け用不定形耐火物では、凝集作用が強く、接着率が低下したり、施工体が層状となり、均一な施工体が得られない;
スラリー状凝結剤を添加した湿式吹付け用不定形耐火物では、スラリー状凝結剤の経時変化により、凝結剤搬送ホースの閉塞及び施工体品質のばらつき等の問題がある;
液体凝結剤を添加した湿式吹付け用不定形耐火物では、混練物に早期強度発現効果を目的とした12CaO・7Al2O3を含むセメントを使用するため、充分な可使時間が取れない。
粉体凝結剤を添加した湿式吹付け用不定形耐火物では、凝集作用が強く、接着率が低下したり、施工体が層状となり、均一な施工体が得られない;
スラリー状凝結剤を添加した湿式吹付け用不定形耐火物では、スラリー状凝結剤の経時変化により、凝結剤搬送ホースの閉塞及び施工体品質のばらつき等の問題がある;
液体凝結剤を添加した湿式吹付け用不定形耐火物では、混練物に早期強度発現効果を目的とした12CaO・7Al2O3を含むセメントを使用するため、充分な可使時間が取れない。
従って、本発明の目的は、湿式吹付け工法において、施工体が早期強度発現性を有し、それによって厚肉施工の際に生じる吹付け施工体の剥離、脱落の欠点を解消すると共に、キャスタブル混練物圧送時に充分な作業可能時間を有する湿式吹付け用不定形耐火物及びその施工方法を提供することにある。
本発明の湿式吹付け用不定形耐火物は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、特定の液体凝結剤を使用し、且つ特定の添加剤を混練物に加えることによって、上記のような問題点を同時に解決しつつ、施工体が早期に強度を発現することができ、キャスタブル混練物圧送時に充分な作業可能を確保することができるものである。
即ち、本発明の湿式吹付け用不定形耐火物は、粗粒ないし超微粉に粒度調整された耐火性骨材及び耐火性微粉より構成される耐火性原料及び12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメントを含有してなるキャスタブル粉末に所定量の水を混練して得られたキャスタブル混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、吹付ノズルにて圧搾空気と共にリチウム塩溶液を添加して吹付け施工するための湿式吹付用不定形耐火組成物において、前記キャスタブル粉末が、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体、縮合体、重合体及び共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜0.5質量%含有することを特徴とする。
また、本発明の湿式吹付け用不定形耐火物は、キャスタブル粉末が金属粉末及び硼素化合物からなる群から選択される1種または2種以上の添加剤を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜1質量%の範囲で含有することを特徴とする。
次に、本発明の湿式吹付け用不定形耐火物の施工方法は、粗粒ないし超微粉に粒度調整された耐火性骨材及び耐火性微粉より構成される耐火性原料、12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメント、及びアクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体、縮合体、重合体及び共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜0.5質量%含有してなるキャスタブル粉末に所定量の水を混練して得られたキャスタブル混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、吹付ノズルにて圧搾空気と共にリチウム塩溶液を添加して吹付け施工することを特徴とする。
また、本発明の湿式吹付け用不定形耐火物の施工方法は、キャスタブル粉末が金属粉末及び硼素化合物からなる群から選択される1種または2種以上の添加剤を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜1質量%の範囲で含有することを特徴とする。
本発明によれば、従来の湿式吹付用不定形耐火物と比べて、施工厚みが厚く必要な苛酷な吹付け施工条件の場合においても、液体凝集剤により凝集速度をコントロールすることにより優れた接着性を有しており、また、分散剤と凝集剤溶液の組み合わせにより短時間でセメント硬化反応を発現し、充分な施工体強度が発現するため、混銑車のような施工後短時間で傾動や移動を行わなければならない場合においても優れた特性を有するという効果を奏するものである。また、早期強度発現効果を目的とした12CaO・7Al2O3を含有するアルミナセメントを使用せず、12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメントを使用するため、キャスタブル混練物を圧送する際に充分な作業可能時間を確保することもできるものである。
本発明の湿式吹付け用不定形耐火物において、キャスタブル粉末を構成する耐火性原料は、粗粒ないし超微粉に粒度調整された耐火性骨材及び耐火性微粉よりなる。前記耐火性骨材及び耐火性微粉は、特に限定されるものではなく、例えば溶融金属容器、溶融金属処理装置、セメントキルン等の内張り材の耐火材料として適当なもののいずれでも良く、例えば電融または焼結アルミナ、仮焼アルミナ、ボーキサイト、電融、合成または焼結ムライト、シリマナイト、アンダリューサイト、カイヤナイト、バン土頁岩、シャモット、蝋石、溶融シリカ、耐火粘土、電融または焼結マグネシア、電融または焼結スピネル、電融または焼結ジルコニア、ジルコン、クロム鉱、電融または焼結マグネシア−ライム、電融ジルコニア−ムライト、電融アルミナ−ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、天然または人造黒鉛、石油コークス、ピッチコークス、無煙炭、フェノール樹脂、ピッチ等などが挙げられ、これらの1種または2種以上を併用して使用することができる。
次に、本発明の湿式吹付け用不定形耐火物において、キャスタブル粉末を構成するアルミナセメントとしては、不定形耐火材料に12CaO・7Al2O3を実質上含まない一般的に使用されているアルミナセメントのいずれをも使用することができる。例えば、JIS第1種に相当するカルシア含有量15〜22質量%のアルミナセメント、JIS第2種に相当するカルシア含有量25〜30質量%のアルミナセメント、JIS第3種あるいは第4種に相当するカルシア含有量30〜40質量%のアルミナセメント、及びその他のアルミナセメントの1種または2種以上を併用して使用することができる。なお、「12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメント」とは、アルミナセメントの製造上の問題等で不可避的不純物として混入することがある12CaO・7Al2O3のみ許容できることを意味するものである。不定形耐火組成物中の12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメントの配合量は耐火性原料100質量%に対して外掛で10質量%未満、好ましくは1〜8質量%の範囲内である。12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメントの配合量が耐火性原料100質量%に対して外掛で10質量%以上になると耐蝕性が大きく低下するために好ましくない。
本発明の湿式吹付け用不定形耐火物においては、上述のような配合割合を有するキャスタブル粉末に、分散剤として、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体、縮合体、重合体または共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を配合することが構成上の特徴である。本発明に使用可能な水溶性高分子化合物としては、例えば質量平均分子量1〜10万、好ましくは2〜5万のアルカリ(土類)金属カルボン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルカリ(土類)金属アクリル酸塩、アルカリ(土類)金属ポリカルボン酸塩、アルカリ(土類)金属ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸、リグニンスルホン酸塩等を挙げることができる。なお、水溶性高分子化合物の配合量は、耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.3質量%の範囲内である。水溶性高分子化合物の配合量が、0.01質量%未満では、充分な分散効果が得られないために好ましくなく、また、0.5質量%を超えると、分散性が低下したり、強度等の機械的特性が低下するために好ましくない。
また、本発明の湿式吹付け用不定形耐火物において、キャスタブル粉末には、酸化防止、強度向上及び爆裂防止の目的で、アルミニウム、アルミニウム−シリコン合金、アルミニウム−マグネシウム合金、シリコン、マグネシウム等の金属粉末、炭化硼素、硼化ジルコニウム等の硼化物、硼珪酸ガラス等のような硼素化合物からなる群から選択される1種または2種以上の添加剤を使用することもできる。添加剤の配合量は、耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲内である。添加剤の配合量が0.01質量%未満であると、添加効果が発現しないために好ましくなく、また、1質量%を超えると、特に金属粉末においては、キャスタブル混練物中の水と反応して水素ガスを多量に発生する恐れがあるために好ましくない。
上述のような配合を有するキャスタブル粉末に所定量の水を混練して圧送機にて圧送可能なキャスタブル混練物を形成する。水の添加量は、キャスタブル粉末の比重と粒度構成に影響を受けるが、通常、耐火性原料100質量%に対して外掛で4.0〜8.0質量%、好ましくは5.0〜7.5質量%の水分量で容易に圧送機(ポンプ)で圧送可能な流動性が得られる。ただし、キャスタブル混練物を長距離、そして、高所まで圧送する場合は、前記水分量を0.1〜4.0質量%程度多く添加することもできる。
次に、本発明の湿式吹付け用不定形耐火物は、前記キャスタブル混練物を圧送機により吹付けノズルに圧送し、吹付けノズル部で圧縮空気と共に、リチウム塩溶液を凝結剤として前記キャスタブル混練物に添加し、吹付け施工するものである。ここで、リチウム塩溶液としては、例えば珪酸リチウム溶液及び炭酸リチウム溶液等を使用することができる。リチウム塩溶液の添加量は、耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜1.5質量%、好ましくは0.05〜0.3質量%の範囲内である。リチウム塩溶液の添加量が0.01質量%未満では、充分な凝集効果が得られないために好ましくなく、また、リチウム塩溶液の添加量が1.5質量%を超えると、凝集速度が早過ぎるため、接着率が低下したり、施工体表面の乾きにより施工体が層状となることがあるために好ましくない。なお、前記リチウム塩溶液は、リチウム塩をLiO2換算量で10〜50質量%、好ましくは12〜30質量%の範囲で含む濃度を有するものを使用することが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明の湿式吹付け用不定形耐火物及びその施工方法を更に説明する。
本発明品及び比較品の湿式吹付け用不定形耐火物を以下の表1に示す。
本発明品及び比較品の湿式吹付け用不定形耐火物を以下の表1に示す。
表1中、ポリカルボン酸カルシウム塩共重合体は、質量平均分子量2〜5万のものである。また、アルミナセメントAは、電気化学工業(株)社製ハイアルミナセメント(12CaO・7Al2O3を含まない)である。更に、アルミナセメントBは、電気化学工業(株)社製ハイアルミナセメントD(12CaO・7Al2O3を含む)である。また、珪酸リチウム溶液は、LiO2として22質量%の濃度を有するものである。更に、珪酸ソーダ溶液は、Na2Oとして17質量%の濃度を有するものである。また、石灰スラリーは、20質量%の濃度を有するものである。
上記表1に記載した本発明品及び比較品の湿式吹付け用不定形耐火物について吹付け施工実験を行った。
まず、凝結剤を除く配合物に表1に示す配合割合で水を混練してキャスタブル混練物を得た。得られたキャスタブル混練物をポンプで吹付ノズルへ圧送し、吹付ノズルで圧搾空気並びに凝結剤を添加して40mm×40mm×160mmの寸法の型枠へ吹付け施工した。
得られた施工体を1時間養生後、施工体の曲げ強度をJIS R2531に従って測定し、曲げ強度が0.5MPa以上のものを表1中の「吹付け施工時の剥落」の欄で○、0.5MPa未満のものを×として示した。
また、表1中の「吹付け直後の施工体表面の状態」は、吹付け15秒後の施工体表面の硬度をJIS K6253のゴム硬度計を代用し、30IRHD以下のもを○で、30IRHDを超えるものは×として示した。ここで、30IRHD以下であると、施工体表面がウェットで接着性が良く、層状の施工体になり難い状態にある。
また、表1中の「圧送可能時間」は、混練水分を添加混合したキャスタブル混練物について、ピストン式圧送装置により圧送不能な程度まで凝集硬化するに要した時間を測定したものである。
まず、凝結剤を除く配合物に表1に示す配合割合で水を混練してキャスタブル混練物を得た。得られたキャスタブル混練物をポンプで吹付ノズルへ圧送し、吹付ノズルで圧搾空気並びに凝結剤を添加して40mm×40mm×160mmの寸法の型枠へ吹付け施工した。
得られた施工体を1時間養生後、施工体の曲げ強度をJIS R2531に従って測定し、曲げ強度が0.5MPa以上のものを表1中の「吹付け施工時の剥落」の欄で○、0.5MPa未満のものを×として示した。
また、表1中の「吹付け直後の施工体表面の状態」は、吹付け15秒後の施工体表面の硬度をJIS K6253のゴム硬度計を代用し、30IRHD以下のもを○で、30IRHDを超えるものは×として示した。ここで、30IRHD以下であると、施工体表面がウェットで接着性が良く、層状の施工体になり難い状態にある。
また、表1中の「圧送可能時間」は、混練水分を添加混合したキャスタブル混練物について、ピストン式圧送装置により圧送不能な程度まで凝集硬化するに要した時間を測定したものである。
上記表1から判るように、本発明品1〜5は、吹付け後、1時間養生後の曲げ強度に優れる。また、吹付け直後の状態もウェットな状態であり、接着性が良く、層状の施工体になり難い。
これに対して、12CaO・7Al2O3を含むアルミナセメントBを併用した比較品1は、低温養生時に剥落の可能性があり、更に、圧送可能時間も短かく、吹付け作業に支障を生じた。また、乳酸アルミニウムを使用した比較品2は、吹付け施工体表面の状態はウェットであるものの、高温及び低温養生時に剥落の可能性が大きい。更に、12CaO・7Al2O3を含むアルミナセメントB及び乳酸アルミニウムを使用した比較品3は、低温養生時に剥落の可能性があり、更に、圧送可能時間も短かく、凝集反応が早く起こり過ぎるために接着率が悪く、施工体表面も乾いていたため層状施工体となった。また、消石灰スラリーを使用した比較品4は、凝集反応が早く起こり過ぎ接着率が悪く、施工体表面も乾いていたため層状施工体となっていた。
これに対して、12CaO・7Al2O3を含むアルミナセメントBを併用した比較品1は、低温養生時に剥落の可能性があり、更に、圧送可能時間も短かく、吹付け作業に支障を生じた。また、乳酸アルミニウムを使用した比較品2は、吹付け施工体表面の状態はウェットであるものの、高温及び低温養生時に剥落の可能性が大きい。更に、12CaO・7Al2O3を含むアルミナセメントB及び乳酸アルミニウムを使用した比較品3は、低温養生時に剥落の可能性があり、更に、圧送可能時間も短かく、凝集反応が早く起こり過ぎるために接着率が悪く、施工体表面も乾いていたため層状施工体となった。また、消石灰スラリーを使用した比較品4は、凝集反応が早く起こり過ぎ接着率が悪く、施工体表面も乾いていたため層状施工体となっていた。
本発明の湿式吹付け用不定形耐火物及びその施工方法は、溶融金属容器、溶融金属処理装置、セメントキルン等のイニシャルライニングの施工や補修に好適に使用することができるものである。
Claims (4)
- 粗粒ないし超微粉に粒度調整された耐火性骨材及び耐火性微粉より構成される耐火性原料及び12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメントを含有してなるキャスタブル粉末に所定量の水を混練して得られたキャスタブル混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、吹付ノズルにて圧搾空気と共にリチウム塩溶液を添加して吹付け施工するための湿式吹付用不定形耐火組成物において、前記キャスタブル粉末が、アクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体、縮合体、重合体及び共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜0.5質量%含有することを特徴とする湿式吹付け用不定形耐火物。
- キャスタブル粉末が金属粉末及び硼素化合物からなる群から選択される1種または2種以上の添加剤を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜1質量%の範囲で含有する、請求項1記載の湿式吹付け用不定形耐火物。
- 粗粒ないし超微粉に粒度調整された耐火性骨材及び耐火性微粉より構成される耐火性原料、12CaO・7Al2O3を実質上含まないアルミナセメント、及びアクリル酸、カルボン酸またはフェノールスルホン酸の誘導体、縮合体、重合体及び共重合体を主成分とする水溶性高分子化合物の1種または2種以上を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜0.5質量%含有してなるキャスタブル粉末に所定量の水を混練して得られたキャスタブル混練物を圧送機にて吹付ノズルへ圧送し、吹付ノズルにて圧搾空気と共にリチウム塩溶液を添加して吹付け施工することを特徴とする湿式吹付け用不定形耐火物の施工方法。
- キャスタブル粉末が金属粉末及び硼素化合物からなる群から選択される1種または2種以上の添加剤を耐火性原料100質量%に対して外掛で0.01〜1質量%の範囲で含有する、請求項3記載の湿式吹付け用不定形耐火物の施工方法。
Priority Applications (1)
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JP2003394091A JP2005154191A (ja) | 2003-11-25 | 2003-11-25 | 湿式吹付け用不定形耐火物及びその施工方法 |
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JP2018080068A (ja) * | 2016-11-14 | 2018-05-24 | 品川リフラクトリーズ株式会社 | 不定形耐火物の湿式吹付施工方法 |
CN113416049A (zh) * | 2021-07-23 | 2021-09-21 | 浙江南冶工程技术有限公司 | 一种泵送浇注料及其制备方法 |
-
2003
- 2003-11-25 JP JP2003394091A patent/JP2005154191A/ja active Pending
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