JP2005144751A - 表面離型性部材、表面離型性加熱部材およびそれらを用いた加熱定着装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 記録材上に未定着画像を加熱定着させる際に、非粘着性を具備するオフセット防止層、いわゆる離型層について離型効果を失うことなく耐摩耗性を維持し、かつ定着ローラ表層を導電性に保持したまま静電オフセットの防止効果を持続させ、定着ローラ最表層に対して耐摩耗性を維持する層を強固に付与することができる表面離型性部材、表面離型性加熱部材ならびにそれらを用いた加熱定着装置を提供する。
【解決手段】 基体(アルミ合金)3上に耐熱性の中間層4に弾性体層5として、フッ素系TPEでありフッ素ゴムとフッ素樹脂が結合した一種のポリマーアロイである熱可塑性エラストマー(TPE)を用いる。
【選択図】 図2
【解決手段】 基体(アルミ合金)3上に耐熱性の中間層4に弾性体層5として、フッ素系TPEでありフッ素ゴムとフッ素樹脂が結合した一種のポリマーアロイである熱可塑性エラストマー(TPE)を用いる。
【選択図】 図2
Description
本発明は表面の非粘着に加えて、耐摩耗性や耐擦性などの機械的耐久性を要求される加工用ローラ、ベルト、パッド、押し圧工具、または加熱ローラ、加熱ベルト、加圧ローラの構成、あるいは熱定着用部材の材料およびその層構成に関し、特に、電子写真式の複写機、プリンタ等の画像形成に用いられる、耐摩耗性、低摩擦性に優れ、かつ非粘着表面層を有する加熱定着ローラ、ベルト等の加熱定着部材に関する。
一般的な電子写真複写機等の画像形成装置用の定着装置としては様々な定着方式のものが提案され、実施されている。例えば低〜中速の電子写真複写機ではローラ定着タイプのもの、特にローラ対の少なくとも一方が熱源によって加熱されるローラのタイプである加熱ローラ定着装置(ヒートロール定着方式)が主流をなしている。
ここで一対のローラのうち、記録材の画像担持側の面に接するローラを加熱定着ローラまたは単に定着ローラと呼び、他方のローラを加圧ローラと呼ぶ。ローラ定着タイプの定着装置において、定着ローラは記録材の画像担持面に直接に接触するため、永らく稼動しているうちに、記録材上の画像を構成している顕画剤(以下、トナーと記す)の一部が定着ローラ表面に粘着しやすくなり、この付着したトナーがローラ回転に伴い再び記録材上に転写されるいわゆる「オフセット現象」を発生することがある。
そこで、このオフセット現象を防止する手段として従来技術では下記のような種々の手段が採択されている。
(1)定着ローラ外周面にポリテトラフロロエチレン樹脂(以下、PTFEと記す)などのフッ素樹脂を用いて高離型性材料のオフセット防止層を設けて定着ローラ層の離型性(非粘着性)を向上させる。
(2)定着ローラ周面にシリコンオイル等の離型剤を塗布する手段を具備している。
(3)定着ローラ周面の汚染物を清掃除去するブレードやウェブ等の摺擦クリーニング手段を具備している。
(4)定着ローラ芯金に記録材上に担持させた未定着画像のトナーと同極性の直流バイアスを印加する。
(5)上記(1)〜(4)の手段の組み合わせ。
(1)定着ローラ外周面にポリテトラフロロエチレン樹脂(以下、PTFEと記す)などのフッ素樹脂を用いて高離型性材料のオフセット防止層を設けて定着ローラ層の離型性(非粘着性)を向上させる。
(2)定着ローラ周面にシリコンオイル等の離型剤を塗布する手段を具備している。
(3)定着ローラ周面の汚染物を清掃除去するブレードやウェブ等の摺擦クリーニング手段を具備している。
(4)定着ローラ芯金に記録材上に担持させた未定着画像のトナーと同極性の直流バイアスを印加する。
(5)上記(1)〜(4)の手段の組み合わせ。
また、オフセット防止手段を行う技術として、以下のような従来技術が公開されている。
定着ローラの熱伝導性向上、トナー飛び散り防止、耐摩耗性のためSiCのウイスカーや粒状のものを充填剤に使用する(特許文献1参照)。
定着ローラの耐オフセット性、耐摩耗性の両立のため導電性酸化物の外殻を持つ二重シェル構造の充填剤を使用し、シェルの内殻は耐摩耗の無定形シリカ、外殻は酸化スズなどの導電性のものを使用する(特許文献2参照)。
加圧ローラの弾性および特性の改善をし、シリコンゴム組成物の表面にフッ素樹脂チューブを被覆する。さらにシリコン組成物の低温硬化によって歪みを小さくし、フッ素樹脂チューブとの接着性を改善したものがある(特許文献3参照)。
表面層に添加される充填材の投影面積が630μm2以下に制限された構成により、充填材が表面層に突出して紙粉やトナー粉からなる混合塊がその突出域に形成されても、複写画像の品質を損ねるほどの大きさのトナー斑点が発生せず、安定して高品質のコピーを提供している(特許文献4参照)。
特開2000−19879号公報
特開平6−348165号公報
特開平9−255875号公報
特開平8−44234号公報
定着ローラの熱伝導性向上、トナー飛び散り防止、耐摩耗性のためSiCのウイスカーや粒状のものを充填剤に使用する(特許文献1参照)。
定着ローラの耐オフセット性、耐摩耗性の両立のため導電性酸化物の外殻を持つ二重シェル構造の充填剤を使用し、シェルの内殻は耐摩耗の無定形シリカ、外殻は酸化スズなどの導電性のものを使用する(特許文献2参照)。
加圧ローラの弾性および特性の改善をし、シリコンゴム組成物の表面にフッ素樹脂チューブを被覆する。さらにシリコン組成物の低温硬化によって歪みを小さくし、フッ素樹脂チューブとの接着性を改善したものがある(特許文献3参照)。
表面層に添加される充填材の投影面積が630μm2以下に制限された構成により、充填材が表面層に突出して紙粉やトナー粉からなる混合塊がその突出域に形成されても、複写画像の品質を損ねるほどの大きさのトナー斑点が発生せず、安定して高品質のコピーを提供している(特許文献4参照)。
しかしながら、従来のオフセット防止手段については、以下のような問題があった。
(1)では、PTFE等のフッ素樹脂の被覆層を設けたローラは優れた非粘着性を示すが、トナー結着樹脂の種類によっては離型性の悪いものがあり、トナーの一部が粘着してローラ面を汚染することがある。
また、近年、低コスト化の要求、サービス性の向上、産業廃棄物の規制等から定着ローラ各種部品の高耐久化が強く求められているが、フッ素樹脂は無機硬質粒子ほど表面が硬くなく、表面摩耗に対しては、PTFE等のフッ素樹脂層を設けた定着ローラの耐摩耗性は十分ではなく寿命が短いという欠点がある。
(1)では、PTFE等のフッ素樹脂の被覆層を設けたローラは優れた非粘着性を示すが、トナー結着樹脂の種類によっては離型性の悪いものがあり、トナーの一部が粘着してローラ面を汚染することがある。
また、近年、低コスト化の要求、サービス性の向上、産業廃棄物の規制等から定着ローラ各種部品の高耐久化が強く求められているが、フッ素樹脂は無機硬質粒子ほど表面が硬くなく、表面摩耗に対しては、PTFE等のフッ素樹脂層を設けた定着ローラの耐摩耗性は十分ではなく寿命が短いという欠点がある。
定着ローラの表面は、ブレード等のクリーニング手段、離型剤塗布手段、記録材分離爪、温度検出素子、加圧ローラ等で摺擦を受けて摩耗する。そして大量の紙(記録材)を通した時、紙から紙粉が発生し、定着ローラに付着する。この紙粉は定着ローラに当接させたクリーニングブレード等で除去されることになるが、特に紙のエッジ分では紙端分によって引き起こされる摩耗や紙粉の発生が顕著であり、紙粉に含まれる種々の無機充填剤によりローラ表面は摩耗する。そして、定着ローラは、表面の摩耗により平滑性を失うことで本来の離型性が低下する。
(2)では、純粋なフッ素樹脂の被覆層は、一般に絶縁性もしくは高抵抗であるため、その表面が記録材・加圧ローラなどの対ローラ当接分との摺擦による摩擦帯電により大きく帯電して記録材上のトナーが静電作用により定着ローラ表層に吸着されて、いわゆる静電オフセット現象が発生しやすい。
一般にフッ素樹脂は記録材などとの摺擦により負(−)に大きく帯電する。トナーが正(+)の極性を持つ場合、トナーは負帯電のフッ素樹脂被覆層の電界に引きつけられ定着ローラ表面に静電オフセット現象で付着しやすくなる。
(3)では、耐摩耗性改善手段として、一般にフッ素樹脂等の耐摩耗性は、これにガラス粉、シリカ、炭化ケイ素粉末、ダイヤモンド粉末、コランダム粉、ニッケルや鉄などの金属粉などの比較的高い硬度をもつ無機充填剤を混入することにより向上させることができるが、混合量が少ないと耐摩耗性向上の効果が十分でなく、混合量を増加していくと、離型性が悪くなり、また定着ローラの表面性も悪くなり、オフセット防止効果が低下する。一般にこれらの充填剤はフッ素樹脂中への分散性が悪く、また分散できたとしても充填剤とフッ素樹脂との接着性が悪くなり耐久等により定着ローラ被覆層の充填剤の一部が離脱する等の現象が生じていた。
充填剤が分散不良の場合は、耐久により充填剤の少ない部分が先にスジ状あるいはまだら状に削れたりして削れた部分にトナーが埋め込まれ定着ローラの非粘着性の低下をきたす場合が多かった。
充填剤が離脱した場合は離脱した部分にトナーが埋まり、あるいは離脱した充填剤が逆に研磨剤として作用し、摩耗を加速するなどの問題が生じた。
(4)では、静電オフセット防止手段として、被覆層にカーボンブラック、金属粉、二酸化チタン等の低抵抗の微粉末、またはチタン酸カリウム等の導電化したウィスカー状単結晶繊維等の導電性充填剤を混入させることで被覆層を低抵抗化させて被覆層の摩擦帯電を防止することで静電オフセット現象を防止できる。
この場合、導電性充填剤に要求される性能は、以下に示すものとなる。
・被覆層材料中への分散性が良好で均一であること
・被覆層材料に対する接着性が良好であること
・被覆層の耐摩耗性が向上すること
・被覆層に十分な導電性を付与できること
・被覆層表面の平滑性が得られること
等である。
・被覆層材料中への分散性が良好で均一であること
・被覆層材料に対する接着性が良好であること
・被覆層の耐摩耗性が向上すること
・被覆層に十分な導電性を付与できること
・被覆層表面の平滑性が得られること
等である。
しかしながら従来の充填剤は、上記のような性能をすべて満足させることが困難であった。
例えば、カーボンあるいは導電化したウィスカー状単結晶繊維の場合は、フッ素樹脂被覆層を強靱化し耐摩耗性を良くする効果があまり認められず、長期間の使用により被覆層がスジ状に摩耗したりして表面平滑性が悪くなり、オフセット現象を生じたり、定着性が悪くなったりする場合があった。
例えば、カーボンあるいは導電化したウィスカー状単結晶繊維の場合は、フッ素樹脂被覆層を強靱化し耐摩耗性を良くする効果があまり認められず、長期間の使用により被覆層がスジ状に摩耗したりして表面平滑性が悪くなり、オフセット現象を生じたり、定着性が悪くなったりする場合があった。
カーボン等の微粉末の充填剤は粒径が微細で樹脂を強化させるいわゆるフィラー効果がないからである。また分散性が悪く2次凝集し易いという欠点を持ち、耐静電オフセット性を満足させるためには必要以上の量を使用する必要があった。
チタン酸カリウム等のウィスカー状単結晶繊維は比較的に比表面積が大であるために耐静電オフセット性は良好であったが、やはり耐摩耗性を向上させる効果は少なかった。これはこの材料がウィスカー状であるために比較的もろく、かつフッ素樹脂中で樹脂の強度を補強するために要求される3次元橋かけ構造をとりにくいからと考察されている。
(5)では、定着ローラの耐久性を重視するあまり、充填剤等を利用し、表面を必要以上に硬質化すると、トナー定着性の不良などで逆に定着後の画質が悪くなるという欠点があった。
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、記録材上に未定着画像を加熱定着させる際に、非粘着性を具備するべきオフセット防止層、いわゆる離型層について離型効果を失うことなく耐摩耗性を維持し、かつ定着ローラ表層を導電性に保持したまま静電オフセットの防止効果を持続すること、ならびに定着画像の高画質化の要求に応えて、適度な弾性を付与するための材料構成を提供すると同時に、定着ローラ最表層に対して耐摩耗性を維持する層を強固に付与することができる表面離型性部材、表面離型性加熱部材およびそれらを用いた加熱定着装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1記載の表面離型性部材は、少なくとも1種の弾性体材料と、含フッ素高分子の共重合物からなる材料を少なくとも1種含み、該フッ素高分子の共重合物からなる材料には炭素系ナノクラスター材料を充填物として含む表面離型性材料によって構成されていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の表面離型性部材であって、表面離型性部材は、表面離型性材料を積層して構成することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、表面離型性部材は、表面離型性材料を混合して構成することを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の表面離型性部材であって、炭素系ナノクラスター材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトナノファイバー、グラファイトナノシート、フラーレンのいずれか、あるいはそのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする。
請求項5記載の表面離型性加熱部材は、最外層が含フッ素高分子の共重合物からなる材料を少なくとも1種含み、該含フッ素高分子の共重合物からなる材料には炭素系ナノクラスター材料を充填物として含む層からなり、その他の層には熱可塑性エラストマーの層を少なくとも一層含むことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の表面離型性加熱部材であって、熱可塑性エラストマーは、フッ素系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項5または6記載の表面離型性加熱部材であって、表面離型性加熱部材は、その他の層にシリコンゴムの層を少なくとも一層含むことを特徴とする。
請求項8記載の加熱定着装置は、加熱定着部材と、加圧部材を備えた加熱定着装置において、表面離型性加熱部材から構成される加熱定着部材と、表面離型性部材から構成される加圧部材とを有することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の加熱定着装置であって、表面離型性加熱部材は、転写紙と接する表面層が含フッ素高分子の共重合物からなる材料を少なくとも1種含み、該含フッ素高分子の共重合物からなる材料には、炭素系ナノクラスター材料を充填物として含む層からなり、その他の層には熱可塑性エラストマー層を少なくとも一層含むことを特徴としている。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の加熱定着装置であって、熱可塑性エラストマーは、フッ素系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項9記載の加熱定着装置であって、表面離型性加熱部材は、その他の層にシリコンゴムの層を少なくとも一層含むことを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項8記載の加熱定着装置であって、表面離型性部材は、少なくとも1種の弾性体材料と、含フッ素高分子の共重合物からなる材料を少なくとも1種含み、該含フッ素高分子の共重合物からなる材料には炭素系ナノクラスター材料を充填物として含む表面離型性材料から構成されていることを特徴とする。
請求項13記載の発明は、請求項12記載の加熱定着装置であって、表面離型性部材は、表面離型性材料を積層して構成していることを特徴とする。
請求項14記載の発明は、請求項12記載の加熱定着装置であって、表面離型性部材は、表面離型性材料を混合して構成していることを特徴とする。
以上の説明から、本発明は一つの離型性材料にハードセグメントとソフトセグメントという相反する性質を同時に有する成分を有する離型性材料が提供できることから、トナーなどの表面の離型性に優れた効果を発揮するとともに、適切な弾性を保持する材料となる一方、炭素系ナノクラスター材料からなる充填材を表層母材に高分散しているので優れた低摩擦係数と機械的耐久性が確保できる。従って、表面への機械的ストレスに対して耐摩耗性や耐擦傷性に強い表面離型性材料が提供できる。
また、目的に適合する硬度な弾性機能が実現できると同時に、最外層に炭素系ナノクラスター材料からなる充填材を分散して機械的耐久性や表面の低摩擦係数による耐擦性と離型効果を適切に引き出すことができる。また、シリコンゴム弾性層の上に離型効果を発揮する最外層が低温で形成可能な材料を用いており、シリコンゴムとの密着性に優れた表面離型性加熱部材ができ、高寿命な部材が得られる。
さらに、フッ素を含有する効果を示す離型性材料を低温処理によって形成できるため、充填剤や他の材料との混合による機能の複合化が容易である。炭素系ナノクラスター材料からなる充填物を含むことによって、部材の適度な弾性に加えて、表面層の機械的耐久性と耐擦性が実現でき、目的に大して適切な弾性と高度な耐擦性および離型特性を具備することで、目的物を加熱加工する場合に損傷や変形を与えることなくスムーズに加工できる加熱定着装置を提供することができる。
次に添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の表面離型性部材あるいは表面離型性加熱部材において、代表例として、電子写真式画像形成装置(例えば、乾式複写機、レーザプリンタ)の加熱定着ローラを例にとった概略構成図である。
図1は、本発明の表面離型性部材あるいは表面離型性加熱部材において、代表例として、電子写真式画像形成装置(例えば、乾式複写機、レーザプリンタ)の加熱定着ローラを例にとった概略構成図である。
本発明は、上記加熱定着ローラ以外にも無端形状を有する定着用のベルトやフィルム、端のあるシートやパッド、表面離型性を要求される加圧部材にも適用可能である。また、上記の部材ばかりでなく、フィルムを延伸加工する熱ローラ、押圧ローラなど表面の非粘着性を要求される部材にも利用可能である。
図1に示す加熱定着ローラは、アルミニウム合金A5052等の基体(芯金)1の表面に接着層であるプライマー層(図示しない)を塗布した後、その上にオフセット防止層2を被覆したものである。従来では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やPFA(ポリテトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)の粉体やディスパージョンを塗布焼成してオフセット防止層を形成していた。
本発明の構成は、図2に示すように少なくとも1種類の耐熱性弾性材料と少なくとも1種類の含フッ素高分子の共重合体を含む材料を表面離型性材料とすることを特徴とする。図2に示す構成では、基体(アルミ合金)3上に耐熱性の中間層4(接着の役目をする)に弾性体層5として熱可塑性エラストマー(TPE)を用いる。
この熱可塑性エラストマーは、フッ素系TPEであり、フッ素ゴムとフッ素樹脂が結合した一種のポリマーアロイであり、分子中に互いに非相溶な硬質成分と軟質成分の両成分を有しているため、例えばフッ素樹脂であるPFAのみを焼成(焼成温度約380℃)した場合と異なり、適度な弾性を具備する膜形成が可能である。耐熱性は200℃である。
オフセット防止層6としては、含フッ素高分子の共重合物を用いる。PFAのようなフッ素樹脂の粉体材料を用いると高温の焼成工程が入るため弾性体層を中間に積層したり、混在したりすることができない。本発明では、このようなPFA等を既存材料を用いず、高分子ポリマー溶液で含フッ素高分子のブロック共重合体形成し、塗布乾燥後に低温(150℃程度)で固定化できるため、弾性体層5の混在が容易である。
図2に示す本発明の熱定着ローラは、含フッ素高分子の共重合体を最外層として用いる。表面が硬質な加熱定着ローラ(ハードローラ)に比べて、より低い加圧力で加熱定着ローラと加圧ローラ間のニップ幅が確保できるため、画像品質が良く、加圧力も低いため表面の摩耗に対しても有利である。
図3に示す熱定着ローラは、図2と同様に含フッ素高分子の共重合体を最外層としてオフセット防止層10を形成し、その内層には含フッ素高分子の共重合体からなる層10と、弾性体層9を積層した構成である。基体7の上には、耐熱性中間層8を配設し、それに続く層を強固に固定化する。
図3に示す構成では、図2示す熱定着ローラの構成に比べて弾性体の効果が大きく現れ、加圧力の低減が可能である上、高速(高線速)複写スピードが必要な場合には特に効果がある。
図4に示す熱定着ローラの構造は、含フッ素高分子の共重合体をベースとして炭素系ナノクラスターで構成される充填物を混合したものである。これをオフセット防止層14として用いている。
図5に示す表面離型性加圧部材の構成は、図1〜4に示す熱定着ローラの構成とは異なる目的で、表面離型性とともに弾性を要求される場合の例である。
加圧ローラやドラムなどの回転体が代表であるが、押出パッドのようなものであっても良い。プラスチックやフィルムの加工で非粘着性を要求される場合や加熱定着系の離型性表面を維持する目的の場合に有効である。
加圧ローラやドラムなどの回転体が代表であるが、押出パッドのようなものであっても良い。プラスチックやフィルムの加工で非粘着性を要求される場合や加熱定着系の離型性表面を維持する目的の場合に有効である。
この場合、基体15上に接着層(図示せず)を介して弾性体層16が配設されている。加熱定着ローラの例ではシリコンゴムが使用され、その上にPFAチューブが熱収縮被覆されるが、温度や経時的な変化でシリコンゴム層とPFAチューブの剥離が起こる。これは、シリコンゴムは一般に加硫工程が必要で、150〜200℃で硬化させることが必要であるが、シリコンゴム組成物とフッ素樹脂との線膨張率の差からローラ表面上のPFAチューブに皺が生じることが多い。
図5では、この難点を解決したものである。すなわち、シリコンゴム上に接着層17を介して含フッ素高分子の共重合体で形成されたオフセット防止層18を設けることでPFAチューブ被覆の収縮や剥離の問題を解決している。図5に示すような加圧部材は、例えば表面剥離性を要求される定着装置の加圧ローラとして用いられる。
図2〜5に見られるオフセット防止層には、図6に示すような充填材が充填される。オフセット防止層は、含フッ素高分子の被覆であり、摩擦等による帯電現象によって負帯電の傾向がある。従って正に帯電したトナー(正帯電トナー)を画像形成プロセスに用いる場合、静電的付着現象(静電オフセット)を避けるため、充填材は導電性を示す炭素系材料が良く、これらの形状は球形のもの20、ファイバー状のもの21、不定形のもの22がある。これらはオフセット防止層形成の過程で微粉体(数十ナノメータ〜サブミクロン)の状態で混合され、膜の中に取り込まれる。オフセット防止層に含有、分散された炭素系ナノクラスターで構成された微粉体は硬質の導電性充填材であり、オフセット防止層の体積抵抗を所望の値にコントロールし、帯電による静電オフセットを防止する役割と、オフセット防止層の摩耗による損傷や劣化を防止している。
本発明の特徴は、導電正充填材が炭素系ナノクラスター、例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトナノファイバー、グラファイトナノシート、フラーレンのいずれか、あるいはそのうち少なくとも1種を含むことである。これらの炭素系ナノクラスター材料は、真空中の炭化水素の燃焼法、アーク放電法、レーザ蒸発法やCVD法(化学的蒸着法)によって容易に作製することができ、本発明の目的では、収量の少ない単層カーボンナノチューブやバックミンスターフラーレンC60の単離体を用いる必然性はなく、比較的安価なコストで製造されるこれらの炭素系ナノクラスター材料の混合物を用いることができる。
以上は、本発明の構成の概要であるが、動作について従来技術との対比で以下に説明する。
(1)従来の熱定着ローラでは、オフセット防止層は20〜30μm厚のフッ素樹脂膜(PFA)であり、400℃近くの高温焼成が必要である。この場合は、基本的にハードローラとなり、画質を確保するために大きな加圧力で定着部のニップ幅を確保することになり、摩耗に対しても不利な状況にある。
(1)従来の熱定着ローラでは、オフセット防止層は20〜30μm厚のフッ素樹脂膜(PFA)であり、400℃近くの高温焼成が必要である。この場合は、基本的にハードローラとなり、画質を確保するために大きな加圧力で定着部のニップ幅を確保することになり、摩耗に対しても不利な状況にある。
本発明は、ポリマー溶液反応で含フッ素高分子の共重合体を作り、弾性体材料と混合して固定化(150℃程度の熱工程)する、もしくは弾性体層の上に積層するためにソフト成分が作用し、厚い弾性体を配設することなくソフトローラとして動作させることができる。また、利用の仕方によっては、ソフト成分を有する本発明のローラを対にして加熱定着装置の加熱部材、加圧部材として動作させることも可能である。
(2)離型性部材でさらに弾性が必要とされるものは、分厚いシリコンゴムを配設することなく、上記(1)に示すソフトローラと併用することによって、基体やシリコンゴムの厚みを軽減した加圧部材として動作が可能になっている。
(3)面離型性部材でさらに弾性が必要とされるものは、最外層はチューブ被覆によらなくても離型性が確保できるので、層同士の剥離や最外層の皺などの欠陥が生じない加圧部材としての動作が可能になっている。
(4)炭素系ナノクラスター材料で構成される充填材は、導電性があり、かつ優れた機械的耐久性と摩擦摺動に対する耐性を示す従来の導電性充填材と比較してサイズが1/10〜1/100であるためベース樹脂の細部まで均一に分散する。
(4)炭素系ナノクラスター材料で構成される充填材は、導電性があり、かつ優れた機械的耐久性と摩擦摺動に対する耐性を示す従来の導電性充填材と比較してサイズが1/10〜1/100であるためベース樹脂の細部まで均一に分散する。
図2に示す用に、アルミニウム合金A5052等の基体3の表面にPAI等耐熱性中間層4を塗布した後、その上に弾性体層5を概ね50〜150μmの膜厚で被覆する。弾性体層5は熱可塑性エラストマー(TPE)であり、望ましくはフッ素系の耐熱性TPEを用いる。これは、熱可塑性樹脂成形機によって容易に成形できる。
例えばダイキン工業(株)のダイエルサーモプラスチックのブロックポリマーを用いた。弾性体層5の上には、オフセット防止層6として、含フッ素高分子の共重合体を形成している。作製法はフッ化ビニリデン単量体と、これと共重合しうる単量体の混合物を使用した。フッ化ビニリデン単量体と、共重合しうる単量体としては、撥水・撥油性(以下、撥水性と記す)に優れたもので、高いフッ素含有量を示すパーフロオロアルキレン化合物や含フッ素アルキル基に置換基を有する化合物(パーフルオロアルキル基を側鎖に含む)があり、より具体的には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンやPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)が用いられる。本発明の実施例はポリフッ化ビニリデン系ポリマーの溶液にPFAポリマーの溶液を加えた混合溶液を用いた。
混合の割合は、含フッ素アルキル基を置換基にもつ化合物ポリマー含有量がポリフッ化ビニリデン系ポリマーに対して数%〜40%の範囲である。ポリフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒としてはジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどを用意し、濃度を5重量%に調整する。一方、含フッ素アルキル基を置換基をもつ化合物ポリマーの溶媒として1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用意し、ポリマー溶液を調整する。
上記のポリマー溶液を用いてブロック共重合体を作製するが、共重合体の製造方法としては、一般に知られている重付加あるいは重縮合法、ラジカル重合、カップリング法が用いられる。このような共重合体はフッ化ビニリデン系ブロック共重合体の海構造と含フッ素高分子量体の島構造をもつ混合体ができあがる。これはミクロ的な相分離構造を成しており、相反する性質が高度に調和して柔構造と機械的強度、耐久性の両方の性質を併せもつことが可能である。このように作られたブロック共重合体を塗布マトリクス樹脂の原料とし、さらに図6に示されるような炭素系ナノクラスター材料で構成される導電性充填物を2〜4重量%混合して水溶性ディスパージョンを作る。本発明では、直径5mmのグラファイト棒2本を真空中に一定のギャップを保持して対向し、この間に60mAの直流電流を流してアーク放電を行ってフラーレンを製造し、このスス状の炭素系材料を用いた。
これをスプレーや浸漬などの塗布手段で15〜30μmの厚さに塗布して150℃の温度で数10分乾燥焼成後に冷却してローラ固定化する。冷却後は表面を研磨テープ等で磨いて表面を表面粗さRaが0.8μm程度となるように平坦化する。
図3に示す熱定着ローラは、図2に示した熱定着ローラの形態を拡張したもので、作製法は同様である。アルミニウム合金A5052等の基体7の表面に耐熱性中間層8を塗布した後、その上に弾性体層9を概ね20〜40μmの膜厚で被覆する。弾性体層9は、フッ素系の耐熱性TPEを用い、例えばダイキン工業(株)のダイエルサーモプラスチックのブロックポリマーを用いて成形加工した。弾性体層9の上には、オフセット防止層10として、含フッ素高分子の共重合体を15〜20μm厚で形成して、この層構成を数回繰り返して積層体を作製した。含フッ素高分子の共重合体の作製法はフッ化ビニリデン単量体と共重合しうる単量体としてテトラフルオロエチレンの単量体を使用した。
ポリフッ化ビニリデン系ポリマーの溶液にテトラフルオロエチレンポリマーの溶液を加えた混合溶液を用いた。混合の割合は、パーフルオロアルキレン基を置換基にもつ化合物ポリマー含有量がポリフッ化ビニリデン系ポリマーに対して数%〜50%の範囲である。ポリフッ化ビニリデン系ポリマーの溶媒としてはジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、などを用意し濃度を5重量%から50重量%に調整する。
一方、パーフルオロアルキレン基を置換基にもつ化合物ポリマーの溶媒として、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを用意し、ポリマー溶液を調整する。上記のポリマー溶液を用いてブロック共重合体を作製するが、共重合体の製造方法としては、一般に知られている重付加あるいは重縮合法、ラジカル重合が用いられる。このように作られたブロック共重合体を塗膜マトリクス樹脂の原料とし、表面に導電性が必要な部材に対しては、さらに図6に示されるように、炭素系ナノクラスター材料からなる導電性充填物を2から3重量%混合して水溶性ディスパージョンを作る。これをスプレーや浸漬などの塗布手段で塗布して150℃の温度で数10分乾燥焼成後に冷却してローラに固定化した。
図2および図3に示される層構成で、含フッ素高分子の共重合体は含フッ素高分子単量体同士だけではなく、含フッ素高分子多量体同士、あるいは単量体と多量体の共重合体でも同様なことが可能である。
一例としてTFEオリゴマー微粉体を用いる。TFEオリゴマー微粉体はポリテトラフルオロエチレン粉体をフッ素ガス雰囲気中でフッ素化処理したもので、分子鎖の末端までフッ素で置換したものである。このTFEオリゴマー微粉体を適切な溶媒に溶かし、ポリマー溶液としてPFAのポリマー溶液と混合し、ブロック共重合体を作製した。また、フッ化ビニリデン単量体とTFEオリゴマーとのブロック共重合体も適切な溶媒を用いることで可能である。TFEオリゴマーと他の含フッ素高分子多量体の組み合わせは、例えば、パーフルオロプロピルエーテルオリゴマーなどが挙げられる。
図4に示す熱定着ローラの構造では、実施例1〜実施例3で含フッ素高分子の共重合体を形成する際に、炭素系ナノクラスター材料からなる導電性充填物を2から3重量%混合して水溶性ディスパージョンを作り、これをスプレーや浸漬などの塗布手段で塗布して150℃の温度で数10分乾燥焼成後に冷却してローラに固定化した図である。
実施例1ではフラーレンを用いたが、本実施例では、CVD法によって製造したカーボンナノチューブを用いた。これは単独では直径数nm、長さ数100nmのチューブ状の物が多数集まってできた充填剤であり、概ね数100nm〜数μmまでの長さのファイバー形状となっている。
本実施例では、カーボンナノチューブからなる充填剤を用いたが、これに限定されるものではなく、同様の効果が示されるカーボンナノファイバー、グラファイトナノファイバー、グラファイトナノシートでも可能である。
図5に示す表面離型性加圧部材の構成では、基体15上に接着層(図示せず)を介してシリコンゴム弾性層体層を300μm〜数mmの厚さに被覆したのち、中間層17を配設したのちに実施例1などの方法でオフセット防止層を形成した実施例である。
PFAチューブを最外層として被覆する場合と異なり、フッ化ビニリデン系ブロック共重合体の海構造と含フッ素高分子量体の島構造を有する混合体を実施例1の方法によって形成した場合には、シリコンゴム層への固定化が低温(150℃程度)で行えるため、下層の変性や劣化を招くことなくオフセット防止層が15〜30μmの厚さで形成されている。オフセット防止層にはCVD法によって製造したカーボンナノチューブから構成される炭素系ナノファイバーを導電性充填材として用いた。
図7に示す表面離型性加熱部材の構成では、実施例1〜5の方法で得られた表面離型性部材を加熱ロールとして用いた一例である。プラスチックフィルムの延伸加工でロール表面については、加熱工程でフィルムの加工を行うと同時に、ロールへの巻き付けやワークの皺発生のため離型性が要求される。
加熱源を具備するロール形状の加熱体28と圧力を加えるロール形状の加圧体27の間に挟持、搬送されるワーク25を補助加熱源26で加熱しながら加工する。加圧体27は、実施例5と同様な方法でやや厚い弾性体層を具備したロールであり、加熱体28は、例えば実施例1と同様な方法で作製された表面離型性加熱部材である。表面層の低
摩耗係数による摺動特性向上のために、本実施例では表面層には、フラーレンからなる充填材を実施例1と同様な方法で充填した。
摩耗係数による摺動特性向上のために、本実施例では表面層には、フラーレンからなる充填材を実施例1と同様な方法で充填した。
図8〜図10に示す表面離型性加熱部材の構成では、加熱定着装置の実施例を示す。この定着層の具体的利用先としては、電子写真式画像形成装置である乾式複写機やレーザプリンタのトナー画像定着装置である。図8は、内部に加熱源を具備したヒートローラである。アルミニウム合金等の円筒形の基体30に中間層31を介してオフセット防止層33が形成されている。
このオフセット防止層は実施例1〜4のいずれかの方法で作成された物である。図9に示す表面離型性加圧部材は、やや厚いシリコンゴムの弾性体層35を有する加圧ローラである。基体34上に弾性体層35、接着層36、およびオフセット防止層37がある。作製方法は実施例5に示される方法と同様である。図8で示される部材を内部に熱源41を有する加熱部材40として用い、図9で示す部材を加圧部材42として用いた加熱定着装置を図10に示す。
表面離型性部材40および42に挟持、搬送される記録材43にある未定着画像を構成する顕画剤(トナー)44は両部材の接点で加熱定着される。この接点では定着ニップと呼ばれる一定の面積で加熱押圧され、トナーが記録材上に固定される。従来の技術、例えば金属基体状にPFA樹脂のみの被覆30μm厚で作製された加熱部材40の表面硬度が、マイクロゴム硬度で80度以上あったのに対し、本発明の実施例1で作製された加熱部材40のマイクロゴム硬度は59度であった。また、本発明の実施例5で作製された加圧部材42のマイクロゴム硬度は42であった。また、本発明の実施例2で作製された部材表面のマイクロゴム硬度は47度で合ったため、シリコンゴムを弾性体層として用いた加圧部材を用いずとも、加圧部材42として使用することに何ら支障はなかった。
図11に示す定着装置は、実施例7と同様に電子写真式画像形成装置の加熱定着装置に用いた例である。記録材55上の顕画剤(トナー)56は下部加圧ローラ54と上部加圧ローラ52の間にある無端状の定着ベルト50によって加熱定着される。
定着ベルトは、熱源51によって定着時は加熱定着に適する温度に保持されている。未定着画像の定着を確実に行うため上部加圧ロール内には圧力印加部材52が配設されている。
定着ベルトは、熱源51によって定着時は加熱定着に適する温度に保持されている。未定着画像の定着を確実に行うため上部加圧ロール内には圧力印加部材52が配設されている。
この定着装置の機能は実施例7の定着装置と同様であり、本発明によって無端状ベルト基体上に形成されたオフセット防止層は従来法によって定着ベルトと比べて表面のマイクロゴム硬度が22%小さくなった上、圧力印加部材53で押圧する加圧力を15%低減させても同一の定着品質が確保できた。このため、同一期間、同一複写枚数に対してもベルト表面の割れや皺の発生が確認できなかった。表層の摩擦係数低減のために、本実施例では、真空中のCVDで作製したグラファイトナノカーボンから構成される充填材を母材に分散して構成した。
図10に示される定着装置を搭載して図12の電子写真式画像形成装置を稼働評価した。
従来技術との比較を行うため、直径40mmの定着ローラ(加熱定着部材)と直径55mmの加圧ローラ(加圧定着部材)について定着装置の部材の組み合わせを以下のようにして評価した結果、表1のようになった。
従来技術との比較を行うため、直径40mmの定着ローラ(加熱定着部材)と直径55mmの加圧ローラ(加圧定着部材)について定着装置の部材の組み合わせを以下のようにして評価した結果、表1のようになった。
表1に示すローラの組み合わせ(A)〜(G)、(X)の説明をする。
(A)は、本発明の実施例1で作製した定着ローラとシリコンゴム弾性体層にPFAチューブを被覆した加圧ローラで構成した定着装置である。(B)は、本発明の実施例2で作製した定着ローラとシリコンゴム弾性体層にPFAチューブを被覆した加圧ローラである。(C)は、本発明の実施例3で作製した定着ローラとシリコンゴム弾性体層に、PFAチューブを被覆した加圧ローラで構成した定着装置である。(D)は、本発明の実施例4で作製した定着ローラとシリコンゴム弾性体層にPFAチューブを被覆した加圧ローラで構成した定着装置である。(E)は、本発明の実施例1で作製した定着ローラと本発明の実施例2で作製した表面離型性部材を加圧ローラとして構成した定着装置である。(F)は、本発明の実施例1で作製した定着ローラと本発明の実施例5で作製した表面離型性部材を加圧ローラとして構成した定着装置である。(G)は、本発明の実施例2で作製した定着ローラと本発明の実施例5で作製した表面離型性部材を加圧ローラとして構成した定着装置である。(X)は、PFAの粉体を静電塗装して焼成した定着ローラとシリコンゴム弾性体層にPFAチューブを被覆した加圧ローラで構成した定着装置である。
(A)は、本発明の実施例1で作製した定着ローラとシリコンゴム弾性体層にPFAチューブを被覆した加圧ローラで構成した定着装置である。(B)は、本発明の実施例2で作製した定着ローラとシリコンゴム弾性体層にPFAチューブを被覆した加圧ローラである。(C)は、本発明の実施例3で作製した定着ローラとシリコンゴム弾性体層に、PFAチューブを被覆した加圧ローラで構成した定着装置である。(D)は、本発明の実施例4で作製した定着ローラとシリコンゴム弾性体層にPFAチューブを被覆した加圧ローラで構成した定着装置である。(E)は、本発明の実施例1で作製した定着ローラと本発明の実施例2で作製した表面離型性部材を加圧ローラとして構成した定着装置である。(F)は、本発明の実施例1で作製した定着ローラと本発明の実施例5で作製した表面離型性部材を加圧ローラとして構成した定着装置である。(G)は、本発明の実施例2で作製した定着ローラと本発明の実施例5で作製した表面離型性部材を加圧ローラとして構成した定着装置である。(X)は、PFAの粉体を静電塗装して焼成した定着ローラとシリコンゴム弾性体層にPFAチューブを被覆した加圧ローラで構成した定着装置である。
以上の説明から本発明の実施形態において、1つの離型材料にハードセグメントとソフトセグメントという相反する性質を同時に持つ成分を有する離型材料が提供できることから、トナーなどの表面の離型性に優れた効果を発揮するとともに、適切な弾性を保持する材料となる一方、炭素系ナノクラスター材料からなる充填材を表層母材に高分散しているので優れた低摩耗係数と機械的耐久性が確保できる。従って、表面への機械的ストレスに対して耐摩耗性や耐擦傷性に強い表面離型性材料が提供できる。
また、最外層を炭素系ナノクラスター材料からなる充填材を分散して構成しており、低摩擦係数や耐擦性に優れ、かつ表面離型性に優れた表面を確保できた。加えて適切な弾性を具備している層構成によって良好な表面離型性を兼ね備えた表面離型性加熱部材が提供できる。熱可塑性エラストマーを弾性体に用いるため、高温加硫等の工程が不要であり、エネルギー消費が少ない部材製法が実現でき、熱可塑性エラストマーはスクラップの再利用が可能であるため資源の有効利用が可能である。
また、フッ素を含む官能基の作用により、高い離型特性を持つ材料で表面離型性加熱部材の提供ができる。
また、目的に適合する高度な弾性機能が実現できると同時に、最外層に炭素系ナノクラスター材料からなる充填材を分散して機械的耐久性や表面の低摩擦係数による耐擦性と離型効果を適切に引き出すことができる。また、シリコンゴム弾性層の上に離型効果を発揮する最外層が低温で形成可能な材料を用いて降り、シリコンゴムとの密着性に優れた表面離型性加熱部材ができ、高寿命な部材が得られる。
さらに、フッ素を含有する効果を示す離型性材料を低温処理によって形成できるため、充填剤や他の材料との混合による機能の複合化が容易である。炭素系ナノクラスター材料からなる充填物を含むことによって、部材の適度な弾性に加えて、表面層の機械的耐久性と耐擦性が実現できる。
また、目的に対して適切な弾性と高度な耐擦性および離型特性を具備することで、目的物を加熱加工する場合に損傷や変形を与えることなくスムーズに加工できる加熱装置、加圧装置を提供することができる。
最外層を離型性の高い材料とし、その内側には弾性を有する材料で構成するため、加熱しトナーなどの目的物を担持に固定する際に、部材表面に残らないようにした加熱定着用部材が提供できる。また、この部材表面のフッ素系高分子化合物の摺擦による帯電が生じても、表面の導電性があるため帯電によるトナー等の静電的付着を防止でき、オフセット画像が生じにくい加熱定着部材が提供できる。
導電性充填剤は硬質粒であり、離型材料の機械的摩耗を保護する機能を有することができる。すなわち、炭素系ナノクラスター材料からなる充填物を含むことによって、部材の適度な弾性に加えて、表面層の機械的耐久性と耐擦性が実現できる。
適切な弾性特性と高度な表面離型性により、表面摩耗しにくい加圧定着部材が提供できる。この場合、より低い加圧力で定着用回転体等の定着部材で構成されるニップが形成可能であり、高速化や高耐久化の点で優れた効果を発揮できる。
表面離型層に炭素系ナノクラスター材料からなる充填物を含むことによって、高度な耐擦、耐摩耗性、導電性の付与が実現でき、表面離型性と適度な弾性を具備する定着用回転体を離型部材に用いて、低加圧力でも広いニップ幅が確保でき、良好な画質を実現すること、低い加圧力による表面の損傷や変形が抑制され、高耐久な定着装置が実現できる。
1、3、7、11、15、30、35 基体
2、6、10、14、18、33、37 オフセット防止層
4、8、12、16 耐熱性中間層
5、9、16 弾性体層
20 球形充填材
21 ファイバー状充填材
22 不定形充填材
2、6、10、14、18、33、37 オフセット防止層
4、8、12、16 耐熱性中間層
5、9、16 弾性体層
20 球形充填材
21 ファイバー状充填材
22 不定形充填材
Claims (14)
- 少なくとも1種の弾性体材料と、
含フッ素高分子の共重合物からなる材料を少なくとも1種含み、
該フッ素高分子の共重合物からなる材料には炭素系ナノクラスター材料を充填物として含む表面離型性材料によって構成されていることを特徴とする表面離型性部材。 - 前記表面離型性部材は、前記表面離型性材料を積層して構成することを特徴とする請求項1記載の表面離型性部材。
- 前記表面離型性部材は、前記表面離型性材料を混合して構成することを特徴とする請求項1記載の表面離型性部材。
- 前記炭素系ナノクラスター材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトナノファイバー、グラファイトナノシート、フラーレンのいずれか、あるいはそのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面離型性部材。
- 最外層が含フッ素高分子の共重合物からなる材料を少なくとも1種含み、
該含フッ素高分子の共重合物からなる材料には炭素系ナノクラスター材料を充填物として含む層からなり、
その他の層には熱可塑性エラストマーの層を少なくとも一層含むことを特徴とする表面離型性加熱部材。 - 前記熱可塑性エラストマーは、フッ素系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項5記載の表面離型性加熱部材。
- 前記表面離型性加熱部材は、前記その他の層にシリコンゴムの層を少なくとも一層含むことを特徴とする請求項5または6記載の表面離型性加熱部材。
- 加熱定着部材と、加圧部材を備えた加熱定着装置において、
表面離型性加熱部材から構成される加熱定着部材と、
表面離型性部材から構成される加圧部材とを有することを特徴とする加熱定着装置。 - 前記表面離型性加熱部材は、転写紙と接する表面層が含フッ素高分子の共重合物からなる材料を少なくとも1種含み、該含フッ素高分子の共重合物からなる材料には、炭素系ナノクラスター材料を充填物として含む層からなり、その他の層には熱可塑性エラストマー層を少なくとも一層含むことを特徴としている請求項8記載の加熱定着装置。
- 前記熱可塑性エラストマーは、フッ素系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項9記載の加熱定着装置。
- 前記表面離型性加熱部材は、前記その他の層にシリコンゴムの層を少なくとも一層含むことを特徴とする請求項9記載の加熱定着装置。
- 前記表面離型性部材は、少なくとも1種の弾性体材料と、含フッ素高分子の共重合物からなる材料を少なくとも1種含み、該含フッ素高分子の共重合物からなる材料には炭素系ナノクラスター材料を充填物として含む表面離型性材料から構成されていることを特徴とする請求項8記載の加熱定着装置。
- 前記表面離型性部材は、前記表面離型性材料を積層して構成していることを特徴とする請求項12記載の加熱定着装置。
- 前記表面離型性部材は、前記表面離型性材料を混合して構成していることを特徴とする請求項12記載の加熱定着装置。
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