JP2005139320A - 水性塗料組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】最外層にカルボキシル基を有し、かつ最外層を構成する樹脂のガラス転移温度が内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低い多層構造型合成樹脂エマルション(A)、及びアルカリ金属シリコネート(B)を必須成分とし、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し(B)成分を0.01〜10重量部混合する。
【選択図】なし
Description
この要望に応えるために、水性塗料においては、造膜助剤の添加量を削減しつつ、造膜性を確保することが必要となる。一般的に、このような造膜性を確保する手法のひとつとして、合成樹脂エマルションに用いるモノマー成分の種類や比率を調整して樹脂のガラス転移温度を下げる方法が挙げられる。しかし、この手法では、形成される塗膜表面の粘着性が大きくなり、塗膜表面に一旦汚れが付着すると除去しにくくなる、という問題が発生する。
上記特許文献の如き多層構造型エマルションでは、エマルション粒子の最外層を構成する重合体成分において、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマー(ソフトモノマー)とともにカルボキシル基含有モノマーを共重合し、さらにアンモニア等の揮発性塩基でカルボキシル基を解離させることによって安定化を図っている。ところが、このようなソフトモノマーは通常、疎水性が大きい。そのため、経時的に揮発性塩基が揮発してしまうと、エマルション粒子表層の親水性が急激に低下し、エマルション粒子が不安定化する。しかも、エマルション粒子表層が軟らかい構造であるため、凝集等が起こりやすくなり、安定性を確保することができなくなるのである。
水酸化ナトリウム等の不揮発性塩基を使用すれば、経時的な安定性は確保できる。しかし、一方で塗膜の耐水性が著しく低下するという問題が生じる。
1.最低造膜温度が10℃以下の水性塗料組成物であって、
最外層にカルボキシル基を有し、かつ最外層を構成する樹脂のガラス転移温度が内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低い多層構造型合成樹脂エマルション(A)、及びアルカリ金属シリコネート(B)を必須成分とし、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し(B)成分を0.01〜10重量部含むことを特徴とする水性塗料組成物。
2.最低造膜温度が10℃以下の水性塗料組成物であって、
最外層にカルボキシル基を有し、かつ最外層を構成する樹脂のガラス転移温度が内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低い多層構造型合成樹脂エマルション(A)、アルカリ金属シリコネート(B)、及び顔料(C)を必須成分とし、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し(B)成分を0.01〜10重量部、(C)成分を5〜1000重量部含むことを特徴とする水性塗料組成物。
3.塗料中の揮発性有機化合物含有量が5重量%未満であることを特徴とする1.または2.に記載の水性塗料組成物。
各層のTgをこのような範囲内に設定することにより、実用的な造膜性と耐汚染性を得ることが可能となり、特に建築物の内装用塗料として好適な水性塗料組成物を得ることができる。
なお、本発明におけるTgは、Foxの計算式により求められる値である。
カルボキシル基含有モノマーの使用量は、(A)成分を構成する全モノマー量に対し、通常0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜20重量%である。
N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド等のアミノ基含有モノマー;
ビニルピリジン等のピリジン系モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有モノマー;
スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;
アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等のカルボニル基含有モノマー;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;
その他、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、内層においてカルボキシル基含有モノマーを使用することもできる。
(A)成分の平均粒子径は、通常0.05〜0.2μm程度である。
R2としては、水素原子の他、R1と同様の基が挙げられる。このうち、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
Mとしては、Li、Na、K等が挙げられ、特にNaが好ましい。
塗料の安定性については、常温貯蔵時は勿論、高温貯蔵時、低温貯蔵時の安定性も十分に確保することができる。
また、本発明の効果を阻害しない範囲内において、(B)成分とともに、通常の塩基性化合物を使用することもできる。このような塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、アミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−(メチルアミノ)−2−メチル−1−プロパノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
(C)成分としては、一般的に塗料に配合可能なものを使用することができる。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、陶土、チャイナクレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪砂、珪石、珪藻土、酸化アルミニウム、樹脂ビーズ、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
形成塗膜における艶の程度は、(C)成分の混合量や、使用する(C)成分の組成、形状、粒子径等を適宜調整することよって設定することができる。艶消しタイプの塗料を得る場合には、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して(C)成分を50〜1000重量部程度(好ましくは100〜500重量部程度)混合すればよい。艶有りタイプの塗料を得る場合には、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して(C)成分を5〜100重量部程度(好ましくは10〜80重量部程度)混合すればよい。
本発明組成物には、必要に応じ、造膜助剤その他の揮発性有機化合物を混合することもできるが、その含有量は塗料中に5重量%未満、さらには1重量%未満とすることが望ましい。本発明組成物では、造膜助剤等の揮発性有機化合物がこのような低含有量であっても、最低造膜温度を10℃以下に設定することができる。
本発明組成物を塗装する際の塗付量は、塗料の種類や用途により適宜選択すればよく、例えばフラットペイントの場合0.1〜0.5kg/m2程度となる。塗付時には、水等で希釈することによって、塗料の粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、通常0〜20重量%程度である。
本発明組成物を塗装した後の乾燥は通常、常温で行えばよいが、加熱することも可能である。
反応容器に、脱イオン水150重量部、アニオン系乳化剤1.5重量部、ノニオン系乳化剤3.0重量部を仕込み、攪拌及び窒素置換を行いながら70℃まで昇温し、過硫酸アンモニウム0.9重量部を添加した。これに、別途用意した最内層用乳化モノマー(脱イオン水50重量部にアニオン系乳化剤0.5重量部を溶解させた水溶液に、スチレン49重量部、メチルメタクリレート29重量部、2−エチルヘキシルアクリレート25重量部、アクリル酸1.5重量部を乳化分散させたもの)を3時間かけて連続的に滴下した。
次いで、中間層用乳化モノマー(脱イオン水50重量部にアニオン系乳化剤0.5重量部を溶解させた水溶液に、スチレン32重量部、メチルメタクリレート35重量部、2−エチルヘキシルアクリレート53重量部、アクリル酸1.5重量部を乳化分散させたもの)を2時間かけて連続的に滴下し、さらに最外層用乳化モノマー(脱イオン水50重量部にアニオン系乳化剤0.5重量部を溶解させた水溶液に、メチルメタクリレート11重量部、2−エチルヘキシルアクリレート54重量部、アクリル酸4.5重量部、アクリルアミド4.2重量部を乳化分散させたもの)を2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後3時間熟成し、30℃まで冷却した後、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8に調製することにより、多層構造エマルションを得た。この多層構造エマルションの樹脂固形分は50重量%、Tgは最内層が49℃、中間層が16℃、最外層が−22℃である。
・アルカリ金属シリコネート:ナトリウムメチルシリコネート30重量%溶液
・揮発性塩基:25重量%アンモニア水
・不揮発性塩基:水酸化ナトリウム10重量%溶液
・顔料A:酸化チタン70重量%分散液
・顔料B:重質炭酸カルシウム
・顔料C:カーボンブラック24重量%分散液
・顔料D:酸化鉄45重量%分散液
・分散剤:アニオン系分散剤
・増粘剤:ウレタン系増粘剤
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
ポリエチレンフィルムに、各水性塗料組成物をウェット膜厚250μmで塗付し、直ちに、−10℃〜40℃の温度勾配を有する金属板上に静置して乾燥させた。このとき、連続塗膜を形成している最低温度を確認した。
各水性塗料組成物について、BH型粘度計(回転数20rpm、測定温度23℃)で粘度を測定した後、250ccの容器に密封し、50℃の恒温器で一定期間(30日間)貯蔵した。貯蔵後の塗料を標準状態(温度23℃、湿度50%)で放冷後、粘度をBH型粘度計で測定し、初期粘度に対する変化を調べた。評価基準は以下のとおりである。
◎:粘度変化10%未満
○:粘度変化10%以上30%未満
△:粘度変化30%以上50%未満
×:粘度変化50%以上
各水性塗料組成物について、BH型粘度計(回転数20rpm、測定温度23℃)で粘度を測定した後、250ccの容器に密封し、−5℃の恒温器に18時間に入れた後、容器を取り出して室内に6時間放置した。この操作を3回繰り返した後、粘度をBH型粘度計で測定し、初期粘度に対する変化を調べた。評価基準は以下のとおりである。
◎:粘度変化10%未満
○:粘度変化10%以上30%未満
△:粘度変化30%以上50%未満
×:粘度変化50%以上
各水性塗料組成物から発生する臭気を官能試験により評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:臭気をほとんど感じない
×:臭気を著しく感じる
予めシーラーを塗装した150×60×6mmのスレート板に、各水性塗料組成物を塗付量300g/m2でスプレー塗装し、標準状態で14日間養生した。得られた試験体の初期色相(L* 1、a* 1、b* 1)を測定した後、試験体を23℃の水に96時間浸漬した。試験体を引きあげて標準状態で2時間放置した後、試験体の色相(L* 2、a* 2、b* 2)を測定し、水浸漬前後の色差(△E)を下記式に従って算出した。
<式>△E={(L* 2−L* 1)2+(a* 2−a* 1)2+(b* 2−b* 1)2}0.5
評価基準は以下のとおりである。
○:△E0.5未満
△:△E0.5以上1.0未満
×:△E1.0以上
予めシーラーを塗装した150×60×6mmのスレート板に、各水性塗料組成物を塗付量300g/m2でスプレー塗装し、標準状態で14日間養生した。得られた試験体の塗膜表面に汚れ成分(水性ペン)を付着させ、水を含んだ布で擦った後、汚れ成分の残存の程度を確認した。評価基準は以下のとおりである。
○:汚れが除去された
△:汚れがわずかに残存した
×:汚れが明らかに残存した
ガラス板に、各水性塗料組成物をウェット膜厚250μmで塗付し、標準状態で14日間養生した。得られた試験体の塗膜表面に汚れ成分(カーボンブラック15重量%水分散液)を滴下し、標準状態で24時間放置した。次いで塗膜表面をスポンジで水洗した後、汚れ成分の残存の程度を確認した。評価基準は以下のとおりである。
○:汚れが除去された
△:汚れがわずかに残存した
×:汚れが明らかに残存した
Claims (3)
- 最低造膜温度が10℃以下の水性塗料組成物であって、
最外層にカルボキシル基を有し、かつ最外層を構成する樹脂のガラス転移温度が内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低い多層構造型合成樹脂エマルション(A)、及びアルカリ金属シリコネート(B)を必須成分とし、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し(B)成分を0.01〜10重量部含むことを特徴とする水性塗料組成物。 - 最低造膜温度が10℃以下の水性塗料組成物であって、
最外層にカルボキシル基を有し、かつ最外層を構成する樹脂のガラス転移温度が内層を構成する樹脂のガラス転移温度よりも低い多層構造型合成樹脂エマルション(A)、アルカリ金属シリコネート(B)、及び顔料(C)を必須成分とし、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対し(B)成分を0.01〜10重量部、(C)成分を5〜1000重量部含むことを特徴とする水性塗料組成物。 - 塗料中の揮発性有機化合物含有量が5重量%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の水性塗料組成物。
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