JP5041725B2 - 抗pcbモノクローナル抗体及びその製造方法、並びにpcb測定方法 - Google Patents
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Description
PCBsについては、1974年に「化学物質の審査及び製造に関する法律」により製造、輸入、及び新たな使用について原則的に禁止措置が取られ、更に、2001年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)」が施行され、2016年までに全てのPCB廃棄物の適性処理が法的に義務づけられた。これにより、PCBs廃棄物の処理過程でのモニタリングや、処理後のPCB濃度の測定が重要な課題となっている。
また、PCBsを含まないとされていたトランス中の代替絶縁油においても、残留していた微量PCBsの混入が明らかになった事より、大量の代替絶縁油やトランス本体のPCBs濃度の迅速な分析も急務となっている。
これに対し、特異的抗体を利用する免疫学測定法は、迅速かつ簡便な測定方法として知られ、近年、環境分析の分野にも応用されつつある。
このような考えに基づき、多数の異性体が存在するPCBにおいては、交差反応性が制御された特異性の高い抗PCB抗体が求められており、例えば、コプラナーPCBの一つである3,3’,5,5’-四塩化ビフェニル(PCB80)に対して特異性を持つ抗体(特許文献2参照)等が提案されている。
他方、異性体間において交差反応性が認められる複数種類の抗体を用いて、ダイオキシン類を異性体レベルで検出する方法が提案されている(特許文献4参照)。
<1> 下記一般式(I)で表されるビフェニル誘導体の異性体混合物を、ハプテンとして用いることを特徴とする抗PCBモノクローナル抗体の製造方法である。
<2> 前記一般式(I)で表されるビフェニル誘導体から得られた下記一般式(II)で表される化合物を免疫原として動物を免疫し、免疫した前記動物の抗体産生細胞を回収し、該抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合して得たハイブリドーマを培養することを含む前記<1>に記載の抗PCBモノクローナル抗体の製造方法である。
<3> 前記一般式(II)中、Zが、酵素、蛍光色素、放射性同位元素、磁性体、色素封入ポリマー、希土類、補酵素、金コロイド、及び金原子クラスターのいずれかの標識物質により標識されている前記<2>に記載の抗PCBモノクローナル抗体の製造方法である。
<4> 前記一般式(I)及び前記一般式(II)のいずれかで表される化合物を用いて、ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングすることを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載の抗PCBモノクローナル抗体の製造方法である。
<6> 1〜10塩素化PCB全同族体のうち、1〜2塩素化PCB同族体及び7〜10塩素化同族体に対する親和性よりも、3〜6塩素化PCB同族体混合物に対する親和性が高い前記<5>に記載の抗PCBモノクローナル抗体である。
<8> 受託番号がFERM P−20845である前記<7>に記載のハイブリドーマである。
(1)前記抗PCBモノクローナル抗体と結合した前記被測定試料中のPCB、及び
(2)前記被測定試料中のPCBと結合していない前記抗PCBモノクローナル抗体
のいずれかを検出する方法を含むことを特徴とするPCB測定方法である。
<10> 被測定試料に、前記<5>から<6>のいずれかに記載の抗PCBモノクローナル抗体、及び前記一般式(I)及び前記一般式(II)のいずれかで表される化合物をPCB競合物質として添加し、前記抗PCBモノクローナル抗体と結合した記競合物質を検出することを含むことを特徴とするPCB測定方法である。
<11> 被測定試料に、前記<5>から<6>のいずれかに記載の抗PCBモノクローナル抗体を添加し、前記一般式(II)で表される化合物をPCB競合物質として固定化した担体を用い、前記抗PCBモノクローナル抗体と前記被測定試料中のPCBとを競争させ、前記被測定試料中のPCBと結合していない前記抗PCBモノクローナル抗体を検出することを含むことを特徴とするPCB測定方法である。
<抗PCBモノクローナル抗体の製造方法>
本発明の抗PCBモノクローナル抗体は、下記一般式(I)で表されるビフェニル誘導体の異性体混合物からなるハプテンを用い、本発明の抗PCBモノクローナル抗体の製造方法により製造される。
モノクローナル抗体の製造方法としては、例えば、ケーラーとミルシュタインの方法(Kohler G, Milstein C, Nature, 256,495-7(1975))等に準じて行うことが出来る。
前記動物の免疫方法としては、特に制限はなく、公知の方法から適宜選択することができ、例えば、前記免疫原とアジュバントとを乳化させて得た乳化液を、皮下、静脈内、腹腔内に注射等により投与する方法が挙げられる。
前記免疫原は、例えば、マウスの場合、0.01〜0.5g/bodyを、2〜3週間程度の間隔で3〜15回投与することが好ましい。
前記アジュバントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、フロイントの完全アジュバント、不完全アジュバント、BCG、トレハロースダイマイコレート(TDM)、リポ多糖(LPS)、ミョウバンアジュバント、シリカアジュバント等が挙げられるが、抗体の誘導能、動物への負荷等の関係から、最適なものを選択して使用することが好ましい。
前記抗体産生細胞をミエローマ細胞と融合し、その後所望の抗体を産生する融合細胞をスクリーニングすることにより、前記ハイブリドーマが得られる。
前記抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合方法としては、センダイウイルス法、ポリエチレングリコール法、プロトプラスト法等、当業者に公知の方法で行えばよく、特に限定されないが、ポリエチレングリコール法で融合させる方法が細胞毒性も比較的少なく、融合操作も簡単であるという理由から好ましい。
例えば、前記一般式(II)で表されるコンジュゲートを固相化し、前記融合細胞(ハイブリドーマ)の培養上清を反応させる事より、該培養上清の抗体価を測定し、抗体価が高いウエルを抗PCB抗体産生ウエルとして選択することができる。さらに、抗体価測定時にPCB代替化合物(例えば、前記一般式(I)で表されるビフェニル誘導体)やPCBs等を共存させる事より、これら共存物質に対し反応性の高いウエルを選択し、限界希釈法にて目的の抗PCB抗体産生ハイブリドーマのモノクローン化を行うことができる。
また、前記一般式(II)で表されるコンジュゲート中、Zで表されるタンパク質を標識物質により標識し、これを抗PCB抗体産生ウエルの抗体価を測定時に共存させ、直接競合反応を行う方法によって抗PCB抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングすることもできる。
前記両親媒性溶液としては、DMSO、メタノール、エタノール等が挙げられる。
前記スクリーニングに用いられる前記両親媒性溶液の濃度としては、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。
また、予め前記融合細胞の培養上清にPCB等を添加して反応させたものを、前記センサ官能部に接触させてスクリーニングを行うこともできる。この場合、前記官能部に結合した抗体量を評価することにより、種々のトランスデューサーでのPCB測定への適用が可能な、高親和性を有する抗PCB抗体産生ハイブリドーマを選抜することができる。
前記PCB−K2A−0株は、下記一般式(II)に示す化合物を用いて作製されたハイブリドーマであり、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに平成18年3月16日付で、受託番号FERM P−20845として寄託されている。
また、前記ハイブリドーマを、培地(例えば、10%ウシ胎児血清を含むDMEM等)を用いて培養し、得られた培養液の上清を、抗PCBモノクローナル抗体溶液とすることができる。
前記腹水、又はウシ胎児血清不含培地より得た前記抗PCB抗体産生ハイブリドーマ細胞株培養液上清から、前記抗PCBモノクローナル抗体を精製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法から適宜選択することができ、例えば、限外ろ過、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等により精製することができる。
本発明の抗PCBモノクローナル抗体は、前記本発明の抗PCBモノクローナル抗体の製造方法により製造され、塩素数の異なる二種以上のPCB同族体に交差反応性を有する。また、前記抗PCBモノクローナル抗体は、1〜10塩素化PCB全同族体のうち、3〜6塩素化PCB同族体に対する親和性が高いことが好ましい。
このようにして得られた近似式を、前記抗体と前記抗原との結合曲線とし、y=50%となるときのxの値(=P1)をIC50値とする。
なお、IC50値に対して抗体濃度が十分に小さい時(例えば、10分の1以下の時)、IC50値と平衡解離定数(Kd)がほぼ一致することが知られている。
前記カネクロールは、それぞれ下記表1に示す比率で異なる塩素数のPCBを含有しているため、例えば、本発明の抗PCBモノクローナル抗体は、塩素数の異なる二種以上のPCB同族体に交差反応性を有し、1〜10塩素化PCB全同族体のうち、3〜6塩素化PCB同族体に高い親和性を有するため、KC−300、KC−400、KC−500、及びKC−600のいずれに対して最も高い特異性を示す。
本発明のPCB測定方法は、本発明の抗PCBモノクローナル抗体を用いる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記抗PCBモノクローナル抗体を用い、試料中のPCBを免疫学的に検出、定量する方法、具体的には、ラジオイムノアッセイ(RIA)、エンザイムイムノアッセイ(EIA、ELISA)、フルオロイムノアッセイ(FIA)、免疫クロマトグラフィー、蛍光免疫測定法(FIA)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、免疫比濁法(TIA)、ラテックス免疫比濁法(LTIA)、及び結合平行除外法等が挙げられる。
(I)前記被測定試料に、本発明の抗PCBモノクローナル抗体を添加し、
(1)前記抗PCBモノクローナル抗体と結合した前記被測定試料中のPCB、及び
(2)前記被測定試料中のPCBと結合していない前記抗PCBモノクローナル抗体
のいずれかを検出する方法を含むPCB測定方法。
(II)前記被測定試料に、本発明の抗PCBモノクローナル抗体、及び前記一般式(I)及び前記一般式(II)のいずれかで表される化合物をPCB競合物質として添加し、前記抗PCBモノクローナル抗体と結合した前記競合物質を検出することを含むPCB測定方法。
(III)前記被測定試料に、本発明の抗PCBモノクローナル抗体を添加し、前記一般式(II)で表される化合物をPCB競合物質として固定化した担体を用い、前記抗PCBモノクローナル抗体と前記被測定試料中のPCBとを競争させ、前記被測定試料中のPCBと結合していない前記抗PCBモノクローナル抗体を検出することを含むPCB測定方法。
前記間接競合法及び前記結合平衡除外法において、担体に固定化する抗原(以下、「固定化抗原」という)としては、例えば、前記一般式(I)で表されるビフェニル誘導体を含む化合物、及び前記一般式(II)で表される化合物等が挙げられる。
前記間接競合法及び前記結合平衡除外法は、前記固定化抗原を前記担体上に固定化し、前記担体の前記固定化抗原が結合していない部分をブロッキング剤でブロッキングする。次いで、該担体に被測定試料と前記抗PCBモノクローナル抗体とを加え、前記固定化抗原と前記被測定試料中のPCBとを前記抗PCBモノクローナル抗体に対して前記間接競合法においては競合反応させ、前記結合平衡除外法においては結合平衡除外化反応させる。
前記固定化担体と結合しなかった前記抗PCBモノクローナル抗体を洗浄除去した後、二次抗体として標識した抗体を加え、前記固定化抗原と結合した抗PCBモノクローナル抗体と結合させ、洗浄を行った後、前記標識の発色又は発光を測定する。また、二次抗体を使用せず、前記抗PCBモノクローナル抗体を直接標識して用いても良い。得られた吸光度や光強度について、試料を添加しない場合の値に対する減少率を求め、これを阻害率とし、既知の濃度のPCBを添加したときの阻害率からあらかじめ求めておいた検量線を用い、前記試料中のPCB濃度を算出することができる。
前記液−液抽出において、前記被験物質と前記極性溶媒との混合比(質量比)としては、例えば、(前記被験物質):(前記極性溶媒)=1:1〜:1:10が好ましい。
前記絶縁油としては、脱塩素化処理等のPCB分解処理を行った後の絶縁油も好適に挙げられる。
なお、本発明の抗PCBモノクローナル抗体は、20質量%の極性溶媒を含む被測定試料溶液中において、PCBsに対し70〜90%の親和性を有する。
また、SPR(表面プラズモン)センサ、QCM(水晶振動子)センサ、光学的センサ、および電気化学的センサ等のトランスデューサーを使用した系において、センサ官能部へ、本発明の抗PCBモノクローナル抗体、又は前記ビフェニル誘導体等を固定化して、免疫センサとして使用することができる。
さらに、本発明の抗PCBモノクローナル抗体を固定化した担体は、PCBの効率的濃縮や除去に適用することができる。
(1)ビフェニル誘導体の異性体混合物、及びコンジュゲートの調製
下記反応式に従い、3−フェニルフェノールに、スペーサー分子を導入したハプテンとしてのビフェニル誘導体(下記反応式中、化合物3)を調製し、さらにキャリアータンパク質と結合させてなるコンジュゲート(下記反応式中、化合物5)以下の反応式に従って合成した。
得られたコンジュゲートを免疫原として、マウスを免疫した。
前記化合物5と、アジュバントRAS R−700(RIBI社)とを1:1容量に混合して十分に乳化させ、得られた乳化液をBALB/cマウス(7〜8週齢、雌)の腹腔内に200μL投与する事によりマウスを免疫感作した。
追加免疫は、約2〜3週間間隔で行い、追加免疫から1週間経過後に尾静脈より採血し、ELISA法により血中抗体価を測定して抗体価の推移を観察した。
血中に免疫原に対する高い抗体産生が認められたマウス尾静脈内に、さらに免疫原を投与して最終免疫を行った。最終免疫から3日後に、免疫した前記マウスより脾臓を摘出し、脾臓細胞を調製し、対数増殖期にあるミローマ細胞(P3−X63−Ag8.653あるいはSp2/O)と脾臓細胞を1:5になるように混合し、ポリエチレングリコール(PEG)法にて細胞融合を行った。融合後の細胞を、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン)添加の10%FCS含有RPMI1640培地中に懸濁させ脾臓細胞数で1〜2×105細胞/ウエルになるように96ウエル培養プレートに播種し、37℃、5%CO2下で培養した。
細胞融合より7〜10日後に、クローンの増殖が見られたウエルの培養上清を用いてELISA法にて抗体価を測定した。
マイクロタイタープレート(CORNING社製)の各ウエルに、0.25〜1μg/mLの各免疫原のPBS(−)希釈溶液(50μL)を加え、室温で1時間静置して固相化した。また、前記コンジュゲート中のキャリアータンパク質に対する抗体産生クローンを除外する為に、BSA、又はKLHを固定化したウエルを対照として用いた。
0.05%Tween 20を含むPBS(−)(洗浄液)300μLで各ウエルを3回洗浄した後、ブロックエース粉末(雪印社製、UK−B80)4gを100mLの精製水にて溶解させたのち精製水で4倍希釈して調製した溶液(300μL)をウエルに添加し、室温で2時間静置してブロッキングを行った。ウエルを洗浄液(300μL)で3回洗浄後、25μLの20%DMSO、0.01%Titon−X100、及び1次抗体を含む培養上清(25μL)を各ウエルに添加して混和した後、室温条件下で10〜30分間静置して抗原抗体反応を行わせた。
次いで、洗浄液(300μL)で各ウエルを3回洗浄した後、固相化した各免疫原に結合した1次抗体を検出するために、精製水で10倍希釈したブロックエース溶液にて3000倍希釈に調製した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG(γ鎖認識)(KPL社製)を2次抗体溶液として加えて(50μL)、室温で1時間反応させた。ウエルを洗浄液300μLで同様に3回洗浄した後、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)溶液(KPL社製)を各ウエルに加え、室温条件下にて発色反応を行った。
5〜15分間後に1Mリン酸50μLを加えて反応停止し、マイクロプレートリーダー(マルチスキャンMS、Labsystems社製)にて直ちに540nmの吸光度を測定した。
各免疫原を固定化したウエルと対照ウエルとの吸光度差を、前記免疫原に対する抗体の結合活性とした。
前記(5)に従い、マイクロタイタープレートの各ウエルに各免疫原を固相化し、洗浄ののち精製水で4倍希釈したブロックエース溶液300μLをウエルに添加し、室温で2時間静置してブロッキングを行った。ウエルを洗浄液300μLで3回洗浄した。
次いで、いずれも溶媒終濃度が0.01%Titon−X100含有20%DMSOとなるように調製した(i)各免疫原、(ii)個々のPCB同族体、(iii)4種類のカネクロール(KC−300、KC−400、KC−500、KC−600)、(iv)4種類のカネクロールの等量混合物(KC−Mix)、及び(v)対照(20%DMSO及び0.01%Titon−X100)を用意し、各々25μLを、免疫原固相化プレートの各ウエルに加えた。
次に、ハイブドーマ培養上清(25μL)ウエル内に添加して混和した後、室温条件下で10〜30分間静置して抗原抗体反応を行わせた。
洗浄液300μLで各ウエルを3回洗浄した後、固相化免疫原に結合した1次抗体を検出するために精製水で10倍希釈したブロックエースにて3000倍希釈に調製した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG(γ鎖認識)を2次抗体溶液として50μL加え、室温条件下で1時間反応させた。
ウエルを洗浄液300μLで同様に3回洗浄したのち、TMB溶液を各ウエルに加えて室温で発色反応を行った。5〜15分間後に1Mリン酸50μLを加えて反応停止し、マイクロプレートリーダー(マルチスキャンMS、Labsystems社製)にて直ちに450nmの吸光度を測定した。対照ウエルの吸光度値(コントロールOD;B0)に対するPCB、カネクロール等共存下のウエル吸光度値(B)の割合(B/B0)を算出し、共存物質に対する抗体の反応性を判断した。PCBに対する結合活性が高く、かつ継続的に高い抗体産生が確認されたウエルのハイブリドーマを選抜し、限界希釈法によるクローニングに供した。
前記(6)にて選抜した前記ハイブリドーマのうち、1回以上クローニングを実施したハイブリドーマを、更に蛍光分析に基づくイムノセンサ(DXS−600)を用いて選抜を行った。
拡大培養したクローン培養上清を、予め5%DMSO,0.1w/v%BSA含有PBS(−)の溶媒中でCy5標識抗マウスIgG(Jackson社製)と室温条件下で2時間以上反応させたのち、4〜800倍の範囲に希釈し、トランスデューサーに供した。
センサ官能部に固定化した前記化合物5に対し、Cy5で標識された抗体を含むハイブリドーマ培養上清を0.75mL/分の流速で約0.5mL通過させた。
非特異的に結合した抗体や夾雑物質を5%DMSO,0.1w/v%BSA含有PBS(−)溶液にて洗浄後、得られたCy5由来の蛍光強度をセンサ官能部に結合した抗体量として検出した。
さらに、PCB共存下にクローン培養上清をCy5標識抗マウスIgGと反応させた後、同様に前記センサ官能部へ送液した場合に検出される蛍光強度を基に、PCBへの高親和性を示す抗体産生クローンを取得した。
8週齢を超えるBALB/cマウスの腹腔内へ、プリスタン[2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(和光純薬)](0.5mL)を投与し、2〜3週間飼育した。予め、対数増殖期に維持しておいた抗PCBモノクローナル抗体産生ハイブリドーマPCB−K2A−0の培養液を回収し、遠心分離にて培養上清を除いたのちFCS不含のRPMI1640にて沈査を1×106細胞/0.5mLになるよう細胞液を調製した。
この細胞液をプリスタン前投与のBALB/cマウス腹腔中に移植し、10〜14日後に腹腔内に漏出した腹水を腹部より25Gのシリンジを装着した注射器で回収した。
採取した腹水を、ポアサイズ0.22μm径のフィルターを用いてろ過後、得られたろ液をプロテインG−セファロースカラム(Amersham Bionsiens社製)を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって精製し、前記抗PCBモノクローナル抗体を得た。
(1)アイソタイプ分析
固相化抗原として下記構造式(II)で表される化合物を用い、マウスタイパーキット(BIO−RAD社製)を用いて前記抗PCBモノクローナル抗体のアイソタイプ分析を行った。
前記抗PCBモノクローナル抗体を用い、カネクロール(KC−300、KC−400、KC−500、KC−600、及びこれらの混合溶液)による阻害実験を実施した。
マイクロタイタープレートに前記一般式(II)で表される化合物を室温条件下にて1時間固相化後、洗浄液300μLで3回洗浄し、精製水で原液を4倍希釈して調製したブロックエース溶液300μLをウエルに添加し、室温条件下にて2時間ブロッキングを行った。
ウエルを3回洗浄後、測定試料としてKC−300、KC−400、KC−500、及びKC−600(GLサイエンス)並びにこれらの混合溶液を、100ng/mLから3倍階段希釈を行い、種々の濃度のKC溶液(溶媒:20%DMSO、0.01%Titon−X100溶液)を調製した。
各々、前記抗PCBモノクローナル抗体(PCB−K2A−1)25μLと共にウエルに添加して混和し、室温条件下にて10〜30分間静置して抗原抗体反応を行った。
再びウエルを洗浄後、10倍希釈ブロックエースにて3000倍希釈に調製した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG(γ鎖認識)を50μL加え、室温条件下にて1時間反応させた。ウエルを洗浄したのち、TMB溶液を加え、室温条件下にて発色反応を行い、5〜15分間後に1Mリン酸50μLを加えて反応停止して、マイクロプレートリーダーにて直ちに450nmの吸光度を測定した。
溶媒(20%DMSO,0.01%Titon−X100溶液)のみを添加したウエルの吸光度をコントロールOD(B0)とし、B0に対するカネクロール存在下のウエル吸光度値(B)のB/B0を算出した値を添加した試料濃度対してプロットし、典型的シグモイド曲線を得た。結果を図1に示す。
実施例1で得た抗PCBモノクローナル抗体について、蛍光分析に基づくイムノセンサ(京都電子工業社製、DXS−600、又はSapidyne社製、EndoBiosensorTM)を用いて親和性、交差反応性を評価した。
実施例1で得られた抗PCBモノクローナル抗体PCB−K2A−1を1mg/mLの濃度に調製した後、CyTM5mAb Labelling kit(Amersham Bioscience社製)によりCy5を導入し、Cy5標識抗PCBモノクローナル抗体とした。
終濃度0.8nMの前記Cy5標識抗PCBモノクローナル抗体を、終濃度0.01〜50ng/mLになるように調製したカネクロール(KC−300、KC−400、KC−500、KC−600)(GLサイエンス社製)の溶液とそれぞれ反応させたのち、直ちに、抗体結合担体へ流速0.75mL/分で作用させた。
次いで、5%DMSO,0.1w/v%BSA含有PBS(−)を流速0.75mL/分で通過させ、担体への非特異的結合を排除したのち蛍光強度を測定した。カネクロールを添加しない抗体溶液の示す蛍光量をコントロール(B0)値とし、B0値に対するカネクロール添加により低下した蛍光量(B)の割合(B/B0)を、カネクロール濃度に対しプロットしたところ、いずれのカネクロールに対しても、検出下限値(IC85)は約50〜60pptを示し、極めて高感度な抗体である事が確認された。
また、KC−400に対する反応性が高い傾向が観察されたものの、KC−300、KC400、KC−500、及びKC−600の阻害曲線はほぼ一致したことから、前記抗PCBモノクローナル抗体を用いることにより、4種類のカネクロールに対し、同程度の反応性を有するPCB測定系を構築できることがわかった。結果を図2に示す。
本発明の抗PCBモノクローナル抗体を用いたPCB測定方法は、廃棄物処理後のPCB残留濃度、環境中のPCB濃度等の検査に好適に使用することができる。
Claims (3)
- 受託番号がFERM P−20845であるハイブリドーマを培養することを特徴とする抗PCBモノクローナル抗体の製造方法。
- 受託番号がFERM P−20845であるハイブリドーマを培養して得られたことを特徴とする抗PCBモノクローナル抗体。
- 被測定試料に、請求項2に記載の抗PCBモノクローナル抗体を添加し、
(1)前記抗PCBモノクローナル抗体と結合した前記被測定試料中のPCB、及び
(2)前記被測定試料中のPCBと結合していない前記抗PCBモノクローナル抗体
のいずれかを検出する方法を含むことを特徴とするPCB測定方法。
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