以下、本発明に係る電子音楽装置の一実施形態について図面を用いて説明すると、図1は、同実施形態に係る電子楽器の構成を概略的に示すブロック図である。この電子楽器は、演奏操作子群11、作動状態設定操作子群12、表示器13および楽音信号発生回路14を備えている。
演奏操作子群11は、発生楽音の音高を指定するための複数の演奏操作子(例えば、複数の鍵)からなり、演奏操作子の操作はバス20に接続された検出回路15によって検出される。この場合、複数の演奏操作子は、メロディを演奏するための演奏操作子と、和音を演奏するための演奏操作子とに分けられている。作動状態設定操作子群12は、この電子楽器の種々の作動状態を設定するもので、それぞれ複数の演奏環境設定操作子12a、演奏環境切り換え操作子12b、モード設定操作子12c、ファイル操作子12dなどを含む。そして、作動状態設定操作子群12の各操作子の操作はバス20に接続された検出回路16によって検出される。
演奏環境設定操作子12aは、この電子楽器の演奏環境(楽音の発生環境)を設定するための操作子であり、例えば、メロディ音、和音を含む種々の伴奏音などの各楽音の音色、ピッチシフト量および音量、各楽音に付与される効果、各楽音間の音量バランスなどを設定する操作子である。演奏環境切り換え操作子12bは、詳しくは後述するレジストレーションデータに基づく演奏環境を切り換えるための操作子であり、例えば、1組のレジストレーションデータに含まれる複数のプリセットデータ(本実施形態では、16個のプリセットデータ)のいずれかを選択的に指定するための操作子(本実施形態では、16個の操作子)、1組のレジストレーションデータに含まれる複数のプリセットデータを順次切り換えるための操作子(本実施形態では、1個のフット操作子)、レジストレーションデータの組を順次切り換えるための操作子などである。モード設定操作子12cは、この電子楽器の各種モードを設定制御するための操作子であり、例えば、自動演奏および自動伴奏のオン・オフを制御したり、自動伴奏を作動させるか否かを指示したり、曲データを任意あるいは後述する曲管理ファイル中の曲順に従って順次指定したり、自動伴奏のスタイルを指定する操作子である。ファイル操作子12dは、曲データファイル、レジストレーションデータファイルなどの各種ファイルの作成、読み出し、移動、削除、追加、順序入れ替えなどを操作するもので、例えば、表示器13におけるカーソルを移動させるカーソル移動操作子、表示器13に表示されるとともにカーソルによって指示された内容を確定するためのエンター操作子、表示器13の近傍に配置されて表示器13における表示内容に従った作動を指示する操作子などからなる。なお、これらのファイル操作子12dにより1組のレジストレーションデータに含まれる複数のプリセットデータのいずれかの指定、切り換えなどを指示するようにしてもよい。
表示器13は、液晶ディスプレイ、CRTなどで構成され、文字、数字、図形などを表示する。この表示器13の表示内容は、バス20に接続された表示制御回路17によって制御される。楽音信号発生回路14は、バス20に接続されていて、後述するCPU31の制御のもとに供給される演奏データに基づいて楽音信号を生成する。この生成される楽音信号には、演奏操作子群11の操作によって発生される楽音信号に加え、自動演奏による楽音信号、自動伴奏などによる楽音信号も含まれる。そして、これらの楽音信号の音色、ピッチシフト量および音量、各楽音間の音量バランスも、CPU31から供給される楽音制御データによって制御される。また、楽音信号発生回路14においては、楽音信号に効果を付与するための効果回路も含まれており、同効果の付与もCPU31から供給される楽音制御データによって制御される。そして、楽音信号発生回路14にて生成された楽音信号は、サウンドシステム18に出力される。サウンドシステム18は、スピーカ、アンプなどを含んでいて、楽音信号発生回路14からの楽音信号に対応した楽音を放音する。
また、この電子楽器は、バス20にそれぞれ接続されていてマイクロコンピュータ本体部を構成するCPU31、タイマ32、ROM33およびRAM34を備えているとともに、外部記憶装置35および通信インターフェース回路36も備えている。外部記憶装置35は、この電子楽器に予め組み込まれているハードディスクHD、同電子楽器に装着可能なコンパクトディスクCD、フレキシブルディスクFDなどの種々の記録媒体と、同各記録媒体に対するドライブユニットを含むものであり、大量のデータ及びプログラムを記憶及び読み出し可能にしている。
本実施形態の場合、これらの外部記憶装置35は、図2〜5のプログラムに加えて、複数の曲データおよび複数組のレジストレーションデータを記憶するようになっている。曲データは、演奏イベント(キーオン、キーオフなど演奏情報)を時系列的に配置したもので、その再生により、メロディ音、伴奏音などの楽音の発生を制御する。各組のレジストレーションデータは、複数のプリセットデータ(本実施形態では、16種類のプリセットデータ)からなる。各プリセットデータは、自動演奏および演奏操作子群11によって発生されるメロディ音および伴奏音からなる楽音信号の音色、ピッチシフト量および音量、各楽音間の音量バランス、および楽音信号に効果を付与される効果を制御するための複数のパラメータからなる。
図7は、曲データとレジストレーションデータの記憶構造の例を示している。図中、「Drive A」、「Drive B」などは、外部記憶装置35に含まれるハードディスク、フレキシブルディスクなどの記録媒体、後述する外部機器41の記録媒体など、すなわち種々の記録媒体のドライブの種類を示す。各ドライブには、複数の異なる曲データにそれぞれ対応した複数のソングフォルダ(例えば、「Song 01」、「Song 02」など)が含まれる。各ソングフォルダには、複数の異なる電子楽器の種類(機種)に対応した複数のサブフォルダ(例えば、「Model A」、「Model B」など)が含まれる。各サブフォルダには、曲データを記憶した1つの曲データファイル(例えば、「Song01.mid」、「Song02.mid」など)と、複数のプリセットデータからそれぞれなって各曲データに対応した複数組のレジストレーションデータファイル(例えば、「Reg01.reg」、「Reg02.reg」など)とが含まれる。
通信インターフェース回路36は、他の電子楽器、パーソナルコンピュータなどの外部機器41に接続可能となっていて、この電子楽器が外部機器41と各種プログラム及びデータを交信可能となっている。外部機器41として例えば鍵盤のような演奏装置を採用して、演奏操作子群11による演奏に代えまたは加えて、外部機器41から演奏情報を入力するようにしてもよい。また、通信インターフェース回路36は、インターネットなどの通信ネットワーク42を介して外部との接続も可能となっていて、この電子楽器が各種プログラム及びデータを外部から受信し、または外部へ送信できるようになっている。
次に、上記のように構成した実施形態の動作を説明する。まず、外部記憶装置35における曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルの蓄積について説明する。外部記憶装置35は複数の記録媒体を有していて各記録媒体に曲データ、レジストレーションデータなどを記憶させることが可能であるが、以下の説明では、外部記憶装置35の所定のドライブであるハードディスクに曲データ、レジストレーションデータなどを記憶させるものとして説明する。電子楽器の購入時には、曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルが、ハードディスクに図7のような記憶構造で予め記憶されている。また、ハードディスクに曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルが記憶されていなくても、フレキシブルディスク、外部機器41または通信ネットワーク42を介した外部(サーバ)から、図7のような記憶構造を有する曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルをハードディスクに書き込むこともできる。
既に、ハードディスクに曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルが記憶されている状態で、これらのデータファイルに、フォルダ(Song 0m)およびサブフォルダ(Model A)の指定された曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルを追加することもできる。この場合、曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルをそれぞれ独立に追加しても、同時に追加してもよい。これらのデータの蓄積においては、ユーザは、通常のパーソナルコンピュータと同様に、表示器13に表示される内容を見ながらファイル操作子12dを操作することにより、ファイルのコピーまたは移動操作を行えばよい。
次に、前記のようにして蓄積した曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルを管理するための曲管理ファイルを作成する動作と、同作成した曲管理ファイルに基づく曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルの表示について説明する。ユーザが、ファイル操作子12dを操作することによりフォルダのオープンを指示すると、CPU31は、図2のフォルダオープンプログラムの実行をステップS10にて開始する。このプログラムの実行開始後、ステップS12にて、ドライブ名を入力することと、曲管理ファイルの作成またはファイル表示の選択とを表示器13の表示によりユーザに促す。ユーザが、ファイル操作子12dの操作により、ドライブ名を入力するとともに曲管理ファイルの作成を選択すると、ステップS14にて「Yes」と判定して、ステップS16以降の処理を実行する。
ステップS16においては、指定ドライブ(この場合、ハードディスク)内に記憶されている全てのフォルダ名(曲データに対応)およびサブフォルダ(機種名データに対応)を読み出すとともに、各フォルダおよびサブフォルダに含まれている全ての曲データファイル名および複数組のレジストレーションデータファイル名を、各フォルダ名およびサブフォルダ名に対応させて読み出す。そして、ステップS18にて、前記読み出したフォルダ名(曲データに対応)、サブフォルダ名(機種名データに対応)、曲データファイル名および複数組のレジストレーションデータファイル名に基づき、曲管理ファイルを作成して、所定の記録媒体(この場合、ハードディスク)に記憶する。この曲管理ファイルは、図8に示すように、曲データの曲名を表す曲データファイル名Song Name(例えば、Song01)と、同曲データを記憶した曲データファイルのパスを表すパスデータSong Path(例えば、A:Song01¥Model A¥Song01.mid)と、同曲データに関連した複数組のレジストレーションデータを記憶した複数のレジストレーションデータファイルの各パスを表すパスデータReg01 Path(例えば、A:Song01¥Model A¥Reg01.reg),Reg02 Path(例えば、A:Song01¥Model A¥Reg02.reg)・・とからなり、パスデータの並び順はレジストレーションデータのファイル名順に自動的にソートされる。なお、これらのパスデータは、曲データファイルおよびレジストレーションデータファイルを規定していると同時に、ファイルが適合する機種名をも規定している。また、曲データの並び順に従い、曲データ指定操作子の操作に基づき順次曲データが指定される(ネクストソング機能)。
次に、ステップS20にて、前記作成した曲管理ファイルを参照し、この電子楽器に適合した機種名に対応したサブフォルダ内の曲データファイル名およびレジストレーションデータファイル名のみを取り出して、1つの曲データファイル名およびそれに対応した複数組のレジストレーションデータファイル名を表示器13に表示する。この場合、図9に示すように、曲名(例えば、Song01)ごとに、それに対応した曲データファイル名Song Name(例えば、Song01)と、それに関連したレジストレーションデータファイル名Reg1(例えば、Reg01),Reg2(例えば、Reg02)・・とが表示される。なお、この電子楽器に適合しない機種に関する曲データファイル名およびレジストレーションデータファイル名は表示されないので、ユーザはこの機種に適合しない曲データに関しては考慮しなくもよくなる。また、表示器13の画面下部には、次曲データおよび前曲データの表示のための指示ボタン、レジストレーションデータの新規作成、削除および順序入れ換えなどを指示するための指示ボタンなどが表示される。そして、次曲データおよび前曲データの表示のための指示ボタンを、ファイル操作子12dを操作することにより指定すれば、新たな曲に関するデータ名を順次切換えて表示することが可能である。
これらの動作により、指定ドライブに記憶されるとともにこの電子楽器において適用可能な全ての曲データに対して、各曲データごとの複数のレジストレーションデータの関連付けを表す管理データを記憶した曲管理ファイルが作成される。そして、作成された曲管理ファイルによって規定される曲データと複数のレジストレーションデータとの関係が表示されて、ユーザによって確認される。なお、前記ステップS20の曲管理ファイルの表示においては、前記に代えて、図7の記憶構造例のように、曲データファイル名および複数組のレジストレーションデータファイル名をツリー状に表示するようにしてもよい。
一方、ステップS12にて、ユーザがファイルの表示を選択した場合、ステップS14にて「No」と判定して、ステップS22に進む。現在指定されているドライブ内に曲管理ファイルが存在していれば、ステップS22にて「Yes」と判定して、前述したステップS20の処理により、既に作成済みの曲管理ファイルに基づいて、1つの曲データファイル名および複数組のレジストレーションデータファイル名を表示器13に表示する。曲管理ファイルが存在しなければ、前述したステップS16,S18の処理によって曲管理ファイルを作成したうえで、ステップS20の処理が実行される。そして、ステップS20の処理後、ステップS24にてフォルダオープンプログラムの実行を終了する。
次に、所定のドライブに記憶したレジストレーションデータを変更する場合について説明する。まず、レジストレーションデータを追加する場合について説明するが、外部機器41、通信ネットワーク42、一つの記録媒体(例えば、フレキシブルディスク)から他の記録媒体(この場合、ハードディスク)にレジストレーションデータを追加する場合については前述したとおりである。ここでは、この電子楽器にて設定されている1組のレジストレーションデータを外部記憶装置35の所定の記録媒体(この場合、ハードディスク)に追加する場合について説明する。
この種の電子楽器においては、通常、ROM33、外部記憶装置35、外部機器41または通信ネットワーク42からRAM34に複数のプリセットデータからなる1組のレジストレーションデータをファイル操作子12dの操作によって転送しておき、または前記転送されたレジストレーションデータを演奏環境切り換え操作子12bの操作によって切り換えたレジストレーションデータをRAM34内に記憶させておき、レジストレーションデータの中の複数のプリセットデータを演奏環境切り換え操作子12bの操作により順次読み出して演奏環境(楽音の発生環境)を切り換えながら、曲データの再生と連動し、または同再生とは独立して、演奏操作子群11の操作により楽曲を演奏することがある。また、このRAM34内のレジストレーションデータの一部を演奏環境設定操作子12aを操作することにより変更することも可能である。そして、ここでは、このRAM34内に記憶したレジストレーションデータを前記外部記憶装置35の所定の記録媒体(この場合、ハードディスク)に追加する。
この場合、ユーザは、ファイル操作子12dを操作することにより、曲データを指定するとともに、RAM34に記憶されている1組のレジストレーションデータの追加を指示する。なお、曲データの指定においては、現在、利用中の曲データすなわち現在再生の指示されている曲データがある場合には、このレジストレーションデータの追加のために曲データを特に指定しない限り、利用中の曲データが自動的に指定される。この場合、CPU31は、図3に示すレジストレーション編集プログラムをステップS30にて開始し、ステップS32にて「Yes」すなわちレジストレーションデータの追加であると判定して、ステップS34,S36の処理を実行する。
ステップS34においては、電子楽器にて現在設定されている環境すなわち前記RAM34内に記憶されている複数のプリセットデータからなる1組のレジストレーションデータからなるレジストレーションデータファイルを作成して、現在指定されているドライブ(この場合、ハードディスク)に記憶する。この場合、ファイル名は、前述した曲管理ファイルを参照して、曲名データに関連付けられた複数のレジストレーションデータファイルに関する空き番号のうちで最小である番号(すなわち使用されていない最小の番号)を用いて決定される。例えば、前記ファイル番号が「1」から「m」まで既に用いられていれば、追加されるレジストレーションデータファイルのファイル名は、Reg0m+1.regとなる。また、「1」から「m」までの中で不使用の番号があれば、同不使用の番号が用いられる。そして、このレジストレーションデータは、前記指定されている曲データファイル名によって指定されるフォルダ内であって、この電子楽器の機種に対応したサブフォルダ内に記憶されることになる。
ステップS36においては、曲管理ファイルが更新される。この場合、前記指定されている曲データファイルに対応する最後のレジストレーションデータファイルのパスデータの次に、前記新たに記憶したレジストレーションファイル名のパスデータ(例えば、A:Song01¥Model A¥Reg0m+1.reg)が追加される。そして、ステップS36の処理後、ステップS38,S44にて共に「No」と判定して、ステップS48にて、前記図2のステップS20の処理と同様に、更新した曲管理ファイルに基づいて曲データファイル名およびレジストレーションデータファイル名を表示器13に表示して、ステップS50にてこのレジストレーション編集プログラムの実行を終了する。
次に、レジストレーションデータの削除について説明する。このレジストレーションデータの削除は、通常、曲管理ファイルを表示器13にて表示している状態(図9参照)で行われる。ユーザが、ファイル操作子12dを操作することにより、表示器13に表示されている複数組のレジストレーションデータの中から削除されるべき1組または複数組のレジストレーションデータを指定するとともに、削除を指示すると、前述した図3のレジストレーション編集プログラムの実行が開始され、ステップS38における「Yes」との判定のもとに、ステップS40,S42の処理を実行する。
ステップS40においては、前記指定されたレジストレーションデータファイルを削除する。ステップS42においては、曲管理ファイルを更新する。具体的には、削除されたファイル以降のパスデータを1つずつ前にシフトする。そして、ステップS44にて「No」と判定して、ステップS48にて、前記図2のステップS20の処理と同様に、更新した曲管理ファイルに基づいて曲データファイル名およびレジストレーションデータファイル名を表示器13に表示して、ステップS50にてこのレジストレーション編集プログラムの実行を終了する。
次に、レジストレーションデータの順序の入れ替えについて説明する。このレジストレーションデータの入れ替えも、通常、曲管理ファイルを表示器13にて表示している状態(図9参照)で行われる。ユーザが、ファイル操作子12dを操作することにより、表示器13に表示されている複数組のレジストレーションデータファイルの中から順序が入れ替えられるべき2組のレジストレーションデータファイルを指定するとともに、順序入れ替えを指示すると、前述した図3のレジストレーション編集プログラムの実行が開始され、ステップS44における「Yes」との判定のもとに、ステップS46の処理を実行する。
ステップS46においては、曲管理ファイルを更新する。具体的には、前記入れ替えの指定された2組のファイルのパスデータの順序を入れ替える。そして、ステップS48にて、前記図2のステップS20の処理と同様に、更新した曲管理ファイルに基づいて曲データファイル名およびレジストレーションデータファイル名を表示器13に表示して、ステップS50にてこのレジストレーション編集プログラムの実行を終了する。このようなレジストレーション編集プログラムの実行により、レジストレーションデータおよび曲管理ファイルが更新される。なお、前述のステップS12においてユーザが曲管理ファイルの作成を指示するのは、上記レジストレーション編集プログラムによって編集された(パスデータの並び順がレジストレーションデータのファイル名順ではなくなった)曲管理ファイル内のパスデータの並び順をレジストレーションデータのファイル名順に更新した場合である。
次に、この電子楽器にて曲データを再生するモードについて説明する。この場合、ユーザは、ファイル操作子12dを操作することにより再生を希望する曲データを指定するとともに、モード設定操作子12cを操作することにより再生を指示する。曲データの指定においては、表示器13にて曲データファイル名およびレジストレーションファイル名を画面表示した後に、曲データファイル名を選択するようにするとよい。また、曲データファイル名(曲名データ)を直接入力して、曲データを指定してもよい。さらに、曲データの再生のみを指示してもよい。ユーザによる再生の指示により、図4の曲データ再生プログラムの実行がステップS60にて開始される。
このプログラムの実行開始後、ステップS62にて曲管理ファイルを参照し、ステップS64にてこの電子楽器に適合する曲データがあるかを判定する。この電子楽器を用いて作成した曲データあるいはこの電子楽器用として提供されている市販の曲データなどの場合には、ステップS64にて「Yes」と判定してステップS66に進む。しかし、曲管理ファイルにこの電子楽器に適合する曲データファイルが存在しなければ、すなわち他モデルの電子楽器用の曲データのみが存在していた場合には、ステップS64にて「No」と判定してステップS68に進む。
ステップS66においては、前記指定された曲データファイル名に対応するファイルが開かれて同ファイル中の曲データが読み出されてRAM34に転送記憶される。この後、曲管理ファイル中の前記曲データファイル名に対応した複数のレジストレーションデータファイルのうちの先頭のレジストレーションデータファイルが開かれて1組のレジストレーションデータが読み出されてRAM34に転送記憶される。この1組のレジストレーションデータを、ファイル操作子12dを操作することにより、曲管理ファイル中の前記曲データファイル名に対応した複数のレジストレーションデータファイルの中から選択した他のレジストレーションデータファイル中の1組のレジストレーションデータに変更することも可能である。
一方、ステップS68においては、前記指定された曲データファイル名に対応する他モデル用のファイルが開かれて同ファイル中の曲データが読み出されてRAM34に転送記憶される。この後、曲管理ファイル中の前記曲データファイル名に対応した複数のレジストレーションデータファイルのうちの先頭のレジストレーションデータファイルが開かれて1組のレジストレーションデータが読み出されてRAM34に転送記憶される。この1組のレジストレーションデータも、ファイル操作子12dを操作することにより、曲管理ファイル中の前記曲データファイル名に対応した複数のレジストレーションデータファイルの中から選択した他のレジストレーションデータファイル中の1組のレジストレーションデータに変更することも可能である。
前記ステップS66,S68の処理により、曲データおよびレジストレーションデータがRAM34に転送されると、図示しない自動演奏プログラムの実行を開始させて、ステップS70にてこの曲データ再生プログラムの実行を終了する。自動演奏プログラムの実行開始により、前記RAM34に転送された曲データが時間経過に従って再生され、この再生された曲データに基づいて、楽音の発生を制御するための制御信号が時間経過に従って楽音信号発生回路14に供給され、前記曲データに従った楽曲が自動演奏される。ユーザが、この自動演奏音を聞きながら演奏操作子群11を演奏操作すれば、同演奏操作に応じた楽音の発生を制御するための制御信号が楽音信号発生回路14に供給され、前記自動演奏音と同時に演奏操作子群11による演奏音が発せられる。この場合、ユーザはモード設定操作子12cを操作することにより、自動演奏音の一部(例えば、メロディ音または伴奏音)のみを発生させて、演奏操作子群11によるパート練習を自動演奏音に合わせて行うこともできる。また、この状態では、モード設定操作子12cを操作することにより、自動演奏の停止、再起動も自由に行うことができる。
そして、前記自動演奏または演奏操作群11の演奏による楽音の発生環境(演奏環境)は、RAM34に前記転送記憶された1組のレジストレーションデータによって制御される。すなわち、楽音の音色、ピッチシフト量、音量、効果、音量バランスなどが、1組のレジストレーションデータを構成する複数(例えば、16個)のプリセットデータによって制御される。この場合、演奏者が、演奏環境切り替え操作子12b(例えば、本実施形態の16個の操作子のうちのいずれかの操作子)を操作することにより、複数のプリセットデータのうちで任意のプリセットデータを切り換え選択できる。また、演奏環境切り替え操作子12b(例えば、本実施形態の1個のフット操作子)を時間経過に従って順次操作することにより、複数のプリセットデータを順に切り換えることもできる。なお、1組のレジストレーションデータの最後のプリセットデータが電子楽器の楽音発生環境(演奏環境)を指定している状態で、前記演奏環境切り換え操作子12bを操作すれば、曲管理ファイル中で規定されているレジストレーションデータの並び順のうちで次の1組のレジストレーションデータが現在の指定ドライブ(この場合、ハードディスク)から読み出されてRAM34に転送記憶される。そして、このRAM34に転送記憶された1組のレジストレーションデータの中の1番目のプリセットデータが楽音発生環境(演奏環境)を制御するデータとして楽音信号発生回路14に出力される。あるいは、前記演奏環境切り換え操作子12bの操作により、レジストレーションの組を順次切り換えることもできる。さらには、曲データ中にこの種の切り換え操作を表すデータを含ませておけば、曲データの再生時に複数のプリセットデータや複数のレジストレーションデータを自動的に切り換えることも可能である。その結果、自動演奏または演奏操作群11の演奏によって発生される楽音の態様を、曲データに適しかつ変化に富んだものとすることができる。
次に、ファイル操作子12dの操作ミス、不適当なタイミングにおける図示しない電源スイッチのオフ操作などにより、曲管理ファイルが壊されてしまった場合について説明する。この場合、曲管理ファイルが壊されてしまった時点または曲管理ファイルが壊された後の電子楽器の作動開始直後に、曲管理ファイル異常検出プログラム(1)が実行される。なお、曲管理ファイルが壊されたことの検出は、通常のパーソナルコンピュータなどで利用されているとともに図示しないプログラムの実行によって検出される。
この曲管理ファイル異常検出プログラム(1)の実行は図5のステップS80にて開始され、CPU31は、ステップS82にて壊された現在の曲管理ファイルをリネームしてバックアップする。すなわち、新たなファイル名を付して外部記憶装置35の所定のドライブ(この場合、ハードディスク)にコピーする。次に、ステップS84にて空の曲管理ファイルを新たに作成して、ステップS86にて空の曲ファイルに基づく画面表示処理を行う。そして、ステップS88にて、ファイルが壊れてフォルダにアクセスできなくなった旨を画面表示し、ステップS90にてこの曲管理ファイル異常検出プログラム(1)の実行を終了する。
ユーザは、前記ファイルが壊れた旨の表示に応答して、前述した曲管理ファイルの作成を指示する。これにより、前述した図2のフォルダオープンプログラムが実行されて、曲管理ファイルに関するデータが新たに作成され、前記作成した空の曲管理ファイルに格納される。
また、前記図5の曲管理ファイル異常検出プログラム(1)に代えて、図6の曲管理ファイル異常検出プログラム(2)を実行するようにしてもよい。この曲管理ファイル異常検出プログラム(2)は、ステップS100にて開始され、ステップS102にて、前記図5のステップS82と同様に、壊された現在の曲管理ファイルをリネームしてバックアップする。次に、前記図2のステップS16〜S20と同様なステップS104〜S108の処理により、新たな曲管理ファイルを作成するとともに、同ファイルの内容を表示する。そして、ステップS110にて、ファイルが壊れてレジストレーションの順序が変わった可能性がある旨の表示をして、ステップS112にてこの曲管理異常検出プログラム(2)の実行を終了する。
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、図2のフォルダオープンプログラムの実行により、曲データに対して複数組のレジストレーションデータの関連付けを表す管理データが作成されて曲管理ファイル内に格納される。そして、図4の曲データ再生プログラムの実行により、この曲管理ファイル内の管理データが参照されて、再生される1つの音楽データに関連する複数組のレジストレーションデータが外部記憶装置35から選択的に読み出されるようにした。したがって、ユーザにとって、曲データとレジストレーションデータとの関係が分かり易くなり、1つの曲データに対して複数のレジストレーションデータを簡単に対応付けることができるとともに、レジストレーションデータの取り扱いが簡単になり、ひいては電子楽器を利用し易くなる。
また、管理データは複数組のレジストレーションデータの切り換え順序も規定しており、図3のレジストレーション編集プログラムの実行により、複数組のレジストレーションデータの切り換え順序が編集されるので、簡単な操作により環境設定データを所望の切り換え順序で読み出すことが可能となり、さらにレジストレーションデータの取り扱いが簡単になり、ひいては電子楽器を利用し易くなる。また、各曲データと同各曲データに対応付けられる複数組のレジストレーションデータは電子楽器の種類毎に用意されるとともに、管理データは曲データおよび複数組のレジストレーションデータと電子楽器の機種名との関係も規定しており、曲データ再生プログラムの実行により、曲管理ファイル内の管理データが参照されて、電子楽器の機種に適合した曲データ及びレジストレーションデータが利用されるようにした。また、ユーザは、電子楽器の種類を意識しなくても、最適な曲データ及びそれに対応付けられた複数組のレジストレーションデータを用いて曲データの再生が可能になり、さらに電子楽器を利用し易くなる。
さらに、上記実施形態によれば、図5,6の管理ファイル異常検出プログラム(1)(2)の実行により、曲管理ファイル内の管理データが壊されたとき、同壊された管理データがバックアップされるとともに、新規な管理データが作成されるので、管理データが壊されても、電子楽器の動作不能になるなどの最悪の事態を回避できる。また、バックアップファイルが自動作成されるので、管理データが壊される前の作業中であった状態が復元される可能性もある。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、外部記憶装置35の所定の記録媒体としてハードディスクを採用して、同ハードディスクに曲データ、レジストレーションデータおよび曲管理ファイルが記憶されるものとして説明したが、ハードディスクに代えて他の記録媒体を採用してもよいことは言うまでもない。そして、この他の記録媒体に曲データ、レジストレーションデータおよび曲管理ファイルを記憶する動作も、上記ハードディスクの場合と同様である。
また、上記実施形態においては、曲データを音楽データとして採用するようにした。しかし、音楽データは、曲データに限らず、マーチ、ワルツ、ジャズなどの伴奏スタイルごとに設けた伴奏パターンデータ、楽曲の短いフレーズを表すフレーズデータ、アルペジオ演奏パターンまたはアルペジオ演奏自体を表すアルペジオデータ等、単独で楽音の発生を制御可能である演奏データまたは演奏操作子群11の演奏と関連して楽音の発生を制御可能である伴奏データであってもよい。
また、上記実施形態においては、楽音の音色、ピッチシフト量および音量、各楽音に付与される効果、各楽音間の音量バランスなどを制御するための制御データを環境設定データとして説明したが、楽音の発生環境すなわち電子楽器の演奏環境を設定するものであれば、いかなる種類の制御データであってもよく、またその種類数もいくつであってもよい。
また、上記実施形態においては、各音楽データ(曲データ)に対して独立した環境設定データ(レジストレーションデータ)を設けるようにした。しかし、この環境設定データを複数の異なる音楽データに対して共通に用いるようにしてもよい。この場合、曲管理ファイル中の管理データ中で参照する環境設定データのパスデータを複数の音楽データに対してそれぞれ共通にするとよい。また、1つのフォルダ内に記憶されている環境設定データへのショートカット(或いはエイリアス)を他のフォルダに記憶しておき、このショートカット(エイリアス)へのパスデータを曲管理ファイルの管理データ中に記述しておくようにしてもよい。
さらに、上記実施形態では、演奏操作子として鍵を採用した電子楽器について説明したが、鍵に代えて、単なる押圧スイッチ、タッチスイッチなどを音高を指定する演奏操作子として採用してもよい。また、本発明は、鍵盤装置およびその他の外部機器を接続して演奏データを入力可能する装置であれば、シーケンサ装置、パーソナルコンピュータなどの他の装置にも適用できる。
11…演奏操作子群、12…設定操作子群、12a…演奏環境設定操作子、12b…演奏環境切り換え操作子、12c…モード設定操作子、12d…ファイル操作子、13…表示器、14…楽音信号発生回路、31…CPU、33…ROM、34…RAM、35…外部記憶装置、36…通信インターフェース回路