JP2005298395A - 抗重金属モノクローナル抗体およびその使用方法 - Google Patents

抗重金属モノクローナル抗体およびその使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 環境汚染物質として亜鉛や銅を免疫学的に検出・定量するためモノクローナル抗体およびこれを用いる免疫学的方法を提供する。
【解決手段】 これら重金属の錯体をタンパク質などのキャリアと結合させ、抗原として用いてモノクローナル抗体を作製し、得られたモノクローナル抗体を用いて亜鉛や銅を錯体として検出・定量する。

Description

本発明は、重金属として亜鉛および銅を特異的に認識するモノクローナル抗体、並びにその使用方法に関する。詳細には、亜鉛錯体および銅錯体を特異的に認識しうるモノクローナル抗体、および該抗体を用いる亜鉛および/または銅を定性的または定量的に検出する方法に関する。
近年、環境保全などの社会的な環境意識や健康に対する影響への関心の高まりから、産業や生活に伴う様々な場面における環境汚染物質の排出・蓄積の動向が注視されている。環境汚染物質の中で環境汚染が問題となっている水銀、カドミウム、鉛、6価クロム、ヒ素等の重金属については公的機関により飲料水や地下水における水質基準、土壌における環境基準、環境への排出基準が設けられている。さらに、平成15年2月に土壌汚染対策法が施行され、水質汚濁防止法と併せて、土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがある他の重金属についても法的規準が設けられつつある。銅および亜鉛ついては既に排水規準が実施されているが、亜鉛については平成16年度中にも環境基準が策定され、これに伴い排水基準も変更されることになっている。
このような状況下において、これら重金属について汚染調査が必要とされる土壌や水質の大幅な増加が見込まれている。広大な敷地を対象とした調査では、簡便で低コストな簡易分析法を利用して、多大な時間と費用を要する公定法分析に供する地点を削減することが有効である。しかし、従来行われている調査は、原子吸光度計や質量分析法などを用いるものであり、これらの方法は高価な測定機器が必要であるうえ、測定も測定機器を設置した施設で行う必要がある。
一方、免疫反応を利用した測定法としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、免疫発光測定法、エンザイムイムノアッセイ(EIAまたはELISA)などの方法が知られている。また、微量物質の測定法としては、間接蛍光抗体法、競合アッセイ法の他に蛍光センサーを利用する方法(非特許文献1)などがあり、その応用範囲は広い。近年、環境汚染物質の測定にも免疫学的測定方法が適用されており、環境汚染物質として内分泌攪乱物質または環境ホルモンを簡易かつ高感度に測定する方法が報告されている(特許文献1)。しかし、測定すべき検出物質が金属元素やそのイオンの場合、一般的にはそれ自体が抗原性を持たないため、金属を検出しうる抗体を作製することは困難である。このため重金属測定用の抗体は一部の金属についてしか作製されていない(非特許文献2)。
特開2002−189027公報 N. Ohmura, et al., Anal. Chemistry, Vol. 73, pp.3392‐3399 (2001) 俵田啓他, 分析化学, 第52巻, 第583頁, 2003年
従って、本発明の課題は、環境汚染物質としての重金属である亜鉛や銅などを免疫学的に検出・定量しうる方法およびこれに用いる亜鉛や銅を特異的に認識するモノクローナル抗体を提供することである。
そこで、本発明者らは、抗金属抗体としてこれらの錯体を特異的に認識しうる抗体は作成可能であると考えて鋭意研究を行ったところ、それ自体では抗原としては小さすぎるが該錯体とタンパク質を結合して高分子量化することにより亜鉛や銅を特異的に認識するモノクローナル抗体を作成しうることを見出した。
従って、本発明は、
[1]重金属として亜鉛および銅を特異的に認識するモノクローナル抗体;
[2]錯体を形成した亜鉛および銅を特異的に認識する前記[1]記載のモノクローナル抗体;
[3]寄託番号FERM P−19704として寄託されたハイブリドーマにより産生される前記[1]または[2]記載のモノクローナル抗体;
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ;
[5]試料中の亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定する免疫学的方法において、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする方法;
[6]試料をSH基含有物質または硫化水素で前処理する、前記[5]記載の方法;
[7]試験試料にSH基含有物質または硫化水素を添加して前処理した試料と前処理しない試料を用いて測定を行い、得られた結果を比較することにより亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定する、請求項5または6記載の方法。前記[5]または[6]記載の方法;並びに
[8]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含む、試料中の亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定するためのキット;
に関する。
本発明のモノクローナル抗体は、重金属として亜鉛および銅の法的規準(例えば環境基準、水質基準など)以下の検出限界を有し、これら重金属について環境基準濃度の測定が可能であることが好ましい。具体的には、亜鉛については、その検出限界が環境基準の30ppb以下、好ましくは10ppb以下であることが好ましい。銅については、検出限界が排水基準の35ppm以下であることが好ましい。
また、本発明のモノクローナル抗体は、正確な測定を与えるためにマグネシウム、マンガン、カドミウム、鉄、カルシウム、鉛などのその他の金属とはほとんどまたは全く交差反応せず、亜鉛および銅以外の重金属との親和性は亜鉛や銅の10%以下、好ましくは1%以下である。
本発明の抗モノクローナル抗体としては、亜鉛および/または銅を特異的に認識するモノクローナル抗体、特に錯体を形成した亜鉛および/または銅を特異的に認識するモノクローナル抗体であればいずれの抗体でもよいが、例えばZk23E7が挙げられる。モノクローナル抗体Zk23E7を産生するハイブリドーマは、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成16年2月26日付けで寄託番号FERM P−19704として寄託されている。
本発明のモノクローナル抗体を用いる亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定する免疫学的方法において、亜鉛と銅はキレート剤に配位させ、形成された錯体を本発明のモノクローナル抗体により検出・測定する。故に、本発明は、(i)試験試料にキレート剤を添加して錯体を形成させ、(ii)該錯体を特異的に認識する抗体を用いる免疫学的手法により亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定する方法に関する。本発明のモノクローナル抗体は、前述のように亜鉛や銅に対して親和性が高く、且つ他の金属との交差反応性が低いため、試験試料中の亜鉛や銅をより正確に測定することができる。その中でも、本発明のモノクローナル抗体Zk23E7は、亜鉛と銅に対して非常に高い親和性・特異性を有している。そこで、試験試料にあらかじめSH基含有物質(例えば、メルカプトエタノールやグルタチオンなどのSH基を有する化合物、あるいは牛血清アルブミンなどシステイン残基を含むタンパク質)または硫化水素を添加して、そのSH基または硫化水素と銅を反応させて沈殿させる。次いで、SH基含有物質または硫化水素で前処理した試料と前処理しない試料についてZk23E7抗体を用いて測定することにより、試験試料中に亜鉛と銅が存在するか否かを区別して判定し、かつ2つの測定値から亜鉛と銅の各々の濃度を算出することができる。従って、本発明は、試験試料にSH基含有物質または硫化水素を添加して前処理すること、およびその前処理した試料と前処理しない試料について、モノクローナル抗体Zk23E7を用いて金属イオン濃度を測定し、その測定結果から試験試料中に亜鉛および銅の存在・不存在を判定し、かつ亜鉛および銅の各々について同時に濃度を測定する方法に関する。
本発明において用いる免疫学的手法としては、本発明のモノクローナル抗体を用いればいずれでも良いが、例えば免疫クロマトグラフィー、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、免疫発光測定法、エンザイムイムノアッセイ(EIAまたはELISA)、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、免疫比濁法(TIA)、ラテックス免疫比濁法(LTIA)、蛍光センサー法などの方法が挙げられる。
本発明の亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定するためのキットは、本発明のモノクローナル抗体のみから構成されていてもよいが、他の試薬例えばキレート剤、キレート剤−タンパク質複合体、ポジティブコントロール試料、ネガティブコントロール試料などを包含してもよい。また、モノクローナル抗体、キレート剤−タンパク質複合体のいずれか、または両方が標識されていてもよい。さらに、本発明のキットは、モノクローナル抗体を含め必要な試薬がフィルターなど吸着されている免疫クロマトグラフィー装置(例えば、試験紙)の形態でもよい。
本発明によれば、環境汚染物質として注目されつつある重金属の亜鉛や銅を特異的に認識するモノクローナル抗体およびこれを用いる亜鉛および/または銅を検出・定量するための免疫学的方法、該方法に用いるキット(装置)が提供される。本発明のモノクローナル抗体は亜鉛および/または銅に対して高い親和性・特異性を有するため微量のこれら重金属を検出することができ、環境への排出基準のみならず、高い検出感度が要求される水質基準や環境基準に対する判定にも用いることができる。また、この方法は免疫学的手法を用いるため、環境調査の現場で亜鉛および/または銅を迅速且つ簡便に測定できる。
<抗原>
本発明では、亜鉛イオン、銅イオン単独では抗原性を持たないため、これら金属を認識する抗体を作成するためこれら重金属をキレート剤に配位させ、形成された金属錯体を抗原として用いた。キレート剤としては、亜鉛や銅を配位しうるものであれば任意のキレート剤を用いることができるが、例えばジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、テトラエチレントリアミン(TET)、エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、クエン酸、シュウ酸、クラウンエーテル、ニトリロテトラ酢酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、ペニシラミン、ペンテテートカルシウム三ナトリウム、ペンテト酸、スクシメルおよびエデト酸トリエンチンを挙げることができるが、好ましくはDTPAおよびEDTAである。
また、例えば亜鉛とDTPAの錯体(以後、Zn−DTPAと略記する)では免疫応答を誘導するには分子として小さすぎるため、キャリアとなる高分子量物質に結合させ、これを抗原または免疫源として用いる。キャリアとして用いることができる高分子量物質の例としては多糖類、タンパク質などが挙げられるが、タンパク質が好ましい。アルブミン、オバルブミン、ヘモシアニン、グロブリン、ゼラチン、コラーゲンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
これら金属錯体とタンパク質の複合体を作成するには、タンパク質と結合しうる官能基を有するキレート剤または該官能基を導入したキレート剤を用いるか、あるいはリンカーを介してタンパク質とキレート剤を結合させることができる。そのようなキレート剤は市販されており、例えばイソチオシアノベンジル−DTPA(同仁化学)が挙げられる。複合体の形成は常法により行うことができる。
<抗金属モノクローナル抗体の作製>
マウスの免疫、ハイブリドーマの作製およびその培養などモノクローナル抗体の作製は、常法に従って、例えばモノクローナル抗体作製マニュアル、多田ら著、学際企画発行、1995年(ISBN 4-906514-19-7)参照して適宜行うことができ、免疫するマウスの系統、脾臓細胞と融合させるミエローマなども特に限定されない。
<抗体生産細胞のスクリーニング>
抗体生産細胞のスクリーニングには一般的にはELISA法を用いるが、より少ない抗体量でスクリーニングが可能であるため、蛍光センサー法(特許文献1)を用いるのが好ましい。この方法は、一次スクリーニングおよび二次スクリーニングからなり、一次スクリーニングは担体に固定化した抗原(亜鉛錯体−タンパク質複合体または銅錯体−タンパク質複合体)に抗体を含有するハイブリドーマ培養上清を添加し、固定化抗原に結合した抗体を蛍光標識した二次抗体(抗マウスIgG抗体)を用いて蛍光センサーで検出する。二次スクリーニングでは、培養上清に適当量(例えば10μM)の金属錯体を添加して平衡化した後、錯体と結合しなかった抗体の固定化抗原との結合を一次スクリーニングと同様に測定する。一次スクリーニングと二次スクリーニングの差から所望の金属錯体と特異的に結合する抗体を特定する。
<モノクローナル抗体の産生および精製>
特定したクローンを培養し、単離したコロニーは徐々に培地量を増やしながら継代する。得られた培地は、脱塩カラムを用いて培地自体に含まれる若干の重金属を除去するのが好ましい。さらに、培地中に他のタンパク質の影響を除くために、抗体を精製する方法、例えばプロテインAアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより抗体を精製するのが好ましい。
<モノクローナル抗体の評価>
得られたモノクローナル抗体は、亜鉛錯体、銅錯体と他の金属の錯体との親和性を比較することによりその抗体の抗原に対する親和性および特異性を評価する。親和性は、抗体の抗原との結合を50%阻害する抗原濃度(IC50)により評価する。そして、特異性は、カドミウムや水銀に対するIC50と他の金属に対するIC50を比較することにより評価する。IC50はいずれの方法で算出してもよいが、測定結果をソフトウェア(例えばOrigin Version 6.0など)により解析して求めてもよい。例えば、蛍光センサー法などで得られた測定値は、抗原を加えなかったときの測定値を100%として相対値に変換した後、抗体と抗原の結合曲線の近似式:
y=99/(1+(x/P1)P2)+0.5
[式中、xは抗体量であり、yは抗体と抗原の結合量(%)であり、P1およびP2は近似のパラメーターである]に導入する。また、P1およびP2はソフトフェアにより決定し、得られた結合曲線から、y=50になるときのxの値(=P1)をIC50とする。また、抗体の特異性は亜鉛や銅に対するIC50と他の金属に対するIC50との比を交差反応性として求める。
<免疫クロマトグラフィー>
抗体を用いた免疫学的測定法の一例として免疫クロマトグラフィーを挙げる。この方法は、試料を試験紙上に滴下するだけで目的物質の有無を数分から数十分の間に判定できるため簡便性に優れ、かつ特別な機械装置を必要としないため非常に安価である。本発明において、免疫クロマトグラフィーは、キレート剤−タンパク質複合体を利用することにより所望の金属イオンを効果的に検出するものである。図3にその実施形態の一例を示す。プラスチックバッキングシート1の上に、メンブレン2と吸収パッド3を一部で重なるように配置し、メンブレン2の先端の試料滴下位置5に試料を滴下すると試料が吸収パッド3に向かってメンブレン2上を流動し、標識された抗金属EDTAモノクロナール抗体あるいは標識されたEDTA−タンパク質複合体が固定化された領域4を通過する際に、金属EDTA錯体が抗体に捕捉されあるいは抗金属EDTAモノクロナール抗体がEDTA−タンパク質複合体のEDTAと錯体を形成してその錯体に抗金属EDTAが捕捉されて、固定化領域4が目視可能となることで検出対象物の有無を簡易に検出可能としている。なお、DTPAなどのキレート剤を直接標識することは困難であるため、キレート剤にタンパク質を付加する前または後に、タンパク質に色素粒子を付加することで間接的にキレート剤を標識するのが好ましい。あるいは、モノクローナル抗体自体を標識することもできる。これらタンパク質の標識は通常行われている手法によって行うことができる。
(1)試験法1
本発明のモノクローナル抗体を試験紙の一部分に試料の流れを横切るように帯状に固定化する。次いで、試験試料中にキレート剤−タンパク質−色素粒子(キレート剤−標識タンパク質)複合体を添加して、亜鉛または銅と結合させたのち試験紙に滴下させる(図4(A),(B)参照)。目的の金属イオンが存在する場合には、金属−キレート剤錯体が形成され、金属錯体と標識タンパク質複合体が試験紙上に帯状に固定化したモノクローナル抗体によって補足され、その結果として色素粒子が帯状に密集して試料中の金属イオンが可視化する(図4(C),(D)参照)。試料中に金属イオンが存在しない場合は、キレート剤−タンパク質−色素粒子複合体は試験紙上に固定化されたモノクローナル抗体に補足されないため、色素粒子により可視化されない。
(2)試験法2
キレート剤−タンパク質複合体を利用して金属イオンを検出する免疫クロマトグラフィーとして次の方法がある。まず、試験法1における抗体の代わりにキレート剤−タンパク質を試験紙上に帯状に固定化する(図5(B)参照)。色素粒子はモノクローナル抗体に付加する。この標識抗体と試験試料をともに試験紙に滴下させると(図5(A),(B)参照)、金属イオンが試験紙上のキレート剤−タンパク質複合体に補足され、金属−キレート剤錯体が形成され、結果として標識されたモノクローナル抗体が金属−キレート剤錯体を介して試験紙上に補足され、帯状に密集した色素粒子により試料中の金属イオンが可視化される(図5(C),(D)参照)。
これら2つの試験法の利点は、タンパク質を介することでキレート剤を帯状に試験紙に固定することが容易になること、およびタンパク質1分子当たりに複数のキレート剤を付加するすることができ、単純に試験紙上にキレート剤を固定した場合に比べて表面積を大きく取ることが可能になり、結果として検出感度を上げることができることである。
本発明を下記の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例では抗原として亜鉛とDTPAの錯体(Zn−DTPA)、キャリアタンパク質としてヘモシアニンを用いて、亜鉛としてZn−DTPAを特異的に認識する抗体を作製した。
実施例1 抗亜鉛モノクローナル抗体
(1)抗原の作製
1mgのイソチオシアノベンジル−DTPA(モレキュラープローブ社製)を10mgのスカシ貝ヘモシアニン(KLH)と3mlの50mMシュウ酸緩衝液(pH9.5)中で37℃、4時間反応させた。次いで、脱塩カラム(バイオラッド製、10DGパックドカラム)を用いて50mM MES緩衝液pH6.5に置換した。この溶液に5mMになるように硫酸亜鉛を添加して、亜鉛錯体を形成させてZn−DTPA−ヘモシアニン複合体を抗原として精製した。また、ヘモシアニンの代わりにニワトリ卵白アルブミン(OVA)を用いて同様な操作を行ってZn−DTPAとオバルブミンの複合体を作製し、これをスクリーニング用抗原とした。
(2)モノクローナル抗体の作製
a)マウスの免疫
6匹のBALB/C近交系のマウス(雌、5週齢、日本クレア)を1週間程度飼育環境に慣らしたのち、1回目の免疫を行った。免疫は、実施例1の免疫用抗原と等量のアジュバントを十分に混合してエマルジョンとした。1回の免疫につき、タンパク質量にして約0.3mgの抗原を用いて1回につき2カ所、100μlずつ皮下注射した。2回目以降の免疫は2週間程度おきに3回または4回行った。3回目の免疫後、4〜7日間にマウスの尾部より数滴の血液を採取し、スクリーニング用抗原を用いて抗体価を測定し、抗体の産生を確認した。
b)ハイブリドーマの作製
最後の免疫から4〜6日経過したマウスから、脾臓を摘出し、脾臓細胞とミエローマ細胞(NSO株、理化学研究所)と融合させた。細胞を融合する際は、重合度1500のポリエチレングリコールで脾臓細胞とミエローマを処理した。細胞融合に関する一連の操作は37℃にて行った。得られたハイブリドーマは96穴プレートに分注し、HAT培地中で37℃,5%COの条件下で培養した。ハイブリドーマは、融合後約2週間培養し、その間は3〜4日に1回培地を交換した。なお、10日目前後まではHAT培地を用い、その後はHT培地を用いた。
c)スクリーニング
スクリーニングは、フロー式蛍光センサー(キネクサ3000)を用いて蛍光センサー法にて行った。また、抗原を固定化する担体としてアガロースビーズ(NHS修飾済み,ファルマシア)を用いた。2mlのアガロースビーズ懸濁液に対して、実施例2で得たスクリーニング用抗原100μgを添加して抗原をビーズに固定化した。
96穴プレートの培養液の上清約10μlずつ取り、1本の試験管にまとめた(約1ml)。一次スクリーニングでは、この試験管に固定化抗原を添加し、固定化抗原に結合した抗体は蛍光物質Cy5にて標識された二次抗体(抗マウスIgGヤギ抗体)を用いて間接的に蛍光標識し、上清中の抗体と固定化抗原との結合を蛍光センサーにより検出した。二次スクリーニングでは、培養上清にZn−DTPAを1μMとなるように加え、平衡化したのち、錯体と結合しなかった抗体のビーズへの結合を同様に測定した。二次スクリーニングによって、Zn−DTPAと特異的に結合する抗体を含むと判定されたプレートについては,1本の試験管にまとめる培養上清を12穴分〜1穴分と段階的に絞り込みながら、一次スクリーニング同様、上清中の抗体のビーズへの結合を測定し、目的の抗体を産生するハイブリドーマとして、Zk23E7株を特定した。スクリーニングによって陽性と判断されたこの抗体生産細胞は、メチルセルロース培地を用いて単一の細胞に由来するコロニーを形成させた後、コロニーを液体培地に移し培養を続けた。
d)モノクローナル抗体の生産
単離されたコロニーを96穴プレート、24穴プレート、25cmフラスコの順に培地量を増やしながら継代した。継代の後3〜5日の間に培養上清中の抗体量を蛍光センサーにて測定し、抗体量の多いものを次の培地に移した。なお、96穴プレートの培地量は200μl、24穴プレートの培地量は1000μl、25cmフラスコの培地量は10mlである。また、培養後の培地は脱塩カラムを用いて培地に含まれる若干の重金属を除去し、25mM HEPES緩衝液(pH7.0)に置換した。さらに、プロテインAアフィニティーカラムに供して、得られたモノクローナル抗体を精製した。
(3)モノクローナル抗体の評価
Zn−DTPAおよび他の金属とDTPAの錯体に対する親和性を測定・比較することで得られた抗カドミウム抗体を評価した。なお、亜鉛以外の金属として、銅(Cu−DTPA)、マグネシウム(Mg−DTPA)、マンガン(Mn−DTPA)、カドミウム(Cd−DTPA)、鉄(Fe−DTPA)、カルシウム(Ca−DTPA)および鉛(Pb−DTPA)を用い、フリーのDTPAをコントロールとした。なお、IC50値に対して抗体濃度が十分に小さい(10分の1以下の)場合にIC50値と結合解離定数がほぼ一致することが知られているため、本実施例では評価として結合解離定数を用いた。
その結果、モノクローナル抗体Zk23E7は、Cu−DTPAとは21.1%の交差反応性を示したが、これはZn−DTPAとCu−DTPAの立体構造がよく似ているためであると考えられる。Cu−DTPA以外の錯体に対する交差反応性は0.32%以下であり、Zk23E7抗体がZn−DTPAとCu−DTPAに対して強い特異性を有することが確認された。これらの結果を下記の表1に示す。尚、交差反応性は、下式で表される。
交差反応性=(Zn-DTPAの解離定数/金属-DTPAの解離定数)x 100
試験例1
亜鉛に対する法規制として、環境基準が30ppbに、排水基準が300ppbに設定される見通しである。また、銅については排水基準35ppmが既に実施されている。このため、本発明のモノクローナル抗体Zk23E7がこれらの規制値の濃度の亜鉛と銅を検出しうるかを実施例1−(3)と同様に評価した。なお、本試験例では濃度をppbにて表す。
その結果、抗体のZn−DTPAに対する結合曲線は1ppbから曲線が下がっており、亜鉛錯体の検出限界が1ppbであることが確認された。また、Cu−DTPAに対する検出限界は10ppb(150nM)であった。すなわち、Zk23E7抗体が亜鉛の環境基準および排出基準の判定に、さらに銅の排水基準の判定に利用できることが示された(図1を参照)。尚、図1において、横軸はZk23E7抗体に加えたZn−DTPAまたはCu−DTPAの濃度を示しており、縦軸は蛍光強度の相対値を示している。蛍光強度は、DTPA錯体の濃度が0の時(DTPA錯体を抗体に加えなかった時)の蛍光強度を100とした。曲線は各データの近似曲線を示す。
試験例2
Zk23E7抗体は亜鉛と銅に両方と結合するため、これらの金属を両方含む試料については正確な濃度を測定できない可能性がある。そこで、亜鉛と銅の化学的な性質の差を利用して一方の金属が錯体を形成することを阻害することにより、亜鉛と銅を区別して測定することを試みた。具体的には、銅イオンと硫化水素や、メルカプトエタノールのSH基含有物質を接触させると沈殿を形成するため、試料にメルカプトエタノールを添加する場合と添加しない場合で測定する。亜鉛イオンが添加したメルカプトエタノールと反応せず、かつメルカプトエタノールがZk23E7抗体とZn−DTPAと結合を阻害しなければ、Zk23E7抗体によって亜鉛と銅を区別して測定することが可能となる。
そこで、試料にメルカプトエタノールを添加した場合と添加しない場合で亜鉛と銅について結合分析を行った。その結果、亜鉛は低濃度でもメルカプトエタノールの影響をほとんど受けることなくZk23E7抗体により測定できることが確認された。また、銅についてはメルカプトエタノールによってDTPAとの錯体形成が阻害され、その結果、Zk23E7抗体とCu−DTPAとの結合は検出されなかった(図2を参照)。これらの結果から、メルカプトエタノールで前処理した場合と全処理しない場合について測定することにより、試料中に亜鉛および銅が存在するか否かを区別して判定しうることのみならず、亜鉛と銅の各々について同時に濃度を測定しうることが示された。尚、図2において、横軸は試料中の亜鉛または銅の濃度を示している。各資料のDTPAの濃度は100μMで一定である。メルカプトエタノールを加えた試料のメルカプトエタノール濃度は100μMで一定であり、DTPAを加える前に金属と反応させた。蛍光強度は、金属の濃度が0の試料(DTPA濃度は100μM)の蛍光強度を100として相対値を示した。
モノクローナル抗体Zk23E7と亜鉛との結合曲線において、横軸の亜鉛濃度をppbにて表したグラフである。 メルカプトエタノール添加・不添加の場合におけるモノクローナル抗体Zk23E7と亜鉛および銅との結合強度を示す図である。 免疫クロマトグラフィー装置の構成図である。 本発明にかかる抗重属モノクローナル抗体を用いた重金属の第1の検出方法の原理図である。 本発明にかかる抗重属モノクローナル抗体を用いた重金属の第2の検出方法の原理図である

Claims (8)

  1. 重金属として亜鉛および銅を特異的に認識するモノクローナル抗体。
  2. 錯体を形成した亜鉛および銅を特異的に認識する請求項1記載のモノクローナル抗体。
  3. 寄託番号FERM P−19704として寄託されたハイブリドーマにより産生される請求項1または2記載のモノクローナル抗体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
  5. 試料中の亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定する免疫学的方法において、請求項1〜3のいずれかに記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする方法。
  6. 試料をSH基含有物質または硫化水素で前処理する、請求項5記載の方法。
  7. 試験試料にSH基含有物質または硫化水素を添加して前処理した試料と前処理しない試料を用いて測定を行い、得られた結果を比較することにより亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定する、請求項5または6記載の方法。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含む、試料中の亜鉛および/または銅を定性的または定量的に測定するためのキット。
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