JP2005140522A - ポリ塩化ビフェニル類を含む油性試料の前処理方法 - Google Patents

ポリ塩化ビフェニル類を含む油性試料の前処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 油性試料からポリ塩化ビフェニル類(PCB類)を抽出した抽出液から、簡便な操作によって短時間で十分に油分を除去することができる前処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明の前処理方法では、PCB類を含む油性試料から極性溶媒にてPCB類を抽出して得た抽出液を水系フィルターに通液して、好ましくは更に親油性吸着剤と接触させて、この抽出液に含まれる油分を除去する。この前処理方法で油分を除去した抽出液から、PCB類を揮発性溶媒に転溶させ、得られた転溶液をガスクロマトグラフ−質量分析装置に導入してPCB類を定量することで、油性試料に含まれるPCB類を定量する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリ塩化ビフェニル類(PCB類)を含む油性試料の前処理方法に関し、詳しくは油性試料に含まれるPCB類を定量するための前処理方法に関する。
トランスなどに使われる絶縁油やその分解物などの油性試料には、僅かにPCB類が含まれていることがある。かかるPCB類を定量するための前処理方法として、非特許文献1〔平成12年12月28日厚生省告示第633号で改正された平成4年7月3日厚生省告示第192号の別表第二「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」〕に記載された、いわゆる公定法が知られている。
かかる公定法では、
(1)PCB類を含む油性試料から極性溶媒にてPCB類を抽出し、
(2)得られた抽出液からPCB類をヘキサンなどの疎水性揮発性溶媒に転溶し、
(3)得られた転溶液をアルカリ水、水でこの順に洗浄した後、
(4)着色成分が溶出しなくなるまで濃硫酸で洗浄し、
(5)さらに硫酸分が検出されなくなるまで水で洗浄を行っている。
かかる前処理方法によれば、極性溶媒による抽出の際に油性試料から抽出液へ混入した油分は、繰り返し行われる洗浄により十分に除去される。このため、前処理後の抽出液に含まれるPCB類を揮発性溶媒に転溶させ、ガスクロマトグラフ−質量分析装置(GC−MS装置)に導入すれば、油分の妨害を受けることなく、低い定量下限でPCB類を定量することができ、例えばGC−MS装置としてガスクロマトグラフ−高分解能質量分析装置(GC−HRMS装置)を用いれば、油性試料1gあたり0.05μg(0.05ppm)以下の定量下限で定量することができる。
しかし、かかる従来の前処理方法では洗浄操作を繰り返し行うため、操作に長時間を要するという問題があった。このため、簡便な操作により短時間で十分に油分を除去し得る前処理方法が望まれていた。
平成12年12月28日厚生省告示第633号で改正された平成4年7月3日厚生省告示第192号の別表第二「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」
そこで本発明者は、油性試料からPCB類を抽出した抽出液から、簡便な操作によって短時間で十分に油分を除去できる前処理方法を開発するべく鋭意検討した結果、抽出液を水系フィルターに通液するという簡便な操作で、抽出液に混入した油分を十分に除去できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、PCB類を含む油性試料から極性溶媒にて前記PCB類を抽出して得た抽出液を水系フィルターに通液して、前記抽出液に含まれる油分を除去することを特徴とする、前記油性試料の前処理方法を提供するものである。
本発明の前処理方法は、抽出液に含まれる簡便な操作により短時間で油分を十分に除去できる。本発明の前処理方法で前処理された抽出液に含まれるPCB類を揮発性溶媒に転溶させて転溶液とし、この転溶液をGC−MS装置に導入してPCB類を定量すれば、油分の影響を受けることなく、十分に低い定量下限でPCB類を定量することができる。
本発明の前処理方法に適用される油性試料は、例えば絶縁油が挙げられる。絶縁油は、例えばトランス、コンデンサーなどの電気機器の内部に絶縁、冷却などのために封入されて使用される油である。また、絶縁油を分解処理して得られる分解処理物も挙げられる。
油性試料の使用量は、油性試料に含まれるPCB類の濃度などによって異なるが、通常は0.1g〜2g程度である。
油性試料は、所定量のPCB類を含むサロゲート物質溶液があらかじめ添加されてもよい。サロゲート物質溶液として添加されるPCB類は通常、13Cでラベルされたものが用いられる。サロゲート物質溶液の添加量は、油性試料に含まれるPCB類によって異なるが、例えば油性試料1gあたりPCB類換算で10〜100ng程度である。かかるサロゲート物質溶液は、例えば規定量のPCB類を含む市販の標準液を溶媒で希釈して調製することができる。市販の標準液としては、例えばカナダ、Wellington Laboratoriesの「MBP−CG」、英国Cambridge Isotope Laboratories Inc.の「EC−4189」などが挙げられる。
(1)本発明の前処理方法では、かかる油性試料から極性溶媒にてPCB類を抽出し、得られた抽出液を用いる。
極性溶媒としては、油性試料を溶解しない非溶解性のものが使用され、水に溶解し得るものが好ましく用いられる。かかる極性溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
油性試料から極性溶媒にてPCB類を抽出するには、例えば油性試料を極性溶媒と接触させればよい。油性試料を極性溶媒と接触させるには、例えば油性試料を極性溶媒と混合する。油性試料は、予めヘキサンなどの揮発性溶媒で希釈してもよいが、油性試料からより多くのPCB類を抽出液に抽出できる点で、希釈することなく、そのままで極性溶媒と接触させることが好ましい。極性溶媒の使用量は、油性試料に対して通常は1質量倍〜10質量倍程度である。
混合後の混合液を通常は5分〜20分間程度振盪したのち、静置する。振盪後、静置することで、混合液は油性試料層と極性溶媒層とに相分離する。油性試料に含まれていたPCB類は極性溶媒層に溶存しているので、相分離した後の混合液から通常の分液操作により分液して極性溶媒層を取り出すことで、PCB類を抽出した抽出液を得ることができる。分液操作は、油性試料層と極性溶媒層とが十分に相分離した後であってもよいが、本発明の方法では、振盪後の静置時間が僅かで油性試料層と極性溶媒層とに十分に相分離していなくても、次の水系フィルターに通液させることで油分を十分に除去できるので、相分離が不十分のまま分液してもよい。分液後の油性試料層には、未だ抽出されていないPCB類が含まれていることもあるので、分液後の油性試料層を再び極性溶媒と接触させて、さらにPCB類を抽出して抽出液を得てもよい。
(2)本発明の前処理方法では、かかる抽出液を水系フィルターに通液する。
抽出液を通液させる水系フィルターとは、親水性の材料からなり、水や親水性の溶媒は通過させるが、油分などのように疎水性の溶媒は通過させない濾過フィルターであって、親水性材料としては、例えばセルロース混合エステル、セルロースアセテートなどのセルロース材料が挙げられる。かかる水系フィルターの孔径は、通常は0.1μm〜1μm以下程度、好ましくは0.5μm以下程度である。かかる水系フィルターとしては、例えば東洋濾紙(株)から「Advantec Dismic」などとして市販されている。
かかる水系フィルターに抽出液を通液することで、抽出液に混入することがある油分の殆どを、この水系フィルターが捕捉して、抽出液から除去することができる。その一方で、極性溶媒はPCB類を含んだままで、水系フィルターを通過する。抽出液は、より多くのPCB類を回収できる点で、その全量を水系フィルターに通液することが好ましい。
(3)かくして抽出液を水系フィルターに通液したのち、さらに抽出液を親油性吸着剤と接触させてもよい。
親油性吸着剤とは、少なくとも表面が油分と親和性のある材料で構成された固形の吸着剤であって、通常は粒状のものが用いられる。かかる吸着剤としては、例えばC18シリカ、C18ポーラスポリマーなどのような、表面修飾された粒子が挙げられる。かかる吸着剤は、例えばカラムクロマト用充填剤、固相抽出用充填剤、逆相用液体クロマトグラフィーのカラム充填剤として広く用いられており、具体的にはジーエルサイエンス社からカラムクロマト充填剤「C18」、米国ウォーターズ(Waters)社から、「SEP−PAK−C18」、「SEP−PAK−tC18」などとして市販されているものを用いることができる。
抽出液を親油性吸着剤と接触させるには、例えば抽出液を親油性吸着剤と混合すればよい。親油性吸着剤の使用量は、例えば抽出液に対して通常0.02質量倍〜0.3質量倍程度である。混合後、親油性吸着剤は、通常の濾過操作により抽出液から濾別される。
また、親油性吸着剤が充填されたカラムに抽出液を通液させてもよい。かかるカラムに抽出液を通液させるには、例えばカラムにシリンジ(注射筒)を接続しておき、この注射筒から抽出液をカラムに送液すればよい。
かくして、抽出液を親油性吸着剤と接触させることで、水系フィルターに通液した後の抽出液に極僅かに含まれる油分が親油性吸着剤に吸着されて、除去される。抽出液は、より多くのPCB類を回収できる点で、その全量を親油性吸着剤と接触させることが好ましい。
(4)かくして本発明の方法で前処理された後の抽出液は、油分が十分に除去されているので、該抽出液に含まれるPCB類は、油分に妨害されることなく、低い定量下限で定量することができる。前処理後の抽出液に含まれるPCB類を定量するには、例えば前処理後の抽出液に含まれるPCB類を揮発性溶媒に転溶させ、得られた転溶液をGC−MS装置に導入すればよい。
抽出液に含まれるPCB類を揮発性溶媒に転溶させるには、例えば極性溶媒として水に可溶のものを用いた場合には、抽出液に水を加えた後、疎水性の揮発性溶媒でPCB類を抽出すればよい。
抽出液に加える水は、純水であってもよいが、例えば塩化水素などの鉱酸を含む酸性水溶液が好ましく用いられる。酸性水溶液として塩化水素水溶液(塩酸)を用いる場合、通常、塩化水素(HCl)を質量分率で10%〜36%程度の濃度で含有するものが用いられ、その使用量は、抽出液に対して通常は1質量倍〜10質量倍程度である。
抽出液に水を加えることで抽出液と水とは均一な混合液となる。かかる混合液からPCB類を抽出するには、疎水性の揮発性溶媒を加えればよい。疎水性の揮発性溶媒としては、例えばヘキサン、トルエン、ジクロロメタンなどが挙げられ、その使用量は抽出液に対して通常は0.2質量倍〜10質量倍である。疎水性の揮発性溶媒を加えた後、通常は振盪し、静置する。疎水性の揮発性溶媒は水と相溶しないので、静置することで、極性溶媒を含む水層と、PCB類を含む揮発性溶媒層との2層に相分離する。相分離後、通常の分液操作により分液して揮発性溶媒層を取り出すことで、PCB類を含む転溶液を得ることができる。
また、極性溶媒として揮発性のものを用いた場合には、溶媒留去により極性溶媒を留去させ、得られた残渣を揮発性溶媒に溶解させる方法で転溶させて、転溶液を得てもよい。
(5)得られた転溶液は、そのままGC−MS装置に導入してもよいが、多層シリカゲルカラムにて夾雑物を除去してから導入することが、安定して低い定量下限で定量し得る点で、好ましい。
多層シリカゲルカラムとしては、例えば無水硫酸ナトリウム層、シリカゲル層、硫酸処理シリカゲル層および水酸化カリウム処理シリカゲル層がこの順で充填されたカラムが用いられる。無水硫酸ナトリウム層は、無水硫酸ナトリウムが充填された層である。シリカゲル層は、無処理のシリカゲルが充填された層である。硫酸処理シリカゲル層は、例えば無処理のシリカゲルに硫酸を吸収させて得られる22%〜44%の硫酸処理シリカゲルが充填された層である。シリカゲルを硫酸と混合し、攪拌することで、シリカゲルに硫酸を吸収させることができる。水酸化カリウム処理シリカゲル層は、例えば無処理のシリカゲルを濃度1%〜5%の水酸化カリウム水溶液と接触させた水酸化カリウム処理シリカゲルが充填された層である。かかる水酸化カリウム処理シリカゲル、硫酸処理シリカゲルおよび無処理シリカゲルは、市販のものをそのまま用いてもよい。
多層シリカゲルカラムにより夾雑物を除去するには、例えば溶液を構成すると同様の揮発性溶媒を展開溶媒として、溶液を多層シリカゲルカラムに通液すればよい。具体的には、例えば多層シリカゲルカラムの無水硫酸ナトリウム層側から溶液を注入し、次いで展開溶媒を注入して、水酸化カリウム処理シリカゲル層側からの流出液を得ればよい。通常は、流出液のうちPCB類を含むフラクションを分取する。
得られたフラクションは、加熱して溶媒を揮発させる方法、減圧下に溶媒を揮発させる方法、窒素ガスなどのような不活性ガスの流通下に溶媒を揮発させる方法などの方法で濃縮してもよい。
(6)多層シリカゲルカラムにて夾雑物を除去して得たフラクションは、更にアルミナカラムにて夾雑物を除去してもよい。
アルミナカラムとしては、アルミナが充填されたカラムが用いられ、無水硫酸ナトリウムが充填された無水硫酸ナトリウム層と、アルミナが充填されたアルミナ層との2層を有していてもよい。アルミナカラムにより夾雑物を除去するには、例えば溶液を構成すると同様の揮発性溶媒を展開溶媒として、溶液をアルミナカラムに通液すればよい。具体的には、例えば無水硫酸ナトリウム層側から溶液を注入し、次いで展開溶媒を注入して、アルミナカラムのアルミナ層側からの流出液を得ればよい。通常は、流出液のうちPCB類を含むフラクションを分取する。展開溶媒は、ジクロロメタンなどを含有しているものを用いてもよい。
得られたフラクションは、減圧下に加熱して溶媒を留去する方法、窒素ガスなどのような不活性ガスの流通下に溶媒を揮発させる方法などの方法で濃縮してもよい。
(7)かくして油分を除去し、転溶させ、好ましくは多層シリカゲルカラムやアルミナカラムで更に夾雑物を除去した後の転溶液をGC−MS装置に導入してPCB類を定量することで、油性試料に含まれるPCB類を定量することができる。
転溶液を導入するGC−MS装置としては通常のPCB類の定量に用いられると同様の装置を用いることができ、具体的にはガスクロマトカラム(GCカラム)と、検出器として質量分析計(MS計)を備えたものを用いることができる。MS計としては、例えば磁場型質量分析計などのように、分解能(m/z)1000以上で比較的分解能の高い高分解能質量分析計(HRMS計)の他、四重極型質量分析計などのように、分解能(m/z)が概ね500程度で比較的分解能の低い低分解能質量分析計(LRMS計)を用いることができる。
転溶液は、所定量のPCB類を含む内標準溶液を添加してからGC−MS装置に導入してもよい。内標準溶液に用いられるPCB類としては通常、13Cでラベルされたものが用いられる。内標準溶液の添加量は、油性試料に含まれるPCB類によって異なるが、例えば油性試料1gあたりPCB類換算で10〜100ng程度である。かかる内標準溶液は、例えば規定量のPCB類を含む市販の標準液を溶媒で希釈して調製することができる。市販の標準液としては、例えばWellington Laboratoriesの「MBP−170」(13CでラベルされたPCB類の7塩素体)などが挙げられる。
かくして定量できるPCB類としては、塩素数3〜8程度のPCB類、具体的にはPCB類の3塩素体、4塩素体、5塩素体、6塩素体、7塩素体および8塩素体などが挙げられる。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
実施例1
〔抽出液の調製〕
市販のトランス油1gあたり、塩素数3〜8のPCB類をそれぞれ表1に示す添加量となるように添加して、油性試料とした。
この油性試料 0.5gを分液ロートに秤り取り、ジメチルスルホキシド(DMSO) 3mL(3cm3、約3.32g)を加え、10分間、激しく振盪した後、静置し、分液して、抽出液を得た。
〔抽出液の前処理〕
上記で得た抽出液の全量をセルロース混合エステル製濾過フィルター〔東洋濾紙(株)製、「DISMIC」、孔径0.45μm〕2枚に通液し、次いでtC18シリカ粒子〔米国Waters社製、「SEP−PAK−tC18」〕0.5gを加えたのち、振盪し、次いで濾過してtC18シリカ粒子を濾別した。
一方、分液後の油性試料層に、再びDMSO 3mLを加え、10分間振盪した後、静置し、分液して、再度、抽出液を得た。この抽出液の全量を上記と同様のセルロース混合エステル製濾過フィルター〔「DISMIC」、孔径0.45μm〕2枚に通液し、次いでtC18シリカ粒子〔「SEP−PAK−tC18」〕0.5gを加えたのち、振盪し、濾過してtC18シリカ粒子を濾別し、上記でtC18シリカ粒子を濾別した後の抽出液と合わせた。
〔転溶〕
この抽出液に、濃度約18%の塩酸10mL(約9.88g)を加えて10分間静置し、次いでヘキサン5mL(約3.24g)を添加した後、10分間、振盪し、次いで静置後、分液操作により水層を除去して、PCB類を含むヘキサン転溶液を得た。
〔多層シリカゲルカラム処理〕
無水硫酸ナトリウム2gと、無処理シリカゲル〔和光純薬工業(株)製、「Wakogel DX」〕5gと、硫酸処理シリカゲル10gと、水酸化カリウム処理シリカゲル〔和光純薬工業(株)製、「2%水酸化カリウムシリカゲル」〕3gとが上からこの順で充填された多層シリカゲルカラム〔内径15mm、長さ300mm〕に、上記で得たヘキサン転溶液を上から注ぎ入れ、ヘキサン100mLを更に注ぎ入れた。カラムからの流出液のうち、初めの約20mLは廃棄し、残りの約80mLを分取して、多層シリカゲルカラムフラクションを得た。得られた多層シリカゲルカラムフラクションをロータリーエバポレーターで攪拌下に溶媒留去して、概ね3mLに濃縮した。なお、硫酸処理シリカゲルは、無処理シリカゲル56質量部に97%硫酸(特級試薬)44質量部を混合し、攪拌しながら吸収させて調製したものを用いた。
〔アルミナカラム処理〕
無水硫酸ナトリウム1gとアルミナ2gとが上からこの順で充填されたアルミナカラム〔内径10mm、長さ150mm〕に、上記で濃縮した後の多層シリカゲルカラムフラクションの全量を上から注ぎ入れ、更にヘキサン30mLを注ぎ入れた。カラムからの流出液が約30mLになった時点で、更に5質量%濃度でジクロロメタンを含むヘキサン溶液10mLを上から注ぎ入れると同時に分取を開始し、約10mLを分取して、PCB類を含むアルミナカラムフラクションを得た。得られたアルミナカラムフラクションは、窒素ガス気流下に溶媒を揮発させて、約0.2mL(約200μL)まで濃縮した。
〔GC−MS装置による定量〕
濃縮後のアルミナカラムフラクションに内標準溶液(シリンジスパイク)40μL〔40μL中に2,2’,3,3’,4,4’,5−ヘプタクロロ〔13C〕ビフェニルを20ng含むノナン溶液〕を添加し、添加後のフラクションのうち1μLを採取してGC−MS装置に導入してガスクロマトグラム(チャート)を得、得られたガスクロマトグラムから油性試料1gあたりの含有量(μg)としてPCB類を定量した。
GC−MS装置としては、米国J&W社製GCカラム〔「DB−5MS」〕に、島津製作所製の四重極型質量分析装置〔「QP−2010」、分解能(m/z)2000〕を接続したものを用いた。キャリアガスとしては、ヘリウムを流量1.17cm3/分(大気圧換算)で用いた。カラム温度は90℃とし、同温度でアルミナカラムフラクションを導入した後、1分間保持し、次いで16℃/分で200℃まで昇温した後、6℃/分で300℃まで昇温し、300℃を5分間保持した。
上記の油性試料について上記の操作を合計5回行い、定量した結果を第1表に示す。












第1表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
PCB類 添加量 定量値(μg/g) 標準偏差
の塩素数 (μg) 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3 0.114 0.1076 0.1051 0.1062 0.1061 0.1055 0.106 0.0009
4 0.121 0.1081 0.1032 0.0998 0.1085 0.1048 0.105 0.0036
5 0.101 0.1003 0.1103 0.1012 0.1026 0.1085 0.105 0.0045
6 0.081 0.0784 0.0741 0.0701 0.0713 0.0714 0.073 0.0033
7 0.043 0.0459 0.0454 0.0403 0.0384 0.0431 0.043 0.0033
8 0.006 0.0041 0.0045 0.0040 0.0048 0.0050 0.004 0.0005
────────────────────────────────────
合計 0.466 0.4444 0.4426 0.4216 0.4317 0.4383 0.436
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例2
実施例1でPCB類を添加して得た油性試料を実施例1で用いたと同様のトランス油で10倍に希釈して用いた以外は実施例1と同様に操作して、希釈後の油性試料に含まれるPCB類を定量した。結果を第2表に示す。
第2表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
PCB類 添加量 定量値(μg/g) 標準偏差
の塩素数 (μg) 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3 0.0114 0.0090 0.0095 0.0118 0.0110 0.0095 0.0102 0.0011
4 0.0121 0.0103 0.0090 0.0103 0.0101 0.0092 0.0098 0.0006
5 0.0101 0.0077 0.0090 0.0093 0.0093 0.0081 0.0087 0.0007
6 0.0081 0.0074 0.0059 0.0106 0.0109 0.0089 0.0087 0.0021
7 0.0043 0.0038 0.0028 0.0047 0.0031 0.0030 0.0035 0.0008
8 0.0006 − − − − − − −
────────────────────────────────────
合計 0.0466 0.0382 0.0362 0.0467 0.0444 0.0387 0.0409
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
−:検出せず
実施例3
PCB類の合計濃度0.01ppm〜6ppmの範囲の絶縁油11種を準備した。この11種の絶縁油について、それぞれ0.5gを採取して油性試料とし、サロゲート物質溶液40μL〔40μL中に、13Cでラベルされ、塩素数1〜10のPCB類をそれぞれ10ngずつ含有しているノナン溶液〕を加え、実施例1と同様に操作して抽出液を得、前処理を行い、ヘキサン転溶液を得、PCB類の合計量を定量した。一方、同じ11種の絶縁油について、非特許文献1に記載の公定法に従い前処理を行って抽出液を得、この抽出液を用いて非特許文献1に記載の方法に従って、各絶縁油に含まれるPCB類の合計量を定量した。結果を図1に示す。
また、PCB類の合計濃度が0.4ppmの絶縁油に上記と同じサロゲート物質溶液40μLを加え、実施例1と同様に操作して抽出液を得、前処理を行い、ヘキサン転溶液を得、GC−MS装置で定量したときに、PCB類の各成分毎にプロットしたガスクロマトグラムを図2に示す。
実施例4
市販のトランス油にPCB類を合計濃度が0.05ppm〜5ppmの範囲となるように添加した油性試料5種類を準備した。この5種類の油性試料について、それぞれ0.5gを秤取し、実施例1と同様に操作して抽出液を得、前処理を行い、ヘキサン転溶液を得、PCB類の合計量を定量した。結果を図3に示す。
また、PCB類の合計濃度が約0.5ppmとなるようにPCB類を添加した油性試料について、GC−MS装置によって得た全成分についてのガスクロマトグラムを図4に示す。
比較例1
実施例4で用いた5種類の油性試料のうち、合計濃度が約0.5ppmとなるようにPCB類を添加した油性試料0.5gを分液ロートに秤り取り、DMSO 3mLを加え、10分間、激しく振盪した後、静置し、分液して、抽出液を得た。この抽出液を水系フィルターに通液することなく、濃度約18%の塩酸10mLを加え、以後実施例1と同様に操作してヘキサン転溶液を得、全成分についてのガスクロマトグラムを得た。このガスクロマトグラムを図5に示す。このクロマトグラムは、実施例4で得られた図4に示すクロマトグラムと比較して、油分に由来するバックグランドピークが多くあり、PCB類の定量が困難である。
実施例3の結果を示すグラフであり、絶縁油に含まれるPCB類について、本発明の方法による前処理を行い定量した結果(横軸)に対して、公定法による前処理を行い定量した結果(縦軸)をプロットしたものである。 実施例3の結果を示すガスクロマトグラムであり、PCB類濃度0.4ppmの絶縁油を本発明の方法で前処理を行い、定量したとき、PCB類の各成分毎にプロットしたものである。 実施例4の結果を示すグラフであり、本発明の方法で前処理を行い、定量した結果(横軸)に対して、PCB類の添加量(縦軸)をプロットしたものである。 実施例4で得られた全成分についてのガスクロマトグラムである。 比較例1で得られた全成分についてのガスクロマトグラムである。

Claims (3)

  1. ポリ塩化ビフェニル類を含む油性試料から極性溶媒にて前記ポリ塩化ビフェニル類を抽出して得た抽出液を水系フィルターに通液して、前記抽出液に含まれる油分を除去することを特徴とする、前記油性試料の前処理方法。
  2. 前記抽出液を水系フィルターに通液したのち、親油性吸着剤と接触させて、前記油分を除去する請求項1に記載の前処理方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の前処理方法で油分を除去した抽出液から、該抽出液に含まれるポリ塩化ビフェニル類を揮発性溶媒に転溶させ、
    得られた転溶液をガスクロマトグラフ−質量分析装置に導入してポリ塩化ビフェニル類を定量することを特徴とする、前記油性試料に含まれるポリ塩化ビフェニル類の定量方法。
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