JP2002228660A - ダイオキシン類の検出方法 - Google Patents

ダイオキシン類の検出方法

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JP2002228660A
JP2002228660A JP2001028434A JP2001028434A JP2002228660A JP 2002228660 A JP2002228660 A JP 2002228660A JP 2001028434 A JP2001028434 A JP 2001028434A JP 2001028434 A JP2001028434 A JP 2001028434A JP 2002228660 A JP2002228660 A JP 2002228660A
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dioxin
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Haruki Mizukami
春樹 水上
Kazuto Nishi
和人 西
Akira Okuyama
亮 奥山
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ENBIOTEC LABORATORIES KK
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Enbiotec Lab Kk
ENBIOTEC LABORATORIES KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ダイオキシン類に対する非特異的な抗体であっ
ても、ダイオキシン類を異性体レベルで検出可能な、ダ
イオキシン類に対する抗体を用いるダイオキシン類の検
出手段を提供すること。 【解決手段】被検物に対して、複数種類のダイオキシン
類異性体に異なる交差反応性を示す2種以上の抗体を反
応させて、各々の抗体の被検物に対する反応若しくは非
反応、または、反応強度を、ダイオキシン類異性体の存
在と関連付けて、被検物のダイオキシン類を異性体レベ
ルで検出する、ダイオキシン類の検出方法を提供するこ
とにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイオキシン類の
検出手段に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】近年、ダイオキシン類による環境汚染が
深刻化し、人体および生体への影響が懸念されている。
これまで、ダイオキシン類の検出方法としては、ガス・
クロマトグラフ質量分析法(GC−MS法)を中心とし
た分析法が用いられてきた。GC−MS法は、公定分析
法として用いられており、その感度、精度共、非常に優
れた方法であるが、特殊な装置を必要とするために分析
コストが高く、分析の手順自体も煩雑である等の問題点
が認められる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このようなGC−MS
法の欠点を解決するために、ダイオキシン類に対する抗
体を用いたELISA法が開発されたが、ダイオキシン
類に特有の事情から、通常のELISA法では解決しき
れない問題点が認められる。
【0004】すなわち、ダイオキシン類を検出する場
合、大雑把にダイオキシン類の検出自体を行うのみなら
ず、数多く存在するダイオキシン類の異性体を区別して
検出する必要が認められる。何故なら、ダイオキシン類
は、汚染源がいずれか(例えば、一般ゴミの焼却物であ
るか、工業廃棄物であるか、農薬等の薬品類起源である
か等)によって、異性体レベルで異なる傾向が強く、か
かる異性体レベルの検出を行わなければ、汚染源を正確
に特定することが困難になるからである。
【0005】通常のELISA法で、ダイオキシン類を
異性体レベルで検出するには、異性体レベルで、交差反
応性が認められない抗体を入手して用いることが必要で
あるが、このようなダイオキシン類の異性体レベルで特
異性が認められる抗体を製造すること自体が、非常に困
難を伴う作業である(特に、ダイオキシン類は、有害な
ので、安全上の理由から、抗原を用いる抗体の製造作業
自体が、可能な限り少ない方が好ましい)。
【0006】そこで、本発明が解決すべき課題は、ダイ
オキシン類に対する非特異的な抗体であっても、ダイオ
キシン類を異性体レベルで検出可能な、ダイオキシン類
に対する抗体を用いるダイオキシン類の検出手段を提供
することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、この課題の
解決に向けて鋭意検討を行った。その結果、ダイオキシ
ン類の異性体間において交差反応性が認められる複数種
類の抗体を、各々の抗体のダイオキシン類に対する反応
性に関する特徴を組み合わせて検討することにより、特
定のダイオキシン類の異性体に対して高度の特異性を有
する抗体を得なくとも、容易にダイオキシン類を異性体
レベルで検出することを見出した。
【0008】すなわち、本発明は、被検物に対して、複
数種類のダイオキシン類異性体に異なる交差反応性を示
す2種以上の抗体を反応させて、各々の抗体の被検物に
対する反応若しくは非反応、または、反応強度を、ダイ
オキシン類異性体の存在と関連付けて、被検物のダイオ
キシン類を異性体レベルで検出する、ダイオキシン類の
検出方法(以下、本検出方法ともいう)を提供する発明
である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。本検出方法の検出の対象となるダイオキシン類
は、特に限定されないが、典型的なものとして、ダイオ
キシン類特別措置法で指定されている29種類のダイオ
キシン類を挙げることができる。具体的には、2,3,7,8-
4 CDD、1,2,3,7,8-P5 CDD、1,2,3,4,7,8-H6
CDD、1,2,3,6,7,8-H6 CDD、1,2,3,7,8,9-H6
DD、1,2,3,4,6,7,8-H7 CDD、1,2,3,4,6,7,8,9-O
8 CDD等のジベンゾダイオキシン類;3,4,4',5- T4
CB、3,3',4,4'-T4 CB、3,3',4,4',5-P5 CB、3,
3',4,4',5,5'- H6 CB、2,3,3',4,4'-P5 CB、2,3,
4,4',5- P 5 CB、2,3',4,4',5-P5 CB、2',3,4,4',
5-P5 CB、2,3,3',4,4',5-H6 CB、2,3,3',4,4',5'
- H6 CB、2,3',4,4',5,5'- H6 CB、2,3,3',4,4',
5,5'- H7 CB等のコプラナーPCB類;2,3,7,8-T4
CDF、1,2,3,7,8-P5 CDF、2,3,4,7,8-P5 CD
F、1,2,3,4,7,8-H6 CDF、1,2,3,6,7,8-H6 CD
F、1,2,3,7,8,9-H6 CDF、2,3,4,6,7,8-H6 CD
F、1,2,3,4,6,7,8-H7 CDF、1,2,3,4,7,8,9-H7
DF、1,2,3,4,6,7,8,9-O8 CDF等のジベンゾフラン
類等が挙げられる。
【0010】このようなダイオキシン類の異性体レベル
における差異と汚染源との関係としては、例えば、都市
廃棄物焼却施設により汚染された表層では、T4 CD
D、T 5 CDDおよびT6 CDDが少なく、T7 CDD
およびT8 CDDが多い傾向が認められ、製材所の周辺
(木材の防腐剤として使用されたPCBに含まれる不純
物の農薬パターンを反映している)では、T4 CDDお
よびT5 CDDが少なく、T6 CDD、T7 CDDおよ
びT8 CDDが多い傾向が認められ、紙・パルプ工場の
廃液によって汚染された河川低泥中では、T4 CDDの
全体に占める割合が多い傾向が認められている。本検出
方法によって、ダイオキシン類を異性体レベルで検出
し、この検出内容とかかるダイオキシン異性体と汚染源
との関係を関連付けて、本検出方法により、ダイオキシ
ン類の汚染源を高い確率で特定することが可能となる。
【0011】被検物は、ダイオキシン類の検出の対象と
なり得るものであれば限定されず、例えば、大気、土
壌、湖水や海水等の水試料等が挙げられる。被検物は、
その性質に応じて、様々の前処理、例えば、希釈処理、
濾過処理等を行って、これに本検出方法を適用すること
もできる。
【0012】本検出方法において用いる抗体は、検出の
対象とするダイオキシン類を選んで、これを免疫抗原
(必要に応じて、目的とするダイオキシン類とハプテン
を結合させたものを免疫抗原とすることも可能である)
として、常法により製造して用いることができる。
【0013】すなわち、上記抗体がポリクローナル抗体
の場合には、目的とするダイオキシン類を免疫抗原とし
て免疫した動物に由来する免疫血清から製造することが
可能であり、同じくモノクローナル抗体の場合には、ポ
リクローナル抗体と同様の方法で、免疫した動物の免疫
細胞と動物の骨髄腫細胞とのハイブリドーマを作出し、
これにより目的とするダイオキシン類を認識する抗体を
産生するクローンを選択し、このクローンを培養するこ
とにより製造することができる。
【0014】免疫される動物も特に限定されるものでは
なく、マウス,ラット等を広く用いることができるが、
モノクローナル抗体を製造する場合には、細胞融合に用
いる骨髄腫細胞との適合性を考慮して選択することが望
ましい。
【0015】免疫は一般的方法により、例えば上記免疫
抗原を免疫の対象とする動物に静脈内,皮内,皮下,腹
腔内注射等で投与することにより行うことができる。よ
り具体的には、上記免疫抗原を所望により通常のアジュ
バントと併用して、免疫の対象とする動物に2〜14日
毎に上記手段により数回投与し、ポリクローナル抗体製
造のための免疫血清又はモノクローナル抗体製造のため
の免疫細胞、例えば免疫後の脾臓細胞を得ることができ
る。
【0016】モノクローナル抗体を製造する場合、この
免疫細胞と細胞融合する他方の親細胞としての骨髄腫細
胞としては、既に公知のもの、例えばSP2/0−Ag
14,P3−NS1−1−Ag4−1,MPC11−4
5,6.TG1.7(以上、マウス由来);210.R
CY.Ag1.2.3(ラット由来);SKO−00
7,GM15006TG−A12(以上、ヒト由来)等
を用いることができる。
【0017】上記免疫細胞とこの骨髄腫細胞との細胞融
合は、通常公知の方法、例えばケーラーとミルシュタイ
ンの方法(Kohler,G. and Milstein,C.,Nature,256,495
(1975))等に準じて行うことができる。
【0018】より具体的には、この細胞融合は、通常公
知の融合促進剤、例えばポリエチレングリコール(PE
G),センダイウイルス(HVJ)等の存在下におい
て、融合効率を向上させるためにジメチルスルホキシド
等の補助剤を必要に応じて添加した通常の培養培地中で
行い、ハイブリドーマを調製する。
【0019】所望のハイブリドーマの分離は、通常の選
別用培地、例えばHAT(ヒポキサンチン,アミノプテ
リン及びチミジン)培地で培養することにより行うこと
ができる。すなわち、この選別用培地において目的とす
るハイブリドーマ以外の細胞が死滅するのに十分な時間
をかけて培養することによりハイブリドーマの分離を行
うことができる。このようにして得られるハイブリドー
マは、通常の限界希釈法により目的とするモノクローナ
ル抗体の検索及び単一クローン化に供することができ
る。
【0020】目的とするモノクローナル抗体産生株の検
索は、例えばELISA法,プラーク法,スポット法,
凝集反応法,オクタロニー法,RIA法等の一般的な検
索法に従い行うことができる。
【0021】このようにして得られるダイオキシン類を
認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ
は、通常の培地で継代培養することが可能であり、さら
に液体窒素中で長時間保存することもできる。
【0022】このハイブリドーマからの目的とするモノ
クローナル抗体の採取は、ハイブリドーマを常法に従っ
て培養して、その培養上清として得る方法や、ハイブリ
ドーマを、このハイブリドーマに対して適合性が認めら
れる動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法
等を用いることができる。
【0023】このようにして得られるポリクローナル抗
体及びモノクローナル抗体は、更に塩析,ゲル濾過法,
アフィニティクロマトグラフィー等の通常の手段により
精製することができる。
【0024】このようにして得られるポリクローナル抗
体及びモノクローナル抗体は、目的とするダイオキシン
類に対して特異反応性を有する抗体であるが、異性体レ
ベルまでの正確な特異反応性を追求すると、スクリーニ
ングは容易ではない。本検出方法では、製造した抗体に
おいて、いくつかのダイオキシンの異性体間で交差反応
性が認められても、このような抗体をいくつか組み合わ
せることにより、ダイオキシン類を異性体レベルで検出
することが可能である。
【0025】すなわち、被検物に対して、複数種類のダ
イオキシン類異性体に異なる交差反応性を示す2種以上
の抗体を反応させて、被検物のダイオキシン類を異性体
レベルで検出することが可能である。
【0026】具体的に、このような検出を可能にする手
段として、各々の抗体の被検物に対する反応若しくは非
反応、または、反応強度を、ダイオキシン類異性体の存
在と関連付けて、被検物のダイオキシン類を検出するこ
とが挙げられる。
【0027】例えば、抗体1が、ダイオキシン類1およ
び2に対する反応性が認められ、抗体2が、ダイオキシ
ン類2および3に対する反応性が認められる場合におい
て、被検物が、抗体1および抗体2に対して陽性である
場合には、被検物中のダイオキシン類は、ダイオキシン
類2ということになる。
【0028】また、抗体1に、ダイオキシンン類1に対
して強い反応性が認められ、ダイオキシン類2および3
に対しては弱い反応性のみが認められ、抗体2に、ダイ
オキシン類2に対して強い反応性が認められ、ダイオキ
シン類3に対しては弱い反応性のみが認められ、抗体3
に、ダイオキシン類3に対して強い反応性が認められ、
ダイオキシン1および2に対しては弱い反応性のみが認
められる場合において、被検物が、抗体1および2に対
する弱い反応性が認められ、抗体3に対する強い反応性
が認められた場合には、被検物中のダイオキシン類は、
ダイオキシン類3ということになる。
【0029】なお、上記のダイオキシン類に対する抗体
の反応性は、当然、被検物中のダイオキシン類の濃度に
も依存するので、相対的な反応性の比較により、被検物
中のダイオキシン類の種類を特定することが可能である
のと共に、絶対的な反応性を検討することにより、被検
物中のダイオキシン類の濃度も算出することが可能であ
る。
【0030】このようにして、被検物に対して、複数種
類のダイオキシン類異性体に異なる交差反応性を示す2
種以上の抗体を反応させて、被検物のダイオキシン類を
異性体レベルで検出することができる。なお、一般的
に、ダイオキシン類を抗原とする抗体の、ダイオキシン
類の異性体に対する反応性の差異は、あまり大きくない
傾向が強いので、本検出方法において用いるダイオキシ
ン類に対する抗体の反応性強度は、少なくとも2段階の
基準とすることが好適である。本検出方法のさらに具体
的な態様は、実施例の欄において記載する。
【0031】本検出方法における検出態様は、1.ダイ
オキシン類に対する抗体が固定化されている担体(抗体
固定化担体)を用いる場合と、2.ダイオキシン類のハ
プテン抗原が固定化されている担体(抗原固定化担体)
を用いる場合に大別され得る。
【0032】1.抗体固定化担体としては、マイクロタ
イタープレート、抗体固定化検出基板、ポリスチレンチ
ューブ等を挙げることができる。これらの抗体固定化担
体の中でも、抗体固定化検出基板は、小型であり、なお
かつ、一つの基板で、様々な抗体の被検物に対する反応
性を一覧することが可能であり、基板上の反応パターン
を解析することで、容易に被検物のダイオキシン類を異
性体レベルで検出することが可能であり、好適である。
本検出方法において、抗体固定化担体を用いる場合に
は、まず、被検物を、酵素または蛍光物質等で標識した
ハプテンと競合反応させ、次に、ダイオキシン類に対す
る抗体に結合した標識ハプテンの量を酵素反応または蛍
光反応等を利用して測定することにより、被検物のダイ
オキシン類に対する抗体への反応量を調べることができ
る。
【0033】ここで、上述した本検出方法を行うのに好
適な抗体固定化検出基板について説明する。抗体固定化
検出基板(以下、検出基板という)は、2種類以上の抗
体が基板上に固定されている、検出基板であり、被検物
と検出基板におけるダイオキシン類に対する抗体を接触
させて、これらの抗体の被検物に対する反応パターン
と、このパターンに対応するダイオキシン類を異性体レ
ベルで関連付けることにより、被検物中のダイオキシン
を異性体レベルで検出することができる。
【0034】検出基板の素材は、特に限定されず、プラ
スチック類、ガラス類、金属類等を選択することが可能
である。基板の大きさは、特に限定されないが、通常
は、縦横数cm程度である。
【0035】検出基板における、基板への抗体の固定方
法は、抗体がその物質の認識機能を失わずに、かつ、容
易に基板から脱落し難い方法を選択することが好まし
い。具体的には、i)基板上に小孔を設けて、この小孔に
抗体を配置する方法、ii) 基板上に抗体を非共有結合
(疎水結合)で固定するか、基板上にアルデヒド基等の
官能基を導入して、共有結合により抗体を固定する方
法、iii)基板上に抗体溶液をアレイヤー(基板上に溶液
を分注する装置)を用いて、一定量(1〜100ng程
度)を、一定間隔(10〜100μm 程度)でスポット
し、このスポットの後、基板上にBSA溶液等を加える
ことによりブロッキングして固定化する方法、iv) ガラ
スビーズに代表されるマイクロビーズ等の小担体に抗体
を固定化して、これを、基板上に設けた小孔に配置し
て、基板における抗体の固定化を行う方法等が挙げられ
る。
【0036】また、特に、iv) のマイクロビーズ等の小
担体を用いる方法は、基板上に、どのように小担体を配
置するかを予め予定して、その予定を基にしたデザイン
の抗体配置態様を有する検出基板を製造することができ
る。基板における小担体の配置法としては、例えば、微
小アームのような、微小対象物を挟み込み力等により把
握して、これを所望する場所に載置することが可能な機
構を用いて、小担体を基板上の小孔に配置する方法や、
小担体をマイクロシリンジのような、吸引力で微小対象
物を吸い込んで把握し、これを所望する場所において放
出して載置することが可能な機構を用いて、小担体を基
板上の小孔に配置する方法等を挙げることができる。
【0037】ここに挙げた、iv) の小担体を用いる、検
出基板の製造方法の態様は、全て、予め、予定したデザ
インの抗体配置態様を有する検出基板を製造するのに適
しているが、このように、抗体配置のデザインが予定さ
れていない態様を行うことも可能である。例えば、マイ
クロビーズ等の小担体に、固定化した抗体の種類毎に、
レーザー等により異なる印を付加して、基板上における
小担体の配置後に、配置された数多くの小担体を、異な
る印毎に把握することにより、基板上のどの位置に、ど
の抗体が固定化された小担体が配置されたかを確認する
ことにより、抗体配置のデザインなしに、所望する検出
基板を製造することができる。すなわち、この態様の検
出基板は、予定する種類の抗体を固定化した小担体を用
いさえすれば、無作為に小担体を基板に接触させつつ、
小孔に配置することで、所望する製品を得ることが可能
であり、製造工程を格段に簡略化することが可能とな
る。
【0038】このようにして製造され得る検出基板にお
いては、前述したように、被検物と検出基板における抗
体を接触させて、これらの抗体の被検物に対する反応パ
ターンと、このパターンに対応する物質を関連付けるこ
とにより、検出サンプル内の物質を検出することができ
る。
【0039】なお、検出基板における抗体の異性体レベ
ルでのダイオキン類に対する反応パターンを予め想定
し、これを電子データ化して、具体的な反応パターンに
応じて、被検物中のダイオキシン類を異性体レベルで判
別し得るソフトウエアにより、所望するダイオキシン類
の検出を極めて簡便に行うことも可能である。
【0040】2.抗原固定化担体を用いる場合には、一
般的に、まず、被検物とダイオキシン類に対する抗体を
抗原抗体反応させ、次に、酵素または蛍光物質等で標識
されたダイオキシン類に対する抗体と反応し得る2次抗
体と反応させる。次いで、ダイオキシン類に対する抗体
に結合した、標識2次抗体の量を、酵素反応または蛍光
強度等を利用して測定することにより、被検物のダイオ
キシン類に対する抗体への反応量を調べることができ
る。
【0041】本検出方法を実際に行うに際しては、ま
ず、ダイオキシン類の標準品〔検出対象となるダイオキ
シン類(異性体レベル)〕それぞれに対する、各ダイオ
キシン類に対する抗体のダイオキシン類に対する反応性
を2段階以上に分け、ダイオキシン類に対する抗体の反
応性の組み合わせにより得られる、理論的なダイオキシ
ン類の異性体の種類と濃度範囲を設定する。次に、被検
物と、それぞれのダイオキシン類に対する抗体との反応
性を分類し、得られた反応のパターンを、前記のダイオ
キシン類の標準品を用いて決定したダイオキシン類(異
性体レベル)の種類と濃度と比較することにより、被検
物中のダイオキシン類の種類と濃度を検出することがで
きる。
【0042】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、こ
れらの説明は、本発明を限定することを意図するもので
はない。マイクロビーズを用いて製造する検出基板を用
いた、本検出方法の実施例を記載する。
【0043】(1)抗体固定化ビーズの調製 平均直径が100μm のガラスビーズ20mgを、0.1
mg/mL NaOH中に1時間処理し、その後、94℃で2
時間乾燥した。このガラスビースを、10%γ−APT
ES(3-aminopropyl triethoxysilan)で、120℃下で
18時間処理した後、115℃で4時間乾燥して、2.
5%グルタルアルデヒドで30分間処理した。この処理
ビーズを精製水で洗浄した後、3つのグループに分け、
3種類の抗体〔2種類のコプラナーPCB異性体(3,
3',4,4',5-PeCBおよび3,3',4,4',5,5'-HxCB )に対して
3種類のモノクローナル抗体(抗体A,B,C:それぞ
れ、抗原として、下記の化学構造式で表される、6-[(3,
3',4,4',5,5'-pentachlorobiphenyl-4-yl)oxy]hexanoic
acid :
【0044】
【化1】
【0045】を用い、例示したモノクローナル抗体の製
造方法に従って製造した)〕で処理を行った。すなわ
ち、これらの抗ダイオキシン抗体の1.6mg/mL 水溶液
と処理ビーズを、それぞれ、4℃下で18時間接触させ
た。次いで、これらの抗体処理ビーズをバッファーで、
それぞれ洗浄後、0.01Mエタノールアミンで、室温
下、30分間処理を行った。次いで、0.2%カゼイン
および1%BSAを含有するPBS(pH7.4)をブ
ロッキング溶液として、30分間、抗体処理ビーズのブ
ロッキング処理を行った。このブロッキング処理ビーズ
を、バッファーで洗浄して、上記の抗ダイオキシン抗体
が固定化されたマイクロビーズを調製した。
【0046】(2)検出基板の製造 ガラス製の基板(縦2cm×横2cm×厚さ0.5mm)上
に、フォトレジスト法により、多数の溝(150×15
0μm 程度の大きさの、逆ピラミッド型の溝)を全面に
設けて(約2000箇所/基板)、この基板面の2/3
をセロファンテープで被覆して、残りの1/3の半面の
溝に、上記の抗ダイオキシン抗体Aを嵌め込んで配置し
て、基板面の1/3に抗ダイオキシン抗体Aを固定化し
た。次いで、セロファンテープで被覆した2/3のテー
プを剥がし取って、この部分を半面ずつに分割して、半
面をセロファンテープで被覆して、上記と同じ要領で、
上記の抗ダイオキシン抗体B・Cを、かかる半面部分に
それぞれ固定化した。このようにして、基板面が、抗ダ
イオキシン抗体A・B・Cの固定面で3分割された、検
出基板を製造した。
【0047】(3)このようにして得られた検出基板
を、ダイオキシン(3,3',4,4',5-P5CBおよび3,3',4,4',
5,5'-H6CB )とHRP標識ダイオキシンの混合溶液
〔0、0.5、1、5、50ppm の3,3',4,4',5-P5CBお
よび3,3',4,4',5,5'-H6CB 溶液のそれぞれを、1000
ppm のHRP標識ダイオキシン(3,3',4,4',5-P5CBおよ
び3,3',4,4',5,5'-H6CB )溶液と混合したもの〕に浸漬
して、室温で1時間放置した後、バッファーで洗浄し
て、基板を乾燥した。その後、それぞれのダイオキシン
の希薄水溶液に浸漬した基板を、比色基質(OPD:o-
phenylene diamine 3mg/mL 水溶液)中に、5分間浸漬
して、異なる抗体を固定化したそれぞれの分割面から、
無作為に1つずつ、マイクロビーズを固定化した溝を選
択して、その比色強度を測定して、抗体A、B、Cのそ
れぞれに対する、上記のダイオキシン類の反応曲線を作
成した(第1図:3,3',4,4',5-P5CBに対する反応曲線、
第2図:3,3',4,4',5,5'-H6CB に対する反応曲線)。
【0048】次いで、得られた反応曲線を基に、それぞ
れのダイオキシン異性体濃度に対する阻害反応の強さを
3段階(−:20%未満の阻害率、+:20〜60%の
阻害率、++:60%を超える阻害率)に分類した〔第
1表(3,3',4,4',5-P5CBに対する反応強度)および第2
表(3,3',4,4',5,5'-H6CB に対する反応強度)〕。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】さらに、3種類の抗体の組み合わせ(例え
ば、抗体A:抗体B:抗体C=−:−:−、−:−:+
・・・等)のそれぞれについて予想されるCo−PCB
異性体の濃度範囲を、上記3段階の反応強度から推定し
た(第3表)。
【0052】
【表3】
【0053】最後に、既知濃度のCo−PCB異性体
(3,3',4,4',5-P5CBおよび3,3',4,4',5,5'-H6CB )の混
合サンプルについて、上記と同一の検出基板を用いて、
それぞれのダイオキシン異性体濃度に対する阻害反応の
強さを測定した。上記と同様に、阻害反応の反応強度を
3段階(−:20%未満の阻害率、+:20〜60%の
阻害率、++:60%を超える阻害率)に分類し、第3
表において得られた理論値と実測値とを比較検討した
(第4表)。
【0054】
【表4】
【0055】その結果、ダイオキシン異性体の混合サン
プルの各抗体(A,B,C)に対する、阻害反応の反応
強度の組み合わせを理論値と比較すると、2種類のダイ
オキシン異性体の混合値が、すべて理論値の濃度範囲内
にあることが確認され、ダイオキシン異性体において交
差反応を示す抗体を用いて、被検物内のダイオキシン異
性体の種類の特定と濃度範囲の推測が可能であることが
明らかとなった。
【0056】
【発明の効果】本発明により、ダイオキシンの異性体レ
ベルにおける簡便な検出手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】3,3',4,4',5-P5CBに対して、検出基板を用いて
得た検量線である。
【図2】3,3',4,4',5,5'-H6CB に対して、検出基板を用
いて得た検量線である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奥山 亮 東京都江東区青海2丁目45番地 株式会社 エンバイオテック・ラボラトリーズ内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被検物に対して、複数種類のダイオキシン
    類異性体に異なる交差反応性を示す2種以上の抗体を反
    応させて、各々の抗体の被検物に対する反応若しくは非
    反応、または、反応強度を、ダイオキシン類異性体の存
    在と関連付けて、被検物のダイオキシン類を異性体レベ
    ルで検出する、ダイオキシン類の検出方法。
  2. 【請求項2】ダイオキシン類が、コプラナーPCB類、
    ジベンゾダイオキシン類およびジベンゾフラン類からな
    る群から選ばれるいずれかのダイオキシン類である、請
    求項1記載のダイオキシン類の検出方法。
  3. 【請求項3】複数種類のダイオキシン類異性体に異なる
    交差反応性を示す2種以上の抗体が基板上に固定されて
    いる検出基板において、被検物と検出基板の抗体を接触
    させて、これらの抗体の検出サンプルに対する反応パタ
    ーンと、このパターンに対応するダイオキシン類の異性
    体を関連付けることにより、被検物のダイオキシン類を
    異性体レベルで検出する、請求項1または2記載のダイ
    オキシン類の検出方法。
  4. 【請求項4】複数種類のダイオキシン類異性体に異なる
    交差反応性を示す2種以上の抗体が基板上に固定されて
    いる検出基板。
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