JP3969878B2 - 50(v/v)%有機溶媒水溶液においてもその抗原認識特性が実質的に低下しないコプラナーPCBに特異的に反応するモノクローナル抗体及びその測定方法 - Google Patents
50(v/v)%有機溶媒水溶液においてもその抗原認識特性が実質的に低下しないコプラナーPCBに特異的に反応するモノクローナル抗体及びその測定方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コプラナーPCBに特異的に反応するモノクローナル抗体及びそれを用いた油性検体中のコプラナーPCBの測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PCBはその毒性から、カネミ油症事件などヒトに対する被害を与えてきており、化学物質の審査及び製造等に関する法律の第1種特定化学物質に指定され製造、使用等が禁止されている。しかし、PCBはダイオキシン類とともに焼却により非意図的に生成され、かつ、難分解性で生物体内に蓄積されることから、ヒト及び野生生物に大きな影響を及ぼす危険性を有している。さらに、近年、PCBは、いわゆる環境ホルモン(内分泌攪乱物質)としての疑いの強い化学物質とされ注目されている。このような状況から、多種類の同族体、異性体を持つPCBのなかで、特に生物に対して高い毒性を有するコプラナーPCBの測定は重要である。従来、このようなPCBを含有する油(特に化学処理油)、土壌、水質、食品等の環境中または生体試料中の試料分析には、主としてガスクロマトグラフィー法または高速液体クロマトグラフィー法が採用されてきた。しかしながら、該分析方法では、試料のクリーンナップ等の調製に相当の手間と時間を必要とすること並びに測定装置や設備等に高額の費用を要することとともに、該技術者も教育、訓練が必要であるという問題があった。また、PCBの分析は分析件数が多大であるため、簡便性、迅速性が重要であり、特に測定現場(オンサイト)における分析法の開発が待望されていた。そこで、簡易分析法として、酵素免疫法が開発された。しかし、従来の酵素免疫法に使用する報告されているモノクローナル抗体は、本発明で述べる抗体のような有機溶媒存在下において抗原認識特性を保持できないため、PCBを試料中より有機溶媒抽出する場合、酵素免疫法による定量には必ずしも満足いくものではないのものであり、有機溶媒に耐性を持つモノクローナル抗体が期待されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、抗体を用いた免疫学的検出方法によるPCBの簡易、迅速な分析方法の確立を試みた。該免疫学的検出方法において、最も重要な因子は、コプラナーPCBに特異的に反応する抗体であるが、コプラナーPCBの測定対象が環境水、及び土壌、生体試料等から有機溶媒でPCBを抽出した場合は有機溶媒、油分中のコプラナーPCBである場合もあるので、PCBの測定が水系溶媒以外に有機溶媒存在下でも測定可能であることが必要である。そのような測定系でも抗原認識特性が高い抗コプラナーPCBモノクローナル抗体を得ることが必要であった。
【0004】
モノクローナル抗体の有機溶媒耐性は、抗体の抗原認識の工程に必要であり、酵素免疫法の次の工程である酵素反応工程においては緩衝液(水溶液)で行われるため、酵素反応時には、上記のモノクローナル抗体の有機溶媒耐性は必要ない。ただし、該有機溶媒存在下で、酵素標識抗体の酵素活性に影響を与えないことはいうまでもない。
【0005】
なお、当該抗体に酵素を標識する代わりに蛍光色素を標識することで、酵素を標識する場合と同様に対象物質を測定することができる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)コプラナーPCBを認識するモノクローナル抗体であって、50(v/v)%有機溶媒水溶液中でも抗原認識特性が実質的に低下しないモノクローナル抗体、
(2)コプラナーPCBが3,4,3´,4´−テトラクロロビフェニル(PCB−#77)、3,4,5,3´,4´−ペンタクロロビフェニル(PCB−#126)または3,4,5,3´,4´,5´−ヘキサクロロビフェニル(PCB−#169)である上記(1)記載のモノクローナル抗体、
(3)有機溶媒水溶液又は有機溶媒を含まない緩衝液(水溶液を含む)に存在するコプラナーPCBを上記(1)または(2)記載のモノクローナル抗体と接触させて抗原抗体複合体を形成させ、該複合体の形成量を測定することを特徴とするコプラナーPCBの測定方法、
(4)コプラナーPCBを含有する油性検体に有機溶媒を接触させて、油性検体中のコプラナーPCBを有機溶媒中に抽出し、該有機溶媒中のコプラナーPCBをモノクローナル抗体を用いて測定し、そして油性検体中のコプラナーPCBに換算するすることを特徴とする、油性検体中のコプラナーPCBの測定方法、及び
(5)モノクローナル抗体が上記(1)又は(2)記載のいずれかのモノクローナル抗体である上記(4)記載の油性検体中のコプラナーPCBの測定方法、
である。
【0007】
本発明のモノクローナル抗体は、コプラナーPCBをリンカーを介して高分子量担体に結合せしめた複合体を抗原として哺乳動物を免疫した後、該哺乳動物から前記複合体に対する抗体を産生することのできる免疫適格B細胞を出現させ、該免疫適格細胞を連続的に細胞分裂し得る腫瘍細胞に融合してハイブリッド細胞を生成し、該ハイブリッド細胞からコプラナーPCBに有機溶媒存在下でも水系溶媒と実質的に同等に特異的に反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを単離し、該ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を精製、単離することにより得ることが出来る。
【0008】
本発明のモノクローナル抗体を用いたコプラナーPCBの測定方法は、従来公知の免疫測定方法に本発明のモノクローナル抗体の特徴を踏まえた改良を加えることにより、構成することが出来る。
【0009】
【発明の実施の形態】
コプラナーPCBのうちで特に高い毒性を有するものとしては、例えば、PCB−#126、PCB−#77、PCB−#169等の化合物をあげることができる。したがって、上記の3化合物に対するモノクローナル抗体の製造方法で代表して説明する。
本発明によって得られた抗PCB−#77抗体、抗PCB−#126抗体、抗PCB−#169抗体のアイソタイプはいずれもIgGであった。
また、得られた抗コプラナーPCBモノクローナル抗体を用いて、コプラナーPCBを測定する場合は、そのIgGまたは、そのフラグメント、一例をあげるとF(a´b)2使用する。
【0010】
A)〔コプラナーPCBの完全抗原(免疫原)化工程〕
対象とするコプラナーPCBをリンカーを介して高分子量担体分子に結合することにより、抗原性を有する複合体とすることができる。
用いられるコプラナーPCBは、純度が高いものが好ましい。用いられる高分子量の担体分子はコプラナーPCB(不完全抗原)にリンカーを導入した化合物との連結反応に自由に利用され得る反応基を有し、かつ該不完全抗原に連結されることにより、それに免疫原性を付与し得るか、または、既に存在するそれらの免疫原性を高め得る巨大分子化合物であればよい。特に、自由に利用可能な反応性アミノ基を含む巨大分子化合物が好ましい。例えば、分子量が約1万から15万の間のリジン(lysine)に富む蛋白質等をあげることができる。具体的には、ウシ血清アルブミン(BSA:分子量 66200)、ヒト血清アルブミン(HSA:分子量 58000)、ウサギ血清アルブミン(RSA:分子量 68000)、ヤギ血清アルブミン(GSA: 分子量 68000)、オボアルブミン(卵白アルブミン:分子量45000)、または、キーホールカサガイヘモシアニン(KLH:分子量 1000000)等があげられる。その他の巨大分子化合物が上記の要求を満たせば、それらを担体分子として、使用することは可能であり、そのような化合物には、たとえばブタチログロブリン、B2ミクログロブリン、ヘモシアミン、免疫グロブリン、毒素(コレラ毒素、破傷風毒素、ジフテリア毒素その他)、多糖、リポ多糖、天然または合成ポリアデニル酸およびポリウリジル酸、ポリアラニルおよびポリリジンポリペプチド、または、細胞膜成分たとえばホルマリンまたはグルタルアルデヒド処理赤血球細胞膜等をあげることができる。具体的には、例えば、カルボジイミド、アルキルクロロカーボネイト、好ましくは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、イソブチルクロロカーボネイトを用いて該不完全抗原のカルボキシル基を高分子量担体の反応性アミノ基の1つに結合させる。
【0011】
B)〔哺乳動物の免疫感作化工程および本抗体取得工程〕
このようにして得られた複合体に対して、たとえばマウス、ラット、ウサギ、イヌ等の哺乳動物を免疫するには、公知の免疫感作の方法を用いて、例えば、複合体の1回またはそれ以上の投与により行われる。たとえば7ないし30日、特に12ないし16日間隔で2または3回の投与等が好ましい。静脈内、腹膜腔内もしくは皮下に行われ得る注射が好ましい投与形態である。さらに皮下注射と腹膜腔内との組み合わせが特に好ましい。なお、この場合、複合体は適当な緩衝液、たとえばフロイントの完全アジュバント(結核死菌を混合したもの)等の通常用いられるアジュバントの1種を含有するナトリウム系リン酸緩衝液等に溶解して用いられる。ここで、アジュバントとは抗原とともに投与したとき、非特異的にその抗原に対する免疫反応を増強する物質を意味する。そして、上記の哺乳動物を0.5ないし4ヶ月間処置せずに放置した後、たとえば10μgないし1000μg、特に25μgないし500μgの複合体の投与量でもう1回の投与が行われる。最後の投与の3日間ないし2ヶ月間後に免疫感作した哺乳動物から通常の方法により前記複合体に対する抗体を産生することができる免疫適格B細胞が単離され、該免疫適格B細胞が連続的に細胞分裂し得る腫瘍細胞と融合され生成するハイブリッド細胞が単離される。所望の抗体を産生するハイブリッド細胞を選択し、そのクローン化された細胞を試験管内(in vitro)もしくは、生体内(in vivo)で培養することにより、高度の特異性および親和性を有する、本コプラナーPCBに特異的に反応するモノクローナル抗体(以下本抗体と記す。)を製造することができる。
本抗体は、コプラナーPCBの各同族体・異性体の塩素の結合位置、塩素の結合数の違い認識する。
【0012】
C)〔モノクローナル抗体を用いた測定方法〕
本抗体を利用した測定方法としては、間接競合阻害法(ELISA法)、直接非競合阻害法(ELISA法)等による本コプラナーPCBの免疫分析をあげることができる。該分析は簡便かつ迅速に処理できる精度の高い分析方法である。
【0013】
直接非競合阻害法は、たとえば、以下の方法によって行うことができる。基本的には、固体支持材に結合される一定量の第1抗体(即ち、本抗体)と試料中に含まれる遊離状態にあるコプラナーPCBを反応させ、次に未反応の状態にある第一抗体と該抗体の抗原となる、(直接または、リンカーを介して)標識が施されているコプラナーPCBを結合させた後、結合した上記抗原をその標識に基づき定量することによって、試料中に含まれる遊離状態にある本コプラナーPCBと反応した、固体支持材に結合された第一抗体(即ち、本抗体)の量を算出し、該算出値から試料中に含まれる遊離状態にある本コプラナーPCBの量を測定する。
【0014】
リンカーを介して間接的に連結する場合、用いられるリンカーは、高分子量担体分子の自由に利用可能な反応基の共有結合を形成し得る少なくとも1種または、それ以上の反応基を含む化合物である。たとえば、2個から16個の間の架橋性炭素分子を含み、かつ反応基として1個またはそれ以上の反応基たとえばアミノ基、カルボキシル基等を有する化合物をあげることができる。具体的には、一般式H2(CH2)nCOOH(nは2から16個までの整数)が好ましいものとしてあげられる。該不完全抗原の反応基を高分子量担体分子の反応基の1つに結合させる方法と同様な方法を用いることができる。
【0015】
間接競合阻害法は、たとえば、以下の方法によって行うことができる。基本的には、固体支持材に結合された抗原と試料中に含まれる遊離状態にあるコプラナーPCBとの競合、たとえば固体支持材に結合される抗原であるコプラナーPCBと標識が施されている第2抗体によって認識される第1抗体の遊離抗原であるコプラナーPCBとの競合に基づいている。これに関連して、固体支持材への抗原であるコプラナーPCBの結合は直接またはリンカーおよび/または第1抗体(即ち本抗体)によって認識されない高分子量担体を介して間接的に起こり得る。ここで、第1抗体(即ち、本抗体)によって認識されない高分子量担体とは、前記の完全抗原(免疫原)化工程において用いることができる高分子量担体のうちで、第1抗体の製造において用いられない高分子量担体のことである。また、抗原であるコプラナーPCBをリンカーおよび/または第1抗体によって認識されない高分子量担体を介して間接的に結合する場合、これらの結合には、前記の完全抗原(免疫原)化工程と同様な方法または準ずる方法を用いることができる。
【0016】
リンカーを介して間接的に連結する場合、用いられるリンカーは、高分子量担体の自由に利用可能な反応器の共有結合を形成し得る少なくとも1種またはそれ以上の反応基を含む化合物である。たとえば、2個から16個の間の架橋性炭素分子を含み、かつ反応基として1個またはそれ以上の反応基たとえばアミノ基、カルボキシル基等を有する化合物をあげることができる。具体的には、一般式H2(CH2)nCOOH(nは2から16個までの整数)が好ましいものとしてあげられる。
【0017】
抗原であるコプラナーPCBの直接または間接の結合に用いられる固体支持材としては、たとえばマイクロタイタープレートまたは試験管のプラスチック表面、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ガラスまたはプラスティク等からなるビーズ表面、ろ紙、デキストラン、セルロースもしくはニトロセルロースまたはその他の類似の材料の細片の表面等をあげることができる。
【0018】
これらの固体支持材に、抗原であるコプラナーPCBを直接、またはスペーサーおよび/または第1抗体(本抗体)によって認識されない高分子量担体分子を介して間接的に結合する(以下コーティングと記す。)には、たとえば、あらかじめ、グルタルアルデヒドまたは、臭化シアン等を用いる通常の方法によって固体支持材の活性化を行う。活性化された固体支持材にコーティング材にコーティング液を添加した後、インキュベートすることによって第1抗体を産生する哺乳動物と同一種の哺乳動物の血清アルブミンとの結合体で表面をコートする。ここで用いるコーティング液としては、たとえば、140mMの塩化ナトリウムを含む約10mMリン酸緩衝液(pH7.4)等をあげることができる。コーティングの条件として、たとえば抗原であるコプラナーPCBまたはリンカーおよびまたは第1抗体によって認識されない高分子量担体を有する抗原のコーティング液内の濃度は、たとえば抗原として約0.05μg/mlから約1μg/ml等を好ましい条件としてあげることができる。使用する量としては96穴マイクロテストプレートを使用する場合には、たとえば約0.1ml/ウェル程度を好ましい条件としてあげることができる。またコーティング条件としては、約4℃、約6時間ないし24時間、好ましくは1晩をあげることができる。上記の具体的な例としては、たとえば固体支持材としてはポリスチレン製の96穴マイクロタイタープレートを使用して、第1抗体を産生させるさせるための複合体(コプラナーPCBをリンカーを介して高分子量担体と結合したもの)に用いられる高分子量担体分子としてウシ等の動物の血清アルブミンまたはキーホールカサガイヘモシアニンを使用し、固体支持材に間接的に結合する際に用いられる高分子量担体分子として第1抗体に認識されない高分子量担体分子であるヤギ等別種の動物の血清アルブミンを使用することがあげることができる。なお、第1抗体を産生する哺乳動物と同一種の哺乳動物の血清アルブミンとコプラナーPCBをリンカーを介して高分子量担体と結合したものの複合体の担体へのコーティング後、第1抗体の非特異的結合を防止するために、第1抗体を産生する哺乳動物と同一種の哺乳動物の血清アルブミン以外の蛋白で、第1抗体を産生する哺乳動物と同一種の哺乳動物の血清アルブミンが吸着していない部分をブロックすることが望ましい。この目的には、たとえば、約3%スキムミルク溶液と担体を約20℃前後で約2時間程度インキュベートする方法等が簡便なものとしてあげられる。このようにして得られた担体は、洗浄緩衝液(たとえば、0.05%tween20を含んだ0.15M塩化ナトリウム含有10mMリン酸緩衝液pH7.4)で洗浄した後に使用する。
【0019】
このようにして得られる固体支持材に直接または間接的に結合するコプラナーPCBは次に、試料中に含まれる検出すべき抗原であるコプラナーPCBおよび第1抗体(本抗体)を含有する試験溶液と混合され、該混合物はインキュベートされる。なお、試料中に含まれる検出すべき抗原であるコプラナーPCBは、この際に遊離の形態で、または水もしくは作物、土壌、食品等の環境または生体試料中の成分として存在し得る。約10分間ないし約2時間のインキュベート後に混合物は第1抗体を認識し、そして結合する酵素等で標識された第2抗体とインキュベートされる。この酵素等で標識された第2抗体としては、たとえば、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、炭酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、マレートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−フォスフェートデヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ等の酵素を結合した第1抗体(本抗体)に対する抗体をあげることができる。具体的な例としては、第1抗体(本抗体)としてウサギ抗血清を使用する場合、第2抗体としてはペルオキシダーゼを結合した抗ウサギ免疫グロブリン(IgG)ヤギ免疫グロブリン(IgG)を好適なものとしてあげることができる。なお、該ウサギIgGヤギIgGは市販されており、容易に入手可能である。ペルオキシダーゼで標識される場合には,基質として過酸化水素,発色試薬としてジアミノベンジジンまたは O−フェニレンジアミンと組合わさって褐色または黄色を生じる。グルコースオキシダーゼで標識される場合には,基質として、たとえば2,2´−アシド−ジ−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルフォン酸(ABTS)等を用いる。尚,第2抗体に結合した標識酵素と基質との酵素反応によって生じる発色を吸光度として、マルチスキャンニングスペクトロフォトメーター等の装置を用いて測定する。
【0020】
なお、第2抗体に上記の酵素以外に、あらかじめ蛍光色素を結合しておき、抗原抗体反応により、結合した抗体量を酵素活性でなく、蛍光強度で測定することにより、より感度の高い測定方法とすることができる。
【0021】
また、本抗体の利用として、試薬として本抗体を少なくとも1種含有し、そして本コプラナーPCBの簡便でかつ迅速に処理できる精度の高い検出・分析のために野外条件下での使用に適している試験キットの形態にされた本コプラナーPCBのの免疫学的検出・分析のための手段もあげることができる。上記の試験キットは、たとえば、次の構成成分を含有し得る。:(1)抗原であるコプラナーPCBを直接、またはリンカーおよびまたは第1抗体(本抗体)によって認識されない高分子量担体分子を介して間接的結合する固体体支持材、(2)本発明抗体を含有する試薬(3)抗原である本コプラナーPCBの標準溶液(4)第1抗体(本抗体)を認識し、そして結合する酵素あるいは蛍光色素等で標識された第2抗体を含有する試薬、(5)緩衝液、(6)非特異的吸着および凝集体の形成を防止するポリペプチド,界面活性剤等の添加剤、および(7)ピペット、反応容器、計算曲線等。上記の固体支持材は、非常に広範囲のデザインを有し、そして使用に際して意図された特定の目的に応じて非常に異なる形状を有することができる。たとえば、皿、球、プレート、小型ロッド、セル、小型ボトル、小型チューブ、ファイバー、ネット等をあげることができる。具体的な例としては、透明プラスティック材料、たとえばポリ塩化ビニルまたはポリスチレンからなるマイクロタイタープレート、ポリスチレンからなる小球、チューブまたはロッド等が使用可能である。
【0022】
上記方法で,水田水,水道水等の環境中の水系類をサンプルとする場合はサンプル中のコプラナーPCBを測定することができる。したがって、サンプル中のコプラナーPCBの濃度が上記より高濃度である場合には、サンプルを適宜希釈した後に使用する。油(化学処理油等)作物、土壌、食品等の環境または生体の試料中の非水系類をサンプルとする場合にはメタノール等の溶媒サンプルから本コプラナーPCBをを抽出するか、または適当な固相支持体に吸着させた後、適当な方法で固相支持体から、適当な有機溶媒等を用いて支持体から本コプラナーPCBた後に使用する。このように調製した本コプラナーPCBを含有する有機溶媒を含有する緩衝溶液(または水溶液)を混合し、たとえば、約20℃前後で一晩インキュベートすることによって反応させる。この際、第1抗体(本抗体)は、約3,000〜約5,000倍に希釈して、サンプル中の本コプラナーPCBと反応させることが望ましく、特に5,000倍程度の濃度を望ましい条件としてあげることができる。即ち、約2,500倍程度に希釈した第1抗体を同用量の本コプラナーPCBを含有するサンプル液と混合し、約20℃で一晩反応させることが望ましい。希釈液としては、たとえば、前記の洗浄緩衝液と同じ組成のものを用いることができる。なお、必要に応じて、第1抗体が過剰に希釈された場合の安定化のために保護タンパクとして、スキムミルク等を加えることが望ましい。
【0023】
上記のように調製したサンプルと第1抗体の反応液に含まれる未反応の第1抗体を第1抗体を産生する哺乳動物と同一種の血清アルブミンとの複合体で表面をコーティングした固体支持材に結合させる反応を行う。この反応条件について、サンプルと第1抗体の反応液を固体支持材に添加し、たとえば約20℃で、約1時間程度反応させることを望ましくあげることができる。反応後、前記の洗浄緩衝液で担体を洗浄した後、酵素等で標識され、かつ第1抗体を産生する哺乳動物と異なる種の哺乳動物に由来する第1抗体に対する抗体(第2抗体)との反応に供する。
【0024】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。本発明は下記の実施例にのみ限定されないことはいうまでもない。
【0025】
[実施例1] 免疫抗原の作製
製造例1 複合体の調製(完全抗原(免疫原)化工程における高分子量担体分子の連結及び固体支持材に結合される抗原への高分子量担体分子の連結)
〔抗PCB-#77抗体作製のための複合体の調製〕
4−ブロモ−2−クロロフェノールの水酸基をメチルエーテルで保護した後、3,4−ジクロロヨードベンゼンとのグリニャール−クロスカップリング反応により、3,3′,4−トリクロロ−4′メトキシビフェニルを合成し、三臭素化ホウ素により、メチルエーテル基を水酸基に脱保護することで、3,3′,4−トリクロロ−4′ヒドロキシビフェニルを得た。これに、6−ブロモヘキサン酸エチルエステルを反応させ,エチルエステルをカルボン酸に加水分解することにより、6−(3,3′,4−トリクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサン酸を5工程で通算収率44%で合成した。キャリアタンパク質への結合はカルボン酸をヒドロキシスクシンイミドとの活性エステル体とした後、アミノ基とアミド結合を形成させ、PCB−#77を結合させたコンジュゲートを作成した。
4−ブロモ−2−フェノール
↓
4−ブロモ−2−クロロアニソール
↓
3,4−ジクロロヨードベンゼン
↓
3,3′,4−トリクロロ−4′メトキシビフェニル
↓
3,3′,4−トリクロロ−4′ヒドロキシビフェニル
↓
6−エチル−(3,3′,4−トリクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサノエート
↓
6−(3,3′,4−トリクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサン酸
↓
6−N−ヒドロキシスクシンイミド−(3,3′,4−トリクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサノエート
【0026】
〔抗PCB−#126抗体作製のための複合体の調製〕
コンジュゲート#PCB−77の合成と同様に水酸基をメチルエーテル基で保護した後、3,4,5−トリクロロヨードベンゼンとのグリニャール−クロスカップリング反応により、3,3′,4,5−テトラクロロ−4′メトキシビフェニルを合成し、三臭素化ホウ素により、メチルエーテル基を水酸基に脱保護することで3,3′,4,5−テトラクロロ−4′ヒドロキシビフェニルを得た。これに,6−ブロモヘキサン酸エチルエステルを反応させ、エチルエステルをカルボン酸に加水分解することにより、6−(3,3′,4,5−テトラクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサン酸を5工程で通算収率35%で合成した。キャリアタンパク質への結合はカルボン酸をヒドロキシスクシンイミドとの活性エステル体とした後、アミノ基とアミド結合を形成させ、PCB−#126を結合させたコンジュゲートを作成した。
3,4,5−トリクロロヨードベンゼン
↓
3,3′,4,5−テトラクロロ−4′メトキシビフェニル
↓
3,3′,4,5−テトラクロロ−4′ヒドロキシビフェニル
↓
6−エチル−(3,3′,4,5−テトラクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサノエート
↓
6−(3,3′,4,5−テトラクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサン酸
↓
6−N−ヒドロキシスクシンイミド−(3,3′,4,5−テトラクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサノエート
【0027】
〔抗PCB-#169抗体作製のための複合体の調製〕
2,6−ジクロロフェノールをジオキサン中で等量のジオキサンジブロマイド錯体を反応させることにより,4−ブロモ−2,6−ジクロロフェノールを合成し,以下,コジュゲート#PCB−77の合成と同様に水酸基をメチルエーテル基で保護した後,グリニャール−クロスカップリング反応により,3,3′,4,5,5′−ペンタクロロ−4′ヒドロキシビフェニルを得た。これに,6−ブロモヘキサン酸エチルエステルを反応させ,エチルエステルをカルボン酸に加水分解することにより,6−(3,3′,4,5,5′−ペンタクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサン酸を6工程で通算収率23%で合成した。キャリアタンパク質への結合はカルボン酸をヒドロキシスクシンイミドとの活性エステル体とした後,アミノ基とアミド結合を形成させ,PCB−#169を結合させたコンジュゲートを作成した。
4−ブロモ−2,6−ジクロロフェノール
↓
4−ブロモ−2,6−ジクロロアニソール
↓
3,3′,4,5,5′−ペンタクロロ−4′メトキシビフェニル
↓
3,3′,4,5,5′−ペンタクロロ−4′ヒドロキシビフェニル
↓
6−エチル−(3,3′,4,5,5′−ペンタクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサノエート
↓
6−(3,3′,4,5,5′−ペンタクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサン酸
↓
6−N−ヒドロキシスクシンイミド−(3,3′,4,5,5′−ペンタクロロビフェニル−4′−オキシ)ヘキサノエート
【0028】
[実施例2] 免疫感作
製造例2 哺乳動物の免疫感作化工程および本抗体取得工程
ウシ血清アルブミンを蒸留水に溶解し、リン酸緩衝液(pH8.0)で平衡化させたPD−10カラムにアプライし、リン酸緩衝液(pH8.0)にて,展開溶出を行った。この操作によってリン酸緩衝液(pH8.0)中の ウシ血清アルブミンを得た。16.7mgウシ血清アルブミン/0.5mlリン酸緩衝液(pH8.0)に製造例1によって得られたコンジュゲートを3.88mg(10μmol、1:40当量)を0.5mlのジメチルホルムアミド(DMSO)を加えて溶解した溶液を加え、室温にて30秒間攪拌後、4℃で1晩静置した。
それぞれの反応液をリン酸塩緩衝食塩水で平衡化したPD−10カラムにアプライし、リン酸塩緩衝食塩水で展開溶出を行った。吸光度測定より求めたPCB誘導体のコンジュゲートへの導入数はウシ血清アルブミン1分子あたり10〜16分子であり、ウシ血清アルブミン分子中の導入可能なアミノ基の約30〜50%が結合に使用された。
各免疫原についてBalb/Cマウス1群6匹(7週齢、雌)を用いて初回100μg/mouse、以下50μg/mouseで最大8〜9回の免疫を行った。なお、抗原はアジュバントと乳化したもので、投与ルートはマウスの腹腔内及びフットパッド内に投与した。
【0029】
[実施例3] 抗PCB血清抗体産生の確認とハイブリドーマ細胞の作製
ハプテンに対する特異抗体産生が確認されたマウスに、抗原コンジュゲートを尾静脈内に投与、3日後に脾臓を摘出し、脾臓細胞を調製した。ミエローマ細胞(P3−X63/Ag.8)と脾臓細胞を1:5になるように混合し,ポリエチレングリコール(PEG)法にて細胞融合を行った。細胞をHAT添加10%ウシ胎児血清含有RPMI1640培地中に懸濁させ、2〜5×105cells/wellになるように96穴培養用マイクロテストプレートに播種し、5%炭酸ガス、37℃の条件で培養する。培養開始より、4〜5日目に培地交換を行い1週間〜10日目、最大1ヶ月目まで、クローンの増殖のみられたウェルの培養上清を用いてスクリーニングを行った。
【0030】
[実施例4] モノクローナル抗体の評価;競争阻害ELISAによるPCBの測定
1.(ELISA法による抗体産生細胞のスクリーニング)
PCB誘導体のヒドロキシスクシンイミドエステル0.02mmolとビオチン−ヒドラジド0.024mmolに300μlのDMSOを添加して攪拌した後、室温16時間反応させる。反応終了後、逆相HPLC(ODS−80Tカラム:東ソー、溶媒:PCB−#77:72%アセトニトリルlinear、PCB−#126:80%アセトニトリルlinear、PCB−#169:90%アセトニトリルlinear、流速:2ml/分、1サイクル:40分間)で精製ビオチン標識PCBを調製した。
PBS(−)〔カルシウム・マグネシウムを含まないリン酸緩衝生理食塩液〕にて、10μg/mlに調製した抗マウスIgG抗体 50μlを加え37℃、1時間インキュベートした後0.05%tween20添加PBS(-)(以下「洗浄液」と略す。)で96穴マイクロタイタープレートの各穴を3回洗浄した。これにPBS(−)にて1%に調製したゼラチン(BIO-RAD社製)300μlを加えて、室温で2時間放置した(ブロッキング)。この96穴マイクロタイタープレートを上記洗浄液で3回洗浄した後、これにハイブリッド細胞の培養液(上清)を50μl/ウエルで添加し、室温で1時間反応した。この96穴マイクロタイタープレートを再び3回洗浄した後、50%DMSOにて0.8μMに調製したビオチン標識PCBと50%DMSOにて、0.01μM、0.1μM、1μMに調製した未標識PCB(PCB−#77、PCB−#126、PCB−#169)を25μlずつ加えて室温1時間反応後させる。ウェルを上記洗浄液で3回洗浄後、0.1%ゼラチン−PBS(−)で1,000倍に希釈した市販のペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Amasham社製)50μlを添加し、室温1時間反応後、各ウェルを上記洗浄液で3回洗浄した。
基質溶液〔3,3′,5,5′-tetramethylbenzidine substrate system:KPL社〕50μlを添加し、室温で15分間インキュベートすることによって発色させた。そして等量の1Mのリン酸を加えることによって、酵素反応を停止し、マイクロタイタープレートの各ウェルの発色をマルチスキャンニングスペクトロフォトメーター(タイターテック(社)製または同等のもの)を用いて450nmでの吸光度(対照波長655nm)を測定した。未標識PCB非存在下(50%DMSO存在下)の吸光度を100%とし、未標識PCB存在下での酵素反応による発色を阻害する程度が高いウェルをPCB特異的な抗体産生ウェルとした。
【0031】
2.(抗体産生細胞のクローニング)
上記のようにして特定した抗体産生ウェルを限界希釈法によって細胞クローニングを実施した。細胞クローニングの結果、抗体を産生しているクローン化細胞を得た。得られたクローン化細胞を10%ウシ胎児血清を含む培地で5%炭酸ガス,37℃条件下で培養し、その培養液を抗体溶液とした。さらに、該抗体溶液をアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、得られたタンパク質分画をPBS(−)で透析することによって本抗体を得た。
クローン化したハイブリドーマに由来するモノクローナル抗体について、培養上清を精製した抗体を用いて、実施例4に記載した方法で反応性を調べた。
また、この過程で、抗PCB抗体固相化時における抗マウスIgG(Fc認識)抗体の影響、試験系における反応液中のTween20の影響(至適濃度の選択)、抗PCB抗体・標識体・競合体の適切な組合わせ(標識体の種類と濃度)を決定した。その結果得られた試験条件下で、目的に適合した抗体を選択した。
PCB−#77測定系としては、抗体8−5B−12B(ビオチン標識PCB−#77:1.6×10-7Mで使用)、PCB−#126測定系としては、抗体4−6B−19F(ビオチン標識PCB−#77:8×10-7Mで使用)、PCB−169測定系としては、抗体7−3C−4C(ビオチン標識PCB−#169:1.3×10-7Mで使用)を選択した。
抗体8−5B−12Bは、ハイブリドーマPCB77−B(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託FERM P−17098)が産生するモノクローナル抗体である。
抗体4−6B−19Fは、ハイブリドーマPCB77−A(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託FERM P−17097)が産生するモノクローナル抗体である。
抗体7−3C−4CはハイブリドーマPCB169−E(工業技術院生命工学工業技術研究所寄託FERM P−17099)が産生するモノクローナル抗体である。
【0032】
図1〜3にコプラナPCBの標準曲線を示した。20%阻害を抗原濃度の検出限界値とした場合、各測定系の本条件下における検出限界値は、PCB−#77測定系では、8.08×10-8M(23.0ppbに相当、アッセイ系あたりの検出限界値:0.59ng)、PCB−#126測定系では、2.10×10-8M(6.85ppbに相当、アッセイ系あたりの検出限界値:0.17ng)、PCB−#169測定系では、1.22×10-8M(4.40ppbに相当、アッセイ系あたりの検出限界値:0.11ng)であった。
【0033】
[実施例5] 測定対象以外のPCBと本発明抗体との反応性(本抗体の特異性の確認)
PCBを測定対象とする実試料(廃油、環境試料等)中には、測定対象とするPCB以外の異性体が共存していると推定されるため、抗体の特異性の評価では、異性体個別の交差反応性の比較だけではなく、実試料でのPCB異性体共存下における目的PCBの測定が求められるという状況を反映したかたちで、抗体の特異性を評価した。
【0034】
▲1▼ 抗PCB−#77抗体(8−5B−12B)の特異性評価
抗PCB−#77抗体(8−5B−12B)については、図4に示すように、交差反応性が予想されるPCB異性体の混合物(表1)との交差反応性をみるために、あらかじめ予備試験を行った。
【0035】
【表1】
【0036】
この結果から、PCB−#126との交差反応性が、認められるもののPCB−#77に特異な抗体であると判断された。
このため、さらにPCB−#126存在下において、抗PCB−#77抗体(8−5B−12B)とPCB−#77との抗原抗体反応に与える影響を検討した。その結果、図5に示すように、PCB−#126の混在量が10倍以下であれば、測定結果への影響は少ないと考えられた。
【0037】
▲2▼ 抗PCB−#126抗体(4−6B−19F)の特異性評価
抗PCB−#126抗体(4−6B−19F)については、▲1▼と同様に図6に示すように、PCB異性体との交差反応性をみるために予備試験を行った。PCB−#126との反応性が最も高いが、PCB−#77及びグループ11(PCB−#78とPCB−#81の混合物)とも交差反応性が認められた。そこで、PCB−#77、PCB−#78,PCB−#81、PCB−#169混合物を初濃度1×10-6M、1×10-7Mに調整し、等量のPCB−#126を2×10-7M〜1×10-5Mの濃度範囲(初濃度)で混合して測定し、抗PCB−#126抗体(4−6B−19F)とPCB−#126との抗原抗体反応に与える影響を検討した。この結果を図7に示す。PCB−#126の測定系では、混在量が5倍以下であれば、混在の影響はほとんどないと考えられた。
【0038】
▲3▼ 抗PCB−#169抗体(7−3C−4C)の特異性評価
抗PCB−#169抗体(7−3C−4C)については、▲1▼、▲2▼と同様に図8に示すように、PCB異性体との交差反応性をみる目的で、PCB異性体との交差反応性をみる予備試験を行った。PCB―#169との反応性が最も高いものの、PCB−#126とグループ11(PCB−#78とPCB−#81の混合物)、グループ12(PCB−#127)との交差反応性が認められた。そこで、PCB−#77、PCB−#126、グループ11(PCB−#78、PCB−#81の等濃度混合物)、グループ12(PCB−#127)混合物を1×10−8M、5×10−8M濃度で共存下に測定を行った。
その結果、図9に示すようにPCB−#169測定系においては、ppbレベルのPCB−#169の存在に対し、干渉する可能性のあるPCBの混在量が2倍以下であれば、測定結果への影響は少ないが、10倍量以上では測定値に正の誤差を与える。
【0039】
[実施例6] 抗体の溶媒耐性(ジメチルスルホキシド及びメタノール)
実施例4で選択した各抗体を用いて、同法で示した競合ELISA法により、ジメチルスルホキシド(DMSO)への耐性を調べた。DMSOは、競合反応時の溶液に含まれる最終濃度が各々10%から50%になるように添加した。PCB−#77抗体におけるDMSOの影響を図10に、PCB−#126抗体におけるDMSOの影響を図11に、PCB−#169抗体におけるDMSOの影響を図12に示す。図10のPCB−#77抗体では、DMSOの濃度が30%以下の条件で、PCB−#77濃度が高濃度側で反応値の低下が認められたが、図10から図12に示すように、その他の系では、DMSOの濃度を下げることにより、測定範囲、検出感度の上昇傾向が認められた。
また、図には示さなかったが、DMSOの濃度が70%以上ではほとんど反応性を認めなかった。以上の結果から、本モノクローナル抗体では、DMSOの最終濃度が50%では、測定感度が低下するものの、各PCBを測定できることが明らかになった。
【0040】
同様に本抗体のメタノール(メチルアルコール)耐性については、メタノールの濃度を最終濃度として50%、70%、90%を含む緩衝液で溶解することによって溶液状態にしたコプラナーPCBビオチン標識体を試料とした。それぞれの抗体を用いる分析はメタノールの最終濃度70%以上では抗PCB−#126抗体(4−6B−19F)と抗PCB−#77抗体(8−5B−12B)は反応の阻害が認められたが、50%では反応が認められた。したがって、メタノールの濃度0〜50%の範囲においてこれら抗原抗体反応は十分可能であった。さらに抗PCB−#169抗体(7−3C−4C)は70%メタノールでも反応が認められたことから、メタノールの濃度0〜70%の範囲において、抗原抗体反応に対する影響は軽微であり、測定は十分可能であった。
【0041】
【発明の効果】
本発明方法により、コプラナーPCB、特にそのなかで特別に毒性の高いPCB−#77、PCB−#126、PCB−#169と特異的に反応し、かつ有機溶媒(メタノール、ジメチルスルホキシド)中においてもその特性を保持するモノクローナル抗体を提供することを可能にした。該抗体は、たとえば、油(化学処理油等)、土壌、水、食品等の環境または生体試料中の該化合物の分析において、特に有機溶媒抽出の前処理を必要とする試料の分析において、簡便でかつ迅速に処理できる精度の高い分析を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】PCB−#77の標準曲線である。
【図2】PCB−#126の標準曲線である。
【図3】PCB−#169の標準曲線である。
【図4】抗PCB−#169抗体の交差反応性/単品を示す。
【図5】夾雑PCB存在下でのPCB−#77の測定を示す。
【図6】抗PCB−#77抗体の交差反応性/単品を示す。
【図7】抗PCB−#126抗体の抗原抗体反応への他成分混在効果を示す。
【図8】抗PCB−#169抗体の交差反応性/単品を示す。
【図9】夾雑PCB存在下でのPCB−#169の測定を示す。
【図10】抗PCB−#126抗体の溶媒耐性を示す。
【図11】抗PCB−#77抗体の溶媒耐性を示す。
【図12】抗PCB−#169抗体の溶媒耐性を示す。
Claims (4)
- 受託番号 FERM P-17097 で寄託されたハイブリドーマ、受託番号 FERM P-17098 で寄託されたハイブリドーマ、または受託番号 FERM P-17099 で寄託されたハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体。
- コプラナーPCBを認識するモノクローナル抗体であって、 50 ( v/v ) % 有機溶媒水溶液中でも抗原認識特性が実質的に低下しない請求項1記載のモノクローナル抗体。
- 有機溶媒水溶液又は有機溶媒を含まない緩衝液(水溶液を含む)に存在するコプラナーPCBを請求項1または2記載のモノクローナル抗体と接触させて抗原抗体複合体を形成させ、該複合体の形成量を測定することを特徴とするコプラナーPCBの測定方法。
- コプラナーPCBを含有する油性検体に有機溶媒を接触させて、油性検体中のコプラナーPCBを有機溶媒中に抽出し、該有機溶媒中のコプラナーPCBを請求項1または2記載のモノクローナル抗体を用いて測定し、そして油性検体中のコプラナーPCBに換算することを特徴とする、油性検体中のコプラナーPCBの測定方法。
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