JP4563268B2 - Pcbの免疫学的測定方法のための試料の調製方法 - Google Patents
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Description
しかしその後、PCBは内分泌攪乱物質として生体に対して作用し、様々な毒性を発揮することが判明し、日本では1972年に製造・使用が禁止され、現在に至っている。
PCBは、非常に安定な物質でかつ焼却によりダイオキシン類を発生することから、廃棄された絶縁油、熱媒体、潤滑油、可塑剤、汚染土壌等に含まれるPCBの量を正確に把握し、厳重に管理することが必要であるが、それらの量が膨大であるため、簡易かつ高感度なPCBの測定方法の確立が急務である。
しかしながらPCBは、ベンゼン環を2つ有するビフェニル構造の水素(H)が塩素(Cl)で置換された化合物の総称であり、置換塩素の数と位置によって209種の異性体が存在し、また、工業製品として市販されていたPCB(例えば商品名、カネクロール(Kanechlor:KC)やアロクロール(Aroclor:Ar))も種々の塩素数のPCB異性体の混合物である(表1および表2を参照)。更に、絶縁油等に含まれるPCBの組成も試料ごとに一定ではない。このようにこれら塩素数の異なる各種異性体を含む複雑な組成の市販されていたPCBを、簡易にしかも高感度に測定する方法が求められていた。
PCBの高感度測定方法としては、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS法)、ガスクロマトグラフ電子捕獲型検出法(GC-ECD法)等が知られているが、高価な機器を必要とし、機器の操作に習熟を要するため、膨大な量の試料を測定する方法としては問題がある。この問題を回避するため、PCBを認識する抗体を用いる免疫学的測定方法などが開発されている(特許文献1)。特許文献2には、イムノクロマトグラフィーを用いた、PCB等の低分子物質検出器具が開示されている。しかし、PCBは209種にものぼる異性体を有するので、特異性の高い抗体を用いると、結果としてPCBのごく一部の異性体のみを検出することとなり、広汎な異性体を一時に検出することが出来ない。
また、絶縁油等の試料は、PCBの免疫学的測定法を妨害し得る物質を多量に含有し、測定に先立ち、適切な方法で前処理することにより、妨害物質を除去し、試料中に含まれるPCBを、抗体を失活させることのない適切な溶媒へ抽出することを要する。試料の前処理方法としては、活性炭もしくはアルミナを含有する担体を用いるカラム処理により、試料からモノオルトハロポリクロロビフェニル(moPCB)を除去する方法が報告されている(特許文献3)。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]以下の工程を含む、PCBの免疫学的測定用試料の調製方法。
(a)試料をヘキサン及びDMSOと混合し、DMSO分画を採取すること;
(b)DMSO分画を無機塩水溶液で希釈し、希釈物をヘキサンと混合し、第1のヘキサン分画を採取すること;
(c)第1のヘキサン分画をスルホン化剤と混合し、第2のヘキサン分画を採取すること;
(d)第2のヘキサン分画へDMSOを添加し、ヘキサンを蒸発させ、残渣をPCBの免疫学的測定用試料として得ること。
本発明の調製方法により得られた試料を用いて免疫学的測定法でPCBを測定することにより、複雑で多様な組成を有するPCBを、一時に、簡便かつ高感度で測定することができる。
本発明は、以下の工程を含む、PCBの免疫学的測定用試料の調製方法を提供するものである。
(a)試料をヘキサン及びDMSOと混合し、DMSO分画を採取すること;
(b)DMSO分画を無機塩水溶液で希釈し、希釈物をヘキサンと混合し、第1のヘキサン分画を採取すること;
(c)第1のヘキサン分画をスルホン化剤と混合し、第2のヘキサン分画を採取すること;
(d)第2のヘキサン分画へDMSOを添加し、ヘキサンを蒸発させ、残渣をPCBの免疫学的測定用試料として得ること。
で表される化合物、又はその混合物を意味する。PCBの塩素数(nとmの和)は1〜10の整数である。ベンゼン環における塩素置換の位置は特に限定されない。
試料のヘキサン及びDMSOとの混合は、試料中のPCBがDMSOへ効率よく抽出されるよう、マルチミキサー等を用いて行われる。
次に、希釈されたDMSO分画をヘキサンと混合する。添加されるヘキサンの量は、本発明の調製方法を阻害しない限り特に限定されないが、希釈されたDMSO分画10mLに対して、通常0.5〜2.5mL(例えば約1.5mL)程度である。混合物をボルテックスミキサーなどにより激しく攪拌することにより、PCBがヘキサン分画へ逆抽出される。
次にヘキサン分画中のヘキサンを蒸発させる。該蒸発は通常室温にて、抽出液濃縮器等を用いて行われる。ヘキサンを蒸発させることにより、ヘキサン分画中のPCBはDMSO分画(残渣)へ抽出され、該残渣をPCBの免疫学的測定用試料として得ることができる。
PCBを標識する標識剤としては、例えば、標識酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等)、放射性同位元素(125I等)、酵素基質、蛍光物質(FITC、PE、APC、GFP等)、ビオチンなどが挙げられる。PCBとこれらの標識剤の結合には、マレイミド法[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),79,233(1976)]、活性化ビオチン法[ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.),100,3585(1978)]などを用いることが出来る。
上記した方法で調製された試料と、PCBに対する異なる特異性を有する2種以上の抗体を含む抗体混合物とを接触させ、形成され得るPCB-抗体複合体の量を測定することにより、PCBを高感度かつ簡便に測定することができる。
モノクローナル抗体を製造する場合は、上述の結合体を哺乳動物に対して、それ自体あるいは担体、希釈剤等とともに投与し、当該結合体で哺乳動物を免疫感作する。投与に際しては抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを用いてもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なうことができる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウス、ラット又はニワトリが好ましく用いられる。
(a)塩素数が4以下のPCBを主成分とするPCBに対する特異性を有する抗体;
(b)塩素数が5以上のPCBを主成分とするPCBに対する特異性を有する抗体。
例えば、本明細書に記載の測定方法において、上記(a)及び(b)記載の抗体を含む抗体混合物を用いる場合、その混合比率は、モル比[(塩素数が4以下のPCBを主成分とするPCBに対する特異性を有する抗体):(塩素数が5以上のPCBを主成分とするPCBに対する特異性を有する抗体)]として、例えば5:1〜1:5、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2である。
抗体混合物は、例えば、「代謝」、Vol.8, 696 (1971)に記載されているブロムシアン法、グルタルアルデヒド法、カルボジイミド法、エポキシ活性化法、「エンザイムイムノアッセイ」第268〜296頁に記載された方法、「アフィニティークロマトグラフィーハンドブック」(アマシャム ファルマシア バイオテク株式会社(1998年12月20日発行))に記載された方法などの公知の方法により、固相担体に固定化することができる。固定化用担体としては、例えば、マイクロプレート(例、96ウェルマイクロプレート、24ウェルマイクロプレート、192ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレートなど)、試験管(例、ガラス試験管、プラスチック試験管)、ガラス粒子、ポリスチレン粒子、修飾ポリスチレン粒子、ポリビニル粒子、ラテックス(例、ポリスチレン・ラテックス)、ニトロセルロース膜、臭化シアン活性化濾紙、DBM活性化濾紙、粒状固相(例、セファロース、セファデックス、アガロース、セルロース、セファクリルなど)、鉄含有ポリカーボネート膜、磁気ビーズ、水晶振動子、金コロイドなどが挙げられる。
PCBを標識する標識剤としては、例えば、標識酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等)、放射性同位元素(125I等)、酵素基質、蛍光物質(FITC、PE、APC、GFP等)、ビオチンなどが挙げられる。PCBとこれらの標識剤の結合には、マレイミド法[ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(J.Biochem.),79,233(1976)]、活性化ビオチン法[ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.),100,3585(1978)]などを用いることが出来る。
標識PCBの混合比率は以下のようにして求めることができる。
まず、抗体混合物中に含まれる各々の抗体について、各抗体1種のみと、各抗体が特異的に認識するPCBと対応する標識PCBとを用いて、競合法により、試料中のPCB濃度が0のときの標識シグナル強度(吸光度、蛍光強度等)を測定する。次にそれぞれの抗体について、PCB濃度が0のときに、同一抗体量を用いたときに同一の標識シグナル強度を与える様に、標識PCBの濃度調整を行う。そして、抗体混合物中における各抗体の混合比率(モル比)と同一の比率で、対応する標識PCBを混合する。
このように、異なる標識PCBを混合して用いることによって、異なる組成のPCBに対しても、実質的に同等の感度を有する、定量性のよい測定を行うことが出来る。
本明細書に記載のPCB測定用キットを用いれば、上記方法により、簡便にPCB測定を行うことが可能である。
絶縁油試料約50mgを試験管に正確に秤量した。ヘキサン1mLを試料に加え、マルチミキサーにより1分間攪拌した。更に、ヘキサン飽和DMSO 2mLを加え、マルチミキサーにより1分間攪拌した。エマルジョンが形成された時は、遠心分離(2000rpm/min)により層をきれいに分離した(以下の攪拌操作においても同様である)。
次にヘキサン層を除去し、DMSO層にヘキサン1mLを加え、マルチミキサーにより1分間攪拌した。再度、ヘキサン層を除去し、DMSO層にヘキサン1mLを加え、マルチミキサーにより1分間攪拌した。
ヘキサン層を除去し、DMSO層を試験管へ移した。DMSO層に5%NaCl水溶液 8mLを加えることによりDMSO層を希釈し、更にヘキサン1.5mLを加え、ボルテックスミキサーにより1分間攪拌した。
予め10-30mg程度の無水硫酸ナトリウムを入れておいた試験管に、ヘキサン層1mLを移し、ボルテックスミキサーにより20-30 秒間攪拌した。予め10%発煙硫酸1mLを分注しておいた試験管に、ヘキサン層0.7mLを移し、マルチミキサーにより1分間攪拌した。
予め、5%NaCl水溶液 0.4mLを分注しておいた試験管に、ヘキサン層0.4mLを移し、ボルテックスミキサーにより20-30 秒間攪拌した。
予め、キーパーとしてヘキサン飽和DMSOを0.2mL分注しておいた試験管に、ヘキサン層0.2mLを移し、抽出液濃縮器を用いて、室温(約20-28℃)でヘキサン層を蒸発させた。
残ったDMSO層0.2mLに、DMSO 0.8mLを加えて希釈し、ELISA測定に用いた。
試薬及び方法
1)ELISAキット
絶縁油試料中PCB濃度の測定においては、Abraxis社製の2種のELISAキット
(中〜高塩素化PCB(HC-PCB)測定用キット:品番PN530001)、及び
(低塩素化PCB(LC-PCB)測定用キット:品番PN530021)
を単独で、又は適宜組み合わせて使用した。それぞれのキット中に含まれる主な試薬の構成は以下の通りである。
1. 抗PCB抗体結合磁気ビーズ(組成:抗PCB抗体を結合させた磁気ビーズ)
2. PCB-酵素複合体(AgE)(組成:PCB(あるいはその誘導体)と酵素(例えばペルオキシダーゼ)を結合させたものなど)
3. 発色液(組成:酵素の基質(例えばペルオキシダーゼの場合は、3,3’,4,4’−テトラメチルベンチジン(TMBZ)など))
4. 停止液(組成:0.5N硫酸や0.5Mリン酸など)
5. 洗浄液(組成:PBS(リン酸緩衝生理食塩水)やT-PBS(Tween-20含有リン酸緩衝生理食塩水))
また、一部の試験においては、市販のHC-AgEと、市販のLC-AgEとを適当な比率(体積比)で混合して使用した。
PCB標準物質としては、特にことわりのない限りカネクロール KC-400(GL-サイエンス製: Cat No. 1021-19104)を使用した。カネクロール KC-400を100% DMSOに溶解し、0.5, 1, 2, 5, 10, 30, 100, 300, 1000ppbのPCBを含む100%DMSO溶液を標準試料として調製した。
また、塩素数の異なるPCBに対する交差反応性を試験する場合は、
KC-300(GL-サイエンス製:Cat No. 1021-19103)
KC-500(GLサイエンス製:Cat No. 1021-19105)
KC-600(GLサイエンス製:Cat No. 1021-19106)
を用い、KC-400と同様に標準試料を調製した。
ポリスチレン試験管中に、上記方法により前処理した試料、又はPCB標準試料を80μL入れた。更に、蒸留水(125μL)、PCB-酵素複合体(250μL)、及びPCB抗体結合磁気ビーズ(500μL)を加え、ボルテックスミキサーにより1-2秒攪拌し、混合液を室温で30分静置することにより反応させた。試験管をマグネテッィクセパレータに取り付け、2分間静置し、磁気ビーズを分離した。マグネテッィクセパレータにとりつけたまま、試験管内の溶液を廃棄した。試験管をセパレーターから取り外したのち洗浄液(1mL)を添加し、ボルテックスミキサーにより1-2秒攪拌し、マグネテッィクセパレータに取り付け、2分間静置し、磁気ビーズを分離した。マグネテッィクセパレータにとりつけたまま、試験管内の溶液を廃棄した。更に、試験管をセパレーターから取り外したのち洗浄液(1mL)を添加し、ボルテックスミキサーにより1-2秒攪拌し、マグネテッィクセパレータに取り付け、2分間静置し、磁気ビーズを分離した。マグネテッィクセパレータにとりつけたまま、試験管内の溶液を廃棄した。試験管をセパレーターから取り外したのち発色液(500μL)を添加し、ボルテックスミキサーにより1-2秒攪拌し、混合液を室温にて40分間静置し、反応させた。停止液(500μL)を添加し、可視分光光度計、ミクロセルを使用して吸光度測定(450nm)を測定した。標準曲線より試料中のPCB濃度(ppb)を算出し、必要に応じて、試料分取量、前処理回収率等に基づき、値を補正した。
調製したELISA測定用標準試料を用い、上記測定フローに従って、各濃度(0, 0.5, 1, 2, 5, 10, 30, 100, 300, 1000ppb)における吸光度を測定した。次に、得られた吸光度からデルタソフトを使用して4-パラメーター式により測定値を得た。
4-パラメーター式 : Y=((A-D)/(1+(X/C)B)+D
A: 0濃度の吸光度、B: 50%阻害濃度(IC50)での傾き、C: IC50、
D: 最小吸光度(バックグラウンド)、Y: 吸光度(Abs. 450nm)、
X: 試料中(100%DMSO溶液)の濃度(ppb)
試料中のPCB濃度(ppm)は、ELISA信号値(吸光度)から標準曲線を使用してELISA濃度換算値(ppb)を得たのち、以下の式に従って試料希釈倍数および前処理での回収率で補正した。
[試料中のPCB濃度(ppm)]=[ELISA濃度換算値(ppb) ] X [試料希釈倍数*] / [前処理におけるPCB回収率] / 1000
* 試料希釈倍数: 約50mg秤量した試料を最終的に150倍希釈してELISA測定する場合は、50 X 150 =7500を実際の試料量(mg)で除した値を採用した。
一部の試験においては、JEAC1201絶縁油中のポリ塩化ビフェニル(PCB)の分析方法規定(1991)によりGC-ECD法によりPCB濃度を測定した。
1)PCB-酵素複合体の抗PCB抗体に対する反応性
中〜高塩素化PCB測定用キット又は低塩素化PCB測定用キットに含まれる各PCB-酵素複合体(AgE)の各抗PCB抗体結合磁気ビーズに対する反応性を確認した。その結果、HC-AgEの抗LC-PCB抗体に対する反応性はOD: 0.475であり、抗HC-PCB抗体に対する反応性(OD: 0.715)に比べ約2/3程度であった(表3)。一方、LC-AgEは抗HC-PCB抗体とほとんど反応性を示さなかった(OD: 0.156)。これらのことから抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ及び抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズを混合して使用する際に、抗HC-PCB抗体、抗LC-PCB抗体の効果をそれぞれ発揮させるためには、各AgEについても吸光度が同程度となるように希釈後、混合して使用することが必要と考えられた。
両AgEについて、抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ: 抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズ(1:1)の混合ビーズとの反応性を確認したところ、HC-AgEについてはキット原液で、またLC-AgEについてはキット原液をPBSにて1.7倍希釈で同程度のOD(0.64)が得られることが判った(表3、図1)。このことから、1:1混合ビースを使用する時には、HC-AgE(原液)とLC-AgE (1.7倍希釈)とを等体積量混合して使用することとした。
抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ: 抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズ=1〜4:1とし、上述と同様に、各ビーズ混合比におけるAgE調整濃度を決定した(表4)。
各種抗体ビーズ混合比におけるKC交差反応性を、抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ又は抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズを単独で使用した時のものと比較した(図2)。2種の抗体ビーズを混合して用いることにより、KCに対する交差反応性の分布が収束しており、カクテル抗体法の有効性が示唆された。
従って、PCB濃度が0のときのODが比較的高値で維持可能な抗体ビーズ混合比である抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ: 抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズ=1:1及び2:1について、実サンプルにおける機器分析との比較データを取得することとした。
絶縁油試料を用いて、ELISAの測定値と、GC-ECD法による測定値とを比較した結果を図3に示す。
GC-ECD法による測定は、公定法である平成4年厚生省告示第192号別表第3の第1に準拠して行った。ELISA法(抗-PCB抗体結合磁気ビーズのみ)とGC-ECD法の結果は、相関係数(R)0.951であり、公定法と高い相関が得られた。
カクテル抗体法では相関係数が改善され、とくに抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ: 抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズ(2:1)ではR=0.991となった。以上の結果から、カクテル抗体法のビーズ混合比として「抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ: 抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズ=2:1」が好ましいものと考えられた。
カクテル抗体法(ビーズ混合比/抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ: 抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズ=2:1)でのKC交差反応性(ELISA測定)を抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ又は抗LC-PCB抗体結合磁気ビーズのみを用いた場合と比較した。
なお、交差反応性は、各KCについて阻害率=50%を与えるときの濃度(IC50)より、下式により算出した。
交差反応性(%)=(KC-400のIC50)/(各KCのIC50)×100
その結果、抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズのみを使用した時に比べ、交差反応性がKC-300で49から101%、KC-500で217から118%、KC-600で217から55%へとそれぞれ改善されていることを確認した(表5、図4)。
絶縁油試料を用いて、ELISAの測定値と、ガスクロマト電子捕獲型検出器(GC-ECD)法による測定値とを比較した。標準曲線のための測定結果及び絶縁油試料のための測定結果を表6及び7に示す。
表7の中のGC-ECD法測定値とカクテル抗体ELISA法測定値との相関を調べた(図5)。この結果よりELISA法測定値から絶縁油試料中の濃度換算係数を0.468とした。
抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ法(Generalと記載)とカクテル抗体法(Cocktailと記載)の定量値をGC-ECD法定量値と比較した(図6)。カクテル抗体法を用いることにより、交差反応性に起因する過剰、過少定量が大きく軽減され、ELISA定量値とGC-ECD機器分析値との比率は、抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズ法では47〜197%であったのに対し、カクテル抗体法では61〜119%と、機器分析法に匹敵する精度が得られた。
カクテル抗体法換算値とGC-ECD法測定値との相関を調べた(図7)。カクテル抗体法を用いることにより、交差反応性に起因する過剰、過少定量が軽減され、抗HC-PCB抗体結合磁気ビーズのみを用いたELISA法での測定時と比較して、勾配は1.117→1.002へと改良され、また、相関係数(R)も0.93から0.99へと改善された。
カクテル抗体ELISA測定法のための標準試料(100%DMSO中でのKC-400)を用いたときの典型的な検量線を図8に示す。阻害率5〜10% (B/B0=90〜95%)、15〜20% (B/B0=80〜85%)を示す濃度をそれぞれ検出下限値(3ppb) 、定量下限値(7ppb)とし、標準物質濃度とB/B0の間に直線性が得られる標準物質の上限濃度(1000ppb)を定量上限値とした。
更に、絶縁油前処理における希釈倍率(150倍)および回収率(46.8%)から、絶縁油試料測定時の検出、定量範囲を以下のように設定した。
検出下限値: 3ppb(キット検出下限値)X 150(希釈倍率)/ 0.468(回収率)/1000 = 0.96ppm
定量下限値: 7ppb(キット定量下限値)X 150(希釈倍率)/ 0.468(回収率)/1000 = 2.2ppm
定量上限値: 1000ppb(キット定量上限値)X 150(希釈倍率)/ 0.468(回収率)/1000 = 320ppm
本発明の調製方法により調製された試料を用いて免疫学的測定法でPCBを測定することにより、広汎なPCB異性体を一時に、簡便かつ高感度で測定することができる。
Claims (1)
- 以下の工程を含む、PCBの免疫学的測定用試料の調製方法。
(a)試料をヘキサン及びDMSOと混合し、DMSO分画を採取すること;
(b)DMSO分画を無機塩水溶液で希釈し、希釈物をヘキサンと混合し、第1のヘキサン分画を採取すること;
(c)第1のヘキサン分画をスルホン化剤と混合し、第2のヘキサン分画を採取すること;
(d)第2のヘキサン分画へDMSOを添加し、ヘキサンを蒸発させ、残渣をPCBの免疫学的測定用試料として得ること。
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